説明

複合浸出プロセス

複合浸出プロセスは、常圧浸出(AL)を含む第1の段階と加圧浸出(HPAL)とを含む第2の段階を含む連続する2以上の浸出段階の複合的な実施による、鉱石中の可溶成分の溶解プロセスを有する。この複合プロセスは、中粒径分画(0.075〜0.5mm)(1)が常圧浸出(AL)に供給されて起こり、その結果、鉄およびアルミニウムが高濃度で溶解しており、残留酸度の高い排液が生成される。この排液(3)は、次の微細粒径分画(0.075mm未満)(4)の加圧酸浸出(HPAL)に供給され、遊離酸を再利用して、加水分解反応中の鉄およびアルミニウムの析出により硫酸が再生され、添加硫酸量の相当量の削減が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の目的は、複合浸出プロセス、すなわち、所定のニッケル鉱または濃縮物の可溶成分の、例えば酸、塩基(これらに限定されない)などの作用による溶解プロセスについて記載することにあり、より詳細には、この複合浸出プロセスは、連続する2以上の浸出段階を複合的に実施して、浸出に使用する薬剤の消費を削減できるようにし、浸出操作のコスト効率の低下を防止する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば周知のように、ラテライト鉱石は、湿式冶金径路によって処理することができ、その際、硫酸浸出が、ニッケルとコバルトの両方を抽出するために使用される従来のプロセスである。この鉱石はFeに富み、Al、MnおよびSiを含有し、Niの割合は0.8%〜1.4%の範囲であり、Coは0.05%〜0.2%である。鉱石の粒径に応じて、加圧酸浸出(HPAL:pressure acid leaching)と常圧浸出(AL:atmospheric leaching)の2種類の浸出を使用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
加圧酸浸出(HPAL)は、耐酸食性のチタンのオートクレーブ内で高温で行われる。この場合、供給する鉱石は、粒径が細かく、Niが高品位でなければならず、これにより、このようなプロセスの使用が必須となる。選別と分級により鉱石を処理することで、ニッケル濃度を約100%濃縮することができる。33〜55気圧の温度平衡蒸気圧範囲で、鉄およびアルミニウム(三価)が最初に溶解されて、その後オートクレーブ内でそれぞれヘマタイトおよびミョウバン石の形で析出され、酸も生成される。
【0004】
常圧浸出(AL)は、酸加圧浸出よりも低温で、大気圧下で実施される。鉱石の中粒径分画(fraction)は、微細な分画の品位と比べてNiの品位が低い。このため、経済的な理由により、加圧浸出(HPAL)の使用は推奨されない。一方、常圧浸出(AL)は投資額が低いことから適切であると考えられるものの、鉄およびアルミニウムの可溶化に、酸消費量が高い。
【0005】
特に常圧浸出(AL)の場合、酸消費量は、鉱石中の鉄、アルミニウム、マグネシウムなどの消費元素の有無に大きく依存し、これらは、良好に溶解して、溶液中に硫酸塩の形で残る。このため、鉱石中でのこれら元素の品位が高くなると、操業に要する酸消費量も高くなる。
【0006】
主として常圧浸出(AL)についていえば、単独の浸出法は、主に使用されているが、鉄、アルミニウム、マグネシウム、マンガンおよびニッケルを好適に浸出する場合には、硫酸の消費量が高いことから、コスト効率が低下しかねない。換言すれば、90%を越えるNiの抽出を達成するには、残存する消費元素を可溶化するために、酸を多量に添加する必要がある。どのような浸出プロセスを使用する場合でも、酸消費量は、このプロセスを実現不能にしてしまう重要な変数となりうる。
【0007】
浸出プロセスに関するほかの不都合に、浸出から出る液があり、この液には、多くの可溶化金属(Fe、Mg、Al、Mn)が含まれており、後半の精製段階を複雑化させ、コストを上昇させるという点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本特許出願は、抽出工程が、2以上の連続的する段階で実施される複合抽出工程を提案する。その目的は、常圧浸出の初期段階で、ニッケルの大部分が、Ni約1%の平均品位に分布している中粒径分画のニッケルを回収することと、この段階において、常圧浸出(AL)中に生成された遊離酸を、その後の加圧酸浸出段階(HPAL)で使用することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、加水分解プロセスがオートクレーブ内で行われ、鉄およびアルミニウムがヘマタイトおよびミョウバン石の形で有利に析出されるほか、操作条件により酸の再生が可能となる場合に、加圧酸浸出(AHPAL)段階での酸消費量を低減することにある。第1の浸出段階(AL)中に硫酸塩の形で溶液中に溶解された鉄およびアルミニウムが、第2の浸出段階(HPAL)に供給され、これらは、加水分解反応による酸の再生のための主原料であると考えられる。本手順は、プロセスの結果に干渉せずに、オートクレーブでの加圧酸浸出段階で添加される酸の低減に直接影響する。
