覚醒度低下判定装置
【課題】 車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる覚醒度低下判定装置を提供する。
【解決手段】 覚醒度低下ECU1は、操舵変化パワー算出部11で算出された操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えたときに、ドライバの覚醒度が低下していると判定する。ここで、判定しきい値決定部12では、カーブR算出部12で算出されたカーブRに基づいて覚醒度低下判定しきい値を決定する。覚醒度低下判定部14は、判定しきい値決定部13で決定された覚醒度低下判定しきい値と操舵変化パワーとを比較することにより、ドライバの覚醒度低下判定を行う。
【解決手段】 覚醒度低下ECU1は、操舵変化パワー算出部11で算出された操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えたときに、ドライバの覚醒度が低下していると判定する。ここで、判定しきい値決定部12では、カーブR算出部12で算出されたカーブRに基づいて覚醒度低下判定しきい値を決定する。覚醒度低下判定部14は、判定しきい値決定部13で決定された覚醒度低下判定しきい値と操舵変化パワーとを比較することにより、ドライバの覚醒度低下判定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒度低下判定装置に係り、特に、車両を運転するドライバにおける覚醒度の低下を判定する覚醒度低下判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転するドライバが、眠気等によって覚醒度の低下に見舞われた場合、車両の運転に支障をきたすことがある。そこで、ドライバの覚醒度が低下した場合に、覚醒度の低下を判定する覚醒度低下判定装置として、従来、車両の操舵角を検出して、検出した操舵角に基づいて居眠り運転を検出する居眠り運転検出装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この居眠り運転検出装置では、操舵角を検出して得られる操舵角信号に遅延処理を施して遅延信号を生成し、操舵角信号と遅延信号との差分から差分出力を得る。この差分出力における符号の変化からゼロ点を検出し、検出したゼロ点から修正操舵周期を求め、修正操舵周期に基づいてドライバの眠気を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2970384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された居眠り運転検出装置では、操舵角信号と遅延信号とから差分出力を得て修正操舵周期を求めるのみである。このため、車両の走行路の形状等については考慮されていないことから、走行路の形態等によっては、眠気(覚醒度の低下)検出の精度が低くなる可能性があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる覚醒度低下判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決した本発明に係る覚醒度低下判定装置は車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、操舵変化指標が所定のしきい値を超えたときに、ドライバの覚醒度が低下状態であると判定する覚醒度低下判定手段と、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に基づいて、覚醒度低下判定手段で用いられる覚醒度低下判定しきい値を設定する覚醒度低下判定しきい値設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る覚醒度低下判定装置は、ドライバの覚醒度を判定する際、カーブ状態検出手段で検出された車両が走行する走行路のカーブ状態に基づいて、覚醒度判定手段で用いられるしきい値を設定するしきい値を設定している。車両の走行路のカーブ状態が変化すると、カーブ状態の大きさが操舵変化指標に対して影響を与える。このため、操舵変化指標が覚醒度低下判定しきい値を超えたときにドライバの覚醒度が低下する際に用いられる覚醒度低下判定しきい値をカーブ状態に基づいて設定することにより、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0009】
なお、本発明における「カーブ状態」は、たとえばカーブ半径(カーブR)、カーブの曲率などで表すことができる。
【0010】
ここで、覚醒度低下判定しきい値設定手段は、カーブ状態として、カーブが急な状態であるほど、覚醒度低下判定しきい値を大きくする態様とすることができる。
【0011】
カーブ状態として、カーブが急な状態であるほど、操舵変化指標に与える影響が大きくなる。このため、カーブが急な状態であるほど、覚醒度低下判定しきい値を大きくすることにより、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0012】
さらに、操舵変化指標検出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、操舵変化指標となる修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、操舵周期算出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づく操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、操舵角信号と遅延手段によって操舵角信号を遅延させて得られる遅延信号との差分を演算する差分演算手段と、差分演算手段における演算結果に基づく差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備える態様とすることができる。
【0013】
このように、操舵変化指標として、操舵角信号と操舵角信号を遅延させた操舵角遅延信号との差分を用いることにより、ドライバの操舵変化を好適に判断することができる。
【0014】
また、操舵変化指標検出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、操舵周期算出手段は、操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、検出された操舵角信号と遅延手段からの遅延信号の差分を演算する差分手段と、差分手段からの差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備えており、修正操舵周期の一周期中における差分出力の積分値からなり、操舵変化指標となる操舵変化パワーを算出する操舵変化パワー算出手段と、を備える態様とすることができる。
【0015】
このように、操舵変化指標として、修正操舵周期の一周期中における差分出力の積分値からなる操舵変化パワーを用いることにより、ドライバの操舵変化をさらに好適に判断することができる。なお、操舵変化指標としては、本発明における操舵変化パワーのほか、操舵変化パワーを求める際の修正操舵周期の一周期分の時間や修正操舵周期における操舵角振幅の最大値などを用いることもできる。
【0016】
また、車両の車速を検出する車速検出手段をさらに備え、カーブ状態検出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角の経時変化および車速検出手段で検出された車速に基づいて、車両の走行路におけるカーブ状態を検出する態様とすることができる。
【0017】
このように、カーブ状態を車両の操舵角と車速とによって求めることにより、別途カーブ状態を検出する検出手段を不要とすることができる。したがって、その分装置構成を簡素化することができる。
【0018】
また、車両の走行路における実際のカーブ状態を基準カーブ状態として予め記憶する基準カーブ状態記憶手段と、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態と基準カーブ状態とを比較するカーブ状態比較手段と、を備え、カーブ状態比較手段による比較結果に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する態様とすることができる。
【0019】
このように、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態と基準カーブ状態との比較結果に基づいてドライバの覚醒度を判定することにより、覚醒度の低下による操舵遅れが操舵変化指標の変化の滑らかさの変化に現れることとなる。このため、さらに精度よく車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0020】
また、上記課題を解決した本発明に係る覚醒度低下判定装置は、車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に応じて設定されるしきい値と、しきい値と操舵変化指標検出手段で検出された操舵変化指標との比較に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する覚醒度低下判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る覚醒度低下判定装置によれば、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。
