説明

複合操作型電気部品

【課題】平面視した場合の部品寸法の小型化を実現すると共に高精度に押圧操作体を移動可能とし、更にプッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替え時における回転検出手段の検出精度の劣化を防止する。
【解決手段】収容部を有する筐体2から突出し回転操作可能な筒状部71を有する回転操作体7と、この回転操作体7の筒状部71内の貫通孔73に軸線方向へ移動可能に挿通された押圧操作体6と、回転操作体7の回転動作を検出する回転検出手段と、押圧操作体6の上下動に応じて動作されるプッシュスイッチとを備えた複合操作型電気部品1において、筐体内の収容部を収容部304及び収容部203に仕切る隔壁301を設け、収容部304に回転検出手段を配設すると共に、収容部203にプッシュスイッチを配設し、隔壁に設けた筒状部305の貫通孔306に押圧操作体6の係合軸部62を軸線方向に移動可能に挿入した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合操作型電気部品に関し、特に、操作者から押圧操作及び回転操作を受け付け可能な複合操作型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジやカーオーディオ機器においては、操作者から押圧操作及び回転操作を受け付け可能な複合操作型電気部品が搭載されている。このような複合操作型電気部品として、プッシュスイッチの外周側にロータリスイッチを配置することで、部品全体の高さ寸法を低減するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−43778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の複合操作型電気部品においては、プッシュスイッチの外周側にロータリスイッチが配置されていることから、平面視した場合の部品寸法の小型化の要請に対応することが困難である。特に、プッシュスイッチを電源スイッチに適用する場合、電源スイッチにおいては、一般に接点構造が大型化することから、更に平面視した場合の部品寸法を小型化することが困難となる。
【0005】
平面視した場合の部品寸法の小型化の要請に対応すべく、プッシュスイッチの上方側にロータリスイッチを重ねて配置することが考えられる。プッシュスイッチの上方側にロータリスイッチを重ねて配置する場合、プッシュスイッチにおける押圧操作時のストローク量が大きくなることから、押圧操作を受ける押圧操作体を適切に上下移動させる必要がある。押圧操作体が適切に上下動しない場合には、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替えタイミングのバラつきの原因となる。
【0006】
また、プッシュスイッチの上方側にロータリスイッチを重ねて配置する場合には、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替え時に発生する熱等に起因してロータリスイッチの回転検出手段の検出精度が劣化する事態が発生し得る。例えば、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替え時に発生した熱は、回転検出手段を保持する筐体を変形させ、回転検出手段の構成部品間の位置関係を変化させ得る。このような構成部品間の位置関係の変化は、回転検出手段における検出精度の劣化の原因となる。特に、プッシュスイッチを電源スイッチに適用する場合、電源スイッチにおいては、一般に大容量の電流が流れることから、ロータリスイッチの回転検出手段の検出精度への影響が大きく、このような影響を考慮する必要がある。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、平面視した場合の部品寸法の小型化を実現しつつ、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替えタイミングのバラつきの発生及び回転検出手段の検出精度の劣化を抑制することができる複合操作型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合操作型電気部品は、収容部を有する筐体と、この筐体から突出し回転操作可能な第1筒状部を有する回転操作体と、この回転操作体の前記第1筒状部の内部に形成された貫通孔に軸線方向へ移動可能に挿通された押圧操作体と、前記回転操作体の回転動作を検出する回転検出手段と、前記押圧操作体の上下動に応じて動作されるプッシュスイッチとを備えた複合操作型電気部品において、前記筐体には、前記収容部を第1収容部とこの第1収容部の下側に位置する第2収容部とに仕切る隔壁が設けられると共に、この隔壁の中央部に前記軸線方向に貫通した孔部を有する第2筒状部が前記第1収容部側に突出して設けられており、前記第2筒状部の外周部に前記回転操作体の前記貫通孔が回転可能に挿通され、前記孔部に前記押圧操作体の先端部が前記軸線方向に移動可能に挿入されており、前記第1収容部に前記回転検出手段を配設すると共に、前記第2収容部に前記押圧操作体の先端部によって駆動される前記プッシュスイッチを配設したことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1収容部に回転検出手段を配設する一方、第2収容部にプッシュスイッチを配設したことから、回転検出手段とプッシュスイッチとを、筐体の隔壁を介して上下に配置できるので、平面視した場合の部品寸法の小型化を実現できる。また、押圧操作体が第1筒状部の貫通孔に挿通されると共に、その先端部が第2筒状部の孔部に挿入されることから、当該貫通孔及び孔部の双方で押圧操作体を上下方向に案内できるので、押圧操作体を適切に上下動させることができ、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替えタイミングのバラつきの発生を抑制できる。さらに、回転検出手段とプッシュスイッチとが隔壁で仕切られるため、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替え時に発生する熱等の影響が回転検出手段に及ぶ事態を防止できるので、回転検出手段の検出精度の劣化を抑制できる。
【0010】
上記複合操作型電気部品において、前記プッシュスイッチは、前記第2収容部内に収容され、前記押圧操作体によって駆動されると共に上方に付勢された上下動可能な移動部材と、前記第2収容部に設けられた固定接点と、この固定接点と接離するとともに、前記移動部材に保持された可動接点とを有する。この場合には、隔壁の下方側に設けられた第2収容部の範囲内で固定接点及び可動接点を配置したので、大容量の電流に耐え得る接点構造を配置でき、プッシュスイッチを電源スイッチに適用できる。
【0011】
上記複合操作型電気部品において、前記移動部材は、前記可動接点を保持する基部とこの基部から上方へ突出して設けられた被押圧突起とを備え、前記被押圧突起が前記隔壁の前記孔部に前記押圧操作体の先端部と対向して上下動可能に挿入されている。この場合には、被押圧突起を第2筒状部の孔部で案内できるので、移動部材の移動に伴うガタつきを軽減でき、効果的にプッシュスイッチの切替えタイミングのバラつきを抑制できる。
【0012】
上記複合操作型電気部品において、前記被押圧突起と前記基部を挟んで対向する位置には、前記移動部材を上方へ付勢するコイルばねが設けられている。この場合には、移動部材及び押圧操作体を上方へ付勢するコイルばねが被押圧突起と対向する位置に設けられることから、移動部材が傾いた状態で上下動し難くでき、プッシュスイッチの切替えタイミングの精度を向上できる。また、移動部材の復帰にコイルばねを用いていることから、移動部材の移動量を大きくできるので、初期状態(オフ状態)における固定接点と可動接点との間のギャップを大きく取ることができ、プッシュスイッチを電源スイッチに適用した場合でも、オフ状態の絶縁性を確保できる。
【0013】
上記複合操作型電気部品において、前記移動部材には、前記コイルばねの一部を収容する凹部が設けられた収容凹部と、この収容凹部の外側部に互いに対向するように形成された一対の係合部とを備え、前記移動部材の上下動に伴って前記係合部と係脱する一対の弾性片が前記収容凹部の外側部を挟むように設けられている。この場合には、移動部材の上下動に伴って一対の弾性片を係合部に係脱させることができるので、復帰用のコイルばねを利用して押圧操作時にクリック感触を生起させることができる。また、各弾性片は、コイルばねを挟んで対向する外側部に配置される係合部を挟み込むことから、移動部材を傾けるような力が作用するのを防止できる。
【0014】
上記複合操作型電気部品においては、前記基部の一方側に前記プッシュスイッチで構成される電源スイッチが配置され、中央を挟んだ前記基部の他方側に前記押圧操作体への押圧操作を検出する検出スイッチが配置される。この場合には、基部の一方側に電源スイッチが配置され、他方側に検出スイッチが配置されることから、移動部材の上下動に伴ってバランス良く電源スイッチ及び検出スイッチのオン/オフ状態を切り替えることができる。
【0015】
