説明

複層ガラス構造体及び保冷ショーケース用ドア並びに複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法

【課題】本発明は、複層ガラス構造体を分解すること無く複層ガラス構造体に充填された不活性ガスの濃度を測定することができる複層ガラス構造体及び保冷ショーケースドア並びに複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の複層ガラス構造体10は、第1のガラス板14の面の全面に膜24が備えられておらず、その一部に膜24の無い第1の透過部26が第1のガラス板14に備えられている。また、第3のガラス板18の面も同様に、第3のガラス板18の面の全面に膜24が備えられておらず、その一部に膜24の無い第2の透過部28が第3のガラス板18に備えられている。第1の中空層15、及び第2の中空層17の不活性ガスの濃度を測定する場合には、図4に示す不活性ガス濃度測定装置30を用いる。これにより、複層ガラス構造体10を分解することなく、第1の中空層15、及び第2の中空層17の不活性ガスの濃度を個別に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラス構造体及び保冷ショーケース用ドア並びに複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンビニエンス・ストア等に設置される保冷ショーケースのドアに、複層ガラス構造体を使用したものが開示されている。前記ドアは、前記複層ガラス構造体と、この複層ガラス構造体の周縁部に取り付けられるサッシとから構成され、前記サッシの正面には把手が取り付けられている。この把手を顧客が開閉操作することで、前記ドアが前後に開閉される。また、特許文献1には、複層ガラス構造体のガラス面の全面に、フッ素ドープ酸化スズやITO(スズドープ酸化インジウム)等の透明導電膜を設け、これに通電してガラス面を発熱させることで、ガラス面に曇りが発生することを防止している。
【0003】
一方、特許文献2には、複層ガラス構造体を構成するガラス板の中空層側の全面に、断熱性能を高めるLow−E(低放射膜)を形成することが開示されている。また、特許文献2には、断熱性能を考慮して前記中空層にガスを充填することも開示され、そのガスとして、六フッ化硫黄ガス、アルゴンガス、またはクリプトンガス等の不活性ガスを使用することが特許文献3に開示されている。
【0004】
前述の如く、従来の複層ガラス構造体は、複層ガラス構造体を構成するガラス板のガラス面に膜が形成され、また、ガラス板間の中空層には不活性ガスが充填されている。この不活性ガスは、例えば扱いが悪い場合などに少しずつ漏れていき、それが複層ガラス構造体の性能に影響を与えるため、不活性ガスの濃度を所定の時期に測定することが求められる場合がある。
【0005】
ドア用ガス濃度測定装置として、中空層内の不活性ガス濃度を複層ガラス構造体の外側から測定する市販品(Gasglass社製:ハンドヘルド装置)も存在するが、この市販品の場合、膜が邪魔をして不活性ガス濃度を測定することができない。このため、前記膜を有する複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法は、複層ガラス構造体の一部に孔を開け、この孔から中空層内のガスを取り出し、このガスを公知のガス濃度測定装置によって測定することが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−336884号公報
【特許文献2】特開2005−61075号公報
【特許文献3】特開2008−24546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、不活性ガスの濃度測定時に複層ガラス構造体の一部に孔を開けることは、複層ガラス構造体を分解することを意味する。よって、不活性ガス濃度が測定された複層ガラス構造体は、再使用することが困難であった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、膜を有する複層ガラス構造体を分解すること無く、複層ガラス構造体に充填された不活性ガスの濃度を測定することができる複層ガラス構造体及び保冷ショーケース用ドア並びに複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、第1のガラス板と、該第1のガラス板と第1の中空層を介して対向配置された第2のガラス板と、該第2のガラス板と第2の中空層を介して対向配置された第3のガラス板と、前記第1乃至第3のガラス板の各々の周縁部を保持するスペーサーとからなり、前記第1乃至第3のガラス板に対して、各ガラス板の前記中空層側の面の少なくとも1面には膜がそれぞれ設けられるとともに、前記第1の中空層、及び前記第2の中空層には不活性ガスがそれぞれ充填された複層ガラス構造体において、前記第1のガラス板の面の一部には前記膜の無い第1の透過部が備えられ、前記第3のガラス板の面の一部には前記膜の無い第2の透過部が備えられていることを特徴とする複層ガラス構造体を提供する。
