説明

複合樹脂組成物

【課題】 ポリオレフィン系樹脂が有する機械物性(剛性、耐衝撃性など)及び成形加工性の低下、更にはその外観不良を招くことなく、導電性(帯電防止性)、塗装性に優れた複合樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 次の(A)成分及び(B)成分からなる樹脂成分100質量部に対し、(C)成分を含んでなる複合樹脂組成物である。
(A)炭素数2〜6のαオレフィンから選択される1種以上のモノマーを単独重合又は共重合して得られるポリオレフィン系樹脂80〜99.9質量%
(B)炭素数8以上のα−オレフィン単位を50モル%以上含む結晶性高級α−オレフィン重合体0.1〜20質量%
(C)導電性フィラー0.1〜30質量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合樹脂組成物に関し、更に詳しくは、ポリオレフィン系樹脂、炭素数8以上の高級α−オレフィン単位を50モル%以上含む重合体及び導電性フィラーを含んでなる複合樹脂組成物であって、導電性(帯電防止性)、耐溶剤性、剛性、耐衝撃性などの機械物性、塗膜密着性などの塗装性及び成形品外観に優れる複合樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス技術の発展により、情報処理装置や電子事務機器が急速に普及している。
これらの装置、機器の外装材及び部品として、耐溶剤性及び剛性、耐衝撃性などの機械物性に優れるポリオレフィン系樹脂が広範に採用されている。
ところで、これらの装置、機器に用いられる電子部品から発生するノイズが周辺機器に影響を与える電磁波障害や静電気による誤動作等のトラブルが問題となっている。
これらの問題の解決のため、耐溶剤性や機械物性に優れると共に、導電性(帯電防止性、制電性)に優れた材料が要求されている。
例えば、ポリオレフィン系樹脂に、導電性フィラーとして炭素繊維を配合した複合樹脂組成物を使用する場合、導電性を付与するには炭素繊維の高充填を必要とするため、ポリオレフィン系樹脂本来の物性が低下する。
また、導電性フィラーの添加に伴い、ポリオレフィン系樹脂組成物の流動性が大幅に低下するため、射出成形用途では問題となっている。
ポリオレフィン系樹脂に、導電性フィラーを含有させて、導電性を高める試みとして、非晶性ポリオレフィン及びゴム様物質からなる樹脂混合物に、導電性カーボン繊維を配合してなる導電性非晶性ポリオレフィン樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この技術では、ポリオレフィン系樹脂として非晶性樹脂が採用されているため、剛性などの機械物性を必要とする部材への適用は難しい。
導電性フィラーとして、カーボンナノチューブを用いる試みがなされている(例えば、特許文献2参照)。
この公報には、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物にカーボンナノチューブを配合してなる、半導電性遮蔽機能を有するケーブルが開示されている。
この技術では、カーボンナノチューブを配合することで体積抵抗率を低下させている。
また、任意成分として導電性カーボンブラックの配合が開示されているが、多量のカーボンナノチューブ、導電性カーボンブラックが使用されているため、射出成形への適用には難点がある。
【0003】
ポリオレフィン樹脂は、自動車部品や家電製品の部品に代表される工業部品分野で、幅広く使用されている。
これらの部品は意匠性付与のために、表面に塗装を施すケースが多い。
しかし、ポリオレフィン系樹脂は塗膜密着性に乏しいため、部品表面にプライマーを塗布して、塗膜を密着させる必要がある。
プライマーは、有機溶剤を溶媒とするものであるため、塗装作業において、溶媒が大気中に拡散し、環境負荷を増大させている。
このため、ポリオレフィン系樹脂に塗膜密着性を付与して、プライマーの使用をなくす試みがなされている。
ところで、これら工業部品への塗装方式は、静電塗装法が主流となってきている。
元来、ポリオレフィン系樹脂は、電気絶縁性材料であり、塗料樹脂成分との反応性にも乏しいため、プライマーを塗布しないポリオレフィン系樹脂単体では静電塗装は不可能である。
【0004】
以上は、ポリオレフィン系樹脂に導電性フィラーを配合する技術であるが、炭素数10以上のα−オレフィン単位を50モル%以上含む結晶性高級α−オレフィン重合体についての開示がある(例えば、特許文献3参照)。
本公報には、示差走査型熱量計(DSC)により測定した融点が20〜100℃の範囲にある、炭素数10以上の高級αオレフィンから得られる結晶性高級αオレフィン重合体が開示され、結晶性高級αオレフィン重合体の用途として、有機無機複合材料が例示され、ポリオレフィンとの相溶性や無機充填剤との混合性といった特性が挙げられている。
しかし、ポリオレフィン系樹脂、炭素数8以上のα−オレフィン単位を50モル%以上含む結晶性高級α−オレフィン重合体及び導電性フィラーからなる複合樹脂組成物についての開示はない。
【0005】
【特許文献1】特開平7−109396号公報
【特許文献2】特開2000−357419号公報
【特許文献3】国際特許公開03−070790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂が有する機械物性(剛性、耐衝撃性など)及び成形加工性(流動性)の低下、更にはその外観不良を招くことなく、導電性(帯電防止性)、塗装性に優れた複合樹脂組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、導電性と機械物性のバランスに優れた複合樹脂組成物に関して鋭意検討した結果、炭素数2〜6のα−オレフィンを重合して得られるポリオレフィン系樹脂に、改質成分として特定の高級α−オレフィン重合体を使用し、かつ導電性フィラーを使用することにより、機械物性、成形加工性、導電性及び塗装性のバランスに優れた複合樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
1.次の(A)成分及び(B)成分からなる樹脂成分100質量部に対し、(C)成分を含んでなる複合樹脂組成物。
(A)炭素数2〜6のαオレフィンから選択される1種以上のモノマーを単独重合又は共重合して得られるポリオレフィン系樹脂80〜99.9質量%
(B)炭素数8以上のα−オレフィン単位を50モル%以上含む結晶性高級α−オレフィン重合体0.1〜20質量%
(C)導電性フィラー0.1〜30質量部
2.(D)135℃のパラキシレンに溶解し、ろ過後のろ液中の成分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定して得られる分子量分布曲線のメインのピークトップの分子量(Mp)が10,000〜900,000の範囲にある上記1に記載の複合樹脂組成物。
3.(A)成分が、ポリプロピレン系樹脂である上記1又は2に記載の複合樹脂組成物。
4.(E)135℃のパラキシレンに溶解し、ろ過後のろ液を50℃で8時間放置し、該ろ液を再度ろ過した後のろ液中に含まれる成分が、次の(a)及び(b)を満たす上記1〜3のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い融解曲線を測定した際、−60〜100℃の範囲に1つ以上の融点(Tm)が存在し、1つの融解ピークの半値幅が20℃未満である。
(b)−70℃にて広角X線散乱測定を行った際、20〜22°に現れる強度I1と23.5〜25°に現れる強度I2との強度比(I1/I2)が5以上である。
5.(C)成分が次の要件を満たすカーボンナノチューブである上記1〜4のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
(C−1)非晶カーボン粒子の含有量が20質量%以下
(C−2)直径が0.5〜120nmであり、長さが500nm以上
6.(B)成分及10〜99質量%及び(C)成分1〜90質量%を混合した後、(B)成分の融点以上に加熱し、冷却固化させてなる樹脂組成物。
7.上記6に記載の樹脂組成物と(A)成分との混合物を含む上記1〜5のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
8.上記1〜5のいずれかに記載の又は上記7に記載の複合樹脂組成物を成形してなるオフィスオートメーション機器部品、情報・通信機器部品、自動車部品又は家庭電化機器部品。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂が有する機械物性(剛性、耐衝撃性など)、成形加工性及び良好な外観を保持し、導電性(帯電防止性)並びに塗装性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の複合樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン系樹脂を80〜99.9質量%及び(B)炭素数8以上のα−オレフィン単位を50モル%以上含む結晶性高級α−オレフィン重合体0.1〜20質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、(C)導電性フィラー0.1〜30質量部を配合してなる樹脂組成物である。
(B)成分の含有量が0.1質量%以上であると、(C)成分の分散性が向上するため、導電性が上昇し、更に複合樹脂組成物の流動特性にも好ましい影響を与える。
また、(B)成分が20質量%以下であると、複合樹脂組成物の耐衝撃性などの機械物性が上昇する。
