説明

複層透水性舗装ブロックの製造方法

【課題】下水汚泥等の焼却炉灰を有効利用した、軽量で付加価値の高い複層透水性舗装ブロックを提供する。
【解決手段】焼却炉灰を造粒、焼成した粒径が0.6mm以上で平均見掛け比重が1.45以下の独立気泡を有する多孔質骨材A60重量部以上に、磁器を砕いた骨材B及び/又は長石を砕いた骨材Cを合量で40重量部以下を混合した混合骨材D100重量部に、結合部となる粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む混合物Eを合量で6〜20重量部加えたバルク層を形成する混合粉体Fをプレス型に充填してプレス型の容積の過半を充填し、プレス型の容積の残部を、磁器を砕いた骨材B及び/又は長石を砕いた骨材Cを合量で80重量%以上含む混合骨材G100重量部に、結合部となる粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む混合物Eを合量で6〜20重量部加えた表面層を形成する混合粉体Hで充填し、バルク層と表面層を一体にプレス成形後焼成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は廃棄物の焼却炉灰を有効利用した舗装ブロックの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】都市ゴミや下水汚泥をそのままの状態で埋め立て処分すると埋立地が短期間で満杯になる。埋立地の確保が困難であるので、都市ゴミを焼却して焼却炉灰の状態に減容してから埋め立てる方法が採用されている。しかし、焼却炉灰の状態にまで減容しても、発生する焼却炉灰の量は多く、やはり埋め立地の確保を必要とする他、運搬費、作業費等が要るので埋め立てをしない方法が望まれる。
【0003】焼却炉灰を有効利用できれば、すなわち焼却炉灰を有用な製品に変えることができれば、その後の焼却炉灰の処理費用を節減でき、埋立地が不要となる。このため、焼却炉で焼却炉灰を溶融して焼却炉灰を骨材として取り出し、道路工事用の骨材等に使用する技術が開発されている。しかし、焼却炉灰の発生量が多いことから、種々の用途を開発して処分する必要がある。
【0004】焼却炉灰の用途の一例として、歩道の舗装ブロックがある。特に最近は透水性の舗装ブロックが開発され、実用化されている。歩道に透水性ブロックを舗装すると、降雨時に雨水が地面に滲み込むことによって下水道施設の負担が軽減され、都市河川への降雨による雨水の一時的な流入量を減らすことができる。また、地下水の枯渇を防げ、これによって地中温度の上昇や地中における酸欠状態を防げ、街路樹などの成育が盛んになるという効果が得られる。
【0005】気孔率が大きい透水性舗装ブロックは歩行時に滑りにくく、少々の降雨では水たまりができない。さらに、歩道に保水性が付与されてコンクリート舗装やアスファルト舗装と比べて路面の温度が上昇しにくく、多孔質であることによって断熱性があり、軽量であれば建築物の屋上に張るルーフデッキにも使いやすいという長所がある。
【0006】透水性舗装ブロックにはインターロッキングブロック協会の品質規格がある。その規格によれば曲げ強度が30kg/cm2以上、圧縮強度が70kg/cm2以上、透水係数が1.0×10-2cm/sec以上の物性が要求される。透水性舗装ブロックの例としては、東レ社からトレスルーの名称で磁器質の透水性舗装ブロックが販売されている。カタログによれば、この磁器質ブロックの嵩比重は1.60g/cm3、曲げ強度は40kg/cm2以上、圧縮強度は200kg/cm2、透水係数は2.0×10-2cm/secである。
【0007】焼却炉灰を原料に使用した透水性舗装ブロックの例として、不二見セラミックス社からナチュラルウオークの名称で透水性舗装ブロックが販売されている。カタログによれば、この透水性舗装ブロックの嵩比重は約1.53〜1.56g/cm3であり、特に記載はないが曲げ強度、圧縮強度及び透水係数は上記品質規格を満たすものと考えられ、着色された表面層を有する透水性舗装ブロックが開示されている。