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、本発明の複層ガラス構造体の周縁部にサッシが取り付けられていることを特徴とする保冷ショーケース用ドアを提供する。
【0011】
また、本発明の保冷ショーケース用ドアにおいては、前記複層ガラス構造体の第1の透過部と第2の透過部とは、該複層ガラス構造体の平面視において、重ならない位置に備えられていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の保冷ショーケース用ドアにおいては、前記サッシの一端側にはヒンジ部材が取り付けられ、前記サッシの他端側には把手が取り付けられ、前記複層ガラス構造体の第1のガラス板は保冷ショーケースの庫内側に配置され、前記複層ガラス構造体の第3のガラス板は保冷ショーケースの庫外側に配置され、前記第1の透過部は前記把手の近傍に備えられ、前記第2の透過部は前記ヒンジ部材の近傍に備えられていることが好ましい。
【0013】
本発明は、前記目的を達成するために、本発明の複層ガラス構造体の第1の透過部に、不活性ガス濃度測定装置の測定端を、該複層ガラス構造体の外側から接触させて第1の中空層の不活性ガス濃度を測定するとともに、前記複層ガラス構造体の第2の透過部に、前記不活性ガス濃度測定装置の測定端を、該複層ガラス構造体の外側から接触させて第2の中空層の不活性ガス濃度を測定することを特徴とする複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法を提供する。
【0014】
本発明の複層ガラス構造体、及び保冷ショーケース用の複層ガラス構造体は、第1のガラス板の面の全面に膜が備えられておらず、その一部に前記膜の無い第1の透過部が備えられている。また、第3のガラス板の面も同様に、その一部に前記膜の無い第2の透過部が備えられている。なお、ここで全面に膜が備えられている状態とは、後述するスペーサー設置位置に膜の無い部分がわずかにあっても、膜が持つ機能に影響が無ければよいことをいう。
【0015】
本発明では、第1の透過部を利用して第1の中空層の不活性ガス濃度を、不活性ガス濃度測定装置によって測定するとともに、第2の透過部を利用して第2の中空層の不活性ガス濃度を、不活性ガス濃度測定装置によって測定する。
【0016】
これにより、本発明によれば、膜を有する複層ガラス構造体を分解すること無く、複層ガラス構造体に充填された不活性ガスの濃度を測定することができる。また、本発明によれば、複層ガラス構造体の出荷時の検査工程に、不活性ガス濃度測定工程を付加させることによって、新品の複層ガラス構造体の不活性ガス濃度を、複層ガラス構造体を分解すること無く容易に測定できる。
【0017】
また、第1の透過部と第2の透過部とが、複層ガラス構造体の平面視において重なった位置に備えられると、第1の透過部と第2の透過部との重畳面が、膜が備えられている他の面と比較して透明感が大きくなるので違和感を与える。このため、第1の透過部と第2の透過部とは、複層ガラス構造体の平面視において、重ならない位置に備えられていることが好ましい。これにより、前記透明感が低減されるので、前記違和感が低減する。
【0018】
一方、保冷ショーケース用ドアは、サッシの一端側にヒンジ部材が取り付けられ、サッシの他端側に把手が取り付けられている。すなわち、把手を把持して保冷ショーケース用ドアを前後に移動させることにより、保冷ショーケース用ドアが前記ヒンジ部材を中心に開閉動作する。
【0019】
保冷ショーケース用ドアを保冷ショーケースに取り付けた状態で、複層ガラス構造体の不活性ガス濃度を測定する場合には、保冷ショーケース内の冷気を外部に極力漏出させずに測定することが要求される。
【0020】
そこで、複層ガラス構造体の第1のガラス板が、保冷ショーケースの庫内側に配置され、複層ガラス構造体の第3のガラス板が、保冷ショーケースの庫外側に配置された保冷ショーケース用ドアの場合、第1の透過部は把手の近傍に備えられ、第2の透過部はヒンジ部材の近傍に備えられていることが好ましい。
【0021】
