説明

褐藻アカモクを原料とした海藻酒及びその製造方法並びに褐藻アカモクから得たバイオエタノール及びその製造方法

【課題】 効用成分等、既に解明されている有効成分を多量に含有する褐藻アカモクより抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料とするもので、嗜好品としてだけでなく健康的な目的をも求めることができる海藻酒の提供。
【解決手段】 褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料として醸成させて得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)より抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料としたフコイダンを含む海藻酒及びその製造方法、並びに褐藻アカモクから得たバイオエタノール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人類と酒の関係は極めて古く6千年の歴史を有し、世界各国に亘って広がっている。
その製法、原料、目的等は多岐に亘り、それぞれが歴史に基づく経験則に従って造られ愛飲され、多くの酒類が造られ試されている(非特許文献1参照)。
【0003】
特に日本酒(清酒)についてはその歴史は2千年を超えるといわれる。
清酒は我が国における酒類文化の代表的なもので我が国の伝統的な嗜好品として時代とともに数々の改良変革がなされてきた。
最も求められているのがその80%以上を占める原料水に基因するものである(非特許文献1参照)。
【0004】
また、清酒以外の焼酎、ビール、ワイン等、その種類、製法は人類の嗜好性と共に極めて多岐に亘り、海藻についても特殊な海藻を様々な手法や技法、添加物等により海藻風味を得ようとする、いわゆるブレンド酒的なものはあるが、いずれの場合も海藻風味を得ようとする嗜好性を脱するものではない(特許文献2、3参照)。
【0005】
従来、酒は人類における嗜好品として扱われてきており、いわゆる薬用酒として扱われるものは稀である。
【0006】
本発明はその効用成分等、既に解明されている有効成分を多量に含有する褐藻アカモクより抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料とするもので(特許文献4参照)、嗜好品としてだけでなく健康的な目的をも求めることができる海藻酒である。
【0007】
なお、原藻体である褐藻アカモクは藻体がきわめて大きく5〜6m、あるいは10mにも達し、日本列島周辺を含め朝鮮半島から中国沿岸に多生する一年藻で自然資源が極めて多大で原資材である原藻を得る事が容易である利点もある。
【0008】
又、先行技術により褐藻アカモクよりフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を簡単に得ることができる利便性がある(例えば特許文献4参照)
【0009】
又、近来エネルギーに対する知見が広く議論されている時代で、特に陸海産物に依るバイオエタノールに対する技術は極めて素晴らしいものがあり、特に広大な海洋資源である海藻についてもさまざまな技法工夫がなされている。
しかしその手法は極めて複雑多岐で効率が悪く、相対的に効率の良いものではない(特許文献3参照)
【0010】
特に褐藻アカモクが生殖器床を多く体有する成長時の藻体を極めて簡単な手法で従来技法に対して飛躍的多量のバイオエタノールを得る技法は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭62−6776号公報
【特許文献2】特公昭62−6777号公報
【特許文献3】特許第4459294号公報
【特許文献4】特許第3930509号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「お酒のはなし 酒はいきもの」学会出版センター発行、日本農芸化学編、責任編集者 塚越規弘 栗山一秀 井上喬
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、褐藻アカモクより抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料とした海藻酒、及びその製造方法を提供することを第一の課題としている。
又、褐藻アカモクから得たバイオエタノール、及びその製造方法を提供することを第二の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記第一の課題を解決するために、本発明(請求項1)の海藻酒は、
