説明

複数層ルウ

【課題】スパイスの香りと水分含量の比較的高い原料のコクとを充分に発揮できるルウを提供すること、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】香味原料を含む香味ルウ層およびコク味原料を含むコク味ルウ層を含む、複数層ルウ。1つの実施形態では、前記香味ルウ層は、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニからなる群より選択される香味原料を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルウに関する。より詳細には、香味原料を含む香味ルウ層およびコク味原料を含むコク味ルウ層を含む複数層ルウに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カレー、シチュー等のルウの製品特性は、風味の質的差異および量的差異によって大きく左右される。このような差異は、ルウの原料の配合、製造プロセス等の差異に起因する。従って、カレー、シチュー等のルウを製造する場合、カレー粉、単独のスパイス等の独特の香りおよび風味が引き立つようにする必要があり、そのために原料配合、製造プロセス等において、様々な工夫を施すことが必要とされている。
【0003】
ルウの香りには、種々の材料が寄与するが、スパイスは非常に大きく寄与している。スパイスは一般に乾燥物として用いられることが多い。スパイスの香りを保持するためには、極力水分を避けることが好ましい。例えば、カレールウよりも乾燥スパイスの方が香りがよく保持され、レトルトカレーよりもカレールウの方が香りがよく保持される。香りの成分(精油)は油溶性であり、油脂中では比較的安定である。しかし、香りの成分は、水分中では、保存するうちに化学反応を起こして品質変化を生じやすい。そのため、ルウを製造する際には、ルウ中の水分をできるだけ少なくして、スパイスと水分との接触をできるだけ避けることが好ましい。
【0004】
他方、ルウのコクには、エキス、ペースト(磨砕物)などの水分含量の比較的高い原料が主に寄与する。このような水分含量の比較的高い原料は、乾燥粉砕物よりも風味に寄与する成分の濃縮度が低いため、原料の風味および香りの特性を最大限に発揮させるためには、乾燥粉砕物よりも多量に配合することが必要である。しかし、エキス、ペースト(磨砕物)などの水分含量の比較的高い原料を多量に使う場合、ルウの混合撹拌処理および充填処理の適性に合うように原料(特に牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類、野菜、果実等、ルウの風味向上に大きく寄与する原料)の水分含量を調整するのに多大な加熱混合処理時間を要する。
【0005】
従来のルウの製造方法では、主に香りに寄与するスパイスと、主にコクに寄与する原料と、白ルウ(小麦粉ルウともいう)とを均一に混合して焙煎することによりルウが製造されてきた。このようなルウにおいては、スパイスの香りと水分含量の比較的高い原料のコクとが充分に発揮されていない。そのため、スパイスの香りと水分含量の比較的高い原料のコクとを充分に発揮できるルウおよびその製造方法を提供することが望まれてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、スパイスの香りと水分含量の比較的高い原料のコクとを充分に発揮できるルウを提供すること、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ルウを香りのルウとコクのルウとに分けて積層することにより、スパイスの香りが引き立ちかつ水分含量の比較的高い原料のコクが充分に発揮されることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。料理の分野では、事前に調味料を混ぜておかず、調理段階で調味料を合わせるという手法がよく採られている。これは、各調味素材を調理直前に混ぜた方が、各々の素材の持ち味が発揮されやすいためと考えられる。本発明により提供される複数層ルウ(特に、二段ルウ)でも同様に、『香りのルウ』と『コクのルウ』とをカレーなどの料理の調理段階で混ぜることにより、各々の素材の風味(旨味、コクおよび香り)が引き立ち、従来より美味しい料理を提供することができる。
【0008】
本発明の複数層ルウは、香味原料を含む香味ルウ層およびコク味原料を含むコク味ルウ層を含む。
【0009】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層はコク味原料を実質的に含まない。
【0010】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層は、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニからなる群より選択される香味原料を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まない。
【0011】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層を調製するために用いられる前記香味原料の量の合計は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の0.01〜10重量%である。
【0012】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層は、香味原料を実質的に含まない。
【0013】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層は、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストからなる群より選択されるペースト原料を含み、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニを実質的に含まない。
【0014】
1つの実施形態では、上記野菜ペーストは、オニオンペーストを含み得る。
【0015】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層を調製するために用いられる前記ペースト原料の量の合計は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の10〜30重量%である。
【0016】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層は、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない。
【0017】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層は、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層は、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜およびオニオンペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない。
【0018】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層の水分含有量は、0.1〜5重量%である。
【0019】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層の水分含有量は、4〜10重量%である。
【0020】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層の体積:前記コク味ルウ層の体積の比は、1:1〜1:5である。
【0021】
本発明の複数層ルウの製造方法は、
第1ルウ層を調製する工程;および
第2ルウ層を該第1ルウ層の上に重層して固化する工程
を包含し、ここで、(1)該第1ルウ層が、香味原料を含む香味ルウ層であり、該第2ルウ層が、コク味原料を含むコク味ルウ層であるか;または(2)該第1ルウ層が、コク味原料を含むコク味ルウ層であり、該第2ルウ層が、香味原料を含む香味ルウ層である。
【0022】
1つの実施形態では、上記香味ルウはコク味原料を実質的に含まない。
【0023】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層は、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニからなる群より選択される香味原料を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まない。
【0024】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層を調製するために用いられる前記香味原料の量の合計は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の0.01〜10重量%である。
【0025】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層は香味原料を実質的に含まない。
【0026】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層は、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストからなる群より選択されるペースト原料を含み、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニを実質的に含まない。
【0027】
1つの実施形態では、上記野菜ペーストは、オニオンペーストを含み得る。
【0028】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層を調製するために用いられる前記ペースト原料の量の合計は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の10〜30重量%である。
【0029】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層は、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない。
【0030】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層は、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層は、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜およびオニオンペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない。
【0031】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層の水分含有量は、0.1〜5重量%である。
【0032】
1つの実施形態では、上記コク味ルウ層の水分含有量は、4〜10重量%である。
【0033】