上記複合操作型電気部品において、前記筐体は、前記固定接点が設けられた下ケースと前記隔壁を有すると共に前記下ケースを塞ぐように重ね合わされる上ケースとを備え、前記回転検出手段が、前記回転操作体の下側に設けられたコードパターンと、このコードパターンと摺接する摺動子からなり、前記摺動子が前記上ケースの側壁に設けられた切り欠き部に配置される合成樹脂からなる保持部材に埋設された状態で前記隔壁よりも上方に配設されている。この場合には、筐体が下ケース及び上ケースで構成されることから、筐体内に構成部品を収容する際の作業効率を向上できる。また、回転検出手段を構成する摺動子が、上ケースの一部に配置される保持部材に埋設された状態で隔壁よりも上方に配置されることから、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替え時に発生する熱等の影響が摺動子に及ぶ事態を防止できるので、回転検出手段の検出精度の劣化を効果的に抑制できる。
【0016】
上記複合操作型電気部品において、前記上ケース及び下ケースは、前記保持部材よりも難燃性の高い合成樹脂により形成されている。この場合には、プッシュスイッチを難燃性の高い合成樹脂で形成された上ケース及び下ケース内に収容できることから、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切替え時に発生する熱やアーク放電の筐体外の構成部品への影響を防止でき、安全性を確保できる。
【0017】
上記複合操作型電気部品において、前記摺動子の先端側は前記保持部材から延出して下方に折り曲げられて外部端子を構成しており、この外部端子が前記下ケースの側壁に設けられた端子保持部に保持されている。この場合には、下ケースの側壁に設けられた端子保持部により、保持部材から延出する外部端子が保持されることから、外部端子の位置を安定させることができ、プリント基板への実装作業を容易化できる。
【0018】
上記複合操作型電気部品において、前記回転操作体の外周部には複数の凹凸部が設けられていると共に、前記上ケースには、前記凹凸部と係脱する突出部を有する一対のクリック板ばねが互いに対向して設けられている。この場合には、上ケースに、回転操作体の凹凸部と係脱する突出部を有する一対のクリック板ばねを設けていることから、回転操作体の回転に伴ってクリック感触を生起させることができる。また、上ケースに一対のクリック板ばねを設けていることから、バランス良く突出部を回転操作体の凹凸部に係脱させることができ、回転操作体が傾くのを抑制できる。さらに、下ケースを塞ぐように上ケースが重ねられるので、クリック感触の生起に伴う摩耗粉が下ケース内に入り込み難くでき、摩耗粉に起因するプッシュスイッチの接触不良を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、平面視した場合の部品寸法の小型化を実現しつつ、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替えタイミングのバラつきの発生及び回転検出手段の検出精度の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る複合操作型電気部品の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品の分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品を組み立てた場合の斜視図である。
【図4】図3からカバー部材と、下ケースより下方側の構成部品を取り除いた状態の斜視図である。
【図5】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が有する摺動部材とコード部材との関係の説明図である。
【図6】図3から上ケースより上方側の構成部品を取り除いた状態の斜視図である。
【図7】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が有する移動部材の下面図である。
【図8】図7に示す下方側から見た移動部材の側面図である。
【図9】図7に示す左方側から見た移動部材の側面図である。
【図10】図7に示す右方側から見た移動部材の側面図である。
【図11】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品の初期状態の断面図である。
【図12】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品の初期状態の断面図である。
【図13】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品の初期状態の断面図である。
【図14】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品の押圧操作時の断面図である。
【図15】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品の押圧操作時の断面図である。
【図16】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品の押圧操作時の断面図である。
【図17】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の構成例を示す図である。
【図18】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図19】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図20】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図21】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図22】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図23】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図24】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図25】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【図26】上記実施の形態に係る複合操作型電気部品が利用される洗濯機の電源スイッチ回路の動作状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本発明の一実施の形態に係る複合操作型電気部品(以下、単に「電気部品」という)は、操作者からの回転操作及び押圧操作を含む複数の操作を受け付け可能に構成されている。例えば、本実施の形態に係る電気部品は、洗濯機や電子レンジなどに搭載され、電源のオン/オフの切り替え操作や各種メニューの選択操作などに用いられる。なお、本実施の形態に係る電気部品が適用される機器及び用途については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0022】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係る電気部品1の全体構成を示す分解斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す左下方側を「電気部品1の前方側」と呼び、図1に示す右上方側を「電気部品1の後方側」と呼ぶものとする。また、説明の便宜上、図1に示す上方側を「電気部品1の上方側」と呼び、図1に示す下方側を「電気部品1の下方側」と呼ぶものとする。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る電気部品1は、電気部品1の筐体を構成する下ケース2及び上ケース3と、上ケース3の前面側に取り付けられる保持部材4と、下ケース2内に収納される移動部材5と、上ケース3に一部が収納される押圧操作体6及び回転操作体7と、構成部品を収納した下ケース2及び上ケース3に被せられるカバー部材8とを含んで構成されている。
【0024】
下ケース2は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成型される。より具体的には、ナイロンやポリブチレンテレフタレート(PBT)などの難燃性の樹脂材料で形成される。下ケース2は、概して上方側に開口した形状を有しており、矩形状の底面部201と、この底面部201の側縁部から上方側に延出して設けられた側壁部202とを備えている。下ケース2内には、底面部201と側壁部202とにより形成される空間に収容部203が設けられている。なお、収容部203は、第2収容部を構成する。
【0025】
収容部203の中央には、左右方向に延在して一対の壁部204が設けられている。これらの一対の壁部204は、下ケース2内における移動部材5の上下移動をガイドするガイド部として機能する。一対の壁部204内に配置される底面部201の中央には、軸部205が立設されている。壁部204の前方側に配置される底面部201には、一対の固定接点9が取り付けられる一対の挿通孔206が形成されている。一方、壁部204の後方側に配置される底面部201には、一対の固定接点10が取り付けられる一対の挿通孔207が形成されている。各挿通孔207の前方側の底面部201には、矩形状の突出部208が設けられている。なお、右方側に配置される突出部208aの上面は、左方側に配置される突出部208bの上面よりも高い位置に配置されている(図12参照)。
