説明

複合樹脂組成物

【課題】 微粒子の分散性が良好で凝集粒子を少なくすることができる複合樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 充填材1と樹脂バインダー2とを含有する複合樹脂組成物に関する。前記充填材1は、ナノサイズの平均粒子径を有する第一充填材粒子3と、第一充填材粒子3とは種類の異なるナノサイズの平均粒子径を有する第二充填材粒子4とを樹脂バインダー2に配合する前に予め混合することによって、第二充填材粒子4を介して第一充填材粒子3、3…同士が接触することなく造粒された造粒粒子である。第一充填材粒子3の凝集を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の光デバイスに用いられる高効率光変換材料などとして用いられる複合樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブラウン管、蛍光灯やPDPなどに用いられる光波長変換材料の蛍光体は、原料粉末を混合し、高温で長時間加熱することにより固相反応を起こさせ、その後、固結した塊をボールミルなどで機械的に粉砕することにより製造されてきた。このような方法で製造された蛍光体の粒子20、21は図5(a)に示すように樹脂22と混合することによって複合樹脂組成物が調製されるが、蛍光体の粒子20、21は粒子径が大きく不揃いで、凝集した粉末となり、複合樹脂組成物を用いて得られる膜などの硬化物23は、不均質で充填密度の低いものとなり、発光特性が低くなるものであった。また、上記の硬化物23が目的とする蛍光色を得るためには、色の三原色であるRGBの発光特性を有する蛍光体の粒子を配合し、さらにそれらが均一に分散するように混合し、塗布しなければならなかった。しかも、図5(b)に示すように、上記の硬化物23の蛍光性能は蛍光特性を有する蛍光体の粒子20、21の表面24で光変換(波長変換)されて得られており、粒子20、21の内部25は光変換に寄与せず、蛍光体20、21の粒子径が大きい場合は変換効率が低いものであった。さらに、蛍光体の粒子20、21の粒子径が大きいと粒子表面で光反射を生じ、蛍光体の粒子20、21の濃度を上げても光が散乱してしまい、また、粒子径の大きな蛍光体の粒子20、21の影に粒子径の小さな蛍光体の粒子20、21が隠れて光が当たらず、光変換効率がある程度のところで上がらないとか、硬化物23の表面層のみの蛍光体しか有効利用できず、硬化物23の深層部の位置にある蛍光体はまったく光変換作用効果を及ぼしていないといった問題も発生していた。尚、図中Lは硬化物23に入射する光、L′は光変換された光、L″は反射された光を示す。
【0003】
そこで、図6(a)に示すように、蛍光体の粒子20、21を粉砕することにより、その粒子径をより小さくすることで蛍光変換効率(光波長変換効率)を改善できる可能性があるが、蛍光体の粒子20、21が微粒子になるに従い樹脂22中で凝集してしまい、有効に蛍光体の粒子20、21の表面を利用することができず、蛍光変換効率が向上しないという問題や、蛍光体の粒子20、21の凝集や分散不良などにより色むらを生じるなどの問題があった。さらに、図6(b)に示すように、蛍光体の粒子20、21の凝集体26の粒子径が大きいと凝集体26の表面で光反射を生じ、蛍光体の粒子20、21の濃度を上げても光が散乱してしまい、また、粒子径の大きな凝集体26の影に粒子径の小さな凝集体26が隠れて光が当たらず、光変換効率がある程度のところで上がらないという問題があった。
【0004】
これまでに上記のような色むら等の解消のために、図7に示すように、蛍光体の微粒子27、28を用いて分散液29、30を調製し、この分散液29、30から平均粒子径が3μm〜50μmの凝集体31、32を造粒、乾燥して得ることにより、凝集体31、32の粒子径を小さく均一化し、樹脂22中での凝集体31、32の分散性を高めて発光のバラツキを極力抑えるといった方策(例えば、特許文献1参照)や、生じた蛍光粒子の凝集粒子を容器内で解砕する蛍光体の製造方法(例えば、特許文献2参照)や、蛍光体粒子の表面に0.01質量%〜5.0質量%の範囲の被覆用粒子が付着された蛍光体を用いる(例えば、特許文献3参照)などの改善策が提案されているが、まだ十分なものとはいえないのが現状であった。
【特許文献1】特開2001−148516号公報
【特許文献2】特開2002−294229号公報
