複数区域ディスプレイ
【課題】科学的機器又は時計において、同じ所与の物理量の表示を複数のディスプレイユニットに分散させる。
【解決手段】科学的機器または時計100において複数の部分ディスプレイ2A,2Bに物理量を表示するための複数区域ディスプレイ機構1であって、各部分ディスプレイが、所与の部分範囲3A、3Bにわたって前記物理量の変化を表し、1組の前記部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされ、各部分ディスプレイがインジケータを含み、インジケータが、部分ディスプレイに特有の部分範囲を表すスケール5A、5Bに対して移動する複数区域ディスプレイ機構1。各部分ディスプレイが、移動インジケータを移動させるための連続機構を含み、掩蔽手段が、移動インジケータが見え、任意の他の部分範囲を表すスケールに関する前記移動インジケータはあまりよく見えない構成され、前記部分ディスプレイの前記連続機構がすべて互いに同期する。
【解決手段】科学的機器または時計100において複数の部分ディスプレイ2A,2Bに物理量を表示するための複数区域ディスプレイ機構1であって、各部分ディスプレイが、所与の部分範囲3A、3Bにわたって前記物理量の変化を表し、1組の前記部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされ、各部分ディスプレイがインジケータを含み、インジケータが、部分ディスプレイに特有の部分範囲を表すスケール5A、5Bに対して移動する複数区域ディスプレイ機構1。各部分ディスプレイが、移動インジケータを移動させるための連続機構を含み、掩蔽手段が、移動インジケータが見え、任意の他の部分範囲を表すスケールに関する前記移動インジケータはあまりよく見えない構成され、前記部分ディスプレイの前記連続機構がすべて互いに同期する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、科学的機器又は時計において物理量のディスプレイを分割するための複数区域ディスプレイ機構であって、複数の異なる部分ディスプレイ上での1組の部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる複数区域ディスプレイ機構に関する。部分ディスプレイがそれぞれ、所定の上限値と下限値との間で、各部分ディスプレイに特有の所与の部分範囲で前記物理量の変化を表すように構成され、全ての前記部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる。各前記部分ディスプレイがインジケータを含み、インジケータが、当該の前記部分ディスプレイに特有の前記部分範囲を示すスケール又は目盛りに対して移動し、各前記部分ディスプレイが連続機構を含み、連続機構が前記物理量の前記全変化範囲をカバーし、前記部分ディスプレイの前記連続機構が全て互いに同期する。
【0002】
また、本発明は、このタイプの少なくとも1つの機構を組み込む時計に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、科学的機器の分野に関し、より具体的には時計学の分野に関する。
【0004】
本発明が克服することを提案する技術的な問題は、科学的機器又は時計において、同じ所与の物理量の表示を複数のディスプレイユニットに分散させることであり、前記ディスプレイユニットはそれぞれ、所定の上限値と下限値との間の所与の範囲にわたって前記物理量の変化を表さなければならない。
【0005】
メイン時計ディスプレイタイプ及びそれに備えられた複合機能に応じて、このメインディスプレイ及び/又は複合機能のいくつかのために、時計文字盤の1つ又は複数の特定の領域、特に文字盤の中央部を空けておく必要があることがある、又はそれが単純に有利であることがある。
【0006】
このとき、いくつかの物理量の表示をあまり密集していない領域に移動させることができることが有用である。
【0007】
文字盤の実質的に三角形の区域を使用するレトログラードディスプレイを使用することが知られている。しかし、レトログラードディスプレイは、連続ディスプレイを好む使用者にとっては見づらいものである。
【0008】
Lancelに付与された特許文献1では、時間ディスプレイは、Y形状の支持体によって枢支された3つの十字形ホイールセットの1つを介して円形の目盛り付き区域を通るように成され、各ホイールセットは、常に同じ方向に枢動し、十字のただ1つの分岐を除いて全てが円板によって隠され、この分岐は、目盛り付き円形区域と反対にある環状空間内に見える。
【0009】
同様に、Daniel Roth及びGerald Gentaに付与された特許文献2は、連続的に枢動し、かつ2つの複式の逆向き枢動針を担持するホイールセットを開示し、これらの針は、180°の幅にわたる目盛り付き円形区域と反対にある環状区域以外では隠されている。
【0010】
Agenhorに付与された特許文献3におけるように、複数のアームを有する連続機構も知られており、これらは、同じ文字盤に面して逆方向に回転する同一の機構と組み合わせることができる。
【0011】
「ポールピコテクノグラフ」ウォッチも知られており、これは、中央文字盤の各側にある半月状の2つの半文字盤を含み、各半文字盤が異なる機能を有し、内側スケールと外側スケールを含み、それらのスケールに関して、それぞれ同じ複式針の短い針先又は長い針先が位置決めされる。
【0012】
これらの既知の機構の全般的な原理は、不連続な外観を与えるようにマスクと1つ又は複数の特別な針とを組み合わせることである。
【0013】
TIMENTEL PTYに付与された特許文献4は、2つの並置されたケースを有する腕時計を開示し、ここでは、2つのムーブメントが導電体によって同期され、各ムーブメントにレトログラードディスプレイが設けられ、それにより、モータによってそれぞれ動作されるそれらの針は、どちらもマスクの背後で止められるか、又はそれぞれ下側又は上側半文字盤上を移動する。
【0014】
要約すると、単一の目盛り付き文字盤又は同心の複数の目盛り付き文字盤に対置する針、又はより一般的には表示指針の特定の構成を有する機構が存在するが、それらは、レトログラード表示を有し、その動作は時として複雑であり、それらの寸法は、利用可能な空間の使用に対する上記の制約にあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】フランス特許第647409号
【特許文献2】欧州特許第0950932号
【特許文献3】スイス特許第699117号
【特許文献4】フランス特許第2793898号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、複数のディスプレイ上に提供される同じ物理量の表示を時計全体にわたって分散させるという問題に対する、連続ディスプレイによる解決策を提案し、これらのディスプレイはそれぞれ、所定の上限値と下限値との間で前記物理量の所与の範囲を表さなければならない。
