説明

複数のDHCPサーバにおけるアドレス管理方法、DHCPサーバ及びプログラム

【課題】1つのアドレス空間に大量のクライアントを接続する場合であっても、1つのDHCPサーバにアドレス管理の負荷が集中しない、アドレス管理方法等を提供する。
【解決手段】複数のDHCPサーバが1つのアドレス空間に接続されている。第1のDHCPサーバが、第1のアドレスをクライアントに割り当てる。このとき、第1のDHCPサーバが、第2のDHCPサーバへ、第1のアドレスを含む割当禁止要求を送信する。これに対し、第2のDHCPサーバは、割当禁止要求に含まれる第1のアドレスを「割当禁止」とする。また、第1のアドレスのリース期間が経過した際に、第1のDHCPサーバは、第2のDHCPサーバへ、第1のアドレスを含む禁止解除要求を送信する。複数のDHCPサーバは、パケットを一周転送するリングネットワークによって接続されていることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバにおけるアドレス管理方法、DHCPサーバ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
DHCPサーバは、クライアントに対して、動的且つ自動的に、ネットワークにおけるホスト設定をするものである。クライアントは、DHCPサーバからIP(Internet Protocol)アドレスを取得し、そのIPアドレスを用いてネットワークに接続することができる。
【0003】
DHCPサーバは、クライアントに割り当てるIPアドレスを予めプールしている。DHCPサーバは、プールしている範囲内のIPアドレスを、クライアントに順に割り当てていく。このとき、IPアドレスと共に、そのIPアドレスの利用可能期間(以下「リース期間」という)も割り当てられる。リース期間は、定期的なIPアドレスの再割当を可能とする。クライアントは、取得したIPアドレスのリース期間よりも短い所定時間(Renewing時間)が経過すると、DHCPサーバへリース期間延長を要求する。これにより、常に最小限のIPアドレスでの運用が可能となる。
【0004】
【非特許文献1】RFC2131、「Dynamic Host Configuration Protocol」、[online]、[平成18年3月25日検索]、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc2131.txt>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のDHCPサーバの技術によれば、1つのアドレス空間には、原則として1つのDHCPサーバだけが備えられる。IPアドレスは、コンピュータが所属するネットワークアドレスと、ネットワークアドレス内でのコンピュータ自身のホストアドレスとから構成されている。
【0006】
クライアントは、DHCPサーバを発見するために、DISCOVERメッセージをブロードキャストする。このDISCOVERメッセージは、ネットワークアドレスを越えて転送されることはない。通常、1つのネットワークアドレスに、複数のDHCPサーバを配置した場合、その中でのアドレス管理は困難になる。
【0007】
しかしながら、1つのアドレス空間に大量のクライアントが存在する場合には、アドレス管理の負荷が、1つのDHCPサーバに集中するという問題がある。
【0008】
また、ネットワークアドレス毎に1つのDHCPリレーエージェントを配置し、そのDHCPリレーエージェントが、DHCPサーバへメッセージを転送する技術もある。しかしながら、この技術は、1つのネットワークアドレスに1つのエージェントを備えるものであって、結局、これらエージェントと通信するDHCPサーバに、アドレス管理の負荷が集中することとなる。
【0009】
そこで、本発明は、同一のアドレス空間に大量のクライアントを接続する場合であっても、1つのDHCPサーバにアドレス管理の負荷が集中することがない、アドレス管理方法、DHCPサーバ及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、同一のアドレス空間を管理する複数のDHCPサーバを有するシステムのアドレス管理方法であって、
第1のDHCPサーバが、第1のアドレスをクライアントに割り当てる第1のステップと、
第1のDHCPサーバが、第2のDHCPサーバへ、第1のアドレスを含む割当禁止要求を送信する第2のステップと、
第2のDHCPサーバが、割当禁止要求に含まれる第1のアドレスを「割当禁止」とする第3のステップと
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のアドレス管理方法における他の実施形態によれば、
第1のDHCPサーバが、第1のアドレスのリース期間が経過した際に、第2のDHCPサーバへ、第1のアドレスを含む禁止解除要求を送信するステップと、
