説明

複数段のビーズ織物の製織法とそのビーズ織物

【課題】ビーズ1段で編成されるビーズ織物に2段,3段の複数段のビーズを模様,図柄として織込むための複数段のビーズ織物の製織法とそのビーズ織物の提供。
【解決手段】ビーズ1段B1の織物上に2段目B2または3段目などのビーズを緯糸yxのみにより重ね合わせて多数の経糸txに織込んで得ることを特徴とする複数段のビーズ織物の製織法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常のビーズ織物に2段,3段などの立体的な模様を形成できる複数段のビーズ織物の製織法とそのビーズ織物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーズ織り自体は、その歴史はきわめて古く、ビーズ玉もガラス,貝殻などを使った彩色,デザインも多種多様である。
【0003】
そして、糸を配設する手芸用ビーズ織機(例えば、特許文献1参照)とか、製織法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
之等の平面的なビーズ織りに対して、立体的に形成するビーズ織りも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−355848号公報
【特許文献2】特開2008−7866号公報
【特許文献3】特開平10−85012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に示される方法は、平面的に織り成されたビーズ織物に対し、模様箇所を他のビーズ織りされた当片を接着剤を用いて貼着するようにしたもので、緯糸または経糸を用いた一本の糸を用いて織物として連続性がなく違和感を生じ、質の高い立体的なビーズ織として提供できないという不都合があった。
【0007】
本発明は、叙上の点に着目して成されたもので、飽くまでもビーズ1個宛に挿通される緯糸を連続使用して積層される他のビーズを同一箇所に重ね合わせて2段ないし3段のビーズ模様を織成作業によって得られるようにした複数段のビーズ織物の製織法とそのビーズ織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成によって上記課題を解決できるものである。
【0009】
(1)ビーズ間隔を保持して張設される第1ないし第nの多数の経糸に対し、前記第1の経糸に結束または折り返される緯糸を、多数のビーズの中央孔に、正方向に挿通し、第nの経糸に折り返されて、前記多数のビーズの中央孔に反対方向より挿通させて二重とすると共に、前記緯糸を前記経糸の上下に亘って配設して、隣り合うビーズの間に経糸を臨ませ、この手法と同一の手法で緯方向に連続されるビーズを、経方向に順次と延長して経緯方向の平面状に編成されるビーズ織物の製織法において、
特定の緯糸に挿通される特定のビーズの上に新たな2段目のビーズを配置し、前記緯糸を前記ビーズの中央孔の出口側と接する側の前記経糸の下側から上側に折り返し、新たな2段目のビーズの中央孔の出口側より挿通して入口側より導出し、かつ特定のビーズの入口側の経糸の上側より下側に折り返し、さらにこの緯糸を前記特定のビーズの中央孔の入口側より挿通し、出口側より導出して新たな2段目のビーズを特定のビーズ上に重ねて上下2段に並設し、順次と同一の手法を繰り返して他の特定のビーズに他の新たな2段目のビーズを重ねて連続した2段のビーズ模様を形成できるようにしたことを特徴とする複数段のビーズ織物の製織法。
【0010】
(2)ビーズ間隔を保持して張設される第1ないし第nの多数の経糸に対し、前記第1の経糸に結束または折り返される緯糸を、多数のビーズの中央孔に、正方向に挿通し、第nの経糸に折り返されて、前記多数のビーズの中央孔に反対方向より挿通させて二重とすると共に、前記緯糸を前記経糸の上下に亘って配設して、隣り合うビーズの間に経糸を臨ませ、この手法と同一の手法で緯方向に連続されるビーズを、経方向に順次と延長して経緯方向の平面状に編成されるビーズ織物の製織法において、
