説明

複合筆記具

【課題】第一筆記要素及び第二筆記要素を有する筆記具において、第一筆記要素及び第二筆記要素の少なくとも一方の取外し及び交換を容易にする。
【解決手段】本発明による筆記具は、近位端および遠位端を備え、外側バレルと、外側バレル内に配置された第一筆記要素と、外側バレル内に配置されかつ多孔質ニブを備えた第二筆記要素を有する。第一筆記要素および第二筆記要素は互いに軸線方向に移動できる。第一筆記要素および第二筆記要素の少なくとも一方を取外して交換するために、外側バレルは、第一筆記要素および第二筆記要素の少なくとも一方への接近を可能にするように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年11月11日付米国特許出願第10/706,315号(該米国特許出願は本願に援用する)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、筆記具に関し、特に、互いに軸線方向に移動できる少なくとも2つの筆記要素を備えた筆記具、より詳しくは、他の筆記要素内に配置された1つの筆記要素を備えた筆記具に関する。本発明はまた、フィラー型筆記具に関する。
【背景技術】
【0003】
多数の筆記要素を備えた筆記具は当業界で良く知られている。大抵、これらの筆記具は、ペンバレル(ペン軸)内で互いに隣接配置(並置)された複数の筆記要素を有している。従来技術の筆記具は、種々の組合せ(例えば、2以上の種類のうちの全てが同一種類、各々が異なる種類、または2以上が異なる種類)のボールペン、ハイライタ(highlighter)およびマーカを含む種々の筆記要素を組合せている。駆動機構を操作すると、1つの筆記要素の筆記チップ(writing tip)がバレルの外部の所定位置に変位される。或る場合には、1つの筆記要素が既にバレルの外部の固定位置に位置決めされていて、第二筆記要素が移動可能である。
【0004】
可動筆記要素を用いて筆記するには、該筆記要素を、固定筆記要素の最遠位部分を通り越えてバレルの外部に突出させなくてはならない。他の既知の筆記具では、可動筆記要素が完全突出されたとき、該筆記要素の最遠位部分が、固定筆記要素の最遠位部分と同一平面内にある。従って、2つの筆記要素が2本の線を書くことができるか、いずれかの筆記要素で個々に書くより太い線を描くことができる。また、筆記要素が2つの異なる筆記媒体で形成される場合には、2つの異なる線を描くことができる。
【0005】
並置構造の欠点は、筆記要素を収容するペンバレルの直径を、1本のもの筆記要素を備えた標準ペンの直径より大きくしなければならないことである。よりコンパクトな筆記具を作るため、従来技術の筆記具は、筆記要素を同軸状に取付け(すなわち、1つの筆記要素を他の筆記要素内に配置し)、これにより、外方の筆記要素に対して内方の筆記要素を移動できるようにしている。
【0006】
現在、種々のコンパクトな多筆記要素筆記具が存在している。例えば下記特許文献1には、内部に2つの筆記要素が同軸状に取付けられたペンバレルを備えた筆記具が開示されている。内側筆記要素が、外側筆記要素に対して軸線方向に移動する。一実施形態では、各筆記要素は、それ自体のインキリザーバを有している。しかしながら、外側筆記要素に対して内側筆記要素を移動させる駆動機構は、ペンバレルの中心近くに配置されている。従って、筆記チップをそれぞれのインキリザーバから分離させなくてはならない。従って、このような筆記具の構造は複雑で、一体に組立てるのが困難である。従来技術による他の筆記具として、下記特許文献2に開示されているように、インキリザーバを共有する内側および外側筆記要素を備えたものがある。使用者が異なる種類の筆記要素を使用したい場合には、このような構造は好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,026,189号明細書(1990年4月5日付出願、George Keilに1991年6月25日付特許)
【特許文献2】米国特許第4,580,918号明細書(Baker等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、多筆記要素を備えた従来技術の筆記具は、標準型の単一筆記要素筆記具の外径よりそれほど大きくない外径を有するコンパクトボディ異種の筆記要素を設けることに成功していない。かくして、マーカまたはハイライタ等のマーキング要素を備えたペンのような筆記要素を提供するため、筆記チップが筆記具の両端部に設けられており、流線型の外観および筆記具として比較的標準の外径を維持している。このような筆記具を使用すると、異なる筆記またはマーキング様式を得るべく、筆記具の方向を操作して筆記端部を切り換えるのに無駄な移動が生じる。また、各筆記要素は、一般に別々のキャップで覆われている。従って、1つの筆記/マーキング仕事中に両筆記要素を使用すると、単一キャップまたはノーキャップの場合に比べ、2つのキャップを取外しかつ交換するという更なる無駄な移動を必要とする。また、単一キャップまたはノーキャップの場合に比べて、使用者は2つのキャップを見失わないようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による筆記具は、外側筆記要素内に同軸状に取付けられた内側筆記要素を収容する外側バレルを有している。筆記要素は、互いに軸線方向に移動可能である。筆記要素は、その剛性および耐食性について選択される材料で作られるのが好ましい。
【0010】
本発明の筆記具を操作するには、少なくとも1つの筆記要素が駆動機構に連結される。駆動機構は、一方の筆記要素を他方の筆記要素に対して軸線方向に移動させる。操作に際し、筆記チップの少なくとも一部がバレルの外部に留まり、筆記具を使用して筆記表面にマーキングできるように、一方の筆記要素は固定される。他方の筆記要素は軸線方向に移動できる。駆動機構を操作すると、可動筆記要素の最遠位部分が固定筆記要素の最遠位部分を越えるように、バレルから突出される。これで、可動筆記要素を使用して筆記表面にマーキングできる状態になる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、筆記具には、フィラー型筆記媒体リザーバおよび多孔質のニブ(nib:ペン先)を備えた交換可能なフィラー型筆記要素が設けられている。多孔質ニブおよび/または筆記要素のフィラー型筆記媒体リザーバの少なくとも一部は、流体不透過性スリーブで覆うのが好ましい。このスリーブは、使用者がその手および/または指に筆記媒体を付着させることなく、フィラー型筆記媒体リザーバおよび多孔質ニブを取扱うことを可能にする。筆記要素の補充を可能にするため、筆記具の外側バレルは、筆記要素に接近(アクセス)できるように設計されている。
【0012】
本願に開示する筆記具の構造は、筆記具の現代の使用者の要望を満たすことができる。このような構造は、2つの異なる筆記要素(例えば、ペンおよびハイライタ/マーカ)を使用できるようにする。例えば、文筆業者は、同一筆記具を用いて、2つの独立した機能(例えば、注釈を付す作業および強調する作業)を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の原理に従って形成された例示筆記具を示す斜視図である。
【図2】本発明の原理に従って形成された筆記具に使用される2つの筆記要素を示す斜視図であり、筆記要素は、他方の筆記要素上に挿入される筆記要素が分離された状態で示されている。
【図3】図1に示した筆記具を示す分解図である。
【図4】図1に示した筆記具のバックバレルを示す縦断面図である。
【図5】本発明の原理による外側筆記要素用の例示多孔質ニブを示す縦断面図である。
【図6】本発明の原理による外側筆記要素用の例示多孔質ニブを示す他の縦断面図である。
【図7】本発明の原理による例示外側筆記要素を示す横断面図である。
【図8】図2の線VIII-VIIIにおける、他の例示外側筆記要素の横断面図である。
【図9】本発明の原理に従って形成された筆記具の例示駆動機構と係合するフロントバレルの一実施形態を示す分解図である。
【図10】本発明の原理に従って形成された筆記具の第二例示駆動機構と係合するフロントバレルの他の実施形態を示す分解図である。
【図11】筆記具の駆動機構の第三実施形態を形成するコンポーネンツを示す分解図である。
【図12】例示の駆動機構および筆記具を示す分解図である。
【図13】他の実施形態による駆動機構を備えた例示の筆記具を示す縦断面図である。
【図14】本発明の原理に従って形成された筆記具に使用される例示のキャップを示す分解図である。
【図15】本発明の原理に従って形成された筆記具に使用される他の例示のキャップを示す分解図である。
【図16】例示の交換機構を示す分解図である。
【図17】例示の補充セットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、添付図面を参照して述べる以下の説明からより良く理解されよう。添付図面では、同類の要素は同じ参照番号で示されている。添付図面は単なる例示であって、本発明は図示の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