【0010】
本発明の目的および利点は、なかでも、連続する2以上の浸出段階を使用して達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を、添付の図面に基づいて、ここで更に詳しく説明する。
【0012】
図面に示すように、本発明の目的である複合浸出プロセスには、浸出段階の連続的な実施が含まれる。最初に、中程度分画(±<0.5>0.075mm:0.075mm超0.5mm未満)(1)が常圧浸出(AL)に供給される。この段階では、Fe、Al、Mgなどの消費元素を可溶化するために硫酸(2)が多量に消費され、鉄およびアルミニウムが高濃度で溶解され、残留酸度の高い排液(3)が生成される。この排液(3)は、そのままの形で、次の微細粒径分画(±<0.075mm:0.075mm未満)(4)の加圧酸浸出(HPAL)に供給される。この手法の目的は、添加する硫酸(2)の量を低減させることにある。
【0013】
図1に示すように、第1の浸出からの廃液(3)と、硫酸(2)および鉱石の微細な分画のパルプ(0.075mm未満)(4)が、固体比約34%でオートクレーブ(5)に供給されると、加圧浸出(HPAL)が行われる。浸出は、高温(T2)(=250℃)で、撹拌速度500rpmで、1.25時間行われる。硫酸(2)の総消費量は鉱石中の消費元素の品位に依存し、抽出は95%のNiを越える。溶解された鉄およびアルミニウムは、オートクレーブ(5)での加水分解に供給されて、それぞれヘマタイトおよびヘマタイト石の形で析出され、硫酸(2)が再生される。
【0014】
図2に示すように、鉱石の中粒径分画のパルプ(0.075mm超0.5mm未満)(1)が、硫酸(2)と共に、温度約95℃(T1)で、固体比33%、撹拌速度130rpmで6時間、浸出され、常圧浸出(AL)が行われる。Ni抽出は90%を越えるものの、溶液中に多量の鉄およびアルミニウムが溶解するため、硫酸(2)の消費量が非常に多い。
【0015】
図3と図4のフローチャートに示すように、複合連続浸出プロセスには、常圧浸出(AL)と、続く加圧浸出(HPAL)が含まれる。中粒径分画のパルプ(0.075mm超0.5mm未満)(1)が、硫酸(2)と共に、温度95℃(T1)、撹拌速度130rpmで、固体比33%、6時間の浸出に供給される。第1の浸出(AL)からの排液(3)が、硫酸(2)と微細分画(0.075mm未満)(4)と共に、温度250℃、撹拌速度500rpm、圧力650psi、固体比34%、75分間の加圧浸出(HPAL)のために、オートクレーブ(5)に供給される。
【0016】
常圧浸出(AL)からの排液(3)は遊離酸度を示し、これが加圧浸出(HPAL)に使用される。オートクレーブでの硫酸鉄(III)およびアルミニウム(III)の加水分解反応によって、Feがヘマタイトの形で、Alがミョウバン石の形で析出されて、硫酸(2)が再生される。常圧段階(AL)中の浸出の機構と、加圧段階(HPAL)中の鉄およびアルミニウムの析出の機構は、以下のように説明することができる。
【0017】
常圧浸出(AL)中のゲータイトの溶解
2FeOOH+3HSO → Fe(SO+4H
【0018】
ヘマタイトの生成と硫酸の生成(2)は、加圧浸出(HPAL)中に加水分解プロセスによって起こる。
Fe(SO+3HO → Fe(s)+3HSO
【0019】
常圧浸出(AL)中のべーマイトの溶解
2AlOOH+3HSO → Al(SO+4H
【0020】
ミョウバン石の生成と硫酸の生成は、加圧浸出(HPAL)中に加水分解プロセスによって起こる。
3Al(SO+14HO → 2(HO)Al(SO(OH)(s)+5HSO
【0021】
遊離酸が再利用され、溶液中の硫酸鉄(III)およびアルミニウム(III)から硫酸(2)が再生されるため、加圧浸出(HPAL)に添加される硫酸の体積(2)が削減され、平均で硫酸の総消費量(2)のわずか60%であった。
【0022】
換言すれば、複合浸出により、ニッケルの抽出に害を与えずに、添加する硫酸(2)が40%のオーダーと相当量削減される。この硫酸(2)の添加量の削減は、所定のプロジェクトの経済的な実現可能性に直接影響する。加圧浸出(HPAL)中に、遊離酸度が高く、溶液中の鉄およびアルミニウムの濃度が高い常圧浸出(AL)からの排液溶液(3)を使用すると、溶解されている鉄およびアルミニウムを析出させ、硫酸(2)を再生することができる加水分解プロセスにより、この段階での硫酸(2)の添加量を40%削減することができた。
