説明

複素環含有ペプチド化合物の製造方法及びゴードスポリンの類縁体

【課題】ゴードスポリン及びその類縁体の生産量を増大させる製造方法及びゴードスポリンの類縁体を提供する。
【解決手段】転写活性化因子ゴッドアール(godR)遺伝子をゴードスポリン生産微生物に形質転換することによって,ゴードスポリンの生産量を増大させたり,転写活性化因子ゴッドアール(godR)遺伝子をゴードスポリン生産微生物の染色体DNA上に1ないしは複数個,組み込むことによって,ゴードスポリンの生産量を増大させたり,或いは,転写活性化因子ゴッドアール(godR)遺伝子をゴードスポリン生産微生物に形質転換することによって,ゴードスポリンの生産量が増大した微生物のゴッドエー(godA)遺伝子配列の塩基を置換又は欠失、挿入することによってゴードスポリン類縁体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,複素環のうち,チアゾール環,オキサゾール環,又はメチルオキサゾール環を含有するペプチド化合物の製造方法であって,例えば,複素環含有ペプチド化合物であるゴードスポリン及びゴードスポリン類縁体を効率的に製造する方法及びゴードスポリンの類縁体に関する。
【背景技術】
【0002】
複素環含有ペプチド化合物であるゴードスポリン(Goadsporin)は,一般式(1)で示される構造式を持ち,放線菌の二次代謝産物生産,及び胞子形成促進効果,更には生育阻害効果を有する化合物として富山県立大学の尾仲らによって発見された(例えば,非特許文献1参照)。
【0003】
【化1】