【特許文献3】特開平05−070774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、微粒子の分散性が良好で凝集粒子を少なくすることができる複合樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合樹脂組成物は、充填材1と樹脂バインダー2とを含有する複合樹脂組成物において、前記充填材1は、ナノサイズの平均粒子径を有する第一充填材粒子3と、第一充填材粒子3とは種類の異なるナノサイズの平均粒子径を有する第二充填材粒子4とを樹脂バインダー2に配合する前に予め混合することによって、第二充填材粒子4を介して第一充填材粒子3、3…同士が接触することなく造粒された造粒粒子であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明にあっては、第一充填材粒子3以上の量の第二充填材粒子4を用いて充填材1を造粒することができる。
【0008】
また、本発明にあっては、充填材1の平均粒子径が1〜500μmであることが好ましい。
【0009】
また、本発明にあっては、第二充填材粒子4が平均粒子径0.1〜30nmのSiO微粒子であることが好ましい。
【0010】
また、本発明にあっては、第一充填材粒子3が光波長変換材料粒子であることが好ましい。
【0011】
また、本発明にあっては、第一充填材粒子3として三種類の光波長変換材料粒子を用いることができる。
【0012】
また、本発明にあっては、第一充填材粒子3の平均粒子径が1〜200nmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明にあっては、樹脂バインダー2として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一を用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第二充填材粒子を介して第一充填材粒子同士が接触することなく造粒された造粒粒子を充填材として用いるために、第一充填材粒子の凝集を少なくすることができ、微粒子からなる第一充填材粒子の分散性が良好で凝集粒子を少なくすることができるものである。従って、本発明の複合樹脂組成物は、LED(発光ダイオード)をはじめ各種の光変換デバイスなどに用いる際に均質で高効率な高輝度蛍光材を形成することが可能で、しかも、高純度で化学組成が均一で発光特性に優れた光波長変換材を安価に製造することができるものであり、さらに、充填材と樹脂バインダーとの複合化が容易となって発光による色調コントロールが容易な発光特性の優れたものとすることが可能となるものである。
【0015】
また、第一充填材粒子以上の第二充填材粒子を用いることにより、第一充填材粒子同士の接触をより確実に防止することができ、第一充填材粒子の凝集がさらに発生しにくくなるものである。
【0016】
また、充填材の平均粒子径が1〜500μmであると、造粒粒子である充填材同士の凝集がなく、取り扱い性(ハンドリング性)に優れるものである。
【0017】
また、第二充填材粒子が平均粒子径0.1〜30nmのSiO微粒子であると、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの透明樹脂と屈折率が近似し、光の散乱や反射などの悪影響を及ぼさず、さらに複合樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数を低減させ、耐熱性を向上させることができ、この硬化物が加熱された場合にも形状の変化や熱歪みがなく、光変換デバイスなどの信頼性が高くなり、屈折率の温度安定性にも優れたものとなる。
【0018】
また、第一充填材粒子が光波長変換材料粒子であると、LEDなどの光変換デバイスを容易に製造することができるものである。
【0019】
また、第一充填材粒子として三種類の光波長変換材料を用いると、光の色、質を容易にコントロールすることができるものである。
【0020】
また、第一充填材粒子の平均粒子径が1〜200nmであると、通常よく用いられる励起波長300〜400nmの光の波長よりも小さいナノ粒子であるために、光の反射や散乱を防止することができ、光変換能率を十分に確保することができるものであり、付活剤等を結晶内に均一に導入することが容易となるものである。
【0021】
また、樹脂バインダーとして、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一を用いると、透明性のある複合樹脂組成物を容易に製造することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0023】
本発明の複合樹脂組成物は充填材1と樹脂バインダー2とを含有するものであるが、充填材1としては種類の異なる二種類の粒子3、4から構成されるものを用いる。
【0024】