【0023】
本願において、温度、固体比の%、時間、撹拌速度などの特定の操作条件について述べたが、これらに限定されない。このため、これらの条件は、プロセスの最終結果に害を与えずに、連続浸出のそれぞれで変更することができることを指摘する。
【0024】
ここに記載し、図示した好適な操作プロセスは、本発明の範囲から逸脱することなく、実施可能に変更されうることを指摘する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】模式的な加圧浸出(HPAL)を示す説明図。
【図2】模式的な常圧浸出(AL)を示す説明図。
【図3】複合浸出の概略図を示す説明図。
【図4】複合浸出プロセスのフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合浸出プロセスであって、常圧浸出(AL)を含む第1の段階と加圧浸出(HPAL)とを含む第2の段階を含む連続する2以上の浸出段階の複合的実行による、可溶成分の溶解プロセスを有し、前記複合プロセスは、中粒径分画(±<0.5>0.075mm:0.075mm超0.5mm未満)(1)が前記常圧浸出(AL)に供給されて起こり、その結果、鉄およびアルミニウムが高濃度で溶解しており、残留酸度の高い排液(3)が生成され、前記排液(3)が、次の微細粒径分画(0.075mm未満)(4)の前記加圧酸浸出(HPAL)中に供給されることを特徴とする複合浸出プロセス。
【請求項2】
前記第1の複合浸出段階において、鉱石の前記中粒径分画(0.075mm超0.5mm未満)(1)が、前記硫酸溶液(2)と混合され、温度約95℃(T1)、固体比33%、撹拌速度130rpm、6時間の前記常圧浸出(AL)に供給され、前記常圧浸出中のNi抽出は90%を越え、鉄およびアルミニウムの両方の多量の溶解が起こり、鉄およびアルミニウムの両方が前記溶液中に残存することを特徴とする、請求項1に記載の複合浸出プロセス。
【請求項3】
前記第2の複合浸出段階中に、前記第1の浸出(AL)の前記排液(3)が、硫酸(2)および微細な分画のパルプ((±<0.075mm:0.075mm未満)(4)と共に、温度250℃(T2)、撹拌速度500rpm、圧力650psi、固体比34%、75分間の前記加圧浸出(HPAL)のために前記オートクレーブ(5)に供給されることを特徴とする、請求項1に記載の複合浸出プロセス。
【請求項4】
前記常圧浸出(AL)からの前記排液(3)は遊離酸度を示し、加圧浸出(HPAL)で再利用され、硫酸鉄(III)および硫酸アルミニウム(III)の加水分解反応が起こり、Feがヘマタイトの形で、Alがミョウバン石の形で析出して、硫酸(2)が再生されることを特徴とする、請求項3に記載の複合浸出プロセス。
【請求項5】
前記排液(3)の遊離酸の前記再利用と、硫酸鉄(III)およびアルミニウム(III)からの硫酸(2)の前記再生によって、前記加圧浸出(HPAL)に添加される硫酸の体積(2)が、硫酸の総消費量(2)が平均わずか60%に削減されることを特徴とする、請求項1に記載の複合浸出プロセス。
【請求項6】
遊離酸度が高く、溶液中の鉄およびアルミニウムの濃度が高い前記常圧浸出(AL)からの前記排液溶液(3)を、前記加圧浸出(HPAL)に供給することで、溶解されている鉄およびアルミニウムが析出し、前記硫酸酸(2)が再生される前記加水分解プロセスにより、前記硫酸(2)の添加量の40%の削減が達成されることを特徴とする、請求項1に記載の複合浸出プロセス。
【請求項7】
前記複合浸出において、ニッケルの抽出に害を与えずに、前記添加される硫酸(2)が約40%と相当量削減され、プロジェクトの経済的な実現可能性に直接影響することを特徴とする、請求項6に記載の複合浸出プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−515044(P2009−515044A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539195(P2008−539195)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/BR2006/000017
【国際公開番号】WO2007/053919
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506395954)
【Fターム(参考)】