説明

複数の糸を巻取るための方法及び装置

本発明は、複数の糸を複数のボビンに巻取るための方法及び装置に関する。この場合、複数のボビン(9.1;9.2)が互いに平行に並んで配置された2つのボビンスピンドル(7.1,7.2)に保持されており、これらのボビンスピンドルは、複数のボビンが複数の糸の巻取り中に所定の周速度で逆方向に回転するようになっている。この場合、それぞれ2つの回転可能に支承された圧着ローラ(6.1,6.2)が、ボビン(9.1,9.2)の外周面に当接するボビンスピンドル(7.1,7.2)と協働するようになっている。2つのボビンスピンドル(7.1,7.2)において複数の糸を巻取る間、ボビン(9.1,9.2)のできるだけ同じ周速度を維持するために、一方の圧着ローラ(6.1;6.2)の回転速度を検出して、ボビン(9.1,9.2)の周速度を制御し、検出された回転速度に基づいて、検出された圧着ローラ(6.1,6.2)の回転速度がほぼ一定に維持されるように、2つのボビンスピンドル(9.1,9.2)の駆動回転数を一括して変えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した、複数の糸を複数のボビンに巻取るための方法、並びにこの方法を実施するための、請求項10の上位概念部に記載した装置に関する。
【0002】
最近の傾向では、合成繊維糸を製造するために、1つの紡績部において1つのポリマー溶融物から複数の糸を互いに平行に並んで紡糸し、次いで複数のボビンに巻取るようになっている。従って、10本、12本、16本又はそれ以上の糸を平行に紡糸し、同時に複数のボビンに巻取ることが公知である。この場合、糸の巻取りは巻取り機において行われるが、この巻取り機では複数のボビンが1つのボビンスピンドルで保持され、巻き取られるようになっている。このような形式の巻取り機は、ボビン幅が大きく、また糸の数が多い場合には、相応に長いボビンスピンドルが必要となる。従って、複数の糸を互いに平行に並んで配置された2つのボビンスピンドルにおいて同時にボビンに巻取る、という新たな構想が開発されている。このような形式の方法並びに装置は、国際公開第03/068648号明細書により公知である。
【0003】
公知の方法及び公知の装置においては、複数の糸が同時に、互いに並んで配置された2つのボビンスピンドルにおいて複数のボビンに巻き取られる。このために、複数のボビンスピンドルがそれぞれ1つのスピンドル駆動装置によって駆動される。各ボビンスピンドルには、2つの圧着ローラのうちの1つが対応配置されており、これらの圧着ローラはそれぞれ1つの揺動体を介してボビンスピンドルに対して半径方向で可動に保持されている。複数の糸を複数のボビンに巻取る作業中に、圧着ローラは複数のボビンの外周面に当接している。この場合、ボビン直径が大きくなるにつれて、圧着ローラもボビンスピンドルもその位置を変えることができるようになっている。可動に保持された圧着ローラが付加的に1つのキャリッジによって半径方向でボビンスピンドルに向かって走行可能に構成されていることによって、さらに大きい自由度が得られる。それに加えて、複数の糸が一定の巻取り速度で複数のボビンに巻き取られることを考慮して、複数のボビンをボビンスピンドルによってできるだけ同じ周速度で駆動させる必要がある。しかしながら大きい自由度によって必然的に、2つのボビンスピンドルの複数のボビンが異なるボビン構造を有することになる。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許公開第4018095号明細書によれば、ボビンスピンドルの回転数が圧着ローラの回転数に関連して、周速度がそれぞれ一定の値を得るように制御されるようにした、1つのボビンスピンドルにおいて複数の糸を巻取るための方法が公知である。しかしながらこのような形式で、各ボビンスピンドルにおいて次第に大きくなるボビンの周速度を制御することによって、運動自由度の多様性に基づいて、必然的に種々異なる調節及び巻取りが形成されることになる。従って、従来技術により公知の方法及び公知の装置は、各ボビンスピンドルにおいて、種々異なるボビン構造を有するボビンが形成される、という欠点を有している。従って複数のボビンの周速度のずれに基づいて、巻取り作業中に直接変えなければならない糸張力が生ぜしめられる。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の方法及び装置を改良して、2つのボビンスピンドルにおいて、複数の糸を同時にほぼ均一なボビンが巻き取られるようにすることである。