【0026】
下ケース2の四隅部の上端部には、外側に突出する係合片209が設けられている。対向する一対の側壁部202の外面中央には、僅かに外側に突出してスナップ係合片210が設けられている。前方側に配置される側壁部202には、後述する摺動部材12の外部端子部121を保持する複数の端子保持部211が設けられている。複数の端子保持部211は、下ケース2の左右方向に配列されており、上方側から挿通される外部端子部121を保持可能に構成されている。後方側に配置される側壁部202の内面には、前方側に僅かに突出する一対のガイド部212が設けられている。これらのガイド部212は、上下方向に当該側壁部202の全体に亘って設けられている。
【0027】
上ケース3は、下ケース2と同様に、例えば、絶縁性の樹脂材料であって、ナイロンやPBTなどの難燃性の樹脂材料で形成される。上ケース3は、概して上方側に開口した形状を有しており、矩形状の底面部301と、この底面部301の側縁部から上方側に延出して設けられた側壁部302とを備えている。後方側に配置された側壁部302の内壁には、円弧形状を有する内壁面302aが設けられている。前方側に配置された側壁部302の中央には、切り欠き部303が形成されている。上ケース3内には、底面部301と側壁部302とにより形成される空間に収容部304が設けられている。なお、底面部301は、筐体内の収容部を仕切る隔壁を構成する。また、収容部304は、第1収容部を構成する。
【0028】
底面部301の中央には、上方側(収容部304側)に突出して筒状部305が設けられている。筒状部305は、第2筒状部を構成するものであり、側壁部302と略同一高さの位置まで突出して設けられている。筒状部305には、上下方向に上ケース3を貫通する貫通孔306が形成されている。貫通孔306は、非円形状に設けられ、より具体的には、概してD字形状に設けられている。対向する一対の側壁部302の内側には、クリック用板ばね(以下、単に「板ばね」という)11を収容するばね収容部307が設けられている。ばね収容部307は、板ばね11の端部を保持する一方、板ばね11の中央部を収容部304側に露出可能に板ばね11を収容する。
【0029】
切り欠き部303近傍の角部には、一対の支柱部308が立設されている。この支柱部308は、ばね収容部307の一部を構成する。この支柱部308の前方側には、前方側の側壁部302との間に凹部309が設けられている。ばね収容部307が設けられた一対の側壁部302の中央には、下方側に延出する延出部310が設けられている。この延出部310の下端部近傍の中央には、開口部311が設けられている。
【0030】
保持部材4は、例えば、絶縁性の樹脂材料であって、下ケース2や上ケース3よりも難燃性の低い樹脂材料で形成される。保持部材4は、概して長方形状を有する底面部401と、底面部401の後端部を除く側縁部から上方側に延出して設けられた側壁部402とを有している。前方側に配置された側壁部402の内壁には、円弧形状を有する内壁面402aが設けられている。側方に配置された側壁部402の外壁には、上ケース3の支柱部308と係合する係合部402bが設けられている。
【0031】
保持部材4には、導電性を有する金属板材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことで形成される複数の摺動部材12がインサート成型されている。摺動部材12は、側面視して概してL字状に構成されており、上下方向に延在する外部端子部121と、この外部端子部121の上端部から後方側に延出する摺動子部122とから構成される。摺動部材12は、摺動子部122における外部端子部121との接続部分(すなわち、摺動子部122の前端部分)近傍で保持部材4の底面部401に埋設されている。
【0032】
摺動子部122の後端部近傍の上面には、僅かに上方側に突出した突出部123が設けられている。摺動子部122は、この突出部123で後述するコード部材18に摺接可能に構成されている。本実施の形態において、摺動部材12は、4本の外部端子部121と、3本の摺動子部122とを有している。4本の外部端子部121のうち、内側の2本の外部端子部121は、3本の摺動子部122の中央に配置される摺動子部122と連結されている。
【0033】
移動部材5は、例えば、絶縁性の樹脂材料であって、ナイロンやポリブチレンテレフタレート(PBT)などの難燃性の樹脂材料で形成される。移動部材5は、概して板状に構成された基部501を有している。基部501の下面であって、中央部近傍には下方側に延出して設けられた一対の壁部502が設けられている。一対の壁部502は、電気部品1の左右方向に延在し、互いに対向して設けられている。一対の壁部502の中央には、これらを連結する連結部503が設けられている。連結部503は、移動部材5の上下方向に延在する、概して直方体形状を有している。連結部503の中央には、下方側に開口した収容凹部503aが設けられている。また、連結部503の各側面には、左右方向に僅かに突出して係合部503bが設けられている。移動部材5の下面においては、連結部503の側方側に一定の空間を有した状態で一対の壁部502が対向して配置されている。
【0034】
収容凹部503aには、コイルばね13が収容される。コイルばね13の下方側には、前面視(後面視)して概してU字形状を有する板ばね14が配置される。板ばね14は、平面形状を有する底面部141と、この底面部141の側端部から上方側に延出して設けられた一対の弾性片142とを有している。底面部141の中央には、円形状の開口部141aが形成されている。一対の弾性片142の間隔は、移動部材5の連結部503の対向する側面部よりも僅かに狭く構成されている。一対の弾性片142の上端部近傍には、内側に突出する突出部142aが設けられている。
【0035】
基部501の上面中央には、上方側に突出する被押圧突起504が設けられている。この被押圧突起504は、概して円柱形状を有している。基部501の前端部の下面には、トーションばね15を保持するばね保持部505が設けられている。ばね保持部505は、前方側に突出して設けられた軸部505aと、この軸部505aの側方側に設けられた一対の係止片505bとを有する。
【0036】
トーションばね15は、導電性を有する金属線材で構成され、巻回部151と、この巻回部151の下端部から側方側に延出する一対の腕部152とを有している。なお、トーションばね15は、後述する検出スイッチの一部を構成する可動接点として機能する。
【0037】
基部501の後端部の下面には、金属プレート16を保持するプレート保持部506が設けられている。プレート保持部506は、基部501の後端部から下方側に延出して設けられる支持壁部506aと、この支持壁部506aの内側の基部501の下面から突出して設けられた軸部506bと、後方側の壁部502の僅かに後方側に設けられた一対の係止片506cとを有する。支持壁部506aの下端部には、内側に突出して係止片506dが設けられている。支持壁部506aの後面の端部には、僅かに後方側に突出するリブ状部507が設けられている。リブ状部507は、上下方向に支持壁部506aの全体に亘って設けられている。
【0038】
金属プレート16は、導電性を有する金属板材で構成され、上面視して概して長尺形状を有している。金属プレート16は、平面形状を有する底面部161と、この底面部161の一方の側端部に第1連結部162aを介して設けられた第1平面部163aと、底面部161の他方の側端部に第2連結部162bを介して設けられた第2平面部163bとを有する。なお、金属プレート16は、後述する電源スイッチの一部を構成する可動接点として機能する。
【0039】
底面部161の上面には、コイルばね17の下端部を係止する突出部161aが設けられている。第1連結部162a、第2連結部162bは、底面部161の側端部から側方側の斜め上方側に延出して設けられている。第1連結部162aは、第2連結部162bよりも僅かに長い寸法に設計されている。第1平面部163a、第2平面部163bは、底面部161と略平行に平面上に配置される。第1連結部162aと、第2連結部162bとの寸法の相違から、第1平面部163aは、第2平面部163bよりも僅かに上方側の位置に配置される。第1平面部163a、第2平面部163bの下面には、それぞれ円盤形状の突出部163c、163dが設けられている。第1平面部163aに設けられた突出部163cの下面には、円形状の銀チップ163eが固着されている。また、第1平面部163a、第2平面部163bの前端部には、僅かに前方側に突出する突出片163f、163gが設けられている。
【0040】
押圧操作体6は、絶縁性を有する樹脂材料で構成され、概して円柱形状を有する操作軸部61と、この操作軸部61の下端部から下方側に延出して設けられた係合軸部62とを有する。操作軸部61の上端部近傍は、その一部に切欠き形状部61aが設けられている。操作軸部61の上端部近傍は、上面視してD字形状の断面を有している。係合軸部62の断面は、非円形状に設けられ、より具体的には、概してD字形状を有している。係合軸部62の外周形状は、上ケース3の筒状部305に設けられた貫通孔306の内周形状と略一致する。
【0041】
