説明

複数の移動端末の同行状態を推定する同行判定装置、移動端末、プログラム及び方法

【課題】移動端末の計測誤差が不明であっても、複数の移動端末における同行状態を精度良く推定することができる同行判定装置、移動端末、プログラム及び方法を提供する。
【解決手段】前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、その差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する変動角算出手段と、変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出するピーク時点抽出手段と、ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、該直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定するカーブ区間判定手段と、移動端末同士のカーブ区間を比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する進行方位角差分抽出手段と、進行方位角θの差分の分散が、閾値以下となる場合に、軌跡類似と判定する軌跡類似判定手段とを有し、軌跡類似と判定された移動端末同士は、「同行」状態にあると推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動端末の同行状態を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)のような測位部を搭載した移動端末(例えば携帯電話機やスマートフォン)が普及している。移動端末を操作するユーザは、測位部によって、自己の位置を計測すると共に、時間経過に応じた移動履歴を記録することもできる。これら移動履歴を用いて、他の移動端末と同行して移動しているか否かを判定することもできる。その判定結果を用いて、ユーザに対して様々なサービスを提供することもできる。
【0003】
従来、複数の移動端末の同行状態を推定するために、2つの移動端末について同一時刻における位置情報から距離を算出し、その距離が所定閾値以下となっているか否かによって判定する技術がある(例えば特許文献1参照。)。この技術によれば、GPSを用いているために、上空に対して見通しの悪い場所では計測誤差を含む場合が多い。これによって、移動端末の同行状態の推定精度も低下する。特に、移動履歴には、場所に応じて計測精度の良/悪が混在することとなり、移動端末間の距離を閾値で判定することは、同行状態の推定精度に更に悪影響を及ぼす。
【0004】
これに対し、移動端末間の距離のほかに、測位部の計測精度に基づいて各位置で算出された誤差距離を用いる技術もある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、誤差距離の合計値を合成誤差距離とし、移動端末間の距離と合成誤差距離とに基づいて同行度を算出し、同行度及び合成誤差距離を所定閾値と比較することによって、同行状態を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−118290号公報
【特許文献2】特開2010−96633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された技術によれば、計測精度が不明である場合には、この技術を利用できない。また、「疑わしきは同行」と判定する特性もある。この特性は、相対距離に対して計測誤差の割合が大きい場合、「同行となりやすくなる」ことを意味する。言い換えると、計測誤差が増加するに従って、同行又は非同行の境界線(閾値)が、「同行」に有利なように動くことを意味する。この特性は、同行時に「同行である」と判定される精度には貢献するが、非同行時に「同行である」と判定されるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、移動端末の計測誤差が不明であっても、複数の移動端末における同行状態を精度良く推定することができる同行判定装置、移動端末、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、時刻毎における移動端末の位置情報を記憶し、複数の移動端末の同行状態を推定する同行判定装置であって、
所定方位に対する、前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、進行方位角θt-1と進行方位角θtとの差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する変動角算出手段と、
変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出するピーク時点抽出手段と、
ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、該直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定するカーブ区間判定手段と、