【0006】
本発明のその他の課題は、巻き取ろうとする糸群の複数の糸に、巻取りによってできるだけ同じ糸張力が形成されるようにすることである。
【0007】
この課題は本発明によれば、請求項1の特徴部を有する方法、及び請求項10の特徴部を有する装置によって解決された。
【0008】
本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載した特徴及びその組み合わせによって規定されている。
【0009】
本発明によれば特に、ボビンの巻取り作業中においてボビンスピンドルの駆動回転数の変化が、共通の調整回路によって制御されるようになっている。これによって複数のボビンスピンドルの駆動回転数の変化が同期的に実施される。ボビンスピンドル駆動装置の制御は同時に行われる。このためにまず、圧着ローラのうちの1つの回転速度が検出される。制御装置によって、圧着ローラのその都度測定された回転速度に関連して、検出された圧着ローラの回転速度がほぼ一定に維持されるように、ボビンスピンドルの駆動回転数を一括して若しくは一緒に(kollektive)変えられるようになっている。これによって、自動的に、調整回路に接続されていない第2の圧着ローラが、センサによって監視されない圧着ローラと同じ状態にずらされる。
【0010】
本発明による方法を実施するための本発明による装置は、一方の圧着ローラに、この圧着ローラの回転速度を検出するために対応配置された1つの回転数センサを有している。回転数センサは、制御装置によって1つの制御回路でボビンスピンドルのスピンドル駆動装置に接続されている。これによってセンサ信号は、有利な形式で2つのスピンドル駆動装置を制御するために利用される。
【0011】
2つのボビンスピンドルをできるだけ同じ回転数で、及びひいてはボビンの同じ周速度で駆動することができるようにするために、本発明の有利な実施態様によれば、ボビンスピンドルが同期的に駆動され、制御される。このためにスピンドル駆動装置は有利な形式で2つの同期電動機と1つの制御器とによって形成されており、この場合、制御器は制御装置に接続されている。この実施態様は、特に複数の圧着ローラ及びボビンスピンドルの配置構成の融通性を特徴としている。従って、圧着ローラとボビンスピンドルとを1対形式で、互いに並んで配置することも、互いに上下に配置することもできる。1対形式で配置されたスピンドルと圧着ローラの一方の対の回転数変化を検出することによって、ボビンスピンドルの同期駆動装置は同時に、検出されていない方の対における制御調節を実施することができる。
【0012】
ボビンの外周面に糸を巻き付けて、設置する際に、ボビンの外周面と圧着ローラの外周面との間でスリップが発生することがある。このようなスリップ発生を2つの圧着ローラにおいて避けるために、本発明の実施態様によれば、2つの圧着ローラが同じ回転数で回転するように、圧着ローラが機械的又は電気的に互いに連結されている。連結するために圧着ローラは伝動手段によって互いに接続されている。2つの圧着ローラの回転数を適合させるために、伝動手段は機械的に又は電気的に構成されていてよい。
【0013】
この場合、圧着ローラは付加的に外部駆動装置によって逆の回転方向で駆動されるようになっており、これは特にボビン交換の際に好都合である。しかしながら有利な形式で、圧着ローラの外部駆動装置は、駆動されているボビンと圧着ローラとの間の所定の負荷比を形成するために適している。従って、圧着ローラの外部駆動装置は、ボビンの外周面に常に前進する成分又は制動する成分が作用するように設計されている。負荷比を設定することによって、有利な形式で、巻き取られた糸の糸張力に影響を与えることができる。何故ならば圧着ローラとボビンとの間の所定のスリップ発生を調節することができるからである。
【0014】
圧着ローラの外部駆動装置は、ボビンスピンドルを摩擦によって駆動するために適しているので、ボビンスピンドルを直接駆動するためのボビン駆動装置は省くことができる。
【0015】
