説明

覆工巻き厚検査装置及び覆工巻き厚検査方法

【課題】トンネルの内周面とこの内周面に対向して配置される覆工用移動型枠の間に打設される覆工コンクリートの巻き厚が設定値を満たすか否かについて、覆工コンクリートの打設前に効率よく検査する。
【解決手段】 覆工巻き厚検査装置1を覆工用移動型枠20の移動方向における前方の端部20aに据え付ける。第1のレーザ光7と第2のレーザ光8との射出間隔を巻き厚の設定値に応じて調整し、第1のレーザ光を覆工用移動型枠の型枠面に沿ってトンネルの軸線方向に射出し、第2のレーザ光を第1のレーザ光と平行に、覆工の巻き厚方向に離隔して射出する。そして、レーザ光が先に打設された覆工コンクリートの端面を照射した位置を目視により確認し、双方のレーザ光が覆工コンクリートの端面上を照射していれば覆工巻き厚の設定値を満たしていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、トンネル掘削時における覆工施工前のトンネル内周面と覆工用型枠との間に打設される覆工コンクリートの巻き厚が予め定められた設定値を満たしているか否かを、覆工コンクリートの打設前に検査する覆工巻き厚検査装置及び覆工巻き厚検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの覆工は、地山を掘削した後、掘削内周面と対向して型枠を設置し、この型枠と掘削内周面との間にコンクリートを打設する。地山を掘削した内周面は、岩盤が強固である場合には掘削したままの状態でコンクリートが打設されるが、一般には鋼支保工を建て込み、コンクリートの吹きつけ等を行って地山が緩むのを防ぐ。そして、その内側に型枠を設置してコンクリートを打設する。一方、シールドトンネルにおいても地盤を掘削した後コンクリート又は鋼で形成されたセグメントを掘削面の内側に建て込み、一次覆工を施した後、その内側に型枠を設置して二次覆工を打設することが行われている。
【0003】
覆工のコンクリートを打設するための型枠としてはトンネルの軸線方向に移動する移動型枠が多く用いられ、所定長の覆工コンクリートを打設する毎に移動型枠がトンネル内を前進し順次に覆工コンクリートが巻き立てられる。
この覆工コンクリートの厚さは、トンネルの使用目的に適合するとともに安全で長期間の使用に耐え得るように定められる。
【0004】
打設しようとする覆工コンクリートが上記のように予め設定された覆工巻き厚の値を満たしているか否かを検査する方法としては、型枠に設けられた複数の開閉窓から地山面に向かってスケールを差し入れ、トンネルの内周面と型枠の外周面との間の離隔距離を測定する方法が一般に行われている。
【0005】
また、特許文献1には、脱型前のコンクリートが未硬化の状態で覆工巻き厚を測定する技術が開示されている。この技術は、覆工コンクリートを打設するために用いられる内型枠のスキンプレートに複数対の開閉可能となった開口を設けておき、開口を閉じた状態でコンクリートを流し込んで覆工コンクリートを打設する。その後、開口を開放し、対となる開口の一方から発振装置を、他方の開口から受振装置をそれぞれ覆工コンクリートの中に突き入れる。発振装置からコンクリート中に波動を発生させると、受振装置が覆工コンクリートと地山との境界で反射した波動及び発信装置から直接に伝播する波動を受振する。これらの受振データを用いて直接波の到達時間と反射波の到達時間を算出し、覆工コンクリート中の波動の伝播速度と反射波及び直接波の到達時間に基づいて覆工の厚さを計算するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−179943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、覆工用型枠の開閉窓からスケールを差し込んで測定する従来の方法では、覆工コンクリートの打設前に巻き厚を容易に検査することが可能ではあるが、開閉窓から離れた位置では測定が困難になってしまう。また、開閉窓ごとにスケールを差し入れて測定しなければならず測定の効率が良好ではない。
また、発振装置から発振される波動による測定は、覆工コンクリートを打設した後に測定するものであり、測定の結果として必要な巻き厚が確保されていないことが判明したときの対処が困難になってしまう。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、覆工施工前におけるトンネル内周面と覆工用型枠との間に形成された空間が、この空間内に打設される覆工コンクリートの巻き厚の設定値を満たしているか否かを、覆工コンクリートの打設前に検査する覆工巻き厚検査装置及び覆工巻き厚検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 トンネルの覆工コンクリートを打設する前の地山内空間の内周面と、覆工コンクリートを打設するために前記内周面と対向するように設けられる覆工用移動型枠との離隔距離が、予め定められた覆工巻き厚以上となっているか否かを、覆工コンクリートの打設前に検査する覆工巻き厚検査装置であって、 少なくとも2条のレーザ光を平行に射出するレーザ光射出器と、 該レーザ光射出器を支持する支持基部と、を備え、 前記支持基部は、前記覆工用移動型枠の覆工コンクリートを順次に打設してゆく方向における前方側の端部に据え付けられ、 前記レーザ光射出器は、前記レーザ光の少なくとも1条を前記覆工用移動型枠の型枠面に沿って該トンネルの軸線方向に射出し、前記レーザ光の他の少なくとも1条を、前記型枠面に沿って射出された前記レーザ光と平行に、前記覆工コンクリートの厚さ方向に予め定められた間隔をあけて射出するものであることを特徴とする覆工巻き厚検査装置を提供する。
