説明

複合操作型入力装置

【課題】装置本体の外形を大きくすることなく、回転操作時におけるトルクを大きくすること。
【解決手段】外部開口を有するハウジングと、外部開口から露出し回転操作とスライド操作を受け付ける操作軸6と、操作軸体6の回転移動を検出する回転検出手段と、操作軸6のスライド移動を検出するスライド検出手段とを備えた複合操作型入力装置1であって、ハウジングを上部空間USと下部空間DSとに区分けすると共に内部開口を有する中間部材4を設け、上部空間USにスライド検出手段を配設する一方、下部空間DSに回転検出手段を構成する第2回転部材13と、第2回転部材13を弾性付勢する板ばね15と、操作軸6のスライド移動を許容しながらその回転移動を第2回転部材13に伝達する伝達機構とを配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合操作型入力装置に関し、特に、電子機器等の各種制御に用いられる複合操作型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内にスライド移動可能に収納した可動基板に回転型電気部品を実装し、回転型電気部品を構成する操作軸体に対する回転操作及びスライド操作を検出する複合操作型入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この複合操作型入力装置においては、可動基板の天面側に配設された回転検出手段で操作軸体に対する回転操作を検出する一方、可動基板の底面側に配設されたスライド検出手段で操作軸体に対するスライド操作を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−176711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の複合操作型入力装置においては、回転型電気部品が実装された可動基板がスライド移動することから、ハウジング内に可動基板のスライド移動用のスペースを確保する必要がある。このため、回転型電気部品の外形を大きくすることができず、回転操作時におけるトルクを大きくすることが困難であるという問題がある。一方、回転型電気部品の外形を大きくして回転操作時におけるトルクを大きくすることが考えられるが、この場合には、回転型電気部品が実装される可動基板の外形も大きくなり、そのスライド移動用のスペースを確保する必要がある。このため、ハウジングの外形が大きくなり、複合操作型入力装置の外形が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、装置本体の外形を大きくすることなく、回転操作時におけるトルクを大きくすることができる複合操作型入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合操作型入力装置は、外部開口を有するハウジングと、前記外部開口から露出し回転操作とスライド操作を受け付ける操作軸体と、前記操作軸体の回転移動を検出する回転検出手段と、前記操作軸体のスライド移動を検出するスライド検出手段とを備えた複合操作型入力装置であって、前記ハウジングを前記外部開口に臨む第1空間と第2空間とに区分けすると共に内部開口を有する中間部材を設け、前記第1空間に前記スライド検出手段を配設する一方、前記第2空間に前記回転検出手段を構成する回転体と、当該回転体を弾性付勢する付勢部材と、前記操作軸体のスライド移動を許容しながら当該操作軸体の回転移動を前記回転体に伝達する伝達機構とを配設したことを特徴とする。
【0007】
上記複合操作型入力装置によれば、第1空間にスライド検出手段が配設される一方、第2空間に回転検出手段が配設されることから、スライド検出手段と回転検出手段とを積層構造とすることができるので、ハウジングの寸法が大きくなるのを抑制することができる。一方、伝達機構により操作軸体のスライド移動を許容しながらその回転移動が回転体に伝達されることから、操作軸体のスライド移動に関わらず回転体をスライド移動しない構成とすることができるので、ハウジング内における回転体の寸法を大きくでき、付勢部材の弾性付勢により発生する回転操作時のトルクを大きくすることができる。この結果、装置本体の外形を大きくすることなく、回転操作時におけるトルクを大きくすることが可能となる。
【0008】
上記複合操作型入力装置において、前記伝達機構は、一面に第1伝達部が形成されると共に他面に前記第1伝達部と直交する第2伝達部が形成される伝達部材と、前記操作軸体と一体的に回転し、前記第1伝達部を一方向に案内する第1案内部が形成された第1回転部材と、前記回転体と一体的に回転し、前記第2伝達部を一方向に案内する第2案内部が形成された第2回転部材とを有することが好ましい。この場合には、操作軸体に加えられた回転力が、第1回転部材の第1案内部、第2回転部材の第2案内部に案内される、直交して設けられた第1伝達部及び第2伝達部を介して回転体に伝達されることから、伝達部材の移動により操作軸体のスライド移動を吸収しながら回転力を回転体に伝達できるので、操作軸体のスライド移動を許容しながら確実に回転移動を回転体に伝達することが可能となる。
【0009】
上記複合操作型入力装置においては、前記回転体で前記第2回転部材を構成することが好ましい。この場合には、回転体により第2回転部材が構成されることから、ハウジング内に収納される構成部材の点数を削減でき、操作軸体の軸線方向の小型化を図ることが可能となる。
【0010】
上記複合操作型入力装置において、前記回転体は、前記第2案内部が形成される面の外周部に複数の凹凸部が環状に形成されると共に、前記第2案内部が前記凹凸部の径方向内側に配置され、前記付勢部材は、前記凹凸部に係脱する係合部を有することが好ましい。この場合には、回転体の外周部に付勢部材の係合部が係脱する凹凸部が設けられることから、係合部の係脱によって発生するトルクを、回転体の限られた表面積の中でより大きくすることが可能となる。
【0011】
上記複合操作型入力装置において、前記第1回転部材には、前記操作軸体と一体的に回転する駆動体を軸線方向に移動可能とすると共に、周方向には係合して当該駆動体と一体的に回転可能とする非円形孔が設けられ、前記伝達部材及び回転体には、前記駆動体が通過可能な貫通孔が設けられ、当該貫通孔の内側に前記操作軸体の軸線方向の移動に伴って駆動されるプッシュスイッチが配設されていることが好ましい。この場合には、伝達部材及び回転体に駆動体が通過可能な貫通孔を設けたことから、操作軸体の軸線方向の移動に伴って動作されるプッシュスイッチを伝達部材や回転体を介在させることなく駆動できるので、安定してプッシュスイッチを動作させることが可能となる。
