説明

複数の局部刺激を同時に与えるための組成物を含む噴霧装置

【課題】複数の局部刺激を同時に与えるための組成物を含む噴霧装置の提供。
【解決手段】粘度が20℃で0.2から30mPa.sである不燃性で水ベースの組成物を含む噴霧装置であって、皮膚または身体組織を冷却するため、および身体においてパルスを生成するために、熱および機械的運動エネルギーによる刺激をそれぞれ同時に局所的に与えるため、20℃でジメチルエーテル、LPガス、または両方を混合したものを使用して生じた0.5〜11バールの圧力下で、20℃で毎秒0.1〜8gm/秒、20℃で0度〜145度の角度で低温の水ベース粒子を放出するよう構成され、水ベース粒子は、温度が0℃より高くかつ周囲温度より低く、粒子径が10〜600ミクロンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的および電気機械的刺激による皮膚冷却の治療効果に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚温度の低下は、かゆみや痛みの治療効果があることが証明されている[Fruhstorfer H, Hermanns M, Latzke L.,「臨床上および実験上のかゆみに対する熱的刺激の効果(Effects of Thermal Stimulation on Clinical and Experimental itch)」、Pain(1986年2月);24(2):259-69]。痛みとかゆみは密接に関係する感覚であり、双方とも同じ薄い求心性神経線維、主にC線維により伝達される。神経終末の麻酔に加え、冷却は痛みやかゆみを末梢または中枢的に抑制する働きがある[Fruhstorfer H, Hermanns M, Latzke L.,「臨床上および実験上のかゆみに対する熱的刺激の効果(Effects of Thermal Stimulation on Clinical and Experimental itch)」、Pain(1986年2月);24(2):259-69], [Bromm B., Scharein E., Darsow U.およびRing J.,「ヒトにおけるヒスタミン誘発性のかゆみおよび皮膚反応に対するメタノールおよび冷却の効果(Effects of menthol and cold on histamine-induced itch and skin reactions in man)」、Neurosci.Lett, 187(1995年);157-160]。皮膚の外表面の凍結と冷却とでは明確な相違点がある。ここで言う治療効果は、皮膚の外表面を標準の37度より数度低下させることによるものであり、0度近くまたは0度まで温度を下げることではない。数多くのスポーツ傷害では非常に低温の冷却スプレーを使用するが、使用後は0度以下または0度まで温度が下がる。このようなスプレーは皮膚の外表面温度を標準の37度から0度近くまたは0度まで下げることが可能で、血管収縮による炎症や打撲を抑えるために氷をあてる効果に類似している。本発明の目的の一つは、皮膚の外表面を冷却することであり、外表面を凍結または5度以下に低下させることではない。0度以下の非常に低温なスプレーの使用は皮膚の外表面を凍結させる、あるいは0度近くまたは0度まで低下させるため、本発明の意図するプロセスに反し、また本発明の適用範囲ではない。
【0003】
マスト細胞は、直接的損傷や刺激された無随知覚線維から放出された抗原やペプチドを含む異常組織化学作用により破壊される。無随知覚線維はヒスタミンやキモトリプシンなどのタンパク質分解酵素を放出する。タンパク質分解酵素は激しいかゆみを引き起こす。このような酵素は、最適pH範囲で最も効果を表す。アルカリ性溶液はかゆみを抑える[Madden EJ.「かゆみ(Itch)」、J Pain Symptom Management(1986年春);1(2):97-9]が、例えば、風呂に重炭酸ナトリウムを加えるとアトピー性湿疹治療に効果があることが判明している[Litt JZ「コルチコステロイドのない局所的なかゆみ治療(Topical treatments of itching without corticosteroids)」、Bernhard JD(編集)「かゆみのメカニズムとそう痒の管理(Itch Mechanism and management of Pruritis)」、New York, McGraw-Hill(1994年);pp 383-397]。この観点から、pHレベルの範囲が7.01〜12.6の組成物はかゆみを緩和する同等の作用があると考えられる。アルカリ性溶液の使用は手間のかかる在宅治療と考えられ、効果的な治療のために厳密にpHレベルを調整するのはむずかしい。
【0004】
経皮電気神経刺激(TENS)と機械刺激は、かゆみや痛みの治療に効果があると証明されている[Ekblom A, Fjellner B, Hansson P「ヒスタミンにより誘発された実験的なそう痒に対する機械的振動刺激および経皮電気機械神経刺激の影響(The influence of mechanical vibratory stimulation and transcutaneous electromechanical nerve stimulation on experimental pruritus induced by histamine)」、Acta Physiol Scand,(1984年); 122: 361-7]。パルス周波数の使用は治療結果に効果が見られる。低周波数TENS(2Hz)は大幅にかゆみを緩和し、このような刺激法で誘発されたリズミカルな筋肉収縮は痛みを緩和する効果がある[Ekblom A, Fjellner B, Hansson P「ヒスタミンにより誘発された実験的なそう痒に対する分節外機械的振動刺激および経皮電気機械神経刺激の影響(The influence of extrasegmental mechanical vibratory stimulation and transcutaneous electromechanical nerve stimulation on experimental pruritus induced by histamine)」Acta Physiol Scand (1984年); 122: 361-7]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TENSには欠点がある。