GS−−−−(1)
【0004】
ゴードスポリン(Goadsporin)は,上記式(1)に示すように,19個のアミノ酸を前駆体として生合成されるペプチド化合物であり,ゴードスポリン前駆体は,リボゾームによる翻訳により生合成される。このゴードスポリン前駆体蛋白遺伝子は,ゴッドエー(godA)であり,全長150塩基,49個のアミノ酸をコードしている。この内,C末端側19個のアミノ酸部位がゴードスポリン前駆体の配列である。ゴードスポリンを生産する放線菌であるストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp) TP−A0584株(受託番号:TP−A0584,NITE P−518)における生合成は,図11に示すような経路で行われる。図11に示すように,まず,菌体内ではゴードスポリン前駆体蛋白遺伝子であるゴッドエー(godA)が転写翻訳され,ゴッドエー(GodA)蛋白が発現する。次に,ゴッドビー(GodB),ゴッドシー(GodC)蛋白によってゴッドエー(godA)蛋白は細胞膜へ係留される。その後,ゴッドディー(GodD),ゴッドイー(GodE),ゴッドエフ(GodF),ゴッドジー(GodG)蛋白が,ゴッドエー(GodA)蛋白内のセリン,スレオニン,システイン残基をそれぞれオキサゾール,メチルオキサゾール,チアゾールに変換する。このように翻訳後, 修飾されたゴッドエー(GodA)蛋白は,次に, N末端から30番目のアラニンと31番目のアラニンの間でプロテア−ゼ酵素によって切断され,C末端側19残基が遊離する。その遊離したC末端側19残基のN末端がゴッドエイチ(GodH)酵素によってアセチル化修飾を受けて,ゴードスポリンが完成する(例えば,非特許文献2参照)。
【非特許文献1】H. Onaka, H. Tabata, Y. Igarashi, Y. Sato and T. Furumai, Goadsporin, a chemical substance which promotes secondary metabolism and morphogenesis in streptomycetes. I. Purification and Characterization, The Journal of Antibiotics, 54, 1036-1044, (2001)
【非特許文献2】H. Onaka, M. Nakaho, K. Hayashi, Y. Igarashi, T. Furumai, Cloning and characterization of goadsporin biosynthetic gene cluster from Streptomyces sp. TP-A0584.Microbiology, 151: 3923-3933 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,ゴードスポリンは,放線菌の二次代謝産物生産,胞子形成促進効果,更には生育阻害効果を有する化合物であるので,放線菌の二次代謝生産をコントロールすることができれば,抗生物質等の生理活性物質の放線菌からの探索等において有用な技術となるために,その作用メカニズムの解析が行われている。同時に,ゴードスポリンは,ユニークな構造を有する化合物であり,生分解性や熱安定性にも優れていることから,医薬品,生化学試薬としての用途が期待でき,そこで,ゴードスポリンの生合成機構の解明を行うことにより,ゴードスポリンの醗酵生産への応用を目指した研究が続けられている。
【0006】
また,今日まで,ゴードスポリン生産を増大させることに関する知見はなく,その生産量を増大させる方法は知られていない。また,ゴードスポリンの類縁体の製造に関しては,非特許文献2に記載されているように,4種類について報告されているのみであったが,ゴードスポリン類縁体は,ゴッドエー(godA)遺伝子を組み換えることにより,野生型ゴードスポリンの12分の1程度まで生産量が減少してしまい,ゴードスポリンの製造法として実用化するには生産量を増大することが必須である。また,ゴードスポリンは,多様な類縁体が従来の製造法で製造できるかどうかは明らかではなかったが,ゴッドエー
godA)蛋白のC末端側19残基に相当する部分のゴッドエー(godA)遺伝子塩基配列を変更することによって,ゴードスポリン類縁体の化合物を生合成することができると考えられる。
【0007】
ゴードスポリンを初めとするチアゾール環,オキサゾール環,又はメチルオキサゾール環である複素環を含有したペプチド化合物は,抗菌活性を有するために医薬品としての用途が考えられる他に,様々な用途が考えられる。しかしながら,ゴードスポリン及びその類縁体の製造は,高分子化合物であるために有機合成反応による製造方法では多段階反応となり,これまでのところ実現していなかった。ゴードスポリン等の複素環を含有したペプチド化合物について,簡便な製造方法が発明されれば,より薬効の高い類縁体を発見することができる。そのためには微生物醗酵法による製造法が有力であるが,ゴードスポリン生産野生株の生産量が少ないために,効率的な製造は難しかった。
【0008】
この発明の目的は,遺伝子操作によりゴードスポリン等の複素環含有ペプチド化合物の生産野生株の生産量を増やし,更に,野生型ゴードスポリン等に複素環含有ペプチド化合物に比べて生産量が少なくなるゴードスポリン類縁体等の複素環含有ペプチド化合物の生産量を増やすことを特徴とする複素環含有ペプチド化合物の製造方法及びゴードスポリンの類縁体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,リボゾーム翻訳系を用いて生合成され且つ翻訳後修飾によって全て又は1部のシステイン残基がチアゾール環,セリン残基がオキサゾール環,又はスレオニン残基がメチルオキサゾール環に変換される様式で生合成されるペプチド化合物の生合成遺伝子群を用いて,遺伝子組換え可能な放線菌内で発現させることによって複素環含有ペプチド化合物を製造する方法において,
転写活性化因子遺伝子を前記ペプチド化合物の生産放線菌に形質転換することによって,前記ペプチド化合物の生産量を増大することを特徴とする複素環含有ペプチド化合物の製造方法に関する。
【0010】
また,この複素環含有ペプチド化合物の製造方法は,前記転写活性化因子遺伝子を前記ペプチド化合物の生産放線菌の染色体DNA上に1個又は複数個組み込むことによって,前記ペプチド化合物の生産量を増大するものである。
【0011】
また,この複素環含有ペプチド化合物の製造方法は,リボゾーム翻訳されるペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列の塩基の1又は複数個を置換,欠失,又は挿入することによって,前記ペプチド化合物の類縁体を製造するものである。
【0012】
この複素環含有ペプチド化合物の製造方法において,前記ペプチド化合物は,ゴードスポリンである。
【0013】
また,前記転写活性化因子遺伝子は,ゴッドアール(godR)遺伝子である。
【0014】
また,前記リボゾーム翻訳される前記ペプチドの前記アミノ酸配列をコードする前記遺伝子は,ゴッドエー(godA)遺伝子である。
【0015】
また,この複素環含有ペプチド化合物の製造方法において,前記リボゾーム翻訳系を用いて生合成され且つ翻訳後修飾によって全て又は1部のシステイン残基がチアゾール環,セリン残基がオキサゾール環,又はスレオニン残基がメチルオキサゾール環に変換される様式で生合成されるペプチド化合物の生合成遺伝子群は,ゴードスポリン生合成遺伝子群である。ここで,ゴードスポリン生合成遺伝子群は,ゴッドエー(godA),ゴッドビー(godB),ゴッドシー(godC),ゴッドディー(godD),ゴッドイー(godE),ゴッドエフ(godF),ゴッドジー(godG),ゴッドエッチ(godH),ゴッドアイ(godI),及びゴッドアール(godR)の10個の遺伝子からなるものである。
【0016】
また,前記ゴードスポリンの類縁体は,アミノ酸の増減に影響されずに複素環形成反応が行われる。
【0017】
また,前記ゴードスポリンの類縁体は,式2〜式47のいずれか1つの式の構造式で表わされるものである。更に,前記ゴードスポリンの類縁体のうち,前記ゴードスポリンと同様に色素生産し,胞子形成を誘導することができる前記ゴードスポリンの類縁体は,下記の式2,式4,式5,式7,式9,式20,式24,式25,及び式36のいずれかの構造式である類縁体である。
【化1−1】

【0018】
また,この発明は,下記の式2,式4,式5,式7,式9,式20,式24,式25,及び式36のいずれかの構造式で表わされる,ゴードスポリンと同様に色素生産し,胞子形成を誘導することができることを特徴とするゴードスポリンの類縁体に関する。
【化1−2】