【0012】
上記複合操作型入力装置において、前記ハウジングは、前記第1空間を画成する第1ケースと、前記第2空間を画成する第2ケースを備え、前記第2ケースの中央部に前記中間部材側へ突出する筒状部を有し、前記回転体を回転可能に当該回転体の前記貫通孔に前記筒状部を挿通すると共に、前記筒状部の内側には、前記操作軸体の軸線方向へ移動可能に案内されるスイッチ駆動体が配設されており、このスイッチ駆動体は、前記駆動体よりも大きく形成されると共に、前記駆動体と前記プッシュスイッチとの間に設けられていることが好ましい。この場合には、第2ケースに設けた筒状部により、駆動部よりも大きく形成されたスイッチ駆動体を操作軸の軸線方向に案内するようにしたことから、操作軸体がスライド操作された状態でプッシュ操作された場合においても、確実にプッシュスイッチを動作させることが可能となる。
【0013】
上記複合操作型入力装置において、前記プッシュスイッチは、前記筒状部の内側に露出して設けられた固定接点と、この固定接点に接離可能に配設された可動接点とを有することが好ましい。この場合には、筒状部の内側に露出して設けられた固定接点と、この固定接点に接離可能に配設された可動接点とでプッシュスイッチが構成されるので、スイッチ駆動体の移動に伴って確実にプッシュスイッチを動作させることが可能となる。
【0014】
上記複合操作型入力装置において、前記第2伝達部は、凸部により構成されると共に、前記第2案内部は、前記回転体の径方向に延びる溝部からなり、前記回転検出手段は、前記回転体と、前記回転体における前記第2案内部の非形成面側に設けられた摺動子と、この摺動子が摺接する導電パターンとから構成されることが好ましい。この場合には、回転体に設けられた溝部に案内される第2伝達部が凸部により構成されることから、凸部が設けられる伝達部材自体の厚さ寸法を抑制することが可能となる。
【0015】
上記複合操作型入力装置において、前記中間部材は、板状部材からなり、前記スライド検出手段は、前記操作軸体のスライド移動に伴って互いに直交する方向へ移動可能な第1、第2スライド部材と、両スライド部材にそれぞれ設けられた摺動子と、これらの摺動子がそれぞれ摺動する前記板状部材に設けられた金属板からなる接点パターンとから構成されており、前記板状部材から前記接点パターンに繋がった端子が導出されていることが好ましい。この場合には、スライド検出手段を構成する接点パターンを中間部材に設け、この接点パターンに繋がる端子を中間部材から導出させたことから、スライド検出手段の構成を簡素化すると共に、スライド検出手段からの信号出力を確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1空間にスライド検出手段が配設される一方、第2空間に回転検出手段が配設されることから、スライド検出手段と回転検出手段を積層構造とすることができるので、ハウジングの寸法が大きくなるのを抑制することができる。一方、伝達機構により操作軸体のスライド移動を許容しながら回転移動が回転体に伝達されることから、操作軸体のスライド移動に関わらず回転体をスライド移動しない構成とすることができるので、ハウジング内における回転体の寸法を大きくでき、付勢部材の弾性付勢により発生する回転操作時のトルクを大きくすることができる。この結果、装置本体の外形を大きくすることなく、回転操作時におけるトルクを大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る複合操作型入力装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の外観を示す斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の断面図である。
【図5】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の組み立て途中の状態を示す斜視図である。
【図6】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の組み立て途中の状態を示す斜視図である。
【図7】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の伝達機構の構成を説明するための斜視図である。
【図8】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の第2回転部材と板ばねとの位置関係を説明するための斜視図である。
【図9】上記実施の形態に係る複合操作型入力装置の一対のスライド部材の動作を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る複合操作型入力装置(以下、単に「入力装置」という)は、例えば、カーオーディオ装置などにおける入力操作に用いられるものである。なお、本実施の形態に係る入力装置の用途については、これらに限定されるものではなく、任意の装置の入力操作に適用可能である。
【0019】
図1及び図2は、それぞれ本発明の一実施の形態に係る入力装置1の分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る入力装置1の外観を示す斜視図である。図4は、本実施の形態に係る入力装置1の断面図である。なお、図1においては、入力装置1を図3に示す上方側から見た分解斜視図を示し、図2においては、入力装置1を図3に示す下方側から見た分解斜視図を示している。以下においては、説明の便宜上、図1及び図2の上方側を入力装置1の上方側と呼び、同図の下方側を入力装置1の下方側と呼ぶものとする。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る入力装置1は、外部開口を有するハウジングを構成する上ケース2及び下ケース3を備え、これらの間に内部開口を有する中間部材4を配置することで内部に形成される上部空間及び下部空間内に各種の構成部材を収納して構成される。上ケース2及び下ケース3は、中間部材4を介して重ね合わせた状態において、上ケース2の上方側に配置される取付部材5が下ケース3にスナップ結合することにより一体化されている(図3参照)。
【0021】