ここで図1を参照すると、本発明の原理に従って形成された例示の筆記具10は外側バレル12を有し、該外側バレル12は、図2に示すような内側筆記要素20および外側筆記要素22を収容する。用語「筆記要素」は、文字を書く筆記要素に限定されるものではなく、基板に塗布できるあらゆる媒体(接着剤または修正液を含む)を備えたあらゆる筆記要素を包含する。同様に、同様に「筆記」または「マーキング」または他のこのような用語についても説明しておくのが便利である。用語「筆記」または「マーキング」は文字を書くことおよびマーキングすることに限定されるものではなく、接着剤または修正液等の媒体または物質の塗布をも包含するものと理解すべきである。図1および図3の実施形態に示すように、外側バレル12は、好ましくは長手方向軸線11に沿って延びているフロントバレル14と、バックバレル16およびフロントノーズコーン23とを有している。以下に明らかになる目的から、フロントバレル14およびバックバレル16は移動可能に一体に連結できる。また、筆記具10のフロントバレル14にはグリップ(図示せず)を設けることができ、該グリップは、例えばソフトラバー状ペイントまたは別々に形成されたエラストマグリップ要素で作ることができる。
【0016】
フロントバレル14およびバックバレル16は、同一材料または異種材料で作ることができる。例えば、フロントバレル14をABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)で作り、バックバレル16をポリプロピレンで作ることができる。フロントバレル14に使用される材料の選択に際し、強度、製造容易性および装飾/塗装可能性(例えば、グリップを形成するためのゴム状ペイントを受入れる能力)等の種々のファクタが考慮される。また、バックバレル16に使用される材料の選択に際し、例えば、蒸気伝達に対する抵抗性または気密性(すなわち、選択される材料は、筆記具10内への蒸気/空間の流入または流出を許容してはならない)、コストおよび潤滑性(すなわち、フロントバレル14およびバックバレル16を相対移動させるための円滑性すなわち摩擦を最小にすること)が考慮される。
【0017】
本発明の一実施形態では、内側筆記要素20の一部には、外側バレル12の外部に配置されてマーキング作業に使用できる第一筆記チップ30が設けられており、外側筆記要素22は、第二筆記チップ32の実質的に全部が外側バレル12内にある位置から、第二筆記チップ32が外側バレル12の外部にある位置まで移動できる。このような形態では、内側筆記要素20は、表面のマーキングに使用できる。逆に、他の実施形態では、外側筆記要素22の一部が固定され、内側筆記要素22が、筆記チップ30の実質的に全部が外側バレル12内にある位置から、第二筆記チップ30が外側バレル12の外部にある位置まで移動するように構成される。更に別の実施形態では、両筆記要素20、22が、これらのそれぞれの筆記チップの実質的に全部が外側バレル12内にある位置から、それぞれの筆記チップが外側バレル12の外部にある位置まで移動するように構成される。
【0018】
筆記要素20、22の例示の構造および例示の相対位置決めは、両筆記要素20、22が同軸状に取付けられているところを示す図2を参照することにより明らかになるであろう。内側筆記要素20は、外側筆記要素22の内側軸線方向通路24より小さい外径寸法を有し、このため、内側筆記要素20は外側筆記要素22の内側軸線方向通路24内に嵌合できる。かくして、矢印26で示すように、筆記要素20、22は互いに軸線方向に移動できる。
【0019】
内側筆記要素20は、ハイライタ、マーカ、ボールペン、ローラボールペン、フェルトペン、万年筆または流体ベースの筆記媒体を使用する他の任意の種類の筆記要素で構成できる。他の実施形態では、内側筆記要素20は、ペンシル、スタイラス、チョーク、チャコール、鉛または固体の筆記媒体を用いる他の任意の種類の筆記要素で構成できる。所望ならば、筆記具10の全外径を制限すべく、内側筆記要素20はできる限り小さい外径をもつものを選択できる。このような場合には、一般に、内側筆記要素20にフィラー型筆記媒体リザーバを設けない。なぜならば、このようなリザーバは、所与量の筆記媒体を保持するのに、チューブ型筆記媒体リザーバより大きいスペースを占めるからである。例えば、筆記具10の全外径を標準型の単一筆記要素の筆記具の全外径に近い外径に維持するため、筆記媒体を保持するチューブ型リザーバを用いた任意の筆記要素、または任意の固体型筆記媒体を使用できる。後で明らかになる目的から、このような筆記要素は、剛性または半剛性を有するもので形成するのが好ましい。
【0020】
便宜上、本明細書では、このような筆記要素は「構造的に安定した細い筆記要素」と呼び、外側筆記要素22内に挿入したときに筆記具10の外径を全体的に増大させる嵩張った筆記要素としてしまうフィラー型筆記媒体リザーバを用いたフィラー型筆記要素等とは区別する。本明細書で使用するとき、フィラー型筆記媒体リザーバとは、筆記媒体が自由に流れることは許容しないが、所望の表面に適用すべく筆記媒体を抽出(例えば毛管力を用いたウィック(灯心)による抽出)できる、筆記媒体を保持(多孔質材料の微孔内に保持)する多孔質材料(天然または合成ポリマー、セラミック、金属等で作られた多孔質材料)を収容する筆記媒体リザーバをいう。微孔は、種々の任意の方法、例えばブロー成形、燒結または繊維結束により形成できる。筆記要素のこれらの例は単なる例示に過ぎず、本発明は必ずしもこれらに限定されないことは理解されよう。また、本発明は上記「筆記」作業に限定されないため、用語「筆記媒体」は便宜上使用されるものであって、「筆記要素」を特定の「筆記」作業に限定することを意図するものではないことは理解されよう。
【0021】
図2の実施形態では、内側筆記要素20は、2つの別部材、すなわち第一筆記チップ30および第一筆記媒体リザーバ28から形成されている。しかしながら、第一筆記チップ30および第一筆記媒体リザーバ28は一体モノリシックピースとして形成できることを理解すべきである。好ましい実施形態では、内側筆記要素20の第一筆記チップ30は、流体ベース筆記媒体が使用される場合には、第一筆記媒体リザーバ28に直接作動接触した状態にある。
【0022】
第一筆記媒体リザーバ28は、当業界で知られているような筆記媒体チューブすなわちインキチューブ(すなわち、インキを保持できる中空チューブ)で構成できる。フィラー型筆記媒体リザーバ(これも当業界で一般的に知られている)とは異なり、筆記媒体チューブは、筆記媒体を保持するためのいかなるフィラー材料も備えていない。それにもかかわらず、第一筆記媒体リザーバ28は、フィラー型筆記媒体リザーバ、例えばマーキング媒体が飽和されたフィラー材料(図示せず)で構成できる。
【0023】
一実施形態では、外側筆記要素22は、2つの異なる部材、すなわち第二筆記チップ32および第二筆記媒体リザーバ34を有している。また、第二筆記チップ32は、第二筆記媒体リザーバ34と直接作動接触させることができる。このような構成ではなく、第二筆記チップ32および第二筆記媒体リザーバ34は、一体ピースで構成できることに留意すべきである。図2の実施形態では、外側筆記要素22は、これを貫通する(好ましくは、第二筆記チップ32および第二筆記媒体リザーバ34を通る)内側軸線方向通路24を有している。外側筆記要素22への内側筆記要素20の挿通を容易にするため、第二筆記媒体リザーバ34は、筆記媒体を保持するためのフィラー材料(図示せず)を備えたフィラー型リザーバが好ましい。フィラーは、ポリエステル、アクリル、アセテート等の材料で作ることができ、かつ約80%の空隙率および約0.18g/cm3の繊維密度にすることができる。しかしながら、空隙率は低くて約75%から高くて約95%の間に定めることができ、また繊維密度は低くて約0.16g/cm3から高くて約0.2g/cm3の間に定めることができる。
【0024】
より詳しくは、フィラーは、例えばDe Martini SPA社(Via Santuario d'Oropa、イタリア国)またはFiltrona社(London、英国)から入手できるポリエステル、アクリルまたはアセテート繊維、またはFiltrona社から入手できるコンジュゲートファイバ(bicomponent fiber:例えばポリプロピレンおよびポリエチレンの両方を含む繊維)で構成できる。フィラーとして使用される材料を選択するとき、コスト、密度、空隙率、化学的安定性、フィラー材料の乾燥に要する時間、および製造容易性等の種々のファクタが考慮される。しかしながら、筆記媒体チューブと同様に、第二筆記媒体リザーバ34もフィラーレス構造にすることができる。一実施形態では、外側筆記要素がハイライタまたはマーカである。しかしながら、これら以外の他の筆記要素を使用することもできる。
【0025】
第二筆記チップ32は、筆記中に折れ曲ることがなく、これを貫通する内側軸線方向通路24を形成できるのに充分な壁厚を有するように形成および構成されるのが好ましい。また、第二筆記チップ32は、該チップを使用する度毎に、常に一定の線が引けるように形成すべきである。
【0026】
第二筆記チップ32は、多孔質ニブであるのが好ましい。本明細書で使用するとき、「多孔質ニブ」とは耐曲げ性を有する多孔質適用チップである。該チップは、尖った形状またはチゼル(ノミ)状の自由端をもつ一般にロッド状の形状を有し、かつ一般に毛管作用によりリザーバから表面(例えば紙)に筆記媒体を分配する。多孔質ニブは、例えば燒結、ブロー成形、押出成形、繊維結束等の慣用成形法を用いて、ポリマー(天然または合成)またはセラミック等の任意の所望の多孔質材料から形成できる。かくして、このような多孔質ニブは、固体型筆記媒体(上記定義によるもの)および万年筆ニブ、ローラ/ボールペン、ボールペン等の他の非多孔質ニブ、または筆記媒体が筆記チップの外面上または外面の周囲を通って適用基板(紙等)上に流れる構成の筆記チップまたはニブとは区別される。多孔質ニブ型要素として、ハイライタ、マーカまたはフェルトチップ型ニブがあるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