【0019】
ゴードスポリンは,放線菌・ストレプトマイセス・エスピー ティーピーエー0584(Streptomyces sp. TP-A0584 )が生産する二次代謝産物であり,リボゾームを介して生合成されることが明らかとなっている。そこで,この発明では,はじめに生産菌にゴードスポリン生合成遺伝子群転写活性化因子であるゴッドアール(godR)遺伝子を染色体上に複数組み込むことにより,ゴードスポリン生産量を野生株の2.5倍以上に増大させたゴードスポリン生産増大株を作製した。次に,作製株のゴードスポリン構造遺伝子・ゴッドエー(godA)の塩基配列を置換することにより,ゴードスポリン類縁体を従来の方法に比べて,14倍以上高生産する株を作製した。そして,ゴードスポリン類縁体を47種類製造し,本製造方法において製造できるゴードスポリン類縁体の種類について明らかにし(実施例6),本願発明を完成させた。
【発明の効果】
【0020】
この発明による複素環含有ペプチド化合物の製造方法は,上記のように構成されており,ゴードスポリン醗酵生産における生産量を増大することができ,また,従来の報告では生産量が少なかったゴードスポリン誘導体の生産も増大することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
−ゴードスポリン高生産株の使用−
この発明による複素環含有ペプチド化合物の製造方法は,非特許文献1に記載されている従来のゴードスポリン類縁体生産株に比べて14.6倍の生産量が増大したゴードスポリン高生産株ゴッドエーアールツー(godA-R2) 株を使用することにより,ゴードスポリン類縁体の生産量を飛躍的に増大させることができる。ゴッドエーアールツー(godA-R2) 株は,実施例に示したようにピーティーワイエム1イーピーゴッドアール (pTYM1epgodR)プラスミドをゴードスポリン生産菌に導入することにより作製することができる。ここで,ゴッドエー(godA)遺伝子及びその周辺塩基配列を,〔配列表1〕に示す。ここで,ゴッドエー(godA)遺伝子は,101番目〜250番目の塩基である。
【0022】
また,この発明については,ゴッドエーアールツー(godA-R2) 株以外にも,ゴッドアール(godR)遺伝子を複数コピーし,細胞内に導入する遺伝子組換え操作をすることによって,ゴッドアール(godR)の細胞内での発現量を増大させることによりゴードスポリンの生産量を増大させた微生物を使用することもできる。ここで,ゴッドアール
godR)遺伝子及びその周辺塩基配列を,〔配列表2−1〕,及び〔配列表2−2〕に示す。ここで,ゴッドアール(godR)遺伝子は,101番目〜817番目の塩基である。
【0023】
また,この発明については,ゴードスポリン生合成遺伝子群を別の微生物に移すことにより,ゴードスポリンを異種発現できるようになった微生物に対して,上記と同様なゴッドアール(godR)の細胞内での発現量を増大させる処理を行った微生物を使用することもできる。
【0024】
−ゴードスポリン類縁体及びゴードスポリン製造法−
ゴードスポリン類縁体を製造するためには,上記のように,ゴッドアール(godR)遺伝子発現が増大したゴードスポリン高生産株のゴッドエー(godA)遺伝子を破壊した株に新たに変異ゴッドエー(godA)遺伝子を導入することによって,変異ゴッドエー(godA)遺伝子を高発現させることができる。この結果,ゴッドエー(godA)遺伝子の変異に従ったゴードスポリン類縁体を製造できる。新たに変異ゴッドエー(godA)遺伝子を導入するには,実施例に示したようなピーティーワイエム19ゴッドエー(pTYM19godA) に部位特異的塩基置換法を用いて,塩基変異を導入したプラスミドを用いることができる。ゴードスポリン類縁体を製造するためには上記ピーティーワイエム19ゴッドエー(pTYM19godA) に部位特異的塩基置換法を用いて,塩基変異を導入したプラスミド以外でも,変異ゴッドエー(godA)遺伝子を生産菌に導入できれば特にベクターの種類は問わない。変異ゴッドエー(godA)遺伝子を用いれば,ゴードスポリン類縁体は,下記式(2)〜式(47)に示した構造式以外のゴードスポリン類縁体を製造することができることは勿論である。
【0025】
−実施例−
実施例1及び実施例5において,ゴードスポリン生合成遺伝子群内に存在する転写因子・ゴッドアール(godR)が転写アクチベーターであることが明らかとなり,ゴッドアール(godR)を複数個,遺伝子操作によって染色体上に組み込んだ株のゴードスポリン生産が増大することを明らかにした。