1つの実施形態では、上記香味ルウ層の体積:前記コク味ルウ層の体積の比は、1:1〜1:5である。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、各々の素材の風味(旨味、コクおよび香り)が引き立ち、従来より美味しい調理物(例えば、カレー)を提供することができる複数層ルウが提供される。本発明の複数層ルウは、同じ原料を用いて従来の方法で調製した従来の1層ルウと比較して、スパイスの香り立ちがよく、パンチが強く、コクおよび香りが引き立つものである。
【0035】
スパイスの香りを保持するためには極力水分を避けた方が良い。例えば、乾燥スパイス>カレールウ>レトルトカレーの順に香りの保持状態は良い。これは、香りの成分(精油)は油溶性であり、油脂中では比較的安定であるが、水分中では保存中の化学反応などによる品質変化が生じやすいためと考えられる。香味ルウ層のルウには水分を多く含むペースト原料が入っていないため、スパイスの香りを損なう水分を最小限に抑えることができ、そのためスパイスの香り立ちがよくなる。
【0036】
さらに、料理の分野では、事前に調味料を混ぜておかず、調理段階で調味料をあわせるという手法がよく採られている。これは、各調味素材を調理直前に混ぜた方が、各々の素材の持ち味が発揮されやすいためと考えられる。本発明の複数層ルウでは、香味原料を含む香味ルウ層およびコク味原料を含むコク味ルウ層を含む複数種類のルウを調理段階で混ぜることになるため、各々の素材の風味(旨味、コク、香り)が引き立ち、1層で製造された場合よりも顕著に美味しくなる。また、複数種類のルウが1つのルウに含まれているため、消費者は、調理段階で何種類ものルウを準備して混合する必要がなく、簡便である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0038】
本発明の複数層ルウは、香味原料を含む香味ルウ層およびコク味原料を含むコク味ルウ層を含む。
【0039】
本明細書中では、「ルウ」とは、料理の味に重要な影響を与える各種の食材を配合して固体にしたものであって、水および各種の具材を加えて煮込んで調理される料理を調理する際に添加されるものをいう。ルウは、例えば、カレー、シチュー(ビーフシチュー、クリームシチューなど)、スープ、ソース、ハッシュドビーフ、ハヤシライス、グラタン、ドリアなどに使用される。ルウは好ましくは、カレールウである。
【0040】
本発明のルウの形態は、ブロック状である。ブロック状とは、いわゆる固形ルウの形状であり、直方体、立方体、多角錘(例えば、三角錐、四角錘、五角錘)、多角錘台(例えば、三角錐台、四角錘台、五角錘台)およびこれらがいくつかくっついて形成された形状などの任意の形状であり得る。本発明のルウは、好ましくは、多角錘台の形状である。
【0041】
本明細書中では、「複数層ルウ」とは、少なくとも2層のルウを含むルウをいう。本発明の複数層ルウは、2層、3層、4層、5層、6層などの任意の数の層からなり得る。本発明の複数層ルウは、好ましくは2層または3層のルウからなり、より好ましくは2層のルウからなる。なお、2層のルウからなるルウにおいて、2層のルウの境界部分のルウは、製造時に一方のルウを他方のルウに重層する際に一旦固化したルウが再度溶解することにより2つのルウが混合されたルウとなっている場合があるが、この混合された部分は、層として数えない。
【0042】
本発明の複数層ルウにおいては、各層がサンドイッチのように平行に積層されていてもよく、一方の層が他方の層によって取り囲まれていてもよい。本発明の複数層ルウにおいては、各層が平行に積層されていることが好ましい。
【0043】
本明細書中では、「香味ルウ層」とは、香味原料を含むルウからなる層をいう。香味ルウ層は好ましくは、コク味原料を実質的に含まない。香味ルウ層は、さらに好ましくは、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニからなる群より選択される香味原料を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まない。コク味原料を含む場合、コク味原料の量は約7重量%以下であることが好ましく、約5重量%以下であることがより好ましく、約1重量%以下であることが特に好ましく、そして約0.1重量%以下であることが最も好ましい。
【0044】
本明細書中では、「コク味ルウ層」とは、コク味原料を含むルウからなる層をいう。コク味ルウ層は好ましくは、香味原料を実質的に含まない。コク味ルウ層は、さらに好ましくは、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストからなる群より選択されるペースト原料を含み、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニを実質的に含まない。香味原料を含む場合、香味原料の量は、約5重量%以下であることが好ましく、約1重量%以下であることがより好ましく、そして約0.1重量%以下であることが特に好ましい。
【0045】
本発明の複数層ルウでは、特に好ましくは、香味ルウ層は、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層は、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない。本発明の複数層ルウでは、さらに好ましくは、香味ルウ層は、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層は、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜およびオニオンペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない。
【0046】
(1.ルウの原料)
(1.1 実質的に香味ルウ層のみに用いる原料)
実質的に香味ルウ層のみに用いられる原料としては、香味原料が挙げられる。本明細書中では、「実質的に香味ルウ層のみに用いられる原料」とは、香味ルウ層の調製にのみ使用される原料、または香味ルウ層の調製での使用量が香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の0.2重量%以上であり、かつ香味ルウ層以外の調製での使用量が、香味ルウ層以外の特定のルウ層(例えば、コク味ルウ層)の調製に使用する原料の合計の0.2重量%未満である原料をいう。
【0047】
本明細書中では、「香味原料」とは、ルウに香味を与えるために用いられる食材をいう。香味原料の例としては、スパイスおよび香味野菜が挙げられる。香味原料は好ましくは、水と接触することによる香味の低下が顕著なスパイスである。香味原料は好ましくは、香味性スパイスである。香味性スパイスとは、香味を有するスパイスであって、主に香味付けに用いられるスパイスである。香味ルウ層のみに用いられる香味性スパイスは、水と接触することによる香味の低下が顕著なスパイスである。このような香味性スパイスの例としては、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニが挙げられる。目的とするルウがカレールウである場合、香味ルウ層のみに用いられる香味性スパイスは、好ましくは、カルダモン、クローブ、コショウおよび乾燥にんにくからなる群より選択され、より好ましくはカルダモンおよびコショウからなる群より選択され、さらに好ましくはカルダモンもしくはコショウまたはその両方である。目的とするルウがシチューである場合、香味ルウ層のみに用いられる香味性スパイスは、好ましくは、コショウ、クローブおよびブーケガルニからなる群より選択される。乾燥にんにくは、生のにんにくとは全く異なり、香りが際立っているため、香味原料として用いられる。生のにんにくは、香りはあまり顕著でないが、コクが際立っているため、コク味原料として用いられる。香味原料は、1種類のみ用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。複数種類組み合わせて用いることが好ましい。
【0048】
本明細書中では、水分量が25重量%以上のにんにくを生のにんにくと呼び、水分量が25重量%未満のにんにくを乾燥にんにくと呼ぶ。ニンニクは、ガーリックとも呼ばれる。生のにんにくは、好ましくは水分量が約40重量%以上であり、より好ましくは約45重量%以上であり、特に好ましくは約50重量%以上である。乾燥にんにくは、好ましくは水分量が約15重量%未満であり、より好ましくは約10重量%以下であり、特に好ましくは約5重量%以下である。
【0049】
香味ルウ層を調製するために用いられる香味原料の量の合計は、好ましくは、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計(重量)の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられる香味原料の量の合計は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは8重量%以下であり、特に好ましくは約5重量%以下である。
【0050】
目的とするルウがカレールウである場合、香味原料の中でも特に、香味ルウ層を調製するために用いられるカルダモンの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、特に好ましくは約0.7重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられるカルダモンの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約1.5重量%以下であり、より好ましくは約1.2重量%以下であり、特に好ましくは約1.0重量%以下である。
【0051】
目的とするルウがカレールウである場合、香味原料の中でも特に、香味ルウ層を調製するために用いられるクローブの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、特に好ましくは約0.05重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられるクローブの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.5重量%以下であり、より好ましくは約0.3重量%以下であり、特に好ましくは約0.1重量%以下である。
【0052】
目的とするルウがカレールウである場合、香味原料の中でも特に、香味ルウ層を調製するために用いられるコショウの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、特に好ましくは約0.05重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられるコショウの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約3重量%以下である。
【0053】