上ケース2及び下ケース3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成される。上ケース2は、上部空間を画成するものであり、下方側に開口した箱形状を有し、その上面部21の中央に円形状を有する開口部22が形成されている。また、この上面部21の内壁面には、後述する係合ピン71fと係合して軸受け部材7の本体部71を初期位置に復帰させる凹部21aが形成されている。また、上ケース2は、平坦な板状の壁部からなる上面部21の4辺から下方側に延伸する側壁部23を有している。これらの側壁部23のうち、対向する一対の側壁部23aの下端部中央には、下方側に突出する係合片23bが設けられている。
【0022】
下ケース3は、下部空間を画成するものであり、上方側に開口した箱形状を有し、その底面部31の中央には円形状の開口部32が形成されると共に、この開口部32の周囲に僅かに上方側に突出する筒状部33が形成されている。底面部31における筒状部33の外側には、回転検出手段の一部を構成する金属板からなる導電パターン34が埋設され、これに接続された複数の外部出力端子34aが底面部31の一部から下方側に導出されている。また、下ケース3は、平坦な板状の壁部からなる底面部31の4辺から上方側に延伸する側壁部35を有している。これらの側壁部35のうち、対向する一対の側壁部35aの上端部中央には、上ケース2の係合片23bを収容する凹部35bが設けられている。また、隣接する側壁部35の間の角部には、取付部材5の開口部54aと係合する係合片35cが設けられている。下ケース3の角部には、後述する中間部材4の位置決め突起44を収容する位置決め孔36が形成されている。
【0023】
中間部材4は、絶縁性材料から成る板状部材で構成されており、その中央に矩形状の開口部41が設けられている。この開口部41の隣接する一対の辺の近傍には、スライド検出手段の一部を構成する金属板からなる接点パターン42a、42bが設けられ、これらに接続された複数の外部出力端子42cが中間部材4の端面43から下方側に導出されている。また、中間部材4の対向する一対の端面43aには、上ケース2の係合片23bを収容する凹部43bが設けられている。中間部材4の下面には、僅かに下方側に突出する位置決め突起44が設けられている。
【0024】
取付部材5は、例えば、ステンレス等の非磁性金属板材料で形成され、概して平板形状を有し、その中央に円形状の開口部51が形成された矩形状の上面部52を有する。この上面部52の対向する一対の側縁部には、下方側に垂下して一対の支持部53が設けられている。それぞれの支持部53の下端には、後述するウェハ17の下面側に折り曲げられる一対の支持片53aが設けられ、これらの支持片53aの中央に入力装置1が実装される基板に係合する係合片53bが設けられている。また、上面部52の角部には、下方側に垂下して4つの係合片54が設けられている。これらの係合片54の下端部近傍には、開口部54aが設けられている。これらの開口部54aは、下ケース3の係合片35cと係合可能に構成されている。
【0025】
このように構成される中間部材4が、位置決め突起44を位置決め孔36に挿入された状態で下ケース3上に配置されると共に、側壁部23aに設けられた係合片23bを、中間部材4の凹部43b及び下ケース3の凹部35bに収納されるように上ケース2が配置される。このように上ケース2、下ケース3及び中間部材4が配置されることで、上ケース2と中間部材4との間に第1空間としての上部空間USが形成され、下ケース3と中間部材4との間に第2空間としての下部空間DSが形成される(図4参照)。すなわち、中間部材4は、ハウジング内を上部空間USと下部空間DSとに区分けする役割を果たしている。以下、これらの上部空間US及び下部空間DSに収納される構成部材について説明する。
【0026】
上部空間USには、操作軸体を構成する操作軸6と、この操作軸6の下端部を回転可能に軸支する軸受け部材7と、スライド検出手段の一部を構成し、操作軸6の下端部に挿通される一対のスライド部材8a、8bと、軸受け部材7を介して操作軸6のスライド動作をガイドするガイド部材9とが収納される。なお、操作軸6は、上ケース2の開口部22から上方側にその上端の一部が突出すると共に、中間部材4の開口部41から下方側にその下端の一部が突出した状態で上部空間USに収納されている。
【0027】
操作軸6は、入力装置1に対する回転操作、スライド操作及びプッシュ操作を受け付ける。操作軸6は、例えば、ステンレス等の金属材料で構成され、概して丸棒形状を有している。操作軸6の上側部分には、上ケース2の開口部22から露出する大径部61が設けられ、その下側部分には、軸受け部材7に挿通される小径部62が設けられている。大径部61には、不図示の操作つまみが取付可能に平面部61aが設けられている。小径部62の下端部には、後述する駆動体11と連結される非円形状の連結部62aが設けられると共に、この連結部62aよりも僅かに上方側の部分に後述する抜け止め部材10が取り付けられる溝部62bが設けられている。
【0028】
軸受け部材7は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形される本体部71と、金属材料で構成される軸支部72とで構成されている。本体部71は、上面視にて矩形状を有する平面部71aと、この平面部71の中央に立設される筒状部71bとを有している。筒状部71bの内側には、軸支部72が圧入される貫通孔71cが設けられている。また、平面部71aの角部には、円形状の凹部71dが形成されている。これらの凹部71dには、コイルばね71eを介して係合ピン71fが挿通されている。これらの係合ピン71fは、その上端部が露出した状態で平面部71aに配置され、上ケース2の凹部21aと係合して本体部71を初期位置に復帰させる役割を果たす。なお、図1及び図2においては、便宜上、一部のコイルばね71e及び係合ピン71fを上ケース2の近傍に示している。
【0029】
軸支部72は、概して円筒形状を有しており、その下端部に鍔状部72aが設けられている。軸支部72は、本体部71に設けられた貫通孔71cに圧入され、本体部71と一体化される。軸支部72の中央には、操作軸6が挿通される挿通孔72bが設けられている。操作軸6は、貫通孔71cに圧入された軸支部72の挿通孔72bに回転可能、且つ、軸線方向(入力装置1の上下方向)に移動可能に支持される。なお、挿通孔72bに挿通された状態の操作軸6の溝部62bには、弾性材料にて環状に形成された抜け止め部材10が取り付けられ、操作軸6が軸受け部材7から上方側に抜けるのを防止されている。
【0030】