第1の移動端末のカーブ区間と、第2の移動端末のカーブ区間とを比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する進行方位角差分抽出手段と、
第1の移動端末及び第2の移動端末について、進行方位角θの差分の分散が、閾値以下となる場合に、軌跡類似と判定する軌跡類似判定手段と
を有し、軌跡類似と判定された第1の移動端末及び第2の移動端末は、「同行」状態にあると推定することを特徴とする。
【0009】
本発明の同行判定装置における他の実施形態によれば、カーブ区間判定手段は、更に最大時間T以内の直線移動区間のみを抽出することも好ましい。
【0010】
本発明の同行判定装置における他の実施形態によれば、軌跡類似と判定されなかった場合、第1の移動端末及び第2の移動端末の間の距離を判定し、当該距離が所定閾値以上離れている場合に、「非同行」にあると判定する追跡手段を更に有することも好ましい。
【0011】
本発明によれば、前述の同行判定装置を搭載した移動端末であって、
現在の位置情報を測位する測位部と、
相手側移動端末又はサーバから、相手側移動端末の位置情報を受信する通信インタフェース部と
を有すると共に、
測位部から出力された自側移動端末の位置情報と、通信インタフェース部から出力された相手側移動端末の位置情報とが共に、時間経過に応じて移動している場合にのみ、自側移動端末の位置情報と相手側移動端末の位置情報とを、変動角算出手段へ出力する位置推定手段を更に有することも好ましい。
【0012】
本発明の移動端末における他の実施形態によれば、
軌跡類似判定手段は、自側移動端末及び相手側移動端末が軌跡類似と判定された際に、進行方位角の差分を位置推定手段へ出力し、
位置推定手段は、自側移動端末の位置情報に対する相手側移動端末の位置情報に、進行方位角の差分をオフセットとして含めることも好ましい。
【0013】
本発明によれば、時刻毎における移動端末の位置情報を記憶し、複数の移動端末の同行状態を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させる同行判定プログラムであって、
所定方位に対する、前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、進行方位角θt-1と進行方位角θtとの差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する変動角算出手段と、
変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出するピーク時点抽出手段と、
ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、該直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定するカーブ区間判定手段と、
第1の移動端末のカーブ区間と、第2の移動端末のカーブ区間とを比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する進行方位角差分抽出手段と、
第1の移動端末及び第2の移動端末について、進行方位角θの差分の分散が、閾値以下となる場合に、軌跡類似と判定する軌跡類似判定手段と
してコンピュータを機能させ、軌跡類似と判定された第1の移動端末及び第2の移動端末は、「同行」状態にあると推定することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、時刻毎における移動端末の位置情報を記憶し、複数の移動端末の同行状態を推定する装置における同行判定方法であって、
所定方位に対する、前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、進行方位角θt-1と進行方位角θtとの差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する第1のステップと、
変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出する第2のステップと、
ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、該直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定する第3のステップと、
第1の移動端末のカーブ区間と、第2の移動端末のカーブ区間とを比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する第4のステップと、
第1の移動端末及び第2の移動端末について、進行方位角θの差分の分散が、閾値以下となる場合に、軌跡類似と判定する第5のステップと
を有し、軌跡類似と判定された第1の移動端末及び第2の移動端末は、「同行」状態にあると推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の同行判定装置、移動端末、プログラム及び方法によれば、移動端末の計測誤差が不明であっても、複数の移動端末における同行状態を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】複数の移動端末における同行状態を表す説明図である。