ボビン直径の増大に伴って付加的に、ボビンスピンドルと圧着ローラとの間の重畳された変位運動が実施される。このような変位運動は、個別に又は一括して(kollektiv)実施することができ、この場合、基本的に圧着ローラとボビンの外周面との間の接触が失われることはない。接触を維持するための制御可能性は、有利な形式で本発明の実施態様に従って、ボビンスピンドルがそれぞれ非同期電動機によって駆動されることによって得られる。圧着ローラの外部駆動装置によって規定された負荷比に基づいて、非同期電動機は同じ周波数範囲で駆動される。これによって、非同期電動機の運転状態を整合させることによって、圧着ローラとボビンスピンドルとの間の間違った接触を生ぜしめる欠陥位置が検出される。それに応じて、変位運動の修正を実施する制御信号が生ぜしめられる。
【0016】
変位運動は、簡単な形式で、巻取り作業中に複数の圧着ローラが、可動なホルダによって共通にガイドされるように実施することができる。これによって、2つの巻取り部において圧着ローラの同様の調節が生ぜしめられる。
【0017】
しかしながら、圧着ローラを互いに独立して半径方向でボビンに向かって移動するようにガイドすることもできる。この場合、圧着ローラは有利な形式で可動な揺動体によって保持される。この揺動体は、互いに独立して旋回可能に機械ケーシングに又は可動なホルダに保持されている。
【0018】
しかしながら基本的に、複数の圧着ローラが定置に保持され、変位運動がもっぱらボビンスピンドルによって実施されることも可能である。このためにボビンスピンドルはそれぞれ、可動な2つのスピンドル支持体によって有利には同期的にガイドされる。
【0019】
しかしながら、ボビンを増大させるための、圧着ローラとボビンスピンドルとの間の変位運動を、圧着ローラの運動によって、またボビンスピンドルの運動によって実施することも可能である。しかも、ボビンリボルバとして構成された可動なボビン支持体を使用することによって、2つのボビンスピンドルを交互に巻取り領域及び交換領域に移動させることができるようにするために、各巻取り部に第2のボビンスピンドルを保持することができる、という利点が得られる。
【0020】
以下に、本発明による方法を、図示の幾つかの実施例に基づく本発明による装置を用いて詳しく説明する。
【0021】
図1は、本発明による方法を実施するための本発明による装置の第1実施例の正面図、
図2は、後ろから見た概略図、
図3、図4及び図5は、本発明による方法を実施するための本発明による装置の別の実施例の概略図である。
【0022】
図1及び図2には、本発明による方法を実施するための本発明による装置の第1実施例が示されている。この場合、図1は正面図、図2は実施例を後ろから見た図を示している。
【0023】
図示の実施例の構成をまず図1を用いて説明する。
【0024】
図示の実施例による本発明の装置は、2つの巻取り部29.1及び29.2を有している。これらの巻取り部は、1つの機械フレーム12内に互いに並んで形成されている。この場合、巻取り部29.1と29.2とは、中央の左右対称平面を中心にして鏡像対称的に構成されている。右側の巻取り部29.1は、機械フレーム12内に回転可能に支承されたスピンドル支持体10.1より成っている。スピンドル支持体10.1には、第1の突き出したボビンスピンドル7.1と、これに対して180゜ずらして配置された第2の突き出したボビンスピンドル11.1とが保持されている。この場合、第1のボビンスピンドル7.1は、1つ又は複数の糸を巻取るための運転位置にある。第2のボビンスピンドル11.1は、満管ボビンを空のボビン巻管と交換するための交換位置にある。
【0025】
スピンドル支持体10.1に対して鏡像対称的に第2の巻取り部29.2には、同一平面又はずらした平面に配置された第2のスピンドル支持体10.2が機械フレーム12内に保持されている。スピンドル支持体10.2は、突き出したボビンスピンドル7.2及び11.2を支持している。図示の運転状態で、ボビンスピンドル7.2は運転位置にあり、ボビンスピンドル11.1は交換位置にある。
【0026】
各スピンドル支持体10.1及び10.2の前に、糸道内でそれぞれ1つの圧着ローラ6.1及び6.2が配置されている。この場合、糸1.1をボビン9.1に巻取るために、巻取り部29.1内で圧着ローラ6.1がボビンスピンドル7.1と協働する。糸1.1の巻取り中に、圧着ローラ6.1は、巻き取られるボビン9.1の外周面に圧着する。