第一充填材粒子3としては光波長変換材料粒子などを用いることができ、これにより、光変換デバイスなどに用いる複合樹脂組成物を得ることができる。光波長変換材料としては特に限定されるものではないが、例えば、TiO(酸化チタン、チタニア)、ZnO(酸化亜鉛)、YS:Eu、ZnS:C1,Al、(Ba,Mg)A11017:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO12:Eu、(Ba,Mg)A11017などを用いることができる。
【0025】
このような無機粒子である第一充填材粒子3は、ゾルゲル法、湿式法、気相法、乾式法等の方法によって得ることができる。また、本発明では上記の第一充填材粒子3のうち一種のみを用いたり、二種以上を混合して用いたりすることができ、特に、第一充填材粒子3として色の三原色であるRGB(赤、緑、青)の発光特性を有する三種類の光波長変換材料粒子などを用いることによって、光変換デバイスなどに好適に用いることができる複合樹脂組成物とすることができる。また、第一充填材粒子3は平均粒子径が1〜200nmのものを用いるのが好ましい。平均粒子径200nm以下の第一充填材粒子3を用いると、通常よく用いられる励起波長300〜400nmの光の波長よりも小さいナノ粒子であるために、光の反射や散乱を防止することができ、光変換能率を十分に確保することができるものである。さらに、第一充填材粒子3の平均粒子径は1〜50nmの範囲とすることがより好ましく、1〜10nmの範囲とすることが更に好ましい。また、第一充填材粒子3の最大径が1nmより小さいと、付活剤を結晶内に均一に導入することが難しい一方、第一充填材粒子3の最大径が大きすぎると、効率的な粒子表面による光変換作用を行うことが困難となる。また、第一充填材粒子3の最大径が10nm以下の場合には、蛍光体である第一充填材粒子3の発光特性を顕著に向上させることができる。平均粒子径200nmを超える第一充填材粒子3を用いると、光の反射や散乱が生じやすくなり、光変換効率は低減し、粒子径の効果は低減するが、従来例より悪化するものではない。
【0026】
第二充填材粒子4は上記第一充填材粒子3、3…同士の付着、接触、凝集を防ぎ、入射光が効率よく第一充填材粒子3の表面に当たり、吸収されるように作用するものである。第二充填材粒子4はナノサイズの平均粒子径を有するものであるが、平均粒子径が0.1〜30nmのSiO微粒子を用いるのが好ましい。このようなシリカ微粒子はシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの透明樹脂と屈折率が近似し、光の散乱や反射などの悪影響を及ぼさず、さらに本発明の複合樹脂組成物の硬化物である光波長変換材の熱膨張係数を低減させ、耐熱性を向上させることができ、加熱された場合にも形状の変化や熱歪みがなく、光変換デバイスなどの信頼性が高くなるものであり、さらに屈折率の温度安定性にも優れた光波長変換材となるものである。
【0027】
尚、本発明において、平均粒子径の測定方法は、第一充填材粒子3及び第二充填材粒子4が細かいので、画像処理法による粒径算出方法を採用している。この方法は、第一充填材粒子3及び第二充填材粒子4をSEMまたはTEMで写真撮影し、写真像から任意の20個の粒子を選び、それぞれの粒子について投影断面積を測定する。その後、それらの粒子に対する円の面積、相当径を算出することにより、平均粒子径を求めている。
【0028】
本発明の充填材1は上記第一充填材粒子3と第二充填材粒子4とを用いて造粒した造粒粒子である。充填材1を造粒するにあたっては、多数の第一充填材粒子3と多数の第二充填材粒子4とを超音波分散処理、ビーズミル処理などの方法により水、有機溶媒(例えば、ヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール)などの溶媒中に凝集させることなく均一に分散させたスラリー液(後述の粒子複合分散液12)を作製した後、この均質なスラリー溶液を高温気体中に噴霧して微液滴を空気中にて形成し、この微液滴を乾燥することによって造粒粒子を得る。要するに、噴霧乾燥造粒時に第一充填材粒子3の回りに多数の第二充填材粒子4が介在することによって、第一充填材粒子3が付着凝集することなく乾燥、造粒することが重要である。このようにして充填材1を粒子分散複合粒子として得ることができる。また、必要に応じ溶媒中に均一に分散させたスラリー中に所定の樹脂バインダーをあらかじめ添加しておき、その後の樹脂バインダーとの複合化の際に容易に複合化するようにしておいてもよい。そして、第一充填材粒子3の周囲に介在する多数の第二充填材粒子4、4…のために、第一充填材粒子3、3…の相互が直接接触することが妨げられ、蛍光体熱処理などの過程での第一充填材粒子3、3…同士の凝集を防止し、個々の第一充填材粒子3、3…が実質的に独立した粒子形態を保持した充填材1を蛍光体粒子として得ることができる。その結果、高純度で化学組成の均一な、微小かつ分散性の極めて良好な造粒粒子を製造することが可能となるものである。