【0010】
この覆工巻き厚検査装置では、少なくとも2条のレーザ光が覆工コンクリートの厚さ方向に予め定められた間隔で射出されるので、この間隔を覆工巻き厚の設定値とほぼ同一となるように調整しておくことにより、覆工巻き厚が設定値を満たすか否かを容易に検査することができる。つまり、2条のレーザ光が遮られることなく通過した領域では、覆工の巻き厚は設定値を満たしていることになり、いずれか一方又は双方のレーザ光が遮られて通過し得ないときには覆工の巻き厚が設定値を満たしていないことになる。
また、覆工巻き厚検査装置は覆工用移動型枠がトンネル内で前進する方向の前方側の端部に据え付けられ、後方に向けて射出されることにより、既に打設されている覆工コンクリートの端面にレーザ光が照射され、レーザ光の照射位置を容易に確認することができる。そして、一回に覆工コンクリートを打設する範囲について巻き厚を検査することができ、覆工用移動型枠を前進移動させて覆工コンクリートを打設する毎に覆工巻き厚の検査を容易に行うことができる。
一方、この覆工巻き厚検査装置は覆工用移動型枠へ容易に据え付けることができ、効率のよい測定が可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の覆工巻き厚検査装置において、 前記支持基部は、前記覆工用移動型枠の周方向に移動して複数の位置で、前記型枠面を規準として据え付けられるものとする。
【0012】
この覆工巻き厚検査装置は、覆工用移動型枠の型枠面を規準として据え付けることにより、周方向の複数の位置で覆工の巻き厚方向に所定の間隔でレーザ光が射出されるように据え付けることが容易となる。したがって、覆工コンクリートの周方向のほぼ全域にわたって巻き厚を検査することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の覆工巻き厚検査装置において、 前記2条のレーザ光の射出される間隔は、互いに平行に射出される状態で変更可能となっているものとする。
【0014】
この覆工巻き厚検査装置では、覆工巻き厚の設定値が異なるトンネルの覆工を施工する場合においても、当該設定値に対応して検査を行うことができる。また、覆工巻き厚が一つのトンネル内で変更される場合においても容易に対応が可能となる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の覆工巻き厚検査装置において、 前記レーザ光が既に打設された覆工コンクリートの前方側の端面上に照射された位置を記録する撮像器を備えるものとする。
【0016】
この覆工巻き厚検査装置では、レーザ光が照射される状態を画像として記録することができ、検査結果を少ない作業量で正確に記録することが可能となる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の覆工巻き厚検査装置において、 前記レーザ光射出器は、レーザ光発生器と、該レーザ光発生器から射出されたレーザ光の一部を透過するとともに一部を反射するハーフミラーと、前記ハーフミラーを透過したレーザ光を反射するミラーとを有し、 前記ハーフミラーで反射したレーザ光と、前記ハーフミラーを透過し前記ミラーで反射したレーザ光とが平行に射出されるものとする。
【0018】
この覆工巻き厚検査装置では、1つのレーザ光発生器で複数条のレーザ光を射出させることが可能となる。これにより、覆工巻き厚検査装置を簡略化し、製造コストを低減することができる。
【0019】
請求項6に係る発明は、 レーザ光射出器から平行に射出される少なくとも2条のレーザ光の射出間隔を、トンネルの覆工コンクリートの予め定められた巻き厚の設定値に基づいて調整し、 前記レーザ光射出器を、掘削した地山内空間の内周面と対向して設置される覆工用移動型枠の覆工コンクリートを順次に打設してゆく方向の前方側の端部に据え付け、 前記2条のレーザ光の一方を、前記覆工用移動型枠の型枠面に沿って前記トンネルの軸線方向に射出し、他方のレーザ光を、前記型枠面に沿って射出される前記レーザ光と前記覆工コンクリートの厚さ方向に間隔をあけて射出し、 前記2条のレーザ光が照射される位置により、打設する前記覆工コンクリートが予め定められた巻き厚の設定値を満たすか否かを検査することを特徴とする覆工巻き厚検査方法を提供する。
【0020】
この覆工巻き厚検査方法では、2条のレーザ光が覆工コンクリートを打設する領域で遮られることなく通過してレーザスポットが形成されているか否かにより、覆工巻き厚が設定値を満たしているか否かを検査することが可能となる。
また、覆工用移動型枠がトンネル内での前進移動する毎に、一回に打設する覆工コンクリートの巻き厚を順次検査することができる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の覆工巻き厚検査方法において、 前記覆工コンクリートの厚さ方向に間隔をあけて射出される前記2条のレーザ光と前記覆工用移動型枠の周面の接線方向に並列して、1条又は2条以上のレーザ光を射出するものとする。
【0022】
