説明

複数の周波数帯域を通して互いに異なる無線通信方式が適用された信号を同時に伝送するための端末装置

【課題】複数の周波数帯域を通して互いに異なる無線通信方式が適用された信号を同時に伝送するための端末装置を開示する。
【解決手段】第1及び第2のアンテナと、第1の周波数帯域に対応する第1の信号及び第2の周波数帯域に対応する第2の信号を出力する第1の無線通信チップと、第3の周波数帯域に対応する第3の信号を出力する第2の無線通信チップと、第1の無線通信チップから出力される第1及び第2の信号を第1のアンテナに伝送し、第2の無線通信チップから出力される第3の信号を第1のアンテナに伝送し、第1のアンテナが外部から受信した第2の信号を副受信経路を通して第1の無線通信チップに伝送し、第2のアンテナが外部から受信した第2の信号を主受信経路を通して第1の無線通信チップに伝送し、第1及び第2のアンテナが受信した第3の信号を第2の無線通信チップに伝送するRFフロントエンドモジュールを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数帯域を通して信号を伝送する端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムにおいて、端末は、免許帯域(Licensed band)でデュアルバンドの信号を同時に送信することはしなかった。しかし、無線通信技術が発展し、電波利用の需要が増加するにつれて、免許帯域を使用して音声サービスとデータサービスを送信することが必要となった。
【0003】
したがって、デュアルバンドがサポートされる端末の場合、デュアルバンドを通して音声サービスとデータサービスを同時に送信するシナリオが存在するようになる。このとき、従来の方法においては、2個のアンテナがそれぞれ送信及び受信のために設計されており、RFフロントエンドにおいて、混変調歪み(InterModulation Distortion、IMD)が生じるという問題が発生し、その結果、特定帯域における端末の受信感度が相当に低下するという問題があった。
【0004】
しかし、このような問題を解決するための手段は未だに提示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で達成しようとする技術的課題は、複数の周波数帯域を通して互いに異なる無線通信方式が適用された信号を同時に伝送可能な端末装置を提供することにある。
【0006】
本発明で達成しようとする技術的課題は、前記の技術的課題に制限されず、言及していない他の技術的課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の技術的課題を達成するための本発明に係る端末装置は、第1及び第2のアンテナと、第1の周波数帯域に対応する第1の信号及び第2の周波数帯域に対応する第2の信号を出力するように構成された第1の無線通信チップと、第3の周波数帯域に対応する第3の信号を出力するように構成された第2の無線通信チップと、前記第1の無線通信チップから出力される前記第1及び第2の周波数帯域に対応する前記第1及び第2の信号を前記第1のアンテナに伝送し、前記第2の無線通信チップから出力される前記第3の周波数帯域に対応する前記第3の信号を前記第1のアンテナに伝送し、前記第1のアンテナが外部から受信した前記第2の周波数帯域に対応する前記第2の信号を副受信経路を通して前記第1の無線通信チップに伝送し、前記第2のアンテナが外部から受信した前記第2の周波数帯域に対応する前記第2の信号を主受信経路を通して前記第1の無線通信チップに伝送し、前記第1及び第2のアンテナが受信した前記第3の周波数帯域に対応する第3の信号を前記第2の無線通信チップに伝送するように構成されたRFフロントエンドモジュールとを含むことができる。ここで、前記第1の無線通信チップは、第1の無線通信方式を用いるように構成され、前記第2の無線通信チップは、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式を用いるように構成され得る。前記第2の無線通信方式は、3GPP LTE(3rd Generation Partnership Project Long Term Evolution)無線通信方式であり得る。前記第1の無線通信方式は、コード分割多重接続(Code Division Multiple Access、CDMA)無線通信方式であり得る。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナで受信した前記第1の信号と前記第1の無線通信チップから出力された前記第1の信号のデュプレックスを行うように構成された第1のデュプレクサをさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナで受信した前記第2の信号と前記第1の無線通信チップから出力された前記第2の信号のデュプレックスを行うように構成された第2のデュプレクサをさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナで受信した前記第3の信号と前記第2の無線通信チップから出力された前記第3の信号のデュプレックスを行うように構成された