【0029】
本発明で使用する樹脂バインダー2としては、硬化後において使用する光波長において透明となるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、脂環式環内エポキシド樹脂(環内エポキシド系)、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールF型エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を例示することができる。その他の熱硬化性樹脂の樹脂バインダー2としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を例示することができる。成形性や硬化後の特性を考慮して、1種のみを用いたりあるいは2種以上を混合して用いたりすることができる。また、樹脂バインダー2の硬化剤としては、特に限定されるものではないが、硬化後の黄変等、特定の波長に対する吸収がないもの、また、無機粒子である第一充填材粒子3や第二充填材粒子4に対する親和性も高いものを用いるのが好ましい。
【0030】
そして、本発明の複合樹脂組成物を製造するにあたっては、例えば、以下のようにして行うことができる。図1(a)に示すように、まず、第一充填材粒子3を上記に例示した溶媒に添加してこれを攪拌することによって、第一充填材粒子3が分散した第一充填材粒子分散溶媒10を調製する。二種類以上の第一充填材粒子3a、3b…を用いる場合は同様にして第一充填材粒子分散溶媒10a、10b…を作製する。第一充填材粒子3の添加量は、均一に分散できることを考慮し、溶媒全量に対して1〜40質量%であることが好ましい。
【0031】
一方、第二充填材粒子4についても上記と同様の溶媒に添加してこれを攪拌することによって、第二充填材粒子4が分散した第二充填材粒子分散溶媒11を調製する。この際、溶媒中にテトラメトキシシラン等のシリカアルコキシドを均一に溶解させて調製するのが好ましい。また、第二充填材粒子4の添加量は、均一に分散できることを考慮し、溶媒全量に対して1〜10質量%であることが好ましい。
【0032】
また、上記第一充填材粒子分散溶媒10と第二充填材粒子分散溶媒11を調製する他の方法としては、乾式法等により得られた第一充填材粒子3又は第二充填材粒子4を上記と同様の溶媒に添加し、これを湿式ビーズミル処理することによって微細化、解粒分散化し、第一充填材粒子分散溶媒10や第二充填材粒子分散溶媒11を調製することもできる。湿式ビーズミル処理において使用する湿式ビーズミル装置としては、微小ビーズ(粉砕媒体)を備え、また高剪断分散をすることができ、さらにセパレータ機構を有する連続方式のものを用いるのが好ましい。微小ビーズとしては、直径が0.02〜0.3mmで、耐摩耗性を有するジルコニア製ボール及びアルミナ製ボールを用いるのが好ましく、また、このような微小ビーズを湿式ビーズミル装置の処理室の有効体積の20〜90体積%充填するのが好ましい。このように第一充填材粒子分散溶媒10や第二充填材粒子分散溶媒11として無機粒子分散アルコールなどを調製するにあたって、湿式ビーズミル処理をすると、溶媒中にたとえ粒子径40nmを超える無機粒子(第一充填材粒子3や第二充填材粒子4)や凝集粒子が存在していたとしても、これらを微小ビーズで粉砕することによって微粒子にすることができるものである。尚、第一充填材粒子分散溶媒10中と第二充填材粒子分散溶媒11中に粒子径30nmを超える無機粒子(第一充填材粒子3や第二充填材粒子4)が残存している場合においては、上記溶媒を遠心分離にかけて上記無機粒子を沈降させ、その後に得られる上澄み液を第一充填材粒子分散溶媒10や第二充填材粒子分散溶媒11として使用することができる。
【0033】