【0026】
また,実施例3及び実施例6において,これまで,ゴードスポリン類縁体の製造では,4種類しか成功していなかった類縁体作製に関しても,多様な塩基配列置換を試みた結果,本生産菌が生産することのできる類縁体の化学構造には制限があるが,少なくとも47種類の類縁体を製造できることが明らかとなった。
【0027】
実施例7では,いくつかのゴードスポリン類縁体においても生理活性が見出されていることを示したものである。
【0028】
ゴードスポリン類縁体を作製するにあたり,ゴッドエー(godA)遺伝子破壊株に,再びゴッドエー(godA)遺伝子を組み込んだ復帰株(図1)が野生株同量程度のゴードスポリンを生産するのかを確認したところ,生産量が約1/12に減少してしまった(図9)。そこで,ゴードスポリン生合成遺伝子群転写活性化因子であるゴッドアール(godR)をゴッドエー(godA)遺伝子破壊株に組み込むことによって,生産量を増加させた。図8に野生株,ゴッドエー(godA)遺伝子復帰株,ゴッドエーアールツー(godA-R2)株の染色体上における,ゴードスポリン生合成遺伝子群の様子を示した。これにより野生株の約1.2倍のゴードスポリンを生産する復帰株を得ることができた(図9)。そこで,このゴッドアール(godR)遺伝子の2倍体株(寄託番号:TP−A0584ΔgodA−R2,NITE P−519),ゴッドエーアールツー(godA-R2)株を利用して,ゴードスポリン類縁体の作製を行った。
ゴッドエー(godA)及び周辺部位の塩基配列を〔配列表1〕に示す。また,ゴッドエー
(godR)遺伝子及び周辺部位の塩基配列を〔配列表2−1〕と〔配列表2−2)に示す。
【0029】
−ゴードスポリン生産菌における,耐性遺伝子,転写調節因子コピー数増加によるゴードスポリン生産量への影響−
ゴードスポリン生合成遺伝子の中でゴッドアイ(godI)が耐性遺伝子,ゴッドアール
godR) が転写調節遺伝子であるとDNA配列情報より推定された。一般的に生産物量を増大するためには,その物質に対する宿主菌株の薬剤耐性度を上げること,又は生合成遺伝子群の転写量を増大する操作による増大法が考えられる。そこで,どちらがゴードスポリン生産において有効な手段であるかを明らかにするために,ゴードスポリン生産菌の染色体にゴッドアイ(godI),ゴッドアール(godR)をそれぞれ1コピー導入した株を作製し,ゴッドアイ(godI)の2倍化株,ゴッドアール(godR)の2倍化株のゴードスポリン生産量を測定した。ゴッドアイ(godI)の2倍化株については,耐性遺伝子の増加により宿主のゴードスポリンへの耐性度が増加することが考えられた。また,ゴッドアール(godR)の2倍化株については転写調節遺伝子の増加によりゴードスポリン生合成遺伝子群の転写量が増大して生産量が増大することを期待した。ゴッドアール(godR)においては,転写因子であることまではDNA配列情報より推定できたが,転写活性化因子であるか転写阻害因子であるかまでは推定できなかったので,本実験によって転写活性化因子であることも初めて明らかになった。
【0030】
ゴッドアイ(godI)遺伝子の2倍化株の作製
材料・試薬
・ピーティーワイエム1イーピー(pTYM1ep) (図2)
・PCRプライマー
ゴッドアイ(godI)クローニング用プライマー
godI-C 5'-TGGAAGCTTCTGCTTGCGGTCACCGGATC-3 ’
godI-N 5'-GCGACCCATATGTTCGACACTCTCTCCGA-3 ’
【0031】
ゴッドアイ(godI)のクローニング
ゴードスポリン(goadsporin)生合成遺伝子上でゴッドアイ(godI)遺伝子のC末側,N末側の配列を基に,デザインしたプライマーを用いて,PCR により増幅してインサート断片(約1.6 kb)を得た。これをピーティーワイエム1イーピー(pTYM1ep) のマルチクローニングサイトにNde I ,Hind IIIでクローニングしてピーティーワイエム1イーピーゴッドアイ(pTYM1epgodI) を作製した。
【0032】
遺伝子導入
構築したプラスミドピーティーワイエム1イーピーゴッドアイ(pTYM1epgodI) を,接合性大腸菌S17−1を用いてTP−A0584の染色体上に組み込ませ,形質転換体
(godI2倍化株)を取得した(大腸菌の形質転換,放線菌への接合伝達法については従来公知の方法でよい)。
【0033】
ゴッドアール(godR)2倍体株の作製
1−1:材料・試薬
・ピーティーワイエム1イーピー(pTYM1ep) (図2)