TENSは電力源を必要とし、平均30分続けて使用しないと痛みやかゆみは緩和されない。デマンド型ペースメーカーを使用している患者は利用できず、また体のどこにでも使用することはできない(例えば首には使用不可)。また、運転や機械操作中の使用も不可である。妊娠中の女性、心疾患や癲癇の患者による使用には適さない。TENSは治療部分が体の広範囲、または大部分に渡る使用に適さないが、体の部分的または小範囲の痛みやかゆみの治療には適している。従って、現時点ではTENSは臨床使用での大規模な展開には至っておらず、また患者のコンプライアンスは十分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、粘度が20℃で0.2から30mPa.sである不燃性の水ベースの組成物を含む噴霧装置であって、前記噴霧装置は、皮膚または身体組織を冷却するため、および身体においてパルスを生成するために、熱(冷却)および機械的運動エネルギーによる刺激をそれぞれ同時に局所的に与えるため低温の水ベース粒子を放出するよう構成され、また前記噴霧装置は、20℃でジメチルエーテル、LPガス、または両方を混合したものを使用して生じた0.5〜11バールの圧力下で、20℃で毎秒0.1〜8gm/秒、20℃で0度〜145度の角度で不燃性の水ベース粒子を放出するよう構成され、前記水ベース粒子は、温度が0度以上で周囲温度より低く、粒子径が10〜600ミクロンである、前記噴霧装置が提供され、前記噴霧装置は、人や動物の疾患および病気の症状の治療に使用できるがこれらに限定されない。
【0007】
本発明の噴霧装置が生成するよう構成される低温の水ベース粒子は、pHが7.01〜12.6のアルカリ性組成物であることが好ましく、またそれにより、例えばタンパク質分解酵素の効果を抑制しかゆみを緩和するために、皮膚や身体組織の化学的刺激が与えられることが望ましい。
【0008】
本発明は、皮膚や身体組織の冷却に効果を与え、皮膚または身体組織に必要なpHレベルの水ベース粒子を提供し、身体に機械的運動エネルギーのパルスを生成するために、熱的、化学的および機械的運動エネルギーの刺激をそれぞれ同時に与えるよう構成された、組成物を含む噴霧装置を提供し、前記噴霧装置は、人や動物の疾患および病気の症状の治療に使用できるがこれらに限定されない。本発明の噴霧装置および組成物は、個々に作用する冷却、機械的または化学的な各刺激を遥かに超えた効果を達成することができる。さらに大抵の場合、前記組成物を含む噴霧装置は、使用後数秒内に中枢神経系(CNS)や末梢神経系の阻害作用を引き起こすため、例えばかゆみや痛みが消失または緩和する。本噴霧装置は体のどこにでも使用でき、妊娠中の女性を含む成人、子供や幼児にも適し、副作用もない。かゆみ、痛み、発疹、じんま疹、紅はん、発汗、乾燥、炎症などの症状を即座に和らげるのに加え、本発明はアトピー性皮膚炎、あせも、じんま疹などの皮膚疾患の治療とその症状緩和にも効果的であると証明された。
【0009】
機械的運動エネルギーの刺激は、本噴霧装置が運動エネルギーを伝達し皮膚や組織に影響を与える粒子を放出する際に生じる。皮膚への各粒子の衝撃圧は、皮膚や身体組織における振動やパルスに変換される。数多くの運動エネルギーがあるが、本発明で使用した種類は並進運動エネルギーである。並進運動エネルギーは粒子が空間を移動するエネルギーで、粒子の質量はm、速度はvで定義される。
【数1】

【0010】
発生した運動エネルギー量は空間を移動する粒子の質量に正比例し、また速度の二乗に正比例する。そのため、粒子の速度は、粒子の質量に比べKEの数値に大きく影響する。本発明の噴霧装置は不燃性の組成物を含有し、20℃で0.5〜11バール、好ましくは20℃で1.5〜8バールの圧力で不燃性の水ベース粒子を放出させる。粒子は、所定の速度で自由に空間を移動し、粒子の大半は皮膚や身体組織に影響を与えて異なる周波数のパルスを生成する。使用時の水ベース粒子の温度は0度以上だが、周囲の温度より低い。放出された水ベース粒子の圧力は、特定の粒子速度から最適な運動エネルギー量を十分に生み出すため、最適なパルス周波数が生じ最大限の治療効果が得られる。粒子は方向性があり、空間で特定の方向へ移動し、一定の圧力で皮膚や身体組織に影響を与えなくてはならない為、本発明の噴霧装置は、粒子が空間で自由に移動するのを抑制する一方で気泡やフロスト状のようなスプレーの形成を防ぐ。放出される粒子の数は、20℃で0.1〜8gm/秒、好ましくは20℃で0.2〜5gm/秒または0.4〜3gm/秒となるよう選択される放出速度に依存する。放出角度は、粒子が影響を与える皮膚部の大きさによるが、20℃で0度〜145度、好ましくは20℃で5度〜60度の角度となるよう選択される。これは一回の使用で体の広範囲の治療を可能にし、必要に応じて体表面の大部分または一部を数秒で治療できる。
【0011】
本発明によると、放出される粒子径は10〜600ミクロンであるが、粒子が十分な量と速度を確保し、粒子吸入を防ぐために、できれば10〜250ミクロンまたは15〜300ミクロンが好ましい。
【0012】
特定の温度における特定の粒子の大きさ、特定の放出速度および特定の放出角度を実現するための方法は、当業者には明らかである。
【0013】
20℃で必要とされる粒子の大きさ、放出速度、放出角度を達成する方法の一つとして、噴霧装置に入れる適切な粘度の組成物の購入とともに、現在市販されている、または企業/製造会社より入手できる適切なエアゾール弁、アクチュエータ、アクチュエータ挿入部を選ぶことである。本噴霧装置の組成物は、特定の温度における噴霧装置内部の圧力に影響される(もし組成物が加圧ガスを含む場合、噴霧装置内のそのガスの圧力は全体の圧力に影響するため考慮する)。エアゾール弁、アクチュエータ、アクチュエータ挿入部は、粒子を適切な粒子の大きさに分解した後、必要とされる放出速度と放出角度で組成物を放出する。放出速度は、特定の温度(例えば20℃)で特定の時間(例えば10秒)における本噴霧装置からの重量ロスを量り、この行程を何度が繰り返しその平均値を計算することにより測定される。特定の温度におけるgm/秒の放出速度は容易に計算できる。粒子の大きさの測定には、レーザー回折器のような光相互作用法などによるスプレー粒子分析器を使用する。このような粒度分析器は、イギリスMalvern Instruments Ltd (Enigma Business Park, Grovewood Rd, Malvern, WR14 1XZ, UK)のSpraytecスプレー粒子分析器やアメリカMicrotrac Inc. (12501A-62nd St, North Largo, FL 33773, USA)のMicrotrac S3500など、粒径の測定のために各企業から市販されている。粘度を測定するためには、Cambridge Applied Systems Inc. (10 Presidents Landing, Medford, MA O2155-5148, USA)のViscolab 4000システム、またはAnton Paar Ltd. (13 Harforde Court, Hertforfd, SG13 7NW, UK)のAMVn自動マイクロビスコメータを使用できる。