(A)成分と(B)成分の含有割合は、好ましくは(A)成分が85〜99.5質量%で、(B)成分が15〜0.5質量%である。
また、(C)成分の配合量が上記範囲内であると、導電性(帯電防止性)、塗装性及び成形加工性(流動性)に優れる樹脂組成物が得られる。
(C)成分の配合量は、好ましくは0.1〜15質量部である。
【0011】
また、本発明の複合樹脂組成物は、(D)該複合樹脂組成物を135℃のパラキシレンに溶解し、ろ過後のろ液中の成分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定して得られる分子量分布曲線のメインのピークトップの分子量(Mp)が10,000〜900,000の範囲にあることが好ましい。
分子量(Mp)が10,000以上であると、衝撃強度などの靭性が上昇し、成形品の使用可能な範囲が広くなり、900,000以下であると、流動性が上昇し、成型加工性が向上する。
分子量(Mp)は、より好ましくは20,000〜800,000、更に好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
【0012】
更に、本発明の複合樹脂組成物は、(E)該複合樹脂組成物を135℃のパラキシレンに溶解し、ろ過後のろ液を50℃で8時間放置し、該ろ液を再度ろ過した後のろ液中に含まれる成分が、次の(a)及び(b)を満たすものであることが好ましい。
ろ液中に含まれる成分が(a)及び(b)の要件を満たす場合、導電性の発現の点で好適である。
この成分は、主として(B)成分に由来するものである。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い融解曲線を測定した際、−60〜100℃の範囲に1つ以上の融点(Tm)が存在し、1つの融解ピークの半値幅が20℃未満である。
−60〜100℃の範囲に1つ以上の融点が存在すると、導電性フィラーの分散性が向上し導電性が発現し易くなり、また、衝撃強度が上昇する。
融点(Tm)は、好ましくは−60〜85℃、より好ましくは−60〜75℃の範囲である。
また、融解ピークの半値幅が20℃未満であると、導電性フィラーの分散性が向上し、導電性が発現し易くなる。
融解ピークの半値幅が20℃未満であると、この成分が融点近傍まで固体であるため、(A)、(B)及び(C)成分を混練する際、系内の粘度が均一に上昇し、フィラーの分散性が向上する。
一方、融解ピークの半値幅が20℃以上であると、(A)、(B)及び(C)成分が混練される前に、(B)成分同士が固まり、系内の粘度が均一に上がらず、フィラーの分散性が向上し難くなる。
半値幅は、好ましくは18℃未満、より好ましくは15℃未満である。
(b)−70℃にて広角X線散乱測定を行った際、20〜22°に現れる結晶成分に起因する強度I1と23.5〜25°に現れる準結晶成分に起因する強度I2との強度比(I1/I2)が5以上である。
強度比(I1/I2)が5以上であると、導電性が上昇する。
強度比(I1/I2)が5以上であることは、準結晶成分が少ないことを意味し、この場合、硬い結晶系が形成され、(A)、(B)及び(C)成分の混練時のせん断力が(C)成分の分散に使用されるため、結果として導電性が上昇し易くなる。
強度比(I1/I2)は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上である。
【0013】
一方、本発明の樹脂組成物は、(B)成分及10〜99質量%及び(C)成分1〜90質量%を混合した後、(B)成分の融点以上に加熱し、冷却固化させてなる樹脂組成物である。
冷却温度は、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
本発明の樹脂組成物は、本発明の複合樹脂組成物のマスターバッチとして使用することができる。
この場合、必要により、適宜樹脂組成物を粉砕して使用することができる。
(B)成分及び(C)成分の含有量が上記の範囲にあれば、(A)成分を配合して得られる複合樹脂組成物は、導電(帯電防止)性、塗装性及び成形外観が更に優れている。
また、(C)成分の含有量が1質量%以上であると、導電性が上昇し、90質量%以下であると、マスターバッチの成形性が上昇する。
マスターバッチにおいて、(B)成分と(C)成分との含有割合は、好ましくは(B)成分が15〜99質量%で、(C)成分が85〜1質量%であり、より好ましくは(B)成分が15〜90質量%で、(C)成分が85〜10質量%である。
【0014】
本発明の(A)ポリオレフィン系樹脂は、本発明の複合樹脂組成物の主成分であり、該組成物を成形して得られる成形品の剛性や耐衝撃性などの機械物性、成形加工性、耐溶剤性、耐熱性などの特性を発現する成分である。
ポリオレフィン系樹脂は、上記の特性発現の点で、炭素数2〜6のα−オレフィンから選択される1種以上のモノマーを単独重合又は共重合して得られるポリオレフィン系樹脂である。
しかし、上記特性発現を妨げない範囲で、炭素数7以上のα−オレフィンをコモノマーとして使用することもできる。
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンの共重合体、2種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンの共重合体やアイオノマー樹脂等が挙げられる。
共重合体としては、ランダム又はブロックのいずれの共重合体であってもよい。
また、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の種々のポリオレフィン系樹脂の混合物を用いることもできる。
ポリオレフィン系樹脂のうち、プロピレンを主原料とするポリプロピレン系樹脂は、剛性や耐衝撃性、耐溶剤性、耐熱性に優れるため、本発明の複合樹脂組成物に特に好適に使用することができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレンとエチレン及び/又は上記α―オレフィンとの共重合体から構成されるブロック共重合体やランダム共重合体、極性官能基を有する変性ポリプロピレンなどが挙げられる。
更に、(A)成分として、上記のポリオレフィン系樹脂に、次に例示するようなゴムを配合してなるポリマーアロイを用いてもよい。
このようなゴムとしては、具体例として、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、エチレン−ブテン−1共重合ゴム、エチレン−ヘキセン共重合ゴム、エチレン−オクテン共重合ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合ゴム、部分水添スチレン−イソプレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンゴム、スチレングラフト−エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−グラフト−エチレン−プロピレン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル−グラフト−エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル−グラフト−エチレン−プロピレン共重合ゴムがなど挙げられる。
ポリマーアロイ中のゴムの含量は、ポリオレフィン系樹脂の特性に新たな特性を付加するという観点から、50質量%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の(B)炭素数8以上のα−オレフィン単位を50モル%以上含む結晶性高級α−オレフィン重合体は、(A)成分に(C)成分を配合することに起因する、(C)成分に由来する成形加工性の低下を防止するために配合する成分である。
(B)成分は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した融点が、通常100℃以下、好ましくは25〜85℃、より好ましくは25〜70℃である。
従って、(B)成分は、常温で固体であり粉体となるため、取り扱いが容易である。
(B)成分は上記特徴を有するため、(B)成分を配合することにより、ポリオレフィン系樹脂が有する優れた機械物性、成形加工性に導電性や塗装性といった特性を付与することができる。
(B)成分は、200℃における溶融粘度が、通常20,000mPa・s以下、好ましくは10,000mPa・s以下と低いため、(A)成分に過剰の(C)成分の配合したときに生じる、流動性の低下を防止ないし低減することができる。
また、(B)成分は、(A)成分との混合性(相溶性)に優れるとともに、(C)成分との親和性に優れる。
このため、(B)成分を配合することにより、(C)成分の分散が促進され、(A)成分の機械物性が保持される。
更に、(B)成分は次のような機能を有すると推定される。
即ち、固体状の(B)成分は、結晶性が高く硬いため、(C)成分の凝集体を分散させる機能に優れる。
また、(B)成分は、通常(A)成分より融点が低いため、(A)〜(C)の3成分を混合、溶融混練する際、(B)成分中に(C)成分が取り込まれ、その後、(A)成分が溶融して、(C)成分が取り込まれている(B)成分が(A)成分中に分散される。
【0016】
本発明における(B)成分は、炭素数10以上のα−オレフィン単位を50モル%以上を含む結晶性高級α−オレフィン重合体が好ましい。
高級α−オレフィンとしては、好ましくは炭素数10〜40、より好ましくは炭素数14〜24である。
炭素数が8未満であると、重合体は側鎖結晶性を有し難い。
