複合膜および燃料電池
【課題】セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、隣接するセル間を電気的に直列に接続するための接続部の接続信頼性を向上させる。
【解決手段】基材14に設けられた開口部16にそれぞれ膜電極接合体20が形成されている。膜電極接合体20は、電解質膜22、アノード触媒層24、およびカソード触媒層26を備える。基材14は、隣接する膜電極接合体20を直列接続するための導電領域14cと膜電極接合体20の周囲を絶縁する絶縁領域14zとを有し、導電領域14cは、隣接する膜電極接合体20の間に設けられている。導電領域14cおよび絶縁領域14zは、ベースとなる材料が同じであり、絶縁領域14zから導電領域14cにかけて導電率が連続的に増加している。
【解決手段】基材14に設けられた開口部16にそれぞれ膜電極接合体20が形成されている。膜電極接合体20は、電解質膜22、アノード触媒層24、およびカソード触媒層26を備える。基材14は、隣接する膜電極接合体20を直列接続するための導電領域14cと膜電極接合体20の周囲を絶縁する絶縁領域14zとを有し、導電領域14cは、隣接する膜電極接合体20の間に設けられている。導電領域14cおよび絶縁領域14zは、ベースとなる材料が同じであり、絶縁領域14zから導電領域14cにかけて導電率が連続的に増加している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。より具体的には、本発明は、セルが平面配列された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギ供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラあるいは電子辞書、電子書籍)などの電源への利用が期待されている。携帯機器用の固体高分子形燃料電池としては、複数の単セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池が知られている。また、複数の単セルを平面状に配列させる方法として非電解質である基材を用いて複数の貫通孔を設け、そこに電解質を充填することで作製した複合膜を用いた平面配列型の燃料電池もある(特許文献1参照)。基材を用いることで、プロトン伝導性は高いが機械的強度の弱い電解質を用いることが可能になるとともに、電解質の部分を極力減らすことでコストの削減になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−244715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池は、スタック構造の燃料電池と比べてセル間を直列に電気的に接続することが困難であった。これに対して、特許文献1では、固体高分子膜に接続配線を貫通させる手法が採られているが、この場合には、接続配線の接触不良およびガスリークが生じてしまう問題があった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、隣接するセル間を電気的に直列に接続するための接続部の接続信頼性を向上させる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、複合膜である。当該複合膜は、複数の開口部が設けられた基材と、開口部にそれぞれ設けられ、イオン交換体を含む電解質膜と、電解質膜の一方の面に設けられたアノード触媒層と、電解質膜の他方の面に設けられたカソード触媒層と、を有する膜電極接合体と、を備え、基材は、膜電極接合体の周囲を絶縁する絶縁領域と、隣接する膜電極接合体の一方のアノード触媒層と他方のカソード触媒層とを電気的に接続するための導電領域とを有し、絶縁領域から導電領域にかけて基材の導電性が連続的に増加していることを特徴とする。なお、基材の導電性が連続的に増加するとは、図5に示すように連続的な曲線状に増加する場合だけでなく、一部の領域で導電性の増加が一定になっているような場合や、あるいは絶縁領域と導電領域との間に両者の中間領域が設けられているような場合も含まれる。
【0008】
上記態様の複合膜によれば、隣接する膜電極接合体を直列に接続するための導電領域が基材の導電性を連続的に変えることにより形成されている。このため、導電領域が基材と別部材で形成されておらず、導電領域に隙間が生じにくくなっている。この結果、隣接する膜電極接合体を直列接続する導電領域の接続信頼性を向上させることができる。
【0009】
上記態様の複合膜において、絶縁領域から導電領域にかけて基材の黒鉛化度が高くなっていてもよい。少なくとも1つの膜電極接合体のアノード触媒層またはカソード触媒層と接する基材の表層部分に設けられ、導電領域と電気的に接続した集電領域をさらに備え、絶縁領域から集電領域にかけて基材の導電性が連続的に増加していてもよい。また、直線状に配置され、直列に接続された第1の列に属する複数の膜電極接合体と、当該複数の膜電極接合体と並行して、直線状に配置され、直列に接続された第2の列に属する複数の膜電極接合体とを有し、導電領域の一つが、第1の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、当該膜電極接合体と対向し、第2の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、を直列に接続してもよい。基材の絶縁領域が加熱により黒鉛化する芳香族高分子で形成されていてもよい。また、その芳香族高分子はポリイミドで形成され、基材の導電領域が黒鉛化されたポリイミドで形成されていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は燃料電池である。当該燃料電池は、上述した態様の複合膜を有することを特徴とする。
【0011】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、隣接するセル間を電気的に直列に接続するための接続部の接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る燃料電池の構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面図である。
【図3】図3(A)は、複合膜をアノード側から平面視した平面図である。図3(B)は、複合膜をカソード側から平面視した平面図である。図3(C)は、図3(A)のA−A’線に沿った断面図である。図3(D)は、図3(A)のC−C’線に沿った断面図である。
【図4】図4(A)は、アノード触媒層を省略して、複合膜をアノード側から平面視した平面図である。図4(B)は、カソード触媒層を省略して、複合膜をカソード側から平面視した平面図である。
【図5】基材の導電領域と絶縁領域の導電率を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図7】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図8】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図9】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図10】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図11】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図12】導電領域のより詳細な構成および作製方法を示す部分拡大図である。
【図13】絶縁領域およびレーザ照射によって形成された導電領域を撮像した顕微鏡像である。