次に、上記で得た第一充填材粒子分散溶媒10と第二充填材粒子分散溶媒11とを配合し、第一充填材粒子3や第二充填材粒子4が再凝集しないように均一に分散させることによって、第一充填材粒子3と第二充填材粒子4が分散した粒子複合分散液12を調製する。ここで、第二充填材粒子分散溶媒11の濃度が高くなるように、すなわち、第一充填材粒子3よりも第二充填材粒子4の配合量が多くなるように、第一充填材粒子分散溶媒10と第二充填材粒子分散溶媒11とを配合するのが好ましい。所望の光調となるように複数種の第一充填材粒子3a、3b…を用いて粒子複合分散液12を調製する場合は、第一充填材粒子分散溶媒10a、10b…の配合比を調整する。次に、粒子複合分散液12を同伴気体中に霧状に噴霧して微液滴を形成し、乾燥して複合造粒粒子として充填材1を形成する。充填材1の平均粒子径は1〜500μmにするのが好ましい。充填材1の粒子径が1μm未満であると、充填材1の粒子同士が凝集、付着及び吸湿などの影響により非常にハンドリングしにくくなるという恐れがあり、充填材1の平均粒径が500μmを超えると、散乱光や反射光が多くなる恐れがある。ここで、加熱造粒時に第一充填材粒子3、3…がこれよりも多い多数個の第二充填材粒子4、4…の中に均一に分散された状態で凝集することなく分散させることが重要である。また、必要に応じ、充填材1をそのまま所定の雰囲気により熱処理し、熱ひずみの除去、不純物C成分の除去を行ってもよい。上記の同伴気体としては、空気、酸素、窒素、水素、少量の一酸化炭素や水素や硫化水素を含む窒素やアルゴンなどを使用することができる。また、充填材1の良好な発光特性を得るためには、蛍光体(第一充填材粒子3)の化学組成と発光に関与する付活イオンの種類に応じて気体を選択することが重要である。例えば、酸化雰囲気で原子価を保ちやすいEu3+等を付活イオンとする酸化物を主相とする第一充填材粒子3を用いる場合には、空気や酸素などの酸化性ガスが好ましく、還元雰囲気で原子価を保ちやすいEu2+等を付活イオンとする酸化物を主相とする第一充填材粒子3を用いる場合には、水素、少量の水素を含む窒素やアルゴンなどの還元性ガスが好ましい。また、硫化物蛍光体や酸硫化物蛍光体の第一充填材粒子3を用いる際には、硫化水素を含有する気体を使用することが好ましい。
【0034】
次に、以上のようにして得られた充填材1を透明樹脂などの樹脂バインダー2に分散させる。例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂をヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールなどの溶媒に溶解させて、これと充填材1とを混合することによって、充填材1が均一に分散している樹脂バインダー2を調製することができる。また、必要に応じて樹脂可溶の溶媒を用いて分散させてもよい。上記の溶解や混合の作業は、湿式ビーズミル装置や高速攪拌ディスパー等を用いてシェアをかけながら行うことができるが、混合時において粘度が高ければ、ニーダ、二軸押出機、ヘンシェルミキサー等を用いてもよい。そして、上記のようにして混合した後、硬化剤を必要とする樹脂バインダー2に対しては硬化剤を添加してこれを混合することによって、硬化性を有する本発明の複合樹脂組成物を製造することができる。この混合の作業においても湿式ビーズミル装置や高速攪拌ディスパー等を用いて行うことができるが、混合時において粘度が高ければ、ニーダ、二軸押出機、ヘンシェルミキサー等を用いてもよい。また、硬化剤を添加する他に、必要に応じて硬化促進剤(触媒)を添加してもよい。硬化促進剤として、硬化性が良好で、着色がなく、熱硬化性樹脂(樹脂バインダー2)の透明性を損なわないものであれば、特に限定されるものではない。尚、硬化剤が不要な樹脂バインダー2の場合は上記の充填材1と樹脂バインダー2との混合で本発明の複合樹脂組成物とすることができる。また、複合樹脂組成物中の充填材1の含有量は、複合樹脂組成物を使用する目的によって適宜調整することができるが、成形性等を考慮して、例えば、複合樹脂組成物の全量に対して10〜80質量%の含有率にするのが好ましい。
【0035】
上記の製造方法で得た本発明の複合樹脂組成物にあっては、第一充填材粒子3と第二充填材粒子4とを樹脂バインダー2に配合する前に予め混合して複合造粒粒子である充填材1を形成し、これを樹脂バインダー2に配合するので、樹脂バインダー2中に充填材1が凝集することなく均一に分散させることができ、上記組成物は外観が良好で成形性に優れたものとなり、また、充填材1で分散している第一充填材粒子3はいずれも微粒子でありながら凝集することなく分散しているため、上記組成物は光透過性が高いものとなり、その硬化物23においても図1(b)に示すように光透過性が高く、散乱光や反射光が少なくなると共に第一充填材粒子3の表面割合が多くなるために効率的な光波長変換が行なわれることになり、また、上記組成物は樹脂バインダー2と無機粒子である第一充填材粒子3や第二充填材粒子4とを複合化したものであるため、硬化後の複合樹脂組成物は熱膨張係数の小さいものとなり、しかも応力ひずみの発生しにくいものとなるのである。つまり、本発明に係る複合樹脂組成物によれば、高効率光変換性、低熱膨張性のすべてをバランス良く備えた成形品等の硬化物23を得るのは容易である。従って、例えば、LEDなどの封止材の一部又は全部にトランスファー成形法、キャスティシグ法、塗布、スピンコート等の方法により本発明の複合組成物を用いることにより、場所による光ムラが少なく、光波長を高効率でしかも光の色、質を容易にコントロールすることができる信頼性の高い光デバイスを製造することができるものである。
