説明

複合容器

【課題】内容物が残り少なくなっても、内容物の通過を阻害することがないように軟質包装袋が開口し、また、軟質包装袋の幅寸法に左右されることなく、多種多様に製造することができる複合容器を提供する。
【解決手段】軟質包装袋2と、該軟質包装袋2の左右両側端に沿って延在するように板紙に設けた一対の折曲部9a,9bで折り曲げて当該軟質包装袋2に固定され、前記軟質包装袋2の前後両面の外周の少なくとも一部を覆う外装体3とを備える複合容器1において、前記折曲部9a,9bのいずれか一方に沿う押し込み部10を前記外装体3の前後両面に渡って設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、板紙の剛性を利用して軟質包装袋を開口させた状態に維持する容器が、公知のものとして多数存在する。例えば、特許文献1の複合容器では、軟質包装袋の外面に接着固定されたスリーブ材の一対の折曲部近傍に、それぞれ略くの字状又は略円弧状の押し込み外折れ線を有する押し込み部を設け、該外折れ線で軟質包装袋の開口状態を維持するように構成したものがある。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、左右両側に押し込み部を設ける構成では、内容物が残り少なくなった場合に、大きく変形した中央領域に内容物を集めることが困難で、開口部分に指を差し入れても内容物を簡単に取り出すことができないという問題がある。また、複合容器を傾けて内容物を外側に出す場合には、開口の小さい上部の左右両側が内容物の通過を阻害するという問題もある。さらに、軟軟質包装袋の幅寸法が小さくなると、外装体を変形させるのに必要な押し込み領域を確保することができず、製造可能な複合容器の種類が制限されてしまうという問題がある。
【0006】
したがって、本発明は、内容物が残り少なくなっても、内容物の通過を阻害することがないように軟質包装袋が開口し、また、軟質包装袋の幅寸法に左右されることなく、多種多様に製造することができる複合容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するための手段として、本発明は、軟質包装袋と、該軟質包装袋の左右両側端に沿って延在するように板紙に設けた一対の折曲部で折り曲げて当該軟質包装袋に固定され、前記軟質包装袋の前後両面の外周の少なくとも一部を覆う外装体とを備える複合容器において、前記折曲部のいずれか一方に沿う押し込み部を前記外装体の前後両面に渡って設けた。
【0008】
前記押し込み部は、前記折曲部のいずれか一方を対称軸として左右対称に構成され、前記外装体の上方から下方まで延在する一対の山折り部と、前記折曲部のいずれか一方と交差しながら、該一対の山折り部の間を延在する谷折り部とを有するのが好ましい。
【0009】
前記押し込み部の少なくとも上端に、水平スリットを設けるのが好ましい。
【0010】
前記外装体は、前記軟質包装袋の下端まで延在するのが好ましい。
【0011】
前記押し込み部は、前記外装体の上方に前記折曲部のいずれか一方と交差しながら、前記一対の山折り部の間を延在する2本の谷折り線を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、左右両側のいずれか一方を大きく開口させた状態を維持するので、内容物の量が残り少なくなっても、開口の大きい方に内容物を寄せ集めて、その開口に指を差し入れたり、容器自体を傾けたりすれば、内容物を取り出したり、そのまま他の容器等に容易に移し替えることが可能である。また、軟質包装袋の幅寸法が小さくても、外装体の変形に必要な押し込み領域を確保することができ、その結果、内容物の取り出しや移し替えが容易な複合容器を多種多様に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る複合容器の斜視図である。
【図2】図1の複合容器を構成する軟質包装袋の斜視図である。
【図3】図1の複合容器を構成する外装体の展開図である。
【図4】押し込み部を押し込んだ状態を示す図1の複合容器の斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る複合容器の斜視図である。
【図6】図5の複合容器を構成する外装体の展開図である。
【図7】押し込み部を押し込んだ状態を示す図5の複合容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る複合容器について、添付の図面を参照しながら説明することとする。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る複合容器1を示している。本実施形態に係る複合容器1は、略矩形状の軟質包装袋2と、該軟質包装袋2の前後両面の上方外面を覆う外装体3とからなる。
【0016】