【図2】本発明における同行推定装置の機能構成図である。
【図3】移動端末における進行方位角の変動角を表す説明図である。
【図4】ピーク時点を表すグラフである。
【図5】連続するピーク時点を表すグラフである。
【図6】カーブ区間における進行方位角の差分φを表す説明図である。
【図7】2つの移動端末における進行方位角の差分φの分散を表すグラフである。
【図8】本発明における移動端末の機能構成図である。
【図9】位置推定部におけるオフセットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は、複数の移動端末における同行状態を表す説明図である。
【0019】
移動端末1は、測位機能を備えており、GPS衛星2からの測位電波を受信することによって現在位置を取得することができる。その位置情報は、ネットワークを介して、同行推定装置や、他の移動端末へ送信することができる。
【0020】
図1によれば、移動端末A〜Cを所持するユーザa〜cにおける歩行状態を表している。ここで、ユーザa及びユーザbは同行状態にあるが、ユーザcだけは、同行状態にない。「同行状態」とは、複数のユーザが一緒に移動している状態を意味する。そのために、同行状態にある複数のユーザは、移動軌跡が同じとなる。
【0021】
複数のユーザの同行状態を判定することによって、様々なサービスに適用できる。例えば、互いに視界に入らない状態で移動していても、一方の移動端末を所持するユーザは、他方の移動端末を所持するユーザが一緒に同行しているか否かを知ることができる。このような移動は、歩行に限られず、車両の走行であってもよい。また、多数の移動端末の移動軌跡を蓄積した位置情報データベースを用いることによって、同行状態にある複数の移動端末を抽出することもできる。
【0022】
図2は、本発明における同行推定装置の機能構成図である。
【0023】
図2によれば、同行推定装置1は、複数の移動端末の同行状態を推定するものであって、ネットワークに接続された通信インタフェース101と、多数の移動端末における時刻毎の位置情報を蓄積した位置情報データベース102とを有する。位置情報データベース102は、移動端末識別子と、時刻と、位置情報とを対応付けて記憶する。
移動端末識別子 <-> 時刻 <-> 位置情報
【0024】
また、図2によれば、同行推定装置1は、変動角算出部111と、ピーク時点抽出部112と、カーブ区間判定部113と、進行方位角差分抽出部114と、軌跡類似判定部115と、追跡部116と、アプリケーション処理部120とを有する。これら機能構成部は、同行推定装置1に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、各機能構成部の信号の流れは、同行推定装置における処理方法として認識される。
【0025】
変動角算出部111は、所定方位に対する、前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、進行方位角θt-1と進行方位角θtとの差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する。
【0026】
図3は、移動端末における進行方位角の変動角を表す説明図である。
【0027】
図3によれば、所定方位として「北」を基準としている。そして、時刻毎に、所定方位「北」に対する進行方位角θが算出されている。進行方位角θは、前時刻の位置情報と現時刻の位置情報とを比較することによって導出できる。
【0028】
ここで、位置情報は、GPSを用いた絶対測位であってもよいし、相対測位(デッドレコニング)であってもよい。位置情報データベース102が、絶対測位又は相対測位の位置情報を蓄積する。いずれの方法であっても、所定方位「北」に対する進行方位角を導出することができる。
【0029】
変動角算出部111は、以下の式によって変動角Δθtを算出する。
Δθt=arccos(sinθt・sinθt-1+cosθt・cosθt-1) (0≦Δθt≦180)
θt :時刻tにおける進行方向方位角
θt-1:時刻t-1における進行方向方位角
進行方位角は、所定方位に対して時計回りに0°〜359°で表されるために、前述の式によって算出している。
【0030】
ピーク時点抽出部112は、変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出する。「ピーク時点」は、移動軌跡の中で、その時点で曲がったことを意味する。
【0031】
図4は、ピーク時点を表すグラフである。
【0032】
図4のグラフによれば、時間経過に応じた変動角Δθtが表されている。ここで、変動角Δθtが、所定閾値以上変動したピーク時点が表されている。
【0033】