目的とするルウがカレールウである場合、香味原料の中でも特に、香味ルウ層を調製するために用いられる乾燥にんにくの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、特に好ましくは約0.05重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられる乾燥にんにくの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約10重量%以下であり、より好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約3重量%以下である。
【0054】
目的とするルウがシチュールウである場合、香味原料の中でも特に、香味ルウ層を調製するために用いられるクローブの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、特に好ましくは約0.05重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられるクローブの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下であり、特に好ましくは約1重量%以下である。
【0055】
目的とするルウがシチュールウである場合、香味原料の中でも特に、香味ルウ層を調製するために用いられるコショウの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、特に好ましくは約0.05重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられるコショウの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下であり、特に好ましくは約1重量%以下である。
【0056】
目的とするルウがシチュールウである場合、香味原料の中でも特に、香味ルウ層を調製するために用いられるブーケガルニの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.02重量%以上であり、特に好ましくは約0.05重量%以上である。香味ルウ層を調製するために用いられるブーケガルニの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約1重量%以下であり、より好ましくは約0.5重量%以下であり、特に好ましくは約0.3重量%以下である。
【0057】
本明細書において「香味ルウ層の調製に使用する原料の合計(重量)」とは、香味ルウ層の製造に使用する全ての原料の重量の合計であり、すなわち、白ルウの調製に用いられる原料の重量、ならびに白ルウに添加される原料の重量の合計である。
【0058】
(1.2 コク味ルウ層のみに用いる原料)
実質的にコク味ルウ層のみに用いられる原料としては、コク味原料が挙げられる。本明細書中では、「実質的にコク味ルウ層のみに用いられる原料」とは、コク味ルウ層の調製にのみ使用される原料、またはコク味ルウ層の調製での使用量がコク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の0.1重量%以上であり、かつコク味ルウ層以外の調製での使用量が、コク味ルウ層以外の特定のルウ層(例えば、香味ルウ層)の調製に使用する原料の合計の0.1重量%未満である原料をいう。
【0059】
本明細書中では、「コク味原料」とは、ルウにコク味を与えるために用いられる食材をいう。コク味原料は一般に多量の水分を含有する。コク味原料の水分含量は、好ましくは約15重量%〜約95重量%、より好ましくは約20重量%〜約90重量%、さらに好ましくは約30重量%〜約80重量%であり、最も好ましくは約40重量%〜約70重量%である。コク味原料の例としては、ペースト原料、エキス、乳系原料、果汁、ワイン、ブイヨンなどが挙げられる。
【0060】
本明細書においては、「ペースト」とは、液体中に固体粒子が懸濁している、糊状物をいう。ペースト中の固体粒子の大きさは任意であり得るが、好ましくは1μm〜2mm、より好ましくは10μm〜1mm、さらにより好ましくは50μm〜500μmである。ペーストは、例えば、動物または植物体の一部または全部を粉砕または磨砕することによって得られる。ペーストは、動物または植物体の粉砕物または磨砕物そのもの、粉砕物または磨砕物の濃縮物、および粉砕物または磨砕物の希釈物を包含する。ペーストを調製するために用いられる食材は加熱済であっても良いし、未加熱であってもよい。
【0061】
本明細書においては、「エキス」とは、動物または植物体の一部または全体から抽出された任意の物質をいう。エキスは、1種類の抽出成分のみからなっていてもよく、複数の抽出成分の混合物であってもよい。エキスは、例えば、動物または植物体の一部または全体を任意の液体溶媒と接触させることによって得られる。通常、エキス中の抽出成分の濃度は、抽出前の原料中での濃度よりも高い。エキスは、液体溶媒中に抽出成分が移行することによって得られた溶液であってもよいし、この溶液の溶媒を一部またはほぼ完全に蒸発させることによって得られる濃縮物または乾固物であってもよい。エキスは、液体であっても固体であってもよい。抽出に用いる動物または植物体は、生の状態の動物または植物体であってもよいし、部分的またはほぼ完全に乾燥させた動物または植物体であってもよい。抽出に用いられる動物または植物体は、好ましくは、裁断または粉砕された状態のものである。抽出に用いられる溶媒の例としては、水(温水を含む)、有機溶媒(例えば、エーテル、エタノール、エタノールと水との混合物、アセトン)などが挙げられる。エキスは、得られるルウ中に均質に分散しやすく、風味および香りが均質になりやすいため、工業的にルウを製造する場合に特に好適である。
【0062】
ペースト原料としては、肉類のペースト、魚介類のペースト、種実のペースト、海藻のペースト、野菜のペースト、果実のペーストおよびスパイスのペーストが挙げられる。エキスとしては、肉類のエキス、魚介類のエキス、種実のエキス、海藻のエキス、野菜のエキス、果実のエキスおよびスパイスのエキスが挙げられる。ペーストまたはエキスの原料の肉類の例としては、牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉および鴨肉が挙げられる。ペーストまたはエキスの原料の魚介類の例としては、カツオ、イワシ、サケ、タラ、ブリ、サバ、タイ、アジ、イカ、タコ、エビ、カニ、ムール貝、アサリ、ハマグリ、シジミ、ホタテ貝およびカキが挙げられる。ペーストまたはエキスの原料の種実の例としては、アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツ、タマリンド、へーゼルナッツおよび大豆が挙げられる。ペーストまたはエキスの原料の海藻の例としては、海苔および昆布が挙げられる。ペーストまたはエキスの原料の野菜の例としては、ジャガイモ、ニンジン、トマト、セロリ、ハクサイ、シイタケ、シメジおよびマッシュルームが挙げられる。ペーストまたはエキスの原料の果実の例としては、リンゴ、ココナツ、マンゴ、レーズン、バナナ、パパイアおよびパイナップルが挙げられる。
【0063】
特に好ましいペースト原料の例としては、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜、野菜ペースト(例えば、オニオンペースト)、チャツネおよびミートエンハンサーが挙げられる。コク味原料は好ましくは、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストからなる群より選択され、より好ましくはフルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜およびオニオンペーストからなる群より選択され、さらに好ましくはフルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストであり、特に好ましくはフルーツペースト、生のにんにく、生の生姜およびオニオンペーストである。上記のように、生のにんにくは、乾燥にんにくとは全く異なり、香りはあまり顕著でないが、コクが際立っているため、コク味原料として用いられる。生の生姜は、乾燥生姜とは全く異なり、香りはあまり顕著でないが、コクが際立っているため、コク味原料として用いられる。本明細書中では、水分量が40重量%以上の生姜を生の生姜と呼び、水分量が40重量%未満の生姜を乾燥生姜と呼ぶ。生姜は、ジンジャーとも呼ばれる。生の生姜は、好ましくは水分量が約70重量%以上であり、より好ましくは約80重量%以上であり、特に好ましくは約90重量%以上である。乾燥生姜は、好ましくは水分量が約15重量%未満であり、より好ましくは約10重量%以下であり、特に好ましくは約5重量%以下である。
【0064】
本明細書において「乳系原料」とは、当該分野で公知の任意の乳および乳製品ならびにこれらを主要原料とする食品をいう。「乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、脱脂乳及び加工乳をいう。「乳製品」とは、クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、タンパク質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料および乳飲料をいう。「これらを主要原料とする食品」の例としては、ミルクソース、クリームチーズソース、キャラメルソースなどが挙げられる。目的とするルウの風味を調整するために、必要に応じて1種または2種以上の乳系原料を選択して用いることができる。「乳および乳製品を主要原料とする食品」とは、食品中に乳および乳製品を、食品の重量を基準として5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有する食品をいう。
【0065】
本明細書において「果汁」とは、果実を搾汁して得られる液体をいう。果実は任意の果実であり得る。
【0066】
本明細書において「ワイン」とは、果物の果汁を発酵させて得られるアルコール含有液をいう。ワインは好ましくはブドウの果汁を発酵させて得られる。
【0067】
本明細書において「ブイヨン」とは、動物、野菜などを煮出して得られるだし汁をいう。ブイヨンは例えば、牛の骨、肉、筋;チキンの骨、肉;野菜などから得られ得る。
【0068】
コク味原料は、1種類のみ用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。複数種類組み合わせて用いることが好ましい。
【0069】
コク味ルウ層を調製するために用いられるコク味原料の量の合計は、好ましくは、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計(重量)の約5重量%以上であり、より好ましくは約10重量%以上であり、特に好ましくは約15重量%以上である。コク味ルウ層を調製するために用いられるコク味原料の量の合計は、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、特に好ましくは約30重量%以下である。
【0070】
コク味ルウ層を調製するために用いられるペースト原料の量の合計は、好ましくは、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計(重量)の約2重量%以上であり、より好ましくは約5重量%以上であり、特に好ましくは約10重量%以上である。コク味ルウ層を調製するために用いられるペースト原料の量の合計は、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、特に好ましくは約25重量%以下である。