【0017】
物理量は、時間に関連する量でよいが、別のタイプの物理量、例えば気圧や湿度などでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、科学的機器又は時計において物理量の表示を分割するための複数区域ディスプレイ機構であって、複数の異なる部分ディスプレイ上の1組の部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる複数区域ディスプレイ機構に関する。部分ディスプレイがそれぞれ、所定の上限値と下限値との間で、各部分ディスプレイに特有の所与の部分範囲にわたって前記物理量の変化を表すように構成され、それにより、全ての前記部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる。各前記部分ディスプレイがインジケータを含み、インジケータが、当該の前記部分ディスプレイに特有の前記部分範囲を示すスケール又は目盛りに対して移動し、各前記部分ディスプレイは連続機構を含み、連続機構が前記物理量の前記全変化範囲をカバーする。前記部分ディスプレイの前記連続機構が全て互いに同期する。本発明は、各前記部分ディスプレイが、その前記移動インジケータを前記全範囲を表すスケールに関して移動させるように構成されること、及び各前記部分ディスプレイが掩蔽手段を含み、掩蔽手段が、前記部分ディスプレイに特有の前記部分範囲を表す前記スケールのみに関して部分ディスプレイの移動インジケータが見えるように構成され、さらに、他の全ての部分範囲を表すスケールに関する前記移動インジケータはあまりよく見えない、又はぼんやりとしか見えないように構成されることを特徴とする。
【0019】
本発明の1つの特徴によれば、前記掩蔽手段が少なくとも1つのマスクを含み、マスクが、部分ディスプレイに特有の前記部分範囲のみが見え、他の全ての部分範囲が隠れるように配置され、さらに、前記部分ディスプレイに特有の前記インジケータが他の全ての部分範囲の前にある、又は他の全ての部分範囲の反対にあるときには、前記移動インジケータを隠すように配置される。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、各前記連続機構が循環運動を行う。
【0021】
より具体的には、本発明の別の特徴によれば、各前記連続機構が周期的運動を行う。
【0022】
ある好ましい実施形態に特有の特徴によれば、前記物理量は時間量である。
【0023】
また、本発明は、このタイプの少なくとも1つの機構を組み込む時計に関する。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下の説明を読めば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略前面図である。
【図2】メイン針を省いて示した、本発明による機構に備えられたマスクを取り外した後の図1の時計を示す図である。
【図3】第2の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図4】第3の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図5】図1の時計の概略部分平面図である。
【図6】別の変形形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図7】インジケータ及び文字盤の視覚的側面に基づく別の実施形態である本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図8】図7での時計と同様の図での、図1の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図9】異なるタイプの装飾を有する図7の実施形態による部分ディスプレイの概略正面図であり、部分範囲での物理量の表示を示す。
【図10】異なるタイプの装飾を有する図7の実施形態による部分ディスプレイの概略正面図であり、該部分ディスプレイから、異なる部分範囲に対応する領域への変化を示す。
【図11】本発明による複数区域ディスプレイ装置を備えて形成された時計の実施例を示す図である。
【図12】本発明による複数区域ディスプレイ装置を備えて形成された時計の実施例を示す図である。
【図13】本発明による複数区域ディスプレイ装置を備えて形成された時計の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、科学的機器の分野に関し、より具体的には時計学の分野に関する。
【0027】
ある物理量の表示を複数の部分表示に分割することは、科学的機器又は時計で利用可能な体積を活用するだけでなく、特定の領域に関する情報を使用者に提供し、1つ又は複数の特定の範囲に関して表示スケール又はインジケータの色が異なる視覚表示を提供することができる。
【0028】
例えば、放射能カウンタは、測定される放射能レベルを、第1の低域範囲で、小さなサイズの第1の窓内で、特定の第1のしきい値まで表示することができる。この第1のしきい値を超えると、より大きな注意を要する領域に対応する第2の範囲に関して、例えば異なる色の針で、第1の窓よりも大きいサイズの第2の窓内で、第2のしきい値まで表示が提供される。この第2のしきい値を超えると、さらに大きなサイズの第3の窓によって、異なる色の針で、第3の危険領域が表される。
【0029】
本明細書では、より具体的には、時計に関する好ましい実施形態に関して本発明を説明するが、先の例に鑑みて、本明細書で以後「科学的機器」と呼ぶデバイスにおいて、測定及び/又は計数手段、及び/又は物理量を生成するための手段に関連付けて任意のタイプの物理量を表示するために本発明を実装することができることは明らかである。
【0030】
本発明は、科学的機器又は時計100において物理量のディスプレイを分割するための複数区域ディスプレイ機構であって、ここで、複数の部分ディスプレイ2上の1組の部分範囲3によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる複数区域ディスプレイ機構に関する。
【0031】
これらの部分ディスプレイ2は別個のものであり、それぞれ、所定の上限値と下限値との間で、各部分ディスプレイ2に特有の所与の部分範囲3にわたって、物理量の変化を表すように構成され、それにより1組の部分範囲3によって物理量の全変化範囲がカバーされる。各前記部分ディスプレイ2は、スケール5又は目盛りに対して移動するインジケータ4を含み、スケール5は、該部分ディスプレイ2に特有の前記部分範囲3を表す。