この覆工巻き厚検査方法では、周面の接線方向に並列して射出されたレーザ光によって、これらのレーザ光の射出方向を確認するとともに、覆工巻き厚方向に2条のレーザ光が離隔して射出されているか否かを容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、本願発明に係る覆工巻き厚検査装置及び覆工巻き厚検査方法では、少なくとも2条のレーザ光が覆工巻き厚の設定値に基づいて調整された間隔を有して、既に打設された覆工コンクリートの端面に向かって射出されるので、これらのレーザ光が覆工コンクリート端面を照射する位置を目視することにより、覆工巻き厚が設定値を満たしているか否かを検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】覆工コンクリートを打設する位置に設置された覆工用移動型枠と、この覆工用移動型枠に本願発明の一実施形態である覆工巻き厚検査装置を据え付けて覆工の巻き厚を検査する状態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1に示す覆工巻き厚検査装置の概略側面図及び概略正面図である。
【図3】覆工用移動型枠の周方向の各位置に覆工巻き厚検査装置を据え付けて覆工コンクリートの巻き厚を検査するときのトンネルの概略横断面図である。
【図4】図1に示す覆工巻き厚検査装置の変形例を示す概略側面図及び概略背面図である。
【図5】図1に示す覆工巻き厚検査装置から射出されるレーザ光が覆工コンクリートの端面に照射された状態を示す概略図である。
【図6】覆工巻き厚検査装置から射出されるレーザ光の射出パターンの他の例を示す概略図である。
【図7】本願発明の他の実施形態である覆工巻き厚検査装置の側面図である。
【図8】本願発明の他の実施形態である覆工巻き厚検査装置の側面図及び背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、覆工コンクリートを打設する位置に設置された覆工用移動型枠と、この覆工用移動型枠に本願発明の一実施形態である覆工巻き厚検査装置を据え付けて覆工の巻き厚を検査する状態を示す概略縦断面図である。また、図2は覆工巻き厚検査装置の概略側面図及び概略正面図、図3は覆工用移動型枠の周方向の各位置に覆工巻き厚検査装置を据え付けて覆工コンクリートの巻き厚を検査するときのトンネルの概略横断面図である。
この覆工巻き厚検査装置1は、覆工施工前のトンネルの内周面26aとこの内周面に対向して配置された覆工用移動型枠20との間に打設される覆工コンクリートの巻き厚が予め設定された値を満たすか否かを検査する装置であり、覆工コンクリート25の打設前に覆工用移動型枠20の前方側の端部20aに据え付けることができるものとなっている。この覆工巻き厚検査装置1は、少なくとも2条のレーザ光7,8を、覆工の巻き厚方向に離隔して平行に射出するものであり、離隔距離を予め定められた覆工巻き厚の設定値とほぼ同じに設定することができるものである。そして、これらのレーザ光7,8を覆工用移動型枠20の移動方向における前方側から後方に向けてトンネルの軸線方向に射出する。
【0026】
上記覆工用移動型枠20は、トンネルの内周面に所定の厚さで巻き立てられる覆工コンクリート25を打設するための型枠であり、トンネル26を掘進する切羽の後方に配置される。そして、掘削された地山の内面と対向する型枠を構成するものであり、覆工施工前のトンネル内周面26aに沿って曲面状に組み立てられた型枠面材20bと、この型枠面材20bを支持する支持フレーム20cと、で主要部が構成されている。
上記型枠面材20bは、周方向に配列された複数の部分からなり、トンネルの内周面26aに対して進退する方向に移動が可能となっており、覆工コンクリートの内周面となる位置に正確に設定することができるものとなっている。また、上記支持フレーム20cは、トンネル26の底面に敷設されたレール21上を走行して型枠面材20bをトンネルの軸線方向に移動することが可能となっている。これにより、トンネル内を移動して、覆工コンクリート25を順次に打設する位置に型枠面材20bを設定することができるものである。
【0027】
なお、覆工コンクリート25を打設する前のトンネル内周面26aは、掘削した地山内周面に鋼支保工が建て込まれ、地山面にコンクリートを吹き付けたものの他、その他の形式の支保工が施されたものであってもよいし、支保工が施されずに地山の岩盤が露出したものであってもよい。また、コンクリートを吹きつけた面又は掘削された岩盤の表面には防水シート等が取り付けられたものであってもよい。
【0028】
上記覆工巻き厚検査装置1は、図2に示すように、レーザ光射出器2と、撮像器9と、このレーザ光射出器2及び撮像器9を支持する支持基部10と、で主要部が構成されており、支持基部10を介して覆工用移動型枠20の前方側の端部20aに据え付けられるようになっている
上記レーザ光射出器2は、図2(b)に示すように、6台のレーザ光発生器5、6と6個のミラー3,4とを備えており、各々のレーザ光発生器5,6が1条のレーザ光を射出するものとなっている。
【0029】
上記レーザ光発生器5,6は、3台が覆工用移動型枠20の周面に近い位置で接線方向に並列して配置され、他の3台が覆工施工前のトンネル内周面26aに近い位置で接線方向に所定の間隔で配置されている。
覆工用移動型枠側に配置された3台のレーザ光発生器5は、覆工用移動型枠の型枠面材20b側にレーザ光をそれぞれ射出し、ミラー3で反射させて覆工用移動型枠20の型枠面に沿ってトンネルの軸線方向に第1のレーザ光7を射出する。地山側のレーザ光発生器6は、地山の内周面26a側にレーザ光を射出し、第2のレーザ光発生器6の上方に備えられたミラー4により反射させて、第1のレーザ光7と間隔をあけて平行に第2のレーザ光8を射出するものとなっている。
【0030】
上記ミラー3,4は、覆工コンクリートの巻き厚方向に対となった2条のレーザ光が正確に平行となるように調整されている。つまり、型枠側のミラー3aと地山側のミラー4aと、型枠側のミラー3bと地山側のミラー4bと、型枠側のミラー3cと地山側のミラー4cとはそれぞれ対となって第1のレーザ光7及び第2のレーザ光8を互いに平行に射出するものである。