第2のDHCPサーバが、禁止解除要求に含まれる第1のアドレスについて「割当禁止」を解除するステップと
を更に有することも好ましい。
【0012】
本発明のアドレス管理方法における他の実施形態によれば、
第2のDHCPサーバが、第1のアドレスが割り当てられたクライアントからリース期間延長要求を受信した際に、第1のDHCPサーバへリース期間延長要求を送信するステップと、
第1のDHCPサーバが、第2のDHCPサーバから、自ら割り当てた第1のアドレスを含むリース期間延長要求を受信した際に、第1のアドレスのリース期間を延長するようにアドレス管理するステップと
を更に有することも好ましい。
【0013】
本発明のアドレス管理方法における他の実施形態によれば、
複数のDHCPサーバは、パケットを一周転送するリングネットワークによって接続されていることも好ましい。
【0014】
本発明によれば、他のDHCPサーバと共に、同一のアドレス空間で管理されるDHCPサーバであって、
クライアントへ割り当てることができないアドレスを登録したアドレステーブルと、
DHCPシーケンスに基づいて、アドレステーブルに登録されていないアドレスを、クライアントへ割り当てるDHCPアドレス割当手段と、
クライアントに割り当てたアドレスを、アドレステーブルで「割当済み」とする自アドレス状態変更手段と、
クライアントに割り当てたアドレスを含む割当禁止要求を、他のDHCPサーバへ送信する割当禁止要求送信手段と
を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のDHCPサーバにおける他の実施形態によれば、
割当禁止要求を受信する割当禁止要求受信手段と、
割当禁止要求に含まれるアドレスを、アドレステーブルで「割当禁止」とする他アドレス状態変更手段と
を有することも好ましい。
【0016】
本発明のDHCPサーバにおける他の実施形態によれば、
アドレスのリース期間が経過した際、又はクライアントからアドレスの返却要求を受信した際、他のDHCPサーバへ、アドレスを含む禁止解除要求を送信する禁止解除要求送信手段を更に有することも好ましい。
【0017】
本発明のDHCPサーバにおける他の実施形態によれば、
禁止解除要求を受信する禁止解除受信手段を更に有し、
他アドレス状態変更手段は、禁止解除要求に含まれるアドレスを、アドレステーブルから削除することも好ましい。
【0018】
本発明のDHCPサーバにおける他の実施形態によれば、
割当禁止要求を他のDHCPサーバから受信して「割当禁止」としたアドレスのクライアントから、直接的にリース期間延長要求を受信した際に、割当禁止要求を送信した他のDHCPサーバへリース期間延長要求を送信するリース期間延長転送手段を更に有することも好ましい。
【0019】
本発明のDHCPサーバにおける他の実施形態によれば、
他のDHCPサーバから、自ら割り当てた「割当済み」のアドレスを含むリース期間延長要求を受信するリース期間延長受信手段を更に有し、
自アドレス状態変更手段は、リース期間延長受信手段によって受信したリース期間延長要求の「割当済み」のアドレスについて、リース期間を延長するようにアドレス管理をする
ことも好ましい。
【0020】
本発明のDHCPサーバにおける他の実施形態によれば、
パケットを一周転送するリングネットワークを介して、他のDHCPサーバに接続されていることも好ましい。
【0021】
本発明によれば、他のDHCPサーバと共に、同一のアドレス空間で管理されるDHCPサーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
クライアントへ割り当てることができないアドレスを登録したアドレステーブルと、
DHCPシーケンスに基づいて、アドレステーブルに登録されていないアドレスを、クライアントへ割り当てるDHCPアドレス割当手段と、
クライアントに割り当てたアドレスを、アドレステーブルで「割当済み」とする自アドレス状態変更手段と、
クライアントに割り当てたアドレスを含む割当禁止要求を、他のDHCPサーバへ送信する割当禁止要求送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明のDHCPサーバ用のプログラムにおける他の実施形態によれば、
割当禁止要求を受信する割当禁止要求受信手段と、
割当禁止要求に含まれるアドレスを、アドレステーブルで「割当禁止」とする他アドレス状態変更手段と
してコンピュータを更に機能させることも好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアドレス管理方法、DHCPサーバ及びプログラムによれば、1つのアドレス空間に大量のクライアントを接続する場合であっても、1つのDHCPサーバにアドレス管理の負荷が集中することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明における割当禁止要求が送信されているシステム構成図である。
