説明

覆式傾斜屋根緑化装置

【課題】屋根板の厚さが薄い平坦な屋根を形成したプレハブ等の建築物では、直射日光を受けて室内温度が上がり住環境として好ましくない情況となるため改善が望まれている。
【解決手段】小規模なプレハブ等の構築物の平坦な屋根上に新たな傾斜屋根を構築し、新たな傾斜屋根の円柱状の棟木に蝶番が形成された複数個の鋼管を並べ通し、当該蝶番を棟木の左右で交互に配列し、左右の蝶番に桟木を固定し、この桟木に屋根外周部分を形成する枠を取付け、当該枠内には植栽装置が設置可能な小枠を複数組連結固定し、2枚の屋根枠組を構築し、棟木を支点として開閉自在で自由な屋根勾配を形成することが可能であり、かつ軒下部分の折り曲げを可能とし、トラックに積載輸送が容易であることを特徴とする覆式傾斜屋根緑化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移設可能な比較的小規模なプレハブハウスの平坦な屋根に開閉自在で自由な屋根勾配を形成可能で、緑化装置を設置できる覆式傾斜屋根装置に関する技術。
【背景技術】
【0002】
屋根構造が合板と鉄板で構成されたパネルとH鋼で形成されたプレハブ造りの比較的小規模な建築物においては、平坦な屋根の屋根板はその厚さが薄く天井板との隔たりも小さいため直射日光の下では断熱することができず、室内は温度が上がり好ましくない住環境であった。また、近年は景観と住環境保全形成を重視して屋根緑化を設置することが望まれている。
【0003】
そこで、このような既存建築物の屋根を緑化する緑化技術として例えば、特許文献1には、支柱等で構成される建築物に、面強度を有する外装材を敷設して屋根面を形成し、該屋根面上に植栽層を構築した屋根緑化構造が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−36320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載の屋根緑化構造では、面強度を有する複雑な外装材を敷設しての屋根を形成するため、時間と人件費が嵩む上、屋根面を形成している屋根葺きの形によって外装材の部材が異なる等の欠点がある。
【0006】
本発明は、上記のような事情を鑑みて屋根葺きの形にこだわることなくまた、支柱がないスチール板材や樹脂製パネル等で平坦な屋根を構成している簡易トイレや車庫、物置小屋や合板と鉄板で構成されたパネルと支柱で形成されたプレハブ造りの比較的小規模な建築物等の屋根に対する直射日光を遮断し、緑化装置が形成できる環境保全形成型屋根を提供する課題。
【課題を解決するための手段】
【0007】
既存の平坦な屋根造りの側壁頂部全周に木質系等の角材による軒枠を固定し、軒枠上の長手方向に二本の軒桁とその間に数本の敷梁を配し、それぞれを軒枠にL型金具にて固定して傾斜屋根土台を形成し、該傾斜屋根土台に三角基礎枠を適数配置固定して傾斜屋根骨組を形成し、コンパネ等の板材にて屋根を葺き、防水シートで覆って平坦な屋根部に傾斜屋根を構築する。
【0008】
円柱状の棟木に蝶番が左右交互に配列するように形成された鋼管を複数個並べ通し、当該蝶番の上に桟木を固定して、この桟木に屋根外周部分を形成する枠を取付け、当該枠内に植栽装置が設置可能な複数組の小枠を形成し、棟木を中心に開閉自在で自由な屋根勾配を設定できる屋根枠組を形成することを特徴とする覆式傾斜屋根装置を構築する。この覆式傾斜屋根装置を平坦な屋根上に新設した傾斜屋根に設置固定する緑化装置の提供。
【発明の効果】
【0009】
簡易な建築物や平坦な屋根を形成した小規模なプレハブハウスの屋根に傾斜屋根枠組を形成し、覆式傾斜屋根装置を設置固定して屋根緑化をすることにより室内温度や景観が改善され光熱費の削減が図れる環境にやさしいプレハブハウス屋根緑化である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1〜図2はプレハブハウスの屋根部に土台を形成する説明図であり、図3は傾斜屋根を形成する骨組の説明図であり、図4は傾斜屋根を形成した斜視図であり、図5〜図6は覆式傾斜屋根枠組装置を形成する説明図であり、図7は傾斜屋根に覆式傾斜屋根枠組装置を設置固定した斜視図であり、図8は覆式傾斜屋根装置の折曲がり部分の説明図であり、図9は本発明の設置完了図である。
【0011】
最初に、本発明によるプレハブハウスの屋根部へ傾斜屋根を形成する土台構造について説明する。図1のイ)は、平坦な屋根造のプレハブハウスに釘等を打設することなく側壁頂部全周に傷を付けずに長手材2及び妻側材3による軒枠1を固定した状態を示すものである。
【0012】