【図14】絶縁領域およびレーザ照射によって形成された導電領域を撮像した顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態に係る燃料電池10の構造を示す分解斜視図である。図2は、図1のA−A’線に沿った断面図である。図1および図2に示すように、燃料電池10は、膜電極接合体(MEA、触媒塗布プロトン交換膜(CCM)ともいう)20が組み込まれた複合膜12、アノード用ハウジング40およびカソード用ハウジング42を備える。また、複合膜12の周縁部に後述する封止部材50が設けられている。
【0016】
図3(A)は、複合膜12をアノード側から平面視した平面図である。図3(B)は、複合膜12をカソード側から平面視した平面図である。図3(C)は、図3(A)のA−A線に沿った断面図である。図3(D)は、図3(A)のC−C’線に沿った断面図である。また、図4(A)は、アノード触媒層を省略して、複合膜12をアノード側から平面視した平面図である。図4(B)は、カソード触媒層を省略して、複合膜12をカソード側から平面視した平面図である。
【0017】
図3および図4を参照して、複合膜12の構成を説明する。複合膜12は、基材14および複数の膜電極接合体20を含む。基材14には、膜電極接合体20と同数の開口部16が設けられており、各開口部16に対応し膜電極接合体20が形成されている。
【0018】
膜電極接合体20は、電解質膜22、電解質膜22の一方の面に設けられたアノード触媒層24、電解質膜22の他方の面に設けられたカソード触媒層26を備える。電解質膜22は、基材14に設けられた開口部16を充填するように設けられている。アノード触媒層24には、燃料ガスとして水素が供給される。一方、カソード触媒層26には酸化剤として空気が供給される。一対のアノード触媒層24とカソード触媒層26との間に電解質膜22が狭持されることによりセルが構成され、各セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0019】
このように、本実施の形態の燃料電池10では、アノード触媒層24にカソード触媒層26が対となり、複数の膜電極接合体20またはセルが平面状に形成されている。なお、開口部は4辺が囲まれていても、あるいは1辺が開放されて3辺が囲まれていてもよい。開放されている1辺は成形後削除してもよい。
【0020】
電解質膜22は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、アノード触媒層24とカソード触媒層26との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜22は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0021】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26は、イオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子を有する。
【0022】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜22を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜22と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0023】
本実施の形態では、膜電極接合体20の数は、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(8)の8組である。このうち、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)が基材14の長手方向に一列に並び、これらと並行して膜電極接合体20(5)〜膜電極接合体20(8)が膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)とは逆の順序で一列に並んでいる。
【0024】
基材14は、絶縁領域14zおよび導電領域14cを有する。絶縁領域14zは、膜電極接合体20の周囲を絶縁する領域である。絶縁領域14zにより、隣接する膜電極接合体20が短絡することが抑制される。導電領域14cは、隣接する膜電極接合体20の一方のアノード触媒層24と他方のカソード触媒層26とを電気的に接続するための領域であり、いわゆるインターコネクタ部である。具体的には、隣接する膜電極接合体20の間において、電解質膜22の辺に沿って基材14を貫通した領域として設けられており、かつ、隣接する電解質膜22のいずれからも絶縁領域14zにより絶縁して設けられている。
【0025】
一列に並ぶ膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)は、隣接する膜電極接合体20の間にそれぞれ設けられた導電領域14cによって直列に接続されている。同様に、一列に並ぶ膜電極接合体20(5)〜膜電極接合体20(8)は、隣接する膜電極接合体20の間にそれぞれ設けられた導電領域14cによって直列に接続されている。また、膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)との間に導電領域14cが設けられており(図3(D)参照)、この導電領域14cによって膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)とが直列に接続されている。このように、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(8)は、隣接する膜電極接合体20の間にそれぞれ設けられた導電領域14cにより直列に接続されている。
【0026】
図3(A)に示すように、導電領域14cにより直列接続される膜電極接合体20の方向が膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(4)〜膜電極接合体20(5)とで、90度変わり、膜電極接合体20(4)〜膜電極接合体20(5)と、膜電極接合体20(5)〜膜電極接合体20(8)とでさらに90度変わっている。すなわち、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(8)を結ぶ導電パスが膜電極接合体20(4)〜膜電極接合体20(5)で折り返したU字状となっている。膜電極接合体20を直線状に直列に接続するだけでなく、任意の形状に応じた接続を可能とすることで、燃料電池をよりコンパクトに、また、形状の自由度が高い設計を可能とする。
【0027】
また、本実施の形態の基材14は、集電領域14sを有する。集電領域14sは、触媒層の集電性を高めるための領域であり、基材14の表層部分に設けられている。具体的には、基材14の長手方向の端部領域において、膜電極接合体20(4)のアノード触媒層24と接するように集電領域14sが設けられ、この集電領域14sは、膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)との間に設けられた導電領域14cと接続している。
また、基材14の長手方向の端部領域において、膜電極接合体20(5)のカソード触媒層26と接するように集電領域14sが設けられ、この集電領域14sは、膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)との間に設けられた導電領域14cと接続している。
【0028】
絶縁領域14z、導電領域14cおよび集電領域14sは、ベースとなる材料が同じであり、ベース材料を改質して導電性を変えることにより機能が異なる領域が形成されている。このため、絶縁領域14zと導電領域14cとの間、および絶縁領域14zと集電領域14sとの間には物理的な区切りが存在せず、基材14において、絶縁領域14z、導電領域14cおよび集電領域14sが一体的に形成されている。