【0027】
それに応じて、巻取り部29.1内で、圧着ローラ6.2は、第2の糸1.2をボビン9.2に巻取るために、運転位置にあるボビンスピンドル(図示の実施例では7.2)と協働する。この場合も、圧着ローラ6.2は、巻き取ろうとするボビン9.2の外周面に圧着している。
【0028】
圧着ローラ6.1及び6.2はホルダ3に回転可能に支承されている。ホルダ13は、圧着ローラ6.1及び6.2の前に配置された綾振り装置(トラバース装置)4を支持している。綾振り装置4は、巻取り部29,1と29.2との間の中心平面に配置されていて、各巻取り部29.1及び29.2にそれぞれ1つの綾振り装置5.1及び5.2を有しており、これらの綾振り装置5.1及び5.2によって、供給された糸1.1及び1.2が綾振りストローク内で往復運動せしめられる。綾振り装置4は、例えば可逆溝付きドラム(Kehrgewindewelle)によって構成することができる。この可逆溝付きドラムは、外周面に、綾振り糸ガイド5.1及び5.2をガイドするための1つ又は複数の溝を有している。
【0029】
ホルダ13の上側には糸ガイド支持体3が設けられており、この糸ガイド支持体3は、糸ガイド2.1及び2.2を支持している。この場合、糸ガイド2.1は巻取り部29.1に対応配置されていて、糸ガイド2.2は巻取り部29.2に対応配置されている。
【0030】
ホルダ13は、キャリッジ15及びキャリッジガイド14.1,14.2によって垂直方向に可動に構成されている。この場合、キャリッジ15は、2つの力発生器16.1及び16.2によって、キャリッジガイド14.1及び14.2内で保持されていて、圧着ローラ6.1及び62.がそれぞれ所定の圧着力で糸1.1及び1.2の巻取り作業中にそれぞれのボビン9.1及び9.2に当て付けられるようになっている。
【0031】
図1に示した実施例では、巻取り部29.1及び29.2において、それぞれ1本の糸1.1及び1.2がそれぞれボビン9.1及び9.2に巻き取られる。しかしながら、基本的にはこのような装置は、複数の糸を同時に複数のボビンに巻取るために設けられている。このために、ボビンスピンドル7.1及び7.2に、相前後して被せ嵌められた複数のボビン巻管8.1及び8.2が保持されている。この場合、8個、10個又はそれ以上のボビン巻管を、ボビンスピンドル7.1並びにボビンスピンドル7.2によって同時に保持することができる。この場合、ボビンスピンドル、圧着ローラ及び綾振り装置は、相応に突き出した長さを有しているので、複数の糸を同時に互いに平行に並んで巻取ることができる。
【0032】
しかしながら本発明による方法のためには、巻取り部29.1及び29.2においてそれぞれ1本の糸(図示のように)又は複数本の糸をボビンに巻取るかどうかは、重要なことではない。
【0033】
第1実施例をさらに説明するために、ボビンスピンドル71.及び7.2の駆動ステーションが、図2を用いて以下に説明されている。見やすくするために、図2には、本発明による方法を実施するために必要な、巻取り部29.1及び29.2の装置部分だけを後ろから見た図が概略的に示されている。
【0034】
巻取り部29.2には、ボビンスピンドル7.2がスピンドル端部22.2を介してスピンドル駆動装置23.2に連結されている。スピンドル駆動装置23.2には制御器24.2が対応配置されており、この制御装置24.2は、上位の制御装置21に接続されている。この場合、ボビンスピンドル7.2で巻き取られたボビン9.2は破線で示されている。ボビン9.2の外周面には、自由に回転可能に支承された圧着ローラ6.2が当接しており、この圧着ローラも同様に破線で示されている。圧着ローラ6.2はローラ端部18.2を有している。このローラ端部18.2に回転数センサ20が対応配置されており、この回転数センサ20によって、圧着ローラ6.2の回転速度が検出される。回転数センサ29は制御装置21に接続されている。
【0035】