【実施例】
【0036】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0037】
(実施例1)
第一充填材粒子3として化成オプトニクス株式会社製の赤色蛍光粒子(P22−RE3、平均粒子径=約5μm)を5質量%になるようにメチルエチルケトンに配合して分散液を作製(調製)した。直径が0.05mmのジルコニア製ボールを処理室の有効面積の80体積%充填した湿式ビーズミル装置を用いて上記分散液に対して湿式ビーズミル処理を行い、第一充填材粒子3が100nm以下に微細化し均一に分散した液を得た。
【0038】
次に、第二充填材粒子4としてコロイダルシリカ粒子(平均粒子径=8nm)を含む第二充填材粒子分散溶媒11(日産化学株式会社製のスノーテックスOS)を、第一充填材粒子3:第二充填材粒子4が1:5の質量比となるように、100nm以下の第一充填材粒子3を分散した液に配合し、上記と同様の湿式ビーズミル装置を用いて第一充填材粒子3と第二充填材粒子4を十分に均一に分散させ、粒子複合分散液12を得た。この粒子複合分散液12中での第一充填材粒子3の粒子径は70〜300nmの範囲で平均粒子径が150nm、第二充填材粒子4の粒子径は5〜20nmの範囲で平均粒子径が8nmであった。
【0039】
次に、粒子複合分散液12をヤマト科学製のスプレードライヤー(型式ADL)を用いて噴霧造粒することにより、充填材(複合造粒粒子)1を作製した。次に、充填材1を硫化水素を含有する雰囲気中で1000℃で10分間熱処理した。
【0040】
次に、20gの上記充填材1に樹脂バインダー2として水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製「エピコートYL6663」(エポキシ当量:205))100gを徐々に加え、これを高速攪拌ディスパーで混合し、充填材1が均一に分散した分散スラリーを得た。
【0041】
次に、上記の分散スラリーに酸無水物硬化剤(大日本インキ化学工業株式会社製「EPICLON570」(酸無水物当量:168g/eq))を8.2g、イミダゾール(硬化促進剤、四国化成工業株式会社製「2E4MZ」)を0.04g加え、これを均一に攪拌溶解させ、さらに内部に残存している気泡を取り除くためにロータリーポンプで減圧脱泡処理を行うことによって、充填材1が均一に分散した未硬化の複合樹脂組成物を得た。
【0042】
そして、テフロン(登録商標)樹脂でかたどった容器に上記のようにして得た未硬化の複合樹脂組成物を入れ、これを100℃で2時間予備加熱した後、さらに150℃で5時間硬化熱処理を行うことによって、52質量%の充填材1が均一に分散したエポキシ樹脂複合硬化物を得た。このエポキシ樹脂複合硬化物の断面における充填材1の分散状態を示す代表的なSEM観察結果を図2に示す。
【0043】
このエポキシ樹脂複合硬化物中の充填材1について、波長380nm紫外線照射下での発光スペクトルを測定したところ、色むらがなく、良好な赤色発光を示した。また、波長254nmではエポキシ樹脂の吸収があるため、少々効率は低下したが、十分な赤色発光を示した。さらに充填材1中では第一充填材粒子3は凝集することなく均一に分散していることを確認した。充填材1中における第一充填材粒子3の分散状態を示す代表的なTEM観察結果を図3に示す。
【0044】
(実施例2)
使用した樹脂バインダー2を信越化学工業のシリコーン樹脂(品名:KE−l06、触媒:CAT−RG)に変更した以外は、実施例1と同様に作製した。得られた複合樹脂組成物は充填材1が均一に分散したシリコーン樹脂複合硬化物であることをSEM観察等で確認した。さらに、波長254nmの紫外線照射下でのシリコーン樹脂複合硬化物中の充填材1の発光スペクトルを測定したところ、色むらがなく、良好な赤色発光を示した。また、充填材1中、第一充填材粒子3は凝集することなく均一に分散していることも確認した。
【0045】
(実施例3)
第一充填材粒子3として化成オプトニクス株式会社製の緑色蛍光粒子(LP−G3、平均粒子径=約5ミクロン)を5質量%になるようにメチルエチルケトンに配合して分散液を作製した。直径が0.05mmのジルコニア製ボールを処理室の有効面積の80体積%充填した湿式ビーズミル装置を用いてこの分散液に対して湿式ビーズミル処理を行い、第一充填材粒子3が100nm以下に微細化し均一に分散した液を得た。
【0046】