・PCRプライマー
ゴッドアール(godR)遺伝子クローニング用プライマー
godR-C-Hind 5'-GCGAAGCTTCAATCGCTATTTAGCGGCGAA-3 ’
godR-N-Nde 5'-CGCCATATGCGTGAAGGCAGCATCATAGCT-3 ’
【0034】
ゴッドアール(godR)のクローニング
ゴードスポリン(goadsporin)生合成遺伝子上でgodR遺伝子を含む配列を基にデザインしたプライマーを用いて,PCRにより増幅してインサート断片(約0.7kb)を得た。これをpTYM1ep のマルチクローニングサイトにNde I ,Hind IIIでクローニングしてピーティーワイエム1イーピーゴッドアール(pTYM1epgodR) を作製した(図3)。
【0035】
遺伝子導入
構築したプラスミドピーティーワイエム1イーピーゴッドアール(pTYM1epgodR) を,接合性大腸菌S17−1を用いてTP−A0584の染色体上に組み込ませ,形質転換体
(godR2倍化株)を取得した(大腸菌の形質転換,放線菌への接合伝達法については従来公知の方法でよい)。
【0036】
−ゴッドアイ(godI)2倍化株,ゴッドアール(godR)2倍化株のゴードスポリン生産量の確認について−
ゴッドアイ(godI)2倍化株,ゴッドアール(godR)2倍化株のゴードスポリン生産パターンを図7に示した(それぞれ2個体ずつ解析)。
図7から分かるように,野生型と比較して,ゴッドアイ(godI)2倍化株ではゴードスポリン生産量は大きく変化しないが,野生型に比べてゴードスポリン生産が早い時期に起こることが示された。一方,ゴッドアール(godR)2倍化株では,ゴードスポリン生産量が大きく増加した。更に,野生型よりも早期にゴードスポリン生産量が増加し始めることが示された。
【0037】
−実施例1−
ゴッドアール(godR)遺伝子2倍体株〔TP−A0584ΔgodA−R2〕の作製
1−1:材料・試薬
・ピーティーワイエム1イーピー(pTYM1ep)
・ピーティーワイエム19(pTYM19)
・PCRプライマー
ゴッドアール(godR)遺伝子クローニング用プライマー
godR-C-Hind 5’-GCGAAGCTTCAATCGCTATTTAGCGGCGAA-3 ’
godR-N-Nde 5’-CGCCATATGCGTGAAGGCAGCATCATAGCT-3 ’
aphII遺伝子特異的プライマー
aph-C 5 ’-TCAGAAGAACTCGTCAAGAAGGCG-3 ’
aph-N 5 ’-ATGATTGAACAAGATGGATTGCAC-3 ’
tsr遺伝子特異的プライマー
tsr-C 5 ’-CTTCATATGCGGGGATCGACCGCGC-3’
tsr-N 5 ’-GACGAATCGAGGTCGAGGAACCGAG-3’
・KOD−plus−DNAポリメラーゼ(TOYOBO)
【0038】
1−2:プラスミドの作製
ゴードスポリン生合成遺伝子上でゴッドエー(godA)遺伝子を含むBamHI断片(約1.2kb)をpTYM19にクローニングし,図5に示すピーティーワイエム19ゴッドエー(pTYM19epgodA) を作製した。
【0039】
1−3:遺伝子導入
構築したプラスミドピーティーワイエム1イーピーゴッドアール(pTYM1epgodR) を,接合性大腸菌S17−1を用いて,ゴッドエー(godA)遺伝子破壊株の染色体上に組み込ませ,形質転換体ゴッドエーアールツー(ΔgodA-R2 )を取得した(大腸菌の形質転換,放線菌への接合伝達法については従来公知の方法でよい)。
得られた形質転換体から染色体を回収し(CTAB法など),aph II 遺伝子特異的プライマーを用いたPCRにより形質転換が確実に行われたことを確認した(図4)。
次に,生産量が増加することを確認するため構築したプラスミドピーティーワイエム19ゴッドエー(pTYM19godA)を同様の方法でΔgodA-R2 株の染色体上に組み込ませ,ゴードスポリン高生産復帰株(godA-R2)を取得した。得られた形質転換体から染色体を回収し,tsr遺伝子特異的プライマーを用いたPCRにより形質転換が確実に行われたことを確認した(図4)。
【0040】
−実施例2−
ゴードスポリンの定量法
2−1:材料・試薬
・V−22
0.1% Starch ,0.5% Glucose, 0.3% NZ-case, 0.2% Yeast extract, 0.5% tryptone,0.1%K2 HPO4 ,0.5%MgSO4 ・7H2 O,
0.3%CaCO3 ,pH:7.0