第3のデュプレクサをさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1の無線通信チップと前記第1のデュプレクサとの間に位置し、前記第1の無線通信チップから出力される前記第1の信号を増幅するように構成された第1の電力増幅器をさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1の無線通信チップと前記第2のデュプレクサとの間に位置し、前記第1の無線通信チップから出力される前記第2の信号を増幅するように構成された第2の電力増幅器をさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1の無線通信チップから出力される前記第2の信号と前記第2の無線通信チップから出力される前記第3の信号の帯域分離を行い、これら信号を前記主アンテナに伝送するダイプレクサをさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第2の無線通信チップと前記第2のデュプレクサとの間に位置し、前記第2の無線通信チップから出力される前記第3の信号を増幅するように構成された第3の電力増幅器をさらに含むことができる。前記第1及び第2の無線通信チップは、別個のチップに構成することができる。前記第1の無線通信チップから出力される前記第1の信号は音声サービス信号で、前記第2の無線通信チップから出力される前記第2の信号はデータサービス信号であり得る。前記第1のアンテナは主アンテナで、前記第2のアンテナは副アンテナであり得る。
【0008】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナが受信した前記第2の信号と前記第1の無線通信チップから出力された前記第2の信号のデュプレックスを行うように構成されたデュプレクサと、前記デュプレクサと前記第1のアンテナとの間に配置され、前記第1のアンテナで受信した前記第2の信号からのIM3を除去するように構成された帯域阻止フィルタとをさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナと前記帯域阻止フィルタとの間に配置され、前記第1のアンテナと前記第1の無線通信チップとの間のインピーダンスを整合するように構成された整合フィルタをさらに含むことができる。前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1及び第2の無線通信チップと前記第2のアンテナに連結され、前記第2のアンテナが受信した前記第1、第2及び第3の信号のダイプレックスを行うように構成され、前記第1の無線通信チップに前記第1及び第2の信号を伝送し、前記第2の無線通信チップに前記第3の信号を伝送するように構成されたダイプレクサをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る端末装置は、複数の周波数帯域を通して互いに異なる無線通信方式が適用された信号を同時に伝送する場合にSAR条件を満足し、IM3の影響を除去することによって通信性能を向上させることができる。
【0010】
本発明で得られる効果は、以上言及した各効果に制限されず、言及していない他の効果は、下記の記載から本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例に係る端末100の構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る端末200の構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る好適な実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。添付の図面と共に以下で開示する詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を説明するためのものであって、本発明が実施され得る唯一の実施形態を示すためのものではない。以下の詳細な説明は、本発明の完全な理解を提供するために具体的な詳細事項を含む。しかし、当業者であれば、本発明がこのような具体的な詳細事項がなくても実施され得ることを理解することができる。
【0013】
いくつかの場合、本発明の概念が曖昧になることを避けるために、公知の構造及び装置が省略されたり、各構造及び装置の核心機能を中心にしたブロック図の形式で図示されることがある。また、本明細書全体にわたって同一の構成要素については、同一の図面符号を使用して説明する。
【0014】
併せて、本発明の説明において、端末は、ユーザー機器(User Equipment、UE)、移動局(Mobile Station、MS)、改善した移動局(Advanced Mobile Station、AMS)、モバイルハンドセットなどのようにユーザーが使用する移動又は固定型の全ての通信機器を総称するものと仮定する。また、基地局は、Node B、eNode B、BS(Base Station)、AP(Access Point)などのように端末と通信するネットワーク端の任意のノードを総称するものと仮定する。
【0015】