【図2】覚醒度低下判定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】操舵変化パワー算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、操舵角信号と遅延信号との経時変化を示すグラフ、(b)は、差分信号の経時変化を示すグラフ、(c)は、差分信号の絶対値の経時変化を示すグラフである。
【図5】しきい値決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、長周期の操舵角信号の経時変化を示すグラフ、(b)は、操舵角ベクトルを求めるための説明図である。
【図7】操舵変化パワーに修正操舵周期を乗じた総合操舵変化パワーの経時変化を示すグラフである。
【図8】第2の実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。
【図9】実カーブRと基準カーブRの経時変化を示すグラフである。
【図10】(a)は、実カーブR単位時間ベクトルと基準カーブR単位時間ベクトルを求める説明を行うグラフ、(b)は、実カーブR単位時間ベクトルと基準カーブR単位時間ベクトルの起点が0となるように実カーブR単位時間ベクトルと基準カーブR単位時間ベクトルをシフトさせたグラフ、(c)は、実カーブRベクトル偏移曲線および基準カーブRベクトル偏移曲線を示すグラフである。
【図11】操舵変化パワー統計曲線および基準操舵変化パワー統計曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置は、覚醒度低下判定ECU1を備えている。覚醒度低下判定ECU1には、操舵角センサ2および車速センサ3が接続されている。さらに、覚醒度低下判定ECU1には、警報装置4が接続されている。また、覚醒度低下判定ECU1は、操舵変化パワー算出部11、カーブR算出部12、覚醒度低下判定しきい値決定部13、および覚醒度低下判定部14を備えている。さらに、操舵変化パワー算出部11には、遅延回路11A、差分回路11B、ゼロ点検出回路11C、および操舵変化パワー算出回路11Dが設けられている。
【0025】
操舵角センサ2は、運転者によって入力されるステアリングホイールの操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ2では、検出した操舵角を操舵角信号として覚醒度低下判定ECU1における操舵変化パワー算出部11に設けられた遅延回路11Aおよび差分回路11Bに送信する。
【0026】
車速センサ3は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ3は、検出した車速を車速信号として覚醒度低下判定ECU1におけるカーブR算出部12に送信する。
【0027】
警報装置4は、たとえば車両に設けられ、運転者に対して音声を発するスピーカからなっている。警報装置4は、覚醒度低下判定ECU1から出力される覚醒度低下情報に応じた音声を出力し、運転者に対して注意を促す。
【0028】
覚醒度低下判定ECU1における操舵変化パワー算出部11は、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づいて、修正操舵周期を算出する。修正操舵周期を算出するにあたり、遅延回路11Aにおいて、操舵角センサ2から送信された操舵角信号に対して遅延処理を施して遅延信号を生成する。遅延回路11Aは、生成した遅延信号を差分回路11Bに出力する。
【0029】
差分回路11Bでは、操舵角センサ2から送信される操舵角信号と、遅延回路から出力された遅延信号に対して差分処理を行い、差分信号を生成する。差分回路11Bは、生成した差分信号をゼロ点検出回路11Cおよび操舵変化パワー算出回路11Dに出力する。
【0030】
ゼロ点検出回路11Cは、差分回路11Bから出力された差分信号に基づいて、操舵角変化のゼロ点を検出する。ゼロ点検出回路11Cは、検出したゼロ点に基づくゼロ点信号を操舵変化パワー算出回路11Dに出力する。
【0031】
操舵変化パワー算出回路11Dでは、差分回路11Bから出力される差分信号およびゼロ点検出回路11Cから出力されるゼロ点信号に基づいて、操舵変化指標となる操舵変化パワーを算出する。この操舵変化パワーは、修正操舵周期の一周期中における差分信号の積分値からなる。操舵変化パワー算出回路11Dは、算出した操舵変化パワーに基づく操舵変化パワー信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0032】
カーブR算出部12は、操舵角センサ2から送信される操舵角信号および車速センサ3から送信される車速信号に基づいて、車両の走行路のカーブRを算出する。車両の走行路のカーブRを算出する際には、操舵角センサ2から送信される操舵角信号における長時間間隔操舵角を用いる。カーブR算出部12は、算出したカーブRに基づくカーブR信号を覚醒度低下判定しきい値決定部13に出力する。
【0033】
覚醒度低下判定しきい値決定部13は、カーブR算出部12から出力されたカーブR信号に基づいて、覚醒度低下判定を行う際の覚醒度低下判定しきい値を決定する。覚醒度低下判定しきい値決定部13は、カーブRと覚醒度低下判定しきい値との対応関係を示す覚醒度低下判定しきい値マップを記憶している。覚醒度低下判定しきい値マップでは、カーブRが小さい(カーブが急である)ほど、覚醒度低下判定しきい値が大きくなるように覚醒度低下判定しきい値が設定されている。覚醒度低下判定しきい値決定部13は、決定した覚醒度低下判定しきい値に基づく覚醒度低下判定しきい値信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0034】
覚醒度低下判定部14は、操舵変化パワー算出部11における操舵変化パワー算出回路11Dから出力される操舵変化パワー信号に基づく操舵変化パワーと、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下判定しきい値とを比較する。覚醒度低下判定部14では、操舵変化パワーと覚醒度低下判定しきい値との比較の結果、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えている場合には、警報信号を警報装置4に送信する。
【0035】
次に、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置の動作について説明する。図2は、覚醒度低下判定装置の処理手順を示すフローチャートである。図2に示すように、覚醒度低下判定装置において、覚醒度低下判定ECU1は、まず、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づく車両の操舵角を取得し(S1)、次に、車速センサ3から送信される車速信号に基づく車両の車速を取得する(S2)。
【0036】
続いて、操舵変化パワー算出部11において、取得した車両の操舵角に基づいて、操舵変化パワーを算出する操舵パワー変化算出処理を行う(S3)。操舵変化パワー算出処理は、図3に示すフローにしたがって行われる。図3に示すように、操舵変化パワー算出処理では、最初に、遅延回路11Aにおいて、操舵角センサ2から送信された操舵角信号に対して遅延処理を行い(S11)、操舵角遅延信号を生成する。遅延処理を行う際の遅延時間は、本実施形態では0.2Sに設定する。
【0037】
続いて、差分回路11Bにおいて、操舵角差分演算処理を行う(S12)。操舵角差分演算処理では、操舵角センサ2から送信された操舵角信号から遅延処理によって生成された操舵角遅延信号を経時変化に合わせて減算し、操舵角差分信号を生成する。いま、操舵角信号と操舵角遅延信号との経時変化を図4(a)に示す。図4(a)に示すように、操舵角信号SSと操舵角遅延信号DSとは同一の波形を有しており、操舵角遅延信号は、操舵角信号をシフトされた位置状態となっている。この操舵角信号SSと操舵角遅延信号DSとに対して差分処理を行うことにより、図4(b)に示す波形の操舵角差分信号HSが生成される。
【0038】
操舵角差分演算処理が済んだら、ゼロ点検出回路11Cにおいて、絶対値処理を行う(S13)。絶対値処理では、操舵角差分信号HSにおける操舵角差振幅がマイナス領域となる範囲について、負号を正号に変換する処理を行う。図4(b)に示す波形の操舵角差分信号HSに絶対値処理を行うことにより、図4(c)に示す操舵角絶対値信号ASが生成される。
【0039】
ゼロ点検出回路11Cは、操舵角絶対値信号ASを生成した後、操舵角差分信号HSにおけるゼロ点を検出する(S14)。ゼロ点検出回路11Cは、操舵角絶対値信号ASにおける折り返し点を操舵角差分信号HSにおけるゼロ点として検出する。
【0040】
こうして、ゼロ点を検出したら、操舵変化パワー算出回路11Dにおいて、操舵周期の検出を行う(S15)。操舵周期としては、ゼロ点検出回路11Cにおいて取り出されたゼロ点間の間隔が操舵周期として検出される。操舵変化パワー算出回路11Dでは、操舵周期を検出した後、検出した操舵周期ごとの操舵変化パワーを算出する(S16)。操舵周期パワーは、操舵角絶対値信号ASを時間積分することによって算出される。こうして、操舵変化パワー算出処理を終了する。
【0041】
操舵変化パワー算出処理が済んだら、覚醒度低下判定しきい値決定処理を行う(S4)。覚醒度低下判定しきい値決定処理は、図5に示す手順に沿って行われる。図5に示すように、覚醒度低下判定しきい値決定処理では、最初に、カーブR算出部12において、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づいて、長時間間隔操舵角振幅を記憶する(21)。ここで記憶した長時間間隔操舵角振幅に基づいて、長時間間隔操舵角経時変化を求める。
【0042】