次に、第二充填材粒子4としてコロイダルシリカ粒子(平均粒子径=5nm)を含む第二充填材粒子分散溶媒11(日産化学株式会社製のスノーテックスOXS)を、第一充填材粒子3:第二充填材粒子4が1:5の質量比となるように、100nm以下の第一充填材粒子3を分散した液に配合し、上記と同様の湿式ビーズミル装置を用いて第一充填材粒子3と第二充填材粒子4を十分に均一に分散させ、粒子複合分散液12を得た。この粒子複合分散液12中での第一充填材粒子3の粒子径は130〜750nmの範囲で平均粒子径が360nm、第二充填材粒子4の粒子径は4〜15nmの範囲で平均粒子径が5nmであった。
【0047】
次に、粒子複合分散液12をヤマト科学製のスプレードライヤー「型式ADL」を用いて噴霧造粒することにより、充填材(複合造粒粒子)1を作製した。次に、空気雰囲気中で1000℃で10分間熱処理した。
【0048】
このようにして作製した充填材1を用いた以外は実施例2と同様にして未硬化の複合樹脂組成物を作製し、この後、複合樹脂組成物を硬化させることによって、シリコーン樹脂複合硬化物を得た。得られたシリコーン樹脂複合硬化物は充填材1が均一に分散したものであることをSEM観察等で確認した。さらに波長254nm、波長380nmの紫外線照射下でのシリコーン樹脂複合硬化物中の充填材1の発光スペクトルを測定したところ、色むらがなく、良好な緑色発光を示した。さらに、充填材1中、第一充填材粒子3は凝集することなく均一に分散していることも確認した。
【0049】
(実施例4)
第一充填材粒子3として化成オプトニクス株式会社製の青色蛍光粒子(LP−B4、平均粒径=約5ミクロン)を用いた以外は実施例3と同様にして未硬化の複合樹脂組成物を作製し、この後、複合樹脂組成物を硬化させることによって、シリコーン樹脂複合硬化物を得た。シリコーン樹脂複合硬化物は充填材1が均一に分散したものであることをSEM観察等で確認した。さらに、波長254nm、波長380nmの紫外線照射下でのシリコーン樹脂複合硬化物中の充填材1の発光スペクトルを測定したところ、色むらがなく、良好な青色発光を示した。また、充填材1中、第一充填材粒子3は凝集することなく均一に分散していることも確認した。
【0050】
(実施例5)
第一充填材粒子3として、化成オプトニクス株式会社製の赤色蛍光粒子(P22−RE3)と、化成オプトニクス株式会社製の緑色蛍光粒子(LP−G3)と、化成オプトニクス株式会社製の青色蛍光粒子(LP−B4)を1:1:1.5の質量比となるように配合して用い、三種類の第一充填材粒子3を混合した充填材1とした以外は実施例3と同様にして未硬化の複合樹脂組成物を作製し、この後、複合樹脂組成物を硬化させることによって、シリコーン樹脂複合硬化物を得た。得られたシリコーン樹脂複合硬化物は充填材1が均一に分散したものであることをSEM観察等で確認した。さらに、波長254nm、波長380nmの紫外線照射下でのシリコーン樹脂複合硬化物中の充填材1の発光スペクトルを測定したところ、色むらがなく、良好な白色発光を示した。また、充填材1中、第一充填材粒子3は凝集することなく均一に分散していることも確認した。
【0051】
(実施例6)
赤色蛍光粒子の配合量を1.5倍とした以外は実施例5と同様にして未硬化の複合樹脂組成物を作製し、この後、複合樹脂組成物を硬化させることによって、シリコーン樹脂複合硬化物を得た。得られたシリコーン樹脂複合硬化物は充填材1が均一に分散したものであることをSEM観察等で確認した。さらに、波長254nm、波長380nmの紫外線照射下でのシリコーン樹脂複合硬化物中の充填材1の発光スペクトルを測定したところ、色むらがなく、良好な白色発光を示し、また、実施例5に比べ暖色系(黄色っぽい)の発光色を示した。このように第一充填材粒子3の配合量の比を変えることにより色度を任意にコントロールできることも確認した。
【0052】
(比較例1)
第一充填材粒子3として化成オプトニクス株式会社製の赤色蛍光粒子(P22−RE3、平均粒径=約5ミクロン)を5質量%になるように配合し分散液を作製した。次に、第二充填材粒子4を配合せずに、上記分散液を実施例1と同様に噴霧造粒して充填材1として用いた以外は実施例1と同様にして未硬化の複合樹脂組成物を作製し、この後、複合樹脂組成物を硬化させることによって、エポキシ樹脂複合硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂複合硬化物では第一充填材粒子3が沈降したとおもわれる偏在化が生じており、均一に分散していないことを確認した。エポキシ樹脂複合硬化物の上面では全く第一充填材粒子3の粒子の存在を確認できなかったが、下面では図4に示すように、一面に第一充填材粒子3が見られた。さらに、波長254nm、波長380nmの紫外線照射下でのエポキシ樹脂複合硬化物中の第一充填材粒子3の発光スペクトルを測定したところ、エポキシ樹脂複合硬化物の第一充填材粒子3が局在化している面と存在していない面とでは色調が異なっており、むらのある赤色発光であることを確認した。