本発明において、「無線通信方式」という用語は、無線接続技術(Radio Access Technology、RAT)方式などの多様な形態で称することができる。無線通信方式又は無線接続技術方式には、例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、LTE(Long Term Evolution)などがある。
【0016】
無線通信システムにおいて、端末は、基地局からダウンリンクを通して信号を受信することができ、また、アップリンクを通して信号を伝送することができる。端末が伝送又は受信する情報としてはデータ及び多様な制御情報があり、端末が伝送又は受信する情報の種類・用途によって多様な物理チャンネルが存在する。
【0017】
本明細書において、第1の無線通信チップと第2の無線通信チップは、互いに異なる無線通信方式又は互いに異なる無線接続技術方式を適用して信号を伝送するためのチップである。例えば、第1の無線通信チップはCDMA2000 1xDO方式を適用したチップで、第2の無線通信チップはLTE方式を適用したチップであり得るが、これに制限されることはない。
【0018】
以下では、一つのアンテナで複数の周波数帯域(例えば、デュアルバンドを基準にして説明するが、これに制限されることはない。)を通した信号の同時送信が可能なRFフロントエンドを構成する多様な実施例について説明する。
【0019】
移動端末の場合、電磁波が人体に及ぼす影響を定量的に示す電磁波吸収率(Specific Absorption Rate、以下、「SAR」と略称する。)規定を遵守しなければならない。無線通信技術の目覚しい発展とともに電波利用の需要が増加しており、通信及び放送分野のみならず、医療、交通及び周辺の日常生活で幅広く電波が利用されている。このように電子・電気機器の増加に伴い、これら電波利用施設及び機器から放射される電磁波が人体に多くの影響を及ぼすようになった。特に、移動通信機器の場合、米国連邦通信委員会(Federal Communication Commission、FCC)は、FCC 96―326の無線周波数放射の環境影響評価に関する指針を採択し、任意の携帯用送信機器に適用する局部的な電力吸収に対する制限値を規定している。
【0020】
ここで規定された最大許容露出(exposure)の制限値は、無線周波数(Radio Frequency、RF)エネルギー吸収率の尺度であるSAR項で定量化された露出評価基準に基づいている。人体に電磁波が照射された場合、電磁波に対する量的評価は、電力測定、電磁界解析及び動物実験などを通したSAR測定で行われるが、一般に、SARは、人体が電磁界に露出することによって人体に吸収される単位質量当たりの吸収電力として表現される。
【0021】
米国のFCCのみならず、ヨーロッパの電気技術標準化委員会(CENELEC)などでも移動通信端末に対する適合性評価の要求条件としてSAR条件を規定している。このように、米国のFCCやヨーロッパのCENELECなどは、SAR条件を、その基準値において差はあるが、移動通信端末の適合性評価の重要な項目として指定している。したがって、移動通信端末は、SAR条件(又は規定)を満足しなければならない。
【0022】
SAR値を充足させる最も一般的な方法は、可能な限り人体から遠く離れた場所にアンテナを位置させることである。本発明のように、複数の周波数帯域を通して信号を同時に伝送しなければならない場合、一般に2個のアンテナを使用するようになる。この場合、アンテナ位置の制約により、SAR値が規定された値を充足できない場合が発生するおそれがある。
【0023】
したがって、人体から最も遠く離れた場所にアンテナを位置させ、一つのアンテナで複数の周波数帯域を通して信号を同時に送信できるようにRFフロントエンドを設計すると、最適なSAR値を有することができる。以下では、SAR条件を満足させるとともに、IMD問題を解決するための方案について説明する。
【0024】
第1の実施例
【0025】
図1は、本発明の第1の実施例に係る端末100の構成の一例を示した図である。
【0026】
図1を参照すると、端末100は、第1の無線通信チップ110、第2の無線通信チップ120、RFフロント―エンドモジュール130、アンテナ140、及びアプリケーションプロセッサ又はベースバンドモデム150を含むことができる。
【0027】
RFフロント―エンドモジュール130は、デュプレクサ131、132、ダイプレクサ133、134、135及び電力増幅器136、137、138を含むことができる。そして、アンテナ140は、主アンテナ141及び一つ以上の副アンテナ142を含むことができる。
【0028】
無線通信では特定周波数帯域の電波が使用されるが、第1及び第2の無線通信チップ110、120は、信号送信過程で元の信号(ベースバンド信号)を高い周波数帯域の信号に変調し、信号受信過程では受信した高周波信号をベースバンドの信号に復調する機能を行う。各無線通信チップ110、120は、ベースバンドで処理された信号を高周波数帯域の信号に変調する「RF(Radio Frequency)チップ」に具現することもでき、ベースバンドの信号を処理するベースバンドチップと、信号送受信過程でベースバンドで処理された信号を高周波数帯域の信号に変調したり、受信した信号を低周波数帯域の信号に復調することによってベースバンドの信号に処理するRFチップとが結合された「RF及びベースバンドチップ」に具現することもできる。図1に示すように、本発明に係る端末100は、第1の無線通信チップ110及び第2の無線通信チップ120がアプリケーションプロセッサ又はベースバンドモデム150と分離されるように具現されている。