本発明における(B)成分(高級α−オレフィン重合体と略称することがある)において、炭素数8以上の高級α−オレフィン単位の含量は50〜100モル%が好ましく、より好ましくは65〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%、一層好ましくは90〜100モル%、極めて好ましくは100モル%である。
高級α−オレフィン重合体中の、炭素数8以上の高級α−オレフィン単位の含量が50モル%未満では側鎖結晶性が低下する。
【0017】
更に、本発明における(B)成分は、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは2,000〜2,500,000、より好ましくは3,000〜2,000,000、更に好ましくは4,000〜1,000,000の範囲である。
Mwが2,000以上であると、複合樹脂組成物を成形して得られる成形体の衝撃強度などの靭性特性が上昇し、2,500,000以下であると、混錬性や流動性が上昇する。
また、(B)成分の重量平均分子量(Mw)が2,000以上であると、マスターバッチと(A)成分から製造される複合樹脂組成物を成形して得られる成形体の衝撃強度などの靭性特性が上昇し、2,500,000以下であると、マスターバッチ製造時の混錬性や流動性が上昇する。
混練性が向上することにより、より均一な複合樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
次に、本発明の(B)成分である高級α−オレフィン重合体は、以下に例示するメタロセン系触媒を用いて製造することができ、中でも特に、アイソタクチックポリマーを合成できる、C2対称及び、C1対称の遷移金属化合物を用いることが好ましい。
好ましい製造方法は、(a)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物、及び(b)(b−1)該(a)成分の遷移金属化合物又はその派生物と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物及び(b−2)アルミノキサンから選ばれる少なくとも一種類の成分を含有する重合用触媒の存在下、炭素数8以上の高級α−オレフィンを重合させる方法である。
【0019】
【化1】

【0020】
上記一般式(I)において、Mは周期律表第3〜10族又はランタノイド系列の金属元素を示し、具体例としてはチタン,ジルコニウム,ハフニウム,イットリウム,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,コバルト,パラジウム及びランタノイド系金属などが挙げられるが、これらの中ではオレフィン重合活性などの点からチタン,ジルコニウム及びハフニウムが好適である。
1及びE2はそれぞれ、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,ヘテロシクロペンタジエニル基,置換ヘテロシクロペンタジエニル基,アミド基(−N<),ホスフィン基(−P<),炭化水素基〔>CR−,>C<〕及び珪素含有基〔>SiR−,>Si<〕(但し、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基あるいはヘテロ原子含有基である)の中から選ばれた配位子を示し、A1及びA2を介して架橋構造を形成している。
又、E1及びE2は互いに同一でも異なっていてもよい。
このE1及びE2としては、置換シクロペンタジエニル基,インデニル基及び置換インデニル基が好ましい。
また、Xはσ結合性の配位子を示し、Xが複数ある場合、複数のXは同じでも異なっていてもよく、他のX,E1,E2又はYと架橋していてもよい。
該Xの具体例としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアミド基、炭素数1〜20の珪素含有基、炭素数1〜20のホスフィド基、炭素数1〜20のスルフィド基、炭素数1〜20のアシル基などが挙げられる。
一方、Yはルイス塩基を示し、Yが複数ある場合、複数のYは同じでも異なっていてもよく、他のYやE1、E2又はXと架橋していてもよい。
該Yのルイス塩基の具体例としては、アミン類,エーテル類,ホスフィン類、チオエーテル類などを挙げることができる。
次に、A1及びA2は二つの配位子を結合する二価の架橋基であって、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−Se−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−BR1−又は−AlR1−を示し、R1は水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
このような架橋基としては、例えば、一般式
【0021】
【化2】

【0022】
(Dは炭素、ケイ素、ゲルマニウム又はスズ、R2及びR3はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基で、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、又互いに結合して環構造を形成していてもよい。eは1〜4の整数を示す。)
で表されるものが挙げられ、その具体例としては、メチレン基,エチレン基,エチリデン基,プロピリデン基,イソプロピリデン基,シクロヘキシリデン基,1,2−シクロヘキシレン基,ビニリデン基(CH2=C=),ジメチルシリレン基,ジフェニルシリレン基,メチルフェニルシリレン基,ジメチルゲルミレン基,ジメチルスタニレン基,テトラメチルジシリレン基,ジフェニルジシリレン基などを挙げることができる。
これらの中で、エチレン基,イソプロピリデン基及びジメチルシリレン基が好適である。
qは1〜5の整数で〔(Mの原子価)−2〕を示し、rは0〜3の整数を示す。
このような一般式(I)で表される遷移金属化合物の中では、一般式(II)
【0023】
【化3】

【0024】
で表される二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物が好ましい。
上記一般式(II)において、M、A1、A2、q及びrは、一般式(I)と同じである。
1はσ結合性の配位子を示し、X1が複数ある場合、複数のX1は同じでも異なっていてもよく、他のX1又はY1と架橋していてもよい。
このX1の具体例としては、一般式(I)のXの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。
1はルイス塩基を示し、Y1が複数ある場合、複数のY1は同じでも異なっていてもよく、他のY1又はX1と架橋していてもよい。
このY1の具体例としては、一般式(I)のYの説明で例示したものと同じものを挙げることができる。
4〜R9はそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20の炭化水素基,炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基,珪素含有基又はヘテロ原子含有基を示すが、その少なくとも一つは水素原子でないことが必要である。
また、R4〜R9は互いに同一でも異なっていてもよく、隣接する基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。
なかでも、R6とR7は環を形成していること及びR8とR9は環を形成していることが好ましい。
4及びR5としては、酸素、ハロゲン、珪素等のヘテロ原子を含有する基が重合活性が高くなり好ましい。
この二重架橋型ビスシクロペンタジエニル誘導体を配位子とする遷移金属化合物は、配位子間の架橋基にケイ素を含むものが好ましい。
【0025】
一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4,7−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4,7−ジ−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(5,6−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチルシクロペンタジエニル)(3’−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,4’−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−エチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−エチルシクロペンジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペ
ンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−n−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−フェニルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,(1,2’−メチレン)(2,1’−イソプロピリデン)(3−メチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)(3’−メチル−5’−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン) ビスインデニルジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレンインデニル)(2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル)(2,2’−ジフェニルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル) ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレンインデニル)(2,2’−ジメチルシリレン−3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジイソブロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジフェニルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジフェニルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、(1,1’−ジイソプロピルシリレン)(2,2’−ジイソプロピルシリレン)(インデニル)(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなど及びこれらの化合物におけるジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換したものを挙げることができる。
もちろんこれらに限定されるものではない。
又、他の族又はランタノイド系列の金属元素の類似化合物であってもよい。
又、上記化合物において、(1,1’−)(2,2’−)が(1,2’−)(2,1’−)であってもよく、(1,2’−)(2,1’−)が(1,1’−)(2,2’−)であってもよい。
【0026】
次に、(b)成分のうちの(b−1)成分としては、上記(a)成分の遷移金属化合物と反応して、イオン性の錯体を形成しうる化合物であれば、いずれのものでも使用できるが、次の一般式(III)、(IV)
(〔L1−R10k+a(〔Z〕-b ・・・(III)
(〔L2k+a(〔Z〕-b ・・・(IV)
(ただし、L2はM2、R11123、R133C又はR143である。)
〔(III),(IV)式中、L1はルイス塩基、〔Z〕-は、非配位性アニオン〔Z1-及び〔Z2-、ここで〔Z1-は複数の基が元素に結合したアニオン、即ち〔M112・・・Gf-(ここで、M1は周期律表第5〜15族元素、好ましくは周期律表第13〜15族元素を示す。G1〜Gfはそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜40のジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数7〜40のアルキルアリール基,炭素数7〜40のアリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基、又は炭素数2〜20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G1〜Gfのうち2つ以上が環を形成していてもよい。fは〔(中心金属M1の原子価)+1〕の整数を示す。)、〔Z2-は、酸解離定数の逆数の対数(pKa)が−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基、あるいは一般的に超強酸と定義される酸の共役塩基を示す。又、ルイス塩基が配位していてもよい。又、R10は水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R11及びR12はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R13は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。R14はテトラフェニルポルフィリン,フタロシアニン等の大環状配位子を示す。kは〔L1−R10〕,〔L2〕のイオン価数で1〜3の整数、aは1以上の整数、b=(k×a)である。M2は、周期律表第1〜3、11〜13、17族元素を含むものであり、M3は、周期律表第7〜12族元素を示す。〕
で表されるものを好適に使用することができる。
【0027】
ここで、L1の具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N−メチルアニリン,ジフェニルアミン,N,N−ジメチルアニリン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン,p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリンなどのアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィン,ジフェニルホスフィンなどのホスフィン類、テトラヒドロチオフェンなどのチオエーテル類、安息香酸エチルなどのエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリルなどのニトリル類などを挙げることができる。
10の具体例としては水素,メチル基,エチル基,ベンジル基,トリチル基などを挙げることができ、R11,R12の具体例としては、シクロペンタジエニル基,メチルシクロペンタジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基などを挙げることができる。
13の具体例としては、フェニル基,p−トリル基,p−メトキシフェニル基などを挙げることができ、R14の具体例としてはテトラフェニルポルフィリン,フタロシアニン,アリル,メタリルなどを挙げることができる。
また、M2の具体例としては、Li,Na,K,Ag,Cu,Br,I,I3などを挙げることができ、M3の具体例としては、Mn,Fe,Co,Ni,Znなどを挙げることができる。
また、〔Z1-、即ち〔M112・・・Gf〕において、M1の具体例としてはB,Al,Si,P,As,Sbなど、好ましくはB及びAlが挙げられる。
又、G1,G2〜Gfの具体例としては、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基など、アルコキシ基若しくはアリールオキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−ブトキシ基,フェノキシ基など、炭化水素基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,n−オクチル基,n−エイコシル基,フェニル基,p−トリル基,ベンジル基,4−t−ブチルフェニル基,3,5−ジメチルフェニル基など、ハロゲン原子としてフッ素,塩素,臭素,ヨウ素,ヘテロ原子含有炭化水素基としてp−フルオロフェニル基,3,5−ジフルオロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基,ビス(トリメチルシリル)メチル基など、有機メタロイド基としてペンタメチルアンチモン基、トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素などが挙げられる。
又、非配位性のアニオン、即ちpKaが−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基〔Z2-の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3SO3-,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ベンジルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド,過塩素酸アニオン(ClO4-,トリフルオロ酢酸アニオン(CF3CO2-,ヘキサフルオロアンチモンアニオン(SbF6-,フルオロスルホン酸アニオン(FSO3-,クロロスルホン酸アニオン(ClSO3-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化アンチモン(FSO3/SbF5-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化砒素(FSO3/AsF5-,トリフルオロメタンスルホン酸/5−フッ化アンチモン(CF3SO3/SbF5-などを挙げることができる。
【0028】
このような前記(a)成分の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物、即ち(b−1)成分化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム,テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム,テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム,テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸フェロセニウム,テトラフェニル硼酸銀、テトラフェニル硼酸トリチル,テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀,ヘキサフルオロ砒素酸銀,過塩素酸銀,トリフルオロ酢酸銀,トリフルオロメタンスルホン酸銀などを挙げることができる。
(b−1)は一種用いてもよく、又二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、(b−2)成分のアルミノキサンとしては、一般式(V)