スライド部材8a、8bは、例えば、絶縁性の樹脂材料にて板状に構成され、上面視にて長方形状を有している。スライド部材8aは、スライド部材8bの上に互いの長辺が直交するように重ねられている。スライド部材8a、8bには、操作軸6の下端部が挿通される長方形状の長孔からなる開口部8c、8dが形成されている。また、スライド部材8a、8bの一端側の下面には、スライド検出手段の一部を構成する摺動子8e、8fが固着される。これらの摺動子8e、8fは、それぞれ中間部材4の接点パターン42a、42bに摺接可能にスライド部材8a、8bに固着されている。
【0031】
ガイド部材9は、例えば、金属製の板状部材で構成され、上面視にて長方形状を有している。ガイド部材9の中央には、軸受け部材7の筒状部71bが貫通可能な開口部91が設けられている。この開口部91は、筒状部71bのスライド移動を許容するために楕円形状を有している。ガイド部材9の短辺側の側縁部には、僅かに下方側に垂下して設けられたガイド壁部92が設けられている。これらのガイド壁部92は、上ケース2の側壁部23aの内壁面にクリアランスをもって対向可能に構成され、図1に示す矢印A−B方向へのスライド移動をガイドする。
【0032】
一方、下部空間DSには、操作軸6の連結部62aに連結される駆動体11と、この駆動体11を介して操作軸6に係合される第1回転部材12と、この第1回転部材12と共に回転する回転体としての第2回転部材13と、操作軸6のスライド移動を許容しながら第1回転部材12の回転力を第2回転部材13に伝達する伝達部材14と、第2回転部材13の上面部を弾性付勢可能に配置される付勢部材としての板ばね15と、駆動体11の下端部で押圧可能に配置されるスイッチ駆動体16とが収納される。
【0033】
駆動体11は、絶縁性の樹脂材料で成形され、概して有底の円筒形状を有している。駆動体11の上面には、非円形状の連結部62aに対応する形状を有する連結孔111が設けられている。また、駆動体11の下端部近傍の外周には、側方に突出する複数(本実施の形態では4つ)のリブ112が等間隔に設けられている。駆動体11の下面には、スイッチ駆動体16の上面を押圧する押圧部113が設けられている。
【0034】
第1回転部材12は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、概して円盤形状を有する円盤形状部121と、この円盤形状部121の中央に設けられる筒状部122とを有している。筒状部122の内側には、駆動体11を操作軸6の軸線方向に移動可能に配置される挿通孔123が設けられている。この筒状部122の内壁面には、駆動体11のリブ112が係合可能な複数の凹部124が設けられている。これらの凹部124により第1回転部材12は、駆動体11と一体的に回転可能に構成されている。なお、挿通孔123は、凹部124と共に非円形孔を構成する。また、円盤形状部121の下面には、一方向に延在する溝部125が設けられている。この溝部125は、後述する伝達部材14の凸部142を収容し、これを一方向に案内する第1案内部を構成する。
【0035】
第2回転部材13は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、概して円盤形状を有している。第2回転部材13の中央には、駆動体11が通過可能な円形状の開口部131が設けられている。また、第2回転部材13の上面の外縁部には、複数の凹凸部132が環状に設けられている。この凹凸部132の内周側には、一方向に延在する溝部133が設けられている。溝部133は、後述する伝達部材14の凸部143を収容し、これを一方向に案内する第2案内部を構成する。なお、この溝部133は、第1回転部材12の溝部125と直交する方向に延在して設けられている。
【0036】
また、第2回転部材13の下面には、回転検出手段の一部を構成する摺動部材134が設けられている。この摺動部材134は、導電性を有する金属材料によって概して環状に設けられており、その外縁部に複数の摺動子134aが設けられている。摺動部材134は、第2回転部材13の下面に設けられた複数の突起135を、摺動子134aの近傍に形成した孔134bに挿通後、変形させることにより固定されている。この場合において、摺動部材134は、摺動子134aが下ケース3の導電パターン34に摺接可能な位置に配置されるように第2回転部材13に固定される。
【0037】
伝達部材14は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、環状に設けられた基部141と、この基部141の上面に設けられた第1伝達部としての凸部142と、基部141の下面に設けられた第2伝達部としての凸部143とを有している。基部141における内部開口は、駆動体11が通過可能な寸法に設けられている。凸部142は、第1回転部材12の溝部125に対応する直線上に一対設けられている。凸部143は、第2回転部材13の溝部133に対応する直線上に一対設けられている。下部空間DSに伝達部材14が収納された状態で、一対の凸部142が配置される直線と、一対の凸部143が配置される直線とは直交して配置されている。また、基部141の上面には、第1回転部材12の下面との摩擦を低減するための複数の突起144が設けられている。基部141の下面には、第2回転部材13の上面との摩擦を低減するための複数の突起145が設けられている。
【0038】
板ばね15は、弾性を有する金属板材で形成され、環状に設けられている。板ばね15は、下ケース3の一対の角部(係合片35cが設けられた角部)に対応する位置に一対の平板部151が設けられている。これらの平面部151の側端部には、僅かに下方側に折り曲げられた一対の付勢片152、153が設けられている、これらの付勢片152、153は、第2回転部材13の凹凸部132に対応する位置に配置され、これらの下端部近傍により凹凸部132が弾性付勢されている。一方の付勢片152の中央には、下方側に突出する係合部152aが設けられている。この係合部152aは、第2回転部材13の回転に伴って凹凸部132に係脱可能に構成されている。他方の付勢片153には、突出した係合部は設けられておらず、付勢片153の板状をなした中央部分が、凹凸部132の対応する凸部を弾性付勢するように当接している。これにより、第2回転部材13の回転時の動作が安定すると共に、回転操作時のトルクが高められるものとなっている。また、それぞれの平板部151には、その外周縁から垂下して設けられた固定片154が設けられている。これらの固定片154には、開口部154aが形成され、下ケース3の係合片35cを収容可能に構成されている。
【0039】
