説明

複視患者用片眼半遮蔽眼鏡

【課題】見掛けが悪くなく、半遮蔽膜が外れにくく、周辺視で複視が生じることのない、複視患者用片眼半遮蔽眼鏡を提供する。
【解決手段】片方のみのレンズ3の裏側にレンズ3と同形状であってレンズ3とともにフレーム1に固定された半透明板4を備えた。半透明板4をポリプロピレン製、フレーム1をプラスチック製とし、レンズ3をレンズ2と同程度に着色した。レンズ3の鉛直方向の長さHを水平方向の長さLの80%以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複視患者用片眼半遮蔽眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複視を矯正するために、眼鏡のレンズの裏側にシールの形態で塗布されてレンズを半遮蔽する遮蔽膜シールが知られている(Ryser Optik社(スイス)のtransparent OCCLUSION)。この遮蔽膜シールで眼球運動障害側のレンズを半遮蔽することにより、物が二重に見えるという複視の症状が改善されるというものである。この遮蔽膜シールの透過率は10段階となっており、患者の好みに合わせて選択することができるようになっている。
【特許文献1】実開平5−41522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、複視を除去するためにはかなり透過率を抑えなければならず、このため、遮蔽膜シールが貼られた側の眼に障害があることが明白となり、見掛けが非常に悪いことが大きな問題であった。
【0004】
また、遮蔽シールはレンズに塗布するだけで固定されているので、すぐに外れやすいという問題があった。
【0005】
さらに、患者本人が有するレンズフレームの面積が小さい場合は、広い範囲を覆うことができず、周辺視で複視が生じる欠点があった。
【0006】
そこで、本発明は、見掛けが悪くなく、半遮蔽膜が外れにくく、周辺視で複視が生じることのない、複視患者用片眼半遮蔽眼鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡は、片方のみのレンズの裏側に前記レンズと同形状であって前記レンズとともにフレームに固定された半透明板を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡は、請求項1において、前記半透明板がポリプロピレン製であることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡は、請求項1又は2において、前記フレームがプラスチック製であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記レンズが他方のレンズと同程度に着色されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記レンズの鉛直方向の長さが水平方向の長さの80%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡によれば、片方のみのレンズの裏側に前記レンズと同形状であって前記レンズとともにフレームに固定された半透明板を備えたことにより、半透明板がフレームから外れにくい。
【0013】
本発明の請求項2記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡によれば、前記半透明板がポリプロピレン製であることにより、ポリプロピレンは軽量のため、半透明板が眼鏡の重量バランスにほとんど影響を与えることない。また、ポリプロピレンは加工しやすいため、半透明板をフレームの形状に合わせて容易に加工でき、半透明板が一旦フレームに固定されると外れにくい。
【0014】
本発明の請求項3記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡によれば、前記フレームがプラスチック製であることにより、半透明板を固定するための加工が容易となる。
【0015】
本発明の請求項4記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡によれば、前記レンズが他方のレンズと同程度に着色されたことにより、片方のレンズに半透明板を備えていることが目立たず、見掛けが改善される。
【0016】
本発明の請求項5記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡によれば、前記レンズの鉛直方向の長さが水平方向の長さの80%以上であることにより、広い範囲で眼の周辺が覆われ、周辺視で複視が生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡の一実施例について、添付した図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
本実施例の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡を示す図1において、1はフレームであり、このフレーム1には2枚のレンズ2,3が固定されている。そして、片方のレンズ3の裏側には、レンズ3と同形状の半透明板4がレンズ3とともにフレーム1に固定されており、半透明板4がフレーム1から外れにくくなっている。なお、半透明板4は、少なくとも片側の表面に微細な凹凸が形成されることで半透明に形成されている。また、半透明板4は、障害を有する側の眼を半遮蔽するためにレンズ3にのみ設けられるものであり、レンズ2には設けられていない。
【0019】