カーブ区間判定部113は、ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、その直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定する。ここで、最少時間τ以上で且つ最大時間T以内の直線移動区間のみを抽出することも好ましい。最少時間τを規定することによって、頻繁なカーブ区間を候補として抽出しない。これによって、候補データの煩雑さを解消する。また、最大時間Tを規定することによって、ほぼ直線しか含まれていないカーブ区間を候補として抽出しない。これによって、単一のカーブ区間のみを用いて同行状態を検出することをしない。
【0034】
図5は、連続するピーク時点を表すグラフである。
【0035】
ピーク・ピーク間を「直線移動区間」と称す。i番目のピーク時点のタイミングをtiとすると、i番目の直線移動区間の長さdiは、以下のように表される。
i=ti−ti-1
このとき、カーブを表す真偽値is_curveは、以下のように表される。
is_curve=true ((τ<di-2<T)∧(τ<di-1<T)∧(τ<di<T))
false (otherwise)
図5のように、移動端末毎に、4つのピーク時点によって結ばれる3つの直線移動区間を単位とした、カーブ区間を判定する。
【0036】
進行方位角差分抽出部114は、第1の移動端末のカーブ区間と、第2の移動端末のカーブ区間とを比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する。ここで、同一時刻における進行方位角の差分は、以下の式によって算出される。カーブ区間内の全ての時刻で、進行方位角の差分φを算出する。
第1の移動端末の進行方位角:θA
第1の移動端末の進行方位角:θB
進行方位角の差分φ
A−θB|≦180の場合、φ=θA−θB ・・・(a)
θA−θB>180 の場合、φ=(θA−θB)−360 ・・・(b)
(−180≦φ≦180)
θA−θB<−180の場合、φ=(θA−θB)+360 ・・・(c)
【0037】
図6は、カーブ区間における進行方位角の差分φを表す説明図である。
【0038】
図6(a)は、上記(a式)を表す。ここでは、|θA−θB|≦180の関係にあって、差分φは、θA−θBによって表される。
図6(b)は、上記(b式)を表す。ここでは、θA−θB>180の関係にあって、差分φは、(θA−θB)−360によって表される。
図6(c)は、上記(c式)を表す。ここでは、θA−θB<−180の関係にあって、差分φは、(θA−θB)+360によって表される。
【0039】
各移動端末の移動軌跡に基づくカーブ区間における進行方位角を比較することによって、移動端末同士の同行状態を推定する。即ち、時間経過に応じて、類似するカーブ区間を有する移動端末同士は、同行状態である可能性が高いと判定できる。一方で、類似するカーブ区間が無い移動端末同士は、同行状態にない可能性があると判定できる。尚、本発明によれば、移動軌跡にカーブ区間が無い場合(直線区間のみの場合)には、追跡部116によって相対距離を算出し、その距離によって同行状態を判定することとなる。
【0040】
軌跡類似判定部115は、第1の移動端末及び第2の移動端末について、進行方位角の差分φの分散が、所定閾値Ψ以下となる場合に、「軌跡類似」と判定する。「軌跡類似」とは、第1の移動端末及び第2の移動端末が「同行」状態にあることを意味する。
【0041】
図7は、2つの移動端末における進行方位角の差分φの分散を表すグラフである。
【0042】
図7のグラフによれば、例えば親子が同行している場合、親が所持する移動端末の進行方位角と、子が所持する移動端末の進行方位角との差分φの変化が表されている。この差分φの分散が所定閾値Ψ以下となるということは、軌跡類似と判定される。
【0043】
尚、2つの移動端末について、進行方位角の時刻が必ずしも同一でなくてもよい。第1の時刻と第2の時刻との間の進行方位角を結んで補完することによって、同一時刻における差分φを算出することができる。
【0044】
追跡部116は、以下の場合に実行される。
(1)位置推定部117によって、自側移動端末及び相手側移動端末のいずれか一方又は両方が停止している場合
(2)カーブ区間判定部113によってカーブ区間無しと判定された場合
(3)軌跡類似判定部によって非類似と判定された場合
ここでは、第1の移動端末及び第2の移動端末の間の距離を判定し、当該距離が所定閾値(例えば20m)以上離れている場合に、「非同行」にあると判定する。一方で、当該距離が所定閾値以上離れていない場合には、「非同行」とは判定されず、「同行」と判定される。
【0045】
時刻tにおける移動端末A及びBの間の距離Dtは、以下のように算出される。
移動端末Aの位置座標(xAt,yAt
移動端末Bの位置座標(xBt,yBt
Dt=√((xAt−xBt)2+(yAt−yBt)2
【0046】
2つの移動端末の移動速度に応じて、追跡部116における判定のための距離の所定閾値は、変動させることも好ましい。歩行程度の移動速度であれば、所定閾値は比較的短く設定され、車速程度の移動速度であれば、所定閾値は比較的長く設定されることも好ましい。
【0047】
