説明

複合式動力電池モジュール

【課題】安価で高率放電特性に優れる上、小型で安全性が高い複合式動力電池モジュールを提供する。
【解決手段】複合式動力電池モジュールは、リチウム鉄電池パック及びリチウムマンガン電池パックを備える。リチウム鉄電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウム鉄電池10を有する。リチウムマンガン電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウムマンガン電池20を有する。リチウム鉄電池パックとリチウムマンガン電池パックとは、電気的に並列接続される。リチウムマンガン電池20の負極は、チタン酸リチウムからなる。リチウムマンガン電池20の負極は、黒鉛からなる。黒鉛は天然黒鉛又は人工黒鉛である。リチウム鉄電池10の正極は、リン酸鉄リチウムからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関し、特に、エンジンに用いる複合式動力電池モジュール関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池(lead acid battery)は、自動車、自動二輪車などの車両用動力電池として長期に亘り用いられてきており、起電力が高く、使用温度範囲が広く、構造が簡素であり、技術成熟度が高く、安価であるなどの長所を有するが、体積が大きかったり、重量が重く持ち運びに便利でなかったり、電圧降下が大きかったり、鉛を含んで環境を汚染させるなどの欠点を有する。
【0003】
上述の欠点を改善するため、鉛蓄電池の代わりに、リン酸鉄リチウムイオン電池(lithium iron phosphate battery)を車両用の電池モジュールとして用いるものがある。このリン酸鉄リチウムイオン電池は、高率放電特性に優れ、小型かつ軽量であり、電気容量が大きい長所を有するため、現在のところ最も安全な電池であるが、製造が困難であり、焼結工程における収率が低いため、製造コスト及び販売価格が高くなり、一般消費者にとって理想的でなかった。
【0004】
上述の問題に鑑み、リン酸鉄リチウムイオン電池の代わりに、リチウムマンガン電池(lithium manganese battery)を用いるものがある。マンガンは、資源が豊富である上、安価であるため、リチウムマンガン電池は、リン酸鉄リチウムイオン電池より製造が容易であり、リン酸鉄リチウムイオン電池より充電速度が速くて価格が安い上に、リン酸鉄リチウムイオン電池と同様に、高率放電特性に優れ、電気容量が大きく、小型かつ軽量であるなどの長所を有する。しかし、リチウムマンガン電池は、深い充放電の繰り返しにより、材料の結晶格子に歪みが発生し(特に高温の条件下で歪みが発生し易い)、マンガンと酸素との結晶構造が破壊されることにより酸素が放出され、爆発したり、高温下でマンガン酸リチウムの結晶がゆっくりと電解液に溶解したりする虞があるため、安全性を高める必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、安価で高率放電特性に優れ、小型で安全性が高い複合式動力電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、リチウム鉄電池パック及びリチウムマンガン電池パックを備える複合式動力電池モジュールであって、前記リチウム鉄電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウム鉄電池を有し、前記リチウムマンガン電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウムマンガン電池を有し、前記リチウム鉄電池パックと前記リチウムマンガン電池パックとは、電気的に並列接続されることを特徴とする複合式動力電池モジュールが提供される。
【0007】
また、前記リチウムマンガン電池の負極は、チタン酸リチウムからなることが好ましい。
【0008】
また、前記リチウムマンガン電池の負極は、黒鉛からなることが好ましい。
【0009】
また、前記黒鉛は天然黒鉛であることが好ましい。
【0010】
また、前記黒鉛は人工黒鉛であることが好ましい。
【0011】
また、前記リチウム鉄電池の正極は、リン酸鉄リチウムからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合式動力電池モジュールは、鉛蓄電池パックの代わりに、リチウム鉄電池パック(lithium iron battery pack)とリチウムマンガン電池パック(lithium manganese battery pack)とを並列接続させて用いることにより、高率放電特性に優れ、電気容量が大きく、小型かつ軽量である上、1つのリチウム鉄電池パックよりも製造コストが安く、1つのリチウムマンガン電池パックよりも安全性が高いという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による複合式動力電池モジュールの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態による複合式動力電池モジュールは、従来の車両用エンジン、一般の大型予備発電機のエンジン、無停電電源装置(UPS)などと組み合わせて用いたり、次世代の電気自動車のエンジンとして用いたりする。図1を参照する。図1に示すように、本発明の一実施形態による複合式動力電池モジュールは、少なくともリチウム鉄電池パック及びリチウムマンガン電池パックから構成される。リチウム鉄電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウム鉄電池10を有する。リチウムマンガン電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウムマンガン電池20を有する。リチウム鉄電池パックとリチウムマンガン電池パックとは、電気的に並列接続される。本発明によるリチウム鉄電池10及びリチウムマンガン電池20の数は、図1に示す実施形態に限定されるわけではない。