【0014】
必要とされる冷却レベルは、ジメチルエーテル、液化ガスまたは両方を混合したものを使用することにより達成される。組成物が噴霧装置から空気中に放出されると、ジメチルエーテル、液化ガスまたは両方を混合した液状物からガスへ変質するときの潜熱が組成物から吸収されるため、水ベース粒子を0℃を超えかつ周囲の温度より低く冷却する。メントール、乳酸メチルなどの冷却成分が皮膚の冷却効果を高めるのに加えられてもよい。皮膚の冷却レベルが放出量に正比例するため、放出量が皮膚の冷却レベルを決定する。
【0015】
20℃で0.5〜11バールの圧力は、ジメチルエーテル、LPガス、または両方を混合したものを使用することにより達成できる。窒素や二酸化炭素などの加圧ガスも、適切な圧力レベルの達成を助けるために加えられてもよい。
【0016】
水ベース粒子が皮膚または身体組織に衝突すると、機械的運動エネルギーの刺激が特定の治療パルス周波数を持つパルスに変換される。パルスはA線維を経由して伝達し、後角細胞の抑制をもたらして内部神経回路の増幅効果を調節するため、中枢神経系(CNS)を通してかゆみや痛さの交信に対する局所的抑制効果が得られる。1965年、MelzackとWallは、機械的刺激が痛覚を緩和する理由を説明する「ゲートコントロール」理論を提唱した。彼らは、触覚、圧力または振動刺激により活性化された求心性の大径有随A線維の刺激は、脊髄に到達したC線維中の同時刺激を調整、抑制する、つまり、A線維のインプットが脊髄レベルでC線維の痛みのインプットへの「ゲート」を閉じると提案している。
【0017】
本発明の噴霧装置が作動すると、使用中、例えばアクチュエータボタンが押されている間、断続することなく連続的に粒子が放出される。断続的、もしくは一定比率(2002年4月のDaizo CorporationによるEP-A-1 195 173に詳述されている)または無作為の自動「作動−停止」放出は望ましくなく、本発明の意図する工程に反するものであり、本発明の範囲外である。使用中に皮膚や身体組織での望ましい連続的な機械的刺激の効果、つまり連続的な衝撃圧力およびパルスを達成するには、放出された粒子を介した機械的運動エネルギーの伝達は連続的でなければならず、「作動-停止」であってはならない。
【0018】
本発明に従って望ましい効果を発揮するため、皮膚または組織は裸がよい。ある種の女性用ストッキングなど、十分薄くて十分穴のあいた布でも運動エネルギーが伝達されるため使用可能である。ドレスや洋服に皮膚が覆われていると、運動エネルギーはドレスや洋服に吸収され、皮膚まで伝達して身体に望ましいパルスを生成することができない。過度の毛(動物の場合は毛皮)は皮膚に運動エネルギーを伝達できるよう、好ましくは剃るのがよい。
【0019】
本発明は、皮膚に作用する機械的運動エネルギーの刺激から生じる、伝播したパルスの周波数や振幅の変更が簡単にできる。パルスの周波数は、噴霧装置内の圧力(20℃で0.5〜11バール)に依存する粒子放出の速度に関係する。パルスの振幅は、組成物の粘度(20℃で0.2〜30mPa.s、好ましくは20℃で0.3〜15mPa.s)と粒子の大きさ(10〜600ミクロン、好ましくは10〜250ミクロンまたは15〜300ミクロン)に依存する放出粒子の質量に関係する。放出粒子によるパルスの周波数(Hz)と放出された粒子の振幅は、微視的測定に適した適切なセンサが付いた加速度計により測定することができる。疾患や病状は、それぞれ特定のパルスの周波数や振幅によく反応するようである。特定の疾患のための最適な治療パルス周波数は、臨床試験により判断される。そのため、噴霧装置の圧力、組成物の粘度および粒子の大きさを調整することにより、特定の疾患の治療に合わせることができる。本発明による適切な装置を選ぶことにより、各患者が、特に痛みやかゆみといった患者のみが判断できる症状が治まるまで用途の回数や期間を調節し、各自の必要性に応じて用量を管理できる。
【0020】
特定の圧力における水ベース粒子は皮膚の損傷を機械的に洗浄、もし存在するならば壊死組織を排除し、セラムや外皮の蓄積を妨げ、また小水疱の液体浸透を助ける。
【0021】
本発明による噴霧装置から放出された粒子は空間を移動し体に刺激を与える。安全上の理由から、粒子は不燃性でなければならない。つまり、噴霧装置中の可燃性組成物は、BS3914に基づき、45重量%を超えてはならない。この安全策により、使用者はどこででも本装置を使用できる。
【0022】
含水量は36%〜92%であるが、45%〜75%が好ましい。これは、規定された有害成分の含有量を削減するため、および冷却工程の際に水ベースの組成物が凍結または0℃近くまで温度が低下するのを防ぐためである。本発明の目的は皮膚を冷却することであって、皮膚を凍結または5度以下に下げるためではないため、このような低温度は適さない。本噴霧装置は含水量が高く、低毒性のため顔など体のどこにでも使用できる。水分は皮膚または外皮組織からゆっくり蒸発するため、冷却効果が長く持続し、治療上望ましい。
【0023】
高い含水量は、皮膚病学において治療上重要な役割をもつ皮膚や疾患部位のハイドロセラピーを可能にする。多くの皮膚病は皮膚の乾燥から生じる。皮膚は油分不足で乾燥するのではなく、水分不足で乾燥するのである。入浴やシャワーは皮膚の水分補給を助けるが、高温度での入浴は自然な皮膚油分を急速に奪い、低温度での入浴は快適ではない。濡れたタオルの使用は面倒な在宅治療であり、体の広範囲に当てるのはむずかしい。本発明による加圧された水ベース粒子を皮膚と疾患部位へ適用すると、皮膚と疾患部位(皮膚疾患と角質層の状態により、疾患部位は健康な皮膚より早く水分を吸収する)の深層への水分補給となる。水分補給は、特に乾燥皮膚そう痒の経表皮の水分損失を補うために重要である。ハイドロセラピーは、皮膚の炎症による経表皮の水分損失や血流を減少させる。