【0008】愛知県常滑窯業技術センターの分析データによれば、名古屋市の山崎汚泥処理場における下水汚泥の焼却炉灰の分析値はSiO2が46.2重量%、Al23が15.8重量%、Fe23が10.8重量%、P25が13.4重量%、CaOが5.48重量%、MgOが2.38重量%、Na2Oが1.24重量%、K2Oが1.91重量%、TiO2が0.66重量%、灼熱減量が1.70重量%であり、耐火度はSK03a(1040℃)と低い。
【0009】また、配管技術1993年6月号78頁以下(以下文献aという)によれば、東京都下水道局では汚泥の焼却炉灰を人工軽量骨材にすることを発案し、三井造船社の協力によって汚泥焼却炉灰を100%使用した人工軽量骨材の製造プラントが開発された。この人工軽量骨材の製造技術は、膨張性頁岩を焼成して人工軽量骨材を製造する技術を焼却炉灰に応用したものである。すなわち、微粉砕した下水汚泥の焼却炉灰を糖蜜のアルコール発酵廃液をバインダーに用いてパン型造粒器で丸い粒子に造粒し、乾燥した造粒物を多段噴流炉中に送り込み、約1050℃に加熱して粒子の表面を半溶融状態とし、焼却炉灰中に含まれる高温揮散成分をガス化して発泡させ、膨らんだ粒子を高温域から取り出して空冷し、独立気泡を多く含む球状或は楕球状の人工軽量骨材を得ている。
【0010】この汚泥焼却炉灰の化学成分は、SiO2が39.55重量%、Al23が16.41重量%、Fe23が11.75重量%、FeOが2.09重量%、P25が10.10重量%、CaOが8.36重量%、MgOが2.46重量%、Na2Oが1.84重量%、K2Oが1.36重量%、SO3が0.84重量%、Cが0.67重量%、CO2が0.13重量%、灼熱減量が2.67重量%である。汚泥焼却炉灰を100%原料とするこの人工軽量骨材は独立気泡を多量に含んでおり、粒径が0.6〜3.5mmである軽量細骨材の吸水率は8.8%、絶乾比重(見掛け比重に同じ)は1.40、単位容積重量は0.868kg/リットルである。この人工軽量細骨材はスラジライトと名付けられ、フラワーポット、鉢植え砂、建材用骨材、下水道用透水性材料、下水砂ろ過装置のろ過材などに一部使用されている。しかし、汚泥の焼却炉灰は一般に暗灰色を帯びており、汚泥の焼却炉灰のみでは装飾性のある色調を得るのが難しい。
【0011】実開平2−2588号公報には、焼却炉灰を溶融した水砕スラグを骨材に用いることによって骨材の原料コストを低減した歩道用透水性舗装ブロックが提案されている。この透水性舗装ブロックは焼成しないでセメントによって結合してある。また、スラグ骨材に特有の色以外の色に着色するため表面層の骨材にはスラグ骨材を使用せず、天然細石又は人工砕石を骨材に使用し、これに顔料を混合した表面層を有する複層透水性舗装ブロックを提案している。
【0012】特公平7−25600号公報にはセラミックス粉末(焼却炉灰は使用していない)を球状に造粒した粒度の揃った平均粒径が2mm程度の球状骨材を骨材に使用し、熱膨張率が小さいフラックス成分を結合部に加えて焼成した透水性が良好で目詰まりしにくい舗装ブロックが開示されている。また、顔料で着色した細かい平均粒径の球状骨材で形成された表面層をバルク層と一体化した複層舗装ブロックが提案されている。