つまり、第1の透過部がヒンジの近傍に配置されていると、保冷ショーケース用ドアの開放角度を大きくしなければ、不活性ガス濃度測定装置を測定位置に配置できない。このため、保冷ショーケース内の冷気の漏出量が多くなる。本発明では、第1の透過部が把手の近傍に備えられているので、保冷ショーケース用ドアの開放角度を小さくしても、不活性ガス濃度測定装置を測定位置に配置できる。これにより、保冷ショーケース内の冷気の漏出量を抑えることができる。また、本発明では、第2の透過部がヒンジ部の近傍に備えられているので、保冷ショーケース用ドアを開放すること無く、不活性ガス濃度測定装置を測定位置に配置できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の複層ガラス構造体及び保冷ショーケース用ドア並びに複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法によれば、膜を有する複層ガラス構造体を分解すること無く、複層ガラス構造体に充填された不活性ガスの濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る複層ガラス構造体を備えた保冷ショーケース用ドアの正面斜視図
【図2】図1に示した複層ガラス構造体のA−A線に沿う断面図
【図3】図1に示した複層ガラス構造体のB−B線に沿う断面図
【図4】不活性ガス濃度測定による濃度測定状態を示した要部斜視図
【図5】第1の透過部がヒンジ軸の近傍位置にある場合の濃度測定状態を示した上面図
【図6】第1の透過部が把手の近傍位置にある場合の濃度測定状態を示した上面図
【図7】第2の透過部がヒンジ軸の近傍位置にある場合の濃度測定状態を示した上面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係る複層ガラス構造体及び保冷ショーケース用ドア並びに複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法の好ましい実施の形態を詳説する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る複層ガラス構造体10を備えた保冷ショーケース用ドア12の正面図である。図2は、図1のA−A線に沿う保冷ショーケース用ドア12の縦断面図、図3は、図1のB−B線に沿う保冷ショーケース用ドア12の縦断面図である。
【0026】
以下に説明する形態では、複層ガラス構造体10を保冷ショーケース用ドア12に適用したものを例示するが、この複層ガラス構造体10は、建築物の窓を構成する複層ガラス構造体にも適用できる。
【0027】
複層ガラス構造体10は、保冷ショーケースの庫内(IN)側に位置する第1のガラス板14と、第1のガラス板14と第1の中空層15を介して対向し、かつ庫外(OUT)側に位置する第2のガラス板16と、第2のガラス板16と第2の中空層17を介して対向し、かつさらに庫外側に位置する第3のガラス板18とを備えている。そして、この複層ガラス構造体10は、第1、第2、及び第3のガラス板14、16、18の周縁部がスペーサー20、22を介して保持されることで構成されている。
【0028】
また、複層ガラス構造体10は、第1のガラス板14、第2のガラス板16、及び第3のガラス板18で挟まれる中空層15、17側の面に、膜24がそれぞれ備えられている。なお、第2のガラス板16に関しては、少なくとも1層の膜が設置されていることが好ましい。この膜24としては低放射膜、導電膜、防氷膜を挙げることができる。
【0029】
前記低放射膜としては、薄膜の積層膜からなるものが好ましく、銀を主成分とする膜を、亜鉛を主成分とする酸化物薄膜で挟んだ積層膜(亜鉛酸化物/銀/亜鉛酸化物)が好ましい。低放射率を下げるためには、前記積層体を2重にした積層膜(亜鉛酸化物/銀/亜鉛酸化物/銀/亜鉛酸化物)がより好ましい。この積層膜では透過率が高く低放射であるので、ショーウィンドの内部を目視しやすく、断熱性能も好適に保たれる。
【0030】
また、前記導電膜としては、ガラス板を通電加熱する機能があればよく、導電性薄膜でもよいし、ガラス板の表面に発熱用のワイヤーを設置したもの、及び発熱用の銀系のプリントを設置したものでもよい。この中でもショーウィンドの内部を目視しやすい導電性薄膜を用いたものが好ましく、その導電性薄膜の材料としては、アンチモンドープされた酸化スズ(Sb dopep SnO)、ビスマスドープされた酸化スズ(Bi dopep SnO)、またはフッ素ドープされた酸化スズ(F dopep SnO)がよい。なお、フッ素ドープの酸化スズがコスト的にも安いので好ましい。
【0031】
さらに、前記防氷膜としては、TiO膜及びSiO膜をこの順に有する親水膜を挙げることができる。
【0032】
一方、第1の中空層15、及び第2の中空層17には、不活性ガスGが充填されている。不活性ガスGとしては、熱伝導率が空気より小さい断熱ガスである、クリプトン(Kr)ガス、アルゴン(Ar)ガスを挙げることができる。
【0033】
第1、2、3のガラス板14、16、18の厚さは特に限定が無いが、1枚でも窓として使用実績のある2.5〜5mmが好ましい。必要に応じて、強化ガラス、合わせガラスを1枚もしくは3枚全数に適用してもよい。
【0034】