スイッチ駆動体16は、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成され、概して円盤形状を有している。スイッチ駆動体16は、下ケース3の筒状部33内に収容され、後述する弾性部材19の上方に載置されている。スイッチ駆動体16は、駆動体11の押圧部113の下方に配置され、操作軸6の上下移動に伴って押圧を受ける上面部161を有している。この上面部161は、操作軸6がスライド移動した状態で押圧を受けられるように、押圧部113よりも十分に大きな面積を有している。上面部161の周面からは、筒状部33の内面に形成された不図示の凹部と係合して、スイッチ駆動体16を操作軸6の軸線方向に案内可能な突出片162が設けられている。
【0040】
なお、下ケース3の下面には、平板形状を有し、下ケース3の外形に対応する矩形状に設けられるウェハ17が積層して取り付けられる。ウェハ17には、下ケース3の下面に形成された位置決め孔37に挿通される位置決め突起17aが設けられている。ウェハ17の上面中央には、金属板からなる固定接点18aと、この固定接点18aに接離可能に設けられた弾性を有する金属板からなる可動接点18bとで構成されるプッシュスイッチ18が実装されている。このプッシュスイッチ18は、プッシュ操作に伴う操作軸6の上下移動に応じてオン/オフされる。なお、ウェハ17を下ケース3と一体に構成して、下ケース3にプッシュスイッチ18の固定接点18aを形成してもよい。
【0041】
プッシュスイッチ18の上方には、例えば、ゴム等の弾性材料で成形され、概してドーム形状を有する弾性部材19が配置されている。弾性部材19は、スイッチ駆動体16とプッシュスイッチ18との間に介在して配置され、スイッチ駆動体16を下方側から支持する。弾性部材19は、操作軸6に対するプッシュ操作に伴って反転して可動接点18bを固定接点18a側に押圧する一方、プッシュ操作の解除に伴って復帰して操作軸6を初期状態(非プッシュ状態)に復帰させる役割を果たす。
【0042】
このような構成を有する入力装置1を組み立てると、図3に示すように、下面にウェハ17が取り付けられた下ケース3の上方に中間部材4が配置されると共に、この中間部材4の上方に上ケース2が配置された状態で上方側から取付部材5が被せられて入力装置1が一体化されている。この場合、取付部材5は、係合片54の開口部54aで下ケース3の係合片35cを収容すると共に、支持部53の支持片53aがウェハ17の下面側に折り曲げられることで下ケース3等に固定されている。なお、操作軸6は、その大径部61を取付部材5の開口部51から突出させた状態で配置されている。
【0043】
入力装置1の内部においては、図4に示すように、中間部材4により区分けされた下部空間DSと、上部空間USとに上述した構成部材が収納されている。下部空間DSにおいては、下ケース3の筒状部33の内側にスイッチ駆動体16が配設される一方、その外側に第2回転部材13が配設されている。この場合、第2回転部材13の下面に取り付けられた摺動部材134は、その摺動子134aが導電パターン34に摺接可能に配置される。また、第2回転部材13の外周面は、下ケース3の側壁部35の内壁面近傍に配置されている。スイッチ駆動体16の下方には、弾性部材19を介してプッシュスイッチ18が対向して配設されている。第2回転部材13の上方には伝達部材14が配置され、伝達部材14の上方には第1回転部材12が配置されている。第1回転部材12の内側には、駆動体11が配置されており、スイッチ駆動体16の上面部161に載置されている。板ばね15は、その付勢片152、153が第2回転部材13の凹凸部132に弾接可能に配置されている。なお、プッシュスイッチ18は、平面視(上面視)した場合に、伝達部材14の中央に設けられた貫通孔と第2回転部材13の貫通孔からなる開口部131の内側に配設されるものとなっている。
【0044】
一方、上部空間USにおいては、直交して配置されたスライド部材8a、8bが、中間部材4の上方に配置されている。この場合、スライド部材8a、8bの下面に固着された摺動子8e、8fは、中間部材4の接点パターン42a、42bに摺接可能に配置される。これらのスライド部材8a、8bの上方に軸受け部材7が配置されている。軸受け部材7の本体部71の外周部は、操作軸6と共にスライド移動可能とするため、上ケース2の側壁部23の内壁面よりも小さい寸法に設計されている。操作軸6は、軸受け部材7の軸支部72により小径部62で回転可能に支持されている。操作軸6の連結部62aは、駆動体11の連結孔111に挿入(圧入)されている。なお、駆動体11を操作軸6の先端部に一体に設けて、操作軸6と駆動体11とを一部材で構成してもよい。
【0045】
次に、本実施の形態に係る入力装置1を組み立てる際の工程について図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6は、本実施の形態に係る入力装置1の組み立て途中の状態を示す斜視図である。図5においては、第2回転部材13を含む各構成部材が収納された状態の下ケース3を示している。図6においては、操作軸6を含む各構成部材が収納された状態の上ケース2の内部を示している。なお、図6においては、説明の便宜上、上ケース2を省略し、入力装置1の上方側から見た場合の斜視図(同図(a))と、入力装置1の下方側から見た場合の斜視図(同図(b))とを示している。また、図6においては、説明の便宜上、外部出力端子42cを省略し、中間部材4や第1回転部材12等を図示している。
【0046】
本実施の形態に係る入力装置1を組み立てる際には、図5に示すように、下面にウェハ17が取り付けられた状態の下ケース3の筒状部33内に弾性部材19、スイッチ駆動体16を収納すると共に、筒状部33の外周側に第2回転部材13を配置する。そして、第2回転部材13の溝部133に凸部143が収容されるように伝達部材14を配置すると共に、第2回転部材13の凹凸部132を付勢片152、153が弾性付勢するように板ばね15を下ケース3に固定する。この場合、板ばね15は、固定片154の開口部154aで下ケース3の角部に設けられた係合片35cを収容することで固定される。
【0047】
一方、図6に示すように、軸受け部材7に上方側から操作軸6を挿通する。そして、スライド部材8a、8bを所定位置に配置した中間部材4の開口部41を操作軸6の下端部(連結部62a)が挿通するように、軸受け部材7を中間部材4の上面に配置する。この場合、スライド部材8a、8bは、摺動子8e、8fがそれぞれ接点パターン42a、42bに対向するように配置される。さらに、駆動体11を第1回転部材12の挿通孔123に配置する。この場合、駆動体11は、その複数のリブ112が、挿通孔123の内壁面に設けられた凹部124と係合するように配置される。そして、開口部41を介して露出する連結部62aが、駆動体11の連結孔111に圧入状態で挿通するように第1回転部材12を中間部材4の下面に配置する。