【0029】
図5は、基材14の導電領域14cと絶縁領域14zの導電率を示す模式図である。図5に示すように、絶縁領域14zから導電領域14cにかけて導電率が連続的に増加している。導電率が基準となる導電率A0以上の領域が導電領域14cであり、導電率が導電率A0未満の領域が絶縁領域14zである。なお、導電率は基材14の黒鉛化度と正の相関があり、基材14の黒鉛化度が高いほど導電率が高くなる。このため、図5の縦軸の導電率を黒鉛化度に置き換えることができる。基材14の黒鉛化度は、たとえば、ラマン分光法により測定することができる。
【0030】
基材14の集電領域14sと絶縁領域14zの導電率の関係も、図5に示す模式図と同様な関係であり、絶縁領域14zから集電領域14sにかけて導電率が連続的に増加している。基材14の材料としては、加熱により黒鉛化する芳香族高分子が用いられる。この芳香族高分子は、加熱によって炭素六方網平面が積層してなる黒鉛微結晶を形成・成長・配列しやすい構造をしている。ここで用いる芳香族高分子としては、たとえば、ポリイミドが挙げられる。この場合、絶縁領域14zは絶縁性のポリイミドで形成され、導電領域14cおよび集電領域14sは、ポリイミドの黒鉛化度を高めることにより形成される。
【0031】
以上説明した複合膜12は、アノード用ハウジング40およびカソード用ハウジング42からなる筐体に収容されている。アノード用ハウジング40により、燃料貯蔵用の燃料貯蔵部37が形成されている。なお、アノード用ハウジング40に燃料供給口(図示せず)を設置することにより、燃料カートリッジなどから燃料を適宜補充可能である。
【0032】
一方、カソード用ハウジング42には、外部から空気を取り込むための空気取入口44が設けられている。
【0033】
アノード用ハウジング40とカソード用ハウジング42とは、複合膜12の周縁部に設けられた封止部材50を介して、ボルト、ナットなどの締結部材(図示せず)を用いて締結されている。これにより、封止部材50に圧力が加えられ、封止部材50によるシール性が高められる。
【0034】
本実施の形態に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20を直列に接続するためのインターコネクタが基材14を構成する材料を改質して導電性を連続的に変えることにより形成されている。このため、インターコネクタが基材14と別部材で形成されておらず、インターコネクタ部分に隙間が生じにくくなっている。この結果、隣接する膜電極接合体20を直列接続するインターコネクタの接続信頼性を向上させることができる。また、インターコネクタ部において、クロスリークが生じることを抑制することができる。
【0035】
また、導電領域14cが設けられた膜電極接合体20の辺とは別の辺に沿って集電領域14sを設けることにより、膜電極接合体20の集電性を高めることができる。この集電領域14sは、導電領域14cと同様に、基材14を構成する材料を改質して導電性を連続的に変えることにより形成されている。このため、集電領域14sの部分に隙間が生じにくくなっている。この結果、集電領域14sの接続信頼性を向上させることができる。
【0036】
(複合膜の作製方法)
実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜12の作製方法について、図6乃至図12を参照して説明する。図6乃至図11は、実施の形態に係る複合膜12を作製する方法を示す工程図である。なお、図6乃至図7において、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A’線に沿った断面図を示す。図8乃至図10では、左側(i)、(i’)にそれぞれアノード側の平面図、カソード側の平面図を示し、左側(ii)、(ii’)にそれぞれ平面図(i)のA−A’線に沿った断面図、平面図(i’)のB−B’線に沿った断面図を示す。図11は、図10の平面図(i)のC−C’線に沿った断面図である。
【0037】
まず、図6(A)に示すように、ポリイミドを板状に成型して形成された基材14を用意する。基材14の厚さは、たとえば、20−150μmである。この段階では、基材14の全体が絶縁領域14zである。
【0038】
次に、図6(B)に示すように、基材14に複数の開口部16を作製する。開口部16の形成領域は、後述する電解質膜の形成領域に相当する。基材14の長手方向に隣接する開口部16間の間隔は、たとえば800μmである。開口部16を形成する方法として、たとえば、赤外レーザ、可視光レーザ、紫外レーザによるレーザ加工あるいは金型を用いた打ち抜き法などの手法が挙げられる。
【0039】
次に、図7に示すように、基材14に設けられた開口部16(図6(B)参照)に電解質膜22を形成する。具体的には、ナフィオン溶液を開口部16に充填した後、溶媒を蒸発させることにより電解質膜22を形成することができる。この手法は、開口部16が微小である場合に有効である。また、開口部16に、開口部16の大きさに予め成形された電解質膜22を嵌め込んでもよい。この場合には、開口部16に電解質膜22を嵌め込んだ後、基材14と電解質膜22との界面にナフィオン溶液を流し込むことが好ましい。これによれば、ナフィオン溶液が接着剤として機能するため、基材14と電解質膜22との密着性を高めることができる。
【0040】
次に、図8に示すように、基材14の長手方向に隣接する電解質膜22の間にインターコネクタとなる導電領域14cを形成する。導電領域14cは、隣接する電解質膜22の対向する辺に沿って設けられており、かつ、この段階では、導電領域14cは、隣接する電解質膜22のいずれからも離間して設けられている。なお、基材14の長手方向の一方の端部領域において、図8の上下方向(基材14の短手方向に)に隣接する電解質膜22(4)と電解質膜22(5)の間においても導電領域14cを形成する。
【0041】
また、図8(i)および図8(ii)に示すように、基材14のアノード側において、電解質膜22(4)の辺に沿って延在し、一方の端部が電解質膜22(4)と電解質膜22(5)との間に設けられた導電領域14cと接続する集電領域14sを形成する。また、図8(i’)および図8(ii’)に示すように、基材14のカソード側において、電解質膜22(5)の辺に沿って延在し、一方の端部が電解質膜22(5)との間に設けられた導電領域14cと接続する集電領域14sを形成する。
【0042】
図12(A)および図12(B)は、導電領域14cのより詳細な構成および作製方法を示す部分拡大図である。まず、図12(A)に示すように、基材14の一方の面側から絶縁領域14zの所定領域に向けてレーザを照射し、ポリイミドを黒鉛化することにより導電領域4c(1)を形成する。このときのレーザの照射領域は、隣接する電解質膜22のうち、一方の電解質膜22により近い領域である。レーザの照射幅W1は、たとえば、400μmである。
【0043】
次に、図12(B)に示すように、基材14の他方の面側から絶縁領域14zの所定領域に向けてレーザを照射し、ポリイミドを黒鉛化することにより導電領域14c(2)を形成する。このときのレーザの照射領域は、隣接する電解質膜22のうち、他方の電解質膜22により近い領域であり、かつ、導電領域14c(2)が導電領域4c(1)と重畳するような位置である。基材14の一方の面側からのレーザ照射により形成された導電領域14c(1)と基材14の他方の面側からのレーザ照射により形成された導電領域4c(2)とが重畳する領域の幅W2は、たとえば、200μmである。
【0044】
これによれば、基材の一方の面側からレーザを照射しただけでは、導電領域14cを基材の一方の面から他方の面に貫通する領域とすることができないような条件下においても、導電領域14cを簡便かつ確実に形成することができる。