第1の中空層15、及び第2の中空層17は厚いほど断熱効果があるが、厚くするとドアとしての収まりが悪くなるので、第1の中空層15、及び第2の中空層17の厚さは2〜12mmであることが好ましい。また、スペーサー22、22は樹脂製である。
【0035】
なお、本発明でいうガラスとは、無機ガラスと有機ガラスの両方を含むものとする。有機ガラスとは、アクリルなどを代表とする透明樹脂を示す。
【0036】
保冷ショーケース用ドア12は、ショーケース本体の大きさに応じて、大型のものがウォークインドア(walk in door)、小型のものがリーチインドア(reach in door)と一般に呼ばれるが、本発明はいずれの態様も含む。また、使用するドアの枚数は1枚に限定されず2枚以上であってもよい。
【0037】
ところで、実施の形態の複層ガラス構造体10は、第1のガラス板14の面の全面に膜24が備えられておらず、その一部に膜24の無い第1の透過部26が第1のガラス板14に備えられている。また、第3のガラス板18の面も同様に、第3のガラス板18の面の全面に膜24が備えられておらず、その一部に膜24の無い第2の透過部28が第3のガラス板18に備えられている。
【0038】
第1の透過部26は、所定の幅を有しており、図1において第1のガラス板14の右下隅部に傾斜して備えられている。また、第1の透過部26の上端部は、第1のガラス板14の右辺部に到達し、第1の透過部26の下端部は、第1のガラス板14の下辺部に到達している。
【0039】
第2の透過部28も同様に、所定の幅を有しており、図1において第3のガラス板18の左下隅部に備えられるとともに、その上端部が第3のガラス板18の左辺部に到達し、その下端部が第3のガラス板18の下辺部に到達している。
【0040】
なお、第1の透過部26、及び第2の透過部28の配置位置は、上記位置に限定されるものでは無く、後述する不活性ガス濃度測定装置によって第1の中空層15の不活性ガスの濃度、及び第2の中空層17の不活性ガスの濃度を測定可能な位置であれば、如何なる位置であってもよい。また、第1の透過部26、及び第2の透過部28は、膜24を第1のガラス板14、及び第3のガラス板18に形成する際に、第1の透過部26、及び第2の透過部28に対応する部分をマスキング部材によってマスキングすることにより備えさせることができる。
【0041】
第1の中空層15、及び第2の中空層17の不活性ガスの濃度を測定する場合には、図4に示す不活性ガス濃度測定装置(Gasglass社製:ハンドヘルド装置)30を用いる。この不活性ガス濃度測定装置30は、複層ガラス構造体10の外部から第1の中空層15、または第2の中空層17の不活性ガスの濃度を測定できる。すなわち、複層ガラス構造体10の外側から、不活性ガス濃度測定装置30の測定端32を、第1の透過部26、または第2の透過部28に接触させて、第1の中空層15、または第2の中空層17に高電圧を印加する。その際、第1の中空層15、または第2の中空層17に存在する気体分子が発光し、その発光の強度を不活性ガス濃度測定装置30が測定する。気体の種類によって発光する光の波長が異なり、また、気体の濃度(分子数)により発光強度が異なる。その発光強度を不活性ガス濃度測定装置30によって測定することで第1の中空層15、及び第2の中空層17の不活性ガスの濃度を個別に測定できる。
【0042】
したがって、実施の形態の不活性ガス濃度測定方法によれば、膜24を有する複層ガラス構造体10を分解すること無く、複層ガラス構造体10に充填された不活性ガスの濃度を測定することができる。また、この方法を利用すれば、複層ガラス構造体10の出荷時の検査工程に、不活性ガス濃度測定工程を付加させることによって、新品の複層ガラス構造体10の不活性ガス濃度を、複層ガラス構造体10を分解すること無く容易に測定できる。
【0043】
なお、不活性ガス濃度測定装置30の測定端32からは電子が放電される。このため、前記測定端32による計測位置は、保冷ショーケース用ドア12を構成する金属製のサッシ34から所定量離間した位置に設定されている。
【0044】
一方、第1の透過部26と第2の透過部28とが、複層ガラス構造体10の平面視において重なった位置に備えられると、第1の透過部26と第2の透過部28との重畳面が、膜24が備えられている他の面と比較して透明感が大きくなるので違和感を与える。このため、第1の透過部26と第2の透過部28とは、複層ガラス構造体10の平面視において、図1の如く重ならない位置に備えられている。これにより、前記透明感が低減されるので、前記違和感が低減する。また、断熱性能の点でも重ならない位置が好ましい。
【0045】
また、保冷ショーケース用ドア12は、複層ガラス構造体10の縁部に金属製(例えばアルミニウム製)のサッシ34を取り付けることにより構成される。
【0046】
この保冷ショーケース用ドア12は、ヒンジ軸36、36を介して保冷ショーケースのドア枠40(図5〜図7参照)に取り付けられ、把手38を把持して保冷ショーケース用ドア12を前後に移動させることにより、保冷ショーケース用ドア12がヒンジ軸36、36を中心に開閉動作する。