回転操作体7は、絶縁性を有する樹脂材料で成型される。回転操作体7は、概して円筒形状を有する筒状部71と、この筒状部71の下端部の外周に設けられた円盤形状部72とを有する。筒状部71が、第1筒状部を構成するものであり、その中央には、貫通孔73が設けられている。また、筒状部71の外周面には、上下方向に延在してスリット71aが設けられている。円盤形状部72は、筒状部71の下端部の外周から径方向に同一寸法だけ延出して設けられている。また、円盤形状部72の外周側面部には、凹凸部74が設けられている。凹凸部74においては、凹部74aと凸部74bとが連続して設けられている。
【0042】
円盤形状部72の下面には、導電性を有する金属板材に打ち抜き加工を施すことで形成されるコード部材18がインサート成型される。コード部材18は、概して円形状を有している。コード部材18の中央には、円形状の開口部181が形成され、この開口部181の外側に環状部182が設けられている。環状部182の外側には、複数(本実施の形態では6個)の開口部183が形成されている。また、開口部183間には、径方向に延在する連結部184が形成されている。開口部181は、回転操作体7の貫通孔73に対応する位置及び寸法に設計されている。複数の開口部183は、コード部材18の周方向に並べて配置されている。インサート成型された状態において、これらの開口部183には、円盤形状部72の下面に設けられた複数の突出部75が収容される。開口部183から露出する突出部75と連結部184とでコードパターンが構成される。
【0043】
カバー部材8は、金属板材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことで形成される。カバー部材8は、平面形状を有する上面部81と、この上面部81の側端部から下方側に延出して設けられる一対の側面部82とを有する。上面部81の中央には、円形状の開口部81aが設けられている。この開口部81aの周囲には、僅かに上方側に突出する支持壁部81bが設けられている。また、上面部81の前端部及び後端部の側方側の両端には、それぞれ一対の位置決め片81cが設けられている。位置決め片81cは、上面部81から僅かに下方側に突出して設けられている。
【0044】
側面部82の下端部中央には、下方側に延出する取り付け片82aが設けられている。取り付け片82aは、組み立てられた状態の電気部品1を、電気部品1が実装される機器の被取付部に取り付けるための部分である。この取り付け片82aの前方側及び下方側には、僅かに内側に折り曲げられた一対の固定片82bが設けられている。これらの固定片82bは、上ケース3が重ねられた下ケース2にカバー部材8を固定するための部分である。
【0045】
一対の固定接点9は、導電性を有する金属板材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことで形成される。各固定接点9は、後述する検出スイッチの一部を構成し、平面形状を有する平面部91と、この平面部91から下方側に延出して設けられる外部端子部92とを有する。各固定接点9は、外部端子部92が挿通孔206に挿通されて下ケース2に固定される。各固定接点9の外部端子部92は、下ケース2に固定された状態において、下ケース2の下面から突出するように構成されている。
【0046】
一対の固定接点10は、導電性を有する金属板材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことで形成される。各固定接点10は、後述する電源スイッチの一部を構成し、平面形状を有する平面部101と、この平面部101から下方側に延出して設けられる外部端子部102とを有する。一方の固定接点10の平面部101の上面には、円形状の銀チップ103が固着されている。各固定接点10は、外部端子部102が挿通孔207に挿通されて下ケース2に固定される。各固定接点10の外部端子部102は、下ケース2に固定された状態において、下ケース2の下面から突出するように構成されている。
【0047】
一対の板ばね11は、それぞれ弾性を有する金属板材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことで形成される。各板ばね11は、電気部品1の前後方向に延在する長尺体で構成される。板ばね11の中央には、内側に向けて突出する突出部111が設けられている。この突出部111は、回転操作体7の円盤形状部72の凹凸部74と係脱してクリック感触を生起するものである。
【0048】
図3は、本実施の形態に係る電気部品1を組み立てた場合の斜視図である。図3に示すように、電気部品1を組み立てると、移動部材5、押圧操作体6及び回転操作体7などの構成部品が筐体(下ケース2及び上ケース3)に収容された状態でカバー部材8が被せられる。カバー部材8は、側面部82を上ケース3の側壁部302に対向させ、位置決め片81cを上ケース3の前面及び後面に対向させた状態で、固定片82bを係合片209に係合させることで下ケース2に固定される。
【0049】
保持部材4は、上ケース3の前面に設けられた切り欠き部303に配置されている。保持部材4にインサート成型された摺動部材12の外部端子部121は、電気部品1の前面に沿って下方側に延出するように配置されている。外部端子部121は、下ケース2の端子保持部211に挿通された状態で保持されている。
【0050】
回転操作体7の筒状部71は、カバー部材8に形成された開口部81aから露出している。回転操作体7の筒状部71は、その外周部をカバー部材8に設けられた支持壁部81bで支持されている。押圧操作体6の操作軸部61は、筒状部71に設けられた貫通孔73に挿通されている。操作軸部61は、その上端部分が筒状部71から露出している。このように組み立てられた状態で電気部品1は、操作者から押圧操作体6で押圧操作を受け付けると共に、回転操作体7で回転操作を受け付け可能に構成されている。
【0051】
以下、本実施の形態に係る電気部品1の内部構造について説明する。図4は、図3からカバー部材8と、下ケース2より下方側の構成部品を取り除いた状態の斜視図である。図4に示すように、上ケース3の収容部304には、回転操作体7の円盤形状部72が収容されている。また、上ケース3のばね収容部307には、板ばね11が収容されている。板ばね11は、突出部111を収容部304側に突出させた状態でばね収容部307に収容されている。円盤形状部72の凹凸部74は、収容部304に収容された状態で板ばね11の突出部111が係脱可能な寸法に構成されている。操作者からの回転操作に応じて円盤形状部72が回転すると、これに伴って板ばね11の突出部111が係脱する。
【0052】
保持部材4は、対向する側壁部402に設けられた係合部402bにより、支柱部308と係合した状態で上ケース3の切り欠き部303に配置されている。この場合、保持部材4の前方側に配置された側壁部402は、上ケース3の前方側の側壁部302と同一平面上に配置される。保持部材4の底面部401に埋設された摺動部材12のうち、摺動子部122は、円盤形状部72の下面にインサート成型されたコード部材18の下面に摺接可能に配置されている。
【0053】
図5は、本実施の形態に係る電気部品1が有する摺動部材12とコード部材18との関係の説明図である。図5においては、図4から上ケース3を取り除いた状態の下面図を示している。なお、以下においては、説明の便宜上、図5に示す左方側に配置された摺動子部122を「摺動子部122a」と呼び、図5に示す右方側に配置された摺動子部122を「摺動子部122b」と呼び、摺動子部122aと摺動子部122bとの間に配置された摺動子部122を「摺動子部122c」と呼ぶものとする。
【0054】
図5に示すように、摺動子部122(122a〜122c)は、円盤形状部72の下面に埋設されたコード部材18と対向して配置されている。図5の状態において、摺動子部122aは、コード部材18に形成された開口部183に対応する位置に配置されているとともに、摺動子部122bは、コード部材18に形成された連結部184に対応する位置に配置されている。また、摺動子部122cは、環状部182に対応する位置に配置されている。
【0055】
コード部材18の開口部183は、内側開口部183aと、この内側開口部183aの外周側に連続して形成された外側開口部183bとを有している。外側開口部183bは、内側開口部183aから周方向(より具体的には、時計回り方向)にずれた位置に配置されている。摺動子部122aは、開口部183のうち、外側開口部183bに対応する円周上の位置に配置され、摺動子部122bは、内側開口部183aに対応する円周上の位置に配置されている。
【0056】
本実施の形態では、摺動子部122cを共通の接点端子部として利用する一方、摺動子部122a、122bを切替端子部として利用する。上述したように摺動子部122a〜122cを配置することにより、摺動子部122aと摺動子部122cとが導通状態となるタイミングと、摺動子部122bと摺動子部122cとが導通状態となるタイミングを時間的にずらすことができる。これらの摺動子部122a〜122cにおける導通状態の切替え状態及び切替え回数を検出することにより、電気部品1においては、回転操作体7の回転方向及び回転角度を検出可能に構成されている。すなわち、回転操作体7の円盤形状部72の下面に設けられたコードパターンと、摺動部材12の摺動子部122とで回動操作体7の回転を検出する回転検出手段が構成される。
【0057】