【0045】
集電領域14sは、導電領域14cと同様に、絶縁領域14zの所定領域へのレーザ照射により形成することができる。集電領域14sを形成する場合は、アノード側の絶縁領域14zの表層へのレーザ照射、または、カソード側の絶縁領域14zの表層へのレーザ照射を行う。この場合、集電領域14sが基材14を貫通しないように、導電領域14cを形成する場合に比べて、照射するレーザの出力を抑えることが求められる。
【0046】
次に、図9(i)および図9(ii)に示すように、基材14のアノード側において、複数の電解質膜22を跨ぐように、基材14の長手方向に沿って触媒層80を形成する。具体的には、水10g、ナフィオン溶液5g、白金ブラックまたは白金担持カーボン5g、1−プロパノール5gを十分撹拌することにより触媒スラリーを調整し、この触媒スラリーをスプレー塗布することにより触媒層80を形成する。同様に、図9(i’)および図9(ii’)に示すように、基材14のカソード側において、複数の電解質膜22を跨ぐように、基材14の長手方向に沿って触媒層82を形成する。具体的には、上述した触媒スラリーをスプレー塗布することにより触媒層82を形成する。
【0047】
次に、図10(i)、図10(ii)および図11に示すように、基材14のアノード側に設けられた触媒層80の所定領域をエキシマレーザなどのレーザを用いて部分的に除去して、一つの電解質膜22を覆うような区画に分割されたアノード触媒層24を形成する。電解質膜22を覆うアノード触媒層24(ただし、アノード触媒層24(8)を除く)は、各電解質膜22の一辺の近傍に設けられた導電領域14cの上に延在して形成されている。また、アノード触媒層24(4)は、電解質膜22(4)の一辺に沿って設けられた集電領域14sの上に延在して形成されている。
【0048】
また、図10(i’)、図10(ii’)および図11に示すように、基材14のカソード側に設けられた触媒層82の所定領域をエキシマレーザなどのレーザを用いて部分的に除去して、一つの電解質膜22を覆うような区画に分割されたカソード触媒層26を形成する。電解質膜22を覆うカソード触媒層26(ただし、カソード触媒層26(1)を除く)は、各電解質膜22の一辺の近傍に設けられた導電領域14cの上に延在して形成されている。また、カソード触媒層26(5)は、電解質膜22(5)の一辺に沿って設けられた集電領域14sの上に延在して形成されている。
【0049】
なお、触媒層除去に用いるレーザにはエキシマレーザの他にその発振波長が180nm以上550nm以下であるYAG第3高周波レーザやYVO4第4高周波グリーンレーザなどを用いてもよい。レーザの出力は、レーザ照射部分の触媒層を完全に除去するのに十分であればよく、触媒層の材質や厚さに応じて適宜調整すればよい。
【0050】
以上の製造工程により、実施の形態に係る膜電極接合体20が組み込まれた複合膜12が作製される。なお、上述した製造工程では、各工程でアノードおよびカソードに同様な工程を実施した後、次の工程に移行しているが、たとえば、アノードに一連の工程を施した後、カソードに一連の工程を施してもよい。
【0051】
(レーザ照射実験1)
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用意し、CO2レーザ(最大出力75W、波長9.3μm)の強度および走査スピードを変えて当該ポリイミドフィルムの片面に照射した。表1にレーザ照射の結果を示す。表1の◎はレーザ照射した面から裏面まで炭化(黒色に変色)し、かつポリイミドフィルムに貫通孔が生じなかったことを示す。表1の△は、レーザ照射した面から裏面まで炭化(黒色に変色)したが、ポリイミドフィルムに貫通孔が生じたことを示す。表1の×は、レーザ照射した面側の一部のみが炭化(黒色に変色)したことを示す。また、表1の−は、レーザ照射実験を実施していないことを示す。表1に示すように、ポリイミドフィルムの片面にCO2レーザを片面照射した場合に、CO2レーザの強度および走査スピードを調整することにより、貫通孔を生じさせることなく、レーザ照射した面から裏面まで炭化させることが可能であることが確認された。また、レーザ照射した面を顕微鏡観察した結果、導電領域である基材(白色透明)から、導電領域である黒鉛部(黒色部分)に、中間領域である中間色(灰色)部分を経て、漸次変色しており、絶縁領域から導電領域にかけて基材の導電性の漸次的増加が推測される(図13および図14参照)。
【表1】
【0052】
(レーザ照射実験2)
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用意し、CO2レーザ(出力11.3W、波長9.3μm)を走査スピード300mm/秒で当該ポリイミドフィルムの片面に照射した。レーザ照射された部分(0.9mm×0.1mm)について、貫層方向の抵抗を測定したところ、20Ωであった。この場合の体積抵抗率は、20(Ω)×0.09(cm)×0.01(cm)÷0.0025(cm)=7.2Ω・cmとなる。また、ガス拡散層として用いられるカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−060、厚さ0.2mm、5mm×5mm)について、貫層方向の抵抗を測定したところ、5Ωであった。この場合の体積抵抗率は、5(Ω)×0.5(cm)×0.5(cm)÷0.02(cm)=62.5Ω・cmとなる。以上の結果より、ポリイミドフィルムをレーザ照射して導電領域を形成した場合の体積抵抗率は、カーボンペーパーの体積抵抗率に対して8.7倍程度低い値であり、十分実用レベルにあることが確認された。
【0053】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【符号の説明】
【0054】
10 燃料電池、12 複合膜、14 基材、14z 絶縁領域、14c 導電領域、14s 集電領域、20 膜電極接合体、22 電解質膜、24 アノード触媒層、26 カソード触媒層
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。より具体的には、本発明は、セルが平面配列された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギ供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラあるいは電子辞書、電子書籍)などの電源への利用が期待されている。携帯機器用の固体高分子形燃料電池としては、複数の単セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池が知られている。また、複数の単セルを平面状に配列させる方法として非電解質である基材を用いて複数の貫通孔を設け、そこに電解質を充填することで作製した複合膜を用いた平面配列型の燃料電池もある(特許文献1参照)。基材を用いることで、プロトン伝導性は高いが機械的強度の弱い電解質を用いることが可能になるとともに、電解質の部分を極力減らすことでコストの削減になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−244715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池は、スタック構造の燃料電池と比べてセル間を直列に電気的に接続することが困難であった。これに対して、特許文献1では、固体高分子膜に接続配線を貫通させる手法が採られているが、この場合には、接続配線の接触不良およびガスリークが生じてしまう問題があった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、隣接するセル間を電気的に直列に接続するための接続部の接続信頼性を向上させる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、複合膜である。当該複合膜は、複数の開口部が設けられた基材と、開口部にそれぞれ設けられ、イオン交換体を含む電解質膜と、電解質膜の一方の面に設けられたアノード触媒層と、電解質膜の他方の面に設けられたカソード触媒層と、を有する膜電極接合体と、を備え、基材は、膜電極接合体の周囲を絶縁する絶縁領域と、隣接する膜電極接合体の一方のアノード触媒層と他方のカソード触媒層とを電気的に接続するための導電領域とを有し、絶縁領域から導電領域にかけて基材の導電性が連続的に増加していることを特徴とする。なお、基材の導電性が連続的に増加するとは、図5に示すように連続的な曲線状に増加する場合だけでなく、一部の領域で導電性の増加が一定になっているような場合や、あるいは絶縁領域と導電領域との間に両者の中間領域が設けられているような場合も含まれる。