たとえば車両がカーブからなる走行路を走行している際には、長時間間隔操舵角経時変化は、図6(a)に示すような波形を描くこととなる。図6(a)に示す波形では、たとえば操舵角振幅が0以上となってから、再び0となるまでの時間が、10秒程度とされる。したがって、図4(a)に示す操舵角信号の経時変化と比較すると、その周期が非常に長いものとなっている。言い換えると、図4(a)に示す操舵角信号の経時変化は、図6(a)に示す波形の一部分を取り出した微小変化となっている。
【0043】
続いて、カーブR算出部12は、車速センサ3から送信される車速信号に基づいて、長時間間隔車速を記憶する(S22)。ここで記憶した長時間間隔車速に基づいて、長時間間隔車速経時変化を求める。こうして、長時間間隔操舵角経時変化および長時間間隔車速経時変化を求めたら、車両の移動量を算出する(S23)。車両の移動量は、長時間間隔車速を計測した際の計測時間および長時間間隔車速に基づいて算出される。
【0044】
車両の移動量を算出したら、長時間間隔操舵角振幅差を算出する(S24)。長時間間隔操舵角振幅差は、所定の単位時間の前後における操舵角振幅の差として求められる。たとえば、図6(b)に示す長時間間隔操舵角経時変化を描く波形では、第1計測時刻t1における操舵角振幅と、第1時刻t1から所定時間が経過した後の第2計測時刻t2における操舵角振幅との際として操舵角振幅差が求められる。この操舵角振幅差は、各計測時刻t1〜tnにおいて算出され、各計測時刻t1〜tnにおけるすべての操舵角振幅差によって、長時間間隔操舵角振幅差が求められる。
【0045】
長時間間隔操舵角振幅差を求めたら、各計測時刻t1〜tnにおけるそれぞれの操舵角ベクトルを算出する(S25)。操舵角ベクトルは、計測時刻t1〜tnにおけるそれぞれの操舵角振幅をヒストグラム化した際の操舵角振幅の頂点を結ぶベクトルである。たとえば、第1操舵角ベクトルは、第1計測時刻t1における操舵角振幅の頂点と第2計測時刻における操舵角振幅の頂点を結ぶベクトルである。操舵角ベクトルは、各時刻における操舵角振幅差と、所定間隔との関係に基づいて算出される。
【0046】
こうして、各計測時刻における操舵角ベクトルを求めたら、車両の走行路のカーブRを算出する(S25)。車両の走行路のカーブRは、各計測時刻t1〜tnにおける操舵角ベクトルと、車速センサ3から送信される車速信号に基づく車速から算出することができる。具体的には、各計測時刻t1〜tnにおける操舵角ベクトルと車速とを乗じることにより、車両が走行した方向および距離が求められる。この車両が走行した方向および距離を計測時刻t1〜tnについて、繋げることによって走行経路が求められる。この走行経路から車両の走行路のカーブRを求めることができる。
【0047】
カーブRを算出したら、覚醒度低下判定しきい値決定部13において、カーブRに応じた覚醒度低下判定しきい値を決定する(S27)。覚醒度低下判定しきい値決定部13は、算出したカーブRを覚醒度低下判定しきい値マップに参照し、覚醒度低下判定しきい値を決定する。こうして、覚醒度低下判定しきい値決定処理を終了する。
【0048】
覚醒度低下判定しきい値決定処理が済んだら、覚醒度低下判定部14において、覚醒度低下判定処理を行う(S5)。覚醒度低下判定処理を行う際には、操舵変化パワー算出部11から出力される操舵変化パワーと、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下判定しきい値とを比較する。それから、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えている場合には、ドライバの覚醒度が低下しており、ドライバの眠気が大きくなっていると判断する。その一方、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値以下である場合には、ドライバの覚醒度が低下しておらず、ドライバは正常な状態であると判断する。
【0049】
そして、覚醒度低下判定処理の結果、ドライバの覚醒度が低下しているか否かを判断し(S6)、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えており、ドライバの覚醒度が低下し、ドライバの眠気が大きくなっていると判定した場合には、警報装置4に対して警報信号を送信する警報処理を行う(S7)。そして、覚醒度低下判定装置における処理を終了する。
【0050】
一方、覚醒度低下判定の結果、操舵変化パワーが覚醒度低下判定以下であり、ドライバの覚醒度が低下しておらず、ドライバが正常であると判定した場合には、警報装置4に対して警報信号を送信する警報処理を行うことなく、そのまま、覚醒度低下判定装置における処理を終了する
【0051】
このように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、車両の走行路のカーブRに基づいて覚醒度低下判定を行う際における覚醒度低下判定しきい値を調整して決定している。このため、車両の走行路のカーブRが変化した場合でも、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0052】
ここで、車両の走行路のカーブRが小さく、カーブが急であるほど、ドライバの覚醒度が操舵角変化に与える影響が大きくなる。この点、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、具体的には、車両の走行路のカーブRが小さく、カーブが急である場合には、覚醒度低下判定しきい値を大きくしている。このため、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0053】
さらに、操舵変化パワーを算出する際には、操舵角信号と操舵角遅延信号との差分から得られる差分信号を用いている。このため、ドライバの操舵変化の状態を精度よく判定することができる。しかも、操舵変化パワーは、修正操舵周期の一周期中における操舵角信号と操舵角遅延信号との差分信号における積分値である。このため、ドライバの操舵変化をさらに好適に判断することができる。
【0054】
また、本実施形態では、操舵変化指標として差分信号の積分値である操舵変化パワーを用いているが、図7に示すように、操舵変化パワーと修正操舵周期との積を用いることもできる。この場合、操舵変化パワーと修正操舵周期との積に対して覚醒度低下判定しきい値を設定し、操舵変化パワーと修正操舵周期との積が覚醒度低下判定しきい値を超えた場合に、覚醒度が低下していると判定することとなる。また、この判定を行う際の覚醒度低下判定しきい値については、車両の走行路のカーブRに応じて決定される。あるいは、操舵変化指標として、操舵変化パワーと修正操舵周期との積に代えて、操舵変化パワーと修正操舵周期とに所定の演算を加えた結果を用いることもできる。たとえば、操舵変化パワーと修正操舵周期との積は、図7に示すように矩形で表されるが、この形状が楕円形状となるようにすることなどもできる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。図8に示すように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置は、上記第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置と比較して、覚醒度低下判定ECU10が、基準カーブR記憶部21とカーブR比較部22とを備える点において相違している。
【0056】
本実施形態に係る覚醒度低下判定ECU10における基準カーブR記憶部21は、車両の走行路の実際のカーブRを基準カーブRとして記憶している。また、カーブR算出部12は、上記第1の実施形態と同様、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づく操舵角および車速センサ3から送信される車速信号に基づく車速を用いて、車両の走行路のカーブRを算出する。カーブR算出部12は、算出したカーブRに基づくカーブR信号を、覚醒度低下判定しきい値決定部13とともにカーブR比較部22にも出力する。
【0057】
カーブR比較部22は、カーブR算出部12から出力されたカーブR信号に基づく車両が実際に走行したカーブの軌跡におけるカーブRを表す実カーブRが出力された際、出力されたカーブR信号に基づく実カーブRに相当する位置の走行路の基準カーブRを基準カーブR記憶部21から読み出す。カーブR比較部22は、カーブR算出部12から出力された出力されたカーブR信号に基づく実カーブRと、基準カーブR記憶部21から読み出した基準カーブRとを比較し、比較結果に応じたカーブR比較信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0058】
覚醒度低下判定部14では、操舵変化パワー算出部11における操舵変化パワー算出回路11Dから出力される操舵変化パワー信号に基づく操舵変化パワーと、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下判定しきい値との比較結果に、カーブR比較部22から出力されたカーブR信号に基づいて、覚醒度低下判定を行う。
【0059】
次に、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置における処理手順について説明する。本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、上記第1の実施形態に係る覚醒度低下判定処理における処理手順と比較して、覚醒度低下判定しきい値決定処理(S4)と覚醒度低下判定(S5)との間にカーブR比較処理が入る点、および覚醒度低下判定処理が異なる。以下、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置における処理手順について、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0060】