アプリケーション処理部120は、軌跡類似と判定された第1の移動端末及び第2の移動端末は「同行」状態にあると推定し、所定のアプリケーションを実行する。また、追跡部116における判定結果に基づいて、「明確に非同行」又は「非同行の可能性あり」と推定する。
【0048】
図8は、本発明における移動端末の機能構成図である。
【0049】
図8の移動端末によれば、図2の同行推定装置の機能構成部を全て備えた上で、測位部103、気圧センサ104又はBluetooth通信部105をオプション的に更に有する。また、位置推定部117と、早期判定部118ともオプション的に更に有する。図2と同様に、位置推定部117及び早期判定部118も、移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0050】
位置推定部117は、測位部103から出力された自側移動端末の位置情報と、通信インタフェース部101から出力された相手側移動端末の位置情報とが共に、時間経過に応じて移動している場合にのみ、自側移動端末の位置情報と相手側移動端末の位置情報とを、変動角算出部111へ出力する。両方の移動端末が移動していることが、同行状態を判定する前提となるからである。勿論、位置推定部117は、同行推定装置が移動端末である場合に限られず、図2の同行推定装置に組み込まれるものであってもよい。
【0051】
また、図8によれば、軌跡類似判定部115は、自側移動端末及び相手側移動端末が軌跡類似と判定された際に、進行方位角の差分を位置推定部117へ出力する。
【0052】
これに対し、位置推定部117は、自側移動端末の位置情報に対する相手側移動端末の位置情報に、進行方位角の差分をオフセットとして含める。勿論、このようなオフセットも、同行推定装置が移動端末である場合に限られず、図2の同行推定装置に組み込まれるものであってもよい。
【0053】
図9は、位置推定部におけるオフセットの説明図である。
【0054】
オフセットは、方位角の差(回転誤差)と、位置の差(平行移動誤差)とを含む。位置推定部は、絶対測位の場合は、相対距離が0となるよう平行移動オフセットを求める。また、相対測位の場合は、双方の座標を(0,0)に設定する。
【0055】
移動端末Aにおける移動端末Bに対する平行移動オフセット(ox,oy)は、移動端末A及びBのカーブ区間内最初の座標を(xA0,yA0),(xB0,yB0)とすると、(xA0−xB0,yA0−yB0)である。また、移動端末Aにおける移動端末Bに対する回転オフセットФは、カーブ区間内の方位角の差分φの平均によって算出することができる。
Ф=arctan(Σsinφi/Σcosφi)
【0056】
早期判定部118は、オプション的に備えられるものであって、「確実に同行」又は「確実に非同行」であることを判定する。既存技術を用いたものであって、例えばBluetooth通信部105における電界強度を用いて、非常に大雑把ではあるが、二者間の相対距離を推定することができる。少なくとも圏外であれば「確実非同行」とすることができる。また、早期判定部118は、気圧センサ104における気圧値(高度)を用いて、二者間の気圧値が著しく異なる場合、フロアが異なるとして「確実非同行」とすることができる。早期判定部118によって、「確実非同行」と判定されない場合、位置推定部117以降の処理によって、「同行」状態を判定する。
【0057】
以上、詳細に説明したように本発明の同行判定装置、移動端末、プログラム及び方法によれば、移動端末の計測誤差が不明であっても、複数の移動端末における同行状態を精度良く推定することができる。
【0058】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0059】
1 同行推定装置
101 通信インタフェース
102 位置情報データベース
103 測位部
104 気圧センサ
105 Bluetooth通信部
111 変動角算出部
112 ピーク時点抽出部
113 カーブ区間判定部
114 進行方向角差分抽出部
115 軌跡類似判定部
116 追跡部
117 位置推定部
118 早期判定部
120 アプリケーション処理部
2 GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻毎における前記移動端末の位置情報を記憶し、複数の移動端末の同行状態を推定する同行判定装置であって、
所定方位に対する、前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、進行方位角θt-1と進行方位角θtとの差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する変動角算出手段と、
前記変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出するピーク時点抽出手段と、
前記ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、該直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定するカーブ区間判定手段と、