別の巻取り部29.1では、ボビンスピンドル7.1が、スピンドル端部22.1で以てスピンドル駆動装置23.1に連結されている。スピンドル駆動装置23.1には制御器24.1が対応配置されており、この制御器24.1は同様に制御装置21に接続されている。ボビンスピンドル7.1の外周面に形成された、同様に破線で示されているボビン9.1は、第2の圧着ローラ6.1と接触している。この場合、第2の巻取り部29.1の圧着ローラ6.1はその一方のローラ端部18.1が、伝動手段19によって他方の巻取り部29。2の圧着ローラ6.2に連結されている。この実施例では、伝動手段19はベルト又はチェーンによって機械的に構成されているので、2つの巻取り部2つの圧着ローラ6.1及び6.2は同じ回転数で回転する。
【0036】
次に図1及び図2を用いてさらに詳しく説明する。巻取り部29.1において糸1.1を巻取るために、ボビンスピンドル7.1がスピンドル駆動装置23.1によって時計回り方向(図1)で駆動される。圧着ローラ6.1は、巻き取ろうとするボビン9.1の外周面に当接し、摩擦を介して逆方向で駆動される。
【0037】
巻取り部29.2では、糸1.2をボビン9.2に巻取るために、ボビンスピンドル7.2がスピンドル駆動装置23.2によって時計回り方向に抗して(図1)駆動される。この場合、圧着ローラ6.2は、ボビン9.2の外周面において圧着ローラ6.1の相応の回転数で時計方向に回転する。圧着ローラ6.1と6.2との間の回転伝達は、伝動手段19によって行われる。2つの巻取り部29.1及び29.2は同期的に巻き取られるので、各ボビンスピンドル7.1及び7.2のそれぞれにおいて、同様の形のボビン9.1及び9.2が形成される。
【0038】
糸1.1及び1.2の一定の巻取り速度を維持するために、圧着ローラ6.2の回転速度が回転数センサ20によって連続的に検出されて、制御装置21に供給される。制御装置21において圧着ローラ6.2の目標回転速度が記憶される。圧着ローラ6.2の検出された実際回転速度と、圧着ローラ6.2の記憶された目標回転速度との間の許容できないずれが検出されると直ちに、制御信号が発信されて、制御器24.1及び24.2に供給される。制御器24.1及び24.2は、圧着ローラ6.2に変化した実際回転速度が得られるように、スピンドル駆動装置23.1及び23.2の駆動回転数を変える。これによって、糸1.1及び1.2の全巻取り作業中にボビン9.1及び9.2の一定の周速度が調節される。この場合、スピンドル駆動装置23.1及び23.2は、有利な形式で非同期モータによって形成される。非同期モータの回転数フィードバックは、有利な形式でマルチプレックス(多重)切換によって行われるので、制御装置には1つの入力部が必要なだけである。
【0039】
糸1.1及び1.2の巻取り中に、ボビン9.1及び9.2の増大に基づいて必要な変位運動は、この実施例では、可動に保持された保持13によっても、また可動に保持されたボビンスピンドル7.1及び7.2によっても実施することができる。ホルダ13に圧着ローラ6.1及び6.2が堅固に配置されていることによって、ボビン9.1及び9.2の増大は、キャリッジ15の運動によって同期的に行われる。
【0040】
図示されていないボビン支持体10.1及び10.2の回転駆動装置が、変位運動を実施するために有利には同様に同期的に駆動されるので、例えば2つのスピンドル支持体10,1及び10.2は伝動手段によって互いに連結され、回転駆動装置によって作動される。
【0041】
図3には、本発明による方法による2つの巻取り部のボビンスピンドルを制御するための別の実施例が概略的に示されている。図3に示した実施例は、図1及び図2に示した実施例とほぼ同じに構成されているので、以下には相違点についてだけ説明する。巻取り部29.1では、ボビン9.1を巻取るために、ボビンスピンドル7.1と圧着ローラ6.1とが協働する。圧着ローラ6.1は自由に回転可能に支承されており、この場合ローラ端部18.1に回転数センサ20が対応配置されている。回転数センサ20は、調整回路に通じる制御装置21によってスピンドル駆動装置23.1及び23.1に接続されている。このためにスピンドル駆動装置23.1及び23.2に制御器24が対応配置されている。スピンドル駆動装置23.1及び23.2は、それぞれ同期モータによって形成されている。制御器24は制御装置21に連結されている。
【0042】
第2の巻取り部29.2では、ボビンスピンドル7.2と圧着ローラ6.2とが協働する。
【0043】