特定の緯糸に挿通される特定のビーズの上の新たな2段目のビーズを配置し、前記緯糸を前記ビーズの中央孔の出口側と接する側の前記経糸の下側から上側に折り返し、新たな2段目のビーズの中央孔の出口側より挿通して入口側より導出し、かつ特定のビーズの入口側の経糸の下側より上側に折り返し、さらに新たな3段目のビーズの中央孔の入口側より中央孔内に挿通して出口側より導出し、この導出された緯糸を前記2段目のビーズの出口側の経糸の下側から中央孔を反対側方向に挿通し、入口側より経糸の上側へ向けて導出し、かつ下側に向けて折り返し、最初の特定のビーズの中央孔の入口側より出口側に挿通して、上中下3段に並設し、順次と同一の手法を繰り返して他の特定のビーズに新たな2段目,3段目のビーズを重ねて連続した3段のビーズ模様を形成できるようにしたことを特徴とする複数段のビーズ織物の製織法。
【0011】
(3)前記(1)または(2)に記載の複数段のビーズ織物の製織法を用いて得られることを特徴とする複数段のビーズ織物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ビーズ間隔を保持して多数の張架されている経糸に対し、緯糸を挿通して多数のビーズを編み込む過程において、予め求める模様に相当する特定のビーズと同一箇所に2段または3段のビーズを重ね合わせて編み込むことにより、1段だけで織成されるビーズ織物に部分的に2段または3段のビーズにより突出した図形,模様が得られ、極めて興趣に富んだビーズ織物を得ることができる。
【0013】
この図柄,模様はビーズの色彩,模様を異にすることにより、より変化に富んだ作品が得られると共に、2段ビーズに加えて3段ビーズを一体的に編み込むことにより、更に変化に富んだ図柄,模様のビーズ織物を提供できる。
【0014】
さらに必要ならば、4段などビーズの重合積層数を増やすこともでき、ビーズ織物の用途を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1−1】(a)ないし(e)は、本発明に係る複数段を2段とした場合のビーズ織物の製織法を斜面で示す前段の作業工程図
【図1−2】(f)ないし(j)は、本発明に係る複数段を2段とした場合のビーズ織物の製織法を斜面で示す中段の作業工程図
【図1−3】(k)ないし(o)は、本発明に係る複数段を2段とした場合のビーズ織物の製織法を斜面で示す終段の作業工程図
【図2−1】(a)ないし(d)は、本発明に係る複数段を3段とした場合のビーズ織物の製織法を斜面で示す前段の作業工程図
【図2−2】(e)ないし(h)は、本発明に係る複数段を3段とした場合のビーズ織物の製織法を斜面で示す中段の作業工程図
【図2−3】(i)ないし(k)は、本発明に係る複数段を3段とした場合のビーズ織物の製織法を斜面で示す終段の作業工程図
【図3】図1−1ないし図1−3に示すビーズ織物の製織法によって得られる2段ビーズ織模様を備えた本発明に係る複数段のビーズ織物で、(a)は斜視図、(b)はA−A線断面図、(c)はB−B線から見た側面図
【図4】図2−1ないし図2−3に示すビーズ織物の製織法によって、得られた3段ビーズ織模様を備えた本発明に係る複数段のビーズ織物で、(a)は斜視図、(b)は(a)を反転させた斜面図、(c)は(a)のC−C線断面図
【図5】本発明に係るビーズ織物の基本手法を示す斜視説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0018】
まず、初めに本発明に係るビーズ織成の基本手法(織り方)について図5に基づいて説明する。
【0019】
Tは多数の並列配列される縦方向の経糸で、t,t,t,……tで構成される。Yは同様に多数の並列に配列される横方向の緯糸で、y,y,y,……yで構成される。Bは多数のビーズで、それぞれの緯糸Yのy,y,y,……yに針1(図示せず)により各ビーズBの中央孔2内に挿通され、前記経糸t,t,t,……tに編みこまれる。
【0020】