【0032】
本発明によれば、各前記部分ディスプレイ2は、前記物理量の全変化範囲をカバーする連続機構11を含み、この連続機構11は、部分ディスプレイ2の移動インジケータ4を全範囲にわたって移動させるように構成される。部分ディスプレイ2の連続機構11は全て互いに同期される。
【0033】
さらに、本発明によれば、各部分ディスプレイ2は、その移動インジケータ4を前記全範囲を表すスケールに対して移動させるように構成される。各前記部分ディスプレイ2は掩蔽手段を含み、掩蔽手段は、各部分ディスプレイ2に特有の部分範囲3を表すスケール5のみに関して部分ディスプレイ2の移動インジケータ4が見え、さらに、他の全ての部分範囲を表すスケールに関する部分ディスプレイ2の前記移動インジケータ4はあまりよく見えない、又はぼんやりとしか見えないように構成される。
【0034】
図1、図3、図4、図5、図6、及び図8で見られる特定の実施形態では、各部分ディスプレイ2がマスク6を含み、マスク6は、部分ディスプレイ2に特有の部分範囲3のみを露出させ、他の全ての部分範囲を隠すように配置され、さらに、部分ディスプレイ2に特有の移動インジケータ4が他の全ての部分範囲の前にある、又は他の全ての部分範囲の反対にあるときには、移動インジケータ4を隠すように配置される。
【0035】
単純化された実施形態では、掩蔽手段は、移動インジケータ4、典型的には針の形状及び/又は装飾、及び/又はメイン文字盤10の装飾である。
【0036】
図7は、針4A及び4Bの場合を示し、これらの針4A及び4Bは、メイン文字盤10に備えられた装飾部分15と同じ装飾を含み、前記装飾部分は、部分ディスプレイ2A及び2Bに対応する装飾境界16A及び16Bによって境界を画される。
【0037】
図7の場合のように単に色を利用することもできる。
【0038】
また、図9及び図10に見られるように、移動インジケータ4と着色背景部分15の両方の装飾のテクスチャを利用することもでき、ここでは装飾はランダムなテクスチャであり、文字盤の装飾部分15に対して針4の位置を特定するのが非常に難しくなる。このランダムなテクスチャは、カモフラージュ効果を提供し、装飾15の前にある針4をほぼ見えないようにする。
【0039】
本発明によれば、機構1のこれらの部分ディスプレイ2の連続機構11は全て互いに同期する。
【0040】
好ましい実施形態では、機構1は時計100用に開発されている。
【0041】
好ましくは、各部分ディスプレイ2の各連続機構11は、循環運動、より特定的には周期的運動を行う。
【0042】
ここで説明する好ましい用途では、機構1の表示対象となっている物理量は時間量である。
【0043】
各連続機構11は、科学的機器又は時計100に備えられたムーブメント12に同期して結合されるように構成される。
【0044】
図面に示されるように、本発明は、少なくとも1つの物理量、すなわち図1〜図3では秒、又は図4では時間の表示を複数のスケール5、特に目盛りに分け、各スケール5は、文字盤13上に位置され、前記物理量の取り得る全幅の部分領域をカバーする。
【0045】
図面では、移動インジケータ4は針によって形成されている。表示指針、窓付きの円板、又は他のインジケータの形態を取ることもできる。
【0046】
複数の区域で表示全体が形成されており、使用者は、1つの文字盤から他の文字盤に同じ針が飛び移るような印象を受ける。
【0047】
前記移動インジケータ4を駆動する部分ディスプレイ2の連続機構11の移動は全て互いに同期しており、前記部分ディスプレイ2は連続ディスプレイを成す。
【0048】
各部分ディスプレイがマスク6を含み、マスク6は、該部分ディスプレイ2で見える部分範囲3の所定の下限に対応する第1の縁部7と、同じ範囲の所定の上限に対応する第2の縁部8とを含む。
【0049】
図面の例では、全てのマスク6がつながって単一のマスクを形成しているが、これは1つの特定の実施形態にすぎない。
【0050】
図示しない本発明の1つの特定の変形形態では、各マスク6の幅を使用者が例えばサムホイールによって調節することができ、サムホイールは、ベゼルの周縁に位置され、ロック/ロック解除手段を含む。この構成により、使用者が、機構1の部分ディスプレイ2の各部分範囲3を様式設定することができるようになる。この変形形態では、1つの特定の実施形態は、例えば歯車によってマスク6を互いに接続し、それにより、所与の部分ディスプレイ2のマスク6の第1の縁部7又は第2の縁部8を調節するための任意の操作が、表示される物理量の値のスケールにおける先行範囲又は後続範囲に対応する別の部分ディスプレイ2の第2の縁部8又は第1の縁部7をそれぞれ調節することになる。
【0051】
それにより、本発明から逸脱することなく、マスクからなる様々な掩蔽手段を使用することができる。重要なことは、これらの掩蔽手段又はマスク6が、対応する部分ディスプレイ2上で使用者が見るただ1つのインジケータを除く全ての前記移動インジケータ4を常に隠すように構成されることである。図面の例では、任意の時間に1つの部分ディスプレイの1本の針のみが見えていることが明らかである。部分ディスプレイ2の数(図1及び図2では2、図3では4、図4では3)に応じて、1本又は複数本の他の針が隠される。
【0052】
また、マスク6を使用して、別の情報、例えば日付を表示するための窓14を設けることもできる。
【0053】
図1〜図3は、秒の区域ディスプレイを示し、これは、使用者が望むように時計100の領域内に表示される。図1及び図2は、半円板を使用するディスプレイの場合を示す。図2は、部分ディスプレイ2Aと2Bが同一であり、完全に同期しており、それぞれが同じ角度位置での針4A、4Bを含むことを示す。図1のマスク6は、図示される時点では針4Aを隠す。ディスプレイ2Bの針4Bのみが見えている。部分ディスプレイ2Bの機構11Bが針4Bを駆動させて、その12時の位置を過ぎると、針4Bは、第2の縁部8Bの下を通るのでもはや見えなくなり、マスク6によって隠される。ちょうどその瞬間に、部分ディスプレイ2Aの針4Aは、部分ディスプレイ2Aの第1の縁部7Aの右に見え、その6時の位置で第2の縁部8Aの下に消えるまで、見えている状態になる。次いで、図1に示されるように、部分ディスプレイ2Bの他方の針4Bが、第1の縁部7Bを過ぎた後に見えるようになる。
【0054】
図3は、部分ディスプレイ2A、2B、2C、2Dを形成する4つの四分円への分割を示す。動作は、図1及び図2に関して説明したのと同様である。
【0055】
本発明が、区別されたディスプレイを異なる振幅の範囲のために形成することもできることは明らかである。例えば、図4の場合には、24時間の区分表示を提案し、部分ディスプレイ2Aでの6時間の振れ幅範囲にわたる朝時間表示と、部分ディスプレイ2Bでの6時間の範囲にわたる午後時間表示と、部分ディスプレイ2Cでの12時間の範囲にわたる夜時間とが区別され、それぞれ異なる外観のスケールを有する。従って、使用者の職業又は活動に応じて特定のタイプのディスプレイを備える安価な時計モデルを使用者に提案することができる。