【0024】
ハイドロセラピーは下層部の皮膚組織の治癒を促進する。水分は吸湿性の特質があり、よって細胞内の保湿力を上昇させることができる。その上、水分はバリア機能を向上させ、炎症を抑制する。冷却粒子は血管収縮、炎症した皮膚や組織における抗炎症作用がある。
【0025】
本発明によれば、人や動物に衝撃を与える本装置からの放出粒子を通して皮膚に同時に伝達された、熱的(冷却)および機械的運動エネルギーは、身体を冷却、回復したり、スポーツによる消耗および疲労と戦う機能をもつ。機械的運動エネルギーの刺激は、皮膚に対する冷却刺激および身体の熱の緩和を増大させる効果を有し、冷却効果のみに勝る。他の機能として、更年期症状の緩和、失神または気絶した人や動物の応急処置への活用、またはやけどの処置などが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
また本発明によると、本噴霧装置に使用される組成物を安定させるため、水蒸気圧力を調整するため、または一相混合物の生成を補助するために、アルコールまはたジメトキシメタン(メチラール)などの溶媒が噴霧装置中の組成物に加えられてもよい。含まれる溶媒量は、組成物の15重量%に制限するのが好ましい。水分の蒸発潜熱は他の溶媒に比べ比較的高いため、溶媒含有量を減らし水分を増加させると、ジメチルエーテル、LPガスまたは双方の混合物の存在下において冷却効率を増強する結果となる。
【0027】
本発明の噴霧装置に含まれる組成物は、これらに限定されないが、鎮痛剤、抗原炎症剤、抗そう痒性皮疹剤、防腐剤、消毒剤、殺菌剤、抗生物質、防かび剤、乳化剤、抗酸化剤、腐食防止剤、芳香剤、冷却剤、メントール、しょうのう等の芳香族アルコール、安定剤、溶解補助剤、pH調節剤および皮膚のコンディショニング剤のうちの一つ以上を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。本発明の一実施態様を以下に示す。しかしながら、本発明はこの実施態様に限定されるものではない。冷却する水ベース組成物の含有するエアゾルディスペンサが設けられている。エアゾルディスペンサ内部の圧力はジメチルエーテル、LPガス、または双方の混合物の使用により生成される。必要とする圧力を生み出すために窒素や二炭化炭素等の加圧ガスが加えられてもよい。ディスペンサより放出された冷却水ベース粒子は、ほぼ30〜70ミクロンの霧状の微粒子の形で適度な速度で空中を移動する。
【実施例1】
【0029】
アエロディスペンサは以下の成分を含む。
(成分) (重量%)
水 60%
メチラール 3.1%
エタノール 2.5%
α−トコフェロール 0.5%
芳香剤 0.01%
ホウ酸エタノールアミン 0.25%
ジメチルエーテル 31%
LPガス 2.64%
(合計 100%)
20℃での圧力 :4.5バール
粒子径 :50ミクロン
20℃での放出速度 :1.3gm/秒
20℃での放出角度 :25°
pH :9.2
20℃での粘度 :0.71
【0030】
以下に詳述する全研究は、医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice)に関するEUガイドラインおよびヘルシンキ宣言(Declaration of Helsinki)に沿って実施された。臨床試験は地域の倫理委員会により認可された。実施例1で詳述した組成物を含む本発明の噴霧装置の新しい治療は、臨床試験においてN1とする。
【0031】
臨床試験に参加する患者には、本発明の噴霧装置一式と以下の使用説明書が与えられた。1)適用する部分の洋服を脱ぐ。2)顔に使用する場合は眼は閉じ、幼児や子供の場合はマスクをする。3)10cm〜20cmほど離して装置を持つ。4)装置のアクチュエータを押し、水ベース粒子を放出する。5)数秒あるいは必要なだけ使用し、治療部位は触らずに乾くまでそのままにしておく。症状が緩和されるまで何回も繰り返す。6)慢性の病状や治癒過程を促進させるため、症状が緩和もしくは消失するまで1日4回、1回は就寝前に使用する。
【0032】
≪臨床試験1≫
平均年齢32.51±21.48の94人の患者(女性52人、男性42人)が、かゆみを消失または緩和するN1の有効性を評価するため非盲検試験に参加した。患者はアトピー性皮膚炎(22人)、接触性皮膚炎(6人)、乾せん症(8人)、じんま疹(15人)、乾燥症(6人)、あせも(8人)、皮膚アレルギー(7人)、手湿疹(7人)、毒ツタ(3人)、扁平苔癬(8人)、昆虫刺症(4人)による重度のかゆみを被っている。患者は、N1のサンプルと3日間の自己モニター期間のため自宅にアンケートを持ち帰った。患者はアンケートに記入して4日後に再度来るよう指示された。アンケートには、0(かゆみなし)〜10(非常にかゆい)に格付けされている10cmの視覚アナログ尺度(VAS)が添付された。患者は、3度極度のかゆみ(VAS=10)に襲われた後にN1を使用し、かゆみの度合いと1〜72時間(3日間)の間で使用後ごとにかゆみが緩和された時間を記入した。末梢、かゆみの緩和、就寝パターンへの影響の観点から、患者が過去にかゆみの消失または緩和に使用した通常の治療法より効果的であったかどうか、また副作用を経験したかどうか、患者にN1の効果を評価してもらった。
【0033】
全患者が、かゆみレベルVAS=10からスタートした。82%(77人)が、N1使用数秒後(かゆみの即座の緩和)にVASのゼロ(かゆみの消失)、8.5%(8人)がVASの1〜5(低〜中程度のかゆみ)、9.5%(9人)がVASの6〜10(中程度〜極度のかゆみ)を体験した。
【0034】
27.6%(26人)の患者が一度極度のかゆみに襲われたが、N1使用後は3日間のモニター期間中かゆみがなかった。72%(68人)が二度極度のかゆみに襲われ、64.8%(61人)が、同じモニター期間中に3度極度のかゆみに襲われた。
【0035】