【0026】
図1によれば、DHCPサーバA、B及びCが、1つのアドレス空間に配置されている。DHCPサーバは、有線又は無線のLAN(Local Area Network)毎に1つだけ設置されているとする。これらDHCPサーバA、B及びCは、相互に接続されている。
【0027】
アドレス空間は、例えば192.168.1.0〜255とする。クライアント2は、いずれか1つのDHCPサーバと通信可能であって、複数のDHCPサーバ1と同時に通信する場合はないものとする。
【0028】
DHCPサーバA、B及びCの全ては、同じアドレス空間192.168.1.0〜255のアドレスを共有する。従って、DHCPサーバA、B及びCはいずれも、192.168.1.0〜255のいずれか1つのIPアドレスを、1つのクライアント2へ割り当てることができる。本発明によれば、IPアドレスをクライアント2へ割り当てたDHCPサーバ1は、そのリース期間に渡ってそのIPアドレスを管理する。
【0029】
(S101)クライアント2は、DHCPサーバ1を発見するために、DISCOVERメッセージをブロードキャストする。DISCOVERメッセージを受信したDHCPサーバAは、自身が割当可能なIPアドレスやオプション情報を含むOFFERメッセージを、クライアント2へ返信する。例えば、OFFERメッセージは、割当可能なアドレス192.168.1.100を含む。
【0030】
これに対し、クライアント2は、OFFERメッセージに含まれる情報を受け入れる場合に、REQUESTメッセージをDHCPサーバAへ送信する。REQUESTメッセージを受信したDHCPサーバAは、割り当てるIPアドレスやオプション情報を含むACKメッセージを、クライアント2へ返信する。これにより、クライアント2には、192.168.1.100が割り当てられる。また、DHCPサーバAは、192.168.1.100にリース期間を設定して「割当済み」とする。
【0031】
(S102)DHCPサーバAは、他のDHCPサーバB及びCへ、192.168.1.100を含む割当禁止要求を送信する。割当禁止要求を受信したDHCPサーバB及びCは、192.168.1.100を「割当禁止」とする。
【0032】
DHCPサーバ自身が当該アドレスをクライアントへ割り当てた場合は、「割当済み」状態となり、他のDHCPサーバから割当禁止要求を受信した場合は、「割当禁止」状態となる。
【0033】
割当禁止要求は、例えば表1のようなフォーマットとなる。
【表1】

【0034】
(S103)192.168.0.100を含む割当禁止要求を受信したDHCPサーバBは、192.168.0.100以外のIPアドレス、例えば192.168.0.101を、新たなクライアントへ割り当てる。
【0035】
図2は、割当禁止要求が送信されているシーケンス図である。
【0036】
(S201)クライアントAが、DHCPサーバAを発見するために、DISCOVERメッセージをブロードキャストする。
(S202)DISCOVERメッセージを受信したDHCPサーバAは、自身が割当可能な192.168.1.100を含むOFFERメッセージを、クライアントAへ返信する。
(S203)これに対し、クライアントAは、192.168.1.100の割り当てを受け入れるために、REQUESTメッセージをDHCPサーバAへ送信する。
【0037】
(S204)REQUESTメッセージを受信したDHCPサーバAは、他のDHCPサーバB及びCへ、192.168.1.100を含む割当禁止要求を送信する。割当禁止要求を受信したDHCPサーバB及びCは、192.168.1.100の割当状態を判定する。192.168.1.100がアドレステーブルに登録されていなければ、192.168.1.100をアドレステーブルに登録して「割当禁止」とする。これにより、DHCPサーバB及びCが、自ら192.168.1.100をクライアントへ割り当てることはない。
(S205)DHCPサーバAは、割当禁止要求を送信した後、ランダム時間の経過を待つ。この間に、他のDHCPサーバB及びCから割当禁止要求を受信した場合には、クライアントAに192.168.1.100を割り当てることはできない。図2によれば、ここでは、ランダム時間が経過したために、DHCPサーバAは、クライアントAへACKメッセージを送信する。これにより、DHCPサーバAは、192.168.1.100及びリース期間をアドレステーブルに登録して「割当済み」とする。
【0038】
次に、複数のDHCPサーバが同時に同じIPアドレスを割り当てようとした場合のシーケンスについて説明する。
【0039】
(S206)クライアントBが、DHCPサーバAを発見するために、DISCOVERメッセージをブロードキャストする。