【0056】
また、図4の同じ場合において、対象の物理量、ここでは時間を別の様式で示すことができることも分かり、例えば、メイン文字盤10に対して移動する時計100のメイン針9では12時間表示であり、機構1及びその部分ディスプレイ2A、2B、2Cでは24時間表示であり、これは、使用者が見慣れている通常の表示に加えて、使用者にAM/PM及び日中/夜間の表示を提供する。
【0057】
図5は、連続機構11A及び11Bによって移動インジケータ4A及び4Bを駆動する例示的形態を示し、連続機構11A及び11Bはそれぞれ、時計100のムーブメント12のホイールと噛み合う単純なピニオンにすることができる。この例が最も安価であるが、本発明から逸脱することなく、ベルト、チェーン、又は他の要素を使用する他の駆動機構を使用することもできる。
【0058】
特定の用途はスポーツ用途に関わり、例えばレガッタなどのレースにおいて、使用者に特に重要なスタート直前の時間と、その前の既定の待機期間に関する時間とを区別するための異なるサイズの文字盤を備える。また、本発明は、カウントダウンと組み合わせることもできる。機構1は、移動インジケータの枢動方向を容易に逆転できるようにし、カウントダウンの方向で区分表示を部分的に又は完全に実現することができる。
【0059】
要約すると、本発明は、低コストの複数区域ディスプレイ装置を提供する。物理量のディスプレイを複数の領域に分割することで、各領域内の限られた空間を使用して非常に読みやすい情報を表示することによって、利用可能な空間をより良く活用できる。通常、ディスプレイが細分化されていない場合、情報は非常に小さなディスプレイに制約される。
【0060】
また、同じ情報の異なる範囲のために複数のディスプレイを周到に配置することで、使用者がそれらを見ることを期待する文字盤の領域内にディスプレイを配置できるようになる。例えば、正方形又は長方形ケースの4隅にずらされた4つの四分円への分割により、使用者が各隅にあるタイムスロットを見ることができるようにし、例えば、このタイムスロットは、使用者が見慣れているように、文字盤の中心に対する中心角で見ることができるものである。
【0061】
いくつかのディスプレイユニットにわたって情報が分散されるが、常にディスプレイユニットの1つのみが情報を示し、これはまた、情報表示が1つのディスプレイユニットから別のディスプレイユニットへ周期的にジャンプすることによって時計文字盤に躍動感を与える。
【0062】
この構成により、一連の表示がそれ独自のリズムを有し、従ってこれが、対象の物理量の1つの領域から他の領域への変化に関して使用者に新たな情報を提供する。
【0063】
躍動感のあるこの表示は、例えばディスプレイユニットの1つから針が消えるように見え、それと同時に、同じ(ものであるかのように見える)針が、対象の物理量の次の表示範囲に対応する別のディスプレイユニットに現れるように見えることによって、不可思議な効果をもたらすことができる。
【0064】
本発明は、単純な機構、低コスト、コンパクト性、読み取りやすい情報、革新的な外観といった多くの利点を有する。
【符号の説明】
【0065】
1 機構
2 部分ディスプレイ
3 部分範囲
4 移動インジケータ
4A、4B 針
5 スケール
6 マスク
7 第1の縁部
8 第2の縁部
9 メイン針
10 メイン文字盤
11 連続機構
12 ムーブメント
13 文字盤
14 窓
15 装飾部分
16A、16B 装飾境界
100 科学的機器、時計
【技術分野】
【0001】
本発明は、科学的機器又は時計において物理量のディスプレイを分割するための複数区域ディスプレイ機構であって、複数の異なる部分ディスプレイ上での1組の部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる複数区域ディスプレイ機構に関する。部分ディスプレイがそれぞれ、所定の上限値と下限値との間で、各部分ディスプレイに特有の所与の部分範囲で前記物理量の変化を表すように構成され、全ての前記部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる。各前記部分ディスプレイがインジケータを含み、インジケータが、当該の前記部分ディスプレイに特有の前記部分範囲を示すスケール又は目盛りに対して移動し、各前記部分ディスプレイが連続機構を含み、連続機構が前記物理量の前記全変化範囲をカバーし、前記部分ディスプレイの前記連続機構が全て互いに同期する。
【0002】
また、本発明は、このタイプの少なくとも1つの機構を組み込む時計に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、科学的機器の分野に関し、より具体的には時計学の分野に関する。
【0004】
本発明が克服することを提案する技術的な問題は、科学的機器又は時計において、同じ所与の物理量の表示を複数のディスプレイユニットに分散させることであり、前記ディスプレイユニットはそれぞれ、所定の上限値と下限値との間の所与の範囲にわたって前記物理量の変化を表さなければならない。
【0005】
メイン時計ディスプレイタイプ及びそれに備えられた複合機能に応じて、このメインディスプレイ及び/又は複合機能のいくつかのために、時計文字盤の1つ又は複数の特定の領域、特に文字盤の中央部を空けておく必要があることがある、又はそれが単純に有利であることがある。
【0006】
このとき、いくつかの物理量の表示をあまり密集していない領域に移動させることができることが有用である。
【0007】
文字盤の実質的に三角形の区域を使用するレトログラードディスプレイを使用することが知られている。しかし、レトログラードディスプレイは、連続ディスプレイを好む使用者にとっては見づらいものである。
【0008】
Lancelに付与された特許文献1では、時間ディスプレイは、Y形状の支持体によって枢支された3つの十字形ホイールセットの1つを介して円形の目盛り付き区域を通るように成され、各ホイールセットは、常に同じ方向に枢動し、十字のただ1つの分岐を除いて全てが円板によって隠され、この分岐は、目盛り付き円形区域と反対にある環状空間内に見える。
【0009】
同様に、Daniel Roth及びGerald Gentaに付与された特許文献2は、連続的に枢動し、かつ2つの複式の逆向き枢動針を担持するホイールセットを開示し、これらの針は、180°の幅にわたる目盛り付き円形区域と反対にある環状区域以外では隠されている。
【0010】
Agenhorに付与された特許文献3におけるように、複数のアームを有する連続機構も知られており、これらは、同じ文字盤に面して逆方向に回転する同一の機構と組み合わせることができる。