この実施例では、2つの圧着ローラ6.1及び6.2が、巻き取ろうとするボビン9.1及び9.2の外周部に位置している。ボビン9.1及び9.2は、それぞれボビンスピンドル7.1及び7.2によって、及びこれに接続されたスピンドル駆動装置23.1及び23.1によって駆動される。これによって圧着ローラ6.1及び6.2の回転速度は、それぞれのボビン9.1及び92.の周速度によって規定される。圧着ローラ6.1の回転速度は、回転数センサ20によって検出され、制御装置21に供給される。制御装置21では、実際値と目標値との比較が行われる。実際値と目標値との間の許容できない程度の差が生じると、制御装置21に制御信号が形成され、この制御信号は、制御器24に供給される。制御器24によって、スピンドル駆動装置23.1及び23.2は、変えられた駆動回転数で駆動される。駆動回転数の変化は同期的に、2つの巻取部29.1及び29.2において行われ、この場合、周速度の変化及びひいては紡績部29.1における圧着ローラ6.1の回転速度の変化が生ぜしめられ、制御装置21の回転数センサを介して信号化される。前記実施例とは異なり、隣接し合う巻取り部29.1,29.2の2つの圧着ローラ6.1及び6.2は、互いに独立して自由に回転可能である。これによって、2つの巻取り部の構造群の配置に関する高い自由度が提供され、これらの構造群は水平な配置だけに限定されることはない。
【0044】
図4及び図5には、本発明による方法を実施するための本発明による装置の別の実施例が概略的に示されており、この場合、2つの実施例は、図1に示した実施例とほぼ同じである。以下では、図1の実施例と相異する点についてのみ説明する。
【0045】
図4に示した実施例では、2つの巻取り部29.1及び29.2の圧着ローラ6.1及び6.2が、外部駆動装置25によって駆動されるようになっている。この場合、外部駆動装置25は、ベルト伝動装置26及び電動機28によって形成されており、電動機28には制御器27が対応配置されている。制御器27は制御装置21に連結されている。外部駆動装置25によって、圧着ローラ6.1と6.2とは、巻取りのために必要な回転方向で、互いに逆向きに駆動せしめられる。
【0046】
ボビンスピンドル7.1及び7.2の駆動、並びにボビンスピンドルの駆動回転数の調整は、図2に示した実施例と同様に行われる。従ってそれについては、図2に示した実施例の説明が参照されるが、この場合、巻取り部29.1及び29.2は、回転数を監視するためのその配置が交換されている。
【0047】
外部駆動装置25によって、駆動ローラ6.1及び6.2の駆動とボビンスピンドル7.1及び7.2の駆動との間の負荷の比が調整される。それによって圧着ローラ6.1及び6.2は、ボビン9.1及び9.2のボビン外周面に駆動作用も制動作用も加える。負荷の比は、制御装置21によって与えられる。ボビンスピンドル又は圧着ローラの変位運動が重畳して行われる際に、間違った接触動作を避けるために、制御装置21内において付加的に、実際の負荷比の調整が行われる。このために、運転状態、特にスピンドル駆動装置23.1,23.1の駆動周波数が制御器24.1,24.2を介して制御装置21に供給される。このためにスピンドル駆動装置23.1及び23.2は非同期電動機として構成されている。2つの巻取り部29.1,29.2が前記調節を伴って巻き取られる場合、スピンドル駆動装置23.1,23.2の運転状態に大きな相異は生じない。一方の駆動装置が他方の駆動装置とは異なる駆動周波数を有している場合、変位運動の修正が実施されるので、場合によっては間違った接触状態が再び形成されることになる。
【0048】
図5に示した実施例は、図3に示した実施例とほぼ同じである。この場合、圧着ローラ6.1,6.2は外部駆動装置25によって駆動される。この場合、外部駆動装置25は2つの電動機28.1,28.2と、これらの電動機に対応配置された制御器27とによって形成されている。これによって、圧着ローラ6.1,6.2は外部駆動装置25と電気的な連結が得られる。
【0049】
本発明による方法並びに装置は、図1に示した個別の機器配置に限定されるものではない。基本的に、特に複数の圧着ローラが複数の巻取り部において、振動によってボビンスピンドルに対して半径方向で可動に保持される。ボビンスピンドルと圧着ローラとの保持は、主に変位運動を実施するためにだけ重要である。しかしながら変位運動とは無関係に、ボビンの周速度は常に、複数の糸が同じ巻取り速度、及びひいてはほぼ一定の糸緊張状態を保って巻き取られるように、調節されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による方法を実施するための装置の第1実施例の正面図である。