【0008】
上記態様の複合膜によれば、隣接する膜電極接合体を直列に接続するための導電領域が基材の導電性を連続的に変えることにより形成されている。このため、導電領域が基材と別部材で形成されておらず、導電領域に隙間が生じにくくなっている。この結果、隣接する膜電極接合体を直列接続する導電領域の接続信頼性を向上させることができる。
【0009】
上記態様の複合膜において、絶縁領域から導電領域にかけて基材の黒鉛化度が高くなっていてもよい。少なくとも1つの膜電極接合体のアノード触媒層またはカソード触媒層と接する基材の表層部分に設けられ、導電領域と電気的に接続した集電領域をさらに備え、絶縁領域から集電領域にかけて基材の導電性が連続的に増加していてもよい。また、直線状に配置され、直列に接続された第1の列に属する複数の膜電極接合体と、当該複数の膜電極接合体と並行して、直線状に配置され、直列に接続された第2の列に属する複数の膜電極接合体とを有し、導電領域の一つが、第1の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、当該膜電極接合体と対向し、第2の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、を直列に接続してもよい。基材の絶縁領域が加熱により黒鉛化する芳香族高分子で形成されていてもよい。また、その芳香族高分子はポリイミドで形成され、基材の導電領域が黒鉛化されたポリイミドで形成されていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は燃料電池である。当該燃料電池は、上述した態様の複合膜を有することを特徴とする。
【0011】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、隣接するセル間を電気的に直列に接続するための接続部の接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る燃料電池の構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面図である。
【図3】図3(A)は、複合膜をアノード側から平面視した平面図である。図3(B)は、複合膜をカソード側から平面視した平面図である。図3(C)は、図3(A)のA−A’線に沿った断面図である。図3(D)は、図3(A)のC−C’線に沿った断面図である。
【図4】図4(A)は、アノード触媒層を省略して、複合膜をアノード側から平面視した平面図である。図4(B)は、カソード触媒層を省略して、複合膜をカソード側から平面視した平面図である。
【図5】基材の導電領域と絶縁領域の導電率を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図7】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図8】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図9】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図10】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図11】実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図12】導電領域のより詳細な構成および作製方法を示す部分拡大図である。
【図13】絶縁領域およびレーザ照射によって形成された導電領域を撮像した顕微鏡像である。
【図14】絶縁領域およびレーザ照射によって形成された導電領域を撮像した顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態に係る燃料電池10の構造を示す分解斜視図である。図2は、図1のA−A’線に沿った断面図である。図1および図2に示すように、燃料電池10は、膜電極接合体(MEA、触媒塗布プロトン交換膜(CCM)ともいう)20が組み込まれた複合膜12、アノード用ハウジング40およびカソード用ハウジング42を備える。また、複合膜12の周縁部に後述する封止部材50が設けられている。
【0016】
図3(A)は、複合膜12をアノード側から平面視した平面図である。図3(B)は、複合膜12をカソード側から平面視した平面図である。図3(C)は、図3(A)のA−A線に沿った断面図である。図3(D)は、図3(A)のC−C’線に沿った断面図である。また、図4(A)は、アノード触媒層を省略して、複合膜12をアノード側から平面視した平面図である。図4(B)は、カソード触媒層を省略して、複合膜12をカソード側から平面視した平面図である。
【0017】
図3および図4を参照して、複合膜12の構成を説明する。複合膜12は、基材14および複数の膜電極接合体20を含む。基材14には、膜電極接合体20と同数の開口部16が設けられており、各開口部16に対応し膜電極接合体20が形成されている。
【0018】
膜電極接合体20は、電解質膜22、電解質膜22の一方の面に設けられたアノード触媒層24、電解質膜22の他方の面に設けられたカソード触媒層26を備える。電解質膜22は、基材14に設けられた開口部16を充填するように設けられている。アノード触媒層24には、燃料ガスとして水素が供給される。一方、カソード触媒層26には酸化剤として空気が供給される。一対のアノード触媒層24とカソード触媒層26との間に電解質膜22が狭持されることによりセルが構成され、各セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0019】
このように、本実施の形態の燃料電池10では、アノード触媒層24にカソード触媒層26が対となり、複数の膜電極接合体20またはセルが平面状に形成されている。なお、開口部は4辺が囲まれていても、あるいは1辺が開放されて3辺が囲まれていてもよい。開放されている1辺は成形後削除してもよい。
【0020】
電解質膜22は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、アノード触媒層24とカソード触媒層26との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜22は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0021】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26は、イオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子を有する。
【0022】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜22を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜22と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0023】