図1のロ)は、軒枠を固定する方法の一例を示すもので、側壁頂部全周に設置する長手材2の左右端に市販されている羽子板ボルト4を固定し、妻側材3の左右に羽子板ボルト4のボルトが通る穴を形成し、これをプレハブハウスの側壁頂部全周に組立て羽子板ボルト4にナット5を取付けて締付け押圧と摩擦力により側壁頂部に軒枠1を固定する。または長手材の一方の端よりボルト穴を、もう一方の端にナット溝穴を形成し、妻側材にも同じくボルト穴とナット溝穴を形成する。長手材のボルト穴を設けた端と妻側材のナット溝穴を設けた端を接合し、ボルトとナットにより固定する。この方法により軒枠を側壁頂部に固定してもよい。
【0013】
図2は、プレハブハウスの屋根部縁周りと、図1のイ)で形成された軒枠1をL型アングル6を被せて一体化させ屋根部縁周りの強度を高めた上で、L型アングル6の長手方向両端上部に二本の軒桁7を配し、また二本の軒桁の間に数本の敷梁7aを配し、L型金具8にて軒枠1を抱え込むように軒桁7と敷梁7aにボルトで固定して傾斜屋根土台を形成する。
【0014】
図3は、傾斜屋根を形成する骨組について説明図する。図3のイ)は、アングル等の鋼材や角材で屋根幅に合わせ二等辺三角形に組立、頂点部分には棟木が収まる凹型金具10が固定されており、この凹型金具10から三角形の底辺部材11に垂直に支柱12を形成し三角形状骨組とする。当該三角形状骨組の傾斜する二本の傾斜材13に桟木を固定するL型金具や受金具14を形成して三角基礎枠9とする。なお、この他に直角三角形等の三角基礎枠を構成して傾斜屋根骨組としても良く二等辺三角形にこだわらないものとする。
【0015】
図3のロ)は、固定された軒桁7と敷梁7a上に三角基礎枠9を等間隔で配置し、左右端の破風に当たる三角基礎枠9の枠内が板材等にて塞がれた三角基礎枠9を配置して敷梁7と三角基礎枠9が接する箇所をL型金具8とボルトにて軒桁7と敷梁7aに固定し、頂点部分の凹型金具10に角材やアングル等で形成した棟木15を配置するとともに、傾斜材13に桟木16を固定して傾斜屋根骨組とする。なお、棟木15と桟木16の長さは、後で形成する傾斜屋根枠組による日陰を形成するために建物長より数十センチ〜数メイトル延伸する。
【0016】
図4は、図1〜図3の手順で形成した傾斜屋根骨組に傾斜屋根を構築した状態を示すもので、基礎を形成している軒枠のL型アングル材を化粧板等の板材17で覆い、その上に形成されている傾斜屋根骨組の三角状骨組を覆う形でコンパネ等の板材17を桟木16に釘やボルト等で固定し、その上を防水シート18で覆いタッカー等の止具で固定して傾斜屋根19を形成する。
【0017】
図5〜図6は覆式傾斜屋根装置を形成する傾斜屋根枠組についての説明図である。図5は、開閉角度自在な傾斜屋根枠組を形成する棟木の構造を示すもので、イ)、ロ)のいずれも円柱状の棟木に鋼管を通し、この鋼管が回ることにより傾斜屋根枠組角度が自在に形成される。イ)は、円柱状の棟木15に蝶番20が左右交互に形成された鋼管を複数個並べ通して形成した棟木15で、蝶番20に傾斜屋根枠組を固定することにより開閉角度が自在に形成される。ロ)は、円柱状の棟木15にイ)と同様な鋼管を複数個並べ通し、奇数番目鋼管の右側蝶番に桟木16を、偶数番目鋼管の左側蝶番に桟木16を溶接して形成した棟木15で、桟木16に傾斜屋根枠組を固定することにより開閉角度が自在に形成される。その他、直接枠組に形成された鉤型金具を蝶番付き鋼管を配備していない円柱状棟木に直接掛止る方法でもよく、また棟木は任意長のものを差込式に継ぎ足す方法でもよい

【0018】
図6は、傾斜屋根枠組を形成する棟木15の桟木16に腐食しにくいプラスチック材やアルミ等の鋼材で形成されたL型アングル材で外周枠22を形成し、この外周枠内を該L型アングル材で50cm〜1mの複数個の格子状枠組23に区切り、ボルトで固定して傾斜屋根枠組24を形成し、傾斜屋根枠組24一部の軒部分25として折り曲げ可能とするため、蝶番20で傾斜屋根枠組24と接合している。
【0019】
図7は、プレハブハウスの傾斜屋根に図1〜図4の手順で覆式傾斜屋根枠組装置を設置固定した状態を示すもので、イ)は傾斜屋根19に覆式傾斜屋根装置の傾斜屋根枠組24を覆い被せ、軒部分25の接合部分と傾斜屋根19に形成されている棟木15と桟木16の両端に傾斜屋根枠組24を止金具26にて固定し、傾斜屋根に傾斜屋根枠組を固定した状態を示したものである。ロ)は、傾斜屋根枠組24の格子状枠組23の枠内には、下から亜鉛メッキが施された溶接金網27・防水シート18・防根シート28の順に敷詰めその上に植栽マット体29が敷設形成される。
【0020】
図8は、傾斜屋根に固定した傾斜屋根枠組の軒部分の折り曲げ状態を示すもので、イ)は、傾斜屋根に傾斜屋根枠組24を固定したプレハブハウスをトラックに積み込んで移動する場合に荷台からはみ出さないように軒部分25が蝶番20により折り曲げ自由に形成されている。ロ)は、傾斜屋根枠組の折り曲げた軒部分25を復原し、軒先を形成するように固定する直角三角形状固定具30で傾斜屋根角度に合わせ木材やプラスチック材で形成し、軒桁に等間隔に蝶番21で固定する。
