説明

複層ガラス窓及び複層ガラス窓の組立方法

【課題】本発明は、複層ガラス窓及び複層ガラス窓の組立方法を提供する。
【解決手段】本発明のスペーサ付きガラス板10、40は、スペーサ20の外周面とスポンジゴム50との間の空間を空隙とせず、その空間に二次シール材62を充填し、かつスペーサ付きガラス板10のガラス板16の小口面16Aとスポンジゴム50との間の空間にも二次シール材62を充填する。これにより、二次シール材62の断面形状はL字状となり、既存のガラス窓14の内側面、新規のガラス板16の内側面と小口面16A、スペーサ20の外周面、及びスポンジゴム50の表面の計5面に二次シール材62が接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラス窓及び複層ガラス窓の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物に施工されている既存のガラス窓に、新規のガラス板を並設することによって、前記ガラス窓を複層ガラス窓に改装することが提案されている。既存のガラス窓を複層ガラス窓の一部として利用することにより、施工費を削減できるとともに、施工期間の短縮、既存のガラス窓の廃棄が不要、及びサッシ(框)の交換が不要なるという利点がある。
【0003】
図13の如く、既存のガラス窓1に対し、現場にてスペーサ2と新規のガラス板3とを取り付けて複層ガラス窓4とする特許文献1の複層ガラス窓の組立方法は、新規のガラス板3を、スペーサ2を介して既存のガラス窓1にブチルゴム5によって接着し、その後、新規のガラス板3の小口面3Aと框6との間の隙間にシール材7を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4003908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複層ガラス窓の耐湿性能、及び形状保持性能は、シール材の厚さが厚くなるほど高くなることが知られている。ここで、特許文献1の複層ガラス窓4は、新規のガラス板3の小口面3Aと框6との間の隙間にのみシール材7を充填しているため、シール材7の厚さはガラス厚さと大体同一となり薄い。したがって、特許文献1の複層ガラス窓4は、耐湿性能、及び形状保持性能に懸念がある、複層ガラス窓としては、より耐久性の向上が望まれている。
【0006】
更に、地震時の新規ガラス3の動きを考えると、ガラスが地震の揺れでスライド運動及びロッキング運動することにより、シール材に対して負荷がかかる。このため、複層ガラスで一般的に使われている高モジュラスのシール材を使うことができず、変形追従性の優れた低モジュラスのシール材を使うことになる。その結果、新規ガラス3の固定が弱く、結果として複層ガラスの耐久性を低下させる心配があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、耐久性の高い複層ガラス窓及び複層ガラス窓の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、既設のガラス窓のガラス板に略矩形状の新設のスペーサ付きガラス板が該スペーサを介して接着されてなる複層ガラス窓において、前記スペーサ付きガラス板は前記ガラス窓よりも小サイズに構成されるとともに、前記スペーサ付きガラス板の四辺部が前記ガラス窓の四辺部の内側に配置され、前記スペーサ付きガラス板と前記ガラス窓のガラスの周辺部を封着するシール材が、前記スペーサ付きガラス板、前記ガラス窓のガラス板、前記スペーサのすべてに接着し、前記シール材と前記スペーサ付きガラス板の接着面は、前記スペーサ付きガラス板が前記ガラス窓に面している面と、前記スペーサ付きガラス板の小口面の2面であることを特徴とする複層ガラス窓を提供する。
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、略矩形状のスペーサ付きガラス板を現場に準備する工程と、前記現場にて前記スペーサ付きガラス板を、既設のガラス窓のガラス板に前記スペーサを介して接着する接着工程であって、前記スペーサ付きガラス板の四辺部が前記ガラス窓の四辺部の内側に位置するように接着する接着工程と、前記スペーサ付きガラス板と前記ガラス窓の周辺部をシール材で封着する封着工程であって、前記シール材を、前記スペーサ付きガラス板、前記ガラス窓のガラス板、前記スペーサのすべてに接着し、前記シール材と前記スペーサ付きガラス板の接着面は、前記スペーサ付きガラス板が前記ガラス窓に面している面と、前記スペーサ付きガラス板の小口面の2面に接着する封着工程と、を備えたことを特徴とする複層ガラス窓の組立方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、スペーサの外周面と框との間の空間にシール材を充填するとともに、スペーサ付きガラス板のガラス板の小口面と框との間の空間にもシール材を充填する。これにより、シール材の断面形状はL字状となり、スペーサ付きガラス板がガラス窓に面している面と、スペーサ付きガラス板の小口面の2面の他、既存のガラス窓の内側面、スペーサの外周面、及び框との間に設置されたスポンジゴムの表面の計5面にシール材が接着する。