【0071】
コク味原料の中でも特に、コク味ルウ層を調製するために用いられるフルーツペーストの量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.5重量%以上であり、より好ましくは約1重量%以上であり、特に好ましくは約3重量%以上である。コク味ルウ層を調製するために用いられるフルーツペーストの量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、特に好ましくは約5重量%以下である。
【0072】
コク味原料の中でも特に、コク味ルウ層を調製するために用いられるミートペーストの量は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約1重量%以上であり、より好ましくは約3重量%以上であり、特に好ましくは約5重量%以上である。コク味ルウ層を調製するために用いられるミートペーストの量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約15重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、特に好ましくは約8重量%以下である。
【0073】
コク味原料の中でも特に、コク味ルウ層を調製するために用いられる生のにんにくの量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約1重量%以上であり、より好ましくは約2重量%以上であり、特に好ましくは約3重量%以上である。コク味ルウ層を調製するために用いられる生のにんにくの量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、特に好ましくは約5重量%以下である。
【0074】
コク味原料の中でも特に、コク味ルウ層を調製するために用いられる生の生姜の量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.2重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、特に好ましくは約1重量%以上である。コク味ルウ層を調製するために用いられる生の生姜の量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以下であり、より好ましくは約3重量%以下であり、特に好ましくは約2重量%以下である。
【0075】
コク味原料の中でも特に、コク味ルウ層を調製するために用いられる野菜ペーストの量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約1重量%以上であり、より好ましくは約2重量%以上であり、特に好ましくは約4重量%以上である。コク味ルウ層を調製するために用いられる野菜ペーストの量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、特に好ましくは約5重量%以下である。
【0076】
本明細書において「コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計(重量)」とは、コク味ルウ層の製造に使用する全ての原料の重量の合計であり、すなわち、プリクックの調製に用いられる原料の重量、白ルウの調製に用いられる原料の重量、ならびに白ルウに添加される原料の重量の合計である。
【0077】
(1.3 香味ルウ層およびコク味ルウ層のいずれにも用い得る原料)
香味ルウ層およびコク味ルウ層のいずれにも用い得る原料としては、スパイス、スパイス以外の乾燥食材、糖類、調味料(例えば、粉体調味料)、他の添加物、油脂および小麦粉が挙げられる。
【0078】
(1.3.1 スパイス)
スパイスは、当該分野で用いられる任意のスパイスであり得る。一般に、複数のスパイスを組み合わせることによって得られる複合スパイスはカレー粉と呼ばれる。スパイスは一般に、香味性スパイス、辛味性スパイスおよび香色性スパイスに分けられる。スパイスは、1種類のみ用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。複数種類組み合わせて用いることが好ましい。
【0079】
上記の通り、香味性スパイスとは、香味を有するスパイスであって、主に香味付けに用いられるスパイスである。香味性スパイスのうち、水と接触することによる香味の低下がほとんどみられないスパイスは、香味ルウ層およびコク味ルウ層のいずれにも配合され得る。このような香味性スパイスの例としては、コリアンダーおよびクミンが挙げられる。香味性スパイスは、1種類のみ用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。複数種類組み合わせて用いることが好ましい。
【0080】
香味ルウ層を調製するためにこのような香味性スパイスを用いる場合、その量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.05重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.2重量%以上である。この香味性スパイスの量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約20重量%以下であり、より好ましくは約15重量%以下であり、特に好ましくは約10重量%以下である。
【0081】
コク味ルウ層を調製するためにこのような香味性スパイスを用いる場合、その量(乾燥重量)は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0.05重量%以上であり、より好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.2重量%以上である。この香味性スパイスの量(乾燥重量)は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以下であり、より好ましくは約4重量%以下であり、特に好ましくは約3重量%以下である。
【0082】
辛味性スパイスとは、辛味を有するスパイスであって、主に辛味付けに用いられるスパイスである。辛味性スパイスの例としては、赤唐辛子、青唐辛子、花椒およびマスタードが挙げられる。辛味性スパイスは好ましくはカレールウを調製する際に使用される。任意の辛味性スパイスが、香味ルウ層およびコク味ルウ層のいずれにも配合され得る。辛味性スパイスは、1種類のみ用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。複数種類組み合わせて用いることが好ましい。
【0083】
カレールウ用の香味ルウ層を調製するために辛味性スパイスを用いる場合、その量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0重量%以上約7重量%以下である。
【0084】
カレールウ用のコク味ルウ層を調製するために辛味性スパイスを用いる場合、その量(乾燥重量)は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0重量%以上約7重量%以下である。
【0085】
香色性スパイスとは、多量の色素を含むスパイスであって、辛味が弱く、香味があり、着色力が強いスパイスである。香色性スパイスの例としては、ターメリック、パプリカおよびサフランが挙げられる。香色性スパイスは好ましくはカレールウを調製する際に使用される。目的とするルウの風味および色調を調整するために、必要に応じて1種または2種以上のスパイスを選択して用いることができる。香色性スパイスは、1種類のみ用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。複数種類組み合わせて用いることが好ましい。
【0086】
カレールウ用の香味ルウ層を調製するために香色性スパイスを用いる場合、その量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0重量%以上約10重量%以下である。
【0087】
カレールウ用のコク味ルウ層を調製するためにこのような香色性スパイスを用いる場合、その量(乾燥重量)は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0重量%以上約10重量%以下である。
【0088】
(1.3.2 スパイス以外の乾燥食材)
本明細書において「スパイス以外の乾燥食材」とは、スパイス以外の食材であって、乾燥した食材をいう。本明細書において、食材とは、食用にする物品をいう。乾燥食材の水分含量は、好ましくは約15重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、特に好ましくは約5重量%以下である。スパイス以外の乾燥食材の例としては、肉類、魚介類、種実、海藻、野菜または果実の乾燥粉砕物が挙げられる。乾燥食材は、1種類のみ用いられてもよく、複数種類組み合わせて用いられてもよい。複数種類組み合わせて用いることが好ましい。
【0089】
香味ルウ層を調製するためにスパイス以外の乾燥食材を用いる場合、その量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以上約20重量%以下である。
【0090】
コク味ルウ層を調製するためにスパイス以外の乾燥食材を用いる場合、その量(乾燥重量)は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以上約20重量%以下である。
【0091】
乾燥粉砕物は、上記に列挙したような肉類、魚介類、種実、海藻、野菜、果実またはスパイスを乾燥後粉砕することによって、あるいは粉砕後乾燥することによって得られ得る。乾燥粉砕物はパウダー状であってもブロック状であってもよい。乾燥粉砕物の平均粒径は任意であり得るが、好ましくは1μm〜10mm、より好ましくは10μm〜5mm、さらにより好ましくは30μm〜1mmである。乾燥粉砕物は、得られるルウ中に均質に分散しやすく、風味および香りが均質になりやすいため、工業的にルウを製造する場合に特に好適である。
【0092】
(1.3.3 糖類)
本明細書において「糖類」とは、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、澱粉分解物および水溶性植物繊維をいう。糖類としては、当該分野で市販される任意の糖類が使用され得る。糖類の例としては、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、麦芽糖、果糖、乳糖、トレハロース、マルチトール、パラチニット、ハチミツ、リン酸化オリゴ糖、黒砂糖、糖蜜;水飴、デキストリン等の澱粉分解物;ポリデキストロース等の食物繊維が挙げられる。目的とするルウの甘味の程度を調整するために、必要に応じて1種または2種以上の糖類を選択して用いることができる。
【0093】
香味ルウ層を調製するために糖類を用いる場合、その量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0重量%以上約20重量%以下である。