【0029】
また、第1及び第2の無線通信チップ110、120は、図1に示すように別個のチップに具現することもできるが、一つのチップに具現することもできる。
【0030】
上述したように、第1の無線通信チップ110と第2の無線通信チップ120は、信号送信過程で元の信号を高い周波数帯域の信号に処理する一方、信号受信過程では高い周波数帯域の信号をベースバンドの信号に処理して変調/復調する機能をそれぞれ行う。
【0031】
端末100が、互いに異なる無線通信方式が適用された複数の無線通信チップ110、120からそれぞれの信号を同時に伝送する必要がある場合、第1の無線通信チップ110は元の信号を第1の周波数帯域の信号に処理する機能を行い、これと同時に、第2の無線通信チップ120は元の信号を第2の周波数帯域の信号に処理する機能を行うことができる。すなわち、端末100は、信号送信過程では第1及び第2の無線通信チップ110、120で信号を互いに異なる周波数帯域の信号に変調して伝送することができる。一般に、端末100は、第1及び第2の無線通信チップ110、120で処理された信号を同時に伝送する場合、互いに異なる周波数帯域を通して信号を伝送することができる。
【0032】
RFフロント―エンドモジュール130は、端末100の信号送受信を自由にし、多様な環境での通話を可能にする役割をすることができる。RFフロント―エンドモジュール130は、端末100内のアンテナ140と第1の無線通信チップ110及び第2の無線通信チップ120とを連結して送受信信号を分離することができる。
【0033】
そして、RFフロント―エンドモジュール130には、フィルタリング及び増幅の役割をするモジュールとして、受信信号をフィルタリングするフィルタを内蔵した受信端フロント―エンドモジュールと、送信信号を増幅する電力増幅器を内蔵した送信端フロント―エンドモジュールなどがある。このようなRFフロント―エンドモジュール130は、特に、通話時に送信信号と受信信号を切り替えて使用しなければならない時分割(TDMA)方式のGSM(Global System for Mobile communications)端末に使用することができる。
【0034】
また、RFフロント―エンドモジュール130は、本発明で説明する端末100のように、多重周波数帯域を通して信号を伝送するのに使用することができる。例えば、RFフロント―エンドモジュール130は、一例として、端末100がCDMA2000 1xDO方式とLTE方式を同時に使用できるようにする。このようなRFフロント―エンドモジュール130を使用することによって端末100の部品数を減少させることができ、端末100の信頼性を高めるとともに、部品間の相互連係による損失を減少させることができる。
【0035】
RFフロント―エンドモジュール130は、電力消耗を減少させることによってバッテリ消耗を画期的に改善させ、多重周波数帯域を使用する多機能端末の部品小型化を可能にする。
【0036】
以下では、端末100が複数の周波数帯域を通した信号の同時送信を一つのアンテナで行えるようにRFフロント―エンドモジュール130を構成する方法と、一つのアンテナで複数の周波数帯域を通した信号の同時送信を行うときに発生するIMD(又はIM3)を回避(又は除去)できる方法について説明する。本明細書において、band2、band5、band13は互いに異なる周波数帯域に該当する。
【0037】
混変調歪み(InterModulation Distortion、IMD)は、二つ以上の周波数が非線形システム又は回路を通過するとき、出力端に入力にはなかった信号が混変調を通して出る現象であって、IMDは、このような混変調(IM)成分による歪み自体を意味する。このようなIMDが重要である理由は、CDMAなどのデジタルシステムは、アナログシステムとは異なって、一つの信号が一つの周波数、すなわち、一つのチャンネルを使用するのではなく、広いチャンネル帯域幅を多くの信号が共有するためである。すなわち、一つの帯域を処理するシステムに多くの周波数の信号が同時多発的に入力されるので、出力端に多くの周波数の信号が混合して発生し、その結果、信号処理を正確に行えなくなる。
【0038】
例えば、二つの周波数f1とf2があるとした場合、出力には多くの混合成分が混じった信号が出るが、2*f1、3*f2のような完全倍数性ハーモニーは、フィルタでろ過することができる。しかし、3次項、すなわち、2*f1*f2と2*f2*f1の場合に問題が生じるが、これは、f1とf2の信号が非常に近接してしまうためである。主に、IMDは、このような3次項混変調成分のために生じ、そのため、通常IMDと称する各信号は、3次項IMDを意味する場合が多い。通常、IMDとも表現するIMは、その3番目の周波数成分が主要な除去対象になるので、特別にIM3と称することもある。
【0039】