一般に、このような多孔質ニブは他の筆記チップに比べて比較的幅広であるため、細かくて複雑な筆記には使用されず、幅広の線のマーキングが行えるようにチゼル状になっている。多孔質ニブとして、第二筆記チップ32は、約50%の空隙率をもつ燒結ポリエチレン粉末またはポリエステル繊維で作ることができ、例えば、Porex Products社(Fairburn、ジョージア州)により市販されているものがある。多孔質ニブはまた、約60%の空隙率をもつアクリルまたはポリアミド(例えばナイロン)繊維で作ることもできるが、空隙率は低くて約50%から高くて70%のものを使用できる。これら以外に、キャップを外しておいても長時間筆記可能(すなわち、筆記媒体の蒸発を低減できる)ものとして、Teibow社またはAubex社(両社とも日本国)により市販されているポリエステル繊維多孔質ニブがある。多孔質ニブの繊維密度は、低くて約0.1g/cm3から高くて約0.3g/cm3の範囲である。また、密度は、所望に応じて、長手方向軸線に沿って変えることができる。例えば、ぐらつきを防止するには、筆記端部の密度が高いことが望まれる。
【0028】
しかしながら、瞬間インキ流(すなわち、筆記要素が筆記表面に接触したのとほぼ同時の初期インキ流)にとっては密度が低い方が好ましいが、全体的インキ流(すなわち、筆記要素が使用されている全時間に亘ってのインキ流)にとっては必ずしも好ましいものではない。それにもかかわらず、ニブ材料の密度を決定するに際しては、ぐらつきおよびインキ流の両方を考慮に入れることができる。また、多孔質ニブに使用する材料の選択に際しては、例えばコスト、強度、剛性、密度、空隙率、化学的安定性、(例えば、筆記媒体または筆記媒体と接触するコンポーネンツの耐食性または耐破壊性)、ニブ材料の乾燥に要する時間および製造容易性等の種々のファクタを考慮に入れることができる。
【0029】
図5および図6に示すように、遠位側多孔質ニブ部分33の輪郭は異ならせることができる。例えば、遠位側多孔質ニブ部分33は、角度を付すか、真直にすることができる。筆記表面(図示せず)と遠位側多孔質ニブ部分33との間の角度はチゼル角として知られており、該チゼル角は、一般に、0°より大きくかつ90°より小さい任意の角度にすることができる(図5に示すように、0°は真直遠位側多孔質ニブ部分33を形成し、90°は平らな多孔質ニブ部分を形成する(図示せず))。遠位側多孔質ニブ部分33の好ましい例示角度は約30°である。第二筆記チップ32の断面形状は、円形、正方形、円錐状、截頭円錐状等にすることができる。このような輪郭および断面形状は単なる例示であって、輪郭および/または断面形状の可能な範囲を限定するものではない。遠位側多孔質ニブ部分33は、2本の線の間にマーキングが存在しない「線路」効果のない均一なマーキングを可能にする形状を有しかつ構成されている(例えば、角度および厚さが適当に選択されている)。
【0030】
図5および図6に示すように、第二筆記チップ32には種々の連結コンポーネンツを設けることができる。例えば、第二筆記チップ32には、第二筆記媒体リザーバ34と係合させるための、チップ32から延びている1つ以上の突出部40を設けることができる。他の実施形態では、第二筆記チップ32には、第二筆記媒体リザーバ34と係合させるための開端シリンダ42が設けられている。
【0031】
図7および図8に示す実施形態では、外側筆記要素22の少なくとも一部が円形断面49または非円形(例えば楕円形)断面を有し、かつ外側筆記要素22のそれぞれの内径54、56は円形断面を有している。他の実施形態(図示せず)では、内側筆記要素20の少なくとも一部が非円形(例えば楕円形)断面を有している。外側筆記要素22の断面形状は、内側軸線方向通路および円形断面形状を有する筆記要素と比較して、曲げまたはぐらつき(すなわち、筆記中に生じる筆記要素の曲り)に対する優れた抵抗性が得られるものが選択される。円形内径54、56は、筆記要素20、22の相対軸線方向移動を容易にする。それにもかかわらず、他の実施形態では、内径54、56は楕円形または他の形状にすることができる。
【0032】
1つのリザーバを用いて両筆記要素20、22に筆記媒体を供給することもできるが、第二筆記媒体リザーバ34は第一筆記媒体リザーバ28とは分離しかつ別体に構成するのが好ましい。このように構成することにより、リザーバ28、34に異なる筆記媒体を収容して、例えば異なる色のような異なる特性をもたせることができる。
【0033】
第一筆記媒体リザーバ28および第二筆記媒体リザーバ34は、同一形式の筆記媒体リザーバを備えた単一筆記要素を有する筆記具の筆記キャパシティを大きく低下させないように選択される。例えば、内側筆記要素20がボールペンでかつ外側筆記要素22がハイライタである場合に、内側筆記要素20および外側筆記要素22は、それぞれ標準型ボールペンおよび標準型ハイライタと同じ筆記キャパシティを有するのが好ましい。現在の工業規格によるボールペンは約1,800メートルの長さの線を引くことができ、また現在の工業規格によるハイライタは約120メートルの線を引くことができる。外側筆記要素22は内側軸線方向通路24のために貴重なスペースを失うので、このような条件は、外側筆記要素22の好ましい最大外径、従って筆記具10の好ましい最大外径に影響を与える。筆記キャパシティは、種々のファクタ、例えば外側筆記要素を形成する材料、外側筆記要素の壁厚およびペンの全体的寸法の組合せを工夫することにより、リザーバを所望のサイズ限界内に維持しつつ最適化できる。ボールペンおよびハイライタの平均的使用形態に基けば、約10:1の筆記キャパシティ比が好ましい。すなわち、筆記具10が、約1メートルのハイライタ線につき約10メートルのボールペン線を引けることが好ましい。所望のリザーバキャパシティは、完成した筆記具の所望外径および/または長さおよび当業者が考えられるこのような他のファクタにより影響を受けることは理解されよう。
【0034】
筆記具10を操作するには、他方の筆記要素20、22に対して少なくとも一方の筆記要素20、22を移動させるための駆動機構を、少なくとも一方の筆記要素20、22に連結することが望まれる。駆動機構は、該駆動機構の少なくとも一部または駆動機構に連結された他のコンポーネントを移動させることにより作動される。駆動機構の作動により、所望の筆記要素が使用位置に突出される。このような駆動機構は、筆記具10の一部または筆記具に連結された要素を捩ることにより(捩り操作型駆動機構の場合)、またはプッシュボタンアクチュエータを、筆記具10の長手方向軸線に沿って軸線方向に押すことにより作動される。
【0035】
図9には、駆動機構60の一例が示されている。駆動機構60は、2つの駆動コンポーネンツ、すなわち可動雌型カムおよび軸線方向に静止の雄型カム64を有している。筆記具10のコンポーネンツに対する駆動機構60の種々のコンポーネンツの相互作用は、本明細書に開示する他の駆動機構の実施形態に適用できることは理解されよう。可動カム62はポリアミド(例えばナイロン:登録商標)またはポリアセタール(例えばデルリン:登録商標)で作ることができ、雄型カム64はポリアセタール(例えばデルリン:登録商標)作ることができる。しかしながら、他の材料を用いて可動カム62および雄型カム64を作ることができる。カム62、64に使用される材料の選択に際し、強度、剛性、潤滑性(すなわち円滑性)等の種々のファクタが考慮に入れられる。一般に、詳細に後述するように、一方の筆記要素20、22が可動カム62に連結され、他方の筆記要素20、22が雄型カム64に連結される。雄型カム64は、可動カム62の近位端65でボア63内に挿入される。カム62、64の図示の構成では他の挿入方法も可能であるが、挿入は、或る角度(例えば、約35°〜約45°)で雄型カム64をボア63内に挿入し、次に、可動カム62内に更に挿入するときに雄型カム64を真直にすることにより達成される。雄型カム64は、可動カム62の螺旋カムスロット66内に嵌合されるピン68を有している。
【0036】
本発明の一実施形態では、駆動機構60は、内側筆記要素20に対して外側筆記要素22を移動させるように作動する。内側筆記要素20は外側バレル12に対して固定してもよいし、軸線方向に移動できるように配置することもできる。このような実施形態では、外側筆記要素22を可動カム62に作動連結し、かつ内側筆記要素20を雄型カム64または外側バレル12に連結することができる。外側筆記要素22は、可動カム62の長手方向リブ(図示せず)により保持できる。例えば、外側筆記要素22がフィラー型筆記媒体リザーバを有する場合には、長手方向リブをフィラー型筆記媒体リザーバおよび/またはフィラー材料にカットすることができる。内側筆記要素20の近位端73(図2)は、雄型カム64のボア(図示せず)内に挿入するか、他の態様では外側バレル12に連結して、外側筆記要素22に対して軸線方向移動できるように構成できる。内側筆記要素20は、該筆記要素20の近位端73が雄型カム64から突出しないようにして雄型カム64内に配置できる。
【0037】