更に詳細には、基端を経糸tに結束固定された第1列目の緯糸yに、ビーズBのn+1個を中央孔2に挿通して正方向で連結し、最終列の経糸tで緯糸yを折り返して、n+1個のビーズBを反対方向に中央孔2より挿通すると共に、n+1個のビーズBを隣り合う経糸t,t,t,……tn−1の間に配置し、同時に各経糸t,t,t,……tを緯糸yが上下より挟み込む状態で、第1列目のビーズつき緯糸yが得られる。
【0021】
そして、第2列目の緯糸yは、前記第1列目の緯糸yの延長部分とし、同一の緯糸yを、経糸t,t,t,……tに対して前記手法と同一の手法を用いて2列目のビーズBを編み込み、第2列目のビーズつき緯糸yが得られる。
【0022】
以上の手法を繰り返すことにより、第3列目,第4列目,……のビーズつき緯糸y,y,……を編み上げることができる。
【0023】
このようにしてビーズBが経緯方向の平面に広がった1段織りのビーズ織りを作ることができる。
【0024】
つぎに、2段織りの場合について説明する。
【0025】
図1−1ないし図1−3に織り方の基本を示す。
【0026】
前述の1段織りのビーズ織りの途中において、特定のビーズB1の中央孔2に針1を用いて挿通された緯糸y(b)を、ビーズB1の中央孔2の出口側に臨まれる経糸tを下側から上側に折り返して(c)(d)、特定ビーズB1の上方に配設される2段目の新たなビーズB2の中央孔2の出口側より反対方向に進めて中央孔2内に挿通し(e)、入口側より導出する(f)と共に、隣り合う経糸tx−1の上側より下側に折り返して(g)、再び同一の特定のビーズB1の入口側より中央孔2に挿通して出口側より緯糸yを導出し(h)(i)、その後、他の多数のビーズBの中央孔2に順次挿通して、最終列の経糸tで折り返して、再びビーズBの中央孔2を反対方向に進行させ(j)(k)(l)、特定ビーズB1の上側に他のビーズB2を配設したビーズ単体の2段編成ができる(m)(n)(o)。
【0027】
このビーズ単体の2段編成は、図示では1回であるが、同様の手法を連結されるビーズBの数を増減して行うことにより、自由に編成できる。
【0028】
しかも、このビーズ単体の2段編成は、順次と隣り合う第2列,第3列……と継続して数多くの緯糸y,y,y,……で連続される数多くのビーズBに対して全く同様の手法を繰り返して行うことにより、例えば、図3のような図形を形成でき、使用するビーズBの色彩,材質などを変えることにより、興趣に富んだビーズ模様を立体的に表現できる。
【0029】
以上の2段織りに続いて、3段織りの場合について説明する。
【0030】
図2−1ないし図2−3に織り方の基本を示す。
【0031】
前述の1段織りのビーズ織りの途中において、特定のビーズB1の中央孔2に挿通された針1に結び付けられた緯糸yを、ビーズB1の中央孔2の出口側に臨まれる経糸tを下側から上方に折り返して(b)、前記特定のビーズB1の上方に配設される2段目の新たなビーズB2の中央孔2の出口側より反対方向に進め、中央孔2内に挿通し(c)、かつ入口側に接する経糸tx−1の下側から上側に向けて折り返すと共に、さらに3段目のビーズB3の中央孔2の入口側より出口側に挿通する(d)。
【0032】
ついで、緯糸yは経糸tの上側から下側に向けると共に、2段目のビーズB2の出口側より中央孔2に挿通し(e)、入口側より経糸tx−1の上側に向けて導出させ(e)(f)、さらに経糸tx−1の上側より下側に向けて折り返し乍ら、1段目のビーズB1の中央孔2に入口側より挿通し(g)、ここに1段目,2段目および3段目のビーズB1,B2,B3を3段に重合させることができる。
【0033】
そして、最終的にはこの一箇所の場合には、引き続き隣り合うビーズBに順次と緯糸yを挿通し、最終段の経糸tに引掛けて反転し(h)、前記した通りの基本手法を用いて、3重のビーズB1,B2,B3についても3段目のビーズB3に挿通させて終了する(i)(j)(k)。
【0034】
2列目,3列目……は、同様の織り方を反覆して、ビーズつき緯糸y,y,y,……を、緯糸t,t,t,……に組み込んで求められる図4に示すような立体的なビーズ織りを形成できる。