(S207)DISCOVERメッセージを受信したDHCPサーバAは、自身が割当可能な192.168.1.101を含むOFFERメッセージを、クライアントBへ返信する。
(S208)これに対し、クライアントBは、192.168.1.101の割り当てを受け入れるために、REQUESTメッセージをDHCPサーバAへ送信する。
【0040】
(S209)S206〜S208とほぼ同時に、クライアントCが、DHCPサーバCを発見するために、DISCOVERメッセージをブロードキャストしたとする。
(S210)DISCOVERメッセージを受信したDHCPサーバCは、自身が割当可能な192.168.1.101を含むOFFERメッセージを、クライアントCへ返信する。
(S211)これに対し、クライアントCは、192.168.1.101の割り当てを受け入れるために、REQUESTメッセージをDHCPサーバCへ送信する。
【0041】
(S212)DHCPサーバAは、192.168.1.101を含む割当禁止要求を、DHCPサーバB及びCへ送信する。割当禁止要求を受信したDHCPサーバB及びCは、192.168.1.101の割当状態を判定する。この時点で、DHCPサーバCは、192.168.1.101をアドレステーブルに登録していないので、192.168.1.101をアドレステーブルに登録して「割当禁止」とする。
(S213)DHCPサーバCは、192.168.1.100の割当禁止要求を送信しようとしていた時点である。DHCPサーバCは、クライアントCに対する192.168.1.101の割り当てを中止し、NACKメッセージをクライアントCへ返信する。
(S214)DHCPサーバAは、割当禁止要求を送信した後、ランダム時間の経過を待つ。図2によれば、ランダム時間が経過したために、DHCPサーバAは、クライアントBへACKメッセージを送信する。これにより、DHCPサーバAは、192.168.1.101及びリース期間をアドレステーブルに登録して「割当済み」とする。尚、DHCPサーバAが、ランダム時間が経過する前に、DHCPサーバCから192.168.1.101の割当禁止要求を受信した場合、クライアントBへNACKメッセージを返信する。
【0042】
このように、DHCPサーバは、割当禁止要求を送信した後、ランダム時間経過するまで、クライアントへACKメッセージを送信しない。ここで、ランダム時間とは、乱数によって導出された時間であり(固定時間でない)、DHCPサーバ間でパケットが到達するために必要な時間より2倍以上大きい時間とする。DHCPサーバが割当禁止要求を送信したけれども、他のDHCPサーバによって既に「割当済み」となっている場合には、他のDHCPサーバは更に割当禁止要求を返信する。このように要求メッセージが往復する時間以上を確保する必要がある。
【0043】
尚、DHCPサーバは、割当禁止要求を複数回送信することも好ましい。その割当禁止要求が損失する場合があるからである。
【0044】
図3は、本発明における禁止解除要求が送信されているシステム構成図である。
【0045】
(S301)DHCPサーバAは、192.168.1.100のリース期間を管理している。従って、リース期間が経過した場合、DHCPサーバAは、192.168.1.100を含む禁止解除要求を、他のDHCPサーバB及びCへ送信する。禁止解除要求を受信したDHCPサーバB及びCは、192.168.1.100をアドレステーブルから削除して割当可能とする。
【0046】
また、クライアント2が、DHCPサーバAと通信可能な位置から、DHCPサーバBと通信可能な位置へ移動したとする。
【0047】
(S311)クライアント2は、リース期間の経過前であれば、192.168.1.100を利用することができる。そのアドレスのRenewing期間が経過し、クライアント2が、192.168.1.100のリース延長要求を送信したとする。リース延長要求は、DHCPサーバBによって受信される。
【0048】
(S312)DHCPサーバBは、そのリース延長要求を、192.168.1.100を管理するDHCPサーバAへ送信する。リース延長要求を受信したDHCPサーバAは、192.168.1.100のリース期間を延長する。
【0049】
図4は、複数のDHCPサーバがリングネットワークで接続されたシステム構成図である。
【0050】
図4によれば、1つのアドレス空間は、複数のルータが環状に接続された1つのリングネットワークによって構成されている。このリングネットワークは、リング内へ送信されたパケットが必ず一周転送される性質を持つものとする。リングネットワークの各ルータを介して複数の有線又は無線のLANが接続されており、各LANには1つのDHCPサーバが接続されている。従って、あるDHCPサーバからリングネットワークへ送信されたパケットは全てのDHCPサーバによって受信される。
【0051】