まず、カーブR比較処理について説明する。カーブR比較処理では、カーブR比較部22において、カーブR算出部12からカーブR信号が出力された際に、基準カーブR記憶部21から基準カーブRを読み出す。次に、カーブR算出部12から出力されたカーブR信号に基づく実カーブRと、基準カーブR記憶部21から読み出した基準カーブRとを比較する。
【0061】
実カーブRと基準カーブRとの比較では、最初に実カーブRと比較カーブRとにおける操舵角振幅の経時変化の立ち上がりの滑らかさを比較する。ここで、実カーブRと基準カーブRとの比較結果の例を図9に示す。図9では、実カーブRにおける操舵角振幅の経時変化を実カーブR曲線RCとして示し、基準カーブRにおける操舵角振幅の経時変化を基準カーブR曲線BCとして示している。ここでは、実カーブR曲線RCとして、ドライバの覚醒度が低い場合の実カーブR曲線RCを示している。
【0062】
実カーブRと基準カーブRとの操舵角振幅の経時変化を比較するにあたり、ドライバの覚醒度が低いと、操舵遅れ図9に示すように、実カーブR曲線RCの立ち上がりは、基準カーブR曲線BCの立ち上がりよりも遅く急なものとなり、基準カーブR曲線BCの立ち上がりが実カーブR曲線RCの立ち上がりより早くも滑らかとなる。また、その後は、一端基準カーブR曲線BCの方が実カーブR曲線RCよりも操舵角振幅が小さくなり、カーブRの頂点を超えてからしばらくはそのままの状態となる。その後、再び基準カーブR曲線BCの方が実カーブR曲線RCよりも操舵角振幅が大きくなる。
【0063】
このような傾向を加味して、カーブR比較部22では、実カーブRと基準カーブRとの操舵角振幅の経時変化を比較し、実カーブR曲線RCの立ち上がりが、基準カーブR曲線BCの立ち上がりよりも遅く急な場合には、ドライバの覚醒度が低下していると判断した覚醒度低下信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0064】
覚醒度低下判定部14では、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下しきい値信号に基づく覚醒度低下しきい値に基づく覚醒度低下の判断に対して、カーブR比較部22から出力される覚醒度低下信号の有無を加味して覚醒度低下判定を行う。具体的には、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下しきい値信号に基づく覚醒度低下しきい値に基づく覚醒度低下の判断の結果、覚醒度が低下していると判定され、かつ覚醒度低下信号が出力されていることを条件として、ドライバの覚醒度が低下していると判定する。
【0065】
このように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、実カーブRと基準カーブRとの比較結果を用いている。このため、上記第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置に対して、さらに精度よく車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0066】
ここで、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、実カーブRと基準カーブRとの比較結果を用いているが、その他の要素、たとえば修正操舵周期ごとに求めた操舵角ベクトルの偏移や所定時間内における操舵変化パワーと周期間隔分布の偏移などを用いることができる。ここで、修正操舵周期ごとの操舵角ベクトルの偏移について説明すると、図10(a)に示すように、実カーブR曲線RCおよび基準カーブR曲線BCをそれぞれ単位時間ごとに区切り、操舵角ベクトルを求める。
【0067】
次に、図10(b)に示すように、実カーブR曲線RCの単位時間ベクトルである実カーブR単位時間ベクトルRVおよび基準カーブR曲線BCの単位時間ベクトルである基準カーブR単位時間ベクトルBVをグラフ上に表す。実カーブR単位時間ベクトルRVは、単位時間当たりにおける実カーブR曲線RCから得られる操舵ベクトルの起点が0となるように操舵ベクトルをシフトさせることによって得られる。また、基準カーブR単位時間ベクトルBVは、単位時間当たりにおける基準カーブR曲線BCから得られる操舵ベクトルの起点が0となるように操舵ベクトルをシフトさせることによって得られる。
【0068】
それから、図10(c)に示すように、実カーブR単位時間ベクトルRVおよび基準カーブR単位時間ベクトルBVをそれぞれ時間微分して、実カーブRベクトル偏移曲線RLおよび基準カーブRベクトル偏移曲線BLを求める。ここで求められる実カーブRベクトル偏移曲線RLと基準カーブRベクトル偏移曲線BLとを比較することにより、覚醒度低下信号を出力するか否かを判断する。
【0069】
覚醒度低下信号を出力すると判断する際の基準としては、たとえば、実カーブRベクトル偏移曲線RLと基準カーブRベクトル偏移曲線BLとの最大振幅の差を用いることができる。この場合、実カーブRベクトル偏移曲線RLと基準カーブRベクトル偏移曲線BLとの最大振幅の差が所定のしきい値を超えた場合に、覚醒度低下信号を出力すると判断する。また、その他の基準としては、ベクトル角度の偏移量、上下変動回数などを用いることができる。
【0070】
あるいは、図11に示すように、修正操舵周期の一周期分の操舵変化パワーを統計処理して操舵変化パワー統計曲線RSを求め、正常時における修正操舵周期の一周期分の操舵変化パワーを統計処理して得られる基準操舵変化パワー統計曲線BSと比較して覚醒度低下信号を出力するか否かを決定することもできる。ここで、基準操舵変化パワー統計曲線BSについては、最初の走行時に取得することもできるし、予め設定しておくこともできる。
【0071】
操舵変化パワー統計曲線RSと基準操舵変化パワー統計曲線BSとを比較し、覚醒度低下信号を出力すると判断する際の基準としては、たとえば両曲線における分散が所定のしきい値を超えた場合、中心高さの位置が所定のしきい値を超えた場合、などとすることができる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記第1の実施形態においては、操舵変化指標として操舵変化パワーを用いているが操舵変化パワーに代えて、修正操舵周期の一周期分の時間や振動数を用いることもできる。
【0073】
ここで、覚醒度低下判定しきい値を設定するにあたり、たとえば直線時の覚醒度低下判定しきい値が0.2Hzであった場合に、100Rのカーブ時の覚醒度低下判定しきい値を0.4Hzとすることができる。また、操舵変化指標としては、修正操舵周期における振幅の最大値や平均値などを用いることもできる。
【0074】
さらに、上記実施形態では、カーブ状態としてカーブRを検出しているが、カーブの曲率を用いることもできる。また、カーブRを検出するにあたり、操舵角信号と車速信号を用いているが、他のカーブR検出手段、たとえばナビゲーションデータやヨーレートセンサを用いることもできる。さらには、操舵角信号と車速信号から求められるカーブRとこれらのカーブR検出手段による検出結果とを併用してカーブRを検出する態様とすることもできる。操舵角信号と車速信号から求められるカーブRとこれらのカーブR検出手段による検出結果とを併用してカーブRを検出する態様とすることにより、カーブRの検出精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1,10…覚醒度低下判定ECU、2…操舵角センサ、3…車速センサ、4…警報装置、10…覚醒度低下判定装置、11…操舵変化パワー算出部、11A…遅延回路、11B…差分回路、11C…ゼロ点検出回路、11D…操舵変化パワー算出回路、12…カーブR算出部、13…覚醒度低下判定しきい値決定部、14…覚醒度低下判定部、21…基準カーブR記憶部、22…カーブR比較部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒度低下判定装置に係り、特に、車両を運転するドライバにおける覚醒度の低下を判定する覚醒度低下判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転するドライバが、眠気等によって覚醒度の低下に見舞われた場合、車両の運転に支障をきたすことがある。そこで、ドライバの覚醒度が低下した場合に、覚醒度の低下を判定する覚醒度低下判定装置として、従来、車両の操舵角を検出して、検出した操舵角に基づいて居眠り運転を検出する居眠り運転検出装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この居眠り運転検出装置では、操舵角を検出して得られる操舵角信号に遅延処理を施して遅延信号を生成し、操舵角信号と遅延信号との差分から差分出力を得る。この差分出力における符号の変化からゼロ点を検出し、検出したゼロ点から修正操舵周期を求め、修正操舵周期に基づいてドライバの眠気を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2970384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された居眠り運転検出装置では、操舵角信号と遅延信号とから差分出力を得て修正操舵周期を求めるのみである。