【0048】
そして、第1回転部材12の溝部125が、伝達部材14の凸部142を収容するように、図6に示す状態の構成部材を図5に示す構成部材の上方側から取り付ける。この場合、中間部材4の位置決め突起44が下ケース3の位置決め孔36に挿通されるように、図5に示す状態の構成部材に取り付けられる。そして、操作軸6の大径部61が開口部22を貫通するように、図6に示す構成部材の上方側から上ケース2を被せる。この場合、上ケース2は、係合片23bが中間部材4の凹部43bを介して下ケース3の凹部35bに係合するように配置される。最後に、上ケース2の上方側から取付部材5を取り付ける。この場合、取付部材5は、下ケース3の係合片35cを係合片54の開口部54aに収容すると共に、支持部53の支持片53aをウェハ17の下面側に折り曲げることで取り付けられる。このようにして入力装置1の組立工程が完了する。
【0049】
なお、図5及び図6で示した入力装置1の組立工程については、一例を示したものであり、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。図4に示すように、上部空間US及び下部空間DSに入力装置1の各構成部材を収納し、下ケース3の下面にウェハ17を積層すると共に取付部材5で一体化した状態とすることができれば、どのような組立工程を採用しても良い。
【0050】
次に、本実施の形態に係る入力装置1の操作軸6に対して回転操作、スライド操作及びプッシュ操作が行われた場合の動作について図4を参照しながら説明する。なお、以下においては、操作軸6に対して回転操作、スライド操作及びプッシュ操作が独立して行われる場合について説明するが、本実施の形態に係る入力装置1においては、2つ以上の操作が組み合わせて行われる場合にも対応可能である。例えば、スライド操作しながら回転操作を行う場合などに対応可能に構成されている。
【0051】
操作軸6に対して回転操作が行われると、これに伴って非円形状を有する連結部62aを介して連結された駆動体11が回転する。そして、駆動体11が回転すると、駆動体11の外周に設けられたリブ112が筒状部122の内壁面に設けられた凹部124に係合して第1回転部材12も回転する。第1回転部材12に加わった回転力は、この第1回転部材12、第2回転部材13の一部及び伝達部材14から成る伝達機構により第2回転部材13に伝達される。第2回転部材13が回転すると、その下面に固着された摺動部材134の摺動子134aが導電パターン34上を摺動する。本実施の形態に係る入力装置1においては、導電パターン34上における摺動子134aの位置に応じて出力される信号に応じて操作軸6に対する回転操作(回転操作量及び回転操作方向)が検出される。
【0052】
ここで、本実施の形態に係る入力装置1が有する伝達機構の構成について説明する。図7は、本実施の形態に係る入力装置1の伝達機構の構成を説明するための斜視図である。図7(a)においては、伝達機構を構成する第1回転部材12、第2回転部材13及び伝達部材14を上方側から示し、同図(b)においては、第1回転部材12、第2回転部材13及び伝達部材14を下方側から示している。
【0053】
本実施の形態に係る入力装置1が有する伝達機構は、第1回転部材12の下面に設けられた溝部125と、第2回転部材13の上面に設けられた溝部133と、それぞれ溝部125及び溝部133に収容される凸部142及び凸部143を有する伝達部材14とで構成される。図7(a)に示すように、伝達部材14の基部141において、一対の凸部142を通過する直線Aと一対の凸部143を通過する直線Bとは、直交する位置関係に配置されている。これらの凸部142及び凸部143をそれぞれ収容する溝部125及び溝部133についても同様である。
【0054】
このように構成される凸部142及び凸部143が溝部125及び溝部133に収容された状態で第1回転部材12に回転力が加わると、伝達部材14は、その回転力を凸部142で受けると共に、凸部143で第2回転部材13に伝達しながら回転する。第2回転部材13は、凸部143を介して伝達された回転力を溝部133で受けて回転する。この場合、第1回転部材12の回転中心と、第2回転部材13の回転中心がずれている場合においても、伝達部材14がその位置をスライド移動しながら回転力を伝達することができるものとなっている。すなわち、第1回転部材12と第2回転部材13とは伝達部材14を介してオルダム結合されており、第1回転部材12のスライド移動を許容しながら、その回転力を第2回転部材13に伝達することができるものとなっている。特に、本実施の形態に係る入力装置1においては、第2回転部材13の一部で伝達機構を構成していることから、ハウジング内に収納される構成部材の点数を削減でき、操作軸6の軸線方向の小型化を図ることが可能となる。
【0055】
このようにオルダム結合された伝達機構を介して回転力の伝達を受ける第2回転部材13は、その回転中心を移動することなく回転することが可能となっている。図8に示すように、板ばね15の付勢片152、153は、このように回転する第2回転部材13の上面の外周部に設けられた凹凸部132を弾性付勢する。このため、板ばね15の付勢片152、153の弾性付勢(特に、係合部152aの凹凸部132との係脱)によって発生するトルクを、第2回転部材13の限られた表面積の中で最大限大きくすることが可能となる。
【0056】
また、この伝達機構においては、第1回転部材12及び第2回転部材13にそれぞれ設けられた溝部125及び溝部133に案内される凸部142、143を伝達部として設けていることから、伝達部材14を構成する基部141自体の厚さ寸法を抑制することができるものとなっている。
【0057】
操作軸6に対してスライド操作が行われると、これに伴って操作軸6を操作軸6(より具体的には、操作軸6に連結された駆動体11)に開口部8c、8dを挿通されたスライド部材8a、8bが上ケース2の内部においてスライド移動する。ここで、操作軸6に対するスライド操作に応じたスライド部材8a、8bの動作について図9を用いて説明する。図9は、本実施の形態に係る入力装置1のスライド部材8a、8bの動作を説明するための斜視図である。なお、図9においては、説明の便宜上、上ケース2や軸受け部材7を省略している。