本発明によれば、複数のDHCPサーバの間で、割当禁止要求、禁止解除要求、リース期間延長要求のメッセージが送受信される。これらメッセージは、1つのネットワークアドレス内の全てのDHCPサーバで受信される必要がある。従って、複数のDHCPサーバを、リングネットワークを介して接続することも好ましい。
【0052】
図5は、本発明におけるDHCPサーバの機能構成図である。
【0053】
図5によれば、DHCPサーバ1は、アドレステーブル部10と、DHCP基本機能部11と、自アドレス管理機能部12と、他アドレス管理機能部13と、リース期間延長転送部14とを有する。各機能部は、DHCPサーバに搭載されたコンピュータによって実行されるプログラムによっても実現できる。
【0054】
アドレステーブル部10は、クライアントへ割り当てることができない1つ以上のアドレスを登録する。従って、割り当てることができるアドレスは登録されていない。アドレス空間のアドレス毎に、「割当DHCPサーバ」「リース期間」を有する。「割当DHCPサーバ」は、アドレスを割り当てたDHCPサーバのアドレスを表す。
【0055】
「リース期間」は、クライアントへ割り当て可能なリース期間を表すと同時に、「割当済み」「割当禁止」の状態も表す。DHCPサーバ自ら、クライアントへアドレスを割り当てた場合、リース期間を管理する必要がある。従って、「割当済み」の場合には、リース期間の値がカウントされている。次に、他のDHCPサーバから割当禁止要求を受信した「割当禁止」の場合には、「リース期間」に無限大値を格納することによって表す。
【0056】
図5によれば、192.168.1.100は、「自己」のDHCPサーバがクライアントへ割り当てており、リース期間が「600」の「割当済み」状態を表す。192.168.1.101は、「DHCP−B」サーバがクライアントへ割り当てており、リース期間が無限大値の「割当禁止」状態を表す。192.168.1.112は、「自己」のDHCPサーバがクライアントへ割り当てており、リース期間が「200」の「割当済み」状態を表す。192.168.1.10は、「DHCP−C」サーバがクライアントへ割り当てており、リース期間が無限大値の「割当禁止」状態を表す。
【0057】
勿論、アドレステーブルに更に「割当状態」の項目を設け、「割当済み」「割当禁止」とするフラグを有するものであってもよい。
【0058】
DHCP基本機能部11は、DHCPアドレス割当部111と、自アドレス状態変更部112と、リース期間経過判定部113とを有する。DHCP基本機能部11は、既存のDHCPサーバが備える機能を意味する。
【0059】
DHCPアドレス割当部111は、DHCPシーケンスに基づいて、アドレステーブルに登録されていないアドレスを、クライアントへ割り当てる。即ち、DHCPアドレス割当部111は、DISCOVER、OFFER、REQUEST及びACKのメッセージの交換シーケンスを、クライアント2との間で行う。
【0060】
自アドレス状態変更部112は、DHCPアドレス割当部111によってクライアントに割り当てたアドレスについて、アドレステーブル部10にそのアドレス及びリース期間を設定して「割当済み」にする。
【0061】
リース期間経過判定部113は、アドレス毎に、リース期間が経過したか否かのタイマ機能を有する。あるアドレスのリース期間が経過した場合、リース期間経過判定部113は、その旨を自アドレス状態変更部112へ通知する。これに対し、自アドレス状態変更部112は、アドレステーブル部10のそのアドレスを削除して割当可能とする。
【0062】
自アドレス管理機能部12は、割当禁止要求送信部121と、禁止解除要求送信部122と、リース期間延長受信部123とを有する。
【0063】
割当禁止要求送信部121は、クライアントに割り当てたアドレスを含む割当禁止要求を、他のDHCPサーバへ送信する。クライアントに割り当てたアドレスは、自アドレス状態変更部112から通知される。割当禁止要求送信部121は、割当禁止要求を、同じネットワークアドレスに属する全ての他のDHCPサーバへ、同報的に送信する。これにより、他のDHCPサーバは、そのアドレスがあるクライアントに割り当てられたことを知ることができ、その後、そのアドレスを他のクライアントへ割り当てることをしないようにする。
【0064】
禁止解除要求送信部122は、アドレスのリース期間が経過した際、又はクライアントからアドレスの返却要求を受信した際、他のDHCPサーバへ、アドレスを含む禁止解除要求を送信する。そのアドレスは、自アドレス状態変更部112から通知される。禁止解除要求送信部122は、禁止解除要求を、同じネットワークアドレスに属する全ての他のDHCPサーバへ、同報的に送信する。これにより、他のDHCPサーバは、そのアドレスが解放されたことを知ることができ、その後、そのアドレスを他のクライアントへ割り当てることができる。