N1使用後かゆみがない時と、かゆみ/かき傷サイクルの遮断は2時間〜72時間(3日間の自己モニター期間)、平均して32.03±27.25時間である。かゆみがない時間が一番長かったのは接触性皮膚炎のケース(48±18.59時間)で、次にあせものケース(47.79±26.95時間)と続く。かゆみがない時間が一番短かったのは乾せん症のケース(5.85±3時間)であった。11グループ間のかゆみサイクルの遮断時間の相違点は、統計的に有意である。(F11186=6.672、P=0.0001)
【0036】
N1を使用した89人の患者が、就寝パターンをアンケートに記入した。73%(65人)が朝まで就寝した。19%(17人)が、わずかな睡眠障害を体験し、7.8%(7人)が重度の睡眠障害を体験した。
【0037】
87人の患者がかゆみ止めの薬を好むとアンケートに記入した。82.7%(72人)がN1は過去に服用していた従来の薬より効果があり、使い方が簡単と答え、9%(8人)が従来の薬の方が効果的と答え、8%(7人)が従来の薬とN1の差はないと回答した。副作用は確認されなかった。
【0038】
≪臨床試験2≫
125人の患者が比較的、ランダム、単一オブザーバーで管理された臨床試験に参加した。この試験では2週間で最も一般的な皮膚病である(1)アトピー性皮膚炎の治療(2)アトピー性皮膚炎の症状の治療、および系統的障害である(i)乾燥(ii)苔癬化(iii)ひび割れ(iv)紅はん(v)発汗(vi)表皮剥脱(vii)かゆみにおけるN1とハイドロコルチゾン1%の有効性と安全性を比較する。患者は、2週間N1を使用した61人のグループ1(男性25人(41%)、平均年齢31.45±14.95歳、女性36人(59%)、平均年齢29.73±16.47歳)と、ハイドロコルチゾン1%を2週間使用した64人のグループ2(男性26人(40%)、平均年齢30.26±14.65歳、女性38人(60%)、平均年齢29.48±14.64歳)に分けられた。両グループの男性と女性の年齢の違いは、統計上に問題はなく、それぞれt=0.551、P=0.582とt=1.307、P=0.194である。N1グループ全体での年齢層は6歳から59歳に渡り、全体の平均年齢は30.44±17.96歳である。ハイドロコルチゾングループの年齢層はN1グループと類似しているが、平均年齢は28.03±18.1歳である。しかしt=0.197、P=0.844なので統計上問題はない。男性と女性は同様に2つのグループに分けられており、2グループで男性はほぼ40%を占める。類似した分布は、カイ自乗検定=0.001、P=0.976の時、統計上に差がないため適合試験に適している。
【0039】
両グループの結果を測定するのに用いるスコアシステムはSASSAD(Six area, six sign atopic dermatitis)重傷度スコアという(Jones JB.「SASSAD(Six area, six sign atopic dermatitis)重傷度スコア:アトピー性皮膚炎における疾患活動性のモニタリングのための簡単なシステム(Six area, six sign atopic dermatitis (SASSAD) severityscore: A simple system for monitoring disease activity in atopic dermatitis)」、Br J Dermatol. (1996年); 135 (Suppl 48): 25-30)アトピー性皮膚炎の6つの兆候は、N1とハイドロコルチゾングループの各患者の体の6カ所から測定される。その兆候は、乾燥、苔癬化、ひび割れ、紅はん、発汗、表皮剥脱、かゆみである。体の6カ所とは、頭、首、背中、腕、手、脚、足である。疾患部位の重症度は、0、1、2で、それぞれ疾患なし、軽症、やや重傷および重傷と評価される。体の各部位における各兆候は、各兆候とも最高18ポイントである。6つの兆候は客観的に医師により入念かつ客観的に評価される。主観的症状であるかゆみは患者に評価してもらう。
【0040】
アトピー性皮膚炎の診断は、Hanifin J. M, Rajka G.「アトピー性皮膚炎の診断上の特徴(Diagnostic Features of Atopic Dermatitis)」 Acta Derma(ストック) Suppl.92: 44-47, (1980年)に基づく。各患者のSASSADスコアは、N1かハイドロコルチゾン1%の治療をした1週間後と2週間後にベースラインで評価される。
【0041】
表1は試験した2グループのN1とハイドロコルチゾン1%の治療の1週間目と2週間目の前後のSASSADスコアを示している。N1とハイドロコルチゾングループ双方のベースラインにおけるSASSADスコアの統計的な相違は、観察されない。平均スコアはそれぞれ17.53±7.85と17.52±7.37、t=0.132とP=0.99である。しかし、1週間の両方の薬の定期的使用後、統計的に大きな差異が認められた。N1グループの平均SASSADスコアはt=−9.15、P=0.0001のとき、それぞれ4.04±6.1と12.82±8.34とハイドロコルチゾングループより遥かに低かったのである。
【0042】
【表1】

表1:2グループのN1とハイドロコルチゾンを使用した前後の平均SASSADスコア。
【0043】
ハイドロコルチゾングループの9人(3.81%)に比べ、N1グループの患者25人のアトピー性皮膚炎が改善された(SASSAD=0)。残りの患者は2週間目の治療を続け、N1とハイドロコルチゾングループのSASSADスコアは減少し、それぞれ2.86±5.73と8.4±6だった。両スコア間の差は、統計上t=−6.27、P=0.0001において有意である。
【0044】
治療期間(2週間)中の両グループのSASSADスコアの減少を表2に示した。N1グループのSASSADスコアは治療前の17.53±7.85から治療1週間後4.04±6.16に減少した。この減少は統計上、t=20.12、P=0.0001において有意である。36人の患者が2週間目の治療を続け、スコアが2.86±5.73に達した、統計上t=5.41、P=0.0001の減少と有意である。
【0045】
似た結果がハイドロコルチゾンのグループにも見られた。1週間目の治療の前後のスコアは、t=8.83、P=0.0001において17.51±7.37から12.52±8.34と大幅に減少した。2週間目の治療を続けた55人の患者が、8.4±6とスコアをさらに減らし、この減少は統計上、t=10.39、P=0.0001と有意である。
【0046】