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、R15は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基などの炭化水素基あるいはハロゲン原子を示し、wは平均重合度を示し、通常2〜50、好ましくは2〜40の整数である。尚、各R15は同じでも異なっていてもよい。)
で示される鎖状アルミノキサン、及び一般式(VI)
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、R15及びwは前記一般式(V)におけるものと同じである。)
で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水などの縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。
例えば、(1)有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、(2)重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、(3)金属塩などに含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、(4)テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、更に水を反応させる方法などがある。
尚、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。
これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)触媒成分と(b)触媒成分との使用割合は、(b)触媒成分として(b−1)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは10:1〜1:100、より好ましくは2:1〜1:10の範囲が望ましく、上記範囲を逸脱する場合は、単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。
又、(b−2)化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。
この範囲を逸脱する場合は単位質量ポリマーあたりの触媒コストが高くなり、実用的でない。
又、触媒成分(b)としては(b−1),(b−2)を単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0033】
また、本発明における高級α−オレフィン重合体を製造する際の重合用触媒は、上記(a)成分及び(b)成分に加えて(c)成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。
ここで、(c)成分の有機アルミニウム化合物としては、一般式(VII)
16vAlJ3-v ・・・(VII)
〔式中、R16は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である〕
で示される化合物が用いられる。
前記一般式(VII)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド,エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
前記(a)触媒成分と(c)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、より好ましくは1:5〜1:2000、更に好ましくは1:10ないし1:1000の範囲が望ましい。
該(c)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になるとともに、重合体中に多量に残存し、好ましくない。
【0034】
本発明における高級α−オレフィン重合体の製造においては、触媒成分の少なくとも一種を適当な担体に担持して用いることができる。
該担体の種類については特に制限はなく、無機酸化物担体、それ以外の無機担体及び有機担体のいずれも用いることができるが、特に無機酸化物担体あるいはそれ以外の無機担体が好ましい。
無機酸化物担体としては、具体的には、SiO2,Al23,MgO,ZrO2,TiO2,Fe23,B23,CaO,ZnO,BaO,ThO2やこれらの混合物、例えば、シリカアルミナ,ゼオライト,フェライト,グラスファイバーなどが挙げられる。
これらの中では、特にSiO2,Al23が好ましい。
尚、上記無機酸化物担体は、少量の炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩などを含有してもよい。
一方、上記以外の担体として、MgCl2,Mg(OC25)2などで代表される一般式MgR17x1yで表されるマグネシウム化合物やその錯塩などを挙げることができる。
ここで、R17は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基、X1はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、xは0〜2、yは0〜2でり、かつx+y=2である。
各R17及び各X1はそれぞれ同一でもよく、又異なってもいてもよい。
又、有機担体としては、ポリスチレン,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,ポリエチレン,ポリ1−ブテン,置換ポリスチレン,ポリアリレートなどの重合体やスターチ,カーボンなどを挙げることができる。
本発明における高級α−オレフィン重合体の製造に用いられる触媒の担体としては、MgCl2,MgCl(OC25),Mg(OC25)2,SiO2,Al23などが好ましい。
また、担体の性状は、その種類及び製法により異なるが、平均粒径は通常1〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。
粒径が小さいと重合体中の微粉が増大し、粒径が大きいと重合体中の粗大粒子が増大し嵩密度の低下やホッパーの詰まりの原因になる。
また、担体の比表面積は、通常1〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/g、細孔容積は通常0.1〜5cm3/g、好ましくは0.3〜3cm3/gである。
比表面積又は細孔容積の何れかが上記範囲を逸脱すると、触媒活性が低下することがある。
尚、比表面積及び細孔容積は、例えば、BET法に従って吸着された窒素ガスの体積から求めることができる〔J.Am.Chem.Soc.、60,309(1983)参照〕。
更に、上記担体が無機酸化物担体である場合には、通常150〜1000℃、好ましくは200〜800℃で焼成して用いることが望ましい。
【0035】
触媒成分の少なくとも一種を前記担体に担持させる場合、(a)触媒成分及び(b)触媒成分の少なくとも一方を、好ましくは(a)触媒成分及び(b)触媒成分の両方を担持させるのが望ましい。
該担体に、(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方を担持させる方法については、特に制限されないが、例えば(1)(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方と担体とを混合する方法、(2)担体を有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物で処理した後、不活性溶媒中で(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方と混合する方法、(3)担体と(a)成分及び/又は(b)成分と有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物とを反応させる方法、(4)(a)成分又は(b)成分を担体に担持させた後、(b)成分又は(a)成分と混合する方法、(5)(a)成分と(b)成分との接触反応物を担体と混合する方法、(6)(a)成分と(b)成分との接触反応に際して、担体を共存させる方法などを用いることができる。
尚、上記(4)、(5)及び(6)の方法において、(c)成分の有機アルミニウム化合物を添加することもできる。
このようにして得られた触媒は、いったん溶媒留去を行って固体として取り出してから重合に用いてもよいし、そのまま重合に用いてもよい。
また、本発明における高級α−オレフィン重合体の製造においては、(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方の担体への担持操作を重合系内で行うことにより触媒を生成させることができる。
例えば、(a)成分及び(b)成分の少なくとも一方と担体と更に必要により前記(c)成分の有機アルミニウム化合物を加え、エチレンなどのオレフィンを常圧〜2MPa(gauge)加えて、−20〜200℃で1分〜2時間程度予備重合を行い触媒粒子を生成させる方法を用いることができる。
【0036】
本発明における高級α−オレフィン重合体の製造に用いられる触媒における(b−1)成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましく、(b−2)成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:0.5〜1:1000、より好ましくは1:1〜1:50とするのが望ましい。