【0031】
上記撮像器は、レーザ光が照射されている位置、例えば先に打設された覆工コンクリート25の端面25aにレーザ光が照射されている状態を像として記録するものであり、本実施の形態ではデジタルカメラ9を採用している。このデジタルカメラ9で撮影された記録は、デジタルカメラ9のメモリに保存しておくこともできるし、パーソナルコンピュータやサーバ等へ転送することも可能となっている。
なお、本実施の形態では、6台のレーザ光発生器5,6が配置されているほぼ中央にデジタルカメラ9を配置したが、レーザ光7,8が覆工コンクリートを打設する領域を通過してその奥側にある覆工コンクリートの端面25a等に照射される状態を撮影できる位置に配置されればよく、配置される位置は中央に限定されるものではない。
【0032】
上記支持基部10は金属からなり、6台のレーザ光発生器5,6及びミラー3,4を支持するとともに覆工用移動型枠20に据え付けることを可能とするものである。そして、レーザ光発生器5,6及びデジタルカメラ9を固定された状態で支持する前方支持部材11と、レーザ光の射出側に対して前方支持部材11の後方となる位置で該前方支持部材11を支持する後方支持部材12と、この後方支持部材12と前方支持部材11とを連結する連結部材13と、後方支持部材12を覆工用移動型枠20に対して位置を固定して据え付けるための据え付け部材14と、で主要部が構成されている。
【0033】
上記前方支持部材11は、覆工用移動型枠20の型枠面材20bの周面とほぼ垂直に支持される板状部材であり、本体部11aにはレーザ光発生器5,6及びデジタルカメラ9が固定支持されるとともに、型枠側のレーザ光発生器5から射出されたレーザ光を型枠面材20bの周面に沿った方向に反射する型枠側のミラー3も固定支持されている。また、前方支持部材11は、地山側のミラー4を支持して本体部11aに対して地山側に伸縮する伸縮部11bを備えている。
【0034】
上記伸縮部11bは、本体部11aのトンネル内周面26aと対向する位置に本体部11aから突き出すように設けられており、本体部11aに設けられたガイド(図示せず)に沿って移動するものである。これにより、本体部11aよりの突き出し長を変動させることが可能となっている。
この伸縮部11bを移動させる機構は、例えば、伸縮部11bに取り付けられたラックと、前方支持部材11の本体部11bに取り付けられたギアとによって構成することができる。つまり、ハンドル15を操作してギアを回転することにより、地山側の内周面に向かって進退するように伸縮部を駆動することができる。これにより、型枠側のミラー3と地山側のミラー4との間隔を変更し、2条のレーザ光7,8の離隔距離を変更することができるものとなっている。
なお、伸縮部11bを駆動する機構又は方法は、その他の公知の技術を用いることもできる。
【0035】
上記後方支持部材12は、上記連結部材13を介して前方支持部材11を支持するとともに、この後方支持部材12に固着された据え付け部材14によって支持されるものである。
上記据え付け部材14は、前方支持部材11とともに後方支持部材12を覆工用移動型枠20の前方側の端部に位置決めをして取り付けるものである。つまり、レーザ光7が型枠面に沿ってトンネルの軸線方向に射出され、既に打設された後方側の覆工コンクリート25に照射されるように位置を決めて据え付けることができるものとなっている。
【0036】
本実施の形態では、上記据え付け部材14が覆工用移動型枠20の端部に設けられた目地型枠20dに嵌め合わせて固定される。目地型枠20dは、覆工コンクリート25が打ち継ぎ目付近でひび割れを生じやすくなることから、覆工コンクリートの打ち継ぎ目に目地を形成するために設けられたものである。据え付け部材14は、覆工用移動型枠20との当接面が目地型枠20dの形状に倣った形状となっており、目地型枠20dに嵌め合わせた状態で射出されるレーザ光の1条が型枠面に近接し、ほぼ平行となるように位置決めされるものとなっている。
【0037】
また、上記据え付け部材14にはねじ孔が開削されており、このねじ孔に固定用ボルト14aを貫通させ、覆工用移動型枠20に対して締め付けることによって据え付け部材14を覆工用移動型枠20に固定することができるものである。2つのボルト14aは、ねじ込み量を調整することにより、レーザ光の射出方向を調整することができる。
上記据え付け部材14により上記覆工巻き厚検査装置1は、図3に示すように覆工用移動用型枠20の型枠面の周方向における任意の位置又は複数の位置に据え付けることができ、型枠面の周方向の広い範囲で覆工巻き厚を検査することができるものとなっている。
【0038】
また、図4に示すように、前方支持部材11と後方支持部材12とを連結する連結部材13は、例えば貫通するボルト16を備えるものとし、連結部材13が伸縮するように構成することもできる。上記ボルト16は、前方支持部材11と後方支持部材12とのいずれか一方に螺合するとともに他方にはボルトの軸線方向の位置を固定して回転が可能に係止する。これによりボルトを回転して前方支持部材11と後方支持部材12との間隔が変更される。このような構成を備えると、覆工巻き厚検査装置1を覆工用移動型枠20に据え付けて位置を固定した後に連結部材13を調整してレーザ光の射出方向の微調整が可能となる。つまり、図4(b)に示される4つの連結部材の内の右側の2つの連結部材13a,13b又は左側の2つの連結部材13c、13dの長さを変更することによりレーザ光7,8の射出方向を左右に旋回させることができる。また地山側の2つの連結部材13a、13c又は型枠側の2つの連結部材13b,13dの長さを変更することにより、レーザ光7,8の射出方向を覆工の巻き厚方向に変更することができる。