また、第二筆記チップ32の肩部37(図3、図5および図6)とフロントノーズコーン23との間で、第二筆記チップ32の周囲には、コイルスプリング61(図3)のような任意のバイアス要素(付勢要素:弾性力を加える要素)を配置できる。かくして、外側筆記要素22は可動カム22内へと後方に押される。外側筆記要素22が筆記位置またはマーキング位置に突出されるときは、スプリング61が圧縮されることは理解されよう。スプリング61が圧縮されると、スプリング61は、本質的に、第二筆記チップ32の外側管状支持体として機能する。従って、スプリングを設けることは、第二筆記チップ32に構造的安定性を付与し、従って中空筆記チップ32が有効に筆記またはマーキングする構造的に充分な安定性を確保する要望に更なる対処を与える。更に、外側筆記要素22を可動カム62に押し付けておくことにより、スプリング61は、例えば、筆記具10を落下させることにより外側筆記要素22が表面(例えば、床、テーブル等)に当って衝撃を受ける場合に、外側筆記要素22および可動カム62の弛緩および/または分離を防止しないまでも妨げる。スプリング61に使用される材料を選択するときに、強度および化学的安定性等の種々のファクタが考慮される。例えば、スプリング61は、316ステンレス鋼または他の任意の適当な材料で作ることができる。また、スプリング61は、駆動機構60の作動を許容する充分な可撓性を有すると同時に、可動カム62内で外側筆記要素22を保持できる充分な強度を有するものでなくてはならない。更に、第二筆記チップ32とフロントノーズコーン23との間で第二筆記チップ32の周囲にはOリング(図示せず)を設けることができる。このような構造により、筆記媒体の蒸発を防止/低減が可能になる。
【0038】
一実施形態では、雄型カム64がバックバレル16に固定され、これにより、バックバレル16を回転させると、雄型カム64の軸線方向移動を引起こすことなく、雄型カム64が回転(好ましくは、バックバレル16の回転とほぼ同時に回転)される。雄型カム64は種々の方法でバックバレル16に固定できるが、図9に示す実施形態では、挿入部材70が受入れ部材29(図4)内に圧嵌めされる。雄型カム64には、バックバレル受入れ平坦部69(図4)と係合するための係合平坦部169が設けられている。より詳細に後述するように、図16には、突出部385をノッチ386内に係合させかつ係合平坦部369をバックバレル受入れ平坦部391内に係合させることにより、雄型カム364がバックバレル316に固定される構成の他の実施形態が示されている。可動カム62、362は、バックバレル16、316に対して自由に移動できる。また、可動カム362は、筆記要素20、22を突出または後退させるためフロントバレル14に対しては軸線方向に自由に移動できるが、回転することはできない。
【0039】
作動に際し、図3および図9の実施形態では、バックバレル16の回転により雄型カム64が回転(好ましくは、バックバレル16の回転とほぼ同時に回転)され、従ってカムスロット66内でピン68が回転される。可動カム62は回転移動できないように固定されているので、カムスロット66内でのピン68の回転により可動カム62が軸線方向に移動され、これと同時に、一方の筆記要素20、22が他方の筆記要素20、22に対して軸線方向に移動される。かくして、可動カム62および雄型カム64が互いに軸線方向に移動されると、それぞれのカム62、64に連結された筆記要素20、22も互いに軸線方向に移動する。カムスロット66はロッキングノッチ67に終端しており、ここで、ピン68は、雄型カム64をこれ以上回転させないように配置される。ロッキングノッチ67は、長手方向軸線11(図1)に対して実質的に垂直に延びているカムスロット66の延長部である。
【0040】
かくして、ロッキングノッチ67は、移動可能な筆記要素20、22を突出位置または後退位置に保持する。雄型カム64は半径方向外方に延びたストッピング要素72の形態のストッピングセクションを有し、これにより、近位端65がストッピング要素72に接触すると、雄型カム64が可動カム62内に更に移動することが防止される。しかしながら、ピン68は、ストッピング要素72が可動カム72と接触するのと実質的に同時にスロット66の端部に到達することは可能である。ピン68がスロット66の端部に到達するか、ストッピング要素72が可動カム62の近位端65と接触すると、バックバレル16はこれ以上回転することはできず、このため、移動された筆記要素20、22は完全に突出され、その遠位端は固定された筆記要素20、22の遠位端を越えて(または、所望ならば同一平面内に)突出する。
【0041】
内側筆記要素20および外側筆記要素22を相対移動できるようにするため、駆動機構60はフロントバレル14に対して移動可能に連結できる。図9に示すように、可動カム62は2つのプロング173、174を有し、これらのプロングは、対応するフロントバレルのプロング175、176と係合し、これにより可動カム62は、フロントバレル14に対して軸線方向には移動できるが、回転はできなくなる。プロング173、174;175、176は、それぞれ、カム62およびフロントバレル14と同じ材料で作ることができる。プロング173、174;175、176に使用される材料を選択するときは、剛性、強度および製造容易性等の種々のファクタが考慮に入れられる。プロングの他の個数および形状も本発明の範囲内にあると考えられる。例えば、可動カム62には、フロントバレル14の単一プロング受入れ構造(図示せず)と係合する単一プロングを設けることができる。或いは、可動カム62の単一プロング受入れ構造(図示せず)と係合する単一プロングを、フロントバレル14に設けることもできる。また、図9に示す駆動手段60には、フロントバレル14に可動バレル62を取付ける任意の手段を使用できる。駆動機構の構造は、フロントバレル14の軸線に沿って少なくとも可動カム62を移動できるものが好ましい。
【0042】
図9の実施形態では、可動カム62のプロング173、174に、それぞれ、ガイド177、178が設けられている。フロントバレル14のバレルプロング175、176には、レール部材179、180が設けられている。ガイド177はレール部材179と係合しかつガイド178はレール部材180と係合し、これにより可動カム62は、フロントバレル14に対して軸線方向には移動できるが、回転はできない。バックバレル16を回転させると、雄型カム64が回転して、フロントバレル14に対して可動カム62を遠位側または近位側に軸線方向に移動させる。従って、ガイド177、178はレール部材179、180に沿って移動する。プロング173、174;175、176は、第二筆記媒体リザーバ(例えば、フィラー型筆記媒体リザーバ)34と外側バレル12との間に配置できる。かくしてプロング173、174;175、176は、破壊しない限り互いに分離することはない。可動カム62を移動させるのに、図示した係合要素以外の係合要素の構造も考えられるが、それも本発明の範囲内に包含される。
【0043】
図10には、他のプロング機構が示されている。図10の駆動機構160は、図9の駆動機構60と同様である。図10に示すように、可動カム162は2つのプロング273、274を有し、該プロング273、274は、フロントバレルの対応するプロング275、276と係合して、可動カム162がフロントバレル14に対して軸線方向には移動できるが、回転はできないようにする。プロング273、274;275、276は、それぞれ、カム162およびフロントバレル14と同じ材料で作ることができる。プロング273、274;275、276に使用される材料を選択するとき、剛性、強度および製造容易性等の種々のファクタが考慮に入れられる。しかしながら、プロング273、274;275、276に使用される材料は、脆くないことが好ましい。
【0044】
所望ならば、可動カム162の軸線方向移動の度合いを調整するための係合要素を設けることができる。このような係合要素は、例えば、可動カム162の過大突出を防止するのに使用できる。図10の実施形態では、可動カム162の少なくとも1つのプロング273、274には突出部277を設けることができ、フロントバレル14のバレルプロング275、276には、受入れ部材278、279を設けることができる。可動カム162の後退位置では、突出部277は、フロントバレルのプロング275、276の近位端281で、第一群の受入れ部材278と係合する。バックバレル16を回転させると、雄型カム164が回転して、可動カム162をフロントバレル14に対して遠位側に軸線方向に移動させる。従って、突出部277が第一群の受入れ部材278から離脱し、ひとたび可動カム162が軸線方向に移動して一方の筆記要素20、22を軸線方向に突出させると、突出部277が第二群の受入れ部材279と係合する。この係合により、少なくとも一方の筆記要素20、22が他方の筆記要素20、22を越えて更に突出することが防止される。可動カム162を移動させるべく形成された、図示された以外の係合要素の構造も本発明の範囲内にあることは理解されよう。
【0045】
図11に示す他の実施形態では、例示の駆動機構260は、可動雌型カム262および雄型カム264を有している。駆動機構260は、駆動機構60または160と非常に良く似た作動を行い、同様な結果を得る。雄型カム264は、可動カム262の近位端265でボア263内に挿入される。他の挿入方法も本発明の範囲内にあるが、挿入は、雌型カム262に対して或る角度(例えば、約35°〜約45°)で挿入し、次に、雄型カム264を雌形カム262内に更に挿入するにつれて雄型カム264を真直にすることにより達成される。雄型カム264は、可動カム262の螺旋カムスロット266内に嵌合されるピン268を有している。前記ロッキングノッチ67と同様に、カムスロット266はロッキングノッチ267等に終端しており、ピン268がロッキングノッチ267内に配置されて、雄型カム264および可動カムの更なる相対回転を防止しかつ可動カム262の更なる軸線方向移動を防止する。これは、可動筆記要素20、22を突出位置または後退位置にロッキングする手段を形成する。
【0046】