【0035】
以上、ビーズBの2段織り,3段織りの一例を示したが、両者を組み合わせて実施できると共に、同様の手法を用いてビーズの4重織り,5重織りも実施できる。
【符号の説明】
【0036】
T(t,t,t,……tx−1,t,tn−1,t) 経糸
Y(y,y,y,……y) 緯糸
B,B1,B2,B3 ビーズ
1 針
2 中央孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズ間隔を保持して張設される第1ないし第nの多数の経糸に対し、前記第1の経糸に結束または折り返される緯糸を、多数のビーズの中央孔に、正方向に挿通し、第nの経糸に折り返されて、前記多数のビーズの中央孔に反対方向より挿通させて二重とすると共に、前記緯糸を前記経糸の上下に亘って配設して、隣り合うビーズの間に経糸を臨ませ、この手法と同一の手法で緯方向に連続されるビーズを、経方向に順次と延長して経緯方向の平面状に編成されるビーズ織物の製織法において、
特定の緯糸に挿通される特定のビーズの上に新たな2段目のビーズを配置し、前記緯糸を前記ビーズの中央孔の出口側と接する側の前記経糸の下側から上側に折り返し、新たな2段目のビーズの中央孔の出口側より挿通して入口側より導出し、かつ特定のビーズの入口側の経糸の上側より下側に折り返し、さらにこの緯糸を前記特定のビーズの中央孔の入口側より挿通し、出口側より導出して新たな2段目のビーズを特定のビーズ上に重ねて上下2段に並設し、順次と同一の手法を繰り返して他の特定のビーズに他の新たな2段目のビーズを重ねて連続した2段のビーズ模様を形成できるようにしたことを特徴とする複数段のビーズ織物の製織法。
【請求項2】
ビーズ間隔を保持して張設される第1ないし第nの多数の経糸に対し、前記第1の経糸に結束または折り返される緯糸を、多数のビーズの中央孔に、正方向に挿通し、第nの経糸に折り返されて、前記多数のビーズの中央孔に反対方向より挿通させて二重とすると共に、前記緯糸を前記経糸の上下に亘って配設して、隣り合うビーズの間に経糸を臨ませ、この手法と同一の手法で緯方向に連続されるビーズを、経方向に順次と延長して経緯方向の平面状に編成されるビーズ織物の製織法において、
特定の緯糸に挿通される特定のビーズの上の新たな2段目のビーズを配置し、前記緯糸を前記ビーズの中央孔の出口側と接する側の前記経糸の下側から上側に折り返し、新たな2段目のビーズの中央孔の出口側より挿通して入口側より導出し、かつ特定のビーズの入口側の経糸の下側より上側に折り返し、さらに新たな3段目のビーズの中央孔の入口側より中央孔内に挿通して出口側より導出し、この導出された緯糸を前記2段目のビーズの出口側の経糸の下側から中央孔を反対側方向に挿通し、入口側より経糸の上側へ向けて導出し、かつ下側に向けて折り返し、最初の特定のビーズの中央孔の入口側より出口側に挿通して、上中下3段に並設し、順次と同一の手法を繰り返して他の特定のビーズに新たな2段目,3段目のビーズを重ねて連続した3段のビーズ模様を形成できるようにしたことを特徴とする複数段のビーズ織物の製織法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複数段のビーズ織物の製織法を用いて得られることを特徴とする複数段のビーズ織物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−189811(P2010−189811A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36529(P2009−36529)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【特許番号】特許第4335971号(P4335971)
【特許公報発行日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(509049171)
【Fターム(参考)】