【0039】
次に、このような覆工巻き厚検査装置1を用いて覆工コンクリートの巻き厚が予め定められた覆工巻き厚の設定値を満たしているか否かを検査する方法について説明する。
トンネルの覆工コンクリート25は次のような工程で形成される。
覆工コンクリート25を打設するための覆工用移動型枠20が、既に打設された覆工コンクリートと連続して覆工を形成する位置に移動し、型枠面材20bが覆工コンクリートの内周面となる位置に設置される。このとき、掘削されたトンネルの地山面にはH形鋼等を加工した鋼支保工が建て込まれ、地山面にはコンクリートが吹きつけられている。また、トンネル内の防水のためにポリ塩化ビニール等からなる防水シートが吹き付けられたコンクリート面に取り付けられている。
覆工を形成するコンクリートは、覆工施工前のトンネルの内周面26aと覆工用移動型枠20との隙間にコンクリートポンプ等によって送り込まれ、覆工25の一施工区分のコンクリートが打設される。
【0040】
打設された一施工区分の覆工コンクリート25が硬化すると、覆工用移動型枠20の側部の型枠面材を内側に後退させた状態で下方に下げて脱型する。脱型した覆工用移動型枠20はトンネルの底面に敷設されたレール21上を走行し、次の覆工コンクリート25を打設する位置へ移動する。この位置で覆工用移動型枠20の型枠面材20bは覆工の内周面となる位置に再び設定される。
【0041】
上記工程において、覆工用移動型枠20が設置され、型枠面材20bが覆工コンクリートの内周面となる位置に合わせて設定された後、コンクリートが打設されるまでに覆工の巻き厚が設定値を満たすものとなるか否かの検査が行われる。この検査は次のような工程によって行うことができる。
覆工巻き厚検査装置1は、図2に示すように、覆工用移動型枠20の前方側の端部20aに、レーザ光7,8が後方側に向かって射出されるように据え付ける。このとき、覆工巻き厚検査装置1は、型枠面材20bの周面に沿って射出される第1のレーザ光7と、地山側に射出される第2のレーザ光8との射出間隔が覆工巻き厚の設定値とほぼ同じ間隔で正確に平行となるように伸縮部11b及びミラー3,4等を調整しておく。そして、型枠側に射出される第1のレーザ光7が型枠面と近接し、該型枠面とほぼ平行に射出されるように覆工巻き厚検査装置1の位置を調整する。このレーザ光7,8の射出方向の調整は、覆工巻き厚検査装置1を覆工用移動型枠20に据え付けるときにレーザ光7,8が上記のように射出されるように設定する他、前方支持部材11と後方支持部材12とを連結する連結部材13が伸縮するものとなっている場合には、この連結部材13の長さを調整することによってレーザ光7,8の射出方向を設定することができる。
なお、覆工巻き厚検査装置1は、伸縮部11bの突出する長さを調整することによって型枠側に射出される第1のレーザ光7と地山側に射出される第2のレーザ光8の間隔が調整可能となっているので、覆工巻き厚の設定値が異なるトンネルの覆工コンクリートを打設する場合、同じトンネル内で覆工巻き厚が変更される場合等にも、容易に対応することができる。
【0042】
覆工巻き厚検査装置1の据え付けが終了すると、レーザ光7,8を後方の既に打設された覆工コンクリート25の端面に向けて照射する。このレーザ光7,8の照射位置に基づいて、打設しようとする覆工コンクリート25が巻き厚の設定値を満たすものとなるか否かを判断する。
つまり、覆工コンクリートの巻き厚方向に間隔をあけて射出される第1のレーザ光7と第2のレーザ光8との双方が覆工コンクリートを打設しようとする領域を通過し、既に打設された覆工コンクリート26の端面上に照射されている場合は、覆工巻き厚の設定値を満たしている。一方、第1のレーザ光7のみが照射されており、第2のレーザ光が地山側の吹き付けコンクリート又は鋼支保工等によって遮られる場合は、覆工巻き厚の設定値を満たしていないことになる。
このような検査を、図3に示すように覆工用移動型枠20の型枠面の周方向における複数の位置で行う。
【0043】
本実施の形態の覆工巻き厚検査装置1では、6条のレーザ光が射出されるものとなっており、これらのレーザ光の照射を次のように利用することができる。
図5は、型枠面材20bの周面の接線方向に並列して射出された3対のレーザ光が既に打設された覆工コンクリートの端面に照射された状態を示す図である。
なお、黒丸は覆工コンクリートの端面にレーザ光が照射されて出現したレーザスポットを表し、白丸は覆工コンクリートの端面以外をレーザ光が照射していることを示すものである。
【0044】
覆工巻き厚検査装置1から射出される6条のレーザ光の内、中央部で型枠側に射出されるレーザ光7bがトンネルの軸線方向に型枠面に沿って該型枠面と平行に射出されると、例えば図5(a)に示すように照射される。つまり、中央に配置された第1のレーザ光7bは型枠面材20bの外周面近くで先に打設した覆工コンクリートの端面上に照射され、このレーザ光7bと対となる地山側の第2のレーザ光8bは覆工打設前のトンネルの内周面26aに近接して覆工コンクリートの端面上に照射される。このように照射された状態では、2つのレーザスポットの間隔T1が覆工巻き厚の設定値に相当しており、コンクリートを打設しようとする覆工の巻き厚は設定値を満たしていることが分かる。