・ゴードスポリン生産培地
6.0% Maltose, 4.0% Pharmamedia, 1.0% Yeast extract,
1.0% Diaion HP20(脱気してpH調整後に混合), pH7.0
【0041】
2−2:放線菌の培養
得られた形質転換体を選択薬剤カナマイシン,チオストレプトンを20μg/ml添加した10ml V−22培地に植菌した。30℃で2日間振とう培養後,100mlのゴードスポリン生産培地に前培養液を3%植菌し,さらに5日間培養した。
【0042】
2−3:HPLC分析法
培養液と等量のn−BuOHを加えて60分間激しく振とう撹拌した。これを遠心分離(6000〜10000rpm,5分間) してBuOHを回収し,減圧濃縮した。
MeOHで溶解後,フィルター濾過したものをHPLCサンプルとした。HPLC(
HP1100,Hewlett Packard )は,C18Cadenza カラム(Φ4.6×75mm)を使用し,カラム温度40℃移動相:0.1%CH3 CN−0.1% HCOOH buffer ,流速0.8ml/minで溶出し,UV吸収スペクトルは254nmで検出した。
【0043】
−実施例3−
ゴードスポリン類縁体生産株の作製法
3−1:材料・試薬
・ピーティーワイエム19ゴッドエー(pTYM19godA)
・PfuUltraT M high fidelity DNA polymerase
・Dpn I
【0044】
変異用プライマー
アミノ酸置換用の配列表を,〔配列表3−1〕,〔配列表3−2〕に示す。
また,アミノ酸挿入・欠失用の配列表を,〔配列表3−3〕に示す。
【0045】
3−2:変異導入プラスミドの作製
pTYM19ゴッドエー(godA)を鋳型プラスミドとして,QuikChange(登録商標)IIXL Site −Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いてプロトコールに従って変異導入を行った。取得した変異導入プラスミドは,ABI PRISM 310を用いてシーケンスし,目的の変異が導入されているかを確認した。
【0046】
3−3:変異導入株の作製
宿主にΔゴッドエーアールツー(ΔgodA-R2)株を用いて,1−3と同様の方法により各ゴッドエー(godA)変異株を取得した。
3−4:ゴッドエー(godA)変異株による生産物の確認
ゴードスポリンの定量法と同様に分析を行った。コントロールであるゴットエーアールツー(godA-R2 )株のHPLCデータと比較して,類縁体と思われる各ピークをHPLCの廃液配管から直接(手動で)採取した。採取した各ピークを Positive ESI-MS にかけ,予想される分子量を参考にして構造を決定した(図10)。
【0047】
−実施例4−
ゴードスポリンのバイオアッセイ法
4−1:材料・試薬
・Bennett’s glucose培地
0.1% Yeast extract, 0.1%肉エキス(エルリッヒ),
0.2%NZ Amine Type A,1% D(+)−Glucose,2%Agar, pH:7.2
・NBソフトアガー
0.8% Nutrient broth (Wako), 0.5% Agar
【0048】
4−2:ペーパーディスクアッセイ
図6に示すように,滅菌済みのペーパーディスク(直径10mm)に,2−3の方法で調製した試料をHPLC分析の結果からゴードスポリン約10μgになるようにしみ込ませて乾燥させた。3mlのNBソフトアガー( 溶かして40℃くらいに冷ましたもの) にS.lividans TK23 の胞子液を加え,Bennett's glucose 培地に均一に撒いた。アガーが乾いたら,ペーパーディスクを中央にのせ,32℃で3 日間培養した。
【0049】
−実施例5−
godR2倍体株(godA-R2 株)のゴードスポリン生産量
HPLC分析結果を図9に示した。
野生株godA-R2 株のゴードスポリンの生産量は,野生型と比較して1.15倍,ゴッドエー(godA)復帰株と比較して14.6倍であった。
ゴッドアール(godR)遺伝子を2倍にすることで,ゴッドエー(godA)復帰株においても野生型と同等のゴードスポリンを生産する株を取得できた。
【0050】
−実施例6−
取得したゴードスポリン類縁体
ゴードスポリン類縁体の構造は,置換したアミノ酸から予想できるため,その分子量をMSで測定することによって構造を決定した(図10)。
これにより47種類のゴードスポリン類縁体を取得した。表1に,それぞれ配列を示した。
【0051】
【表1】