【0011】
したがって、本発明の複層ガラス窓は、特許文献1の複層ガラス窓と比較して、シール材が厚くなるとともにシール材との接着面(界面)の面積も大きくなる。よって、本発明によれば、耐湿性能、及び形状保持性能が向上した、耐久性のある複層ガラス窓を施工現場にて組み立てることができる。
【0012】
本発明の複層ガラス窓において、前記スペーサ付きガラス板は、前記シール材と弾性部材とを介して既設の建物の框に支持されることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、地震時に複層ガラス窓に層間変形が生じた場合にもスペーサ付きガラス板のロッキングによる動きを弾性部材によって吸収できるので、層間変形に対する追従性能が向上する。
【0014】
本発明の複層ガラス窓において、前記スペーサ付きガラス板の下辺部は、セッティングブロックを介して前記框に支持されることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、スペーサ付きガラス板の自重をセッティングブロックで受ける構成とした。これにより、スペーサ付きガラス板の自重をシール材で受ける必要がないので、厚板ガラス、及び大板ガラスであってものスペーサ付きガラス板として適用できる。
【0016】
本発明の複層ガラス窓において、前記スペーサ付きガラス板の上辺部は、傾倒防止部材を介して前記框に支持されることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、スペーサ付きガラス板が框から傾倒しないように、スペーサ付きガラス板を、傾倒防止部材を介して框に支持させたので、シール材が硬化するまでの間、スペーサ付きガラス板を望ましい位置に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の複層ガラス窓及び複層ガラス窓の組立方法によれば、耐湿性及び形状保持性が向上するので、複層ガラス窓の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態のスペーサ付きガラス板の斜視図
【図2】図1に示したスペーサ付きガラス板の製造工程を示した要部拡大側面図
【図3】ガラス窓にスペーサ付きガラス板を組み付ける直前状態を示した斜視図
【図4】スペーサを隅部において接続するコーナーキーを示した斜視図
【図5】第2の実施の形態のスペーサ付きガラス板の斜視図
【図6】図3に示したスペーサ付きガラス板の要部拡大断面図
【図7】框にスポンジゴムとセッティングブロックが取り付けられた説明図
【図8】既存のガラス窓にスペーサ付きガラス板を取り付ける直前の側面図
【図9】スペーサ付きガラス板をガラス窓にローラーを用いて押し付ける説明図
【図10】複層ガラス窓を室内側から見た正面図
【図11】複層ガラス窓の下部縦断面図
【図12】複層ガラス窓の上部縦断面図
【図13】従来の二次シールの打設位置を示した複層ガラス窓の縦断面図
【図14A】二次シールの打設形態の参考例を示した複層ガラス窓の縦断面図
【図14B】二次シールの打設形態の参考例を示した複層ガラス窓の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明に係る複層ガラス窓及び複層ガラス窓の組立方法の好ましい実施の形態を詳説する。
【0021】
図1は、第1の実施の形態のスペーサ付きガラス板10の全体斜視図である。図2は、スペーサ付きガラス板10の製造過程を(A)〜(D)の順に示した要部拡大側面図である。
【0022】
スペーサ付きガラス板10は、図3の斜視図の如く建物のガラス窓用框12に嵌め込まれて固定された既存のガラス窓14の室内側開口部側に、現場にて取り付けられることにより、ガラス窓14と共に複層ガラス窓を構成する新規のガラス板である。複層ガラス窓の組立方法については後述する。また、スペーサ付きガラス板10は、ガラス窓14の室外側開口部側に取り付けてもよい。
【0023】
スペーサ付きガラス板10は図2(D)の如く、矩形状のガラス板16、非透湿性のブチルゴム18、スペーサ20、非透湿性のブチルゴム22、及び離型紙テープ24から構成される。また、ガラス板16は、図3に示したガラス窓16よりも小サイズのものである。