また、図5(b)に示すように、6条のレーザ光7,8のいずれもが先に打設した覆工コンクリートの端面上に照射されているときには、3対のレーザ光が照射される範囲で設定値以上の覆工巻き厚が確保されていることが分かる。
【0045】
一方、図5(c)に示すように、第1のレーザ光7は型枠面材20bに近接して覆工コンクリートの端面上に照射されているが、第2のレーザ光8のいずれもが覆工コンクリートの端面に照射されていないと、コンクリートの打設を行おうとしている覆工の巻き厚は設定値を満たしていないと判断することができる。
また、図5(d)に示すように、射出されたレーザ光がトンネルの軸線と正確に平行とはなっておらず、トンネルの軸線方向に対して射出位置より右側にレーザ光7,8が照射されていても、左側に配置された第1のレーザ光7aが型枠面材20bの近傍において覆工コンクリートの端面に照射され、第2のレーザ光8aがトンネルの内周面の近傍で覆工コンクリートの端面上に照射されているときには、コンクリートを打設しようとしている覆工の巻き厚は設定値を満たしていると判断できる。
このように、複数組のレーザ光を型枠面材20bの周面の接線方向に並列して射出することにより、レーザ光の射出方向に多少のずれが生じた場合でも覆工の巻き厚を検査することができる。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、レーザ光発生器を6台備え、対となった2条のレーザ光を3組射出しているが、少なくとも2条のレーザ光が射出されれば覆工巻き厚の設定値を満たしているか否かの検査をすることができる。また、必ずしもレーザ光が対となっていなくてもよい。
【0047】
例えば、図6(a)に示すように、4条のレーザ光を射出し、中央部で射出される2条のレーザ光7b,8bのみを対とすることができる。つまり、型枠面材20bの周面の接線方向に並列して3条の第1のレーザ光7a,7b,7cを射出するとともに、中央に位置する第1のレーザ光7bと覆工の巻き厚方向に離隔した第2のレーザ光8bとを対とするものである。
このように第1のレーザ光7を複数射出することにより、地山側に射出された第2のレーザ光8が遮られて先に打設した覆工コンクリートの端面に照射されていない状態でも、操作者はレーザ光の射出方向を容易に認識することができ、レーザ光の射出方向の調整等を容易に行うことができる。
【0048】
図6(b)に示すように、型枠面材20bの周面の接線方向に並列して2条の第1のレーザ光7a,7bが射出され、この内の1条のレーザ光7aと対となるように覆工の巻き厚方向に離隔した第2のレーザ光8aが射出されるものでもほぼ同様に使用することができる。
【0049】
図6(c)に示すレーザ光の射出パターンは、型枠面材20bの周面の接線方向に並列して2条の第1のレーザ光7a,7bが射出され、これら2条の第1のレーザ光の射出位置を結ぶ線Lから覆工の巻き厚方向に離隔して1条の第2のレーザ光8aを射出するものである。そして、2条の第1のレーザ光7a,7bの射出位置を結ぶ線Lから第2のレーザ光8aの射出位置までの離隔距離T2が覆工の巻き厚の設定値となるように調整するものである。
【0050】
次に、本願発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は、本実施の形態である覆工巻き厚検査装置の側面図である。
この覆工巻き厚検査装置31は、レーザ光発生器35,36と、撮像器であるデジタルカメラ39と、このレーザ光発生器35,36及びデジタルカメラ39を支持する支持基部40と、で主要部が構成されており、支持基部40を介して覆工用移動型枠20の前方側の端部20aに据え付けられるようになっている。
【0051】
この覆工巻き厚検査装置31ではミラーが備えられておらず、レーザ光発生器35,36から射出されたレーザ光はトンネルの軸とほぼ平行となる方向へ直接に射出されるものとなっている。
上記レーザ光発生器35,36以外の構成、つまり上記デジタルカメラ39及び支持基部40は、図2に示す第1の実施の形態と同じものが用いられている。また、覆工用移動型枠20の構成も第1の実施の形態と同様であるので、同一の符号を付すとともに説明を省略する。
【0052】
この覆工巻き厚検査装置31では、レーザ光発生器35,36は前方支持部材41に射出口をトンネルの軸線方向に向けて固定されており、型枠側のレーザ光発生器35は前方支持部材41の本体部41aに支持されている。そして、型枠面に近接した位置でレーザ光37を射出するものとなっている。また、地山側のレーザ光発生器36は前方支持部材41の本体部に対して伸縮するように設けられた伸縮部41bに支持され、型枠側のレーザ光発生器35から射出されるレーザ光37と平行にレーザ光38を射出するように支持されている。したがって、図2に示す実施の形態と同様に、伸縮部41bの突出量を調整することによって対となる型枠側のレーザ光37と地山側のレーザ光38との離隔間隔を調整し、トンネルの軸線方向へ平行に射出することができるものとなっている。
【0053】
このような覆工巻き厚検査装置31も図2に示す第1の実施の形態と同様に覆工用移動型枠20に据え付け、コンクリートを打設する前に覆工の巻き厚が予め設定された値を満たすか否かを検査することができる。
【0054】
なお、本実施の形態でも、覆工用移動型枠20の周面の接線方向に並列して3条の第1のレーザ光37が射出され、これら3条の第1のレーザ光37と射出される間隔が調整された3条の第2のレーザ光38が平行に射出されるものとなっているが、第1の実施の形態と同様に、射出されるレーザ光の数、パターンは上記に限定されるものではなく、図5及び図6に示すパターン又はその他のパターンとすることもできる。
【0055】