特に、3次項IMDは、数式的に解いてみると、入力信号の増加とともに3乗に増加するので、最初はIMDが小さいが、入力信号が増加するにつれて元の信号より遥かに速い傾きで増加しながら、元の信号の電力とほぼ同一になる場合も発生する。IMDが元の信号の電力とほぼ同一になる地点をIP3という。
【0040】
このように、IMDとは、混変調によって信号の歪みが生じる程度を意味するが、実際の製品の仕様や測定基準値としてはIP3を使用するようになる。中間周波数(Intermediate Frequency、IF)を使用するスーパーヘテロダイン方式での混変調は、その3番目の項が元の信号と最も近接するので、3rd IMを除去することが重要である。したがって、このようなIMDのような信号歪み、干渉の影響を減少させることが望ましい。
【0041】
このようなIM3を減少させるために、本発明に係るRFフロント―エンドモジュール130は、第1の無線通信チップ110から出力される複数の周波数帯域(例えば、band2、band5)の各信号と第2の無線通信チップ120から出力される信号(band13に該当する信号)を主アンテナ141に伝送する。
【0042】
そして、RFフロント―エンドモジュール130は、主アンテナ141が外部から受信した前記複数の周波数帯域(すなわち、band2、band5)信号のうち特定帯域(例えば、band5)に該当する信号を副受信経路(secondary Rx path)162を通して前記第1の無線通信チップ110に伝送し、前記副アンテナ142が外部から受信した信号のうち前記特定帯域(例えば、band5)に該当する信号は、主受信経路(primary Rx path)161を通して前記第1の無線通信チップ161に伝送する。そして、RFフロント―エンドモジュール130は、band2に該当する帯域の信号を主アンテナ141及び副アンテナ142からそれぞれ受信し、これら信号をそれぞれ第1の無線通信チップ110に伝達することができる。
【0043】
また、RFフロント―エンドモジュール130は、主アンテナ141及び副アンテナ142がそれぞれ受信した信号のうち第2の無線通信チップ120に該当する帯域の信号(すなわち、band13に該当する帯域の信号)を第2の無線通信チップ120に伝送する。
【0044】
ここで、RFフロント―エンドモジュール130の主受信経路161は、アンテナ140が外部から受信した信号(又はデータ)を第1の無線通信チップ110に伝達する主経路といえる。また、副受信経路162は、ダイバーシティ利得を得るためにアンテナ140が外部から受信した信号(又はデータ)を第1の無線通信チップ110に伝達する補助経路といえる。
【0045】
上述したように、RFフロント―エンドモジュール130は、第1の無線通信チップ110から出力される特定周波数帯域(例えば、band5)の信号を主アンテナ141に伝送するが、主アンテナ141は、外部から前記特定周波数帯域(例えば、band5)に該当する信号を受信すると、これを副受信経路162を通して第1の無線通信チップ110に伝達し、副アンテナ142は、外部から前記特定周波数帯域(例えば、band5)に該当する信号を受信すると、これを主受信経路161を通して第1の無線通信チップ110に伝達する。
【0046】
デュプレクサは、一つのアンテナを送信と受信に共同で使用するために、送信時には送信出力から受信機を保護し、受信時には反響信号を受信機に供給する装置である。デュプレクサ131は、第1の無線通信チップ110から出力される特定帯域(例えば、band2)信号と主アンテナ141で受信した特定帯域(例えば、band2)に該当する受信信号のデュプレキシングを行う。そして、デュプレクサ132は、第1の無線通信チップ110から出力される特定帯域(例えば、band5)の信号と主アンテナ141で受信した特定帯域(例えば、band5)に該当する受信信号のデュプレキシングを行う。図1のダイプレクサ134内のデュプレクサは、主アンテナ141で受信した特定帯域(例えば、band13)の信号と第2の無線通信チップ120から出力される信号(例えば、band13)のデュプレックスを行うことができる。
【0047】
ダイプレクサは、2個の回路から別途に出る信号を、互いに影響を及ぼさない状態で一つの回路に伝達する装置である。これは、主に周波数が異なる二つの信号を同時に伝送して受信するために使用される分岐用フィルタ素子をいうが、周波数の差が明らかな二つの信号の帯域分離のみを行ってもよいので、一般に低い周波数信号が通過する低帯域通過フィルタ(LPF)と、高い周波数信号が通過する高帯域通過フィルタ(HPF)とを結合した簡単な構造となっている。
【0048】
ダイプレクサ134は、第1の無線通信チップ110から出力されたband5に該当する帯域の信号と第2の無線通信チップ120から出力されたband13に該当する帯域の信号の帯域分離を行い、これら信号を主アンテナ141に伝達する。
【0049】
そして、ダイプレクサ135は、副アンテナ142が外部から受信した各信号(例えば、band2、band5及びband13に該当する帯域の各信号)の帯域分離を行うよう機能する。このように、副アンテナ142が外部から受信した各信号(例えば、band2、band5及びband13に該当する帯域の各信号)の帯域分離がダイプレクサ135によって行われ、band2に該当する信号は第1の無線通信チップ110に伝達され、band5に該当する信号は主受信経路161を通して第1の無線通信チップ110に伝達され、band13に該当する信号は第2の無線通信チップ120に伝達される。