同公報中の実施例には得られた透水性ブロックの物性値についての記載がないが、強度が大きく、透水性が良好で目詰まりしにくいものであるとしている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、下水汚泥や都市ゴミの焼却炉灰を有効利用した、軽量で付加価値の高い複層透水性舗装ブロックの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の複層透水性舗装ブロックの製造方法は、焼却炉灰を造粒して焼成した粒径0.6mm以上で平均見掛け比重が1.45以下の独立気泡を有する多孔質骨材A60重量部以上に、磁器を砕いた骨材B及び/又は長石を砕いた骨材Cを合量で40重量部以下混合した混合骨材D100重量部に対し、結合部となる粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む混合物Eを合量で6〜20重量部加えたバルク層を形成する混合粉体Fをプレス型に充填してプレス型の容積の過半を充填し、プレス型の容積の残部を、磁器を砕いた骨材B及び/又は長石を砕いた骨材Cを合量で80重量%以上含む混合骨材G100重量部に対し、結合部となる粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む混合物Eを合量で6〜20重量部加えた表面層を形成する混合粉体Hで充填し、バルク層と表面層を一体にプレス成形し、次いで焼成することを特徴とする。
【0015】通常セラミックスは気孔率が大きいほど軽量であるが、気孔率が大きいと強度は逆に小さくなる。しかし、独立気泡の多い多孔質骨材を使用すると多孔質であっても強度の大きい焼結体を得ることができる。また、独立気泡は閉気孔ともいい、表面に連がっていない閉じた気孔を意味し、多孔質骨材中の独立気泡の量は見掛け比重によって規定される。たとえば骨材の見掛け比重が約1.5で骨材を構成する材料の平均真比重が2.0(この種材料の真比重は通常2より大きい)であるとき、約25%の独立気泡を含むことになる。本発明はこの効果を応用して大きい気孔率(小さい嵩比重)と実用性のある強度を同時に具備する複層透水性舗装ブロックを実現したものである。
【0016】本発明の複層透水性舗装ブロックでは、バルク層の多孔質骨材Aが粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む結合部となる混合物Eによって結合される。結合部となる混合物Eにガラス粉末や水ガラスを使用すると舗装ブロックの焼成温度を低くでき、骨材の表面がガラス質の皮膜で覆われて気孔の内面が滑らかになるので透水性がよく、複層舗装ブロックに透水性を付与している気孔が土砂によって閉塞しにくくなる。また、結合部となる混合物Eに粘土(細かい粉末である)を使用すると複層舗装ブロックの強度を大きくできる。すなわち、バルク層は独立気泡を有する平均見掛け比重が1.45以下の多孔質骨材Aを60重量%以上含む混合骨材D100重量部に対して粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む結合部となる混合物Eを6〜20重量部配合した混合粉体Hをプレス成形し、次いで焼成する。この場合、バルク層の焼成収縮と表面層の焼成収縮に差があって反りがでるときは、バルク層と表面層に混合する混合物Eの調合割合、あるいは骨材への混合物Eの混合量を変えて調整するとよい。
【0017】粒径0.6mm未満という嵩比重の小さい多孔質骨材の製造は難しく、骨材が粒径0.6mm未満の細かい骨材を多く含むと舗装ブロックの透水性が小さくなり、土砂で気孔の目詰まりしやすく透水性が劣化するので、骨材には粒径0.6mm以上の骨材を使用する。また、焼却炉灰からなる多孔質骨材Aの使用量を多くできれば複層舗装ブロックを安く製造できる。バルク層の骨材中の多孔質骨材Aの使用量は好ましくは70重量%以上である。