【0094】
コク味ルウ層を調製するために糖類を用いる場合、その量(乾燥重量)は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約0重量%以上約20重量%以下である。
【0095】
(1.3.4 調味料)
本明細書において「調味料」とは、味を調える目的で添加される物質をいう。なお、本明細書中では、糖類は、調味料に含まれない。調味料は好ましくは粉体調味料である。調味料の例としては、L−グルタミン酸ナトリウム、食塩、醤油、ウスターソース、核酸、酢およびトマトケチャップが挙げられる。目的とするルウの味を調整するために、必要に応じて1種または2種以上の調味料を選択して用いることができる。
【0096】
香味ルウ層を調製するために調味料を用いる場合、その量(乾燥重量)は、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以上約20重量%以下である。
【0097】
コク味ルウ層を調製するために調味料を用いる場合、その量(乾燥重量)は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の約5重量%以上約20重量%以下である。
【0098】
(1.3.5 他の添加物)
他の添加物の例としては、フレーバー、着色料、酸味料、乳化剤、酸化防止剤、増粘剤などが挙げられる。
【0099】
(1.3.6 油脂)
本発明の製造方法では、コク味原料を加熱する工程において、コク味原料を油脂の存在下で加熱することが好ましい。コク味原料を油脂の存在下で加熱することにより、コク味原料の風味および香りをより好適に醸成し得る。
【0100】
さらに、本発明の製造方法では、白ルウを調製する工程において、澱粉系原料を油脂の存在下で加熱することにより、白ルウが調製される。本発明の製造方法ではまた、必要に応じて、白ルウと香味原料とを、追加の油脂の存在下で混合してもよい。本発明の製造方法ではまた、必要に応じて、白ルウとプリクックされたコク味原料と他のコク味ルウ層原料とを、追加の油脂の存在下で混合してもよい。白ルウには多量の油脂が含まれているので、通常、追加の油脂は不要である。コク味原料を加熱する工程において用いられる油脂と、白ルウを調製する工程において用いられる油脂と、白ルウと香味原料とを混合する工程において用いられる油脂と、白ルウとプリクックされたコク味原料と他のコク味ルウ層原料とを混合する工程において用いられる油脂とは、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。
【0101】
油脂としては、任意の植物油脂および動物油脂ならびにこれらを原料として得られた硬化油、エステル交換油などを用い得る。植物油脂の例としては、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、コーン油、サフラワー油、パーム油および米油が挙げられる。動物油脂の例としては、牛脂、ギー、バター、バターオイルおよびラードが挙げられる。これらの油脂は、単独であるいは混合して用いることができる。油脂の融点は任意であり得る。例えば、目的とするルウの形状がブロック状である場合、油脂の融点は、好ましくは約30℃〜約60℃、より好ましくは約40℃〜約50℃である。
【0102】
コク味原料を加熱する工程において油脂を用いる場合、油脂の量は、コク味原料の合計100重量部に対して、好ましくは約10重量部〜約40重量部であり、より好ましくは約15重量部〜約35重量部であり、最も好ましくは約20重量部〜約30重量部である。
【0103】
白ルウを調製する工程において用いられる油脂の量は、使用される白ルウ原料の全量の、好ましくは約30重量%〜約80重量%であり、より好ましくは約40重量%〜約55重量%である。
【0104】
白ルウと香味原料とを混合する工程において追加で用いられ得る油脂の量は、使用される各層の原料の好ましくは約0重量%〜約30重量%であり、より好ましくは約0重量%〜約20重量%であり、特に好ましくは約5重量〜約10重量%である。
【0105】
白ルウとプリクックされたコク味原料と他のコク味ルウ層原料とを混合する工程において追加で用いられ得る油脂の量は、使用される各層の原料の好ましくは約0重量%〜約30重量%であり、より好ましくは約0重量%〜約20重量%であり、特に好ましくは約5重量〜約10重量%である。
【0106】
本発明の複数層ルウの各ルウ層において使用される油脂の量の合計は、各ルウ層の調製に使用する原料の合計の、好ましくは約20重量%以上であり、さらに好ましくは約25重量%以上であり、特に好ましくは約30重量%以上である。本発明の複数層ルウの各ルウ層において使用される油脂の量の合計は、各ルウ層の調製に使用する原料の合計の、好ましくは約45重量%以下であり、さらに好ましくは約40重量%以下であり、特に好ましくは約35重量%以下である。
【0107】
(1.3.7 油脂以外の白ルウ原料)
本明細書中で「白ルウ」とは、油脂および澱粉系原料を含む白ルウ原料を加熱することによって得られるものをいう。白ルウは、当該分野では、ホワイトルウ、小麦粉ルウ、ブラウンルウなどと呼ばれることもある。本明細書中では、当該分野での慣例に従って「白ルウ」との用語を用いる。白ルウは、小麦粉ルウとも呼ばれるが、必ずしも小麦粉を含まなくても良い。
【0108】
白ルウ原料は、油脂および澱粉系原料を含む。
【0109】
油脂としては、上記の(1.3.6)に記載の任意の植物油脂および動物油脂ならびにこれらを原料として得られた硬化油、エステル交換油などを用い得る。これらの油脂は、単独であるいは混合して用いることができる。白ルウに用いられる油脂は、プリクックされたコク味原料の調製に用いられ得る油脂と同種の油脂であっても異なる種類の油脂であってもよい。
【0110】
澱粉系原料としては、任意の澱粉および穀粉を用い得る。澱粉の例としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉などの地下澱粉;コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉(例えば、もち米澱粉、粳米澱粉)などの地上澱粉;および架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、可溶性澱粉、漂白澱粉などの化工デンプンが挙げられる。穀粉の例としては、小麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、米粉、コーンフラワー、あわ粉、きび粉、はと麦粉およびひえ粉が挙げられる。澱粉系原料は、小麦粉を含むことが好ましく、小麦粉であることがより好ましい。小麦粉は、強力粉、中力粉、薄力粉のいずれであってもよいが、薄力粉が好ましい。必要に応じて1種または2種以上の澱粉系原料を選択して用いることができる。
【0111】
白ルウを調製する工程において用いられる澱粉系原料の量は、使用される白ルウ原料の全量の、好ましくは約10重量%〜約70重量%であり、より好ましくは約45重量%〜約60重量%である。
【0112】
原料の風味および香りを引き立たせ、かつ相互に馴染ませる効果を適切に得るために、各得られるルウ層に含まれる白ルウの量は、好ましくは約40重量%以上であり、さらに好ましくは約45重量%以上であり、特に好ましくは約50重量%以上である。各得られるルウ層に含まれる白ルウの量は、好ましくは約80重量%以下であり、さらに好ましくは約75重量%以下であり、特に好ましくは約70重量%以下である。
【0113】
(2.複数層ルウの製造)
本発明の複数層ルウの製造方法は、第1ルウ層を調製する工程;および第2ルウ層を該第1ルウ層の上に重層して固化する工程を包含し、ここで、(1)該第1ルウ層が、香味原料を含む香味ルウ層であり、該第2ルウ層が、コク味原料を含むコク味ルウ層であるか;または(2)該第1ルウ層が、コク味原料を含むコク味ルウ層であり、該第2ルウ層が、香味原料を含む香味ルウ層である。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明の製造方法は、
香味ルウ層用白ルウを製造する工程、
白ルウ以外の香味ルウ層原料を香味ルウ層用白ルウと混合して、香味ルウを調製する工程、
コク味ルウ層用白ルウを製造する工程、
白ルウ以外のコク味ルウ層原料をコク味ルウ層用白ルウと混合して、コク味ルウを調製する工程、および
該香味ルウおよび該コク味ルウを積層する工程
を包含する。
【0115】
ここで、香味ルウ層用白ルウと、コク味ルウ層用白ルウとを同一の白ルウとしてもよい。その場合、本発明の製造方法は、
白ルウを製造する工程、
白ルウ以外の香味ルウ層原料を白ルウと混合して、香味ルウを調製する工程、
白ルウ以外のコク味ルウ層原料を白ルウと混合して、コク味ルウを調製する工程、および
該香味ルウおよび該コク味ルウを積層する工程
を包含する。
【0116】
上述した方法において、白ルウ以外のコク味ルウ層原料は、予め加熱処理しておいた後に白ルウと混合することが好ましい。また、白ルウ以外の香味ルウ層原料は、加熱処理を行わずに、白ルウと混合することが好ましい。
【0117】
本明細書中では、上述した白ルウを中間製品として作成して最終的な複数層ルウを製造する方法を主に説明する。しかし、本発明はこの方法に限定されるものではなく、例えば、白ルウをいったん製造することなく、香味ルウ層の各種原料を混合して香味ルウ層を直接調製してもよく、また、コク味ルウ層の各種原料を混合してコク味ルウ層を直接調製してもよい。このように白ルウを製造することをしない場合であっても、用いる原料等は、白ルウをいったん製造する場合と同様である。
【0118】
本発明の方法において、各層のルウを製造するに際しては、任意の調理器具(例えば、加熱釜または冷却釜など)が使用可能である。ここで、調理器具とは、ルウの原材料を収容できる容器であって、原料を収容した状態で攪拌、加熱または冷却などの調理作業を行うことができる任意の器具をいう。
【0119】
例えば、ルウを製造する調理器具として従来公知の釜などが使用可能である。
【0120】
具体的には、ペースト原料などのコク味原料を油脂の存在下で加熱する工程(プリクック工程)および白ルウ原料を加熱して白ルウを得る工程においては、任意の加熱用調理器具が使用可能である。これらの加熱用調理器具の加熱方式は任意の加熱方式であり得る。例えば、スチーム加熱、電気ヒーター加熱、直火による加熱、マイクロ波加熱または電磁加熱など各種の加熱方式が可能である。工業的な生産効率、設備コストおよび温度制御の容易さなどの点で、スチーム加熱が好ましい。
【0121】
プリクックが行われる材料の例としては、コク味原料のような予め加熱して水分をとばすことが好ましい材料が挙げられる。コク味原料に加えて、糖類、調味料などをプリクックしてもよい。
【0122】
プリクック後のコク味原料と白ルウと他のコク味ルウ層原料との混合を行う工程、および白ルウと他の香味ルウ層原料との混合を行う工程においては、上記の任意の加熱用調理器具を用いてもよいが、加熱を行わずに混合する調理器具または冷却用調理器具を使用することが好ましい。ここで冷却用調理器具には、放冷するための調理器具をも含むが、好ましくは、強制的に冷却する構造を有する調理器具である。特に、香味原料にはあまり熱をかけないことが好ましいので、強制的に冷却する構造を有する冷却用調理器具を用いることが好ましい。なお、本明細書中で「冷却する」とは、温度を低下させることをいい、放冷することを含む。冷却方式としては、各種の冷却方式が採用可能であるが、工業的生産効率および設備コストなどの点で、水冷式が好ましい。水冷式で強制的に冷却する手段としては、例えば、釜の周囲に配置したジャケットに冷却水を流す冷却装置などがある。