このため、車両の走行路の形状等については考慮されていないことから、走行路の形態等によっては、眠気(覚醒度の低下)検出の精度が低くなる可能性があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる覚醒度低下判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決した本発明に係る覚醒度低下判定装置は車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、操舵変化指標が所定のしきい値を超えたときに、ドライバの覚醒度が低下状態であると判定する覚醒度低下判定手段と、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に基づいて、覚醒度低下判定手段で用いられる覚醒度低下判定しきい値を設定する覚醒度低下判定しきい値設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る覚醒度低下判定装置は、ドライバの覚醒度を判定する際、カーブ状態検出手段で検出された車両が走行する走行路のカーブ状態に基づいて、覚醒度判定手段で用いられるしきい値を設定するしきい値を設定している。車両の走行路のカーブ状態が変化すると、カーブ状態の大きさが操舵変化指標に対して影響を与える。このため、操舵変化指標が覚醒度低下判定しきい値を超えたときにドライバの覚醒度が低下する際に用いられる覚醒度低下判定しきい値をカーブ状態に基づいて設定することにより、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0009】
なお、本発明における「カーブ状態」は、たとえばカーブ半径(カーブR)、カーブの曲率などで表すことができる。
【0010】
ここで、覚醒度低下判定しきい値設定手段は、カーブ状態として、カーブが急な状態であるほど、覚醒度低下判定しきい値を大きくする態様とすることができる。
【0011】
カーブ状態として、カーブが急な状態であるほど、操舵変化指標に与える影響が大きくなる。このため、カーブが急な状態であるほど、覚醒度低下判定しきい値を大きくすることにより、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0012】
さらに、操舵変化指標検出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、操舵変化指標となる修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、操舵周期算出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づく操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、操舵角信号と遅延手段によって操舵角信号を遅延させて得られる遅延信号との差分を演算する差分演算手段と、差分演算手段における演算結果に基づく差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備える態様とすることができる。
【0013】
このように、操舵変化指標として、操舵角信号と操舵角信号を遅延させた操舵角遅延信号との差分を用いることにより、ドライバの操舵変化を好適に判断することができる。
【0014】
また、操舵変化指標検出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、操舵周期算出手段は、操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、検出された操舵角信号と遅延手段からの遅延信号の差分を演算する差分手段と、差分手段からの差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備えており、修正操舵周期の一周期中における差分出力の積分値からなり、操舵変化指標となる操舵変化パワーを算出する操舵変化パワー算出手段と、を備える態様とすることができる。
【0015】
このように、操舵変化指標として、修正操舵周期の一周期中における差分出力の積分値からなる操舵変化パワーを用いることにより、ドライバの操舵変化をさらに好適に判断することができる。なお、操舵変化指標としては、本発明における操舵変化パワーのほか、操舵変化パワーを求める際の修正操舵周期の一周期分の時間や修正操舵周期における操舵角振幅の最大値などを用いることもできる。
【0016】
また、車両の車速を検出する車速検出手段をさらに備え、カーブ状態検出手段は、操舵角検出手段によって検出された操舵角の経時変化および車速検出手段で検出された車速に基づいて、車両の走行路におけるカーブ状態を検出する態様とすることができる。
【0017】
このように、カーブ状態を車両の操舵角と車速とによって求めることにより、別途カーブ状態を検出する検出手段を不要とすることができる。したがって、その分装置構成を簡素化することができる。
【0018】
また、車両の走行路における実際のカーブ状態を基準カーブ状態として予め記憶する基準カーブ状態記憶手段と、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態と基準カーブ状態とを比較するカーブ状態比較手段と、を備え、カーブ状態比較手段による比較結果に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する態様とすることができる。
【0019】
このように、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態と基準カーブ状態との比較結果に基づいてドライバの覚醒度を判定することにより、覚醒度の低下による操舵遅れが操舵変化指標の変化の滑らかさの変化に現れることとなる。このため、さらに精度よく車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0020】
また、上記課題を解決した本発明に係る覚醒度低下判定装置は、車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に応じて設定されるしきい値と、しきい値と操舵変化指標検出手段で検出された操舵変化指標との比較に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する覚醒度低下判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る覚醒度低下判定装置によれば、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。
【図2】覚醒度低下判定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】操舵変化パワー算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、操舵角信号と遅延信号との経時変化を示すグラフ、(b)は、差分信号の経時変化を示すグラフ、(c)は、差分信号の絶対値の経時変化を示すグラフである。
【図5】しきい値決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、長周期の操舵角信号の経時変化を示すグラフ、(b)は、操舵角ベクトルを求めるための説明図である。
【図7】操舵変化パワーに修正操舵周期を乗じた総合操舵変化パワーの経時変化を示すグラフである。
【図8】第2の実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。
【図9】実カーブRと基準カーブRの経時変化を示すグラフである。
【図10】(a)は、実カーブR単位時間ベクトルと基準カーブR単位時間ベクトルを求める説明を行うグラフ、(b)は、実カーブR単位時間ベクトルと基準カーブR単位時間ベクトルの起点が0となるように実カーブR単位時間ベクトルと基準カーブR単位時間ベクトルをシフトさせたグラフ、(c)は、実カーブRベクトル偏移曲線および基準カーブRベクトル偏移曲線を示すグラフである。
【図11】操舵変化パワー統計曲線および基準操舵変化パワー統計曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置は、覚醒度低下判定ECU1を備えている。覚醒度低下判定ECU1には、操舵角センサ2および車速センサ3が接続されている。さらに、覚醒度低下判定ECU1には、警報装置4が接続されている。また、覚醒度低下判定ECU1は、操舵変化パワー算出部11、カーブR算出部12、覚醒度低下判定しきい値決定部13、および覚醒度低下判定部14を備えている。さらに、操舵変化パワー算出部11には、遅延回路11A、差分回路11B、ゼロ点検出回路11C、および操舵変化パワー算出回路11Dが設けられている。
【0025】
操舵角センサ2は、運転者によって入力されるステアリングホイールの操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ2では、検出した操舵角を操舵角信号として覚醒度低下判定ECU1における操舵変化パワー算出部11に設けられた遅延回路11Aおよび差分回路11Bに送信する。
【0026】
車速センサ3は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ3は、検出した車速を車速信号として覚醒度低下判定ECU1におけるカーブR算出部12に送信する。
【0027】
警報装置4は、たとえば車両に設けられ、運転者に対して音声を発するスピーカからなっている。警報装置4は、覚醒度低下判定ECU1から出力される覚醒度低下情報に応じた音声を出力し、運転者に対して注意を促す。
【0028】