【0011】
「ポールピコテクノグラフ」ウォッチも知られており、これは、中央文字盤の各側にある半月状の2つの半文字盤を含み、各半文字盤が異なる機能を有し、内側スケールと外側スケールを含み、それらのスケールに関して、それぞれ同じ複式針の短い針先又は長い針先が位置決めされる。
【0012】
これらの既知の機構の全般的な原理は、不連続な外観を与えるようにマスクと1つ又は複数の特別な針とを組み合わせることである。
【0013】
TIMENTEL PTYに付与された特許文献4は、2つの並置されたケースを有する腕時計を開示し、ここでは、2つのムーブメントが導電体によって同期され、各ムーブメントにレトログラードディスプレイが設けられ、それにより、モータによってそれぞれ動作されるそれらの針は、どちらもマスクの背後で止められるか、又はそれぞれ下側又は上側半文字盤上を移動する。
【0014】
要約すると、単一の目盛り付き文字盤又は同心の複数の目盛り付き文字盤に対置する針、又はより一般的には表示指針の特定の構成を有する機構が存在するが、それらは、レトログラード表示を有し、その動作は時として複雑であり、それらの寸法は、利用可能な空間の使用に対する上記の制約にあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】フランス特許第647409号
【特許文献2】欧州特許第0950932号
【特許文献3】スイス特許第699117号
【特許文献4】フランス特許第2793898号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、複数のディスプレイ上に提供される同じ物理量の表示を時計全体にわたって分散させるという問題に対する、連続ディスプレイによる解決策を提案し、これらのディスプレイはそれぞれ、所定の上限値と下限値との間で前記物理量の所与の範囲を表さなければならない。
【0017】
物理量は、時間に関連する量でよいが、別のタイプの物理量、例えば気圧や湿度などでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、科学的機器又は時計において物理量の表示を分割するための複数区域ディスプレイ機構であって、複数の異なる部分ディスプレイ上の1組の部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる複数区域ディスプレイ機構に関する。部分ディスプレイがそれぞれ、所定の上限値と下限値との間で、各部分ディスプレイに特有の所与の部分範囲にわたって前記物理量の変化を表すように構成され、それにより、全ての前記部分範囲によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる。各前記部分ディスプレイがインジケータを含み、インジケータが、当該の前記部分ディスプレイに特有の前記部分範囲を示すスケール又は目盛りに対して移動し、各前記部分ディスプレイは連続機構を含み、連続機構が前記物理量の前記全変化範囲をカバーする。前記部分ディスプレイの前記連続機構が全て互いに同期する。本発明は、各前記部分ディスプレイが、その前記移動インジケータを前記全範囲を表すスケールに関して移動させるように構成されること、及び各前記部分ディスプレイが掩蔽手段を含み、掩蔽手段が、前記部分ディスプレイに特有の前記部分範囲を表す前記スケールのみに関して部分ディスプレイの移動インジケータが見えるように構成され、さらに、他の全ての部分範囲を表すスケールに関する前記移動インジケータはあまりよく見えない、又はぼんやりとしか見えないように構成されることを特徴とする。
【0019】
本発明の1つの特徴によれば、前記掩蔽手段が少なくとも1つのマスクを含み、マスクが、部分ディスプレイに特有の前記部分範囲のみが見え、他の全ての部分範囲が隠れるように配置され、さらに、前記部分ディスプレイに特有の前記インジケータが他の全ての部分範囲の前にある、又は他の全ての部分範囲の反対にあるときには、前記移動インジケータを隠すように配置される。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、各前記連続機構が循環運動を行う。
【0021】
より具体的には、本発明の別の特徴によれば、各前記連続機構が周期的運動を行う。
【0022】
ある好ましい実施形態に特有の特徴によれば、前記物理量は時間量である。
【0023】
また、本発明は、このタイプの少なくとも1つの機構を組み込む時計に関する。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下の説明を読めば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略前面図である。
【図2】メイン針を省いて示した、本発明による機構に備えられたマスクを取り外した後の図1の時計を示す図である。
【図3】第2の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図4】第3の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図5】図1の時計の概略部分平面図である。
【図6】別の変形形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図7】インジケータ及び文字盤の視覚的側面に基づく別の実施形態である本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図8】図7での時計と同様の図での、図1の実施形態での本発明による機構を含む時計の概略正面図である。
【図9】異なるタイプの装飾を有する図7の実施形態による部分ディスプレイの概略正面図であり、部分範囲での物理量の表示を示す。
【図10】異なるタイプの装飾を有する図7の実施形態による部分ディスプレイの概略正面図であり、該部分ディスプレイから、異なる部分範囲に対応する領域への変化を示す。
【図11】本発明による複数区域ディスプレイ装置を備えて形成された時計の実施例を示す図である。
【図12】本発明による複数区域ディスプレイ装置を備えて形成された時計の実施例を示す図である。
【図13】本発明による複数区域ディスプレイ装置を備えて形成された時計の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、科学的機器の分野に関し、より具体的には時計学の分野に関する。
【0027】
ある物理量の表示を複数の部分表示に分割することは、科学的機器又は時計で利用可能な体積を活用するだけでなく、特定の領域に関する情報を使用者に提供し、1つ又は複数の特定の範囲に関して表示スケール又はインジケータの色が異なる視覚表示を提供することができる。
【0028】