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料として醸成させて得たことを特徴とする。
【0015】
又、本発明(請求項2)の海藻酒の製造方法は、
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料として醸成させることで海藻酒を得ることを特徴とする。
【0016】
上記第二の課題を解決するために、本発明(請求項3)のバイオエタノールは、
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液と、褐藻アカモクの原藻を主原料として醸成させたのち蒸留して得たことを特徴とする。
【0017】
又、本発明(請求項4)のバイオエタノールの製造方法は、
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液と、褐藻アカモクの原藻を主原料として醸成させたのち蒸留させることでバイオエタノールを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記のように本発明(請求項1、2)では、従来の清酒とは異なり原料水の水質に左右されることなく、簡易な方法でフコイダンを多量に含有し、かつ海藻風味を呈する美観に秀でた海藻酒を得る事ができる。
又、本発明(請求項3、4)では、自然界に多く広範囲に自生する褐藻アカモクを簡略な手法で醗酵させ効率よくバイオエタノールを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の海藻酒は従来の清酒の製造工程における手法と異なり、褐藻アカモクより抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料として醸成したものである。
【0020】
また、本発明においては従来の清酒製造工程の中で重要な要素とされる各醸造元が保有する各社独自のもと(酒母)を必ずしも使用する必要はなく、市販のイースト菌を用いて海藻独自の風味を呈することができる。
尚、製造過程における醗酵素材はアルコール発酵菌、麹、イースト菌、もと(酒母)等、いずれも使用できるのは勿論である。
【0021】
抽出液の抽出方法としては、前記した特許文献4(特許第3930509号公報)に記載された抽出技術が好適に利用できる。
即ち、成熟した生殖器床を有する褐藻アカモクに熱湯を散布して刺激を与える熱湯散湯工程と、フコイダンを滲み出させる抽出工程と、湯と共に採取する抽出液回収工程からなる褐藻アカモクよりフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を採取する方法であって、熱湯を散布して刺激を与える前記熱湯散湯工程と、フコイダンを滲み出させる前記抽出工程と、湯と共に採取する前記抽出液回収工程を経た前記褐藻アカモクを回収後、適温適湿の保養室内で10時間〜72時間の範囲で、散水又は湿布で覆いながら保養又は養生を与える保温又は養生工程と、熱湯による前記熱湯散湯工程と、フコイダンの前記抽出回収工程の各工程を複数回繰り返して行うことにより褐藻アカモクよりフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を採取する方法である。
【0022】
本発明の海藻酒を造るに当たっては主原料となる抽出液は粘度の高いもの程醸成されるアルコールの含有量は高くなるが、風味致酔性等考慮した場合、適当の粘度数を求めることが好ましい。
【0023】
従来のバイオエタノオール製法の多くは、原料となる藻体を高温高圧で処理するとか、糖液を添加するとかという手法が用いられているが、本発明においては褐藻アカモクの藻体そのままを醗酵させるという極めて簡易、かつ、画期的な方法でバイオエタノオールを効率よく得る方法を提供するものである。
【実施例1】
【0024】
この実施例1では、従来の水を主原料とした清酒(表1の比較酒1)と、本発明の褐藻アカモクからの抽出液を主原料とした海藻酒(表1の海藻酒1、海藻酒2)を以下の表1で示すような配合で製造した。
【0025】
この場合の醸造方法は、各原料を混合して醪を造り、一定期間醸成したのちこれを濾過することで酒を得るといった一般的な醸造工程を行った。
又、原料である水、麹、米、イースト菌はそれぞれ市販品を使用し、醸成期間は2011年1月10日〜同年3月10日で、平均気温は16℃であった。
また、抽出液の粘度はオスワルド対比粘度計によって計測した。このオスワルド対比粘度計は毛細管の通過時間を10℃の水に対して計測するもので、水7秒に対しての通過タイムを表示するもので、誤差を1秒とした。
又、アルコール度の測定は財団法人日本食品分析センター(分析方法:重クロム酸カリウム酸化法)に依頼した。
【0026】
【表1】