雄型カム264はまた、ストッピングリブ272の形態をなすストッピング作用を有し、これにより、雄型カム264の外径を有効に増大させ、従って、ひとたび近位端265がストッピングリブ272に接触したならば、雄型カム264が可動カム262内に移動することを防止する。しかしながら、ピン268は、ストッピングリブ272が可動カム262に接触するのと実質的に同時にスロット266の端部に到達するように構成することもできる。雄型カム264は種々の方法でバックバレル16に固定できるが、挿入部材270は内側受入れ部材29(図4)内に圧嵌めできる。雄型カム264には、バックバレルの受入れ平坦部69(図4)と係合して雄型カム264をバックバレル16に固定する係合平坦部269を設けることができる。
【0047】
本発明の一実施形態では、駆動機構260は、内側筆記要素20に対して外側筆記要素22を移動させる作動を行う。内側筆記要素20は外側バレル12に対して固定されるか、軸線方向移動は行えるように構成できる。このような実施形態では、外側筆記要素22は可動カム262に連結され、かつ内側筆記要素20は雄型カム264または外側バレル12に連結される。外側筆記要素20は、長手方向リブ271(図11に破線で示す)により可動カム262内に保持される。例えば、外側筆記要素22がフィラー型筆記媒体リザーバを有する場合には、フィラー型筆記媒体リザーバおよび/またはフィラー材料にリブ271をカットできる。内側筆記要素20の近位端73(図2)は雄型カム264のボア(図示せず)内に挿入されるか、外側筆記要素22に対して軸線方向に移動できるように他の方法で外側バレル12に連結される。内側筆記要素20は、該筆記要素20の近位端73が雄型カム264を越えて突出しないように雄型カム264内に配置される。
【0048】
内側筆記要素20および外側筆記要素22の相対移動を可能にするため、駆動機構260は、フロントバレル14に移動可能に連結できる。例えば、外側筆記要素22の非円形断面(例えば楕円形)50(図8)が外側バレル12に接触するように構成できる。非円形断面50は、フロントバレル12の内面が非円形断面を有する実施形態において可動カム262および外側筆記要素22の軸線方向移動を可能にするが、回転移動は許容しない。しかしながら、フロントバレル14に対する可動カム262の回転を防止する他の任意の形態を実施できる。かくして、バックバレル16(または駆動機構260に連結された外側バレル12の一部)を回転させると、雄型カム264が回転され、ピン268をスロット266内で螺旋方向に移動させる。可動カム262は回転移動しないように拘束されるが、可動カムは依然として軸線方向に移動できる。これにより、筆記要素20、22は互いに軸線方向に移動できる。
【0049】
図12は、例示筆記要素20、22を備えた駆動機構460の他の実施形態を示すものである。駆動機構460は、カム402と、カウンタカム404と、および好ましくはカムフォロワ408を備えたカートリッジ閉鎖体とで形成されている。カム402およびカウンタカム404は、2つの別体ピースとして示されているが、これらは単一複合ピースとして形成できることに留意されたい。カム402およびカウンタカム404はヒンジで一体に連結された単一ピースとして形成することにより、貝殻のように開くことができる。カムフォロワ408を備えたカートリッジ閉鎖体406は、外側筆記要素22の近位端409上に挿入され、このような挿入を容易にする貝殻の形態に形成できる。カム402および/またはカウンタカム404は、カートリッジ閉鎖体406の周囲で閉じることができる。より詳しくは、カムフォロワ408は、螺旋カムスロット(すなわち、カム402とカウンタカム404との間のスペース)410内に挿入できる。別の構成として、カートリッジ閉鎖体406およびカムフォロワ408は、カム402および/またはカウンタカム404内に圧嵌めできる。
【0050】
カム402、カウンタカム404、および内側筆記要素20は、バックバレル416に対して軸線方向移動および回転移動しないように固定できる。図12に示すように、カム402およびカウンタカム404の固定は、バックバレルの長手方向バックリブ412と、カム402およびカウンタカム404のカム溝415とを係合させることにより達成できる。外側筆記要素22は、長手方向フロントリブ420に沿って軸線方向に移動できるが、回転することはできない。カムフォロワ408を備えたカートリッジ閉鎖体406は外側筆記要素22に固定されるので、カートリッジ閉鎖体406もまた軸線方向に自由に移動できる。
【0051】
図12の実施形態はまた、外側筆記要素22の移動を案内するカートリッジケース418を有している。カートリッジケース418は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンまたは他の任意の適当な材料で作ることができる。カートリッジケース418には、フロントバレル414の長手方向フロントリブ420を受入れる溝419を設けることができる。バックバレル416(または、駆動機構460に連結された外側バレル12の任意の部分)を回転するとカム402およびカウンタカム404が回転され、これによりカムフォロワ408をカムスロット410に沿って移動させる。カムフォロワ408の移動により、カートリッジ閉鎖体406が軸線方向に並進移動される。かくして、内側筆記要素20が静止したまま、外側筆記要素22が内側筆記要素20に対して移動する。溝419は、フロントリブ420に沿って移動することにより、外側筆記要素22の軸線方向移動を案内する。
【0052】
図13には、更に別の例示駆動機構560が示されている。駆動機構560は、外側バレル512内に配置されている。駆動機構560は、螺旋カム面580を備えたスピンナ(spinner)の形態をなす静止カム564(捩り操作型後退可能筆記具に使用されているものと同じである)と、螺旋カム面580に沿って乗り上げるカムフォロワ突出部を備えたフォロワの形態をなしている。カムフォロワ突出部582は、ブシュ586(この中に可動カム562が配置されている)のスリット584内に保持されることにより外側バレル512に対して回転できないように固定されている。かくして、外側バレル512の回転により静止カム564が回転され、これによりカムフォロワの突出部582が螺旋カム面580に沿って乗り上げ、従ってスリット584に沿って軸線方向に移動される。
【0053】
筆記要素20、22は可動カム562の遠位端588でプラグ587に当接し、これにより、静止カム564が回転されると、後退または突出される。図13の実施形態では、静止カム564は、内側筆記要素20(より詳しくは、第一筆記媒体リザーバ28)を保持するための凹部589がスピンナに形成されているという点で、従来のスピンナとは異なっている。外側筆記要素22はプラグ587に当接して、可動カム562の軸線方向移動によりプラグ587と一緒に軸線方向に移動する。スプリング561(該スプリング561は、フロントノーズコーン592と外側筆記要素22の肩部594との間に配置されている)は、プラグ587に対して外側筆記要素22を押付ける(すなわち、スプリング561は、プラグ587を外側筆記要素22に連続接触させた状態に維持する)。スプリング561はまた、フォロワの突出部を螺旋カム面580と接触させた状態に維持する。突出部582とカム面580との接触を維持することにより、スプリング61に関連して前述した理由から、駆動機構560の適正配向が可能になる。
【0054】
駆動機構60、160、260、460、560は、前述のように、駆動機構60、160、260、460、560を形成するコンポーネンツすなわちこれらに連結されたコンポーネンツを移動(例えば軸線方向または回転方向に移動)させることにより作動される。駆動機構60、160、260、460、560の何れかを作動すると、可動筆記要素が外側バレル12から突出され、これにより、その最遠位部分が固定筆記要素20、22の最遠位部分を越えて突出する。従って、可動筆記要素は、表面のマーキングに使用できる。かくして、駆動機構60、160、260、460、560は、簡単な操作により所望の筆記要素20、22を選択できる。駆動機構60、160、260、460、560は、使用者が、所望に応じて、筆記要素20、22を一度に1つずつまたは同時に使用することを可能にする。
【0055】
図3に示すように、駆動機構60、160、260、460、560が外側バレル12(または該バレルの一部)の移動により操作される構成の実施形態では、両バレル14、16の相対軸線方向移動を防止しながら相対回転移動を可能にするように、フロントバレルの近位側部分21がバックバレルの遠位側部分18に連結される。フロントバレル14およびバックバレル16が分離するのを防止するため、フロントバレル14には外周リブ15を設けることができる。更に図3に示すように、また図4により詳細に示すように、バックバレル16には内周リブ17が設けられている。両リブ15、17は、両バレル14、16の相対軸線方向移動は防止するが、回転移動は可能にするように配置することが望まれる。これを達成するため、各外周リブ15は内周リブ17に隣接して配置される。一実施形態では、2つの内周リブ17の間に少なくとも1つの外周リブ15を配置できる。
【0056】