【0015】
さらに詳しく述べると、リチウム鉄電池パックの正極は、リチウム鉄化合物(lithium iron compound)からなる。このリチウム鉄化合物は、好ましくは、リン酸鉄リチウムである。リチウムマンガン電池パックの正極は、リチウムマンガン化合物(lithium manganese compound)からなる。このリチウムマンガン電池パックの負極は、チタン酸リチウム又は黒鉛からなり、好ましくは、チタン酸リチウムからなる。黒鉛は、天然黒鉛又は人工黒鉛でもよい。
【0016】
さらに詳しく述べると、本発明の一実施形態による複合式動力電池モジュールは、鉛蓄電池パックの代わりに、リチウム鉄電池パックとリチウムマンガン電池パックとを並列接続させて用いることにより、高率放電特性に優れ、電気容量が大きく、小型かつ軽量であるなどの長所を有するため、鉛蓄電池パックより性能が優れている。
【0017】
また、鉛蓄電池パックの代わりに、1つのリチウム鉄電池パックを用いると、安全性を高めることができるが、リチウム鉄電池の製造が容易でないため、コストが非常に高い。鉛蓄電池パックの代わりに、1つのリチウムマンガン電池パックを用いた場合、リチウム鉄電池より製造コストが少なく、リチウム鉄電池と同様の特性を備えてリチウム鉄電池より充電速度が速いが、リチウム鉄電池より安全性が大幅に劣る。そのため、本発明の一実施形態による複合式動力電池モジュールは、鉛蓄電池パック、1つのリチウム鉄電池パック又は1つのリチウムマンガン電池パックを用いる代わりに、リチウム鉄電池パックとリチウムマンガン電池パックとを並列接続して組み合わせた折衷方式を採用する。本実施形態の複合式動力電池モジュールは、高率放電特性に優れ、電気容量が大きく、小型かつ軽量であるなど、1つのリチウム鉄電池パック及び1つのリチウムマンガン電池パックの長所を有する上、1つのリチウム鉄電池パックより製造コストが安く、1つのリチウムマンガン電池パックより安全性が高いという長所を有する。そのため、本発明の複合式動力電池モジュールは、高性能で、安全性が高く、安価な動力電池モジュールを求める消費者のニーズを満たすことができるため、市場における競争力が高い。
【0018】
また、一般に、動力電池モジュールに接続された電子機器には、一定の電圧が必要であるが、従来の鉛蓄電池パックは、電圧降下が大きいため電圧機器の電圧不足が発生し易い。しかし、本発明の一実施形態による複合式動力電池モジュールのリチウムマンガン電池パックは、負極材料としてチタン酸リチウムが用いられているため、電圧降下の幅が小さくなり、電気機器に電圧不足が発生することを防ぐことができるため、鉛蓄電池パックのように大きな電圧降下が発生することがない。
【0019】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0020】
10 リチウム鉄電池
20 リチウムマンガン電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム鉄電池パック及びリチウムマンガン電池パックを備える複合式動力電池モジュールであって、
前記リチウム鉄電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウム鉄電池を有し、
前記リチウムマンガン電池パックは、互いに電気的に直列接続され、正極及び負極を含んだ少なくとも1つのリチウムマンガン電池を有し、
前記リチウム鉄電池パックと前記リチウムマンガン電池パックとは、電気的に並列接続されることを特徴とする複合式動力電池モジュール。
【請求項2】
前記リチウムマンガン電池の負極は、チタン酸リチウムからなることを特徴とする請求項1に記載の複合式動力電池モジュール。
【請求項3】
前記リチウムマンガン電池の負極は、黒鉛からなることを特徴とする請求項1に記載の複合式動力電池モジュール。
【請求項4】
前記黒鉛は天然黒鉛であることを特徴とする請求項3に記載の複合式動力電池モジュール。
【請求項5】
前記黒鉛は人工黒鉛であることを特徴とする請求項3に記載の複合式動力電池モジュール。
【請求項6】
前記リチウム鉄電池の正極は、リン酸鉄リチウムからなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の複合式動力電池モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2013−54903(P2013−54903A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192235(P2011−192235)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(503010944)動能科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】