【0123】
上述した調理器具として、もちろん、加熱および冷却の両方の機能を備えた、加熱冷却両用の調理器具を用いてもよい。
【0124】
(2.1 香味ルウ層の調製)
香味ルウ層は、香味ルウ層の各種材料を混合することにより調製される。好ましい実施形態では、まず、白ルウを調製し、白ルウと他の香味ルウ層原料とを混合し、必要に応じて貯蔵し、次いで容器などに充填して固化させることにより調製される。
【0125】
(2.1.1 白ルウの調製)
白ルウは、常法に従って調製され得る。例えば、白ルウは、油脂および澱粉系原料を含む白ルウ原料を加熱することによって調製される。小麦粉原料は、好ましくは100℃〜150℃、より好ましくは110℃〜140℃の到達品温になるように加熱される。白ルウ原料を加熱する場合、油脂および澱粉系原料を一度に加熱手段に投入して加熱を開始してもよく、油脂を先に加熱手段に投入して加熱を開始し、途中で澱粉系原料を追加してもよい。好ましくは、油脂を先に加熱手段に投入して加熱を開始し、途中で澱粉系原料を追加して加熱する。油脂および澱粉系原料以外の白ルウ原料は、油脂または澱粉系原料と一緒に加熱手段に投入されてもよく、油脂と澱粉系原料との混合後に投入されてもよい。加熱時間は、良好な白ルウが得られる限り任意である。好ましくは、品温が100℃以上となる時間が約10分間〜約5時間、より好ましくは約30分間〜約2時間となるように設定される。
【0126】
白ルウは、香味ルウ層用とコク味ルウ層用と(必要に応じて他のルウ層用と)で共通に調製されてもよく、それぞれ専用に調製されてもよい。専用に調製される場合、白ルウの組成は、香味ルウ層用とコク味ルウ層用と(必要に応じて他のルウ層用と)で共通であっても異なっていてもよい。
【0127】
(2.1.2 白ルウと他の香味ルウ層原料との混合)
このようにして白ルウが得られたら、白ルウと他の香味ルウ層原料とを混合する。他の香味ルウ層原料と混合する際の白ルウの温度は、白ルウが固化しない限りは任意の温度であり得る。例えば、白ルウを調製した直後に白ルウが高温(例えば、約70℃〜約150℃)のときに他の香味ルウ層原料と混合してもよく、白ルウの調製後、冷却して低温(例えば、約50℃〜約65℃)になったときに他の香味ルウ層原料と混合してもよい。香味ルウ層原料は、あまり加熱されないことが好ましい。なぜなら、過度に加熱すると、目的とする香味が過度に失われる場合があるからである。それゆえ、白ルウの調製後、冷却して低温(例えば、約100℃以下)になったときに他の香味ルウ層原料と混合することが好ましい。白ルウと他の香味ルウ層原料とは、任意の調理器具内で混合され得る。白ルウと他の香味ルウ層原料とは、好ましくは冷却手段内で強制冷却しながら混合される。強制冷却することにより、他の香味ルウ層原料の香味が過度に失われることを防ぎ得る。
【0128】
白ルウと他の香味ルウ層原料とを混合する際に混合物の品温が低すぎると、例えば、融点が50℃以上の油脂を使用する場合に品温が油脂の固化開始温度に近づいてルウの粘度が上昇しやすくなり、混合物の混合が困難になる場合がある。混合しながら冷却する際の混合物の品温が高すぎると、得られたルウを充填装置によって容器に充填し、固化させる際に固化に要する時間が長すぎる場合、ルウ表面の油脂が粗大結晶化を起こす場合、およびルウ表面に油浮きを生じる場合がある。
【0129】
白ルウと他の香味ルウ層原料との混合時間は特に限定されないが、好ましくは約10分間〜約3時間であり、より好ましくは約20分間〜約2時間であり、特に好ましくは約30分間〜約1時間である。なお、本明細書中では、「白ルウと他の香味ルウ層原料との混合時間」とは、白ルウと他の香味ルウ層原料とを合わせて混合し始めてから、その混合物の温度が下がって初めて60℃になるまでの時間である。混合時間が長すぎると、目的とする香味が過度に失われる場合がある。混合時間が短すぎると、白ルウと他の香味ルウ層原料とが充分に混合されない場合がある。
【0130】
(2.1.3 貯蔵および充填)
混合された香味ルウ層のルウは、従来の方法に従って、必要により貯蔵され、容器に充填され、次いで冷却されることにより、固形ルウにされる。充填容器においてコク味ルウ層が上層となるべき場合、まず香味ルウ層を固化させた後にコク味ルウ層が充填されて固化される。充填容器においてコク味ルウ層が下層となるべき場合、まずコク味ルウ層を固化させた後に香味ルウ層が充填されて固化される。3層目以降の層が設けられる場合についても同様である。
【0131】
このようにして得られる香味ルウ層の油脂含量は、好ましくは約20重量%以上であり、さらに好ましくは約25重量%以上であり、特に好ましくは約30重量%以上である。このようにして得られる香味ルウ層の油脂含量は、好ましくは約45重量%以下であり、さらに好ましくは約40重量%以下であり、特に好ましくは約35重量%以下である。香味ルウ層の製造の間の加熱により、香味ルウ層の原料の水分がある程度蒸発するので、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計に対する油脂の使用量よりも、香味ルウ層の油脂含量は幾分高くなることが多い。
【0132】
このようにして得られる香味ルウ層の水分含量は、好ましくは約5重量%以下であり、より好ましくは約4重量%以下であり、特に好ましくは約3重量%以下である。香味成分の劣化を防ぐ面から香味ルウ層に含まれる水分は少ない方が好ましいので、香味ルウ層の水分含量に下限は特にないが、使用する原料にいくらかの水分が含まれていることが多いので、0でない場合が多い。このような場合、水分含量の下限は、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上などであり得る。
【0133】
(2.2 コク味ルウ層の調製)
コク味ルウ層は、コク味ルウ層の各種材料を混合することにより調製される。好ましい実施形態では、白ルウを調製し、コク味原料をプリクックし、白ルウと、プリクックしたコク味原料と、他のコク味ルウ層原料とを混合し、必要に応じて貯蔵し、次いで容器などに充填して固化させることにより調製される。
【0134】
(2.2.1 白ルウの調製)
白ルウは、上記2.1.1に記載と同様にして、常法に従って調製され得る。白ルウは、コク味原料のプリクックと並行して、あるいはコク味原料のプリクックの前または後に、白ルウを調製する。プリクックされたコク味原料の温度が70℃〜150℃の温度範囲にあるときに白ルウの調製が終了するようなタイミングで白ルウを製造することが好ましい。コク味原料のプリクックと白ルウの調製とは、好ましくは、別個の加熱手段において行われる。コク味原料がプリクックされた後にこの原料に白ルウ原料を加えて加熱を行うことは好ましくない。なぜなら、白ルウ原料中の澱粉系原料が、コク味原料に含まれる水分と反応して糊化することによってプリクックされたコク味原料と白ルウ原料との混合物の粘度が上昇してこの混合物の攪拌がうまくできなくなる場合、および澱粉系原料の十分な焙煎効果が得られず、白ルウが粉っぽい風味になる場合があるからである。白ルウを調製した後にこの白ルウに水分含有食材を加えて加熱を行うことも、同様に糊化が生じて攪拌がうまくできなくなる場合があるので好ましくない。
【0135】
(2.2.2 コク味原料のプリクック)
コク味原料をプリクックする工程においては複数種のコク味原料を用いることが好ましい。さらに、2種以上のペースト原料を用いることが好ましい。2種以上のコク味原料を加熱する場合、加熱するコク味原料を一度に加熱手段に投入して加熱を開始してもよく、一部のコク味原料を先に加熱手段に投入して加熱を開始し、途中で残りのコク味原料を追加してもよい。好ましくは、すべてのコク味原料を一度に加熱手段に投入して加熱を開始する。複数種のコク味原料を組み合わせて加熱することにより、これらのコク味原料の風味が融合し、コク味原料の組み合わせに応じてバラエティーに富んだ風味が得られ、その結果、最終的に得られるルウの風味向上に寄与し得る。
【0136】
コク味原料をプリクックする工程においては、コク味原料を油脂の存在下で加熱し得る。コク味原料を油脂の存在下で加熱することにより、より一層好適に醸成された風味および香りが得られ得る。そのため、コク味原料を油脂の存在下で加熱することが好ましい。
【0137】
コク味原料を加熱する際には、コク味原料を混合しながら加熱することが好ましい。コク味原料を加熱する際には、到達品温が約90℃〜約150℃になるように加熱することが好ましく、到達品温が約100℃〜約130℃になるように加熱することがより好ましい。品温がこれらの到達温度になった後も、それ以上に品温が上昇しないように加熱を続けることが可能である。このようにしてコク味原料を加熱することにより、各コク味原料の風味を引き立たせ、かつ相互に馴染ませる効果が得られ、その結果、これを用いて製造したルウの風味品質が向上する。加熱する際の到達品温が低すぎると、水分を蒸発させるのに時間がかかり、コク味原料の風味の発現および融合が不十分となる場合がある。
【0138】
コク味原料を加熱する時間は、コク味原料の量、コク味原料の水分含量、加熱手段の温度およびコク味層ルウの所望の水分含量に依存する。コク味原料の加熱は、プリクック後の混合物の水分含量が好ましくは約1重量%〜約30重量%となるまで、より好ましくは約5重量%〜約20重量%となるまで行われる。具体的には例えば、品温が100℃以上の時間が好ましくは約10分間〜約5時間であり、より好ましくは約20分間〜約3時間であり、特に好ましくは約30分間〜約2時間である。
【0139】
なお、本明細書中では、「水分含量」とは、対象の物質に含まれる水分の、対象物質の重量に対する割合をいう。例えば、プリクックされたコク味原料の水分含量という場合、プリクックされたコク味原料に含まれる水分の、プリクックされたコク味原料全体の重量に対する割合をいう。例えば、特定のペースト原料の水分含量という場合、そのペースト原料に含まれる水分の、そのペースト原料の重量に対する割合をいう。例えば、100gのプリクックされたコク味原料中に1gの水分が含まれている場合、そのプリクックされたコク味原料の水分含量は1重量%である。水分含量の測定方法は、当業者に公知である。例えば、株式会社ケット科学研究所製赤外線水分計FD240を用い、まず、プリクックされたコク味原料の重量を測定し、次いでプリクックされたコク味原料を110℃にて15分間設定の取扱い説明書に記載される通りの条件で水分を蒸発させ、水分蒸発後の重量を測定し、水分の蒸発による重量の変化から水分含量を決定し得る。この方法は、乾燥減量法とも呼ばれ、公定標準測定法に採用されている。
【0140】
プリクックされたコク味原料を工業的に生産する場合、水分含量の測定を簡便に行うために、ブリックス計を用いることができる。この場合、ブリックス度数が約70〜約90、より好ましくは約75〜約85になるように加熱を行い得る。ブリックス計は、ショ糖溶液の濃度を示すので、ショ糖または可溶性成分の含有量が少ないスパイスを風味原料として用いた場合には、プリクックされたコク味原料の水分含量がブリックス計で読み取れない場合もある。このような場合は、例えば、上記の乾燥減量法で水分含量を決定する。