本実施の形態では、膜電極接合体20の数は、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(8)の8組である。このうち、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)が基材14の長手方向に一列に並び、これらと並行して膜電極接合体20(5)〜膜電極接合体20(8)が膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)とは逆の順序で一列に並んでいる。
【0024】
基材14は、絶縁領域14zおよび導電領域14cを有する。絶縁領域14zは、膜電極接合体20の周囲を絶縁する領域である。絶縁領域14zにより、隣接する膜電極接合体20が短絡することが抑制される。導電領域14cは、隣接する膜電極接合体20の一方のアノード触媒層24と他方のカソード触媒層26とを電気的に接続するための領域であり、いわゆるインターコネクタ部である。具体的には、隣接する膜電極接合体20の間において、電解質膜22の辺に沿って基材14を貫通した領域として設けられており、かつ、隣接する電解質膜22のいずれからも絶縁領域14zにより絶縁して設けられている。
【0025】
一列に並ぶ膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)は、隣接する膜電極接合体20の間にそれぞれ設けられた導電領域14cによって直列に接続されている。同様に、一列に並ぶ膜電極接合体20(5)〜膜電極接合体20(8)は、隣接する膜電極接合体20の間にそれぞれ設けられた導電領域14cによって直列に接続されている。また、膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)との間に導電領域14cが設けられており(図3(D)参照)、この導電領域14cによって膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)とが直列に接続されている。このように、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(8)は、隣接する膜電極接合体20の間にそれぞれ設けられた導電領域14cにより直列に接続されている。
【0026】
図3(A)に示すように、導電領域14cにより直列接続される膜電極接合体20の方向が膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(4)〜膜電極接合体20(5)とで、90度変わり、膜電極接合体20(4)〜膜電極接合体20(5)と、膜電極接合体20(5)〜膜電極接合体20(8)とでさらに90度変わっている。すなわち、膜電極接合体20(1)〜膜電極接合体20(8)を結ぶ導電パスが膜電極接合体20(4)〜膜電極接合体20(5)で折り返したU字状となっている。膜電極接合体20を直線状に直列に接続するだけでなく、任意の形状に応じた接続を可能とすることで、燃料電池をよりコンパクトに、また、形状の自由度が高い設計を可能とする。
【0027】
また、本実施の形態の基材14は、集電領域14sを有する。集電領域14sは、触媒層の集電性を高めるための領域であり、基材14の表層部分に設けられている。具体的には、基材14の長手方向の端部領域において、膜電極接合体20(4)のアノード触媒層24と接するように集電領域14sが設けられ、この集電領域14sは、膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)との間に設けられた導電領域14cと接続している。
また、基材14の長手方向の端部領域において、膜電極接合体20(5)のカソード触媒層26と接するように集電領域14sが設けられ、この集電領域14sは、膜電極接合体20(4)と膜電極接合体20(5)との間に設けられた導電領域14cと接続している。
【0028】
絶縁領域14z、導電領域14cおよび集電領域14sは、ベースとなる材料が同じであり、ベース材料を改質して導電性を変えることにより機能が異なる領域が形成されている。このため、絶縁領域14zと導電領域14cとの間、および絶縁領域14zと集電領域14sとの間には物理的な区切りが存在せず、基材14において、絶縁領域14z、導電領域14cおよび集電領域14sが一体的に形成されている。
【0029】
図5は、基材14の導電領域14cと絶縁領域14zの導電率を示す模式図である。図5に示すように、絶縁領域14zから導電領域14cにかけて導電率が連続的に増加している。導電率が基準となる導電率A0以上の領域が導電領域14cであり、導電率が導電率A0未満の領域が絶縁領域14zである。なお、導電率は基材14の黒鉛化度と正の相関があり、基材14の黒鉛化度が高いほど導電率が高くなる。このため、図5の縦軸の導電率を黒鉛化度に置き換えることができる。基材14の黒鉛化度は、たとえば、ラマン分光法により測定することができる。
【0030】
基材14の集電領域14sと絶縁領域14zの導電率の関係も、図5に示す模式図と同様な関係であり、絶縁領域14zから集電領域14sにかけて導電率が連続的に増加している。基材14の材料としては、加熱により黒鉛化する芳香族高分子が用いられる。この芳香族高分子は、加熱によって炭素六方網平面が積層してなる黒鉛微結晶を形成・成長・配列しやすい構造をしている。ここで用いる芳香族高分子としては、たとえば、ポリイミドが挙げられる。この場合、絶縁領域14zは絶縁性のポリイミドで形成され、導電領域14cおよび集電領域14sは、ポリイミドの黒鉛化度を高めることにより形成される。
【0031】
以上説明した複合膜12は、アノード用ハウジング40およびカソード用ハウジング42からなる筐体に収容されている。アノード用ハウジング40により、燃料貯蔵用の燃料貯蔵部37が形成されている。なお、アノード用ハウジング40に燃料供給口(図示せず)を設置することにより、燃料カートリッジなどから燃料を適宜補充可能である。
【0032】
一方、カソード用ハウジング42には、外部から空気を取り込むための空気取入口44が設けられている。
【0033】
アノード用ハウジング40とカソード用ハウジング42とは、複合膜12の周縁部に設けられた封止部材50を介して、ボルト、ナットなどの締結部材(図示せず)を用いて締結されている。これにより、封止部材50に圧力が加えられ、封止部材50によるシール性が高められる。
【0034】
本実施の形態に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20を直列に接続するためのインターコネクタが基材14を構成する材料を改質して導電性を連続的に変えることにより形成されている。このため、インターコネクタが基材14と別部材で形成されておらず、インターコネクタ部分に隙間が生じにくくなっている。この結果、隣接する膜電極接合体20を直列接続するインターコネクタの接続信頼性を向上させることができる。また、インターコネクタ部において、クロスリークが生じることを抑制することができる。
【0035】
また、導電領域14cが設けられた膜電極接合体20の辺とは別の辺に沿って集電領域14sを設けることにより、膜電極接合体20の集電性を高めることができる。この集電領域14sは、導電領域14cと同様に、基材14を構成する材料を改質して導電性を連続的に変えることにより形成されている。このため、集電領域14sの部分に隙間が生じにくくなっている。この結果、集電領域14sの接続信頼性を向上させることができる。
【0036】
(複合膜の作製方法)