SASSADスコアが0〜1の場合、炎症が改善されたと見なされる。従って、治療の1週間後、N1グループで患者23人(37.7%)がスコア0、2人(3.2%)がスコア1を記録した。よって、ハイドロコルチゾンの14%に比べると、42.7%のN1グループの患者が1週間の治療後アトピー性皮膚炎を改善した。2週間後、ハイドロコルチゾングループの4人(6.3%)に比べ、N1グループの24人(39%)の患者がアトピー性皮膚炎を改善した。
【0047】
試験は2週間の治療後、ハイドロコルチゾングループの11%に比べ、81.4%のN1グループがアトピー性皮膚炎を改善したことを明白に示している。
【0048】
【表2】

表2:2週間後のN1およびハイドロコルチゾングループのSASSADスコアの平均変化。
* ペアt検定はベーススコアと第1週間目のスコア間で計算した。
** ペアt検定はベーススコアと第2週目のスコア間で計算した。
両グループの2週間に渡る個々のアトピー性皮膚炎患者の検査は以下の所見を明らかにした。
【0049】
(乾燥)
表3に両グループ間の均平均乾燥スコアの比較を示す。両グループ間にわずかな違いがベースラインでみられるが、違いは1週間目と2週間目の治療後に増加する。N1グループは平均スコアが1週間後3.66±2.56から1.31±1.8に大幅に減少し、2週間後には0.76±1.4に達した。この減少は、1週間後および2週間後それぞれウィルコクソン符号順位検定=−9.04、P=.000およびウィルコクソン符号順位検定=−5.87、P=.000と統計上有意である。図1は両グループの平均乾燥スコアを示す。
【0050】
【表3】

表3:各グループのN1とハイドロコルチゾン使用前後の平均乾燥スコア。
【0051】
(苔癬化)
N1とハイドロコルチゾングループの苔癬化スコアの差を表4に示す。スコアはベースラインで両グループとも大幅に減少したが、N1グループが、治療前の1.83±2.1から治療1週間後の0.65±1.3、治療2週間後の0.46±.91とより明瞭に減少した。ハイドロコルチゾングループは治療前の2.44±1.7から治療1週間後の1.55±1.9、治療2週間後の.82±1.3まで減少した。
【0052】
N1グループの数値は、第1週目および2週間目それぞれウィルコクソン符号順位検
定=−7.54、P=.000およびウィルコクソン符号順位検定=−3.86、P=
.000である。ハイドロコルチゾングループの値は、第1週目および2週間目それぞ
れウィルコクソン符号順位検定=−6.27、P=.000およびウィルコクソン符号
順位検定=−4.27、P=.000である。図2は、試験期間中の各グループの苔癬
化の平均スコアを示す。
【0053】
【表4】

表4:各グループのN1とハイドロコルチゾン使用前後の平均苔癬化スコア。
【0054】
(ひび割れ)
ひび割れは両治療に反応した。ベースラインで両グループのスコア差は小さい。しか
し、1週間後および2週間後のN1グループのスコアは、ハイドロコルチゾンの半分の
値である(両グループの数値は、それぞれ1週間後0.21±.78および0.44±
.84、2週間後0.1±.16および0.21±.61)。治療中のスコアの減少は
、両グループとも表5に示すとおり統計上有意である(N1グループの1週目および2
週目の数値は、それぞれウィルコクソン符号順位検定=−6.15、P=.000およ
びウィルコクソン符号順位検定=−2.97、P=.003、ハイドロコルチゾングル
ープの1週目および2週目の数値は、それぞれウィルコクソン符号順位検定=−6.2
9、P=.000およびウィルコクソン符号順位検定=−3.59、P=.000)。
図3は、試験期間中の各グループのひび割れの平均スコアを示す。
【0055】
【表5】

表5:各グループのN1とハイドロコルチゾン使用前後の平均ひび割れスコア。
【0056】
(紅はん)
N1グループの平均紅はんスコアは、ベースラインにおいてハイドロコルチゾングル
ープに比べ非常に高い(N1およびハイドロコルチゾングループそれぞれ4.6±2.
3および3.6±2.5)。しかし、N1のスコアは第1週および第2週で、それぞれ
マンホイットニーU検定=−8.21、P=.000およびマンホイットニーU検定=
−5.17、P=.000と低い。両グループの1週間後と2週間後のスコアの減少は
表6に示すとおり、統計上有意である。N1グループの1週目および2週目の数値は、
それぞれウィルコクソン符号順位検定=−8.96、P=.000およびウィルコクソ
ン符号順位検定=−3.04、P=.003、ハイドロコルチゾングループの1週目お
よび2週目の数値は、それぞれウィルコクソン符号順位検定=−4.98、P=.00
0およびウィルコクソン符号順位検定=−6.46、P=.000である。図4は、試
験期間中の各グループの紅はんの平均スコアを示す。
【0057】
【表6】

表6:各グループのN1とハイドロコルチゾン使用前後の平均紅はんスコア。
【0058】
(発汗)
ベースラインで両グループの発汗スコア差(マンホイットニーU検定=.626、P
=.531)は、統計上小さい。1週間後のN1グループの平均スコアは、ハイドロコ
ルチゾングループのスコアより低い(それぞれ0.54±1.3および2.5±2.4
)。表7で示すように、2週間後でも両グループには大きな差がある(それぞれ0.5
5±1.4および1.67±1.79)。平均スコアは両グループで減少し、N1グル
ープの1週目および2週目の数値は、ウィルコクソン符号順位検定=−8.58、P=
.000およびウィルコクソン符号順位検定=−2.21、P=.027、またハイド
ロコルチゾングループの1週目および2週目の数値は、ウィルコクソン符号順位検定=
−4.98、P=.000およびウィルコクソン符号順位検定=−6.64、P=.0
00となっている。図5は試験期間中の両グループの発汗の平均スコアを示す。
【0059】
【表7】

表7:各グループのN1とハイドロコルチゾン使用前後の平均発汗スコア。
【0060】
(表皮剥脱)
表8より、両グループの平均表皮剥脱のスコア差は、統計上ベースラインで有意であ
り、マンホイットニーU検定=−1.31、P=.191となっている。しかし、1週
間後および2週間後では、それぞれマンホイットニーU検定=−6.43、P=.00
0およびマンホイットニーU検定=5.81、P=.000と差は明確になっている。
N1の平均スコアは、1週間後にベースラインで3.16±2.4から0.54±1.