図6は、図3から上ケース3より上方側の構成部品を取り除いた状態の斜視図である。図6に示すように、下ケース2の収容部203には、移動部材5が収容されている。移動部材5は、一対の壁部502を、下ケース2の一対の壁部204間の空間(以下、「中央空間」という)に配置した状態で下ケース2に収容されている。操作者から押圧操作を受けていない初期状態において、移動部材5の基部501の上面は、下ケース2の側壁部202の上端部と略同一高さの位置に配置される。
【0058】
中央空間には、コイルばね13及び板ばね14が収容されている。板ばね14は、底面部141に形成された開口部14aに軸部205が挿通された状態で配置されている。コイルばね13は、開口部14aから突出した軸部205に取り付けられている。軸部205に取り付けられたコイルばね13の上端部は、移動部材5の連結部503に設けられた収容凹部503aに収容されている。基部501の上面に設けられた被押圧突起504の中心は、軸部205の中心と一致するように配置される。軸部205に取り付けられたコイルばね13は、被押圧突起504と基部501を挟んで対向する位置に配置されている。
【0059】
収容部203に収容された状態で移動部材5のばね保持部505は、前方側の側壁部202と前方側の壁部204との間の空間(以下、「前方空間」という)に配置される。また、移動部材5のプレート保持部506は、後方側の側壁部202と後方側の壁部204との間の空間(以下、「後方空間」という)に配置される。この場合、プレート保持部506を構成する支持壁部506aに設けられた一対のリブ状部507は、後方側の側壁部202の一対のガイド部212の内側に配置される。
【0060】
前方空間において、底面部201の挿通孔206には、平面部91が露出した状態で固定接点9が取り付けられている。初期状態において、ばね保持部505に保持されたトーションばね15の一対の腕部152は、それぞれ固定接点9の平面部91に一定間隔を挟んで対向して配置されている。本実施の形態に係る電気部品1においては、これらのトーションばね15と、一対の固定接点9とで押圧操作体6に対する押圧操作を検出する検出スイッチが構成される。
【0061】
一方、後方空間において、底面部201の挿通孔207には、平面部101が露出した状態で固定接点10が取り付けられている。初期状態において、プレート保持部506に保持された金属プレート16の突出部163c、163dは、それぞれ固定接点10の平面部101に一定間隔を挟んで対向して配置されている。本実施の形態に係る電気部品1においては、移動部材5と、移動部材5に保持される金属プレート16と、一対の固定接点10とでプッシュスイッチが構成される。特に、このプッシュスイッチは、電源スイッチとして利用される。
【0062】
ここで、トーションばね15及び金属プレート16を保持した状態の移動部材5の構成について図7〜図10を用いて説明する。図7は、本実施の形態に係る電気部品1が有する移動部材5の下面図である。図8は、図7に示す下方側から見た移動部材5の側面図である。図9は、図7に示す左方側から見た移動部材5の側面図である。図10は、図7に示す右方側から見た移動部材5の側面図である。図7〜図10においては、いずれもトーションばね15及び金属プレート16を保持した状態の移動部材5について示している。また、図7〜図10においては、初期状態における移動部材5について示している。
【0063】
図7に示すように、移動部材5においては、基部501の中央に一対に壁部502が一定距離離間して配置されている。一対の壁部502の中央には、連結部503が設けられている。連結部503の中央には、図7に示す紙面奥側に向かって円形状の収容凹部503aが設けられている。また、連結部503の側方の外壁面には、それぞれ係合部503bが設けられている。これらの係合部503bは、連結部503の外壁面の下方側部分において、僅かに側方側に突出して設けられている(図9及び図10参照)。被押圧突起504は、図7に示す収容凹部503aの背面側の位置に設けられている(図9及び図10参照)。
【0064】
ばね保持部505は、電気部品1の前方側(図7に示す上方側)の壁部502の前方側に配置される基部501に設けられている。図9及び図10に示すように、ばね保持部505は、基部501の下方側であって、その前端部から前方側に突出して設けられている。ばね保持部505において、トーションばね15は、巻回部151を軸部505aに挿通されると共に、一対の腕部152を係止片505bで係止された状態で保持される。係止片505bに係止された一対の腕部152の先端は、係止片505bよりも側方側に突出した状態となっている。固定接点9の平面部91には、この係止片505bから側方側に突出した部分で接触可能に構成されている。
【0065】
プレート保持部506は、電気部品1の後方側(図7に示す下方側)の壁部502の後方側に配置される基部501に設けられている。図9及ぶ図10に示すように、プレート保持部506は、基部501の下方側に設けられている。プレート保持部506において、金属プレート16は、底面部161の後端部を下方側から係止片506dで支持されると共に、第2平面部163bに設けられた突出片163gの前端部を下方側から係止片506cで支持されている。なお、上述したように、第1平面部163aは、第2平面部163bよりも高い位置に配置されているため、第1平面部163aに設けられた突出片163fは、係止片506cに接触していない(図9参照)。突出片163fに対応する係止片506cは、プレート保持部506からの金属プレート16の脱落防止のために利用される。
【0066】
図9及び図10に示すように、プレート保持部506の軸部506bには、コイルばね17が取り付けられている。コイルばね17は、金属プレート16の底面部161の上面と、基部501の下面との間に配置され、金属プレート16を下方側に付勢している。すなわち、金属プレート16には、初期状態において、コイルばね17の付勢力によりプリテンションが掛っている。コイルばね17に付勢された状態において、金属プレート16は、図8〜図10に示すように、前方側端部が上方側に傾斜した状態でプレート保持部506に保持されている。第1平面部163a、第2平面部163bの下面に設けられた突出部163c(銀チップ163eを含む)、163dの下端部の位置は、略同一高さの位置に配置されている。
【0067】
図11〜図13は、本実施の形態に係る電気部品1の断面図である。図11においては、押圧操作体6の操作軸部61の中心と、板ばね11の突出部111の中央とを通過する断面について示している。図12においては、図11に示す断面と平行な断面であって、移動部材5の軸部506bの中心を通過する断面について示している。図13においては、図11に示す断面と平行な断面であって、移動部材5の軸部505aの先端部を通過する断面について示している。なお、図11〜図13においては、いずれも初期状態の電気部品1について示している。
【0068】
図11に示すように、移動部材5は、被押圧突起504を上方側に突出させた状態で下ケース2の収容部203に収容されている。また、回転操作体7は、筒状部71を上方側に突出させた状態で円盤形状部72が上ケース3の収容部304に収容されている。回転操作体7を収容した上ケース3の上方側からカバー部材8が被せられる。回転操作体7は、カバー部材8の上面81に形成された支持壁部81bで筒状部71の外周面を支持され、回転動作可能に上ケース3に収容される。
【0069】
下ケース2の収容部203において、板ばね14は、開口部141aを軸部205に挿通された状態で配置されている。開口部141aから突出する軸部205にコイルばね17が取り付けられている。コイルばね17が取り付けられた軸部205は、移動部材5の収容凹部503aに収容される。コイルばね17は、板ばね14の底面部141の上面と、収容凹部503aの天井面との間に配置され、移動部材5を上方側に付勢している。板ばね14の一対の弾性片142は、突出部142aが連結部503の外壁面を挟み込むように配置されている。この場合、弾性片142の突出部142aは、連結部503の係合部503bよりも下方側の部分を挟み込んだ状態となっている。
【0070】
移動部材5の被押圧突起504は、上ケース3の筒状部305に設けられた貫通孔306に下方側から収容される。筒状部305は、回転操作体7の貫通孔73に下方側から収容される。この場合、回転操作体7は、筒状部305の外周部に、筒状部71の貫通孔73が回転可能にガイドされた状態とされる。貫通孔73には、押圧操作体6が上下移動可能に収容される。押圧操作体6の係合軸部62は、筒状部305の貫通孔306に上方側から挿通されている。係合軸部62の下端部は、移動部材5の被押圧突起504の上面に載置された状態となっている。
【0071】
移動部材5のプレート保持部506に保持された金属プレート16は、図12に示すように、その下面に設けられた突出部163c、163dが、下ケース2の底面部201に取り付けられた一対の固定接点10の平面部101から離間した位置に配置されている。図12に示す右方側に配置された固定接点10(以下、「固定接点10a」という」は、底面部201の突出部208a上に載置された状態で取り付けられている。一方、図12に示す左方側に配置された固定接点10(以下、「固定接点10b」という」は、底面部201の突出部208b上に載置された状態で取り付けられている。固定接点10aの平面部101の上面は、固定接点10bの平面部101上に設けられた銀チップ103の上面よりも高い位置に配置されている。