【0065】
リース期間延長受信部123は、他のDHCPサーバから、自DHCPサーバが割り当てたアドレスを含むリース期間延長要求を受信する。リース期間延長受信部123は、自アドレス状態変更部112へ、そのアドレスのリース期間の延長を通知する。本発明によれば、直接的にクライアントにアドレスを割り当てたDHCPサーバは、そのアドレスについて、その後の解放までアドレス管理をする。
【0066】
他アドレス管理機能部13は、割当禁止要求受信部131と、禁止解除要求受信部132と、他アドレス状態変更部133とを有する。
【0067】
割当禁止要求受信部131は、割当禁止とするアドレスを含む割当禁止要求を、他のDHCPサーバから受信する。割当禁止要求受信部131は、割当禁止とするアドレスを、他アドレス状態変更部133へ通知する。これに対し、他アドレス状態変更部133は、アドレステーブル部10にそのアドレスを登録して「割当禁止」に変更する。
【0068】
禁止解除要求受信部132は、禁止解除とするアドレスを含む禁止解除要求を、他のDHCPサーバから受信する。割当禁止要求受信部132は、禁止解除とするアドレスを、他アドレス状態変更部133へ通知する。これに対し、他アドレス状態変更部133は、アドレステーブル部10のそのアドレスを削除して割当可能とする。
【0069】
他アドレス状態変更部133は、割当禁止要求に含まれるアドレスを、アドレステーブル10に登録して「割当禁止」とする。また、禁止解除要求に含まれるアドレスを、アドレステーブル10から削除して割当可能とする。
【0070】
ここで、他アドレス状態変更部133は、割当禁止要求を送信したけれども、割当禁止要求の返信を受ける場合がある。この場合、他アドレス状態変更部133は、自アドレス状態変更部112へ、そのアドレスをクライアントへ割り当てることができない旨を通知する。このとき、自アドレス状態変更部112は、DHCPアドレス割当部111へ、NACKメッセージを返信するように指示する。
【0071】
リース期間延長転送部14は、クライアントからリース期間延長要求を受信する。当該DHCPサーバは、以前に、他のDHCPサーバから割当禁止要求を受信して「割当禁止」としたアドレスを登録している。その後、そのクライアントが当該DHCPサーバと直接的に通信可能な位置へ移動したことが想定される。リース期間延長転送部14は、そのリース期間延長要求を、割当禁止要求を送信した他のDHCPサーバへ転送する。他のDHCPサーバのアドレスは、アドレステーブルに蓄積されている。これにより、そのクライアントにアドレスを割り当てたDHCPサーバが、そのアドレスのリース期間を延長するようにアドレス管理をすることができる。
【0072】
以上、前述したように、本発明のアドレス管理方法、DHCPサーバ及びプログラムによれば、1つのアドレス空間に大量のクライアントを接続する場合であっても、1つのDHCPサーバにアドレス管理の負荷が集中することがない。
【0073】
前述した本発明における種々の実施形態によれば、当業者は、本発明の技術思想及び見地の範囲における種々の変更、修正及び省略を容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明における割当禁止要求が送信されているシステム構成図である。
【図2】割当禁止要求が送信されているシーケンス図である。
【図3】本発明における禁止解除要求が送信されているシステム構成図である。
【図4】複数のDHCPサーバがリングネットワークで接続されたシステム構成図である。
【図5】本発明におけるDHCPサーバの機能構成図である。
【符号の説明】
【0075】
1 DHCPサーバ
10 アドレステーブル部
11 DHCP基本機能部
111 DHCPアドレス割当部
112 自アドレス状態変更部
113 リース期間経過判定部
12 自アドレス管理機能部
121 割当禁止要求送信部
122 禁止解除要求送信部
123 リース期間延長受信部
13 他アドレス管理機能部
131 割当禁止要求受信部
132 禁止解除要求受信部
133 他アドレス状態変更部
14 リース期間延長転送部
2 クライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のアドレス空間を管理する複数のDHCPサーバを有するシステムのアドレス管理方法であって、
第1のDHCPサーバが、第1のアドレスをクライアントに割り当てる第1のステップと、
第1のDHCPサーバが、第2のDHCPサーバへ、第1のアドレスを含む割当禁止要求を送信する第2のステップと、
第2のDHCPサーバが、前記割当禁止要求に含まれる第1のアドレスを「割当禁止」とする第3のステップと
を有することを特徴とするアドレス管理方法。
【請求項2】
第1のDHCPサーバが、第1のアドレスのリース期間が経過した際に、第2のDHCPサーバへ、第1のアドレスを含む禁止解除要求を送信するステップと、