【0052】
また,取得したゴードスポリン類縁体は,表1に配列が示されており,それらの構造式を下記において,一般式(2)〜一般式(47)として示し,各構造式の上方に付した下向き矢印は,変化した構造を指している。
【0053】
【化2】

A1S −−−−(2)
【0054】
【化3】

A1C −−−−(3)
【0055】
【化4】

A1G −−−−(4)
【0056】
【化5】

T2S −−−−(5)
【0057】
【化6】

T2C −−−−(6)
【0058】
【化7】

V3S −−−−(7)
【0059】
【化8】

V3C −−−−(8)
【0060】
【化9】

S4C −−−−(9)
【0061】
【化10】

T5C −−−−(10)
【0062】
【化11】

I6S −−−−(11)
【0063】
【化12】

I6C −−−−(12)
【0064】
【化13】

I6Y −−−−(13)
【0065】
【化14】

L7S−1 −−−−(14)
【0066】
【化15】

L7S−2 −−−−(15)
【0067】
【化16】

C8S−1 −−−−(16)
【0068】
【化17】

C8S−2 −−−−(17)
【0069】
【化18】

C8A −−−−(18)
【0070】
【化19】

S9C −−−−(19)
【0071】
【化20】

G10S −−−−(20)
【0072】
【化21】

G10C −−−−(21)
【0073】
【化22】

G11S −−−−(22)
【0074】
【化23】

G11C −−−−(23)
【0075】
【化24】

T12S −−−−(24)
【0076】
【化25】

T12C −−−−(25)
【0077】
【化26】

T12A −−−−(26)
【0078】
【化27】

L13S −−−−(27)
【0079】
【化28】

L13C −−−−(28)
【0080】
【化29】

S15C −−−−(29)
【0081】
【化30】

S15A −−−−(30)
【0082】
【化31】

A16S −−−−(31)
【0083】
【化32】

A16C −−−−(32)
【0084】
【化33】

G17S −−−−(33)
【0085】
【化34】

C18S −−−−(34)
【0086】
【化35】

C18A −−−−(35)
【0087】
【化36】

V19S −−−−(36)
【0088】
【化37】

V19C −−−−(37)
【0089】
【化38】

V19Y −−−−(38)
【0090】
【化39】

3A4 −−−−(39)
【0091】
【化40】

6A7 −−−−(40)
【0092】
【化41】

10A11−−−−(41)
【0093】
【化42】

10AV11−−−−(42)
【0094】
【化43】

10SA11−−−−(43)
【0095】
【化44】

13A14+S15T−1 −−−(44)
【0096】
【化45】

13A14+S15T−2 −−−(45)
【0097】
【化46】

G11−delate −−−−(46)
【0098】
【化47】

S9+G11−delete−−−−(47)
【0099】
作製した類縁体とゴードスポリン生合成酵素の関係を表2に示した。
これらの結果から以下のことが明らかになった。
(1)アミノ酸を置換,挿入,欠失させても環形成するアミノ酸は変わらない。
(2)ゴードスポリン生合成酵素は,アミノ酸を1 ,2 個挿入してもゴードスポリン前駆体として認識する。ただし,10A11などの中央に挿入した類縁体に比べ,3A4,6A7などの中央から外れたところに挿入すると生産量は減少する。
(3)ゴードスポリンを構成するアミノ酸は8種類であるが,それ以外のアミノ酸に置換しても生合成酵素は認識する。
【0100】
【表2】

【0101】
−実施例7−
ゴードスポリン類縁体のバイオアッセイ法の結果
ゴードスポリン類縁体のうち,ゴードスポリンと同様に色素生産,胞子形成を誘導したものは9種類であった。それを表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
表3に示すように,ゴードスポリン誘導体は,一般式2で示すA1S,一般式4で示すA1G,一般式5で示すT2S,一般式7で示すV3S,一般式9で示すS4C,一般式20で示すG10S,一般式24で示すT12S,一般式25で示すT12C,及び一般式36で示すV19Sであった。ゴードスポリン類縁体のバイオアッセイ法によって観察した際に,色素のできる円の直径は次のとおりである。++は,円の直径が20〜29mmとはっきりとした大きな色素円を示し,+は,円の直径が15〜19mmとはっきりとして小さな色素円を示し,また,±は,円の直径が14mm以下のかすかに色素を誘導している状態を示す。−は,色素誘導が確認できなかったものを示す。
【0104】
図11には,ゴードスポリン生合成経路が示されている。 (1)菌体内ではゴードスポリン前駆体蛋白遺伝子であるgodAが転写翻訳され,godA蛋白が発現する。
(2)godB,godC蛋白によってgodA蛋白は細胞膜へ係留される。
(3)godD,godE,godF,godG蛋白が,godA蛋白内のセリン,スレオニン,システイン残基をそれぞれオキサゾール,メチルオキサゾール,チアゾールに変換する。このように翻訳後修飾されたゴッドエー(GodA)蛋白は,次にN末端から30番目のアラニンと31番目のアラニンの間でプロテアーゼ酵素によって切断され,C末端側19残基が遊離する。
(4)遊離したC末端側19残基のN末端がゴッドエイチ(GodH)酵素によってアセチル化修飾を受けて,ゴードスポリンが完成する。
【0105】
図8には,上段が野生株(TP-A0584)のゴードスポリン生合成遺伝子群を示しており,中段にgodA遺伝子復帰株,即ち,godA破壊株にgodA遺伝子を組み込んだ株のゴードスポリン生合成遺伝子群を示しており,また,下段には,godA破壊株に
godA遺伝子とgodR遺伝子を組み込んだ株,即ち,godA−R2株染色体上のゴードスポリン生合成遺伝子群が示されている。
【0106】
図4には,godR遺伝子の2倍体株のPCRによる形質転換の確認が示されている。 A(左側写真)は,aph II 遺伝子特異的プライマーでPCRしたサンプルである。 B(右側写真)は,tsr遺伝子特異的プライマーでPCRしたサンプルである。
(1)DNAサイズマーカー
(2)TP−A0584(WT)ゲノムDNA
(3)ΔgodA株ゲノムDNA
(4)ΔgodA+godR株ゲノムDNA
(5)ΔgodA+godA株ゲノムDNA
(6)ΔgodA+godA+godR株ゲノムDNA
【0107】
図6には,ゴードスポリンのバイオアッセイ方法の工程が示されている。
図6に示すように,まず,NBソフトアガーを完全に溶かし,S.lividans の胞子液を加え,Bennet's glucose 培地上に均一に蒔く。次いで,NBソフトアガーが乾いたら,ゴードスポリンを染み込ませたペーパーディスクをプレートの中央に載せる。最後に,32℃で3日間培養すると,色素生産と胞子形成が確認できる。
【0108】
図9には,ゴードスポリンのHPLCの分析を示している。
上段が野生株(TP-A0584)であり,中段がゴッドエー(godA)復帰株であり,下段がゴッドエーアールツー株(godA-R2)である。
【0109】
図10には,マススペクトルデータの1例としてG10Cのスペクトルを示している。 G10Cの分子量は,その構造から1657.6476と予想された。
MSのデータからm/zは1658.6510(〔M+H〕+ )の分子量が確認されたことから,これはG10Cであると決定した。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この発明は,ゴードスポリンを初めとするチアゾール環,オキサゾール環,又はメチルオキサゾール環である複素環を含有したペプチド化合物の簡便で増大させる製造方法及びその類縁体を提供することであって,より増産の高いゴードスポリン及びその類縁体の製造方法を提供し,生育阻害効果を有し,抗菌活性を有するため,抗生物質等の医薬品,生理活性物質等の用途に適用することができる。
【0111】
〔配列表〕
配列表1.HTML