【0141】
プリクックに用いる手段は、何れでもよい。コク味原料を加熱する際には、コク味原料中の水分を蒸発させながら加熱することが好ましい。プリクックに用いる手段は、開放型の加熱攪拌装置であっても、排気式の密閉型加熱攪拌装置であってもよい。設備コストが安い点から、開放型の加熱攪拌装置が好ましい。
【0142】
このようにして得られるプリクック後の混合物の量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の、好ましくは約10重量%以上、より好ましくは約15重量%以上、特に好ましくは約20重量%以上である。このようにして得られるプリクック後の混合物の量は、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の、好ましくは約40重量%以下、より好ましくは約35重量%以下、特に好ましくは約30重量%以下である。
【0143】
(2.2.3 白ルウと、プリクックされたコク味原料と、他のコク味ルウ層原料との混合)
次いで、このようにして得られた白ルウと、プリクックされたコク味原料と、他のコク味ルウ層原料とが混合される。これらの原料は、それぞれ、任意の温度で混合され得る。例えば、白ルウおよびプリクックされたコク味原料は、加熱終了後すぐに、高温(例えば、それぞれ、約70℃〜約150℃)で他のコク味ルウ層原料と混合されてもよい。あるいは、白ルウおよびプリクックされたコク味原料は、それぞれ、ある程度冷却された後に、低温(例えば、それぞれ、約50℃〜約65℃)で、他のコク味ルウ層原料と混合されてもよい。あるいは、白ルウまたはプリクックされたコク味原料の一方は高温(例えば、約70℃〜約150℃)で、他方は、ある程度冷却された後に低温(例えば、約50℃〜約65℃)で、他のコク味ルウ層原料と混合されてもよい。これらは、任意の調理器具内で混合されるが、好ましくは、冷却手段内で混合される。これらの混合は、白ルウおよびプリクックされたコク味原料のそれぞれの温度が低下しすぎないうちに行うことが好ましい。なぜなら、プリクックされたコク味原料の品温が低すぎると白ルウへの分散性が悪い場合があるからである。他のコク味ルウ層原料は添加されなくてもよい。好ましくは、他のコク味ルウ層原料が添加される。他のコク味ルウ層原料は、プリクックされたコク味原料および白ルウと同時に混合手段に投入して混合してもよく、プリクックされたコク味原料または白ルウのいずれかと混合し、その後残りの原料と混合してもよく、あるいはプリクックされたコク味原料と白ルウとを混合した後に投入して混合してもよい。好ましくは、プリクックされたコク味原料と白ルウとの混合後に投入する。
【0144】
白ルウと、プリクックされたコク味原料と、他のコク味ルウ層原料とを混合する際に混合物の品温が低すぎると、例えば、融点が50℃以上の油脂を使用する場合に品温が油脂の固化開始温度に近づいてルウの粘度が上昇しやすくなり、混合物の混合が困難になる場合がある。混合しながら冷却する際の混合物の品温が高すぎると、得られたルウを充填装置によって容器に充填し、固化させる際に固化に要する時間が長すぎる場合、ルウ表面の油脂が粗大結晶化を起こす場合、およびルウ表面に油浮きを生じる場合がある。
【0145】
白ルウと、プリクックされたコク味原料と、他のコク味ルウ層原料との混合時間は特に限定されないが、好ましくは約15分間〜約3時間であり、より好ましくは約30分間〜約2時間であり、特に好ましくは約40分間〜約1時間である。
【0146】
(2.2.4 貯蔵および充填)
混合されたコク味ルウ層のルウは、従来の方法に従って、必要により貯蔵され、容器に充填され、次いで冷却されることにより、固形ルウにされる。充填容器においてコク味ルウ層が上層となるべき場合、まず香味ルウ層を固化させた後にコク味ルウ層が充填されて固化される。充填容器においてコク味ルウ層が下層となるべき場合、まずコク味ルウ層を固化させた後に香味ルウ層が充填されて固化される。3層目以降の層が設けられる場合についても同様である。
【0147】
このようにして得られるコク味ルウ層の油脂含量は、好ましくは約20重量%以上であり、さらに好ましくは約25重量%以上であり、特に好ましくは約30重量%以上である。このようにして得られるコク味ルウ層の油脂含量は、好ましくは約45重量%以下であり、さらに好ましくは約40重量%以下であり、特に好ましくは約35重量%以下である。コク味ルウ層の製造の間の加熱により、コク味ルウ層の原料の水分がある程度蒸発するので、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計に対する油脂の使用量よりも、コク味ルウ層の油脂含量は幾分高くなることが多い。
【0148】
このようにして得られるコク味ルウ層の水分含量は、好ましくは約15重量%以下であり、より好ましくは約10重量%以下であり、特に好ましくは約7重量%以下である。コク味ルウの調製に用いるコク味原料には多量の水分が含まれることが多く、水分含量が0になるまで加熱すると過加熱になってコゲを生じたり、コクおよび風味の劣化を生じる場合がある。そのため、コクおよび風味が劣化しないせず、かつ固形ルウを製造することが可能な程度の水分含量まで水分量が減少すればよい。コク味ルウ層の水分含量は、例えば、約1重量%以上、約2重量%以上、約4重量%以上などであり得る。なお、コク味ルウ層にある程度の水分が含まれていたとしても、ルウの固化後は、ルウ中を水分が移動することは困難である。それゆえ、ある程度の水分を含むコク味ルウ層と香味ルウ層とが接していたとしても、コク味ルウ層から水分が移動して香味ルウ層の香味を劣化させにくい。
【0149】
(2.3 他のルウ層の調製)
本発明の複数層ルウは、香味ルウ層およびコク味ルウ層に加えて他のルウ層を含み得る。このようなルウ層は、当該分野で公知の任意の方法によって、任意の材料を用いて調製され得る。
【0150】
(3.複数層ルウ)
本発明の複数層ルウは、香味原料を含む香味ルウ層およびコク味原料を含むコク味ルウ層を含む。香味ルウ層およびコク味ルウ層はそれぞれ、1層ずつ含まれていても、2層以上含まれていてもよい。香味ルウ層およびコク味ルウ層は、サンドイッチのように並行に積層されていてもよく、一方の層が他方の層によって取り囲まれていてもよい。本発明の複数層ルウにおいては、香味ルウ層とコク味ルウ層とが実質的に平行に積層されていることが好ましい。本明細書中では、「実質的に平行に積層されている」とは、どの部分の厚さをとってもほぼ均一である層が2層以上重ねられていることをいう。「どの部分の厚さをとってもほぼ均一である」とは、1つの層の一番薄い部分の厚さが、一番厚い部分の厚さの約80%以上であることをいう。好ましくは約85%以上であり、より好ましくは約90%以上である。
【0151】
本発明の複数層ルウが直方体または立方体である場合、どちらが上であっても下であっても外観に格別の相違はない。本発明の複数層ルウが四角錘台のような錘台体である場合、錐台体の広がった側と狭まった側とで上下がある。香味ルウ層およびコク味ルウ層がそれぞれ1層ずつ含まれる場合、香味ルウ層およびコク味ルウ層のどちらが上であっても下であってもよい。
【0152】
香味ルウ層の体積:コク味ルウ層の体積の比は、任意の割合に設定され得るが、好ましくは、1:1〜1:5である。香味ルウ層の体積がコク味ルウ層の体積よりも小さい場合、錐台体の狭まった側に香味ルウ層があり、錐台体の広がった側にコク味ルウ層があることが好ましい。なぜなら、その反対の配置であると、二層になっていることがわかりにくくなり、消費者に対するアピール度が低下するおそれがあるからである。
【0153】
本発明の複数層ルウは、少なくとも二層以上の層から構成されているため、消費者に大して、目新しい感じを与える。また、調理時に2種のルウが混合されることから、おいしいもの(例えば、カレー)ができそうな感じを与える。なぜなら、料理の分野では、各調味素材を調理直前に混ぜた方が各々の素材の持ち味が発揮されやすいと考えられており、事前に調味料をまぜておかず、調理段階で調味料を合わせるという手法がよく採られているからである。実際、本発明の複数層ルウは、同じ材料を用いて1つのルウを製造した場合よりも、スパイスの香立ちがよく、コクおよび香りが引き立つものである。1つの実施形態では、本発明の複数層ルウは、スパイスをじっくりねかせて熟した、まろやかな香りのルウからなる香味ルウ層と、あめ色玉ねぎをじっくり炒めて熟した、豊かなコクのコク味ルウ層とを含む。この複数層ルウをカレーなどの調理に用いると、2つのルウが調理物中でとけあって、スパイスの香立ちがよく、コクおよび香りが引き立った調理物が得られる。
【0154】
本発明の複数層ルウの製造においては、香味に寄与するスパイスを、水分の多い素材と混合せずに香味ルウ層を調製しているため、香味ルウ層の香りは安定であり、品質の劣化が少ない。一方、本発明の複数層ルウの製造においては、コクに寄与するコク味原料をコク味ルウ層に配合しているため、コク味ルウ層により、深いコクが発揮される。
【0155】
(4.複数層ルウを利用した食品)
本発明の複数層ルウは、当該分野で公知の方法に従って、種々の食品に利用され得る。本発明の複数層ルウは、例えば、カレー、シチュー(ビーフシチュー、クリームシチューなど)、スープ、ソース、ハッシュドビーフ、ハヤシライス、グラタン、ドリアなどに使用され得る。本発明の複数層ルウは、カレールウであることが好ましい。
【実施例】
【0156】
次に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
【0157】
以下の実施例において、各原料は、以下のものを用いた:油脂:牛脂;小麦粉:市販の薄力粉;フルーツペースト:リンゴとバナナのペースト、水分含量約30重量%;ミートペースト:ポークブイヨンのペースト、水分含量約29重量%;おろしにんにく:生のにんにくをおろし金でおろしたもの、水分含量約56重量%;おろし生姜:生の生姜をおろし金でおろしたもの、水分含量約92重量%;オニオンペースト:生のタマネギをおろし金でおろした後、水分含量が約60重量%になるまで加熱したもの;カルダモン:カルダモンパウダー、水分含量約11重量%;クローブ:クローブパウダー、水分含量約11重量%;赤唐辛子:赤唐辛子パウダー、水分含量約10重量%;ブラックペッパー末:ブラックペッパーパウダー、水分含量約11重量%;カレー粉:ターメリック30重量%、コリアンダー27重量%、クミン20重量%、フェヌグリーク5重量%、フェンネル5重量%、シナモン5重量%、陳皮2重量%、カルダモン2重量%、オールスパイス2重量%およびナツメグ2重量%を含むカレー粉;砂糖:市販のグラニュー糖;食塩:市販の食塩;調味料:市販のL−グルタミン酸ナトリウム;カラメル:市販のカラメル。
【0158】
(実施例1:2層ルウの製造)
(1)予め加熱した開放型の加熱釜に油脂31.2重量部を投入し、油脂を溶解させた。次いで、この溶解した油脂に小麦粉28重量部を投入し、混合しながら、約60分間かけて到達品温が130℃になるように加熱して白ルウを製造した。
【0159】