【0058】
操作軸6に対して図9に示すX方向にスライド操作が行われると、スライド部材8aがX方向に移動される。これに伴ってスライド部材8aの下面に固着された摺動子8eが中間部材4の接点パターン42a上を摺動する。本実施の形態に係る入力装置1においては、接点パターン42a上における摺動子8eの位置に応じて出力される信号に応じて操作軸6に対するX方向のスライド操作(スライド操作量)が検出される。同様に、図9に示すY方向にスライド操作が行われると、スライド部材8bの下面に固着された摺動子8fが中間部材4の接点パターン42b上を摺動する。本実施の形態に係る入力装置1においては、接点パターン42b上における摺動子8fの位置に応じて出力される信号に応じて操作軸6に対するY方向のスライド操作が検出される。
【0059】
また、図9に示すZ方向にスライド操作が行われると、スライド部材8a、8bの下面に固着された摺動子8e、8fがそれぞれ中間部材4の接点パターン42a、42b上を摺動する。本実施の形態に係る入力装置1においては、接点パターン42a、42b上における摺動子8e、8fの位置に応じて出力される信号に応じて操作軸6に対するZ方向のスライド操作が検出される。これらの場合において、スライド検出手段からの信号は、中間部材4に設けられた接点パターン42a、42bに接続された外部出力端子42cを介して出力されることから、スライド検出手段の構成を簡素化すると共に、スライド検出手段からの信号出力を確実に行うことができるものとなっている。
【0060】
なお、操作軸6がスライド移動すると、これに伴って第1回転部材12もスライド移動する。スライド方向によっては、伝達部材14もスライド移動することとなる。しかしながら、当該スライド移動は、上述した伝達機構により伝達部材14が溝部125及び溝部133に沿ったスライド移動に変換され、第2回転部材13がスライド移動することはない。すなわち、操作軸6のスライド移動に伴う水平方向の移動力は、伝達機構により吸収され、第2回転部材13に伝達されることはない。
【0061】
操作軸6に対してプッシュ操作が行われると、操作軸6は、軸受け部材7から独立して下方側に移動する。これに伴って駆動体11が下方側に移動してスイッチ駆動体16を押し下げる。一定位置以上にスイッチ駆動体16が押し下げられると、これを支持する弾性部材19が反転し、その下端部で可動接点18bが押し下げられて固定接点18aと接触する。固定接点18aと可動接点18bとが接触することにより、これらの間が導通され、プッシュスイッチ18がオン状態とされる。
【0062】
一方、プッシュ操作から解放されると、弾性部材19の弾性復帰力によりスイッチ駆動体16が押し上げられる。これにより、可動接点18bが固定接点18aから離間することでプッシュスイッチ18がオフ状態とされる。スイッチ駆動体16が押し上げられると、駆動体11及びこれに連結された操作軸6が押し上げられ、初期状態に復帰することとなる。このようにして操作軸6に対するプッシュ操作に応じてプッシュスイッチ18のオン、オフ状態が切り替えられる。
【0063】
本実施の形態に係る入力装置1においては、第2回転部材13及び伝達部材14に駆動体11が通過可能な開口部131等を設け、操作軸6の軸線方向の移動に伴って駆動体11を上下動可能にしたことから、第2回転部材13及び伝達部材14を介在させることなくプッシュスイッチ18を駆動することができるので、安定してプッシュスイッチを動作させることができるものとなっている。この場合において、駆動体11に押し下げられるスイッチ駆動体16が、駆動体11の押圧部113よりも大きく構成されていることから、操作軸6に対してスライド操作が同時に行われている場合においても、弾性部材19を押し下げることができ、プッシュスイッチ18のオン、オフ状態を切り替えることができるものとなっている。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態に係る入力装置1においては、上部空間USにスライド部材8a、8bを含むスライド検出手段を配設する一方、下部空間DSに第2回転部材13を含む回転検出手段を配設していることから、スライド検出手段と回転検出手段を積層構造とすることができるので、上ケース2及び下ケース3から成るハウジングの寸法が大きくなるのを抑制することができる。一方、第1回転部材12、第2回転部材13の一部及び伝達部材14で構成される伝達機構により操作軸6のスライド移動を許容しながらその回転移動を第2回転部材13に伝達するようにしたことから、操作軸6のスライド移動に関わらず第2回転部材13をスライド移動しない構成とすることができるので、ハウジング内における第2回転部材13の寸法を大きくでき、板ばね15の弾性付勢により発生する回転操作時のトルクを大きくすることができる。この結果、装置本体の外形を大きくすることなく、回転操作時におけるトルクを大きくすることが可能となる。
【0065】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0066】
例えば、上記実施の形態においては、操作軸6に対する回転操作に伴う回転力を第2回転部材13に伝達する伝達機構の一部を、第2回転部材13の一部(溝部133)で構成する場合について説明しているが、伝達機構の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、第2回転部材13と一体的に回転し、溝部133と共通する機能を有する回転部材を別途設けるようにしても良い。この場合においても、上記実施の形態と同様に、操作軸6のスライド移動を許容しながら確実に回転移動を第2回転部材13に伝達することが可能となる。
【0067】
また、上記実施の形態においては、操作軸6に対する回転操作に伴う回転力を第2回転部材13に伝達する伝達機構を、第1回転部材12の下面に設けられた溝部125と、第2回転部材13の上面に設けられた溝部133と、それぞれ溝部125及び溝部133に収容される凸部142及び凸部143を有する伝達部材14とで構成する場合について説明しているが、伝達機構の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、第1回転部材12及び第2回転部材13に設けられる溝部と、伝達部材14に設けられる凸部とを置換するようにしても良い。その他、第1回転部材12、第2回転部材13及び伝達部材14をオルダム結合できる任意の形状を採用することが可能である。
【0068】