【0047】
ヒンジ軸36、36は、図1において複層ガラス構造体10の左辺部に沿って配置されるサッシ34Aの上端及び下端に取り付けられており、把手38は、複層ガラス構造体10の右辺部に沿って配置されるサッシ34Bの略中央に取り付けられている。
【0048】
保冷ショーケース用ドア12をドア枠40に取り付けた状態で、複層ガラス構造体10の不活性ガス濃度を測定する場合には、保冷ショーケース内の冷気を外部に極力漏出させずに測定することが要求される。
【0049】
そこで、複層ガラス構造体10の第1のガラス板14が、保冷ショーケースの庫内側に配置され、複層ガラス構造体10の第3のガラス板18が、保冷ショーケースの庫外側に配置された保冷ショーケース用ドア12の場合には、第1の透過部26は把手38の近傍に備えられ、第2の透過部28はヒンジ軸36の近傍に備えられていることが好ましい。
【0050】
つまり、第1の透過部26がヒンジ軸36の近傍に配置されていると、図5に示す上面図のように、保冷ショーケース用ドア12の開放角度θを大きくしなければ、不活性ガス濃度測定装置30を測定位置(第1の透過部26)に配置できない。このため、保冷ショーケース内の冷気の漏出量が多くなる。
【0051】
これに対して、実施の形態の保冷ショーケース用ドア12では、第1の透過部26が把手38の近傍に備えられているので、図6に示す上面図のように保冷ショーケース用ドア12の開放角度θを小さくしても、不活性ガス濃度測定装置30を測定位置(第1の透過部26)に配置できる。これにより、保冷ショーケース内の冷気の漏出量を抑えることができる。
【0052】
また、この保冷ショーケース用ドア12では、第2の透過部28がヒンジ軸36の近傍に備えられているので、図7の上面図のように、保冷ショーケース用ドア12を開放すること無く、不活性ガス濃度測定装置30を測定位置(第2の透過部28)に配置できる。
【符号の説明】
【0053】
10…複層ガラス構造体、12…保冷ショーケース用ドア、14…第1のガラス板、15…第1の中空層、16…第2のガラス板、17…第2の中空層、18…第3のガラス板、20…スペーサー、22…スペーサー、24…膜、26…第1の透過部、28…第2の透過部、30…不活性ガス濃度測定装置、32…測定端、34…サッシ、36…ヒンジ軸、38…把手、40…ドア枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス板と、該第1のガラス板と第1の中空層を介して対向配置された第2のガラス板と、該第2のガラス板と第2の中空層を介して対向配置された第3のガラス板と、前記第1乃至第3のガラス板の各々の周縁部を保持するスペーサーとからなり、前記第1乃至第3のガラス板に対して、各ガラス板の前記中空層側の面の少なくとも1面には膜がそれぞれ設けられるとともに、前記第1の中空層、及び前記第2の中空層には不活性ガスがそれぞれ充填された複層ガラス構造体において、
前記第1のガラス板の面の一部には前記膜の無い第1の透過部が備えられ、前記第3のガラス板の面の一部には前記膜の無い第2の透過部が備えられていることを特徴とする複層ガラス構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の複層ガラス構造体の周縁部にサッシが取り付けられていることを特徴とする保冷ショーケース用ドア。
【請求項3】
前記複層ガラス構造体の第1の透過部と第2の透過部とは、該複層ガラス構造体の平面視において、重ならない位置に備えられている請求項2に記載の保冷ショーケース用ドア。
【請求項4】
前記サッシの一端側にはヒンジ部材が取り付けられ、前記サッシの他端側には把手が取り付けられ、
前記複層ガラス構造体の第1のガラス板は保冷ショーケースの庫内側に配置され、前記複層ガラス構造体の第3のガラス板は保冷ショーケースの庫外側に配置され、
前記第1の透過部は前記把手の近傍に備えられ、前記第2の透過部は前記ヒンジ部材の近傍に備えられている請求項3に記載の保冷ショーケース用ドア。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の複層ガラス構造体の第1の透過部に、不活性ガス濃度測定装置の測定端を、該複層ガラス構造体の外側から接触させて第1の中空層の不活性ガス濃度を測定するとともに、前記複層ガラス構造体の第2の透過部に、前記不活性ガス濃度測定装置の測定端を、該複層ガラス構造体の外側から接触させて第2の中空層の不活性ガス濃度を測定することを特徴とする複層ガラス構造体の不活性ガス濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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