或いは、2つの外周リブ15の間に少なくとも1つの内周リブ17を配置できる。このような構成により、フロントバレル14およびバックバレル16が移動して分離されることが防止される。また、バックバレルの遠位側部分の内面(他の位置を考えることもできる)には、Oリング(図示せず)を配置することができる。Oリングは、両バレル14、16の円滑な相対移動を可能にし、かつ筆記媒体の蒸発を防止(すなわち、筆記要素20、22の乾燥を防止)する補助をなす。例えば、バックバレル16には、1つのOリングを備えた1対の内周リブ17または1つのOリングを備えた1つの内周リブ17を設けることができる。Oリングはシリコーンゴムまたは他の任意の適当な材料で作ることができる。Oリングに使用される適当な材料を選択することにより、種々のファクタ、例えば良好なシールおよびフロントバレル14とバックバレル16との間の円滑な移動を可能にする能力を付与することを考えることができる。また、フロントバレルの近位側部分21には、バックバレルの遠位側部分18に当接してバックバレルの遠位側への過大移動を防止するためのリブ19(図3)を設けることができる。また、筆記具カバー(例えば、図14および図15にそれぞれ示すキャップ90および290。尚、これらについてはより詳細に後述する)がリブ19に係合するように構成することにより、筆記具カバーは、筆記具10の遠位側筆記端部上に保持される。
【0057】
例示の駆動機構60、160、260、460、560は、筆記具10(図1)の近位端43または遠位端41またはこれらの間の任意の位置に配置できる。駆動機構60、160、260、460、560は、筆記要素20、22のコンポーネンツおよび配置を妨げないようにするため、筆記具10の近位端43に配置するのが好ましい。駆動機構60、160、260、460、560またはこのコンポーネンツは、例えば外側バレル12を開くことにより直接、接近(アクセス)して操作できるようにするか、外側バレル12によって全く覆われないように構成できる。駆動機構60、160、260、460、560には、少なくとも一方の筆記要素20、22を操作できるように連結できる。他方の筆記要素20、22は駆動機構60、160、260、460、560に連結された少なくとも一方の筆記要素とは独立して移動できるように配置され、例えば外側バレル12に連結できる。他の実施形態では、両筆記要素20、22を駆動機構60、160、260、460、560に連結できる。両筆記要素20、22のいずれもが駆動機構60、160、260、460、560に直接連結されないことがあってはならないことは留意すべきである。駆動機構60、160、260、460、560を筆記要素20、22の一方または両方に連結する中間要素(図示せず)は用いないのが好ましい。
【0058】
筆記要素20、22に戻って説明すると、内側筆記要素20は外側筆記要素22内に取付けられるので、内側筆記要素20は、標準型筆記要素の場合と比較して、外側バレル12から更に半径方向に離れておりかつフロントノーズコーンから更に半径方向に離れている。一実施形態では、フロントノーズコーン23は、審美的目的から透明材料で作ることができる。透明材料の使用により、外側筆記要素22とフロントノーズコーン23との間のギャップはそれほど容易には目立たなくなる。それどころか、フロントノーズコーン23および筆記具10の他の任意の部分を透明材料で作ることにより、筆記具10の内部の作動が見えるようになる。フロントノーズコーンは、ポリプロピレンまたは他のプラスチックまたはポリマーで作ることができる。フロントノーズコーン23の材料は、例えばコスト、製造容易性および蒸気透過性または気密性を考慮して選択される。
【0059】
また、一実施形態では、筆記要素20、22の相対軸線方向移動を可能にするため、外側筆記要素22は、内側筆記要素20の外径より大きい内側軸線方向通路24(図2)を有している。このような構成はぐらつきを引起こす。従って、大きいぐらつきが生じないように対処することが望まれる。従って、内側筆記要素20および外側筆記要素22により形成される支持体の個々が、またはこれらの組合せが、ぐらつきを最小にするように選択されるのが好ましい。内側筆記要素20は外側筆記要素22の内側軸線方向通路24から幾分かの支持が得られるかもしれないが、外側筆記要素22はぐらつきを妨げる最小の安定化作用をするに過ぎない。従って、一般的に、筆記要素20、22の剛性の選択に注意を払うことが望まれる。
【0060】
剛性は、壁厚または材料等の種々の特性に関連して定まるものである。理想的には、内側筆記要素20は外側筆記要素22の内側軸線方向通路24内に充分に嵌合される小さい外径を有し、同時に、壁厚は、内側筆記要素20が充分な量の筆記媒体を保持できる大きさである。このようなファクタは、内側筆記要素20に使用される材料の選択に影響を与える。この材料は金属および/またはプラスチックにすることができる。また、第一筆記リザーバ28は、第一筆記チップ30の材料とは異なる材料から形成できる。一実施形態では、第一筆記媒体リザーバ28および第一筆記チップ30はプラスチックで作られる。内側筆記要素20の安定性を最高にしかつ外側筆記要素22に安定性を付与するには、第一筆記媒体リザーバ28を金属で形成できる。本明細書で説明した材料以外の材料の組合せを使用することもできる。また、現在知られておりかつ見出されている他の材料を使用することもできる。同様に、複合材料(すなわち、2つ以上の材料の組合せ)を使用することもできる。
【0061】
内側筆記要素20と外側筆記要素22とは接触しているので、特に外側筆記要素22がフィラー型筆記媒体リザーバを有している場合に、耐食性を有する選択することも望まれる。第一筆記媒体リザーバ28は内側軸線方向通路24内に配置されるため、耐食性は重要である。内側軸線方向通路24が、外側筆記要素22内に収容された筆記媒体の透過を許容する多孔質材料で作られている場合には、外側筆記要素22からの筆記媒体が第一筆記媒体リザーバ28に接触する虞れがある。時間の経過につれて、筆記媒体リザーバ28の腐食が、第一筆記媒体リザーバ内の筆記媒体を外側筆記要素22内に漏洩(またはこの逆の漏洩)させることがある。また、この腐食によって筆記媒体の損失が生じ、筆記具10の性能に影響を与えることがある。
【0062】
これに加えて、または、これとは別に、外側筆記要素22の内側軸線方向通路24には内側スリーブ(図示せず)を設けることにより、耐食性材料の選択についての注意を不要にすることができないまでも、軽減させることができる。このようなスリーブは、第二筆記媒体リザーバ34からの筆記媒体が内側軸線方向通路24を通って内側筆記要素20にウィッキングすることをなくさないまでも低減させるのに有効である。内側スリーブは、内側軸線方向通路24内に設けることもできる。内側スリーブはポリプロピレンで作り、かつ約0.1mm〜約0.5mmほどの厚さにすることができる。しかしながら、他の材料および厚さにすることもできる。例えば、ポリプロピレンで作る場合には、内側スリーブの厚さは、小さくて約0.4mmから、大きくて約1mmにすることができる。内側スリーブはまた、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の収縮性熱可塑性材料で作ることもでき、この場合、内側スリーブの厚さは、小さくて約0.05mmから、大きくて約0.8mmにすることができる。内側スリーブに使用する材料の選択に際し、剛性、化学的安定性および製造容易性等の種々のファクタが考慮される。
【0063】
ポリプロピレンで形成された内側スリーブの最小厚さおよび最大厚さは、それぞれ、押出し方法および筆記キャパシティに関連して定められる。一般的に押出される最小厚さは約4mmである。従って、スリーブが上記機能を遂行できる限り、製造方法および他の関連ファクタに基いて、最小厚さを0.4mmより小さくすることができる。また、最大厚さは1mmより大きくすることができる。しかしながら、内側スリーブの使用または内側スリーブの厚さの増大は、筆記具10の他のコンポーネンツの種々の特性、例えば筆記要素の寸法に影響を与える。例えば、外側筆記要素22の寸法を変えることも、筆記媒体を保持する外側筆記要素22のキャパシティに影響を与える。外側筆記要素22のキャパシティ(すなわち、外側筆記要素内に保持される筆記媒体の量)を維持するために、内側スリーブの存在または大きい厚さを補償すべく、筆記具10に種々の変更を加えることができる(例えば、後述のように外側バレル12の外径の増大または壁厚の減少、または外側スリーブ80(図3、図5および図6)の厚さの減少)。
【0064】
外側筆記要素22には、多孔質ニブと、フィラーラップにより包囲されたフィラー材料をそなえたフィラー型筆記媒体リザーバとを設けることができる。フィラーラップ78等のフィラーラップは、一般に、剛性(すなわち、圧迫されたときに、第二筆記媒体リザーバ34の側壁が押し潰されることを防止するため)および真直性(すなわち筆記具10内での外側筆記要素22の円滑移動を可能にするため)を維持するように設計される。フィラーラップ78はまた、該フィラーラップ78内にフィラー材料を保持する機能も有している。また、フィラーラップ78は、筆記媒体がフィラーラップ78を通って使用者の手および/または指に付着するのを防止する機能を有する。フィラーラップ78は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン:登録商標)、ポリエステルまたはアセテートで作ることができ、かつ筆記具10内で利用できるスペースの大きさ製造条件に関連して約0.01mmの最小厚さまたは定められる。使用される材料の選択に際し、剛性、化学的安定性および製造容易性等の種々のファクタが考察される。筆記媒体リザーバ内の筆記媒体の漏洩、不意のマーキングおよび/または蒸発を防止すべく、外側筆記要素22の外面上にはスリーブまたは他の形式のコーティングを設けることができる(特に、外側筆記要素22がフィラー型筆記媒体リザーバを有している場合)。
【0065】