【0018】粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを組み合わせた混合物Eによる結合部は焼結体に大きい強度を付与する効果がある。この混合物Eの混合骨材D100重量部と混合骨材G100重量部に対する混合量が6重量部より少ないと実用性のある大きい強度を付与するのが困難になり、20重量部より多いと骨材粒子間に存在する気孔が少なくなって良好な透水性を有するブロックが得られない。透水性舗装ブロックの強度と透水性のバランスを考慮すると、混合骨材D及び混合骨材Gの100重量部に対する混合物Eの配合量はいずれも8〜15重量部とするのが好ましい。また、混合物E中の粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスの配合量は粘土35〜65重量%に対しガラス粉末及び水ガラスを合わせて65〜35重量%とするのが好ましい。バルク層と表面層の両方の結合部に同じ混合物Eを使用すればブロックの製造工程を簡略化でき、同時に複層舗装ブロックの焼成時の反りを少なくでき、バルク層と表面層の接合強度を大きくできる。
【0019】
【発明の実施の形態】焼却炉灰特有の灰色や焼却炉灰を酸化雰囲気中で焼成したときの酸化鉄の赤茶色以外の装飾性のある色調に複層舗装ブロックの表面を淡色又は好みの色に着色するため、複層舗装ブロックをバルク層と表面層からなる複層構造とする。すなわち、表面層に着色が容易な無色又は淡色の骨材を80重量%以上使用し、複層透水性舗装ブロックの体積の過半を占めるバルク層を形成する混合粉体Fには多孔質骨材Aを60重量%以上使用することによって複層舗装ブロックの嵩比重を小さくでき、焼却炉灰を多量消化できる。表面層の厚さは、薄い方がブロックを軽量化できるが、あまり薄いと表面層が摩耗したときにバルク層の色がブロック表面に出て見栄えを損ね、製造時にその厚さを均等化するのが難しいので3〜10mm、あるいは複層舗装ブロック全体の厚さの5〜16%とするのが好ましい。
【0020】本発明の複層透水性舗装ブロックでは、バルク層と表面層をプレスで一体成形し、次いで焼成し、複層透水性舗装ブロックとする。この複層舗装ブロックのバルク層に使用した多孔質骨材A中にある独立気泡は複層舗装ブロックの透水性には寄与せず、専ら多孔質骨材間に形成された気孔を経て透水する。本発明の複層舗装ブロックの主原料は、好ましくは文献aに記載された方法、すなわち焼却炉灰を造粒し、多段噴流炉中で焼成して製造された球状あるいは楕球状の骨材を使用する。文献aの方法で製造された骨材はその熱処理時に半溶融状態を経ているので、骨材の独立気泡を除く組織は緻密で強度が大きく、これを主原料として成形し、次いで焼成された複層舗装ブロックはその骨材中に気泡を多く含んでいても強度が大きく、独立気泡を多く含む分だけ骨材の嵩比重が小さく、ブロックは軽量となる。
【0021】磁器を砕いた骨材Bや長石の骨材Cは多孔質骨材Aと比べて100℃近く耐火度が高い。耐火度の高いこれらの骨材を耐火度の低い多孔質骨材と混合して使用すると複層舗装ブロックの焼成時におけるブロックの寸法変化と変形を小さくできる。このため、バルク層の骨材にこれらの骨材を混合すると複層舗装ブロックの焼成を容易にできる。磁器を砕いた骨材Bは通称セルベンと呼ぶ磁器タイルその他の磁器の不合格品を破砕した骨材であり、着色が容易な淡色ないし白色の骨材である。長石はたとえば風化した花崗岩の砂中に多く含まれ、磁器の原料に使用されるもので、長石の骨材Cは骨材Bを代替しうる無色ないし白色の骨材である。セルベンと長石の骨材は手間をかけない方が安価であるので球状或いは楕球状に形成しなくてもよい。骨材間に形成される気孔は、骨材の平均粒径が大きい方が、また骨材の粒径が揃っている方が多くなり、透水性が高い。また、球状又は楕球状に造粒されていない、破砕された角ばった骨材Bと骨材Cを多く配合してなる表面層は、舗装ブロックとして使用するとき滑りにくい表面を有するという利点がある。
【0022】表面層の骨材は、焼却炉灰を造粒した多孔質骨材Aの配合割合を混合骨材G中の20重量%以下と少なくし、淡色ないし白色の骨材B及び骨材Cの配合割合を多くする。すなわち、表面層は着色するため、あるいは白に近い色調とするため骨材Bや骨材Cを骨材G中合わせて80重量%以上配合する。骨材Bと骨材Cは多孔質骨材Aより気孔率が小さく緻密である分だけ耐摩耗性があり、ブロックの表面層が耐摩耗性に優れたものとなる。さらに好ましくは着色のための顔料を加えて表面層を形成する。表面層に使用する混合骨材Gは、好ましくはその平均粒径をバルク層の混合骨材Dの平均粒径より小さくすると複層舗装ブロックを施工したときの外観が良好になる。