【0050】
電力増幅器136、137、138は、それぞれ第1の無線通信チップ110から出力されたband2に該当する帯域の信号及びband5に該当する帯域の信号、第2の無線通信チップ120から出力されたband13に該当する帯域の信号を増幅するよう機能する。
【0051】
RFフロント―エンドモジュール130でIM3が発生する帯域の信号(特に、band5)は主アンテナ141を通して伝送するが、主アンテナ141でない副アンテナ142を通して信号を受信するようになると、二つのアンテナ141、142間のカップリング損失(Coupling loss)だけのIM3を改善することができる。
【0052】
第2の実施例
【0053】
本発明に係る第2の実施例は、RF端で混変調によってIM3が発生し、これが受信信号に影響を与えることを防止するために、RF経路のデュプレクサの前端にIP3が非常に高いフィルタを挿入する方法である。このように適用すると、受信経路に発生するIM3に直接影響を与える送信信号を、特定レベル(すなわち、受信機に影響を与えないレベル)以下になるように消去することによってIM3の影響を減少させることができる。
【0054】
図2は、本発明の第2の実施例に係る端末200の構成の一例を示した図である。
【0055】
図2を参照すると、端末200は、第1の無線通信チップ210、第2の無線通信チップ220、RFフロント―エンドモジュール230、主アンテナ241、副アンテナ242、及びアプリケーションプロセッサ又はベースバンドモデム250を含むことができる。
【0056】
RFフロント―エンドモジュール230は、デュプレクサ231、232、233、ダイプレクサ234、235、帯域阻止フィルタ(Band Rejection Filter、BRF)236、整合回路モジュール237及び電力増幅器251、252、253を含むことができる。
【0057】
本発明に係るRFフロント―エンドモジュール230は、第1の無線通信チップ210から出力される複数の周波数帯域(例えば、band2、band5)の各信号と第2の無線通信チップ220から出力される信号(band13に該当する信号)を主アンテナ241に伝送する。
【0058】
具体的に説明すると、第1の無線通信チップ210から出力される複数の周波数帯域(例えば、band2及びband5)の各信号の電力はそれぞれ電力増幅器251、252を通して増幅され、電力が増幅されたband2に該当する帯域の信号はデュプレクサ231を経る。そして、電力が増幅されたband5に該当する帯域の信号は、デュプレクサ232を経た後、整合回路モジュール237を通過して主アンテナ241に伝送される。そして、第2の無線通信チップ220から出力される特定周波数帯域(例えば、band13)に該当する信号の電力の電力は、電力増幅器239を経て増幅された後、デュプレクサ233と整合回路モジュール237を経て処理されて主アンテナ241に伝送される。
【0059】
RFフロント―エンドモジュール230では、周波数が上がるほどインピーダンスによる伝送特性が大きく変わるので、連結終端で必ずインピーダンスが同一にマッチングされることが望ましい。しかし、実際に設計してみると、各終端が特性インピーダンスである50Ωにマッチングされない場合が多いので、インピーダンスを整合しなければならない。整合回路モジュール237は、このようにインピーダンスを整合する役割をする。このとき、通常、インピーダンスマッチングにはスミスチャート(Smith chart)を用いる。
【0060】
帯域阻止フィルタ236は、RF受信経路でデュプレクサ231、232の前端に位置したフィルタとして、IP3が高いフィルタである。帯域阻止フィルタ236は、RF受信経路に発生するIM3に直接影響を与える送信信号を特定レベル以下になるように除去することによって、受信機に及ぼすIM3の影響を相当に減少させることができる。
【0061】
RFフロント―エンドモジュール230は、主アンテナ241が外部から受信した特定周波数帯域(例えば、band2、band5)に該当する各信号をデュプレクサ231、232を経てそれぞれ第1の無線通信チップ210に伝達する。そして、RFフロント―エンドモジュール230は、主アンテナ241が外部から受信した特定周波数帯域(例えば、band13)に該当する各信号をデュプレクサ233を経て第2の無線通信チップ210に伝達する。
【0062】
一方、RFフロント―エンドモジュール230は、副アンテナ242が外部から受信した特定周波数帯域(例えば、band2、band5)に該当する各信号をダイプレクサ235を経て第1の無線通信チップ210に伝達する。そして、RFフロント―エンドモジュール230は、副アンテナ242が外部から受信した特定周波数帯域(例えば、band13)に該当する各信号をダイプレクサ235を経て第2の無線通信チップ220に伝達する。
【0063】