(2)(1)で用いた加熱釜とは別の開放型の加熱釜(予め加熱した)に油脂3重量部を投入し、油脂を溶解させた。次いで、この溶解した油脂に、フルーツペースト2.5重量部、ミートペースト4重量部、おろしにんにく2重量部、おろし生姜1重量部およびオニオンペースト2.5重量部を同時に投入し、混合しながら、約80分間かけて到達品温が約110℃になるまで加熱(プリクック)して、プリクックされたペースト原料を製造した。なお、(1)と(2)とは並行して行った。
【0160】
(3)開放型の冷却釜に上記(1)で製造した白ルウ(約130℃)のうちの23.25重量部を加え、撹拌混合しながらさらにカレー粉3.85重量部、カルダモン0.3重量部、クローブ0.1重量部、ブラックペッパー末0.1重量部および食塩7.5重量部を順次加え、約35〜40分間かけて品温が60℃になるまで強制冷却しながら混合して香味ルウを得た。次いでこの香味ルウを約60℃で60分間貯蔵し、容器に充填機で充填し、20℃になるまで冷却することによって、固形の香味ルウ層を得た。この固形の香味ルウ層の水分含量は約2重量%であった。
【0161】
(4)開放型の冷却釜に上記(1)で製造した白ルウ(約130℃)のうちの35.95重量部および(2)でプリクックしたペースト原料(約110℃)を加え、撹拌混合しながらさらにカレー粉2.15重量部、赤唐辛子0.2重量部、砂糖7.5重量部、調味料3.1重量部およびカラメル1重量部を順次加え、約45分間かけて品温が60℃になるまで強制冷却しながら混合してコク味ルウを得た。次いでこのコク味ルウを約60℃で60分間貯蔵し、(3)で得られた固形の香味ルウ層の上に充填機で充填し、20℃になるまで冷却することによって、固形の香味ルウ層の上に固形のコク味ルウ層が積層された2層ルウを得た。この固形の香味ルウ層の水分含量は約5重量%であった。
【0162】
本実施例で用いた原料の組成を図2に示す。
【0163】
(比較例1:1層ルウの製造)
実施例1と同じ原料を用いて、1層ルウを製造した。詳細には、実施例1の(1)と同様にして白ルウを製造し、実施例1の(2)と同様にしてプリクックされたペースト原料を製造し、次いで、開放型の冷却釜にこの白ルウ(約130℃)およびプリクックされたペースト原料(約110℃)を加え、撹拌混合しながらさらに他の原料を順次加え、約35〜40分間かけて品温が60℃になるまで強制冷却しながら混合してルウを得た。次いでこのルウを約60℃で60分間貯蔵し、容器に充填機で充填し、20℃になるまで冷却することによって、固形の1層ルウを得た。この固形の1層ルウ層の水分含量は約4重量%であった。
【0164】
(評価例1:2層ルウおよび1層ルウの評価)
それぞれのルウ20gを105gの熱湯で溶かし、再加熱してとろみを付けた状態で、10名の熟練したパネラーがルウを官能評価した。この官能評価では、パネラーには、どちらのルウであるかがわからないようにした。
【0165】
この結果、2層ルウを溶かしたものの方がパンチが強く、コクがあると7名が評価し、残りの3名は、2つのルウの差が不明であると評価した。
【0166】
(実施例2)
上記実施例1と同様に2層ルウを製造し、この2層ルウを常法により調理してカレーライスを製造した。35人のパネラーによりこのカレーライスの試食評価を行った。パネラーにおいしさを0点〜10点の評点で採点してもらったところ、平均は6.71点であった。
【0167】
(比較例2)
上記実施例1と同様の材料を用いて、従来のカレールウの製造方法により、1層ルウを製造した。このルウを用いて常法により調理してカレーライスを製造した。35人のパネラーによりこのカレーライスの試食評価を行った。パネラーにおいしさを0点〜10点の評点で採点してもらったところ、平均は6.14点であった。
【0168】
実施例2および比較例2の結果から、同一の材料を用いているにもかかわらず、2層のルウから製造したカレーライスが、1層のルウから製造したカレーライスよりも有意に評点が高くなるという驚くべき結果が得られた。
【0169】
このように1層の場合に味の評価が低かった理由としては、1層のルウを製造した場合には、コク味原料と香味原料とを含むすべての原料がルウの製造時に混合されてしまうために、コク味原料と香味原料とがそれぞれの風味を打ち消しあってしまったと考えられる。他方、2層のルウを製造した場合には、コク味原料と香味原料とが別々の層とされるため、ルウの製造の際に、それぞれの風味が打ち消しあうことがなく、コク味原料と香味原料とのそれぞれの本来の風味がそのまま保存され、良好な味の評価が得られたと考えられる。
【0170】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の複数層ルウは、同じ原料を用いて従来の方法で調製した従来の1層ルウと比較して、スパイスの香り立ちがよく、パンチが強く、コクおよび香りが引き立つ調理物(例えば、カレー)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の2層ルウの断面を模式的に示す図である。図1(A)は、複数層ルウが四角錘台であって、四角錘台の広い側に香味ルウ層があり、狭い側にコク味ルウ層がある態様を示す。図1(B)は、複数層ルウが四角錘台であって、四角錘台の狭い側に香味ルウ層があり、広い側にコク味ルウ層がある態様を示す。
【図2】本発明の2層ルウの配合を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味原料を含む香味ルウ層およびコク味原料を含むコク味ルウ層を含む、複数層ルウ。
【請求項2】
前記香味ルウ層がコク味原料を実質的に含まない、請求項1に記載のルウ。
【請求項3】
前記香味ルウ層が、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニからなる群より選択される香味原料を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まない、請求項1に記載のルウ。
【請求項4】
前記香味ルウ層を調製するために用いられる前記香味原料の量の合計が、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の0.01〜10重量%である、請求項1に記載のルウ。
【請求項5】
前記コク味ルウ層が香味原料を実質的に含まない、請求項1に記載のルウ。
【請求項6】
前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストからなる群より選択されるペースト原料を含み、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニを実質的に含まない、請求項1に記載のルウ。
【請求項7】
前記野菜ペーストが、オニオンペーストを含む、請求項6に記載のルウ。
【請求項8】
前記コク味ルウ層を調製するために用いられる前記ペースト原料の量の合計が、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の10〜30重量%である、請求項1に記載のルウ。
【請求項9】
前記香味ルウ層が、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない、請求項1に記載のルウ。
【請求項10】
前記香味ルウ層が、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜およびオニオンペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない、請求項1に記載のルウ。
【請求項11】
前記香味ルウ層の水分含有量が、0.1〜5重量%である、請求項1に記載のルウ。
【請求項12】
前記コク味ルウ層の水分含有量が、4〜10重量%である、請求項1に記載のルウ。
【請求項13】
前記香味ルウ層の体積:前記コク味ルウ層の体積の比が、1:1〜1:5である、請求項1に記載のルウ。
【請求項14】
複数層ルウの製造方法であって、該方法は、
第1ルウ層を調製する工程;および
第2ルウ層を該第1ルウ層の上に重層して固化する工程
を包含し、ここで、(1)該第1ルウ層が、香味原料を含む香味ルウ層であり、該第2ルウ層が、コク味原料を含むコク味ルウ層であるか;または(2)該第1ルウ層が、コク味原料を含むコク味ルウ層であり、該第2ルウ層が、香味原料を含む香味ルウ層である、製造方法。
【請求項15】
前記香味ルウがコク味原料を実質的に含まない、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記香味ルウ層が、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニからなる群より選択される香味原料を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まない、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記香味ルウ層を調製するために用いられる前記香味原料の量の合計が、香味ルウ層の調製に使用する原料の合計の0.01〜10重量%である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
前記コク味ルウ層が香味原料を実質的に含まない、請求項14に記載の製造方法。
【請求項19】
前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストからなる群より選択されるペースト原料を含み、カルダモン、クローブ、コショウ、乾燥にんにくおよびブーケガルニを実質的に含まない、請求項14に記載の製造方法。
【請求項20】
前記野菜ペーストが、オニオンペーストを含む、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記コク味ルウ層を調製するために用いられる前記ペースト原料の量の合計が、コク味ルウ層の調製に使用する原料の合計の10〜30重量%である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項22】
前記香味ルウ層が、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない、請求項14に記載の製造方法。
【請求項23】
前記香味ルウ層が、カルダモンもしくはコショウまたはその両方を含み、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜および野菜ペーストを実質的に含まず、前記コク味ルウ層が、フルーツペースト、ミートペースト、生のにんにく、生の生姜およびオニオンペーストを含み、カルダモンおよびコショウを実質的に含まない、請求項14に記載の製造方法。
【請求項24】
前記香味ルウ層の水分含有量が、0.1〜5重量%である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項25】
前記コク味ルウ層の水分含有量が、4〜10重量%である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項26】
前記香味ルウ層の体積:前記コク味ルウ層の体積の比が、1:1〜1:5である、請求項14に記載の製造方法。

【図2】
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【図1】
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