【0024】
スペーサ付きガラス板10の製造方法は、まず、図2(A)、(B)に示すように、ガラス板16の一方の面16Aの周辺部よりも内側に枠状のスペーサ20の一方の側面20Aを、ブチルゴム18によって接着する。次に、図2(C)、(D)に示すようにスペーサ20の他方の側面20Bにブチルゴム22を接着し、このブチルゴム22の全周を覆う形で離型紙テープ24を接着する。この離型紙テープ24は、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14(図5参照)に取り付ける直前にブチルゴム22から取り外される。これにより、ブチルゴム22は、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14に取り付ける直前まで、その接着力が保持される。
【0025】
このような製造過程を経ることによって、図1に示したスペーサ付きガラス板10が工場にて製造される。なお、離型紙テープ24としては、PET製のフィルムを挙げることができる。また、スペーサ20としては意匠性の観点から黒色のものが好ましい。
【0026】
一方、ガラス板16の一方の面16Aの、枠状に組み立てられたスペーサ20より内側の領域には、複層ガラス窓の断熱性、及び遮熱性の向上のために、Low−E膜26が形成されている。Low−E膜26としては、第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層されたものの他、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプのものも適用できる。なお、Low−E膜26も覆い保護するために、離型紙テープ24の代わりにLow−E膜26全体を保護するガラス板16と略同形状の保護シートをブチルゴム22に接着してもよい。
【0027】
スペーサ20は、アルミニウム製の中空型材によって構成され、その内部空間に粒状のシリカゲル28が封入されている。また、ガラス板16の4辺に沿って配置された4本のスペーサ20、20…同士の対向する面には吸湿窓30が開口されている。更に、吸湿窓30が接着テープ32によって封止されている。この接着テープ32は、施工現場にてスペーサ付きガラス板10をガラス窓14に組み付ける直前にスペーサ20から取り外される。接着テープは、気体透過性の非常に小さな材料であり、これにより、シリカゲル28は、スペーサ付きガラス板10がガラス窓14に組み付けられるまで、大気に晒されることなく水分の吸着が少ない状態に保持される。
【0028】
なお、図2(A)では、ブチルゴム18をガラス板16側に接着しているが、スペーサ20の一方の側面20Aにブチルゴム18を接着してスペーサ20をガラス板16に接着してもよい。同様にスペーサ20の両側側面20A、20Bに同時にブチルゴム18を施工し接着してもよい。また、実施の形態では、ガラス板16として単板構成の普通板ガラスを例示するが、合わせガラス、強化ガラス、倍強度ガラス、網入りガラス、熱線吸収ガラス、又は熱線反射ガラス等であってもよい。更に、ガラス板16の取り扱い中にガラス板16を破損させないために、ガラス板16の隅部を面取り加工(例えばC面取り)するとともに、小口面のエッジも面取り加工しておくことが好ましい。
【0029】
スペーサ20は、各々の隅部において図4に示すL字形状のコーナーキー34によって接続される。コーナーキー34は、本体ブロック34Aと、本体ブロック34Aから直角方向に延設された嵌合部34B、34Bとを有し、嵌合部34B、34Bの鋸歯部を隣接する2本のスペーサ20、20の内部空間に嵌挿することにより、隣接する2本のスペーサ20、20がコーナーキー34を介して直角方向に接続される。
【0030】
また、本体ブロック34Aには、貫通孔34Cが開口されている。この貫通孔34Cは、本体ブロック34Aの外側端面34Dから内側端面34Eにかけて形成されており、図5に示したガラス窓14にスペーサ付きガラス板10を接着する際の空気抜き用孔として利用される。つまり、ガラス窓14とスペーサ付きガラス板10との間には空気層が存在するが、ガラス窓14にスペーサ付きガラス板10を接着していく過程で生じた余分な空気が空気層から貫通孔34Cを介して外部に排気される。これにより、前記空気層の内圧が大気圧となり、施工時にブチルゴムを小さな荷重で十分密着させることが可能となる。
【0031】