実施の形態に係る燃料電池に用いられる複合膜12の作製方法について、図6乃至図12を参照して説明する。図6乃至図11は、実施の形態に係る複合膜12を作製する方法を示す工程図である。なお、図6乃至図7において、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A’線に沿った断面図を示す。図8乃至図10では、左側(i)、(i’)にそれぞれアノード側の平面図、カソード側の平面図を示し、左側(ii)、(ii’)にそれぞれ平面図(i)のA−A’線に沿った断面図、平面図(i’)のB−B’線に沿った断面図を示す。図11は、図10の平面図(i)のC−C’線に沿った断面図である。
【0037】
まず、図6(A)に示すように、ポリイミドを板状に成型して形成された基材14を用意する。基材14の厚さは、たとえば、20−150μmである。この段階では、基材14の全体が絶縁領域14zである。
【0038】
次に、図6(B)に示すように、基材14に複数の開口部16を作製する。開口部16の形成領域は、後述する電解質膜の形成領域に相当する。基材14の長手方向に隣接する開口部16間の間隔は、たとえば800μmである。開口部16を形成する方法として、たとえば、赤外レーザ、可視光レーザ、紫外レーザによるレーザ加工あるいは金型を用いた打ち抜き法などの手法が挙げられる。
【0039】
次に、図7に示すように、基材14に設けられた開口部16(図6(B)参照)に電解質膜22を形成する。具体的には、ナフィオン溶液を開口部16に充填した後、溶媒を蒸発させることにより電解質膜22を形成することができる。この手法は、開口部16が微小である場合に有効である。また、開口部16に、開口部16の大きさに予め成形された電解質膜22を嵌め込んでもよい。この場合には、開口部16に電解質膜22を嵌め込んだ後、基材14と電解質膜22との界面にナフィオン溶液を流し込むことが好ましい。これによれば、ナフィオン溶液が接着剤として機能するため、基材14と電解質膜22との密着性を高めることができる。
【0040】
次に、図8に示すように、基材14の長手方向に隣接する電解質膜22の間にインターコネクタとなる導電領域14cを形成する。導電領域14cは、隣接する電解質膜22の対向する辺に沿って設けられており、かつ、この段階では、導電領域14cは、隣接する電解質膜22のいずれからも離間して設けられている。なお、基材14の長手方向の一方の端部領域において、図8の上下方向(基材14の短手方向に)に隣接する電解質膜22(4)と電解質膜22(5)の間においても導電領域14cを形成する。
【0041】
また、図8(i)および図8(ii)に示すように、基材14のアノード側において、電解質膜22(4)の辺に沿って延在し、一方の端部が電解質膜22(4)と電解質膜22(5)との間に設けられた導電領域14cと接続する集電領域14sを形成する。また、図8(i’)および図8(ii’)に示すように、基材14のカソード側において、電解質膜22(5)の辺に沿って延在し、一方の端部が電解質膜22(5)との間に設けられた導電領域14cと接続する集電領域14sを形成する。
【0042】
図12(A)および図12(B)は、導電領域14cのより詳細な構成および作製方法を示す部分拡大図である。まず、図12(A)に示すように、基材14の一方の面側から絶縁領域14zの所定領域に向けてレーザを照射し、ポリイミドを黒鉛化することにより導電領域4c(1)を形成する。このときのレーザの照射領域は、隣接する電解質膜22のうち、一方の電解質膜22により近い領域である。レーザの照射幅W1は、たとえば、400μmである。
【0043】
次に、図12(B)に示すように、基材14の他方の面側から絶縁領域14zの所定領域に向けてレーザを照射し、ポリイミドを黒鉛化することにより導電領域14c(2)を形成する。このときのレーザの照射領域は、隣接する電解質膜22のうち、他方の電解質膜22により近い領域であり、かつ、導電領域14c(2)が導電領域4c(1)と重畳するような位置である。基材14の一方の面側からのレーザ照射により形成された導電領域14c(1)と基材14の他方の面側からのレーザ照射により形成された導電領域4c(2)とが重畳する領域の幅W2は、たとえば、200μmである。
【0044】
これによれば、基材の一方の面側からレーザを照射しただけでは、導電領域14cを基材の一方の面から他方の面に貫通する領域とすることができないような条件下においても、導電領域14cを簡便かつ確実に形成することができる。
【0045】
集電領域14sは、導電領域14cと同様に、絶縁領域14zの所定領域へのレーザ照射により形成することができる。集電領域14sを形成する場合は、アノード側の絶縁領域14zの表層へのレーザ照射、または、カソード側の絶縁領域14zの表層へのレーザ照射を行う。この場合、集電領域14sが基材14を貫通しないように、導電領域14cを形成する場合に比べて、照射するレーザの出力を抑えることが求められる。
【0046】
次に、図9(i)および図9(ii)に示すように、基材14のアノード側において、複数の電解質膜22を跨ぐように、基材14の長手方向に沿って触媒層80を形成する。具体的には、水10g、ナフィオン溶液5g、白金ブラックまたは白金担持カーボン5g、1−プロパノール5gを十分撹拌することにより触媒スラリーを調整し、この触媒スラリーをスプレー塗布することにより触媒層80を形成する。同様に、図9(i’)および図9(ii’)に示すように、基材14のカソード側において、複数の電解質膜22を跨ぐように、基材14の長手方向に沿って触媒層82を形成する。具体的には、上述した触媒スラリーをスプレー塗布することにより触媒層82を形成する。
【0047】
次に、図10(i)、図10(ii)および図11に示すように、基材14のアノード側に設けられた触媒層80の所定領域をエキシマレーザなどのレーザを用いて部分的に除去して、一つの電解質膜22を覆うような区画に分割されたアノード触媒層24を形成する。電解質膜22を覆うアノード触媒層24(ただし、アノード触媒層24(8)を除く)は、各電解質膜22の一辺の近傍に設けられた導電領域14cの上に延在して形成されている。また、アノード触媒層24(4)は、電解質膜22(4)の一辺に沿って設けられた集電領域14sの上に延在して形成されている。
【0048】
また、図10(i’)、図10(ii’)および図11に示すように、基材14のカソード側に設けられた触媒層82の所定領域をエキシマレーザなどのレーザを用いて部分的に除去して、一つの電解質膜22を覆うような区画に分割されたカソード触媒層26を形成する。電解質膜22を覆うカソード触媒層26(ただし、カソード触媒層26(1)を除く)は、各電解質膜22の一辺の近傍に設けられた導電領域14cの上に延在して形成されている。また、カソード触媒層26(5)は、電解質膜22(5)の一辺に沿って設けられた集電領域14sの上に延在して形成されている。
【0049】
なお、触媒層除去に用いるレーザにはエキシマレーザの他にその発振波長が180nm以上550nm以下であるYAG第3高周波レーザやYVO4第4高周波グリーンレーザなどを用いてもよい。レーザの出力は、レーザ照射部分の触媒層を完全に除去するのに十分であればよく、触媒層の材質や厚さに応じて適宜調整すればよい。
【0050】
以上の製造工程により、実施の形態に係る膜電極接合体20が組み込まれた複合膜12が作製される。なお、上述した製造工程では、各工程でアノードおよびカソードに同様な工程を実施した後、次の工程に移行しているが、たとえば、アノードに一連の工程を施した後、カソードに一連の工程を施してもよい。
【0051】
(レーザ照射実験1)