覚醒度低下判定ECU1における操舵変化パワー算出部11は、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づいて、修正操舵周期を算出する。修正操舵周期を算出するにあたり、遅延回路11Aにおいて、操舵角センサ2から送信された操舵角信号に対して遅延処理を施して遅延信号を生成する。遅延回路11Aは、生成した遅延信号を差分回路11Bに出力する。
【0029】
差分回路11Bでは、操舵角センサ2から送信される操舵角信号と、遅延回路から出力された遅延信号に対して差分処理を行い、差分信号を生成する。差分回路11Bは、生成した差分信号をゼロ点検出回路11Cおよび操舵変化パワー算出回路11Dに出力する。
【0030】
ゼロ点検出回路11Cは、差分回路11Bから出力された差分信号に基づいて、操舵角変化のゼロ点を検出する。ゼロ点検出回路11Cは、検出したゼロ点に基づくゼロ点信号を操舵変化パワー算出回路11Dに出力する。
【0031】
操舵変化パワー算出回路11Dでは、差分回路11Bから出力される差分信号およびゼロ点検出回路11Cから出力されるゼロ点信号に基づいて、操舵変化指標となる操舵変化パワーを算出する。この操舵変化パワーは、修正操舵周期の一周期中における差分信号の積分値からなる。操舵変化パワー算出回路11Dは、算出した操舵変化パワーに基づく操舵変化パワー信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0032】
カーブR算出部12は、操舵角センサ2から送信される操舵角信号および車速センサ3から送信される車速信号に基づいて、車両の走行路のカーブRを算出する。車両の走行路のカーブRを算出する際には、操舵角センサ2から送信される操舵角信号における長時間間隔操舵角を用いる。カーブR算出部12は、算出したカーブRに基づくカーブR信号を覚醒度低下判定しきい値決定部13に出力する。
【0033】
覚醒度低下判定しきい値決定部13は、カーブR算出部12から出力されたカーブR信号に基づいて、覚醒度低下判定を行う際の覚醒度低下判定しきい値を決定する。覚醒度低下判定しきい値決定部13は、カーブRと覚醒度低下判定しきい値との対応関係を示す覚醒度低下判定しきい値マップを記憶している。覚醒度低下判定しきい値マップでは、カーブRが小さい(カーブが急である)ほど、覚醒度低下判定しきい値が大きくなるように覚醒度低下判定しきい値が設定されている。覚醒度低下判定しきい値決定部13は、決定した覚醒度低下判定しきい値に基づく覚醒度低下判定しきい値信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0034】
覚醒度低下判定部14は、操舵変化パワー算出部11における操舵変化パワー算出回路11Dから出力される操舵変化パワー信号に基づく操舵変化パワーと、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下判定しきい値とを比較する。覚醒度低下判定部14では、操舵変化パワーと覚醒度低下判定しきい値との比較の結果、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えている場合には、警報信号を警報装置4に送信する。
【0035】
次に、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置の動作について説明する。図2は、覚醒度低下判定装置の処理手順を示すフローチャートである。図2に示すように、覚醒度低下判定装置において、覚醒度低下判定ECU1は、まず、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づく車両の操舵角を取得し(S1)、次に、車速センサ3から送信される車速信号に基づく車両の車速を取得する(S2)。
【0036】
続いて、操舵変化パワー算出部11において、取得した車両の操舵角に基づいて、操舵変化パワーを算出する操舵パワー変化算出処理を行う(S3)。操舵変化パワー算出処理は、図3に示すフローにしたがって行われる。図3に示すように、操舵変化パワー算出処理では、最初に、遅延回路11Aにおいて、操舵角センサ2から送信された操舵角信号に対して遅延処理を行い(S11)、操舵角遅延信号を生成する。遅延処理を行う際の遅延時間は、本実施形態では0.2Sに設定する。
【0037】
続いて、差分回路11Bにおいて、操舵角差分演算処理を行う(S12)。操舵角差分演算処理では、操舵角センサ2から送信された操舵角信号から遅延処理によって生成された操舵角遅延信号を経時変化に合わせて減算し、操舵角差分信号を生成する。いま、操舵角信号と操舵角遅延信号との経時変化を図4(a)に示す。図4(a)に示すように、操舵角信号SSと操舵角遅延信号DSとは同一の波形を有しており、操舵角遅延信号は、操舵角信号をシフトされた位置状態となっている。この操舵角信号SSと操舵角遅延信号DSとに対して差分処理を行うことにより、図4(b)に示す波形の操舵角差分信号HSが生成される。
【0038】
操舵角差分演算処理が済んだら、ゼロ点検出回路11Cにおいて、絶対値処理を行う(S13)。絶対値処理では、操舵角差分信号HSにおける操舵角差振幅がマイナス領域となる範囲について、負号を正号に変換する処理を行う。図4(b)に示す波形の操舵角差分信号HSに絶対値処理を行うことにより、図4(c)に示す操舵角絶対値信号ASが生成される。
【0039】
ゼロ点検出回路11Cは、操舵角絶対値信号ASを生成した後、操舵角差分信号HSにおけるゼロ点を検出する(S14)。ゼロ点検出回路11Cは、操舵角絶対値信号ASにおける折り返し点を操舵角差分信号HSにおけるゼロ点として検出する。
【0040】
こうして、ゼロ点を検出したら、操舵変化パワー算出回路11Dにおいて、操舵周期の検出を行う(S15)。操舵周期としては、ゼロ点検出回路11Cにおいて取り出されたゼロ点間の間隔が操舵周期として検出される。操舵変化パワー算出回路11Dでは、操舵周期を検出した後、検出した操舵周期ごとの操舵変化パワーを算出する(S16)。操舵周期パワーは、操舵角絶対値信号ASを時間積分することによって算出される。こうして、操舵変化パワー算出処理を終了する。
【0041】
操舵変化パワー算出処理が済んだら、覚醒度低下判定しきい値決定処理を行う(S4)。覚醒度低下判定しきい値決定処理は、図5に示す手順に沿って行われる。図5に示すように、覚醒度低下判定しきい値決定処理では、最初に、カーブR算出部12において、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づいて、長時間間隔操舵角振幅を記憶する(21)。ここで記憶した長時間間隔操舵角振幅に基づいて、長時間間隔操舵角経時変化を求める。
【0042】
たとえば車両がカーブからなる走行路を走行している際には、長時間間隔操舵角経時変化は、図6(a)に示すような波形を描くこととなる。図6(a)に示す波形では、たとえば操舵角振幅が0以上となってから、再び0となるまでの時間が、10秒程度とされる。したがって、図4(a)に示す操舵角信号の経時変化と比較すると、その周期が非常に長いものとなっている。言い換えると、図4(a)に示す操舵角信号の経時変化は、図6(a)に示す波形の一部分を取り出した微小変化となっている。
【0043】
続いて、カーブR算出部12は、車速センサ3から送信される車速信号に基づいて、長時間間隔車速を記憶する(S22)。ここで記憶した長時間間隔車速に基づいて、長時間間隔車速経時変化を求める。こうして、長時間間隔操舵角経時変化および長時間間隔車速経時変化を求めたら、車両の移動量を算出する(S23)。車両の移動量は、長時間間隔車速を計測した際の計測時間および長時間間隔車速に基づいて算出される。
【0044】
車両の移動量を算出したら、長時間間隔操舵角振幅差を算出する(S24)。長時間間隔操舵角振幅差は、所定の単位時間の前後における操舵角振幅の差として求められる。たとえば、図6(b)に示す長時間間隔操舵角経時変化を描く波形では、第1計測時刻t1における操舵角振幅と、第1時刻t1から所定時間が経過した後の第2計測時刻t2における操舵角振幅との際として操舵角振幅差が求められる。この操舵角振幅差は、各計測時刻t1〜tnにおいて算出され、各計測時刻t1〜tnにおけるすべての操舵角振幅差によって、長時間間隔操舵角振幅差が求められる。
【0045】
長時間間隔操舵角振幅差を求めたら、各計測時刻t1〜tnにおけるそれぞれの操舵角ベクトルを算出する(S25)。操舵角ベクトルは、計測時刻t1〜tnにおけるそれぞれの操舵角振幅をヒストグラム化した際の操舵角振幅の頂点を結ぶベクトルである。たとえば、第1操舵角ベクトルは、第1計測時刻t1における操舵角振幅の頂点と第2計測時刻における操舵角振幅の頂点を結ぶベクトルである。操舵角ベクトルは、各時刻における操舵角振幅差と、所定間隔との関係に基づいて算出される。
【0046】
こうして、各計測時刻における操舵角ベクトルを求めたら、車両の走行路のカーブRを算出する(S25)。車両の走行路のカーブRは、各計測時刻t1〜tnにおける操舵角ベクトルと、車速センサ3から送信される車速信号に基づく車速から算出することができる。具体的には、各計測時刻t1〜tnにおける操舵角ベクトルと車速とを乗じることにより、車両が走行した方向および距離が求められる。この車両が走行した方向および距離を計測時刻t1〜tnについて、繋げることによって走行経路が求められる。この走行経路から車両の走行路のカーブRを求めることができる。
【0047】
カーブRを算出したら、覚醒度低下判定しきい値決定部13において、カーブRに応じた覚醒度低下判定しきい値を決定する(S27)。覚醒度低下判定しきい値決定部13は、算出したカーブRを覚醒度低下判定しきい値マップに参照し、覚醒度低下判定しきい値を決定する。こうして、覚醒度低下判定しきい値決定処理を終了する。