(b)成分として二種以上を混合して用いる場合は、各(b)成分と担体との使用割合が質量比で上記範囲内にあることが望ましい。
又、(a)成分と担体との使用割合は、質量比で、好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましい。
(b)成分〔(b−1)成分又は(b−2)成分〕と担体との使用割合、又は(a)成分と担体との使用割合が上記範囲を逸脱すると、活性が低下することがある。
このようにして調製された重合用触媒の平均粒径は、通常2〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜100μmであり、比表面積は、通常20〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/gである。
平均粒径が2μm未満であると重合体中の微粉が増大することがあり、200μmを超えると重合体中の粗大粒子が増大することがある。
比表面積が20m2/g未満であると活性が低下することがあり、1000m2/gを超えると重合体の嵩密度が低下することがある。
また、1−ブテン系重合体の製造に用いられる触媒において、担体100g中の遷移金属量は、通常0.05〜10g、特に0.1〜2gであることが好ましい。
遷移金属量が上記範囲外であると、活性が低くなることがある。
このように担体に担持することによって工業的に有利な高い嵩密度と優れた粒径分布を有する重合体を得ることができる。
【0037】
本発明における高級α−オレフィン重合体において、重合方法は特に制限されず、スラリー重合法、気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法などのいずれの方法を用いてもよいが、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。
重合条件については、重合温度は通常−100〜250℃、好ましくは−50〜200℃、より好ましくは0〜130℃である。
また、反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(a)成分(モル比)が好ましくは1〜108、特に100〜105となることが好ましい。
重合時間は通常5分〜10時間、反応圧力は好ましくは常圧〜20MPa(gauge)、更に好ましくは常圧〜10MPa(gauge)である。
本発明における高級α−オレフィン重合体の製造方法において、水素を添加すると重合活性が向上するので好ましい。
水素を用いる場合は、通常、常圧〜5MPa(gauge)、好ましくは常圧〜3MPa(gauge)、更に好ましくは常圧〜2MPa(gauge)である。
重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタンなどの脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。
これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。
又、α−オレフィンなどのモノマーを溶媒として用いてもよい。
尚、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
【0038】
重合に際しては、前記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。
予備重合は、固体触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
予備重合に用いるオレフィンについては特に制限はなく、前記に例示したものと同様のもの、例えば、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、あるいはこれらの混合物などを挙げることができるが、該重合において用いるオレフィンと同じオレフィンを用いることが有利である。
予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。
予備重合においては、溶媒として、脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,モノマーなどを用いることができる。
これらの中で特に好ましいのは脂肪族炭化水素である。
また、予備重合は無溶媒で行ってもよい。
予備重合においては、予備重合生成物の極限粘度〔η〕(135℃デカリン中で測定)が0.1デシリットル/g以上、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10000g、特に10〜1000gとなるように条件を調整することが望ましい。
また、重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の種類、使用量、重合温度の選択、更には水素存在下での重合などがある。
窒素等の不活性ガスを存在させても良い。
【0039】
本発明における(C)導電性フィラーは、本発明の複合樹脂組成物に導電性や塗装性を付与するために配合する成分である。
更に、(A)成分と(B)成分からなる樹脂組成物を強化する機能を有する場合がある。
導電性フィラーとしては、金属繊維、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
これらの中では、耐食性の観点から、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの有機導電性フィラーが好ましい。
具体的な有機導電性フィラーとしては、ケッチェンブラック、導電性炭素繊維、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
なかでも、導電性や製品外観の点で、カーボンナノチューブを好ましく使用することができる。
これらの導電性フィラーは、2種以上を併用しても良い。
【0040】
カーボンナノチューブは、炭素からなる、外径が、好ましくは0.5〜120nmで、長さが、好ましくは500nm以上の円筒状の中空繊維状物質であり、より好ましくは、外径が1〜100nm、長さが800〜15,000nmである。
カーボンナノチューブの外径が0.5nm以上であると、分散が容易であり、導電(帯電防止)性が上昇し、外径が120nm以下であると、成形品の外観が良好で、導電(帯電防止)性も上昇する。
カーボンナノチューブの長さが、500nm以上、特に800nm以上であると、導電(帯電防止)性が十分であり、長さが15,000nm以下であると、成形品の外観が良好で、分散が容易となる。
本発明の複合樹脂組成物の導電(帯電防止)性等の観点より、カーボンナノチューブに不純物として含まれる非晶カーボン粒子は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
非晶カーボン粒子を20質量%以下にすることにより、導電(帯電防止)性能が向上する。
更に、酸処理、酸化処理等により表面処理を行い、カーボンナノチューブの表面にカルボン酸や水酸基を付与させたカーボンナノチューブは、導電性が向上する。
官能基量は、カーボンナノチューブに対して、0.5〜10質量%が好ましい。
【0041】
本発明におけるカーボンナノチューブとしては、公知の種々カーボンナノチューブ及びカーボンマイクロコイルを用いることができる。
カーボンナノチューブは、ゼオライトの細孔に鉄やコバルト系触媒を導入した触媒化学気相成長法(CCVD法)、気相成長法(CVD法)、レーザーアブレーション法、炭素棒・炭素繊維等を用いたアーク放電法等によって製造することができる。
カーボンナノチューブの末端形状は、必ずしも円筒状である必要はなく、例えば、円錐状等変形していても差し支えない。
また、カーボンナノチューブの末端が閉じた構造でも、開いた構造のどちらでも用いることができるが、好ましくは末端が開いた構造のものがよい。
カーボンナノチューブの末端が閉じた構造のものは、硝酸等化学処理をすることにより開口することができる。
更に、カーボンナノチューブの構造は、多層でも単層でもよい。
【0042】
また、本発明の複合樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内で、その他の任意成分を配合することができる。
この様な任意配合成分としては、着色するための顔料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミニウムやタルク等の各種核剤、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤等を挙げることができる。
【0043】
更に、本発明の複合樹脂組成物は、2種類以上の無機充填材を含有することも可能である。
無機充填材としては、一般的に形態上、左右あるいは上下で対称形を有しない無機充填材であれば各種のものを使用することができる。
無機充填材の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、石膏、ワラストナイト、クレー、ガラスフレーク、塩基性硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ロックウール、ガラス繊維、マイカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、木粉、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0044】
本発明の複合樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、従来公知の方法で製造することができる。