また、上記実施の形態においては、第2回転部材13を弾性付勢する付勢部材としての板ばね15を下ケース3に取り付けて、付勢片152、153を第2回転部材13に弾接させたが、これに限定されるものではない。例えば、板ばねを第2回転部材13に取り付けて、板ばねの付勢片を中間部材4の下面に弾性的に押し当てることによって、第2回転部材13に当該板ばねによる弾性付勢力が作用するように構成することも可能である。
【0069】
また、操作軸6への回転操作時に、クリック感触を必要としない場合には、第2回転部材13に凹凸部132を設けない構成としてもよい。
【0070】
さらに、付勢部材は、板ばねに限定されず、例えば、ゴムやコイルばね等を利用したものであっても構わない。
【符号の説明】
【0071】
1 入力装置
2 上ケース
21 上面部
22 開口部
23、23a 側壁部
3 下ケース
31 底面部
32 開口部
33 筒状部
34 導電パターン
35 側壁部
4 中間部材
41 開口部
42a、42b 接点パターン
42c 外部出力端子
5 取付部材
51 開口部
52 上面部
53 支持部
54 係合片
6 操作軸
61 大径部
62 小径部
62a 連結部
7 軸受け部材
8a、8b スライド部材
8c、8d 開口部
8e、8f 摺動子
9 ガイド部材
10 抜け止め部材
11 駆動体
111 連結孔
112 リブ
113 押圧部
12 第1回転部材
121 円盤形状部
122 筒状部
123 挿通孔
124 凹部
125 溝部(第1案内部)
13 第2回転部材
131 開口部
132 凹凸部
133 溝部(第2案内部)
134 摺動部材
134a 摺動子
14 伝達部材
141 基部
142、143 凸部(伝達部)
15 板ばね
152、153 付勢片
152a 係合部
16 スイッチ駆動体
161 上面部
162 突出片
17 ウェハ
18 プッシュスイッチ
18a 固定接点
18b 可動接点
19 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部開口を有するハウジングと、前記外部開口から露出し回転操作とスライド操作を受け付ける操作軸体と、前記操作軸体の回転移動を検出する回転検出手段と、前記操作軸体のスライド移動を検出するスライド検出手段とを備えた複合操作型入力装置であって、
前記ハウジングを前記外部開口に臨む第1空間と第2空間とに区分けすると共に内部開口を有する中間部材を設け、前記第1空間に前記スライド検出手段を配設する一方、前記第2空間に前記回転検出手段を構成する回転体と、当該回転体を弾性付勢する付勢部材と、前記操作軸体のスライド移動を許容しながら当該操作軸体の回転移動を前記回転体に伝達する伝達機構とを配設したことを特徴とする複合操作型入力装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、一面に第1伝達部が形成されると共に他面に前記第1伝達部と直交する第2伝達部が形成される伝達部材と、前記操作軸体と一体的に回転し、前記第1伝達部を一方向に案内する第1案内部が形成された第1回転部材と、前記回転体と一体的に回転し、前記第2伝達部を一方向に案内する第2案内部が形成された第2回転部材とを有することを特徴とする請求項1記載の複合操作型入力装置。
【請求項3】
前記回転体で前記第2回転部材を構成したことを特徴とする請求項2記載の複合操作型入力装置。
【請求項4】
前記回転体は、前記第2案内部が形成される面の外周部に複数の凹凸部が環状に形成されると共に、前記第2案内部が前記凹凸部の径方向内側に配置され、前記付勢部材は、前記凹凸部に係脱する係合部を有することを特徴とする請求項3記載の複合操作型入力装置。
【請求項5】
前記第1回転部材には、前記操作軸体と一体的に回転する駆動体を軸線方向に移動可能とすると共に、周方向には係合して当該駆動体と一体的に回転可能とする非円形孔が設けられ、前記伝達部材及び回転体には、前記駆動体が通過可能な貫通孔が設けられ、当該貫通孔の内側に前記操作軸体の軸線方向の移動に伴って駆動されるプッシュスイッチが配設されていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の複合操作型入力装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記第1空間を画成する第1ケースと、前記第2空間を画成する第2ケースを備え、前記第2ケースの中央部に前記中間部材側へ突出する筒状部を有し、前記回転体を回転可能に当該回転体の前記貫通孔に前記筒状部を挿通すると共に、前記筒状部の内側には、前記操作軸体の軸線方向へ移動可能に案内されるスイッチ駆動体が配設されており、このスイッチ駆動体は、前記駆動体よりも大きく形成されると共に、前記駆動体と前記プッシュスイッチとの間に設けられていることを特徴とする請求項5記載の複合操作型入力装置。
【請求項7】
前記プッシュスイッチは、前記筒状部の内側に露出して設けられた固定接点と、この固定接点に接離可能に配設された可動接点とを有することを特徴とする請求項6記載の複合操作型入力装置。
【請求項8】
前記第2伝達部は、凸部により構成されると共に、前記第2案内部は、前記回転体の径方向に延びる溝部からなり、前記回転検出手段は、前記回転体と、前記回転体における前記第2案内部の非形成面側に設けられた摺動子と、この摺動子が摺接する導電パターンとから構成されることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれかに記載の複合操作型入力装置。
【請求項9】
前記中間部材は、板状部材からなり、前記スライド検出手段は、前記操作軸体のスライド移動に伴って互いに直交する方向へ移動可能な第1、第2スライド部材と、両スライド部材にそれぞれ設けられた摺動子と、これらの摺動子がそれぞれ摺動する前記板状部材に設けられた金属板からなる接点パターンとから構成されており、前記板状部材から前記接点パターンに繋がった端子が導出されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の複合操作型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−210525(P2011−210525A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76891(P2010−76891)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】