【0072】
移動部材5のばね保持部505に保持されたトーションばね15は、図13に示すように、一対の腕部152が、下ケース2の底面部201に取り付けられた一対の固定接点19の平面部91から離間した位置に配置されている。トーションばね15の一対の腕部152は、巻回部151の下端部近傍から側方側に向けて略水平に延出している。一対の腕部152のうち、固定接点9の平面部91に対向配置される部分は、それぞれ略同一高さの位置に配置されている。
【0073】
以下、上記構成を有する本実施の形態に係る電気部品1の動作について説明する。まず、操作者から回転操作体7で回転操作を受け付けた場合の動作について図5及び図11を参照しながら説明する。回転操作を受け付けると、回転操作体7は、図11に示すように、上ケース3の筒状部305の外周面でガイドされると共に、カバー部材8の支持壁部81bの内周面でガイドされた状態で回転する。回転操作体7が回転すると、上ケース3のばね収納部307に収納された板ばね11の突出部111は、円盤形状部72に設けられた凹凸部74に係脱する。このような突出部111における凹凸部74との係脱に応じてクリック感触が生起される。この場合、上ケース3には、一対の板ばね11が設けられていることから、バランス良く突出部111を回転操作体7の凹凸部74に係脱させることができ、回転操作体6が傾くのを抑制できる。さらに、上ケース3が下ケース2を塞ぐように重ねられているので、クリック感触の生起に伴う摩耗粉が下ケース2内に入り込み難くでき、摩耗粉に起因するプッシュスイッチの接触不良を防止できる。
【0074】
回転操作体7の回転に伴って、円盤形状部72の下面に固定されたコード部材18も回転する。コード部材18の回転に伴って、複数の摺動部材12が有する摺動子部122の突出部122aとコード部材18との間の摺接位置が相対的に変化する。この場合、図5に示す摺動子部122a、122bは、開口部183を介して露出する回転操作体7の突出部75及び開口部183間のコード部材184上を摺動し、図5に示す摺動子部122cは、環状部182上を摺動する。上述したように、開口部183には、周方向にずれて配置された内側開口部183a及び外側開口部183bが形成されているので、異なるタイミングで摺動子部122aと摺動子部122cとの間の導通状態と、摺動子部122bと摺動子部122cとの間の導通状態とが切り替えられる。これらの摺動子部122a〜122cにおける導通状態の切替え状態及び切替え回数を検出することにより、電気部品1においては、回転操作体7の回転方向及び回転角度が検出される。
【0075】
次に、操作者から押圧操作体6で押圧操作を受け付けた場合の動作について図14〜図16を参照しながら説明する。図14〜図16は、本実施の形態に係る電気部品1で押圧操作を受け付けた場合の断面図である。図14〜図16に示す断面は、それぞれ図11〜図13に示す断面と共通する。なお、図14〜図16においては、いずれも押圧操作体6を下限位置まで押圧した状態の電気部品1について示している。
【0076】
図11に示す初期状態から押圧操作を受け付けると、押圧操作体6は、回転操作体7の筒状部71の貫通孔73の内周面及び上ケース3の筒状部306の貫通孔306の内壁面に案内されて下方側に移動する。押圧操作体6の下方側に移動すると、係合軸部62の下端部が移動部材5の被押圧突起504の上端部を押下する(図14参照)。移動部材5は、押圧操作体6の下方移動に伴ってコイルばね17の付勢力に抗して下方側に移動する。この場合、移動部材5は、被押圧突起504を筒状部305の貫通孔306の内周面に案内されると共に、下ケース2の一対の壁部204及び一対のガイド部212で案内され、下方側に移動する。このように被押圧突起504を筒状部305の貫通孔306で案内しているので、移動部材5の移動に伴うガタつきが軽減される。
【0077】
移動部材5が下方側に移動すると、板ばね14の弾性片142に設けられた突出部142aは、連結部503の外壁面上を摺動する。図14に示すように、移動部材5が下限位置まで移動すると、一対の弾性片142の突出部142aは、連結部503の係合部503b上を乗り越える。このような係合部503bを乗り越える際の一対の弾性片142の移動に伴ってクリック感触が生起される。
【0078】
プレート保持部506に保持された金属プレート16は、移動部材5の移動に伴って下方側へ移動する。そして、移動部材5が下限位置まで移動すると、図15に示すように、第1平面部163aの下面に設けられた突出部163c及び第2平面部163bの下面に設けられた突出部163dが固定接点10の平面部101の上面に当接する。これにより、固定接点10a、10b間が金属プレート16を介して導通状態となる。この結果、プッシュスイッチがオン状態に切り替えられる。
【0079】
なお、移動部材5が下限位置まで移動する過程においては、まず、第2平面部163bの下面に設けられた突出部163dが固定接点10aの平面部101の上面に当接する。その後、第1平面部163aの下面に設けられた突出部163c上の銀チップ163eが固定接点10bの平面部101上の銀チップ103の上面に当接する。異なるタイミングによる突出部163c、163dの固定接点10への当接は、下ケース2の下面に設けられた突出部208a、208bの上面の高低差と、金属プレート16の第1連結部162a、第2連結部162bの寸法差とにより実現される。すなわち、突出部208bの上面位置を突出部208aの上面位置よりも高く設定する一方、第1連結部162aの長さ寸法を第2連結部162bの長さ寸法よりも長く設定することにより、突出部163c、163dの異なるタイミングによる当接を確保している。
【0080】
ここで、遅れて当接する突出部163c及び固定接点10bにそれぞれ銀チップ163e、103を設けているのは、固定接点10a、10b間の導通状態への切替え時に発生するアーク放電等に対応するためである。また、突出部163c及び固定接点10bを、突出部163d及び固定接点10aに遅らせて当接させているのは、金属プレート16に比べて抵抗値の低い銀チップ163e、103によって固定接点10a、10b間の導通状態を切り替えるためである。
【0081】
ばね保持部505に保持されたトーションばね15は、移動部材5の移動に伴って下方側へ移動する。そして、移動部材5が下限位置まで移動すると、図16に示すように、一対の腕部152が固定接点9の平面部91の上面に当接する。これにより、一対の固定接点9間がトーションばね15を介して導通状態となる。なお、一対の腕部152の当接は、移動部材5の下方側への移動に伴って略同タイミングで一対の固定接点9の平面部91に当接するように構成されている。
【0082】
そして、押圧操作が解除されると、コイルばね17の付勢力に応じて移動部材5を介して押圧操作体6が上方側へ移動する。これにより、電気部品1は、図11に示す初期状態に復帰する。移動部材5が上方側に移動すると、板ばね14の弾性片142に設けられた突出部142aは、連結部503の外壁面上を摺動し、連結部503の係合部503b上を乗り越える。このような係合部503bを乗り越える際の一対の弾性片142の移動に伴ってクリック感触が生起される。この場合、各弾性片142は、コイルばね17を挟んで対向する連結部503の係合部503bを挟み込むことから、移動部材5を傾けるような力が作用するのを防止できる。
【0083】
このように本実施の形態に係る電気部品1においては、上ケース3の収容部304に回転検出手段を配設する一方、下ケース2の収容部203にプッシュスイッチを配設したことから、回転検出手段とプッシュスイッチとを、隔壁として機能する上ケース3の底面部301を介して上下に配置できるので、平面視した場合の部品寸法の小型化を実現できる。また、押圧操作体6が回転操作体7の貫通孔73に挿通されると共に、その先端部(係合軸部62)が筒状部305の貫通孔306に挿入されることから、貫通孔73及び貫通孔306の双方で押圧操作体7を上下方向に案内できるので、押圧操作体6を適切に上下動させることができ、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替えタイミングのバラつきの発生を抑制できる。さらに、回転検出手段とプッシュスイッチとが隔壁として機能する上ケース3の底面部で仕切られるため、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替え時に発生する熱等の影響が回転検出手段に及ぶ事態を防止できるので、回転検出手段の検出精度の劣化を抑制できる。
【0084】
特に、本実施の形態に係る電気部品1においては、プッシュスイッチを、収容部203内に収容され、押圧操作体6によって駆動されると共に上方に付勢された上下動可能な移動部材5と、収容部203に設けられた一対の固定接点10と、これらの固定接点10と接離する可動接点としての金属プレート16とで構成している。これにより、下ケース2の収容部203の範囲内で固定接点10及び可動接点を配置したので、大容量の電流に耐え得る接点構造を配置でき、プッシュスイッチを電源スイッチに適用できる。
【0085】