配列表2−1.HTML

配列表2−2.HTML

配列表3−1.HTML

配列表3−2.HTML

配列表3−3.HTML

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】ゴードスポリン高生産復帰株(godA−R2)の作製法を示す説明図である。
【図2】ピーティーワイエム1イーピー(pTYM1ep) のプラスミドマップを示す説明図である。
【図3】ピーティーワイエム1イーピーゴッドアール(pTYM1epgodR) の作製方法を示す説明図である。
【図4】ゴットアール(GodR)遺伝子2倍体株の,PCRによる形質転換の確認を示す写真である。
【図5】類縁体作製の際に変異を加えるゴットエー(godA)の遺伝子配列を示す説明図である。
【図6】ゴードスポリンのペーパーディスクアッセイ法の工程を示す説明図である。
【図7】ゴッドアイ(godI)2倍化株,ゴッドアール(godR)2倍化株のゴードスポリン生産パターンを示すグラフである。
【図8】野生株(TP-A0584),ゴットエー(godA)遺伝子復帰株,ゴットエーアールツー(godA-R2) 染色体上のゴードスポリン生合成遺伝子群を示す説明図である。
【図9】ゴードスポリンのHPLC分析結果を示すグラフである。
【図10】G10Cのマススペクトルを示すグラフである。
【図11】ゴードスポリン生合成経路を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボゾーム翻訳系を用いて生合成され且つ翻訳後修飾によって全て又は1部のシステイン残基がチアゾール環,セリン残基がオキサゾール環,又はスレオニン残基がメチルオキサゾール環に変換される様式で生合成されるペプチド化合物の生合成遺伝子群を用いて,遺伝子組換え可能な放線菌内で発現させることによって複素環含有ペプチド化合物を製造する方法において,
転写活性化因子遺伝子を前記ペプチド化合物の生産放線菌に形質転換することによって,前記ペプチド化合物の生産量を増大することを特徴とする複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項2】
前記転写活性化因子遺伝子を前記ペプチド化合物の生産放線菌の染色体DNA上に1個又は複数個組み込むことによって,前記ペプチド化合物の生産量を増大することを特徴とする請求項1に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記リボゾーム翻訳されるペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子は,ゴッドエー(godA)遺伝子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項4】
リボゾーム翻訳されるペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列の塩基の1又は複数個を置換,欠失,又は挿入することによって,前記ペプチド化合物の類縁体を製造することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ペプチド化合物は,ゴードスポリンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記転写活性化因子遺伝子は,ゴッドアール(godR)遺伝子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項7】
前記リボゾーム翻訳系を用いて生合成され且つ翻訳後修飾によって全て又は1部のシステイン残基がチアゾール環,セリン残基がオキサゾール環,又はスレオニン残基がメチルオキサゾール環に変換される様式で生合成される前記ペプチド化合物の前記生合成遺伝子群は,ゴードスポリン生合成遺伝子群であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項8】
前記ゴードスポリンの類縁体は,アミノ酸の増減に影響されずに複素環形成反応が行われることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項9】
前記ゴードスポリンの類縁体は,式2〜式47のいずれか1つの式の構造式で表わされることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【請求項10】
前記ゴードスポリンの類縁体のうち,前記ゴードスポリンと同様に色素生産し,胞子形成を誘導することができる前記ゴードスポリンの類縁体は,下記の式2,式4,式5,式7,式9,式20,式24,式25,及び式36のいずれかの構造式である類縁体であることを特徴とする請求項9に記載の複素環含有ペプチド化合物の製造方法。
【化1−1】

【請求項11】
下記の式2,式4,式5,式7,式9,式20,式24,式25,及び式36のいずれかの構造式で表わされるゴードスポリンと同様に色素生産し,胞子形成を誘導することができることを特徴とするゴードスポリンの類縁体。
【化1−2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−225703(P2009−225703A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73475(P2008−73475)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「日本農芸化学会2008年度(平成20年度)大会講演要旨集」に発表
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】