【0053】
(比較例2)
第二充填材粒子4を用いなかった以外は実施例1と同様にして未硬化の複合樹脂組成物を作製し、この後、複合樹脂組成物を硬化させることによって、エポキシ樹脂複合硬化物を得た。加熱後に得られた充填材1(第一充填材粒子3のみの造粒粒子)は焼きしまっており、第一充填材粒子3が数多くネッキングした状態であった。この充填材1を用いて作製したエポキシ樹脂複合硬化物は、充填材1が偏在化しており、均一に分散していないことを確認した。さらに、波長254nm、波長380nmの紫外線照射下でのエポキシ樹脂複合硬化物の充填材1の発光スペクトルを測定したところ、粒子が局在化していることにより、色むらがあり、不均一な発光を示していた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は製造工程を示す説明図、(b)は硬化物の作用を示す説明図である。
【図2】実施例1における充填材の分散状態を示すSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図3】実施例1における第一充填材粒子の分散状態を示すTEM(透過型電子顕微鏡)写真である。
【図4】比較例1における硬化物の下面を示すSEM写真である。
【図5】従来例を示し、(a)は製造工程を示す説明図、(b)は硬化物の作用を示す説明図である。
【図6】他の従来例を示し、(a)は製造工程を示す説明図、(b)は硬化物の作用を示す説明図である。
【図7】他の従来例を示す製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 充填材
2 樹脂バインダー
3 第一充填材粒子
4 第二充填材粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材と樹脂バインダーとを含有する複合樹脂組成物において、前記充填材は、ナノサイズの平均粒子径を有する第一充填材粒子と、第一充填材粒子とは種類の異なるナノサイズの平均粒子径を有する第二充填材粒子とを樹脂バインダーに配合する前に予め混合することによって、第二充填材粒子を介して第一充填材粒子同士が接触することなく造粒された造粒粒子であることを特徴とする複合樹脂組成物。
【請求項2】
第一充填材粒子以上の量の第二充填材粒子を用いて充填材を造粒して成ることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
充填材の平均粒子径が1〜500μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
第二充填材粒子が平均粒子径0.1〜30nmのSiO微粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
【請求項5】
第一充填材粒子が光波長変換材料粒子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
第一充填材粒子として三種類の光波長変換材料を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
【請求項7】
第一充填材粒子の平均粒子径が1〜200nmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂バインダーとして、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチルから選ばれる少なくとも一を用いて成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の複合樹脂組成物。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−137836(P2006−137836A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328036(P2004−328036)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構 「ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)ナノ粒子の合成と機能化技術プロジェクト」の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】