第2のDHCPサーバが、前記禁止解除要求に含まれる第1のアドレスについて「割当禁止」を解除するステップと
を更に有することを特徴とする請求項1に記載のアドレス管理方法。
【請求項3】
第2のDHCPサーバが、第1のアドレスが割り当てられた前記クライアントからリース期間延長要求を受信した際に、前記第1のDHCPサーバへリース期間延長要求を送信するステップと、
第1のDHCPサーバが、第2のDHCPサーバから、自ら割り当てた第1のアドレスを含むリース期間延長要求を受信した際に、第1のアドレスのリース期間を延長するようにアドレス管理するステップと
を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアドレス管理方法。
【請求項4】
複数のDHCPサーバは、パケットを一周転送するリングネットワークによって接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアドレス管理方法。
【請求項5】
他のDHCPサーバと共に、同一のアドレス空間で管理されるDHCPサーバであって、
クライアントへ割り当てることができないアドレスを登録したアドレステーブルと、
DHCPシーケンスに基づいて、前記アドレステーブルに登録されていないアドレスを、前記クライアントへ割り当てるDHCPアドレス割当手段と、
前記クライアントに割り当てたアドレスを、前記アドレステーブルで「割当済み」とする自アドレス状態変更手段と、
前記クライアントに割り当てたアドレスを含む割当禁止要求を、他のDHCPサーバへ送信する割当禁止要求送信手段と
を有することを特徴とするDHCPサーバ。
【請求項6】
前記割当禁止要求を受信する割当禁止要求受信手段と、
前記割当禁止要求に含まれるアドレスを、前記アドレステーブルで「割当禁止」とする他アドレス状態変更手段と
を有することを特徴とする請求項5に記載のDHCPサーバ。
【請求項7】
前記アドレスのリース期間が経過した際、又は前記クライアントから前記アドレスの返却要求を受信した際、他のDHCPサーバへ、前記アドレスを含む禁止解除要求を送信する禁止解除要求送信手段を更に有することを特徴とする請求項5又は6に記載のDHCPサーバ。
【請求項8】
前記禁止解除要求を受信する禁止解除受信手段を更に有し、
前記他アドレス状態変更手段は、前記禁止解除要求に含まれるアドレスを、前記アドレステーブルから削除する
ことを特徴とする請求項7に記載のDHCPサーバ。
【請求項9】
前記割当禁止要求を他のDHCPサーバから受信して「割当禁止」としたアドレスのクライアントから、直接的にリース期間延長要求を受信した際に、前記割当禁止要求を送信した前記他のDHCPサーバへリース期間延長要求を送信するリース期間延長転送手段を更に有することを特徴とする請求項7又は8に記載のDHCPサーバ。
【請求項10】
他のDHCPサーバから、自ら割り当てた「割当済み」のアドレスを含むリース期間延長要求を受信するリース期間延長受信手段を更に有し、
前記自アドレス状態変更手段は、前記リース期間延長受信手段によって受信したリース期間延長要求の「割当済み」のアドレスについて、リース期間を延長するようにアドレス管理をする
ことを特徴とする請求項9に記載のDHCPサーバ。
【請求項11】
パケットを一周転送するリングネットワークを介して、他のDHCPサーバに接続されていることを特徴とする請求項5から10のいずれか1項に記載のDHCPサーバ。
【請求項12】
他のDHCPサーバと共に、同一のアドレス空間で管理されるDHCPサーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
クライアントへ割り当てることができないアドレスを登録したアドレステーブルと、
DHCPシーケンスに基づいて、前記アドレステーブルに登録されていないアドレスを、前記クライアントへ割り当てるDHCPアドレス割当手段と、
前記クライアントに割り当てたアドレスを、前記アドレステーブルで「割当済み」とする自アドレス状態変更手段と、
前記クライアントに割り当てたアドレスを含む割当禁止要求を、他のDHCPサーバへ送信する割当禁止要求送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするDHCPサーバ用のプログラム。
【請求項13】
前記割当禁止要求を受信する割当禁止要求受信手段と、
前記割当禁止要求に含まれるアドレスを、前記アドレステーブルで「割当禁止」とする他アドレス状態変更手段と
してコンピュータを更に機能させることを特徴とする請求項12に記載のDHCPサーバ用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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