【0048】
覚醒度低下判定しきい値決定処理が済んだら、覚醒度低下判定部14において、覚醒度低下判定処理を行う(S5)。覚醒度低下判定処理を行う際には、操舵変化パワー算出部11から出力される操舵変化パワーと、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下判定しきい値とを比較する。それから、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えている場合には、ドライバの覚醒度が低下しており、ドライバの眠気が大きくなっていると判断する。その一方、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値以下である場合には、ドライバの覚醒度が低下しておらず、ドライバは正常な状態であると判断する。
【0049】
そして、覚醒度低下判定処理の結果、ドライバの覚醒度が低下しているか否かを判断し(S6)、操舵変化パワーが覚醒度低下判定しきい値を超えており、ドライバの覚醒度が低下し、ドライバの眠気が大きくなっていると判定した場合には、警報装置4に対して警報信号を送信する警報処理を行う(S7)。そして、覚醒度低下判定装置における処理を終了する。
【0050】
一方、覚醒度低下判定の結果、操舵変化パワーが覚醒度低下判定以下であり、ドライバの覚醒度が低下しておらず、ドライバが正常であると判定した場合には、警報装置4に対して警報信号を送信する警報処理を行うことなく、そのまま、覚醒度低下判定装置における処理を終了する
【0051】
このように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、車両の走行路のカーブRに基づいて覚醒度低下判定を行う際における覚醒度低下判定しきい値を調整して決定している。このため、車両の走行路のカーブRが変化した場合でも、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0052】
ここで、車両の走行路のカーブRが小さく、カーブが急であるほど、ドライバの覚醒度が操舵角変化に与える影響が大きくなる。この点、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、具体的には、車両の走行路のカーブRが小さく、カーブが急である場合には、覚醒度低下判定しきい値を大きくしている。このため、車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0053】
さらに、操舵変化パワーを算出する際には、操舵角信号と操舵角遅延信号との差分から得られる差分信号を用いている。このため、ドライバの操舵変化の状態を精度よく判定することができる。しかも、操舵変化パワーは、修正操舵周期の一周期中における操舵角信号と操舵角遅延信号との差分信号における積分値である。このため、ドライバの操舵変化をさらに好適に判断することができる。
【0054】
また、本実施形態では、操舵変化指標として差分信号の積分値である操舵変化パワーを用いているが、図7に示すように、操舵変化パワーと修正操舵周期との積を用いることもできる。この場合、操舵変化パワーと修正操舵周期との積に対して覚醒度低下判定しきい値を設定し、操舵変化パワーと修正操舵周期との積が覚醒度低下判定しきい値を超えた場合に、覚醒度が低下していると判定することとなる。また、この判定を行う際の覚醒度低下判定しきい値については、車両の走行路のカーブRに応じて決定される。あるいは、操舵変化指標として、操舵変化パワーと修正操舵周期との積に代えて、操舵変化パワーと修正操舵周期とに所定の演算を加えた結果を用いることもできる。たとえば、操舵変化パワーと修正操舵周期との積は、図7に示すように矩形で表されるが、この形状が楕円形状となるようにすることなどもできる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置のブロック構成図である。図8に示すように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置は、上記第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置と比較して、覚醒度低下判定ECU10が、基準カーブR記憶部21とカーブR比較部22とを備える点において相違している。
【0056】
本実施形態に係る覚醒度低下判定ECU10における基準カーブR記憶部21は、車両の走行路の実際のカーブRを基準カーブRとして記憶している。また、カーブR算出部12は、上記第1の実施形態と同様、操舵角センサ2から送信される操舵角信号に基づく操舵角および車速センサ3から送信される車速信号に基づく車速を用いて、車両の走行路のカーブRを算出する。カーブR算出部12は、算出したカーブRに基づくカーブR信号を、覚醒度低下判定しきい値決定部13とともにカーブR比較部22にも出力する。
【0057】
カーブR比較部22は、カーブR算出部12から出力されたカーブR信号に基づく車両が実際に走行したカーブの軌跡におけるカーブRを表す実カーブRが出力された際、出力されたカーブR信号に基づく実カーブRに相当する位置の走行路の基準カーブRを基準カーブR記憶部21から読み出す。カーブR比較部22は、カーブR算出部12から出力された出力されたカーブR信号に基づく実カーブRと、基準カーブR記憶部21から読み出した基準カーブRとを比較し、比較結果に応じたカーブR比較信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0058】
覚醒度低下判定部14では、操舵変化パワー算出部11における操舵変化パワー算出回路11Dから出力される操舵変化パワー信号に基づく操舵変化パワーと、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下判定しきい値との比較結果に、カーブR比較部22から出力されたカーブR信号に基づいて、覚醒度低下判定を行う。
【0059】
次に、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置における処理手順について説明する。本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、上記第1の実施形態に係る覚醒度低下判定処理における処理手順と比較して、覚醒度低下判定しきい値決定処理(S4)と覚醒度低下判定(S5)との間にカーブR比較処理が入る点、および覚醒度低下判定処理が異なる。以下、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置における処理手順について、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0060】
まず、カーブR比較処理について説明する。カーブR比較処理では、カーブR比較部22において、カーブR算出部12からカーブR信号が出力された際に、基準カーブR記憶部21から基準カーブRを読み出す。次に、カーブR算出部12から出力されたカーブR信号に基づく実カーブRと、基準カーブR記憶部21から読み出した基準カーブRとを比較する。
【0061】
実カーブRと基準カーブRとの比較では、最初に実カーブRと比較カーブRとにおける操舵角振幅の経時変化の立ち上がりの滑らかさを比較する。ここで、実カーブRと基準カーブRとの比較結果の例を図9に示す。図9では、実カーブRにおける操舵角振幅の経時変化を実カーブR曲線RCとして示し、基準カーブRにおける操舵角振幅の経時変化を基準カーブR曲線BCとして示している。ここでは、実カーブR曲線RCとして、ドライバの覚醒度が低い場合の実カーブR曲線RCを示している。
【0062】
実カーブRと基準カーブRとの操舵角振幅の経時変化を比較するにあたり、ドライバの覚醒度が低いと、操舵遅れ図9に示すように、実カーブR曲線RCの立ち上がりは、基準カーブR曲線BCの立ち上がりよりも遅く急なものとなり、基準カーブR曲線BCの立ち上がりが実カーブR曲線RCの立ち上がりより早くも滑らかとなる。また、その後は、一端基準カーブR曲線BCの方が実カーブR曲線RCよりも操舵角振幅が小さくなり、カーブRの頂点を超えてからしばらくはそのままの状態となる。その後、再び基準カーブR曲線BCの方が実カーブR曲線RCよりも操舵角振幅が大きくなる。
【0063】
このような傾向を加味して、カーブR比較部22では、実カーブRと基準カーブRとの操舵角振幅の経時変化を比較し、実カーブR曲線RCの立ち上がりが、基準カーブR曲線BCの立ち上がりよりも遅く急な場合には、ドライバの覚醒度が低下していると判断した覚醒度低下信号を覚醒度低下判定部14に出力する。
【0064】
覚醒度低下判定部14では、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下しきい値信号に基づく覚醒度低下しきい値に基づく覚醒度低下の判断に対して、カーブR比較部22から出力される覚醒度低下信号の有無を加味して覚醒度低下判定を行う。具体的には、覚醒度低下判定しきい値決定部13から出力された覚醒度低下しきい値信号に基づく覚醒度低下しきい値に基づく覚醒度低下の判断の結果、覚醒度が低下していると判定され、かつ覚醒度低下信号が出力されていることを条件として、ドライバの覚醒度が低下していると判定する。
【0065】
このように、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、実カーブRと基準カーブRとの比較結果を用いている。このため、上記第1の実施形態に係る覚醒度低下判定装置に対して、さらに精度よく車両の走行路に応じて、精度よくドライバの覚醒度の低下を判定することができる。