図2は、本発明の第1実施形態に係る複合容器1を構成する軟質包装袋2を示している。軟質包装袋2の材料は、特に限定されるものではないが、基本素材としてプラスチックフィルムないしシートを使用し、具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等を使用することができる。このプラスチックフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、あるいは一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルムのいずれも使用することができる。ヒートシールにより製袋する際には、このような基材フィルムに加えて、ヒートシール性樹脂層を積層した積層体を使用する。本発明において、ヒートシール性樹脂層としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等のフィルムを使用することができる。なお、軟質包装袋2の形状としては、複合容器1を構成した状態で折曲部9bを内側に押し込む操作がスムーズに行うことができるようにするため、少なくとも一辺に折り曲げ部を有するものが好ましく、例えば、三方シール袋やピロー袋が挙げられる。
【0017】
軟質包装袋2は、上記のような積層体を矩形状に構成したものを二つ折りにしてその内層のヒートシール性樹脂層の面を対向させ、折り曲げ部を除く周縁をヒートシールしたものである。軟質包装袋2は、周縁シール部4と開封用切欠部5とを有する。周縁シール部4は、軟質包装袋2内の収容部を規定し、収容部に収容された内容物6を軟質包装袋2内に封入する。
【0018】
図3は、本実施形態に係る複合容器1を構成する外装体3を展開した状態を示している。外装体3は、長辺を上下に、短辺を左右に向けて配置した板紙からなる。外装体3に使用される板紙は、図3に示すように、一方の側端で連結された矩形状の前面領域7及び後面領域7’と、前面領域7の他方の側端に連結された縦長台形状の糊代フラップ8とに区画されるような形状で断裁、打ち抜き等される。
【0019】
外装体3は、上述したように、軟質包装袋2の前後両面の上方外面を覆い、一対の折曲部9a,9bと、押し込み部10とを有する。
【0020】
一対の折曲部9a,9bは、前面領域7及び後面領域7’を折曲する山折り線と、前面領域7と糊代フラップ8の境界を折曲する山折り線とからなる。図3に示す展開状態から、折曲部9a,9bを山折りすることにより前面領域7及び後面領域7’を対向させ、糊代フラップ8を後面領域7’に重ね合わせて接着して、外装体3が形成される。
【0021】
押し込み部10は、外側に緩やかに湾曲したリーフ状の領域を規定し、水平スリット11と、一対の山折り線12,12’と、谷折り線13とを有する。水平スリット11は、折曲部9b側の上方である押し込み部10の上端に形成され、折曲部9bと直交しながら、折曲部9bを対称軸として前面領域7及び後面領域7’のそれぞれに同一長さで延在する。なお、水平スリットは、押し込み部10の上端のみならず下端にも設けて、外装体3の下方も大きく変形するように構成してもよい。一対の山折り線12,12’は、折曲部9bを対称軸として左右対称に構成され、外側に緩やかに湾曲しながら、水平スリット11の端部寄りの位置から折曲部9bの下端まで延在する。谷折り線13は、折曲部9bと直交しながら、前面側の山折り線12のほぼ中央から後面側の山折り線12’のほぼ中央まで水平に延在する。
【0022】
次に、本実施形態に係る複合容器1の使用方法とその作用について説明することとする。
【0023】
先ず、開封用切欠部5を使って軟質包装袋2の上端部分を切り取って開封する。次に、一対の折曲部9a,9bに親指とそれ以外の4本の指をそえて把持しながら、押し込み部10のある折曲部9bを所定の位置まで内側に押し込むと、押し込み部10は、折曲部9bを中心軸として展開し、図4に示すように、外装体3は、折曲部9bに向かうに従って大きく広がるように前後両面を膨出させ、その膨出状態を維持する。なお、水平スリット11により、押し込み部10とその上部とが分離されているため、押し込み部10を深く押し込むことが可能であり、また、押し込み部10を変形させた場合には、押し込んだ状態を解除することなくそのままの状態を維持することも可能である。外装体3の膨出に伴って、軟質包装袋2も変形し、右側周縁に向かうに従って大きく開口した状態を維持する。
【0024】
上記外装体3の変形が完了すれば、使用者は、内容物6を取り出す際に、指で軟質包装袋2を押して開口させる必要がなく、通常は、大きく開口した軟質包装袋2の上部右側に指を差し入れてスティック状の内容物6を取り出せばよい。外装体3は、軟質包装袋2の上記開口状態を常に維持するので、内容物6の量が少なくなった時には、複合容器1を傾けて、膨出している右側の領域に内容物6を寄せ集めてから取り出せばよい。このように、本実施形態に係る複合容器1では、内容物の量の多少に関係なく、内容物6が取り出し易い状態を常時確保することができる。なお、内容物が粉末や球形状等である場合は、複合容器1を傾けて軟質包装袋2の開口部を通過させることになるが、この際、軟質包装袋2の上部右側が大きく開口して内容物の通過を阻害すことがないので、内容物の量を調節しながらスムーズに容器等へ移し替えることが可能である。