即ち、(A)〜(C)成分等を混合し、溶融混練することにより製造される。具体的には、各成分を配合し、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒することによって、本発明の複合樹脂組成物が得られる。
本発明の複合樹脂組成物の製造方法としては、(A)〜(C)成分等を一括投入して溶融混錬してもよいが、予め(B)成分と(C)成分を溶融混練後、(A)成分を投入して溶融混練すると、導電性、塗装性や流動性が向上するだけでなく、機械物性も優れたバランスの良い複合樹脂組成物が得られる。
特に、(B)成分は、常温で固体であり粉体となるため、取り扱いが容易であると同時に、通常100℃以下の低融点を持つため、予め粉体状の(B)成分と(C)成分をドライブレンドした後、(B)成分の融点以上に加熱、攪拌、冷却固化、粉砕することにより、(B)成分中に(C)成分が均一に分散したマスターバッチ(本発明の樹脂組成物)を製造することができる。
このようにして製造したマスターバッチと(A)成分を混合し、溶融混練することにより本発明の複合樹脂組成物を製造することもできる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜12及び比較例1〜9
<サンプルの混練>
表1及び表2に示す割合で各成分を配合し、ベント式二軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械社製)を用いて、バレル温度200℃フラット、スクリュー回転数300rpm、総吐出量30kg/hの条件で溶融混練を行い、射出成形用ペレットを得た。
<機械物性測定用テストピースの成形>
得られた射出成形用ペレットを、製射出成形機α−100B〔ファナック(株)〕を用いて、樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件にて、ISO 1873−2−1995に準拠した試験片を作製した。
得られた射出成形用ペレット及び試験片を用いて性能を下記各種試験によって評価し、その結果を表1及び表2に示した。
【0046】
実施例13
後記の(B)成分60質量%及び後記のカーボンナノチューブ40質量%を常温でドライブレンドし、その後、ラボプラストミル(東洋精機製、MR−50、樹脂温度150℃、回転数50rpm、攪拌時間5分)を使用して混練溶融し、25℃まで冷却した後、ペレット大に粉砕し、マスターバッチを製造した。
このマスターバッチを用いた他は、実施例1〜12と同様に射出成形用ペレット、試験片及び成形品を製造し、その性能を評価した。
その結果を表1に示した。
【0047】
用いた配合成分及び性能評価方法を次に示す。
(配合成分)
〔(A)成分〕
ホモPP:出光興産(株)製J−700HP
ブロックPP:出光興産(株)製J−950HP
プロピレン系複合材料:ブロックPP66質量%;出光興産(株)製J6083HP、エラストマー25質量%;ダウデュポン社製エンゲージ8842及びタルク9質量%;浅田製粉製JM−156〔(A)成分にタルクを配合した態様である。〕
変性ポリプロピレン:東洋化成工業(株)製トーヨータックH−1000P
〔(B)成分〕
高級α−オレフィン重合体〔重量平均分子量;98,000、融点;52℃〕:参考例1(2)参照
なお、重量平均分子量(Mw)は、下記(1)分子量分布の最大ピークの分子量(Mp)の測定方法を使用して測定した。
また、融点は、下記(2)融点(Tm)、半値幅の測定方法を使用して測定した。
〔(C)成分〕
カーボンナノチューブ(CNT):サンナノテック社製マルチウォールカーボンナノチューブ;直径10〜30nm、長さ1〜10μm(マルチウォールカーボンナノチューブ量90質量%以上、非晶カーボン量5質量%未満)
炭素繊維(CF):三菱レイヨン(株)製;TR−06U
ケッチェンブラック(KB):ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製;ケッチェンブランクEC−600JD
【0048】
〔性能評価方法〕
(1)分子量分布の最大ピークの分子量(Mp)
[操作方法]
135℃のパラキシレン700mlに、酸化防止剤〔スミカライザーBHT、住友化学(株)製〕1g及び複合樹脂組成物(前記射出成形用ペレット)を5gを加え、135℃で2時間攪拌する。
その後、ろ過(ADVANTEC No5C、東洋濾紙社製)し、ろ液を25℃の4リットルのアセトン中に入れ、2時間かけて固体成分を析出させる。
次に、ろ過(ADVANTEC No5C、東洋濾紙社製)を行い、析出した固体成分を回収する。
得られた固体成分について、次の方法で分子量(Mp)を測定する。
[測定方法]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)の測定結果に基づきポリスチレン換算の分子量分布曲線を測定する。
即ち、上記固体成分を溶解させて得た濃度0.1質量%の1,2,4−トリクロロベンゼン(スミカライザーBHT、住友化学(株)製300ppmを含む)溶液240μlを用い、混合ポリスチレンゲルカラム〔東ソー(株)社製GMH6HT〕を使用し、145℃、流速1.0ml/minにて測定し、得られた分子量分布曲線からもっとも大きいピーク(Mp)を読み取る。
検出には赤外検出器を使用し、波長3.41μmを用いる。
(2)融点(Tm)、半値幅及び広角X線散乱測定における強度比(I1/I2)
[操作方法]
135℃のパラキシレン700mlに酸化防止剤〔スミカライザーBHT、住友化学(株)製〕1g及び複合樹脂組成物(前記射出成形用ペレット)を5gを加え、135℃で2時間攪拌する。
その後、ろ過(ADVANTEC No5C、東洋濾紙社製)し、ろ液を攪拌しながら50℃で8時間放置する。
放置後、析出した成分を取り除くため、ろ過(ADVANTEC No5C、東洋濾紙社製)する。
ろ液を25℃のアセトン4リットル中に入れ、2時間かけて固体成分を析出させる。
次に、ろ過(ADVANTEC No2、東洋濾紙社製)を行い、固体成分を回収する。
この固体成分について、次の方法で融点(Tm)、その半値幅及び強度比(I1/I2を測定する。
〔融点及び半値幅の測定方法〕
示差走査型熱量計(DSC、パーキン・エルマー社製DSC−7)を用い、試料を窒素雰囲気にて、150℃に3分間保持した後、−10℃/分で−70℃まで降温する。
同温度にて3分間保持した後、10℃/分で150℃まで昇温し、得られた融解曲線から融点及び融点のピーク高さに対する半値幅を求める。
〔広角X線散乱測定における強度比(I1/I2)の測定方法〕
試料を上記(融点及び半値幅の測定方法)測定で得られた融点より20℃低い温度で30分間以上熱処理後、−70℃にて広角X線散乱測定に供する。
X線発生装置(株リガク社製UltraX18)からのCuKα線(波長=1.54Å)を用いたX線検出器〔ブルカー・エイエックスエス(株)社製、IPR−420)を使用し、カメラ長150mmにて測定し、全方位の2θ−強度のディフラクションパターンを得る。
そのディフラクションパターンのうち、15〜30°の範囲を用いて強度比を算出する。
算出方法は、回折パターンを20〜22°に現れるピーク1、23.5〜25°に現れるピーク2、19〜20°にピークを持った非晶ピーク3の3つに分離する。
分離した後のピーク1の強度I1(面積強度)とピーク2の強度I2(面積強度)から強度比(I1/I2)を求める。
なお、明確な強度I2が現れない場合もあるが、この場合は5以上の強度比を満たしているものとみなす。
但し、氷やその他ポリマー以外の散乱がこれらの領域に現れた場合は、ピーク1〜3には該当しないものとする。
(3)メルトフローレート(MFR):ISO 1133.97に準拠して測定した(230℃、荷重21.18N)。
(4)曲げ弾性率(FM):ISO 178.93に準拠して測定した。
(5)曲げ応力(FS):ISO 178.93に準拠して測定した。
(6)シャルピー衝撃強度(CI):ISO 179.96(ノッチ付き、常温及び−30℃)に準拠して測定した。
(7)体積固有抵抗率
前記射出成形用ペレットを用いて、下記の条件で、120×120×2mm厚の射出成形片を作製した。
射出成形機:住友ネスタールN515射出成形機(型締め力:200t)
金型温度:45℃
樹脂温度:220℃
充填時間:3.5秒
得られた射出成形片から、樹脂の流れ方向に幅10mm、長さ80mmの短冊を切り出し、両端に導電性ペーストを塗布した。
両端の導電性ペーストを十分乾燥した後、社団法人日本ゴム協会規格SRIS2301に定められた測定方法に従って、体積抵抗率を測定した。
(8)塗料付着率
体積固有抵抗率測定用と同じ射出成形片を使用し、成形片と静電塗装用ハンドガン(ランズバーグインダストリー製REA70/L)先端との距離を60cmに保ち、ウレタン系塗料を印加電圧65kVで30秒間噴霧した。
次に、成形片を100℃に設定したギヤオーブン中に30分放置し、塗膜を硬化させた。
塗膜形成前後の試験片の重量変化量と、噴霧した塗料及び塗料の固形分から、成形片に付着した塗料と噴霧した塗料の比を、「塗料付着率(%)」で表した。
(9)成形外観:目視により下記のように評価した。
○:表面が平滑であり、異物(フィラーの塊)が認められない
△:表面のざらつきは認められないが、所々に異物が見られる
×:表面にざらつきが明確に認められ、且つ異物が存在する
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表1及び2より下記のことが判明した。
比較例1は、(B)成分を含有しないため、塗装性に劣る。