例えば、放射能カウンタは、測定される放射能レベルを、第1の低域範囲で、小さなサイズの第1の窓内で、特定の第1のしきい値まで表示することができる。この第1のしきい値を超えると、より大きな注意を要する領域に対応する第2の範囲に関して、例えば異なる色の針で、第1の窓よりも大きいサイズの第2の窓内で、第2のしきい値まで表示が提供される。この第2のしきい値を超えると、さらに大きなサイズの第3の窓によって、異なる色の針で、第3の危険領域が表される。
【0029】
本明細書では、より具体的には、時計に関する好ましい実施形態に関して本発明を説明するが、先の例に鑑みて、本明細書で以後「科学的機器」と呼ぶデバイスにおいて、測定及び/又は計数手段、及び/又は物理量を生成するための手段に関連付けて任意のタイプの物理量を表示するために本発明を実装することができることは明らかである。
【0030】
本発明は、科学的機器又は時計100において物理量のディスプレイを分割するための複数区域ディスプレイ機構であって、ここで、複数の部分ディスプレイ2上の1組の部分範囲3によって前記物理量の全変化範囲がカバーされる複数区域ディスプレイ機構に関する。
【0031】
これらの部分ディスプレイ2は別個のものであり、それぞれ、所定の上限値と下限値との間で、各部分ディスプレイ2に特有の所与の部分範囲3にわたって、物理量の変化を表すように構成され、それにより1組の部分範囲3によって物理量の全変化範囲がカバーされる。各前記部分ディスプレイ2は、スケール5又は目盛りに対して移動するインジケータ4を含み、スケール5は、該部分ディスプレイ2に特有の前記部分範囲3を表す。
【0032】
本発明によれば、各前記部分ディスプレイ2は、前記物理量の全変化範囲をカバーする連続機構11を含み、この連続機構11は、部分ディスプレイ2の移動インジケータ4を全範囲にわたって移動させるように構成される。部分ディスプレイ2の連続機構11は全て互いに同期される。
【0033】
さらに、本発明によれば、各部分ディスプレイ2は、その移動インジケータ4を前記全範囲を表すスケールに対して移動させるように構成される。各前記部分ディスプレイ2は掩蔽手段を含み、掩蔽手段は、各部分ディスプレイ2に特有の部分範囲3を表すスケール5のみに関して部分ディスプレイ2の移動インジケータ4が見え、さらに、他の全ての部分範囲を表すスケールに関する部分ディスプレイ2の前記移動インジケータ4はあまりよく見えない、又はぼんやりとしか見えないように構成される。
【0034】
図1、図3、図4、図5、図6、及び図8で見られる特定の実施形態では、各部分ディスプレイ2がマスク6を含み、マスク6は、部分ディスプレイ2に特有の部分範囲3のみを露出させ、他の全ての部分範囲を隠すように配置され、さらに、部分ディスプレイ2に特有の移動インジケータ4が他の全ての部分範囲の前にある、又は他の全ての部分範囲の反対にあるときには、移動インジケータ4を隠すように配置される。
【0035】
単純化された実施形態では、掩蔽手段は、移動インジケータ4、典型的には針の形状及び/又は装飾、及び/又はメイン文字盤10の装飾である。
【0036】
図7は、針4A及び4Bの場合を示し、これらの針4A及び4Bは、メイン文字盤10に備えられた装飾部分15と同じ装飾を含み、前記装飾部分は、部分ディスプレイ2A及び2Bに対応する装飾境界16A及び16Bによって境界を画される。
【0037】
図7の場合のように単に色を利用することもできる。
【0038】
また、図9及び図10に見られるように、移動インジケータ4と着色背景部分15の両方の装飾のテクスチャを利用することもでき、ここでは装飾はランダムなテクスチャであり、文字盤の装飾部分15に対して針4の位置を特定するのが非常に難しくなる。このランダムなテクスチャは、カモフラージュ効果を提供し、装飾15の前にある針4をほぼ見えないようにする。
【0039】
本発明によれば、機構1のこれらの部分ディスプレイ2の連続機構11は全て互いに同期する。
【0040】
好ましい実施形態では、機構1は時計100用に開発されている。
【0041】
好ましくは、各部分ディスプレイ2の各連続機構11は、循環運動、より特定的には周期的運動を行う。
【0042】
ここで説明する好ましい用途では、機構1の表示対象となっている物理量は時間量である。
【0043】
各連続機構11は、科学的機器又は時計100に備えられたムーブメント12に同期して結合されるように構成される。
【0044】
図面に示されるように、本発明は、少なくとも1つの物理量、すなわち図1〜図3では秒、又は図4では時間の表示を複数のスケール5、特に目盛りに分け、各スケール5は、文字盤13上に位置され、前記物理量の取り得る全幅の部分領域をカバーする。
【0045】
図面では、移動インジケータ4は針によって形成されている。表示指針、窓付きの円板、又は他のインジケータの形態を取ることもできる。
【0046】
複数の区域で表示全体が形成されており、使用者は、1つの文字盤から他の文字盤に同じ針が飛び移るような印象を受ける。
【0047】
前記移動インジケータ4を駆動する部分ディスプレイ2の連続機構11の移動は全て互いに同期しており、前記部分ディスプレイ2は連続ディスプレイを成す。
【0048】
各部分ディスプレイがマスク6を含み、マスク6は、該部分ディスプレイ2で見える部分範囲3の所定の下限に対応する第1の縁部7と、同じ範囲の所定の上限に対応する第2の縁部8とを含む。
【0049】
図面の例では、全てのマスク6がつながって単一のマスクを形成しているが、これは1つの特定の実施形態にすぎない。
【0050】
図示しない本発明の1つの特定の変形形態では、各マスク6の幅を使用者が例えばサムホイールによって調節することができ、サムホイールは、ベゼルの周縁に位置され、ロック/ロック解除手段を含む。この構成により、使用者が、機構1の部分ディスプレイ2の各部分範囲3を様式設定することができるようになる。この変形形態では、1つの特定の実施形態は、例えば歯車によってマスク6を互いに接続し、それにより、所与の部分ディスプレイ2のマスク6の第1の縁部7又は第2の縁部8を調節するための任意の操作が、表示される物理量の値のスケールにおける先行範囲又は後続範囲に対応する別の部分ディスプレイ2の第2の縁部8又は第1の縁部7をそれぞれ調節することになる。
【0051】
それにより、本発明から逸脱することなく、マスクからなる様々な掩蔽手段を使用することができる。重要なことは、これらの掩蔽手段又はマスク6が、対応する部分ディスプレイ2上で使用者が見るただ1つのインジケータを除く全ての前記移動インジケータ4を常に隠すように構成されることである。図面の例では、任意の時間に1つの部分ディスプレイの1本の針のみが見えていることが明らかである。部分ディスプレイ2の数(図1及び図2では2、図3では4、図4では3)に応じて、1本又は複数本の他の針が隠される。