【図2】図1に示した装置を後ろから見た概略図である。
【図3】本発明による装置の別の実施例の概略図である。
【図4】本発明による装置の別の実施例の概略図である。
【図5】本発明による装置の別の実施例の概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1.1,1.2 糸、 2.1,2.2 糸ガイド、 3 糸ガイド支持体、 4 綾振り装置、 5.1,5.2 綾振りガイド、 6.1,6.2 圧着ローラ、 7.1,7.2 ボビンスピンドル、 8.1,8.2 ボビン巻管、 9.1,9.2 ボビン、 10.1,10.2 スピンドル支持体、 11.1,11.2 非作業位置における巻取りスピンドル、 12 機械フレーム、 13 ホルダ、 14.1,14.2 キャリッジガイド、 15 キャリッジ、 16.1,16.2 力発生器、 17 しゃ断装置、 18.1,18.2 ローラ端部、 19 伝動手段、 20 回転数センサ、 21 制御装置、22.1,22.2 スピンドル端部、 23.1,23.2 スピンドル駆動装置、 24,24.1,24.2 制御器、 25 外部駆動装置、 26 ベルト伝動装置、 27 制御器、 28.1,28.2 電動機、 29.1,29.2 巻取り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸を複数のボビンに巻取るための方法であって、これらのボビンが互いに平行に並んで配置された2つのボビンスピンドルに保持されており、これら2つのボビンスピンドルは、複数のボビンが複数の糸の巻取り中に所定の周速度で逆方向に回転するようになっており、ボビンスピンドルが、それぞれ1つの回転可能な圧着ローラと協働して、これらの圧着ローラをボビンの外周面に当接させるようになっている形式のものにおいて、
ボビン周速度を制御するために、圧着ローラのうちの1つの回転速度を検出し、2つのボビンスピンドルの駆動回転数を、検出された回転速度に関連して、検出された圧着ローラの回転速度がほぼ一定に維持されるように、一括して変えることを特徴とする、複数の糸を複数のボビンに巻取るための方法。
【請求項2】
ボビンスピンドルを同期的に駆動し、制御する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
2つの圧着ローラが同じ回転数で回転するように、圧着ローラを機械的に又は電気的に互いに連結する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
2つの圧着ローラを付加的に、外部駆動装置によって逆の回転方向で駆動する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
圧着ローラの外部駆動装置とボビンスピンドルのスピンドル駆動装置との間で、それぞれ駆動又は制動を実施する負荷比を調節する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ボビンスピンドルをそれぞれ非同期電動機によって駆動し、非同期電動機の駆動周波数が負荷比を維持するために監視する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
巻取り中に、複数の圧着ローラを、ボビン増大に伴う変位運動を実施するために、可動なホルダによって共通にガイドする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
複数の圧着ローラを互いに独立して、ボビンに向かって半径方向で可動にガイドする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ボビン増大に伴う変位運動を実施するために、複数のボビンスピンドルを可動な2つのスピンドル支持体によって同期的に又は互いに独立してガイドする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するための装置であって、複数の糸(1.1,1.2)を複数のボビン(9.1,9.2)に同時に巻取るためのそれぞれ少なくとも1つのボビン巻管(8.1,8.2)を受容する、互いに並んで配置された2つのボビンスピンドル(7.1,7.2)と、2つのボビンスピンドル(7.1,7.2)を逆向きに駆動するための、ボビンスピンドル(7.1,7.2)に対応配置された2つのスピンドル駆動装置(23.1,23.2)と、巻取り中にボビン(9.1,9.2)の外周面に当接する、回転可能に支承された2つの圧着ローラ(6.1,6.2)とを有している形式のものにおいて、