16へ、2週間後に0.51±1.3へと大幅に減少し、この減少は1週間後にウィル
コクソン符号順位検定=−8.01、P=.000、また2週間後にウィルコクソン符
号順位検定=−2.85、P=.005となり統計上有意である。同じく、ハイドロコ
ルチゾングループの平均スコアも減少し、1週間後にウィルコクソン符号順位検定=−
5.51、P=.000、また2週間後にウィルコクソン符号順位検定=−3.62、
P=.005となり統計上有意である。図6は、試験期間中の両グループの表皮剥脱の
平均スコアを示す。
【0061】
【表8】

表8:各グループのN1とハイドロコルチゾン使用前後の平均表皮剥脱スコア。
【0062】
(かゆみ)
自覚症状の性質上、全患者は、VAS(視覚アナログ尺度:0=かゆみなし〜10=非常にかゆい)を4日間の体薬期を経て5日目、6日目、7日目の朝と夜の1日2回、自宅にて記入してもらった。表9は、各自が行った記入結果をもとに、両グループの治療後のVASの平均スコアを表す。N1グループは、5日目、6日目、7日目をとおしてVASスコアにおいて大幅な減少を示した。ペアt検定は、5日目に6.96(P=0.001)、6日目に6.74(P=0.001)、7日目に2.76(P=0.006)に減少した。ハイドロコルチゾングループのVASスコアは、5日目の朝8.01±1.65から7.69に減少し、夜のペアt検定は7.69(P=0.020)であった。また6日目には、ペアt検定は2.35(P=0.020)に減少した。一方、7日目のVASスコアは6.63±1.93から6.58±1.97に減少したが、このわずかの減少は、統計上ペアt検定は0.86、P=0.386で統計上有意ではない。
【0063】
両グループの抗そう痒治療におけるN1とハイドロコルチゾンの有効性の比較を表10に示した。N1グループのN1使用後の平均VASは、治療5日目の朝に2.53±1.26に達し、7日目の夜に0.92±1.57に減少した。この減少は、ペアt検定=20.998、P=0.0001と統計上有意である。しかし、ハイドロコルチゾングループのVASスコアは、ハイドロコルチゾン治療の5日目の朝の8.01±1.65から、6.58±1.97に減少した。この減少は、ペアt検定=20.07、P=0.001と、同じく統計上有意であるが、このグループの達成したVASはN1グループよりも劣り、5日目の朝はペアt検定=−32.79、P=0.0001で7日目の夜はペアt検定=−27.95、P=0.001であった。3日間の自己モニター期間中、N1使用後かゆみのない期間は平均12.01±11.89時間であった。これに対応するハイドロコルチゾンの数値は、平均1.76±1.21時間であった。
【0064】
【表9】

表9:両グループの5、6、7日目の朝/夜の視覚アナログ尺度(VAS)の記録。
【0065】
【表10】

表10:両グループの5日目朝と7日目夜のVASの記録の比較。
【実施例2】
【0066】
アエロディスペンサは以下の成分を含む。
(成分) (重量%)
水 57.0%
メチラール 4.69%
エタノール 3.3%
α−トコフェロール 1.7%
芳香剤 0.05%
ホウ酸エタノールアミン 0.01%
ジメチルエーテル 26.25%
LPガス 7.0%
(合計 100%)
20℃での圧力 :4.8バール
粒子径 :70ミクロン
20℃での放出速度 :0.9gm/秒
20℃での放出角度 :30°
pH :6.9
20℃での粘度 :0.73
【0067】
≪臨床試験3≫
実施例2で詳述する本発明の噴霧装置の新しい治療は、臨床試験においてN2とする。
【0068】
平均年齢29.87±19.64の患者87人(女性47人、男性40人)が、痛みの末梢または緩和におけるN2の有効性を評価するため非盲検試験に参加した。患者は、骨関節炎(26人)、背通(20人)、帯状疱疹(9人)、やけど(10人)、多発硬化症(7人)、じん帯離れ(7人)、術後痛(8人)で極度の痛みを被っている。患者はN2のサンプルを与えられ、3日間の自己モニターのためにアンケートを家に持ち帰った。患者はアンケートを記入して4日後に再度来るよう指示された。アンケートには、0(痛みなし)〜10(非常に痛む)に格付けされている10cmの視覚アナログ尺度(VAS)が添付された。患者は、3回極度の痛み(VAS=10)に襲われたあとでN2を使用し、痛みの度合いと1〜72時間(3日間)の間で使用後ごとに痛みが緩和された時間を記入した。消失、痛みの緩和、就寝パターンへの影響の観点から、患者が過去に痛み消失または緩和に使用した通常の治療法より効果的であったかどうか、また副作用を経験したかどうか、患者にN2の効果を評価してもらった。
【0069】
全患者が、痛みレベルVAS=10からスタートした。78%(68人)が、N2使用数秒後(極度の痛みの即座の緩和)にVASゼロ(痛みの消失)、11.4%(10人)がVASの1〜5(低〜中間の痛み)、10.3%(9人)がVASの6〜10(中間〜極度の痛み)を体験した。
【0070】
13.8%(12人)の患者が一度激痛に襲われたが、N2使用後は3日間のモニター期間中痛みがなかった。86.2%(75人)が二度極度の痛みに襲われ、71%(62人)が、同じモニター期間中に3度極度の痛みに襲われた。
【0071】
N2使用後痛みがない時間は1〜72時間(3日間の自己モニター期間)、平均して26.02±16.26である。痛みがない時間が一番長かったのは、術後痛のケース(52±14.32時間)で、次に帯状疱疹(46.02±24.34)のケースと続く。痛みがない時間が一番短かったのはじん帯離れ(2.87±1.56時間)のケースであった。7グループ間の痛みがない時間における相違点は、統計的に有意である(P=.0001)。
【0072】
N2を使用した70人の患者が、就寝パターンをアンケートに記入した。68.5%(48人)が朝まで就寝した。24.5%(17人)が、わずかな睡眠障害を体験し、7.0%(5人)が重度の睡眠障害を体験した。
【0073】
68人の患者が鎮痛薬を好むとアンケートに記入した。75%(51人)が、N2は過去に服用していた従来の薬より効果があり、効き目がはやく使い方が簡単と答え、14.7%(10人)が従来の薬とN2の差はないと回答した。
【実施例3】
【0074】
アエロディスペンサは以下の成分を含む。
(成分) (重量%)
水 59%
メチラール 6.2%
エタノール 5.1%
メントール 1.5%
インドメタシン 0.2%
ジメチルエーテル 28%
(合計 100%)
20℃での圧力 :4.1バール
粒子径 :30ミクロン
20℃での放出速度 :0.8gm/秒
20℃での放出角度 :33°
pH :7.8
20℃での粘度 :0.82
【実施例4】
【0075】
アエロディスペンサは以下の成分を含む。
(成分) (重量%)
水 62.85%
メチラール 5.1%
エタノール 5.0%
メントール 1.5%
サリチル酸メチル 0.2%
安息香酸/ジナトリウムドデセニル−スルホこはく酸
0.35%
ジメチルエーテル 25%
(合計 100%)