【0023】ブロックを焼成する最適温度は混合粉体Fと混合粉体Hの調合割合や使用原料の耐火度によって変化するが、実用性のある十分な強度を付与できるように1030℃以上で焼成するのが好ましい。あまり焼成温度を高くすると複層舗装ブロックが変形したり気孔率が小さくなったりするので、1100℃以下で焼成するのが好ましい。舗装ブロックに強度と透水性をバランスよく付与できるように、焼成温度は1040〜1070℃とするのがさらに好ましい。ブロックの焼成時間が短か過ぎると複層舗装ブロック中に焼成ムラが生じて強度その他の複層舗装ブロックの品質が安定しないので、上記焼成温度に保持する焼成時間は3〜12時間とするのが好ましく、バッチ式焼成炉を使うときの昇温から冷却までの焼成炉の運転時間は24〜35時間とするのが好ましい。
【0024】本発明の好ましい複層透水性舗装ブロックの製造方法では、得られる複層舗装ブロックのバルク層は嵩比重が1.50以下であり、その曲げ強度は50kg/cm2以上である。嵩比重が小さく軽量な複層舗装ブロックはその現場への輸送費用が少なくてすみ、重作業である道路への施工作業が軽減されるという長所がある。また、曲げ強度が50kg/cm2以上と大きい複層舗装ブロックを使用すれば、舗装道路は破損しにくく耐久性に優れる。
【0025】本発明の他の好ましい複層透水性舗装ブロックの製造方法は、多孔質骨材Aの平均粒径を1.5〜3mmに調整したものをバルク層の骨材に使用する。これによって良好な透水性と実用的に十分な強度を備えた複層舗装ブロックが得られる。
【0026】本発明の他の好ましい複層透水性舗装ブロックの製造方法は、混合粉体F中の混合骨材Dの100重量部と混合粉体H中の混合骨材Gの100重量部に対してそれぞれ4重量部以下の水ガラスを混合する。水ガラスを混合粉体Fと混合粉体Hに混合すると、プレス成形された状態の複層舗装ブロックの生強度が向上してそのハンドリングが容易となり、複層舗装ブロックの強度とその製品歩留が向上するからである。しかし、あまり多く混合しても効果が小さいので4重量部以下とするのが好ましい。
【0027】本発明の他の好ましい複層透水性舗装ブロックの製造方法は、混合粉体H100重量部に対して0.3〜3.0重量部の顔料を混合する。その理由は混合量が0.3重量部より少ないと複層舗装ブロックの着色効果がほとんど得られず、3.0重量部より多く入れても顔料を混合するコストに見合う付加価値を得られないからである。プレス型の空間に充填する混合粉体Fと混合粉体Hは、その順序を変えて混合粉体Hを先に充填しても得られる効果に変わりがない。
【0028】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0029】[実施例1]粒径0.6〜3.5mm、平均粒径2.5mm、見掛け嵩比重1.34の球状あるいは楕球状に形成された多孔質骨材A(前述の独立気泡の多いスラジライト)65重量%、磁器タイルを破砕した粒径3mm以下で平均粒径2.4mmの骨材B20重量%、粒径3mm以下、平均粒径2.0mmの風化花崗岩から採取した長石の骨材C15重量%からなる混合骨材D100重量部に対して、200μm以下の水簸粘土55重量%、廃ガラスびんを200μm以下に粉砕したガラス粉末40重量%、JIS3号の水ガラス(液状水ガラスの乾量換算)5重量%からなる結合部となる混合物Eを10重量部混合してバルク層を形成する混合粉体Fとした。
【0030】骨材B90重量%と多孔質骨材A10重量%からなる混合骨材G100重量部に対して水簸粘土55重量%、ガラスびんを粉砕したガラス粉末40重量%、JIS3号水ガラス(液状水ガラスの乾量換算)5重量%からなる結合部となる混合物Eを10重量部混合して表面層を形成する混合粉体Hとした。