【0025】
本実施形態によれば、外装体3の変形に必要な押し込み領域は、側端の一方のみに形成されるので、軟質包装袋2が細長く構成されていても、押し込み領域8を設けることが可能であり、多種多様な複合容器1を製造することが可能である。
【0026】
図5は、本発明の第2実施形態に係る複合容器1を示している。本実施形態に係る複合容器1は、外装体3の構成が異なる点を除けば、上記第1実施形態と同様であるため、同一部分については同一の参照符号を付して説明を省略することとする。
【0027】
図6は、本実施形態に係る複合容器1を構成する外装体3を展開した状態を示している。外装体3は、長辺のうち波状に構成された辺を上に、短辺を左右に向けて配置した板紙からなる。外装体3に使用される板紙は、図6に示すように、一方の側端で連結された前面領域7及び後面領域7’と、前面領域7の他方の側端に連結された縦長台形状の糊代フラップ8とに区画されるような形状で断裁、打ち抜き等される。
【0028】
外装体3は、軟質包装袋2の前後両面の上端側を除く外面を覆い、押し込み部10とを有する。
【0029】
押し込み部10は、外側に緩やかに湾曲したリーフ状の領域を規定し、一対の山折り線12,12’と、上方谷折り線13aと、下方谷折り線13bとを有する。一対の山折り線12,12’は、折曲部9bを対称軸として左右対称に構成され、外側に緩やかに湾曲しながら、折曲部9bの上端から折曲部9bの下端寄りの外装体3の下縁まで延在する。上方谷折り線13aは、折曲部9bと直交しながら、前面側の山折り線12の上方から後面側の山折り線12’の上方まで水平に延在する。下方谷折り線13bは、上方谷折り線13aの下方で折曲部9bと直交しながら、前面側の山折り線12のほぼ中央から後面側の山折り線12’のほぼ中央まで水平に延在する。
【0030】
第2実施形態に係る複合容器1については、外装体3で覆う領域が軟質包装袋2の下端まで延在しているため、押し込み部10を押し込んで外装体3を変形させると自立可能な構成となり、テーブル等に載置することができる。このような自立機能を除けば、使用方法及びその作用は、上記第1実施形態と同様であるため、これらについての説明は省略することとする。
【0031】
本発明に係る複合容器1については、外装体3で軟質包装袋2を覆う領域は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、外装体3で覆う領域を軟質包装袋2の上下両端まで延伸させ、軟質包装袋2外周面全体を外装体3で覆うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 複合容器
2 軟質包装袋
3 外装体
4 周縁シール部
5 開封用切欠部
6 内容物
7 前面領域
7’ 後面領域
8 糊代フラップ
9a,9b 折曲部
10 押し込み部
11 水平スリット
12,12’ 山折り線
13 谷折り線
13a 上方谷折り線
13b 下方谷折り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質包装袋と、該軟質包装袋の左右両側端に沿って延在するように板紙に設けた一対の折曲部で折り曲げて当該軟質包装袋に固定され、前記軟質包装袋の前後両面の外周の少なくとも一部を覆う外装体とを備える複合容器において、
前記折曲部のいずれか一方に沿う押し込み部を前記外装体の前後両面に渡って設けたことを特徴とする、複合容器。
【請求項2】
前記押し込み部は、
前記折曲部のいずれか一方を対称軸として左右対称に構成され、前記外装体の上方から下方まで延在する一対の山折り部と、
前記折曲部のいずれか一方と交差しながら、該一対の山折り部の間を延在する谷折り部とを有することを特徴とする、請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記押し込み部の少なくとも上端に、水平スリットを設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合容器。
【請求項4】
前記外装体は、前記軟質包装袋の下端まで延在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合容器。
【請求項5】
前記押し込み部は、前記外装体の上方に前記折曲部のいずれか一方と交差しながら、前記一対の山折り部の間を延在する2本の谷折り線を有することを特徴とする、請求項4に記載の複合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−188130(P2012−188130A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51820(P2011−51820)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】