20℃での圧力 :4.5バール
粒子径 :60ミクロン
20℃での放出速度 :0.85gm/秒
20℃での放出角度 :31°
pH :8.2
20℃での粘度 :0.77
【0076】
試験は、市場で入手可能な製品(スキン冷却商品)、TENSまたは上に詳述した在宅治療と3つの刺激(冷却、機械的、化学的)または2つの刺激(冷却、機械的)が同患者の同部分に同時に作用する上記の実施例1、2で説明した噴霧装置を使用して、個々および持続的に作用する各刺激(冷却、機械的、化学的)の結果を比較するのに行われた。3つまたは2つの刺激の同時使用は劇的な結果をもたらし、3つまたは2つの刺激を個々および持続的に使用するよりはるかに効果的であると立証された。子供を含む患者のコンプライアンスは、便利、使用が簡単、携帯式のため同時刺激の使用において優れていることが判明した。本発明の装置の実施形態は、実施例1、2で詳述したように、非ステロイドで粒子は布にシミをつけない。3つの臨床試験において、副作用は記録されなかった。
【0077】
本発明の噴霧装置は症状を緩和するだけでなく、上に示した2つの臨床試験が立証したように、先に述べたどの刺激も個々の作用で改善された例がないアトピー性皮膚炎のような慢性疾患を治療する。臨床試験2において本発明の組成物を含む噴霧装置の実施例の結果は、従来の治療法ハイドロコルチゾンの結果より有意義で優れている。さらに、上で詳述した臨床試験1、2、3を通して副作用はなく、本発明の装置の患者のコンプライアンスは、ステロイド性ハイドロコルチゾン1%、冷却製品または在宅治療として知られる従来の治療法より優れている。
【0078】
本発明によると本噴霧装置と組成物は、以下の1つまたはそれ以上の疾患や病気の症状の治療に効果がある。しかし、本発明はこれらだけに限定されない。
【0079】
リウマチや筋肉痛などの慢性または急性の痛み、関節炎、リウマチ性関節炎、骨関節炎、顔面神経麻痺(ベル麻痺)、背痛または腰痛、腰疝痛、線維筋痛、クラスタ、緊張性頭痛または頭痛、偏頭痛、生理痛(月経困疼痛)、頸痛、座骨神経痛、帯状疱疹(PHN)、陣痛、三叉神経痛、むち打ち症、頸部損傷、歯痛、スポーツ傷害、末梢神経損傷、関節痛、幻肢痛、術後痛、筋肉痛、やけど、刺痛または拍動痛、滑液包炎、灼熱痛、多発硬化症、結合組織炎、神経痛、ライナウド症候群、滑膜炎、糖尿病末梢神経疾患などの全身痛、歯牙障害、脊椎症、ねんざ/歪み、後頭痛、顎関節症候群、斜頚などの頭痛や頸痛、腹痛(憩室症)、椎間症候群、IVD症候群、仙腰痛、神経根炎、胸痛などの背痛、足関節痛、足部痛、骨折、坐骨神経痛、膝痛、緊張隔壁腔の痛み、腱炎、血栓静脈炎、じん帯離れ、痛風、足部痛などの下肢痛、上顆炎、肩関節周囲炎、手の痛み、手首痛などの四肢痛。
【0080】
全身性または局所的かゆみ、肌の乾燥、苔癬化、ひび割れ、紅はん、発汗、表皮剥脱、すり傷、膨疹、スケール、潰瘍、丘疹、小疱疹、浮腫、かさぶた、かいせん症、じんま疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、神経皮膚炎、偏平苔癬、疱疹状皮膚炎、乾せん、バラ色粃糖疹、乾燥症、個人的そう痒、薬剤反応、アレルギー、胆汁鬱滞など系統的障害に関係するかゆみ、水疱性類疱瘡、バクテリアおよびウィルス感染、ヘルペス、日焼け、昆虫刺症、うるしかぶれ、接触性皮膚炎、あせも、手湿疹、発疹、皮膚炎症、皮疹、皮膚の紅潮、水痘、帯状疱疹、菌、感染、妊娠や授乳、更年期障害に関係する皮膚の状態。
本発明における上述の臨床試験の結果は、主に好適な実施形態およびその実践を対象としている。ここで記述した本発明の実施におけるさらなる変更や修正は、以下の特許請求の範囲に規定される本発明の意図と範囲から逸脱することなく容易に行うことが可能なのは、当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】両グループの平均乾燥スコアを示す。
【図2】試験期間中の各グループの苔癬化の平均スコアを示す。
【図3】試験期間中の各グループのひび割れの平均スコアを示す。
【図4】試験期間中の各グループの紅はんの平均スコアを示す。
【図5】試験期間中の両グループの発汗の平均スコアを示す。
【図6】試験期間中の両グループの表皮剥脱の平均スコアを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が20℃で0.2から30mPa.sである不燃性で水ベースの組成物を含む噴霧装置であって、前記装置は、皮膚または身体組織を冷却するため、および身体においてパルスを生成するために、熱および機械的運動エネルギーによる刺激をそれぞれ同時に局所的に与えるため、20℃でジメチルエーテル、LPガス、または両方を混合したものを使用して生じた0.5〜11バールの圧力下で、20℃で毎秒0.1〜8gm/秒、20℃で0度〜145度の角度で低温の水ベース粒子を放出するよう構成され、前記水ベース粒子は、温度が0℃より高くかつ周囲温度より低く、粒子径が10〜600ミクロンである、前記装置。
【請求項2】
加圧ガスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
本発明の装置が生成するよう構成される低温の水ベース粒子は、pHが7.01〜12.6であり、さらにそれにより皮膚または身体組織に化学的刺激を与えることができる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、20℃で1.0〜8.0バールの圧力で低温の水ベース粒子を放出するよう構成される、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、粒子径が15〜300ミクロンの低温の水ベース粒子を放出するよう構成される、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、粒子径が10〜250ミクロンの低温の水ベース粒子を放出するよう構成される、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、20℃で0.4〜3gm/秒の放出速度で低温の水ベース粒子を放出するよう構成される、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、20℃で0.2〜5gm/秒の放出速度で低温の水ベース粒子を放出するよう構成される、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、20℃で5〜60度の放出角度で低温の水ベース粒子を放出するよう構成される、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記水ベースの組成物の粘度が20℃で0.3〜15mPa.sである、前記請求項のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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