【0052】
また、マスク6を使用して、別の情報、例えば日付を表示するための窓14を設けることもできる。
【0053】
図1〜図3は、秒の区域ディスプレイを示し、これは、使用者が望むように時計100の領域内に表示される。図1及び図2は、半円板を使用するディスプレイの場合を示す。図2は、部分ディスプレイ2Aと2Bが同一であり、完全に同期しており、それぞれが同じ角度位置での針4A、4Bを含むことを示す。図1のマスク6は、図示される時点では針4Aを隠す。ディスプレイ2Bの針4Bのみが見えている。部分ディスプレイ2Bの機構11Bが針4Bを駆動させて、その12時の位置を過ぎると、針4Bは、第2の縁部8Bの下を通るのでもはや見えなくなり、マスク6によって隠される。ちょうどその瞬間に、部分ディスプレイ2Aの針4Aは、部分ディスプレイ2Aの第1の縁部7Aの右に見え、その6時の位置で第2の縁部8Aの下に消えるまで、見えている状態になる。次いで、図1に示されるように、部分ディスプレイ2Bの他方の針4Bが、第1の縁部7Bを過ぎた後に見えるようになる。
【0054】
図3は、部分ディスプレイ2A、2B、2C、2Dを形成する4つの四分円への分割を示す。動作は、図1及び図2に関して説明したのと同様である。
【0055】
本発明が、区別されたディスプレイを異なる振幅の範囲のために形成することもできることは明らかである。例えば、図4の場合には、24時間の区分表示を提案し、部分ディスプレイ2Aでの6時間の振れ幅範囲にわたる朝時間表示と、部分ディスプレイ2Bでの6時間の範囲にわたる午後時間表示と、部分ディスプレイ2Cでの12時間の範囲にわたる夜時間とが区別され、それぞれ異なる外観のスケールを有する。従って、使用者の職業又は活動に応じて特定のタイプのディスプレイを備える安価な時計モデルを使用者に提案することができる。
【0056】
また、図4の同じ場合において、対象の物理量、ここでは時間を別の様式で示すことができることも分かり、例えば、メイン文字盤10に対して移動する時計100のメイン針9では12時間表示であり、機構1及びその部分ディスプレイ2A、2B、2Cでは24時間表示であり、これは、使用者が見慣れている通常の表示に加えて、使用者にAM/PM及び日中/夜間の表示を提供する。
【0057】
図5は、連続機構11A及び11Bによって移動インジケータ4A及び4Bを駆動する例示的形態を示し、連続機構11A及び11Bはそれぞれ、時計100のムーブメント12のホイールと噛み合う単純なピニオンにすることができる。この例が最も安価であるが、本発明から逸脱することなく、ベルト、チェーン、又は他の要素を使用する他の駆動機構を使用することもできる。
【0058】
特定の用途はスポーツ用途に関わり、例えばレガッタなどのレースにおいて、使用者に特に重要なスタート直前の時間と、その前の既定の待機期間に関する時間とを区別するための異なるサイズの文字盤を備える。また、本発明は、カウントダウンと組み合わせることもできる。機構1は、移動インジケータの枢動方向を容易に逆転できるようにし、カウントダウンの方向で区分表示を部分的に又は完全に実現することができる。
【0059】
要約すると、本発明は、低コストの複数区域ディスプレイ装置を提供する。物理量のディスプレイを複数の領域に分割することで、各領域内の限られた空間を使用して非常に読みやすい情報を表示することによって、利用可能な空間をより良く活用できる。通常、ディスプレイが細分化されていない場合、情報は非常に小さなディスプレイに制約される。
【0060】
また、同じ情報の異なる範囲のために複数のディスプレイを周到に配置することで、使用者がそれらを見ることを期待する文字盤の領域内にディスプレイを配置できるようになる。例えば、正方形又は長方形ケースの4隅にずらされた4つの四分円への分割により、使用者が各隅にあるタイムスロットを見ることができるようにし、例えば、このタイムスロットは、使用者が見慣れているように、文字盤の中心に対する中心角で見ることができるものである。
【0061】
いくつかのディスプレイユニットにわたって情報が分散されるが、常にディスプレイユニットの1つのみが情報を示し、これはまた、情報表示が1つのディスプレイユニットから別のディスプレイユニットへ周期的にジャンプすることによって時計文字盤に躍動感を与える。
【0062】
この構成により、一連の表示がそれ独自のリズムを有し、従ってこれが、対象の物理量の1つの領域から他の領域への変化に関して使用者に新たな情報を提供する。
【0063】
躍動感のあるこの表示は、例えばディスプレイユニットの1つから針が消えるように見え、それと同時に、同じ(ものであるかのように見える)針が、対象の物理量の次の表示範囲に対応する別のディスプレイユニットに現れるように見えることによって、不可思議な効果をもたらすことができる。
【0064】
本発明は、単純な機構、低コスト、コンパクト性、読み取りやすい情報、革新的な外観といった多くの利点を有する。
【符号の説明】
【0065】
1 機構
2 部分ディスプレイ
3 部分範囲
4 移動インジケータ
4A、4B 針
5 スケール
6 マスク
7 第1の縁部
8 第2の縁部
9 メイン針
10 メイン文字盤
11 連続機構
12 ムーブメント
13 文字盤
14 窓
15 装飾部分
16A、16B 装飾境界
100 科学的機器、時計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
科学的機器または時計(100)において物理量の表示を分割するための複数区域ディスプレイ機構(1)であって、複数の異なる部分ディスプレイ(2)上での1組の部分範囲(3)によって前記物理量の全変化範囲がカバーされ、前記部分ディスプレイ(2)がそれぞれ、所定の限界値の上および下の、各部分ディスプレイ(2)に特有の所与の部分範囲(3)で前記物理量の変化を表すように構成され、それにより1組の前記部分範囲(3)によって前記物理量の全変化範囲がカバーされ、各前記部分ディスプレイ(2)がインジケータ(4)を含み、前記インジケータ(4)が、当該の前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記部分範囲(3)を示すスケール(5)または目盛りに対して移動し、各前記部分ディスプレイ(2)が連続機構(11)を含み、前記連続機構(11)が前記物理量の前記全変化範囲をカバーし、前記部分ディスプレイ(2)の前記連続機構(11)がすべて互いに同期する表示機構(1)において、各前記部分ディスプレイ(2)が、その前記移動インジケータ(4)を前記全範囲を表すスケールに関して移動させるように構成されること、および各前記部分ディスプレイ(2)が掩蔽手段を含み、前記掩蔽手段が、前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記部分範囲(3)を表す前記スケール(5)のみに関して前記移動インジケータ(4)が見えるように構成され、さらに、他の全ての部分範囲を表すスケールに関して前記部分ディスプレイ(2)の前記移動インジケータ(4)はあまりよく見えない、またはぼんやりとしか見えないように構成されることを特徴とする、複数区域ディスプレイ機構(1)。