ハ)は、軒桁に固定された直角三角形状固定具30を直角に開き傾斜屋根枠組24の軒部分25を復原し、軒先を形成した状態を示すものである。
【0021】
この他に傾斜屋根枠組と折り曲げ可能な軒部分の境目に内外二重構造の鋼管を固定し、外側の鋼管には内鋼管の回転とスライド範囲を決める切込みが形成され、内鋼管には外鋼管に形成された切込み範囲端でスライドと回転を止め固定する突起棒が形成されており、内鋼管をスライドすることにより軒先部分を折り曲げたり復原したりできる。また、折り曲げた軒部分を復原した時に軒桁と軒部分に支棒を用いて固定する方法でもよく、いずれかの固定方法で折り曲げた軒部分を復原し軒先を形成する。
【0022】
図9は、傾斜屋根枠組の小枠内に芝生等の草本類を生育させた植栽マット体を敷設し、傾斜屋根に植栽緑化を形成した完成図である。
【0023】
なお、植栽される植物は植栽マット体に直接植え込むか、種子から生育させる方法のいずれかの方法で植栽し、芝生等の草本類から低木まで植栽可能である。また、設置される植栽マット体の高さは2cm〜5cmとし、腐食しにくい材質で形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、プレハブハウス内の断熱効果を向上させることにより、冷暖房費を削減するとともに地域景観の向上等住環境の保全形成を図る装置及び緑化方法であり、既存の建設現場事務所や子供部屋等として利用しているプレハブハウスに、また新規に製作されるこれらのプレハブハウスの装置としてこれから適用される装置及び緑化方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】プレハブハウスの屋根部に傾斜屋根土台を形成する手順を説明する第1の図。
【図2】プレハブハウスの屋根部に傾斜屋根土台を形成する手順を説明する第2の図。
【図3】傾斜屋根を形成する骨組の手順を説明する斜視図。
【図4】傾斜屋根を形成した斜視図。
【図5】覆式傾斜屋根装置を形成する手順を説明する第1の図。
【図6】覆式傾斜屋根装置を形成する手順を説明する第2の図。
【図7】傾斜屋根に覆式傾斜屋根装置を設置固定した斜視図。
【図8】覆式傾斜屋根装置の軒先部分を説明する図。
【図9】本発明の設置完了図。
【符号の説明】
【0026】
1.軒枠 2.長手材 3.妻側材 4.羽子板ボルト 5.ナット 6.L型アングル 7.敷梁 7a.敷梁 8.L型金具 9.三角基礎枠 10.凹型金具 11.底辺部材 12.支柱 13.傾斜材 14.受金具 15.棟木 16.桟木 17.板材 18.防水シート 19.傾斜屋根 20.蝶番 21.掛止金具 22.外周枠
23.格子状枠 24.傾斜屋根枠組 25.軒部分 26.止金具 27.溶接金網
28.防根シート 29.植栽マット体 30.直角三角形状固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の棟木に蝶番が形成された鋼管を複数個並べ通し、当該蝶番を棟木の左右側で交互に配列し、蝶番上に桟木を固定し、この桟木に屋根外周部分を形成する枠を取付け、当該枠内に植栽装置が設置可能な小枠を複数組連結固定し、棟木を中心に開閉自在で自由な屋根勾配を形成できる傾斜屋根枠組を構築すること、かつ軒下部分の折り曲げを可能とし、トラックに積載輸送が容易であることを特徴とする覆式傾斜屋根緑化装置。
【請求項2】
掛止め金具を形成しない棟木に、掛止め金具を形成した枠を掛止めし、当該枠内に植栽装置が設置可能な小枠を複数組連結固定し、棟木を中心に開閉自在で自由な屋根勾配を形成できる傾斜屋根枠組を構築すること、かつ軒下部分の折り曲げを可能とし、トラックに積載輸送が容易であることを特徴とする覆式傾斜屋根緑化装置。
【請求項3】
プレハブハウスの屋根部に、請求項1〜2に記載の覆式傾斜屋根緑化装置を搭載したことを特徴とする独立移動型建物。
【請求項4】
トラックに積載可能な移設プレハブハウスの側壁頂部全周に軒桁枠の土台を形成し、新たに傾斜屋根を構築して請求項1及び2に記載の覆式傾斜屋根緑化装置を設置する緑化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−185003(P2011−185003A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54190(P2010−54190)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【特許番号】特許第4576482号(P4576482)
【特許公報発行日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(391002199)株式会社丹勝 (29)