ここで図3を参照すると、外側筆記要素22の少なくとも外側部分はスリーブ80により覆われ、該スリーブ80は非多孔質すなわち流体不透過性(すなわち少なくとも特に筆記媒体に対する不透過性)の材料からなる。スリーブ80が非多孔質すなわち流体不透過性材料からなるとき、スリーブ80は、使用者が外側筆記要素22を操作するときに、筆記媒体またはマーキング媒体が使用者の手および/または指に付着するのを防止できる。また、外側筆記要素22が図2に示すようにフィラー型筆記媒体リザーバを有する場合には、フィラーラップ78の少なくとも一部をスリーブ80(図3)により被覆できる。図3、図5および図6に示すように、スリーブ80は、特に、第二筆記チップ32が多孔質ニブを形成する場合には、第二筆記チップ32の一部をも被覆する。このような構造は筆記媒体の蒸発を防止し(空気に露出される第二筆記チップ32の表面積が小さくなるため)、従って、外側筆記要素22の寿命(保管寿命および使用寿命の両方)を伸ばすことができる。また、図5および図6に示すように、スリーブ80を第二筆記チップ32上に設けることもでき(特に、多孔質ニブの形態をなす場合)、スリーブ80は、第二筆記チップ32および第二筆記媒体リザーバ34を一体に保持するためのカップリング部材として機能する。かくしてスリーブ80を使用すると、第二筆記チップ32と第二筆記媒体リザーバ34とが単一コンポーネントすなわちユニットに結合されることにより外側筆記要素22の補充が容易になる。しかしながら、第二筆記媒体リザーバ34と一緒に第二筆記チップ32を保持する任意の構造または材料、例えば、チップ32および/またはリザーバ34内のステンレス鋼またはプラスチックペグまたはリング;チップ32およびリザーバ34の周囲にクリンプされ、圧着されまたは接着されたクリンプまたはリング;または接着剤、ステープルまたは他の任意の緊締具を考えることができる。
【0066】
スリーブ80は、フィラー材料、フィラーラップ78および/または多孔質ニブ上に設けることができる。スリーブ80は、収縮性熱可塑性材料、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリアミド(例えばナイロン:登録商標)またはPVC(ポリ塩化ビニル)またはポリプロピレンラップで作ることができる。スリーブ80に使用される材料を選択するときに、コスト、強度、化学的安定性および製造容易性等の種々のファクタを考えることができる。ポリプロピレンで作る場合には、スリーブ80は約0.5mmの厚さにすることができる。しかしながら、小さくて約0.4mmまたは大きくて約1.0mmの厚さを使用できる。スリーブ80の厚さが大きいほど、構造的要素のスリーブ80に似たものとなる。一般に、スリーブ80をできる限り薄くできる材料から作り、スリーブ80の存在によっても筆記具10の全直径に大きい影響を与えないようにするのが望ましい。スリーブ80は、該スリーブに所望の筆記媒体不透過性を付与するのに必要な厚さにすればよく、外側筆記要素22および第二筆記チップ32を一体に保持する以外の構造的役割を演じないのがより好ましい。換言すれば、スリーブ80は、外側筆記要素22とは独立した構造的安定要素とはならないほどに薄くして、フィラー型筆記媒体リザーバ34に対する流体バリヤを形成するに過ぎないものである。
【0067】
かくして、スリーブ80は、達成可能な最小厚さをもつスリーブの形成を可能にする熱収縮性スリーブのようなラップ材料の形態にすることができ、これにより筆記具10を非常に小さい直径に維持することに寄与する。PETで作る場合には、スリーブ80は約0.15mmの厚さにすることができる。最小厚さは、第二筆記媒体リザーバ34内に第二筆記チップ32を保持するのに必要な強度と、駆動機構の自由移動(すなわち、動かなくならないこと)を可能にするための、筆記具10内の利用できるスペースの大きさと、特定壁厚になるような一定収縮能力と、収縮時の裂けまたはスプリッティングに対する抵抗性と、収縮が生じる速度とに関連して定められる。例えば、最小厚さは約0.05mmにすることができるにすることができる。最大厚さは、一般に、筆記具10の最大太さにより定められ、約0.5mmにすることができる。射出成形スリーブ上に熱収縮性スリーブを設けることの他の長所は、熱収縮性スリーブが組立てを容易にすることである。
【0068】
図12に示す他の実施形態では、フィラー型外側筆記要素22上に、スリーブ80の代わりに、筆記媒体の漏出を防止する材料で形成されたカートリッジケース418が設けられている。スリーブ80またはカートリッジケース418は、第二筆記チップ32および第二筆記媒体リザーバ34を一体に保持する。すなわち、第二筆記チップ32が第二筆記媒体リザーバ34に取付けられかつスリーブまたはカートリッジケース418がこれらのコンポーネンツの周囲に配置されることにより、これらのコンポーネンツを一体に保持する。スリーブ80およびカートリッジケース418の他の長所は、外側筆記要素22からの筆記媒体の蒸発の低減、およびこれにより筆記要素20、22に付与される大きい安定性である。また、スリーブ80およびカートリッジケース418は、外側筆記要素22のきれいで容易な補充を可能にする。
【0069】
補充はまた、両筆記要素20、22の交換ができるように、上記筆記具を構成することによっても行われる。従来の筆記具は筆記要素(例えば、ボールペン、ローラボールペン)を補充できるが、従来のいずれの筆記具も、多孔質ニブ型筆記要素、または多孔質ニブ型筆記要素とペン、ペンシル、マーカ等とを組合せたものの補充は行えない。多孔質ニブ型筆記要素には、筆記媒体を保持するフィラー材料(例えば、フィラー型筆記媒体リザーバ)を設けるか、フィラーレス(すなわち、フィラー材料にインキが収容されない)にすることができる。従って、上記特徴とは独立した本発明の他の特徴は、収容された筆記媒体が消耗したときに多孔質ニブ型筆記要素を交換できる多孔質ニブ型筆記要素を備えた筆記具を作ることである。
【0070】
筆記要素20、22の一方または両方を交換できるようにするには、外側バレル12は、一方または両方の筆記要素20、22への接近(アクセス)ができるように構成するのが好ましい。また、所望通りの容易な取外しを可能にするため、筆記要素20、22は外側バレル12内に着脱可能に配置されるのが好ましい。筆記要素20、22への接近(アクセス)は、筆記具10の遠位端41または近位端43のいずれかで行われる。図1および図3の実施形態では、外側筆記要素22への接近(アクセス)を可能にし、従って筆記要素20、22の取外しおよび交換ができる着脱可能なフロントノーズコーン23を有している。フロントノーズコーン23は、フロントバレル14の遠位端の雄ねじ25と係合する雌ねじ27を有し、これにより、フロントノーズコーン23はフロントバレル14に螺着および離脱される。また、他の実施形態では、着脱可能なフロントノーズコーン23および着脱可能なバックエンドボタンの両方を設けることができる。或いは、フロントバレル14およびバックバレル16内の筆記要素20、22への接近(アクセス)を可能にするため、両バレル14、16を分離可能に構成できる。
【0071】
図16は、他の交換機構を示すものである。雄型カム364は、可動カム62、162、262、362(図16には可動カム362として示されている)およびエンドボタン380と協働して交換機構を形成し、これにより筆記要素20、22の補充を簡単化している。可動カム62、162、262、362に連結された雄型カム364は、係合平坦部369がバックバレル受入れ平坦部391と係合するようにして、バックバレル316内に挿入できる。エンドボタン380は、バックバレル316に対する雄型カム364のロッキングを容易にするように構成されている。エンドボタン380の雌ねじ382が雄型カム364の雄ねじ381上に螺じ込まれるにつれて、エンドボタン380がバックバレル316に接近されていく。同時に、円錐面383がカム内面384に当接し、これにより、係合平坦部369がバックバレル316に対してきつく押付けられ、バックバレル316に対する雄型カム364の軸線方向移動を防止する。例えば筆記具10の操作中にバックバレル316に対する雄型カム364の回転移動を防止するため、およびエンドボタン380を雄型カムに螺着できるようにするため(すなわち、ボタン380が螺着される間に雄型カム364を静止状態に維持するため)、突出部385がバックバレル316のノッチ386内にスライドする。
【0072】
エンドボタン380が雄ねじ381上で更にねじ込まれると、テーパ面389がバックバレル316内に引き込まれて、バックバレル316と、雄型カム364と、エンドボタン380との間に好ましい気密嵌合が形成される。雄型カム364上でのエンドボタン380の回転は、エンドボタンの係合面387がバックバレルの係合面388に接触したときに停止する。また、雄型カム364は更に、雄型カム364とバックバレル316との間に気密シールを形成するシーリングリング390を有しており、これにより、筆記要素20、22の筆記媒体の蒸発が防止される。このような気密シールは、筆記要素の一方または両方が揮発性筆記媒体を有する場合に特に重要である。
【0073】
図16の交換機構を使用すると、筆記要素20、22は、筆記要素20および/または22が突出されるときに交換できる。図17は、補充セットの一例を示し、該補充セット400は、筆記要素20、22と、可動カム362と、雄型カム364で構成される。可動カム362および/または雄型カム364は再使用でき、筆記要素20、22のみが交換される。
【0074】