【0027】
上記表1で示すように、清酒である比較酒1が水を主原料としているのに対し、海藻酒1及び海藻酒2は水を使用せずに褐藻アカモクの抽出液を主原料としているが、比較酒1に比べて高いアルコール度の酒を得ることができた。
【実施例2】
【0028】
この実施例2では、従来の水を主原料とした清酒(表2の比較酒2)と、本発明の褐藻アカモクからの抽出液を主原料とした海藻酒(表2の海藻酒3、海藻酒4、海藻酒5)を以下の表2で示すような配合で製造した。
又、醸成期間は2011年4月1日〜同年6月5日で、平均気温は21℃であった。
又、アルコール度数の測定は、財団法人日本食品分析センター(分析方法:重クロム酸カリウム酸化法)に依頼した。
【0029】
【表2】

【0030】
以上、表1及び表2で示した海藻酒1及び海藻酒5について、パネラー10名による試飲結果を表3に示す。
【0031】
【表3】

【0032】
以上のように、従来の清酒造りにおける経験則による事なく、水を全く使用せずに褐藻アカモクより抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を用いることにより、従来の手法と同程度のアルコール含有量の多いフコイダンを含む透明度の極めて高い黄金色のフコイダン含有の海藻酒を作ることが出来た。
尚、本発明の海藻酒及びその製造方法について、その実施例1及び実施例2を表1及び表2により示したが、この実施例に限定されることはない。
【0033】
本発明の褐藻アカモクを原料としたバイオエタノールは、褐藻アカモクが多糖類であることに着目し、米、麦、芋、ブドウ等の従来使用されている醗酵素材を用いることなく、褐藻アカモクより抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液又は水と、褐藻アカモクが生殖器床を体有する藻体を主原料として市販の米麹、イースト菌により醸成させた後蒸留してバイオエタノールを得るようにしたものである。
【実施例3】
【0034】
実施例3としては表4で示すように、平均気温25℃の室内で、水2000ccに対し、褐藻アカモクの原藻1000gと米麹800gを投入して24時間後に市販のイースト菌10gを投入し、時折撹拌し、45日間醸成しての採取液(醪)を得た。この場合のアルコール含有量は財団法人日本食品分析センターによる分析結果で12.9%であった。
そして、このようにして得た採取液を通常に蒸留することでバイオエタノールを得るものである。
【0035】
【表4】

【実施例4】
【0036】
実施例4としては表5で示すように、平均気温25℃の室内で、褐藻アカモクの抽出液2000ccに対し、褐藻アカモクの原藻1000gと米麹800gを投入して24時間後に市販のイースト菌10gを投入し、時折撹拌し、45日間醸成しての採取液(醪)を得た。この場合のアルコール含有量は財団法人日本食品分析センターによる分析結果で13.5%であった。
そして、このようにして得た採取液を通常に蒸留することでバイオエタノールを得るものである。
【0037】
【表5】

【0038】
このように、本発明のバイオエタノールの製造方法によれば、従来の手法にとらわれることなく、生殖器床を多く体有する褐藻アカモクの原藻を理化学的に何ら処理することなく極めて簡単な手法でバイオエタノールを得る事が出来る。
又、本発明のバイオエタノール及びその製造方法について、その実施例3及び実施例4を表4及び表5により示したが、この実施例に限定されることはない。
又、採取液(醪)の蒸留に際し、醪をそのまま蒸留させても良いし、醪を絞ったのち(濾過後)蒸留させても良い。
【0039】
又、本発明のバイオエタノール及びその製造方法で使用する褐藻アカモクの原藻について、実施例3及び実施例4は褐藻アカモクの原藻をそのまま投入した例であるが、これに限らず例えば、褐藻アカモクの原藻に熱湯を散布しながら攪拌させて、餅のような粘り気を持った高粘度状態に処理させた褐藻アカモクの原藻を投入させてもよい。
この場合には褐藻アカモクの原藻をそのまま投入したものに比べ、得られるバイオエタノールのアルコール度数を高くさせることが期待できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料として醸成させて得たことを特徴とする海藻酒。
【請求項2】
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を主原料として醸成させることで海藻酒を得ることを特徴とする海藻酒の製造方法。
【請求項3】
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液又は水と、褐藻アカモクの原藻を主原料として醸成させたのち蒸留して得たことを特徴とするバイオエタノール。
【請求項4】
褐藻アカモクから抽出したフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液と、褐藻アカモクの原藻を主原料として醸成させたのち蒸留させることでバイオエタノールを得ることを特徴とするバイオエタノールの製造方法。


【公開番号】特開2013−66450(P2013−66450A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209042(P2011−209042)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(502019405)株式会社アッキーフーズ (6)
【Fターム(参考)】