以上説明したように、本発明に係る多様な実施例によると、一つのアンテナのみで送信が行われるので、複数の周波数帯域で信号を同時に送信する場合であっても、SARを減少させることができる。また、複数の周波数帯域で信号を同時に送信することによって発生するIM3の影響を最小化できるとともに、RFフロンエンドの複雑度を低下させながら、RF性能は向上させることができる。
【0064】
以上説明した各実施例は、本発明の各構成要素と特徴が所定形態で結合されたものである。各構成要素又は特徴は、別途の明示的な言及がない限り、選択的なものとして考慮しなければならない。各構成要素又は特徴は、他の構成要素や特徴と結合されない形態で実施可能である。また、一部の構成要素及び/又は特徴を結合して本発明の実施例を構成することも可能である。本発明の各実施例で説明する各動作の順序は変更可能である。一つの実施例の一部の構成や特徴は他の実施例に含ませたり、又は、他の実施例の対応する構成又は特徴に取り替えることができる。特許請求の範囲で明示的な引用関係のない各請求項を結合して実施例を構成したり、出願後の補正によって新しい請求項を含ませることが可能であることは自明である。
【0065】
本発明に係る実施例は、多様な手段、例えば、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの結合などによって具現することができる。ハードウェアによる具現の場合、本発明の一実施例は、一つ又はそれ以上のASICs(Application Specific Integrated Circuits)、DSPs(Digital Signal Processors)、DSPDs(Digital Signal Processing Devices)、PLDs(Programmable Logic Devices)、FPGAs(Field Programmable Gate Arrays)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサなどによって具現することができる。
【0066】
ファームウェアやソフトウェアによる具現の場合、本発明の一実施例は、以上説明した機能又は各動作を行うモジュール、手順、関数などの形態で具現することができる。ソフトウェアコードは、メモリユニットに格納されてプロセッサによって駆動され得る。前記メモリユニットは、前記プロセッサの内部又は外部に位置し、既に公知の多様な手段によって前記プロセッサとデータを取り交わすことができる。
【0067】
本発明が、その精神及び必須的な特徴を逸脱しない範囲で他の特定の形態で具体化され得ることは当業者にとって自明である。したがって、前記の詳細な説明は、全ての面で制限的に解釈してはならなく、例示的なものとして考慮しなければならない。本発明の範囲は、添付の請求項の合理的な解釈によって定めなければならなく、本発明の等価的範囲内での全ての変更は本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のアンテナと、
第1の周波数帯域に対応する第1の信号及び第2の周波数帯域に対応する第2の信号を出力するように構成された第1の無線通信チップと、
第3の周波数帯域に対応する第3の信号を出力するように構成された第2の無線通信チップと、
前記第1の無線通信チップから出力される前記第1及び第2の周波数帯域に対応する前記第1及び第2の信号を前記第1のアンテナに伝送し、前記第2の無線通信チップから出力される前記第3の周波数帯域に対応する前記第3の信号を前記第1のアンテナに伝送し、前記第1のアンテナが外部から受信した前記第2の周波数帯域に対応する前記第2の信号を副受信経路を通して前記第1の無線通信チップに伝送し、前記第2のアンテナが外部から受信した前記第2の周波数帯域に対応する前記第2の信号を主受信経路を通して前記第1の無線通信チップに伝送し、前記第1及び第2のアンテナが受信した前記第3の周波数帯域に対応する第3の信号を前記第2の無線通信チップに伝送するように構成されたRFフロントエンドモジュールと、を含むことを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記第1の無線通信チップは、第1の無線通信方式を用いるように構成され、前記第2の無線通信チップは、前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式を用いるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記第2の無線通信方式は3GPP LTE無線通信方式であることを特徴とする、請求項2に記載の端末装置。
【請求項4】
前記第1の無線通信方式はコード分割多重接続無線通信方式であることを特徴とする、請求項3に記載の端末装置。
【請求項5】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナで受信した前記第1の信号と前記第1の無線通信チップから出力された前記第1の信号のデュプレックスを行うように構成された第1のデュプレクサをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の端末装置。