比較例2は、実施例4と同一の(A)成分を用い、(C)成分のカーボンナノチューブの配合量も同一であるが、(B)成分を含有しないため、メルトフローレート(MFR)が小さく流動性が低下し、又体積固有抵抗率及び塗料付着率の点で実施例4に比べに劣る。
即ち、実施例4には、(B)成分の配合効果が現れている。
比較例3は、実施例5と同一の(A)成分を用い、(C)成分のカーボンナノチューブの配合量も同一であるが、(B)成分を含有しないため、低温シャルピー衝撃強度の点で実施例5に比べ劣る。
即ち、実施例5には、(B)成分の配合による機械物性の保持効果が現れている。
比較例4は、実施例6と同一の(A)成分を用い、(C)成分のカーボンナノチューブの配合量も同一であるが、(B)成分を含有しないため、全ての評価項目で実施例6に比べ劣る。
即ち、実施例6には、(B)成分の配合効果が現れている。
比較例5は、実施例7と同一の(A)成分を用い、(C)成分のカーボンナノチューブの配合量も同一であるが、(B)成分を含有しないため、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強度の点で実施例7に比べ劣る。
即ち、実施例7には、(B)成分の配合による機械物性の保持効果が現れている。
比較例6は、実施例8と同一の(A)成分を用い、(C)成分のカーボンナノチューブの配合量も同一であるが、(B)成分を含有しないため、全ての評価項目で実施例8に比べ劣る。
即ち、実施例8には、(B)成分の配合効果が現れている。
比較例7は、実施例4と同一の(A)成分を用い、(C)成分のカーボンナノチューブの配合量も同一であるが、(B)成分を含有しないため、MFRが小さく流動性が低下し、又、体積固有抵抗率及び塗料付着率の点で実施例4に比べ劣る。
即ち、実施例4には、(B)成分の配合効果が現れている。
比較例8は、実施例8と同一の(A)成分を用い、(C)成分のカーボンナノチューブの配合量も同一であるが、(B)成分を含有しないため、体積固有抵抗率及び塗料付着率の点で実施例8に比べ劣る。
即ち、実施例8には、(B)成分の配合の効果が現れている。
比較例9は、導電性フィラーの配合量が本発明の上限値を越える例である。
この組成物は、MFRが0.6に低下し、流動性に劣るため成型加工性に悪影響を与えると考えられる。
【0052】
参考例1(高級α−オレフィン重合体の製造)
(1)触媒調製:(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの製造
シュレンク瓶に(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)のリチウム塩の3.0g(6.97ミリモル)をTHF(テトラヒドロフラン)50ミリリットルに溶解し−78℃に冷却する。
ヨードメチルトリメチルシラン2.1ミリリットル(14.2ミリモル)をゆっくりと滴下し室温で12時間撹拌した。
溶媒を留去しエーテル50ミリリットルを加えて、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。
分液後、有機相を乾燥し溶媒を除去して(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88ミリモル)を得た(収率84%)。
次に、窒素気流下においてシュレンク瓶に前記で得られた(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.88ミリモル)とエーテル50ミリリットルを入れる。
−78℃に冷却しn−BuLiのヘキサン溶液〔1.54M、7.6ミリリットル(1.7ミリモル)〕を滴下した。
室温に上げ12時間撹拌後、エーテルを留去した。
得られた固体をヘキサン40ミリリットルで洗浄することにより、リチウム塩をエーテル付加体として3.06g(5.07ミリモル)を得た(収率73%)。
1H−NMR(90MHz、THF−d8)による測定の結果は、δ 0.04(s、18H、トリメチルシリル);0.48(s、12H、ジメチルシリレン);1.10(t、6H、メチル);2.59(s、4H、メチレン);3.38(q、4H、メチレン)、6.2−7.7(m,8H,Ar−H)であった。
窒素気流下で得られたリチウム塩をトルエン50ミリリットルに溶解した。
−78℃に冷却し、ここへ予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1ミリモル)のトルエン(20ミリリットル)懸濁液を滴下した。
滴下後、室温で6時間撹拌した。その反応溶液の溶媒を留去した。
得られた残渣をジクロロメタンにより再結晶化することにより、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを0.9g(1.33ミリモル)を得た(収率26%)。
1H−NMR(90MHz、CDCl3)による測定の結果は、δ 0.0(s、18H、トリメチルシリル);1.02,1.12(s、12H、ジメチルシリレン);2.51(dd、4H、メチレン);7.1−7.6(m,8H,Ar−H)であった。
【0053】
(2)重合:高級α−オレフィン重合体の製造
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、出光興産(株)製「リニアレン2024」(主として炭素数20,22,24のα−オレフィンの混合体)160gとヘプタン200ミリリットルを加え、重合温度を60℃にした後、トリイソブチルアルミニウム0.5ミリモル、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを1マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート4マイクロモルを加え、水素0.02MPaを導入し、120時間共重合した。
共重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級α−オレフィン重合体140gを得た。
得られた共重合体のGPC法により測定した重量平均分子量は98,000、示差走査型熱量計(DSC)により測定した融点は、52℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の複合樹脂組成物は、上記の特性を有することから、例えば、オフィスオートメーション機器用部品、情報・通信機器用部品、自動車部品又は家庭電化製品用部品などに、好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)成分及び(B)成分からなる樹脂成分100質量部に対し、(C)成分を含んでなる複合樹脂組成物。
(A)炭素数2〜6のαオレフィンから選択される1種以上のモノマーを単独重合又は共重合して得られるポリオレフィン系樹脂80〜99.9質量%
(B)炭素数8以上のα−オレフィン単位を50モル%以上含む結晶性高級α−オレフィン重合体0.1〜20質量%
(C)導電性フィラー0.1〜30質量部
【請求項2】
(D)135℃のパラキシレンに溶解し、ろ過後のろ液中の成分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定して得られる分子量分布曲線のメインのピークトップの分子量(Mp)が10,000〜900,000の範囲にある請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が、ポリプロピレン系樹脂である請求項1又は2に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
(E)135℃のパラキシレンに溶解し、ろ過後のろ液を50℃で8時間放置し、該ろ液を再度ろ過した後のろ液中に含まれる成分が、次の(a)及び(b)を満たす請求項1〜3のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用い融解曲線を測定した際、−60〜100℃の範囲に1つ以上の融点(Tm)が存在し、1つの融解ピークの半値幅が20℃未満である。
(b)−70℃にて広角X線散乱測定を行った際、20〜22°に現れる強度I1と23.5〜25°に現れる強度I2との強度比(I1/I2)が5以上である。
【請求項5】
(C)成分が次の要件を満たすカーボンナノチューブである請求項1〜4のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
(C−1)非晶カーボン粒子の含有量が20質量%以下
(C−2)直径が0.5〜120nmであり、長さが500nm以上
【請求項6】
(B)成分及10〜99質量%及び(C)成分1〜90質量%を混合した後、(B)成分の融点以上に加熱し、冷却固化させてなる樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂組成物と(A)成分との混合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の複合樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の又は請求項7に記載の複合樹脂組成物を成形してなるオフィスオートメーション機器部品、情報・通信機器部品、自動車部品又は家庭電化機器部品。


【公開番号】特開2007−39592(P2007−39592A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227174(P2005−227174)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】