【請求項2】
前記掩蔽手段が少なくとも1つのマスク(6)を含み、前記マスク(6)が、前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記部分範囲(3)のみが見え、他の全ての部分範囲を隠すように配置され、さらに、前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記インジケータ(4)が他の全ての部分範囲の前にある、または他の全ての部分範囲の反対にあるときには、前記移動インジケータ(4)を隠すように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項3】
前記スケール(5)が目盛りを振られていることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項4】
各前記連続機構が循環運動を行うことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項5】
各前記連続機構が周期的運動を行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項6】
前記物理量が、時間に関係する量であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項7】
各前記連続機構(11)が、前記科学的機器または前記時計(100)に備えられたムーブメント(12)に同期して結合されるように構成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項8】
前記部分ディスプレイ(2)の前記連続機構をすべて同期して駆動するように構成されたムーブメントを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの機構(1)を含む時計(100)。
【請求項1】
科学的機器または時計(100)において物理量の表示を分割するための複数区域ディスプレイ機構(1)であって、複数の異なる部分ディスプレイ(2)上での1組の部分範囲(3)によって前記物理量の全変化範囲がカバーされ、前記部分ディスプレイ(2)がそれぞれ、所定の限界値の上および下の、各部分ディスプレイ(2)に特有の所与の部分範囲(3)で前記物理量の変化を表すように構成され、それにより1組の前記部分範囲(3)によって前記物理量の全変化範囲がカバーされ、各前記部分ディスプレイ(2)がインジケータ(4)を含み、前記インジケータ(4)が、当該の前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記部分範囲(3)を示すスケール(5)または目盛りに対して移動し、各前記部分ディスプレイ(2)が連続機構(11)を含み、前記連続機構(11)が前記物理量の前記全変化範囲をカバーし、前記部分ディスプレイ(2)の前記連続機構(11)がすべて互いに同期する表示機構(1)において、各前記部分ディスプレイ(2)が、その前記移動インジケータ(4)を前記全範囲を表すスケールに関して移動させるように構成されること、および各前記部分ディスプレイ(2)が掩蔽手段を含み、前記掩蔽手段が、前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記部分範囲(3)を表す前記スケール(5)のみに関して前記移動インジケータ(4)が見えるように構成され、さらに、他の全ての部分範囲を表すスケールに関して前記部分ディスプレイ(2)の前記移動インジケータ(4)はあまりよく見えない、またはぼんやりとしか見えないように構成されることを特徴とする、複数区域ディスプレイ機構(1)。
【請求項2】
前記掩蔽手段が少なくとも1つのマスク(6)を含み、前記マスク(6)が、前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記部分範囲(3)のみが見え、他の全ての部分範囲を隠すように配置され、さらに、前記部分ディスプレイ(2)に特有の前記インジケータ(4)が他の全ての部分範囲の前にある、または他の全ての部分範囲の反対にあるときには、前記移動インジケータ(4)を隠すように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項3】
前記スケール(5)が目盛りを振られていることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項4】
各前記連続機構が循環運動を行うことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項5】
各前記連続機構が周期的運動を行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項6】
前記物理量が、時間に関係する量であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項7】
各前記連続機構(11)が、前記科学的機器または前記時計(100)に備えられたムーブメント(12)に同期して結合されるように構成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の機構(1)。
【請求項8】
前記部分ディスプレイ(2)の前記連続機構をすべて同期して駆動するように構成されたムーブメントを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの機構(1)を含む時計(100)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−68245(P2012−68245A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205680(P2011−205680)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(591048416)ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(591048416)ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス (63)
【Fターム(参考)】
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