【請求項6】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナで受信した前記第2の信号と前記第1の無線通信チップから出力された前記第2の信号のデュプレックスを行うように構成された第2のデュプレクサをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の端末装置。
【請求項7】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナで受信した前記第3の信号と前記第2の無線通信チップから出力された前記第3の信号のデュプレックスを行うように構成された第3のデュプレクサをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の端末装置。
【請求項8】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1の無線通信チップと前記第1のデュプレクサとの間に位置し、前記第1の無線通信チップから出力される前記第1の信号を増幅するように構成された第1の電力増幅器をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の端末装置。
【請求項9】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1の無線通信チップと前記第2のデュプレクサとの間に位置し、前記第1の無線通信チップから出力される前記第2の信号を増幅するように構成された第2の電力増幅器をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の端末装置。
【請求項10】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1の無線通信チップから出力される前記第2の信号と前記第2の無線通信チップから出力される前記第3の信号の帯域分離を行い、これら信号を前記主アンテナに伝送するダイプレクサをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の端末装置。
【請求項11】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第2の無線通信チップと前記第2のデュプレクサとの間に位置し、前記第2の無線通信チップから出力される前記第3の信号を増幅するように構成された第3の電力増幅器をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の端末装置。
【請求項12】
前記第1及び第2の無線通信チップは別個のチップに構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の端末装置。
【請求項13】
前記第1の無線通信チップから出力される前記第1の信号は音声サービス信号で、前記第2の無線通信チップから出力される前記第2の信号はデータサービス信号であることを特徴とする、請求項1に記載の端末装置。
【請求項14】
前記第1のアンテナは主アンテナであることを特徴とする、請求項1に記載の端末装置。
【請求項15】
前記第2のアンテナは副アンテナであることを特徴とする、請求項14に記載の端末装置。
【請求項16】
前記RFフロント―エンドモジュールは、
前記第1のアンテナが受信した前記第2の信号と前記第1の無線通信チップから出力された前記第2の信号のデュプレックスを行うように構成されたデュプレクサと、
前記デュプレクサと前記第1のアンテナとの間に配置され、前記第1のアンテナで受信した前記第2の信号からのIM3を除去するように構成された帯域阻止フィルタと、をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の端末装置。
【請求項17】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1のアンテナと前記帯域阻止フィルタとの間に配置され、前記第1のアンテナと前記第1の無線通信チップとの間のインピーダンスを整合するように構成された整合フィルタをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の端末装置。
【請求項18】
前記RFフロント―エンドモジュールは、前記第1及び第2の無線通信チップと前記第2のアンテナに連結され、前記第2のアンテナが受信した前記第1、第2及び第3の信号のダイプレックスを行うように構成され、前記第1の無線通信チップに前記第1及び第2の信号を伝送し、前記第2の無線通信チップに前記第3の信号を伝送するように構成されたダイプレクサをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の端末装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−254478(P2011−254478A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123699(P2011−123699)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】