図4の如く貫通孔34Cは、ガラス窓14にスペーサ付きガラス板10が接着された後、キャップ36が嵌合されることにより閉塞される。キャップ36は、略円錐形状の本体部36Aとツマミ部36Bとから構成され、ツマミ部36Bを作業者が摘んで本体部36Aを貫通孔34Cに嵌挿する。この際、前記空気層の非透湿性を高める観点から、本体部36Aを非透湿性である樹脂製とし、かつ本体部36Aの周部にブチルゴム38を塗布しておくことが好ましい。また、本体部36Aを貫通孔34Cに嵌挿した後、後述する二次シールを複層ガラス窓の周部に打設する前に、ツマミ部36Bを本体部36Aから切断しておくことが好ましい。更に、貫通孔34Cは、スペーサ20の隅部に配置された4個のコーナーキー34のすべてに備える必要はなく、1個または2個のコーナーキー34のみにあればよい。
【0032】
図5は、第2の実施の形態のスペーサ付きガラス板40の斜視図である。図6は、スペーサ付きガラス板40の要部拡大断面である。なお、スペーサ付きガラス板40について、図1、図2に示したスペーサ付きガラス板10と同一又は類似の部材については同一の符号を付して説明は省略する。
【0033】
このスペーサ付きガラス板40のガラス板16の一方の面16Aに形成されているLow−E膜42は、第1の酸化物膜、Ag膜、第2の酸化物膜がこの順に積層された熱線遮蔽積層膜である。また、このスペーサ付きガラス板40では、ガラス板16の一方の面16Aを覆うように、すなわち、Low−E膜42の全面を覆うように保護シート44がブチルゴム22に着脱自在に接着されている。
【0034】
Low−E膜42は、スパッタリング法によってガラス板16の一方の面16Aの全面に形成されるが、ブチルゴム18が接着されるガラス板16の外周部に形成された部分がトリミングされて除去される。また、積層タイプのLow−E膜42は、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプのLow−E膜よりも遮熱性能が優れるという利点があるが、熱線遮蔽膜自身が酸化物や窒化物であるタイプのLow−E膜よりも傷付き易いという特性を有する。
【0035】
そこでLow−E膜42の傷付きを防止するために、工場にてスペーサ20が予め取り付けられたスペーサ付きガラス板40に対し、出荷前の段階で、Low−E膜42の全面を覆うように矩形の保護シート44をブチルゴム22に着脱自在に接着する。この保護シート44は、施工現場にてスペーサ付きガラス板40を、ガラス窓14(図5参照)に組み付ける直前にブチルゴム22から取り外される。これにより、Low−E膜42を傷付けることなくスペーサ付きガラス板40を工場から施工現場まで搬送できる。
【0036】
また、スペーサ付きガラス板40では、ガラス板16の一方の面16Aと保護シート44とスペーサ20とによって密閉される空間46に乾燥剤48が封入されている。
【0037】
積層タイプのLow−E膜42は、水分(湿気)に弱いAg膜を有する。このため、Low−E膜42を大気に晒しておくと劣化する。この理由から、前記空間46に乾燥剤48を封入したので、Low−E膜42を湿気から保護することができ、Low−E膜42が形成された複層ガラス窓の耐久性を高めることができる。
【0038】
なお、工場にてスペーサ付きガラス板40を製造した後、スペーサ付きガラス板40を工場にて長期間保管する場合には、乾燥剤48の封入量を多めにする。すなわち、乾燥剤48の封入量は、スペーサ付きガラス板40の納期に応じて調整すればよい。
【0039】
以上説明したスペーサ付きガラス板10、40は、新規のガラス板16に対し、工場にてスペーサ20をブチルゴム18によって予め接着するとともに、スペーサ20にブチルゴム22を予め接着し、このブチルゴム22に離型紙テープ24、保護シート44を着脱自在に接着することで製造される。
【0040】
このスペーサ付きガラス板10、40を工場から、図5に示した施工現場へ搬入して複層ガラス窓を組み立てる際には、離型紙テープ24、保護シート44をブチルゴム22から取り外し、ブチルゴム22を既存のガラス窓14に接着するだけでよい。したがって、実施の形態のスペーサ付きガラス板10、40を使用することにより、接着品質の問題、すなわち、施工品質が改善されるとともに、施工現場での手間も低減できるので、品質のよい複層ガラス窓を施工現場にて容易に組み立てることができる。
【0041】
次に、スペーサ付きガラス板10、40を使用した複層ガラス窓の組立方法の一例を説明する。なお、ここでは、スペーサ付きガラス板10を例示して説明し、スペーサ付きガラス板40については、スペーサ付きガラス板10による複層ガラス窓の組立方法と略同一なのでその説明は省略する。
【0042】