次に本願発明の第3の実施形態を図に基づいて説明する。
図8は、本実施の形態である覆工巻き厚検査装置の側面図及び背面図である。
この覆工巻き厚検査装置51は、第1の実施の形態と同様にレーザ光射出器52と、撮像器であるデジタルカメラ59と、このレーザ光射出器52及びデジタルカメラ59を支持する支持基部60と、で主要部が構成されている。そして、支持基部60を介して覆工用移動型枠20の前方側の端部20aに据え付けられるようになっている。
【0056】
この覆工巻き厚検査装置51では、レーザ光射出器52が、レーザ光発生器55と、レーザ光発生器55から射出されたレーザ光の光量の一部をトンネルの軸線方向に反射するとともに一部を透過するハーフミラー53と、ハーフミラー53を透過した光束を上記ハーフミラーで反射した光束と平行となるように反射するミラー54とを備えている。
一方、支持基部60は、レーザ光発生器55とハーフミラー53とを支持する第1の支持部材61と、第1の支持部材61に対して地山側への進退が可能に連結され、上記ミラー54を支持する第2の支持部材62と、第1の支持部材61を覆工用移動型枠20に対して型枠面を基準として据え付けるための据え付け部材63とで主要部が構成されている。
【0057】
上記レーザ光発生器55は、上記覆工巻き厚検査装置51が覆工用移動型枠20に据え付けられたときに、型枠面材20bよりトンネル断面の中心側となるように第1の支持部材61に取り付けられている。また、このレーザ光発生器55の取り付け位置より地山側にハーフミラー53が取り付けられ、レーザ光発生器55から射出されたレーザ光がハーフミラー53に入射し、一部を透過するとともに反射したレーザ光57がトンネルの軸線方向であって覆工用移動型枠20の進行方向の後方側へ反射するように設定されている。
【0058】
ミラー54は、レーザ光発生器55からハーフミラー53に向けて射出されたレーザ光の延長線上において第2の支持部材62に支持されている。そして、入射されたレーザ光をハーフミラー53で反射したレーザ光57と平行に反射するように設定されている。したがって、同一のレーザ光発生器55から射出されたレーザ光は、ハーフミラー53で反射したレーザ光57とハーフミラー53を透過しミラー54で反射したレーザ光58とに分割され、平行に照射される。そして、第2の支持部材62の第1の支持部材61に対する位置を調整することによって分割された2条のレーザ光57,58の離隔距離を覆工巻き厚の設定値とほぼ同じとなるように設定することができるものとなっている。
【0059】
上記レーザ光発生器55と上記ハーフミラー53と上記ミラー54とは、図8(b)に示すように3組が型枠の周面の接線方向に配列されており、それぞれの組が、一つのレーザ光発生器55から射出されたレーザ光を覆工の巻き厚方向に離隔した2つのレーザ光57,58に分割して射出することができるものとなっている。
【0060】
上記レーザ光発生器55と上記ハーフミラー53と上記ミラー54とは、いずれも第1の支持部材61及び第2の支持部材62の、レーザ光57,58を射出する方向に対する背面側に取り付けられている。そして、ハーフミラー53及びミラー54で反射したレーザ光57,58の光路となる部分の第1の支持部材61又は第2の支持部材62には貫通孔61a,62aが設けられている。したがって、レーザ光発生器55から射出されたレーザ光は、ハーフミラー53及びミラー54に入射され、それぞれで反射して上記貫通孔61a,62aから平行に射出される。
【0061】
第1の支持部材61は、レーザ光57,58を射出する方向の前面を覆工用移動型枠の端面20aに当接し、型枠面材20bに据え付け部材63を当接することによって位置が規制され、この状態で覆工用移動型枠20に据え付けることができるものとなっている。そして、据え付ける位置は、ハーフミラー53で反射されたレーザ光57が型枠面に近接して平行に射出される位置に調整される。
上記第1の支持部材61及び据え付け部材63の覆工用移動型枠20への固定には、例えば磁石を用いることができる。磁石は第1の支持部材61と据え付け部材63の双方又は一方に備えられ、磁石の吸引力によって覆工用移動型枠20の鋼部材に固着するとともに磁石の方向又は位置を変動することによって容易に取りはずすことが可能となっている。
【0062】
なお、上記レーザ光発生器55と上記ハーフミラー53と上記ミラー54とは、上記のように3組を用いるものに限定されるものではなく1組又は2組を用いるものであってもよいし、上記レーザ光発生器55と上記ハーフミラー53と上記ミラー54とを組にして用いるものの他に、一つのレーザ光発生器から単一のレーザ光を射出するものと併せて用いるものであってもよい。そして、レーザ光の射出パターンを例えば図5又は図6に示されるものとして使用することができる。
【0063】
このような覆工巻き厚検査装置51でも、図8に示すように、覆工用移動型枠20の型枠面に近接してトンネルの軸線方向にレーザ光57を射出するとともに、このレーザ光57と平行に、覆工の巻き厚方向に離隔してレーザ光58を射出することができる。そして、図2に示す実施の形態と同様に覆工の巻き厚をコンクリートの打設前に検査することができる。また、上記ハーフミラー53を用いることによって、型枠側と地山側とに分割されたレーザ光57,58の光量は減少するが、一つのレーザ光発生器55によって2条のレーザ光を射出することができ、製造コストを削減することが可能となる。
【0064】
なお、本願発明の巻き厚検査装置は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の構成を備える様々な実施の形態を含むものである。