また、本実施の形態に係る電気部品1においては、移動部材5に、基部501とこの基部501から上方へ突出して設けられた被押圧突起504とを設け、被押圧突起504を筒状部305の貫通孔306に、押圧操作体6の係合軸部62の先端部と対向して挿入している。これにより、被押圧突起504を筒状部305の貫通孔306で案内できるので、移動部材5の移動に伴うガタつきを軽減でき、効果的にプッシュスイッチの切替えタイミングのバラつきを抑制できる。
【0086】
特に、本実施の形態に係る電気部品1においては、被押圧突起504と基部501を挟んで対向する位置に、移動部材5を上方へ付勢するコイルばね17を配置していることから、移動部材5が傾いた状態で上下動し難くでき、プッシュスイッチの切替えタイミングの精度を向上できる。そして、移動部材5の初期状態への復帰にコイルばね17を用いていることから、移動部材5の移動量を大きくできるので、初期状態(オフ状態)における固定接点10と金属プレート16との間のギャップを大きく取ることができ、オフ状態の絶縁性を確保できる。
【0087】
さらに、本実施の形態に係る電気部品1においては、移動部材5の基部501の後方側にプッシュスイッチ(電源スイッチ)を配置し、基部501の前方側に検出スイッチを配置していることから、移動部材5の上下動に伴ってバランス良くプッシュスイッチ(電源スイッチ)及び検出スイッチのオン/オフ状態を切り替えることができる。
【0088】
さらに、本実施の形態に係る電気部品1においては、筐体が、固定接点9、10が設けられた下ケース2と、この下ケース2を塞ぐように重ね合わされる上ケース3とで構成されることから、筐体内に構成部品を収容する際の作業効率を向上できる。また、回転検出手段を構成する摺動子部122が上ケース3の切り欠き部303に配置される保持部材4に埋設された状態で上ケース3の底面部301よりも上方に配設されることから、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切り替え時に発生する熱等の影響が摺動子部122に及ぶ事態を防止できるので、回転検出手段の検出精度の劣化を効果的に抑制できる。
【0089】
特に、本実施の形態に係る電気部品1においては、下ケース2及び上ケース3を、保持部材4よりも難燃性の高い合成樹脂で構成している。これにより、プッシュスイッチを難燃性の高い合成樹脂で形成された下ケース2及び上ケース3内に収容できることから、プッシュスイッチのオン/オフ状態の切替え時に発生する熱やアーク放電による筐体(下ケース2及び上ケース3)外の構成部品への影響を防止でき、安全性を確保できる。
【0090】
ここで、本実施の形態に係る電気部品1の利用態様について説明する。以下においては、本実施の形態に係る電気部品1が洗濯機に利用されている場合について説明する。本実施の形態に係る電気部品1は、例えば、洗濯機における電源スイッチ回路に適用される。図17は、本実施の形態に係る電気部品1が利用される洗濯機の電源スイッチ回路1000の構成例を示す図である。なお、図17に示す電源スイッチ回路1000においては、本実施の形態に係る電気部品1が初期状態の場合について示している。
【0091】
図17に示すように、洗濯機が備える電源スイッチ回路1000は、洗濯機の全体の制御を行う制御回路1001を備える。この制御回路1001には、交流電源1002が接続されている。制御回路1001と交流電源1002との間には、電源スイッチ部1003aが接続されると共に、この電源スイッチ部1003aに並列にリレー1004が接続されている。
【0092】
電源スイッチ部1003aは、上述した金属プレート16と、一対の固定接点10とからなるプッシュスイッチにより構成される。一方の固定接点10により接点a1が構成され、他方の固定接点10により接点a2が構成される。電源スイッチ部1003aにおいては、上述した押圧操作体6に対する押圧操作に伴って接点a1と接点a2との導通状態が切り替えられる。電源スイッチ部1003aをオン状態とすることで、接点a1と接点a2とが導通状態に切り替えられ、制御回路1001への電源供給が行われる。
【0093】
リレー1004は、制御回路1001の制御の下、接点b1と接点b2との導通状態を切り替える。制御回路1001からの信号は、破線で示す信号線SL1を介してリレー1004に与えられる。リレー1004をオン状態とすることで、接点b1と接点b2とが導通状態に切り替えられ、制御回路1001への電源供給状態が維持される。
【0094】
また、制御回路1001には、検出スイッチ部1003bが接続される。検出スイッチ部1003bは、上述したトーションばね15と、一定の固定接点9とからなる検出スイッチにより構成される。一方の固定接点9により接点b1が構成され、他方の固定接点9により接点b2が構成される。検出スイッチ部1003bにおいては、押圧操作体6に対する押圧操作に伴って接点c1と接点c2との導通状態が切り替えられる。検出スイッチ部1003bをオン状態とすることで、接点c1と接点c2とが導通状態に切り替えられ、破線で示す信号線SL2を介してオン信号が制御回路1001に出力される。
【0095】
交流電源1002には、洗濯機が備える負荷1005が接続されている。交流電源1002の一端と負荷1005との間には、リレー1006が接続されている。リレー1006は、制御回路1001の制御の下、接点d1と接点d2との導通状態を切り替える。制御回路1001からの信号は、破線で示す信号線SL3を介してリレー1006に与えられる。リレー1006をオン状態とすることで、接点d1と接点d2とが導通状態に切り替えられ、負荷1005に対して電源供給が行われる。なお、洗濯機が備える負荷1005には、例えば、洗濯槽を駆動するモーターや洗濯槽内の洗濯物に熱を放射するヒーターなどが含まれる。
【0096】
初期状態における電源スイッチ回路1000においては、図17に示すように、電源スイッチ部1003aにて接点a1と接点a2とが非導通状態であり、検出スイッチ部1003bにて接点c1と接点c2とが非導通状態である。したがって、制御回路1001には電源供給が行われていない。また、リレー1004にて接点b1と接点b2とが非導通状態であり、リレー1006にて接点d1と接点d2とが非導通状態である。したがって、負荷1005には電源供給が行われていない。
【0097】
以下、図17に示す電源スイッチ回路の動作について説明する。図18〜図26は、本実施の形態に係る電気部品1が利用される洗濯機の電源スイッチ回路1000の動作状態の説明図である。
【0098】
図17に示す初期状態から、電気部品1の押圧操作体6で押圧操作を受け付け、金属プレート16が一対の固定接点10に当接すると、図18に示すように、電源スイッチ部1003aにおいて、接点a1、a2間が導通状態に切り替えられる。これにより、制御回路1001へ電源供給が開始される。
【0099】
この場合、電源スイッチ部1003aと同時に、検出スイッチ部1003bにおいて、接点c1、c2間が導通状態に切り替えられる。これにより、検出スイッチ部1003bがオン状態となった旨を示す信号(オン信号)が信号線SL2を介して制御回路1001に出力される。制御回路1001においては、負荷1005が稼働していない状態で検出されるオン信号については無視する。
【0100】
電源供給を受けると、制御回路1001は、リレー1004をオン状態に切り替える信号(オン信号)を、信号線SL1を介してリレー1004に出力する。これにより、リレー1004がオン状態とされ、図19に示すように、接点b1、b2間が導通状態に切り替えられる。この結果、電源スイッチ部1003aを経由する電源供給路に加え、リレー1004を経由する電源供給路が形成される。
【0101】
リレー1004がオン状態とされた後、押圧操作体6が押圧操作から解放されると、金属プレート16が初期状態に復帰し、図20に示すように、接点a1、a2間が非導通状態に切り替えられる。なお、この場合においても、接点b1、b2間が導通状態に維持されているため、リレー1004を経由する電源供給路を介して、制御回路1001への電源供給が継続される。
【0102】
洗濯機の操作者から洗濯開始などの指示を受け付けると、制御回路1001は、信号線SL3を介してリレー1006にオン信号を出力する。これにより、リレー1006がオン状態とされ、図21に示すように、接点d1、d2間が導通状態に切り替えられる。この結果、負荷1005へ電源供給が開始される。この電源供給に伴い、負荷1005が稼働する。
【0103】
負荷1005による稼働が終了すると、制御回路1001は、リレー1006をオフ状態に切り替える信号(オフ信号)を、信号線SL3を介してリレー1006に出力する。これにより、リレー1006がオフ状態とされ、図22に示すように、接点d1、d2間が非導通状態に切り替えられる。この結果、負荷1005への電源供給が停止される。
【0104】
その後、制御回路1001は、信号線SL1を介してリレー1004にオフ信号を出力する。これにより、リレー1004がオフ状態とされ、図23に示すように、接点b1、b2間が非導通状態に切り替えられる。この結果、制御回路1001への電源供給が停止される。すなわち、電源スイッチ回路1000においては、負荷1005の稼働停止後に自動で制御回路1001への電源供給を停止するように構成されている(オートオフ機能)。
【0105】