【0031】並型煉瓦(寸法115mm×230mm×厚さ65mm)を成形するプレス型を使用し、深さ約100mmのプレス型の成形空間に複層舗装ブロック原料の混合粉体Fを充填し、次いで下駒(プレスの下側の押し台)を約10mm降下させてできたプレス型の上部空間に混合粉体Hを充填した。両粉体原料を充填したプレスに180kg/cm2の圧力を印加し、脱型して成形体上部の約5mmが表面層からなる複層舗装ブロックをプレス成形した。この複層舗装ブロックの生成形体を80℃で約4時間乾燥後焼成炉に入れ、73℃/時間の昇温速度で1050℃まで昇温し、この焼成温度に約6時間保持し、次いで放冷した。焼成に要した時間は冷却時間を含めて合計27時間であった。この乾燥収縮と焼成収縮を合わせた複層舗装ブロックの収縮率は約2%であった。
【0032】得られた複層舗装ブロックは表面層が白色、バルク層が赤茶色であった。得られた複層舗装ブロックについて物性測定を行なった。この複層舗装ブロックは嵩比重1.43、見掛け気孔率21%、透水係数1.5×10-2/secであり、ブロックのバルク層は嵩比重1.36、曲げ強度51kg/cm2、圧縮強度180kg/cm2であった。物性測定は、嵩比重と見掛け気孔率は水浸法で測定し、透水性はインターロッキングブロック舗装設計施工要領に規定された透水性試験法である水頭差法によって測定し、曲げ強度はインターロッキングブロック舗装設計施工要領に規定された中央集中載荷法によって測定し、圧縮強度はJIS−A−1108に準拠した方法で測定した。また、表面層とバルク層の境界の接合強度は建設省建築工事共通仕様書の接着強さに準ずる試験法に準拠した方法で調べた結果、層間における破壊が見られず、実用的に十分大きい接合強度を有することが分かった。
【0033】[実施例2]実施例1において、表面層を形成する混合粉体H100重量部に対して平均粒径約40μmの青色顔料(Al2365重量%、ZnO20重量%、CoO15重量%からなる混合物)を1重量部混合し、他は実施例1と同様にして複層舗装ブロックを試作した。得られた複層舗装ブロックは表面層の色が青色となった。得られた複層舗装ブロックの物性を実施例1と同じ方法で測定したところ、この複層舗装ブロックの物性はブロックのバルク層の物性を含め実施例1の複層舗装ブロックの物性とほとんど同じであった。
【0034】[実施例3]実施例2において、表面層の混合粉体Hの骨材に前記多孔質骨材Aを使用せず、代わりに同重量の前記長石の骨材Cを使用し、他は実施例2と同様にして複層舗装ブロックを試作した。得られた複層舗装ブロックは表面層の色がより鮮明な青色となった。この複層舗装ブロックの物性を測定したところ、ブロックは嵩比重が1.47、見掛け気孔率が20%、透水係数が2.2×10-2/sec、ブロックのバルク層は嵩比重が1.36、曲げ強度が51kg/cm2、圧縮強度が180kg/cm2であった。
【0035】[比較例1]実施例1において、混合粉体Fと混合粉体Hに混合する混合物Eに粘土を使用せず、代わりに同重量のガラス粉末を増量して混合し、他は実施例1と同様にして複層舗装ブロックを試作した。実施例1と比べて比較例1の複層舗装ブロックで変わった点は、乾燥と焼成による収縮率が約1%となり、表面層の色が淡緑色、バルク層の色が濃い茶色となった点である。この複層舗装舗装ブロックついて物性を測定したところ、ブロックの嵩比重が1.43、透水係数が2.4×10-2/secであり、見掛け気孔率が22%、ブロックのバルク層は嵩比重が1.37、曲げ強度が40kg/cm2、圧縮強度が170kg/cm2であった。