フレーム1はプラスチック製であり、半透明板4を固定する際の加工がしやすくなっている。半透明板4はポリプロピレン製であり、ポリプロピレンは軽量のため、ため、半透明板4が眼鏡の重量バランスにほとんど影響を与えることがない。また、ポリプロプレンは加工しやすいため、半透明板4をフレーム1の形状に合わせて容易に加工でき、半透明板4が一旦フレーム1に固定されると外れにくいようになっている。さらに、半透明板4がポリプロピレン製であることによって、ねじ穴などの加工も容易である。
【0020】
レンズ2とレンズ3は、同程度に若干着色されており、レンズ3に半透明板4を備えていることが目立たないようになっている。また、必要に応じて、レンズ2には度を入れてもよい。さらに、半透明板4はレンズ3の裏側に固定されており、レンズ2とレンズ3の表側は同様の光沢を有するため、レンズ3に半透明板4を備えていることが目立たないようになっている。
【0021】
レンズ2,3の鉛直方向の長さHは、水平方向の長さLの80%以上となっており、広い範囲で眼の周辺が覆われるようになっている。
【0022】
本実施例の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡は、外側から患者方向の光の透過がよく、レンズ3の裏面の眼瞼、眼球の状態が外からよく観察され、特殊な眼鏡を掛けているという違和感が極めて少ない。一方で、患者側からは視野が広い範囲でよく遮断され、物が二重に見えるという複視の症状が解消する。
【0023】
複視の根本的治療は眼筋手術であるが、複雑な眼球運動障害や全身疾患のある患者には行うことができない。また、手術には疼痛を伴うため手術自体を希望しない患者も多い。そうした患者への複視に対する対症療法として、眼球運動障害側の外観を損なわずに視野を遮蔽するために、本発明の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡を用いることが極めて有効である。
【0024】
以上のように、本実施例の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡によれば、片方のみのレンズ3の裏側に前記レンズ3と同形状であって前記レンズ3とともにフレーム1に固定された半透明板4を備えたことにより、半透明板4がフレーム1から外れにくい。
【0025】
また、前記半透明板4がポリプロピレン製であることにより、ポリプロピレンは軽量のため、半透明板4が眼鏡の重量バランスにほとんど影響を与えることない。また、ポリプロプレンは加工しやすいため、半透明板4をフレーム1の形状に合わせて容易に加工でき、半透明板4が一旦フレームに固定されると外れにくい。
【0026】
また、前記フレーム1がプラスチック製であることにより、半透明板4を固定するための加工が容易となる。
【0027】
また、前記レンズ3が他方のレンズ2と同程度に着色されたことにより、片方のレンズ3に半透明板4を備えていることが目立たず、見掛けが改善される。
【0028】
さらに、前記レンズ3の鉛直方向の長さHが水平方向の長さLの80%以上であることにより、広い範囲で眼の周辺が覆われ、周辺視で複視が生じることがない。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態において半透明板がポリプロピレン製である場合を例にとって説明したが、これに限定されず、このほかの合成樹脂やガラスにより半透明板を構成してもよい。また、フレームはプラスチック製でなくてもよく、金属から形成してもよい。
【実施例2】
【0030】
実際の症例で本発明の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡の効果を確認した。本症例では下方視において複視が強く、歩行中に転倒など多大の障害を来たしていた。高齢で種々の疾患があり、手術適応はなかった。本発明の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡を掛けることによって歩行中に下方視をしても複視を自覚せず、また、美容的にも他人から見て違和感がなかった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡の一実施例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 フレーム
2 レンズ
3 レンズ
4 半透明板
H 鉛直方向の長さ
L 水平方向の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片方のみのレンズの裏側に前記レンズと同形状であって前記レンズとともにフレームに固定された半透明板を備えたことを特徴とする複視患者用片眼半遮蔽眼鏡。
【請求項2】
前記半透明板がポリプロピレン製であることを特徴とする請求項1記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡。
【請求項3】
前記フレームがプラスチック製であることを特徴とする請求項1又は2記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡。
【請求項4】
前記レンズが他方のレンズと同程度に着色されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡。
【請求項5】
前記レンズの鉛直方向の長さが水平方向の長さの80%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の複視患者用片眼半遮蔽眼鏡。

【図1】
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