まず、図3、図7に示すように、縦框、横框12に沿って角柱状のスポンジゴム(弾性部材)50、50…を取り付けるとともに底部側の横框12に、スペーサ付きガラス板10の自重を受けるセッティングブロック52、52を取り付ける。なお、セッティングブロック52は、1つでも複数個でも構わない。また、頂部の横框12に打設されているシーラント材54に溝56を切り込み形成し、この溝56に傾倒防止板(傾倒防止部材)58の上片58Aを嵌め込んで固定する。
【0043】
次に、図3の如くスペーサ付きガラス板10から離型紙テープ24を剥がし、図8の側面図の如くブチルゴム22を露出させるとともに、図2に示した接着テープ32をスペーサ20から剥がす。そして、このスペーサ付きガラス板10の下辺小口面をセッティングブロック52、52上に載置するとともに、スペーサ付きガラス板10の上部を図3に示した傾倒防止板58の係合片58Bに係合させる。これにより、スペーサ付きガラス板10の四辺部がガラス窓14の四辺部の内側に位置する。この後、スペーサ付きガラス板10をガラス窓14に向けて押し付けて、スペーサ付きガラス板10をブチルゴム22によってガラス窓14に接着する。
【0044】
次いでブチルゴム22のガラス面への密着性を確保するために図9の如く、ローラー60によってガラス板16をガラス窓14に押し付けることにより、ブチルゴム22を圧縮してガラス窓14に圧着させる。この際、ガラス窓14とスペーサ付きガラス板10との間の空気層内の空気は、貫通孔34Cを介して外部に排気される。これにより、圧着時の加圧に対して前記空気層内の圧力を減圧させる(外気圧と同等とする)ことが可能となる。したがって、現場施工においてもブチルゴム22を十分なつぶし代を持って圧着させることができると同時に、ガラス窓14、スペーサ付きガラス板10で作られる空気層が膨張させずに良好な施工ができ、かつ封着部、防湿部の剥離の懸念を解消することができる。
【0045】
一方、図9に示したローラー60によるブチルゴム22の圧着が終了すると、貫通孔34Cをキャップ36の本体部36Aによって封止し、本体部36Aからツマミ部36Bを切断する。
【0046】
次に、ガラス窓14とスペーサ付きガラス板10の4辺の周部に、図10の平面図の如く二次シール材(シール材)62を打設(充填)して、スペーサ付きガラス板10とスポンジゴム50との間の空隙を封止する。これによって、複層ガラス窓64が組み立てられる。二次シール材62としては、ガラスに対する接着性が高いポリサルファイド系シーラント、又はシリコーン系シーラントが使用される。
【0047】
二次シール材62の充填形態は、図11、図12に示すように、既存のガラス窓14、スペーサ20の外周面とスポンジゴム50で囲まれる空間に二次シール材62を充填し、かつスペーサ付きガラス板10のガラス板16の小口面16Bとスポンジゴム50との間の空間にも二次シール材62を充填する。
【0048】
これにより、二次シール材62の断面形状はL字状となり、既存のガラス窓14の内側面、新規のガラス板16の内側面(スペーサ付きガラス板10がガラス窓14に面している面)と小口面16B、スペーサ20の外周面、及びスポンジゴム50の表面の計5面に二次シール材62が接着する。
【0049】
ここで、図13に示した特許文献1の複層ガラス窓4のシール材7と比較すると、シール材7の接着面は新規のガラス板3の小口面3Aと框6の面の計2面である。これに対し、図11、図12で示した実施の形態の複層ガラス窓64は前述の如く5面の接着面をもつ。したがって、実施の形態の複層ガラス窓64は、特許文献1の複層ガラス窓4と比較して二次シール材62の接着面積を広くとれるために、特許文献1の複層ガラス窓4と比較して耐湿性能、及び形状保持性能が向上する。よって、実施の形態では、耐久性の優れた複層ガラス窓64を施工現場にて組み立てることができる。
【0050】
また、図11、図12によれば、ガラス窓14及びガラス板16が二次シール材62で接着されているために、地震などによるガラス窓14及びガラス板16の変形した際の力が二次シール材62で抑えられ、ブチルゴム18、22がとガラスの接着力を弱めることが少ない。また、二次シール材62がブチルゴム18、22と接触しているために、外部から侵入した水分がブチルゴム18、22へ到達すること防ぎ、複層ガラス窓64の耐湿耐久性がより高められる。
【0051】
更に、実施の形態の複層ガラス窓64は、二次シール材62の全周囲にスポンジゴム50が配置されている。このため、地震時に複層ガラス窓64に層間変形が生じた場合にもスペーサ付きガラス板10のロッキングによる動きをスポンジゴム50によって吸収できる。よって、実施の形態の複層ガラス窓64によれば、層間変形に対する追従性能が向上する。
【0052】