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用意し、CO2レーザ(最大出力75W、波長9.3μm)の強度および走査スピードを変えて当該ポリイミドフィルムの片面に照射した。表1にレーザ照射の結果を示す。表1の◎はレーザ照射した面から裏面まで炭化(黒色に変色)し、かつポリイミドフィルムに貫通孔が生じなかったことを示す。表1の△は、レーザ照射した面から裏面まで炭化(黒色に変色)したが、ポリイミドフィルムに貫通孔が生じたことを示す。表1の×は、レーザ照射した面側の一部のみが炭化(黒色に変色)したことを示す。また、表1の−は、レーザ照射実験を実施していないことを示す。表1に示すように、ポリイミドフィルムの片面にCO2レーザを片面照射した場合に、CO2レーザの強度および走査スピードを調整することにより、貫通孔を生じさせることなく、レーザ照射した面から裏面まで炭化させることが可能であることが確認された。また、レーザ照射した面を顕微鏡観察した結果、導電領域である基材(白色透明)から、導電領域である黒鉛部(黒色部分)に、中間領域である中間色(灰色)部分を経て、漸次変色しており、絶縁領域から導電領域にかけて基材の導電性の漸次的増加が推測される(図13および図14参照)。
【表1】
【0052】
(レーザ照射実験2)
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用意し、CO2レーザ(出力11.3W、波長9.3μm)を走査スピード300mm/秒で当該ポリイミドフィルムの片面に照射した。レーザ照射された部分(0.9mm×0.1mm)について、貫層方向の抵抗を測定したところ、20Ωであった。この場合の体積抵抗率は、20(Ω)×0.09(cm)×0.01(cm)÷0.0025(cm)=7.2Ω・cmとなる。また、ガス拡散層として用いられるカーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−060、厚さ0.2mm、5mm×5mm)について、貫層方向の抵抗を測定したところ、5Ωであった。この場合の体積抵抗率は、5(Ω)×0.5(cm)×0.5(cm)÷0.02(cm)=62.5Ω・cmとなる。以上の結果より、ポリイミドフィルムをレーザ照射して導電領域を形成した場合の体積抵抗率は、カーボンペーパーの体積抵抗率に対して8.7倍程度低い値であり、十分実用レベルにあることが確認された。
【0053】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【符号の説明】
【0054】
10 燃料電池、12 複合膜、14 基材、14z 絶縁領域、14c 導電領域、14s 集電領域、20 膜電極接合体、22 電解質膜、24 アノード触媒層、26 カソード触媒層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部が設けられた基材と、
前記開口部にそれぞれ設けられ、イオン交換体を含む電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に設けられたアノード触媒層と、前記電解質膜の他方の面に設けられたカソード触媒層と、を有する膜電極接合体と、
を備え、
前記基材は、前記膜電極接合体の周囲を絶縁する絶縁領域と、隣接する前記膜電極接合体の一方のアノード触媒層と他方のカソード触媒層とを電気的に接続するための導電領域とを有し、
前記絶縁領域から前記導電領域にかけて前記基材の導電性が連続的に増加していることを特徴とする複合膜。
【請求項2】
前記絶縁領域から前記導電領域にかけて前記基材の黒鉛化度が高くなっている請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
少なくとも1つの前記膜電極接合体の前記アノード触媒層または前記カソード触媒層と接する前記基材の表層部分に設けられ、前記導電領域と電気的に接続した集電領域をさらに備え、
前記絶縁領域から前記集電領域にかけて前記基材の導電性が連続的に増加している請求項1または2に記載の複合膜。
【請求項4】
直線状に配置され、直列に接続された第1の列に属する複数の膜電極接合体と、
当該複数の膜電極接合体と並行して、直線状に配置され、直列に接続された第2の列に属する複数の膜電極接合体とを有し、
前記導電領域の一つが、前記第1の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、当該膜電極接合体と対向し、前記第2の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、を直列に接続する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合膜。
【請求項5】
前記基材の絶縁領域は加熱により黒鉛化する芳香族高分子で形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合膜。
【請求項6】
前記芳香族高分子はポリイミドである請求項5に記載の複合膜。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合膜を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
複数の開口部が設けられた基材と、
前記開口部にそれぞれ設けられ、イオン交換体を含む電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に設けられたアノード触媒層と、前記電解質膜の他方の面に設けられたカソード触媒層と、を有する膜電極接合体と、
を備え、
前記基材は、前記膜電極接合体の周囲を絶縁する絶縁領域と、隣接する前記膜電極接合体の一方のアノード触媒層と他方のカソード触媒層とを電気的に接続するための導電領域とを有し、
前記絶縁領域から前記導電領域にかけて前記基材の導電性が連続的に増加していることを特徴とする複合膜。
【請求項2】
前記絶縁領域から前記導電領域にかけて前記基材の黒鉛化度が高くなっている請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
少なくとも1つの前記膜電極接合体の前記アノード触媒層または前記カソード触媒層と接する前記基材の表層部分に設けられ、前記導電領域と電気的に接続した集電領域をさらに備え、
前記絶縁領域から前記集電領域にかけて前記基材の導電性が連続的に増加している請求項1または2に記載の複合膜。
【請求項4】
直線状に配置され、直列に接続された第1の列に属する複数の膜電極接合体と、
当該複数の膜電極接合体と並行して、直線状に配置され、直列に接続された第2の列に属する複数の膜電極接合体とを有し、
前記導電領域の一つが、前記第1の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、当該膜電極接合体と対向し、前記第2の列に属する複数の膜電極接合体の中で端部に位置する膜電極接合体と、を直列に接続する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合膜。
【請求項5】
前記基材の絶縁領域は加熱により黒鉛化する芳香族高分子で形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合膜。
【請求項6】
前記芳香族高分子はポリイミドである請求項5に記載の複合膜。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合膜を有することを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−15093(P2012−15093A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68617(P2011−68617)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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