一方の圧着ローラ(6.1)に、この圧着ローラ(6.1)の回転速度を検出するための回転数センサ(20)が対応配置されており、回転数センサ(20)とボビンスピンドル(7.1,7.2)のスピンドル駆動装置(23.1,23.2)とが制御装置(21)によって調整回路に接続されていることを特徴とする、複数の糸を複数のボビンに巻取るための装置。
【請求項11】
スピンドル駆動装置(23.1,23.2)が、2つの同期電動機と制御装置(24)とによって形成されており、この場合、制御器(24)が制御装置(21)に接続されている、請求項10記載の装置。
【請求項12】
2つの圧着ローラ(6.1,6.2)は、これら2つの圧着ローラ(6.1,6.2)が同じ回転数で逆向きに回転するように、伝動手段(19)によって互いに結合されている、請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】
2つの圧着ローラ(6.1,6.2)を個別に又は一緒に逆向きに駆動するために、外部駆動装置(25)が設けられている、請求項10から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
外部駆動装置(25)が、伝動手段(19)と協働する電動機(28)によって形成されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
外部駆動装置(25)が2つの別個の電動機(28.1,28.2)によって形成されており、これら2つの電動機が制御器(27)によって一緒に制御可能である、請求項13記載の装置。
【請求項16】
スピンドル駆動装置(23.1,23.2)が、1つの制御器(24)又は対応配置された2つの制御器(24.1,24.2)を備えた2つの非同期電動機によって形成されており、前記制御器(24,24.1,24.2)が制御装置(21)に接続されている、請求項10から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
圧着ローラ(6.1,6.2)が可動なホルダ(13)に配置されており、該ホルダ(13)がキャリッジ(15)に配置されていて、キャリッジガイド(14.1,14.2)によって2つの圧着ローラ(6.1,6.2)を半径方向でボビンスピンドル(7.1,7.2)に向かってガイドするようになっている、請求項10から16までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
圧着ローラがそれぞれ、可動な2つの揺動体に保持されており、これら2つの揺動体が互いに独立して圧着ローラをボビンスピンドルに対して半径方向でボビンスピンドルにガイドする、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
ボビンスピンドル(6.1,6.2)がそれぞれ可動なスピンドル支持体(10.1,10.2)で保持されており、これらのスピンドル支持体(10.1,10.2)が共通の駆動装置によって、又は別個の駆動装置によってボビンスピンドルを圧着ローラに対して半径方向で圧着ローラにガイドする、請求項10から18までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−523813(P2007−523813A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500091(P2007−500091)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001381
【国際公開番号】WO2005/082759
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】