また、電源スイッチ回路1000においては、負荷1005の稼働状態から、操作者からの指示に応じて制御回路1001への電源供給を停止可能に構成されている。以下、この手動オフ機能について説明する。図21に示すように負荷1005が稼働している状態において、電気部品1の押圧操作体6で押圧操作を受け付け、トーションばね15が一対の固定接点9に当接すると、図24に示すように、検出スイッチ部1003bにおいて、接点c1、c2間が導通状態に切り替えられる。これにより、検出スイッチ部1003bからオン信号が信号線SL2を介して制御回路1001に出力される。
【0106】
この場合、検出スイッチ部1003bと同時に、電源スイッチ部1003aにおいて、接点a1、a2間が導通状態に切り替えられる。しかしながら、リレー1004を経由して電源供給が行われていることから、制御回路1001への電源供給状態が変更されることはない。
【0107】
負荷1005が稼働している状態でオン信号を検出すると、制御回路1001は、信号線SL3を介してリレー1006にオフ信号を出力する。これにより、リレー1006がオフ状態とされ、図25に示すように、接点d1、d2間が非導通状態に切り替えられる。この結果、負荷1005への電源供給が停止される。これに伴い、負荷1005の稼働も停止する。なお、図25においては、電気部品1の押圧操作体6への押圧操作が開放された状態を示している。
【0108】
その後、制御回路1001は、信号線SL1を介してリレー1004にオフ信号を出力する。これにより、リレー1004がオフ状態とされ、図26に示すように、接点b1、b2間が非導通状態に切り替えられる。この結果、制御回路1001への電源供給が停止される。すなわち、電源スイッチ回路1000においては、負荷1005の稼働状態において、手動で制御回路1001への電源供給を停止するように構成されている(手動オフ機能)。
【0109】
このような電源スイッチ回路1000に、本実施の形態に係る電気部品1を利用することにより、負荷1005の稼働後に電源供給を自動的に停止でき、待機電力を低減できる洗濯機を提供することが可能となる。なお、ここでは、洗濯機の電源スイッチ回路1000を具体例に用いて説明しているが、電気部品1が適用される電源スイッチ回路1000については、洗濯機に限定されるものではなく、任意の機器の電源スイッチ回路1000に適用することが可能である。また、例えば、電気部品1を電子レンジに利用する場合、電子レンジの各種メニューの選択操作を回転操作体7への回転操作により行い、回転操作により選択したメニューの決定を押圧操作体6への押圧操作による検出スイッチの導通状態の切り替えで行うことができる。
【0110】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本考案の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本考案の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0111】
例えば、上記実施の形態においては、移動部材5の被押圧突起504の上端面を平面形状に設ける場合について説明している。しかしながら、被押圧突起504の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、被押圧突起504の上端面を球面形状に設けてもよい。この場合には、押圧操作体6からの押圧操作を被押圧突起504の中央で受け付けることができるので、更に移動部材5が傾いた状態で上下動し難くできる。
【0112】
例えば、上記実施の形態においては、プッシュスイッチが電源スイッチである場合を説明しているが、これに限定されるものではなく、検出スイッチなどの他のスイッチに適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 複合操作型電気部品(電気部品)
2 下ケース(筐体)
201 底面部
202 側壁部
203 収容部(第2収容部)
204 壁部
211 端子保持部
3 上ケース(筐体)
301 底面部(隔壁)
302 側壁部
303 切り欠き部
304 収容部
305 筒状部(第2筒状部)
306 貫通孔(孔部)
307 ばね保持部
4 保持部材
5 移動部材
501 基部
502 壁部
503 連結部
503a 収容凹部
503b 係合部
504 被押圧突起
505 ばね保持部
506 プレート保持部
6 押圧操作体
61 操作軸部
62 係合軸部
7 押圧操作体
71 筒状部(第1筒状部)
72 円盤形状部
73 貫通孔
74 凹凸部
8 カバー部材
81 上面部
81a 開口部
9 固定接点
91 平面部
92 外部端子部
10 固定接点
101 平面部
102 外部端子部
103 銀チップ
11 クリック用板ばね(板ばね)
111 突出部
12 摺動部材
121 外部端子部
122 摺動子部(摺動子)
13 コイルばね
14 板ばね
141 底面部
142 弾性片
15 トーションばね(可動接点)
151 巻回部
152 腕部
16 金属プレート(可動接点)
161 底面部
163a 第1平面部
163b 第2平面部
163c、163d 突出部
163e 銀チップ
17 コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有する筐体と、この筐体から突出し回転操作可能な第1筒状部を有する回転操作体と、この回転操作体の前記第1筒状部の内部に形成された貫通孔に軸線方向へ移動可能に挿通された押圧操作体と、前記回転操作体の回転動作を検出する回転検出手段と、前記押圧操作体の上下動に応じて動作されるプッシュスイッチとを備えた複合操作型電気部品において、
前記筐体には、前記収容部を第1収容部とこの第1収容部の下側に位置する第2収容部とに仕切る隔壁が設けられると共に、この隔壁の中央部に前記軸線方向に貫通した孔部を有する第2筒状部が前記第1収容部側に突出して設けられており、前記第2筒状部の外周部に前記回転操作体の前記貫通孔が回転可能に挿通され、前記孔部に前記押圧操作体の先端部が前記軸線方向に移動可能に挿入されており、前記第1収容部に前記回転検出手段を配設すると共に、前記第2収容部に前記押圧操作体の先端部によって駆動される前記プッシュスイッチを配設したことを特徴とする複合操作型電気部品。
【請求項2】
前記プッシュスイッチは、前記第2収容部内に収容され、前記押圧操作体によって駆動されると共に上方に付勢された上下動可能な移動部材と、前記第2収容部に設けられた固定接点と、この固定接点と接離するとともに、前記移動部材に保持された可動接点とを有することを特徴とする請求項1記載の複合操作型電気部品。
【請求項3】
前記移動部材は、前記可動接点を保持する基部とこの基部から上方へ突出して設けられた被押圧突起とを備え、前記被押圧突起が前記隔壁の前記孔部に前記押圧操作体の先端部と対向して上下動可能に挿入されていることを特徴とする請求項2記載の複合操作型電気部品。
【請求項4】
前記被押圧突起と前記基部を挟んで対向する位置には、前記移動部材を上方へ付勢するコイルばねが設けられていることを特徴とする請求項3記載の複合操作型電気部品。
【請求項5】
前記移動部材には、前記コイルばねの一部を収容する凹部が設けられた収容凹部と、この収容凹部の外側部に互いに対向するように形成された一対の係合部とを備え、前記移動部材の上下動に伴って前記係合部と係脱する一対の弾性片が前記収容凹部の外側部を挟むように設けられていることを特徴とする請求項4記載の複合操作型電気部品。
【請求項6】
前記基部の一方側に前記プッシュスイッチで構成される電源スイッチが配置され、中央を挟んだ前記基部の他方側に前記押圧操作体への押圧操作を検出する検出スイッチが配置されることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の複合操作型電気部品。
【請求項7】
前記筐体は、前記固定接点が設けられた下ケースと前記隔壁を有すると共に前記下ケースを塞ぐように重ね合わされる上ケースとを備え、前記回転検出手段が、前記回転操作体の下側に設けられたコードパターンと、このコードパターンと摺接する摺動子からなり、前記摺動子が前記上ケースの側壁に設けられた切り欠き部に配置される合成樹脂からなる保持部材に埋設された状態で前記隔壁よりも上方に配設されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の複合操作型電気部品。
【請求項8】
前記上ケース及び下ケースは、前記保持部材よりも難燃性の高い合成樹脂により形成されていることを特徴とする請求項7記載の複合操作型電気部品。
【請求項9】
前記摺動子の先端側は前記保持部材から延出して下方に折り曲げられて外部端子を構成しており、この外部端子が前記下ケースの側壁に設けられた端子保持部に保持されていることを特徴とする請求項8記載の複合操作型電気部品。
【請求項10】
前記回転操作体の外周部には複数の凹凸部が設けられていると共に、前記上ケースには、前記凹凸部と係脱する突出部を有する一対のクリック板ばねが互いに対向して設けられていることを特徴とする請求項7から請求項9のいずれかに記載の複合操作型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−190733(P2012−190733A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55053(P2011−55053)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】