一方の筆記要素20または22が突出位置(すなわち、筆記チップ30または32が外側バレル12内の位置に後退されていない位置)にあるか、少なくとも一方の筆記要素20、22が揮発性筆記媒体を有している場合には、筆記要素20、22を覆って揮発性筆記媒体の蒸発を防止するのが望ましい。図14に示すようなキャップ90を使用できる。キャップ90は、ABSまたはポリプロピレンで作ることができる(但し、他の材料の使用も考えられる)。使用すべき材料の選択に際しては、溶着性または塗装可能性/装飾性、蒸発の耐透過性すなわち気密性、コストおよび製造容易性等のファクタも考慮される。筆記具10の遠位端41(図1)にはキャップ開口94を設け、フロントバレル14(図3)の係合リブ19により遠位端41に固定できる。しかしながら、キャップ90の代わりに、筆記要素20、22を充分に覆うことができる任意の同様な構造を使用できる。キャップは純粋に装飾のためのものであって、筆記媒体の乾燥を防止するためのものではないことに留意すべきである。すなわち、筆記具10にキャップを配置するには他の理由がある。例えば、キャップ90は、第一筆記チップ30または第二筆記チップ32の破壊を防止できる。またキャップ90は、いずれかの筆記チップ30、32による不意のマーキングを防止できる。
【0075】
前述のように、少なくとも一方の筆記要素20、22の筆記媒体が揮発性である場合には、キャップ90内に蒸気シール92を設けて筆記媒体の蒸気を防止するのが好ましい。蒸気シール92は、筆記要素20、22をシールすべく外側バレル12に容易に連結できる位置でキャップ本体96内に配置できる。蒸気シール92は、フロントノーズコーン23の遠位端93(図3)を係合させることにより、第一筆記チップ30および第二筆記チップ32の両方をシールするように設計できる。他の実施形態では、蒸気シール92が、外側バレル12の任意の遠位側部分と係合する。
【0076】
必ずしも必要ではないが、キャップ90にはクリップ100を設けて、筆記具10を使用者が望む任意の物体に取付けられるように構成できる。それにもかかわらず、他の取付け手段を使用することもできる。クリップ100は、蒸気シール92を包囲し、キャップ本体96に接触し、かつキャップ支持体194上に載置される。また、クリップ100は、キャップ本体96とトップキャップ102との間に配置されることによりキャップ90に固定される。キャップ本体96とトップキャップ102とを連結する任意の手段を考えることができるが、図14には、周方向リブ190と係合して、キャップ本体96およびトップキャップ102を一体に保持する周方向リブ192が示されている。
【0077】
図15に示すような他のキャップ290を使用することもできる。キャップ290は、ABSまたはポリプロピレンで作ることができる(但し、他の材料の使用を考えることもできる)。キャップ90と同様に、キャップ290に使用すべき材料の選択に際しては、溶着性または塗装可能性/装飾性、蒸発の耐透過性すなわち気密性、コストおよび製造容易性等の種々のファクタも考慮される。筆記具10の遠位端41にはキャップ開口294を設け、フロントバレル14(図3)の係合リブ19により遠位端41に固定できる。キャップ290内に蒸気シール292を設けて筆記媒体の蒸気を防止することもできる。蒸気シール292は、筆記要素20、22をシールすべく外側バレル12に容易に連結できる位置でキャップ本体296内に配置できる。
【0078】
蒸気シール292は、フロントノーズコーン23の遠位端93(図3)を係合させることにより、第一筆記チップ30および第二筆記チップ32の両方をシールするように設計できる。他の実施形態では、蒸気シール292が、外側バレル12の任意の遠位側部分と係合する。キャップ290には通気孔298および開口204が形成され、これらは、空気がキャップ本体296を通って流れることができるようにして、キャップ290が空気を飲み込んだ場合に窒息してしまうことを防止する。キャップにはクリップ200を設けて、筆記具10を使用者が望む任意の物体に取付けられるように構成できる。クリップ200は、通気手段298を包囲し、キャップ本体96に接触することができる。また、クリップ200は、キャップ本体296とトップキャップ202との間に配置されることによりキャップ本体296に固定される。
【0079】
以上、上記説明および添付図面により本発明の好ましい実施形態を示したが、特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更を加えることができることを理解すべきである。より詳しくは、本発明は、本発明の精神または本質的特徴から逸脱することなく、特定形態、構造、配置、プロポーション、および他の要素、材料およびコンポーネンツで具現できることは当業者には明白であろう。当業者ならば、本発明には、構造、配置、プロポーション、材料およびコンポーネンツ等に多くの変更を使用でき、これらの変更は、本発明の原理から逸脱することなく特定の環境および作動条件に特に適合するものであることを理解できるであろう。従って、本明細書に開示した実施形態は、あらゆる点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は上記接触によって定められるものではなく、特許請求の範囲の記載により定められるものである。
【符号の説明】
【0080】
10 筆記具
12 外側バレル
14 フロントバレル
16 バックバレル
20 第一筆記要素(内側筆記要素)
22 第二筆記要素(外側筆記要素)
23 フロントノーズコーン
24 内側軸線方向通路
33 多孔質ニブ
34 筆記媒体リザーバ
41 遠位端
43 近位端
80 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端および遠位端を備えた筆記具であって、
外側バレルと、
該外側バレル内に配置された第一筆記要素と、
前記外側バレル内に配置されかつ多孔質ニブを備えた第二筆記要素と、を有し、
前記第一筆記要素および第二筆記要素は互いに軸線方向に移動でき、
第一筆記要素および第二筆記要素の少なくとも一方を取外して交換するために、前記外側バレルは、前記第一筆記要素および第二筆記要素の少なくとも一方への接近を可能にするように構成されることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記外側バレルは着脱可能部材を有し、前記着脱可能部材は、それを外側バレルから取外したとき、前記第一筆記要素および第二筆記要素のうちの少なくとも一方への接近を可能にすることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記着脱可能部材はフロントノーズコーンであることを特徴とする請求項2記載の筆記具。
【請求項4】
前記外側バレルは更に、バックバレルと、それから分離可能なフロントバレルとを有していることを特徴とする請求項2記載の筆記具。
【請求項5】
前記第二筆記要素はフィラー型筆記媒体リザーバを有していることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項6】
更に、前記第二筆記要素の筆記媒体リザーバおよび多孔質ニブの少なくとも一部を覆う筆記媒体不透過性スリーブを有することを特徴とする請求項5記載の筆記具。
【請求項7】
前記第一筆記要素は、第二筆記要素を貫いて形成された内側軸線方向通路の中を延びることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項8】
前記第一筆記要素および第二筆記要素は外側バレル内で同軸状に配置されることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項9】
フィラー型筆記具であって、
外側バレルと、
筆記媒体が飽和されたフィラー材料を備えた、外側バレル内のフィラー型筆記媒体リザーバと、
前記フィラー型筆記媒体リザーバに連結された多孔質ニブと、を有し、
前記外側バレルは、フィラー型筆記媒体リザーバへの接近を可能にする着脱可能部材を備え、
前記フィラー型筆記媒体リザーバは、前記リザーバおよび多孔質ニブの外表面の少なくとも一部を覆う筆記媒体不透過性要素を有し、筆記媒体リザーバ内の筆記媒体により汚損されることなくフィラー型筆記媒体リザーバおよび多孔質ニブの取扱うことを可能にすることを特徴とするフィラー型筆記具。
【請求項10】
前記筆記媒体不透過性要素はポリエチレンラップからなることを特徴とする請求項9記載のフィラー型筆記具。
【請求項11】
前記筆記媒体不透過性要素は非多孔質であることを特徴とする請求項9記載のフィラー型筆記具。
【請求項12】
前記筆記媒体不透過性要素は、フィラー型筆記具の全直径に大きい影響を与えないように、できる限り薄いことを特徴とする請求項9記載のフィラー型筆記具。
【請求項13】
前記筆記媒体不透過性要素は0.5mmより薄いことを特徴とする請求項12記載のフィラー型筆記具。
【請求項14】
前記多孔質ニブは、筆記媒体不透過性要素によりフィラー型筆記媒体リザーバと一体に保持され、
前記筆記媒体不透過性要素は、フィラー型筆記具において、フィラー型筆記媒体リザーバと多孔質ニブとを一体に保持すること以外の構造的役割を演じないことを特徴とする請求項12記載のフィラー型筆記具。
【請求項15】
前記筆記媒体不透過性要素は、フィラー型筆記媒体リザーバから独立して構造的に安定ではないことを特徴とする請求項9記載のフィラー型筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−51358(P2011−51358A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280492(P2010−280492)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2006−539862(P2006−539862)の分割
【原出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(501325048)ソシエテ・ビック (24)
【Fターム(参考)】