更にまた、図13に示した複層ガラス窓4は、ガラス板3の自重をシール材7のみによって受けるので、シール材7にはガラス板3の荷重が長期にわたって作用する。このため、前記複層ガラス窓4は、シール材7の耐久性を考慮すれば好ましくない構成であった。
【0053】
この問題を解消するために、実施の形態の複層ガラス窓64では、スペーサ付きガラス板10の下辺小口面を、図9の如くセッティングブロック52、52に載置することで、二次シール材62に対してスペーサ付きガラス板10の自重による荷重を作用させない構成としている。これにより、スペーサ付きガラス板10の自重を二次シール材62に支持させる必要がないため、ガラス板16として厚板ガラス、大板ガラス等の重量物のガラス板であっても適用できる。なお、スポンジゴム50及びセッティングブロック52を使用しない複層ガラス窓であっても、本発明を適用することができる。
【0054】
更に、スペーサ付きガラス板10の上部に、スペーサ付きガラス板10の倒れを阻止する傾倒防止板58を設けることで、二次シール材62が硬化するまでの間、スペーサ付きガラス板10を望ましい位置に確実に固定することができる。
【0055】
なお、二次シール材62の打設形態としては、図14Aに示すようにガラス板16の小口面16Aとスペーサ20の外周面20Aとを同一面上に配置して、小口面16Aと外周面20Aとセッティングブロック52とによって囲まれる断面矩形状の空間に打設する形態もある。また、図14Bに示すように、ガラス板16の小口面16Aをセッティングブロック52に当接させ、ガラス窓14とガラス板16とスペーサ20とセッティングブロック52とによって囲まれる断面略正方形の空間に打設する形態もある。
【0056】
一方、ガラス板16の板厚は、既存のガラス窓14の板厚に対して75%以上であることが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
10…スペーサ付きガラス板、12…框、14…ガラス窓、16…ガラス板、16A…小口面、16B…小口面、18…ブチルゴム、20…スペーサ、22…ブチルゴム、24…離型紙テープ、26…Low−E膜、28…シリカゲル、30…吸湿窓、32…接着テープ、34…コーナーキー、36…キャップ、38…ブチルゴム、40…スペーサ付きガラス板、42…Low−E膜、44…保護シート、46…空間、48…乾燥剤、50…スポンジゴム、52…セッティングブロック、54…シーラント材、56…溝、58…傾倒防止板、60…ローラー、62…二次シール材、64…複層ガラス窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のガラス窓のガラス板に略矩形状の新設のスペーサ付きガラス板が該スペーサを介して接着されてなる複層ガラス窓において、
前記スペーサ付きガラス板は前記ガラス窓よりも小サイズに構成されるとともに、前記スペーサ付きガラス板の四辺部が前記ガラス窓の四辺部の内側に配置され、
前記スペーサ付きガラス板と前記ガラス窓のガラスの周辺部を封着するシール材が、
前記スペーサ付きガラス板、前記ガラス窓のガラス板、前記スペーサのすべてに接着し、前記シール材と前記スペーサ付きガラス板の接着面は、前記スペーサ付きガラス板が前記ガラス窓に面している面と、前記スペーサ付きガラス板の小口面の2面であることを特徴とする複層ガラス窓。
【請求項2】
前記スペーサ付きガラス板は、前記シール材と弾性部材とを介して既設の建物の框に支持される請求項1に記載の複層ガラス窓。
【請求項3】
前記スペーサ付きガラス板の下辺部は、セッティングブロックを介して前記框に支持される請求項1又は2に記載の複層ガラス窓。
【請求項4】
前記スペーサ付きガラス板の上辺部は、傾倒防止部材を介して前記框に支持される請求項1、2又は3に記載の複層ガラス窓。
【請求項5】
略矩形状のスペーサ付きガラス板を現場に準備する工程と、
前記現場にて前記スペーサ付きガラス板を、既設のガラス窓のガラス板に前記スペーサを介して接着する接着工程であって、前記スペーサ付きガラス板の四辺部が前記ガラス窓の四辺部の内側に位置するように接着する接着工程と、
前記スペーサ付きガラス板と前記ガラス窓の周辺部をシール材で封着する封着工程であって、前記シール材を、前記スペーサ付きガラス板、前記ガラス窓のガラス板、前記スペーサのすべてに接着し、前記シール材と前記スペーサ付きガラス板の接着面は、前記スペーサ付きガラス板が前記ガラス窓に面している面と、前記スペーサ付きガラス板の小口面の2面に接着する封着工程と、
を備えたことを特徴とする複層ガラス窓の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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