また、以上に説明した実施の形態は、岩盤内に掘削される山岳トンネルにおいて覆工巻き厚を検査するものであるが、本発明に係る覆工巻き厚検査装置及び覆工巻き厚検査方法は、シールドトンネルにおいて鋼又はコンクリートのセグメントが組み立てられた内周面に二次覆工としてコンクリートを打設するときに適用し、二次覆工の巻き厚を検査することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1,31,51:覆工巻き厚検査装置、 2,52:レーザ光射出器、 3:型枠側のミラー、 4:地山側のミラー、 5,35:型枠側のレーザ光発生器、 6,36:地山側のレーザ光発生器、 7,37,57:第1のレーザ光、 8,38,58:第2のレーザ光、 9,39,59:デジタルカメラ、
10,40,60:支持基部、 11,41:支持基部の前方支持部材、 11a,41a:前方支持部材の本体部、 11b,41b:前方支持部材の伸縮部、 12,42:支持基部の後方支持部材、 13,43:支持基部の連結部材、 14:支持基部の据え付け部材、 14a:据え付け部材固定用のボルト、 15:伸縮部を駆動するためのハンドル、 16:ボルト、
20:覆工用移動型枠、 20a:覆工用移動型枠の前方側の端面、 20b:覆工用移動型枠の型枠面材、 20c:覆工用移動型枠の支持フレーム、 20d:覆工用移動型枠に設けられた目地型枠、 21:レール、
25:覆工コンクリート、 25a:既に打設された覆工コンクリートの端面、
26:トンネル、 26a:覆工施工前のトンネルの内周面、 、
53:ハーフミラー、 54:ミラー、 55:レーザ光発生器、
61:支持基部の第1の支持部材、 62:支持基部の第2の支持部材、 63:支持基部の据え付け部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの覆工コンクリートを打設する前の地山内空間の内周面と、覆工コンクリートを打設するために前記内周面と対向するように設けられる覆工用移動型枠との離隔距離が、予め定められた覆工巻き厚以上となっているか否かを、覆工コンクリートの打設前に検査する覆工巻き厚検査装置であって、
少なくとも2条のレーザ光を平行に射出するレーザ光射出器と、
該レーザ光射出器を支持する支持基部と、を備え、
前記支持基部は、前記覆工用移動型枠の覆工コンクリートを順次に打設してゆく方向における前方側の端部に据え付けられ、
前記レーザ光射出器は、前記レーザ光の少なくとも1条を前記覆工用移動型枠の型枠面に沿って該トンネルの軸線方向に射出し、前記レーザ光の他の少なくとも1条を、前記型枠面に沿って射出された前記レーザ光と平行に、前記覆工コンクリートの厚さ方向に予め定められた間隔をあけて射出するものであることを特徴とする覆工巻き厚検査装置。
【請求項2】
前記支持基部は、前記覆工用移動型枠の周方向に移動して複数の位置で、前記型枠面を規準として据え付けられるものであることを特徴とする請求項1に記載の覆工巻き厚検査装置。
【請求項3】
前記2条のレーザ光の射出される間隔は、互いに平行に射出される状態で変更可能となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の覆工巻き厚検査装置。
【請求項4】
前記レーザ光が既に打設された覆工コンクリートの前方側の端面上に照射された位置を記録する撮像器を備えることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の覆工巻き厚検査装置。
【請求項5】
前記レーザ光射出器は、レーザ光発生器と、該レーザ光発生器から射出されたレーザ光の一部を透過するとともに一部を反射するハーフミラーと、前記ハーフミラーを透過したレーザ光を反射するミラーとを有し、
前記ハーフミラーで反射したレーザ光と、前記ハーフミラーを透過し前記ミラーで反射したレーザ光とが平行に射出されるものであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の覆工巻き厚検査装置。
【請求項6】
レーザ光射出器から平行に射出される少なくとも2条のレーザ光の射出間隔を、トンネルの覆工コンクリートの予め定められた巻き厚の設定値に基づいて調整し、
前記レーザ光射出器を、掘削した地山内空間の内周面と対向して設置される覆工用移動型枠の覆工コンクリートを順次に打設してゆく方向の前方側の端部に据え付け、
前記2条のレーザ光の一方を、前記覆工用移動型枠の型枠面に沿って前記トンネルの軸線方向に射出し、他方のレーザ光を、前記型枠面に沿って射出される前記レーザ光と前記覆工コンクリートの厚さ方向に間隔をあけて射出し、
前記2条のレーザ光が照射される位置により、打設する前記覆工コンクリートが予め定められた巻き厚の設定値を満たすか否かを検査することを特徴とする覆工巻き厚検査方法。
【請求項7】
前記覆工コンクリートの厚さ方向に間隔をあけて射出される前記2条のレーザ光と前記覆工用移動型枠の周面の接線方向に並列して、1条又は2条以上のレーザ光を射出することを特徴とする請求項6に記載の覆工巻き厚検査方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−7397(P2012−7397A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144841(P2010−144841)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】