【0036】[比較例2]実施例1において、バルク層と表面層の骨材に前記多孔質骨材Aを使用せず、代わりに同じ焼却炉灰を溶融後破砕して0.6〜3.5mmの粒径と2.5mmの平均粒径を有するように粒度調整した骨材(嵩比重2.0)を使用し、他は実施例1と同様にして複層舗装ブロックを試作した。得られた複層舗装ブロックの色は表面層が白色であり、バルク層が赤茶色であった。この複層舗装ブロックについて物性を測定したところ、ブロックは嵩比重が1.7、見掛け気孔率が18%、透水係数が1.5×10-2/sec、ブロックのバルク層は嵩比重が1.7、曲げ強度が55kg/cm2、圧縮強度が180kg/cm2であった。
【0037】
【発明の効果】上述の実施例の結果から分かるように、本発明の複層透水性舗装ブロックは独立気泡を多く含む多孔質骨材Aを使用していることによって嵩比重が小さく軽量であり、良好な透水性を有すると共に、結合部に粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを配合したものを使用することによって結合強度が大きく、軽量であっても実用的に十分大きな強度が得られている。強度が大きければブロックの厚さをさらに薄くしてブロックをさらに軽量化でき、ブロックが軽量であることによって複層舗装ブロックの搬送費用が安く、かつその施工性が良好であり、実用的に十分な強度と耐摩耗性を有し、美観を備えた不可価値の高い複層透水性舗装ブロックを提供できる。従って、本発明の製造方法によれば、焼却炉灰を有効使用した付加価値の高い複層透水性舗装ブロックを提供でき、併せて都市ゴミ、ひいては焼却炉灰の処理費用を顕著に節減できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】焼却炉灰を造粒して焼成した粒径0.6mm以上で平均見掛け比重が1.45以下の独立気泡を有する多孔質骨材A60重量部以上に、磁器を砕いた骨材B及び/又は長石を砕いた骨材Cを合量で40重量部以下混合した混合骨材D100重量部に対し、結合部となる粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む混合物Eを合量で6〜20重量部加えたバルク層を形成する混合粉体Fをプレス型に充填してプレス型の容積の過半を充填し、プレス型の容積の残部を、磁器を砕いた骨材B及び/又は長石を砕いた骨材Cを合量で80重量%以上含む混合骨材G100重量部に対し、結合部となる粘土とガラス粉末及び/又は水ガラスを含む混合物Eを合量で6〜20重量部加えた表面層を形成する混合粉体Hで充填し、バルク層と表面層を一体にプレス成形し、次いで焼成することを特徴とする複層透水性舗装ブロックの製造方法。
【請求項2】焼成された複層透水性舗装ブロックのバルク層の嵩比重が1.50以下、曲げ強度が50kg/cm2以上である請求項1に記載の複層透水性舗装ブロックの製造方法。
【請求項3】多孔質骨材Aの平均粒径を1.5〜3mmに調整したものをバルク層の骨材に使用する請求項1又は2に記載の複層透水性舗装ブロックの製造方法。
【請求項4】混合粉体F中の混合骨材Dの100重量部と混合粉体H中の混合骨材Gの100重量部に対して、それぞれ4重量部以下の水ガラスを混合する請求項1〜3のいずれかに記載の複層透水性舗装ブロックの製造方法。
【請求項5】混合粉体H100重量部に対して0.3〜3.0重量部の顔料を混合する請求項1〜4のいずれかに記載の複層透水性舗装ブロックの製造方法。
【請求項6】焼成を1030〜1100℃で3時間以上行なう請求項1〜5のいずれかに記載の複層透水性舗装ブロックの製造方法。

【公開番号】特開平10−67579
【公開日】平成10年(1998)3月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−241148
【出願日】平成8年(1996)8月22日
【出願人】(594162401)日本釉色煉瓦工業株式会社 (1)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)