第1の移動端末のカーブ区間と、第2の移動端末のカーブ区間とを比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する進行方位角差分抽出手段と、
第1の移動端末及び第2の移動端末について、前記進行方位角θの差分の分散が、閾値以下となる場合に、軌跡類似と判定する軌跡類似判定手段と
を有し、前記軌跡類似と判定された第1の移動端末及び第2の移動端末は、「同行」状態にあると推定することを特徴とする同行判定装置。
【請求項2】
前記カーブ区間判定手段は、更に最大時間T以内の直線移動区間のみを抽出することを特徴とする請求項1に記載の同行判定装置。
【請求項3】
前記軌跡類似と判定されなかった場合、第1の移動端末及び第2の移動端末の間の距離を判定し、当該距離が所定閾値以上離れている場合に、「非同行」にあると判定する追跡手段を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の同行判定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の同行判定装置を搭載した移動端末であって、
現在の位置情報を測位する測位部と、
相手側移動端末又はサーバから、相手側移動端末の位置情報を受信する通信インタフェース部と
を有すると共に、
前記測位部から出力された自側移動端末の位置情報と、前記通信インタフェース部から出力された相手側移動端末の位置情報とが共に、時間経過に応じて移動している場合にのみ、自側移動端末の位置情報と相手側移動端末の位置情報とを、前記変動角算出手段へ出力する位置推定手段を更に有する
ことを特徴とする移動端末。
【請求項5】
前記軌跡類似判定手段は、自側移動端末及び相手側移動端末が軌跡類似と判定された際に、前記進行方位角の差分を前記位置推定手段へ出力し、
前記位置推定手段は、自側移動端末の位置情報に対する相手側移動端末の位置情報に、前記進行方位角の差分をオフセットとして含める
ことを特徴とする請求項4に記載の移動端末。
【請求項6】
時刻毎における前記移動端末の位置情報を記憶し、複数の移動端末の同行状態を推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させる同行判定プログラムであって、
所定方位に対する、前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、進行方位角θt-1と進行方位角θtとの差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する変動角算出手段と、
前記変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出するピーク時点抽出手段と、
前記ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、該直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定するカーブ区間判定手段と、
第1の移動端末のカーブ区間と、第2の移動端末のカーブ区間とを比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する進行方位角差分抽出手段と、
第1の移動端末及び第2の移動端末について、前記進行方位角θの差分の分散が、閾値以下となる場合に、軌跡類似と判定する軌跡類似判定手段と
してコンピュータを機能させ、前記軌跡類似と判定された第1の移動端末及び第2の移動端末は、「同行」状態にあると推定することを特徴とする同行判定プログラム。
【請求項7】
時刻毎における前記移動端末の位置情報を記憶し、複数の移動端末の同行状態を推定する装置における同行判定方法であって、
所定方位に対する、前時刻における進行方位角θt-1と、現時刻における進行方位角θtとを算出し、進行方位角θt-1と進行方位角θtとの差分の大きさとなる変動角Δθtを算出する第1のステップと、
前記変動角Δθtが、増加から減少へ所定閾値以上変動したピーク時点を抽出する第2のステップと、
前記ピーク時点同士の間で、最少時間τ以上の直線移動区間を抽出し、該直線移動区間が3つ以上連続した際に、カーブ区間と判定する第3のステップと、
第1の移動端末のカーブ区間と、第2の移動端末のカーブ区間とを比較し、同一時刻における進行方位角θの差分を抽出する第4のステップと、
第1の移動端末及び第2の移動端末について、前記進行方位角θの差分の分散が、閾値以下となる場合に、軌跡類似と判定する第5のステップと
を有し、前記軌跡類似と判定された第1の移動端末及び第2の移動端末は、「同行」状態にあると推定することを特徴とする同行判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−123702(P2012−123702A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275360(P2010−275360)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】