【0066】
ここで、本実施形態に係る覚醒度低下判定装置では、実カーブRと基準カーブRとの比較結果を用いているが、その他の要素、たとえば修正操舵周期ごとに求めた操舵角ベクトルの偏移や所定時間内における操舵変化パワーと周期間隔分布の偏移などを用いることができる。ここで、修正操舵周期ごとの操舵角ベクトルの偏移について説明すると、図10(a)に示すように、実カーブR曲線RCおよび基準カーブR曲線BCをそれぞれ単位時間ごとに区切り、操舵角ベクトルを求める。
【0067】
次に、図10(b)に示すように、実カーブR曲線RCの単位時間ベクトルである実カーブR単位時間ベクトルRVおよび基準カーブR曲線BCの単位時間ベクトルである基準カーブR単位時間ベクトルBVをグラフ上に表す。実カーブR単位時間ベクトルRVは、単位時間当たりにおける実カーブR曲線RCから得られる操舵ベクトルの起点が0となるように操舵ベクトルをシフトさせることによって得られる。また、基準カーブR単位時間ベクトルBVは、単位時間当たりにおける基準カーブR曲線BCから得られる操舵ベクトルの起点が0となるように操舵ベクトルをシフトさせることによって得られる。
【0068】
それから、図10(c)に示すように、実カーブR単位時間ベクトルRVおよび基準カーブR単位時間ベクトルBVをそれぞれ時間微分して、実カーブRベクトル偏移曲線RLおよび基準カーブRベクトル偏移曲線BLを求める。ここで求められる実カーブRベクトル偏移曲線RLと基準カーブRベクトル偏移曲線BLとを比較することにより、覚醒度低下信号を出力するか否かを判断する。
【0069】
覚醒度低下信号を出力すると判断する際の基準としては、たとえば、実カーブRベクトル偏移曲線RLと基準カーブRベクトル偏移曲線BLとの最大振幅の差を用いることができる。この場合、実カーブRベクトル偏移曲線RLと基準カーブRベクトル偏移曲線BLとの最大振幅の差が所定のしきい値を超えた場合に、覚醒度低下信号を出力すると判断する。また、その他の基準としては、ベクトル角度の偏移量、上下変動回数などを用いることができる。
【0070】
あるいは、図11に示すように、修正操舵周期の一周期分の操舵変化パワーを統計処理して操舵変化パワー統計曲線RSを求め、正常時における修正操舵周期の一周期分の操舵変化パワーを統計処理して得られる基準操舵変化パワー統計曲線BSと比較して覚醒度低下信号を出力するか否かを決定することもできる。ここで、基準操舵変化パワー統計曲線BSについては、最初の走行時に取得することもできるし、予め設定しておくこともできる。
【0071】
操舵変化パワー統計曲線RSと基準操舵変化パワー統計曲線BSとを比較し、覚醒度低下信号を出力すると判断する際の基準としては、たとえば両曲線における分散が所定のしきい値を超えた場合、中心高さの位置が所定のしきい値を超えた場合、などとすることができる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記第1の実施形態においては、操舵変化指標として操舵変化パワーを用いているが操舵変化パワーに代えて、修正操舵周期の一周期分の時間や振動数を用いることもできる。
【0073】
ここで、覚醒度低下判定しきい値を設定するにあたり、たとえば直線時の覚醒度低下判定しきい値が0.2Hzであった場合に、100Rのカーブ時の覚醒度低下判定しきい値を0.4Hzとすることができる。また、操舵変化指標としては、修正操舵周期における振幅の最大値や平均値などを用いることもできる。
【0074】
さらに、上記実施形態では、カーブ状態としてカーブRを検出しているが、カーブの曲率を用いることもできる。また、カーブRを検出するにあたり、操舵角信号と車速信号を用いているが、他のカーブR検出手段、たとえばナビゲーションデータやヨーレートセンサを用いることもできる。さらには、操舵角信号と車速信号から求められるカーブRとこれらのカーブR検出手段による検出結果とを併用してカーブRを検出する態様とすることもできる。操舵角信号と車速信号から求められるカーブRとこれらのカーブR検出手段による検出結果とを併用してカーブRを検出する態様とすることにより、カーブRの検出精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1,10…覚醒度低下判定ECU、2…操舵角センサ、3…車速センサ、4…警報装置、10…覚醒度低下判定装置、11…操舵変化パワー算出部、11A…遅延回路、11B…差分回路、11C…ゼロ点検出回路、11D…操舵変化パワー算出回路、12…カーブR算出部、13…覚醒度低下判定しきい値決定部、14…覚醒度低下判定部、21…基準カーブR記憶部、22…カーブR比較部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、
前記車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、前記車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、
前記車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、
前記操舵変化指標が所定のしきい値を超えたときに、ドライバの覚醒度が低下状態であると判定する覚醒度低下判定手段と、
前記カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に基づいて、前記覚醒度低下判定手段で用いられる覚醒度低下判定しきい値を設定する覚醒度低下判定しきい値設定手段と、
を備えることを特徴とする覚醒度低下判定装置。
【請求項2】
前記覚醒度低下判定しきい値設定手段は、前記カーブ状態として、カーブが急な状態であるほど、前記覚醒度低下判定しきい値を大きくする請求項1に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項3】
前記操舵変化指標検出手段は、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、前記操舵変化指標となる修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、
前記操舵周期算出手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づく操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、前記操舵角信号と前記遅延手段によって前記操舵角信号を遅延させて得られる遅延信号との差分を演算する差分演算手段と、前記差分演算手段における演算結果に基づく差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備える請求項1または請求項2に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項4】
前記操舵変化指標検出手段は、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、
前記操舵周期算出手段は、前記操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、検出された操舵角信号と前記遅延手段からの遅延信号の差分を演算する差分手段と、前記差分手段からの差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備えており、
前記修正操舵周期の一周期中における前.記差分出力の積分値からなり、前記操舵変化指標となる操舵変化パワーを算出する操舵変化パワー算出手段と、を備える請求項1または請求項2に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項5】
前記車両の車速を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記カーブ状態検出手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角の経時変化および前記車速検出手段で検出された車速に基づいて、前記車両の走行路におけるカーブ状態を検出する請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項6】
前記車両の走行路における実際のカーブ状態を基準カーブ状態として予め記憶する基準カーブ状態記憶手段と、
前記カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態と前記基準カーブ状態とを比較するカーブ状態比較手段と、を備え、
前記カーブ状態比較手段による比較結果に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する請求項5に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項7】
車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、
前記車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、前記車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、
前記車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、
前記カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に応じて設定されるしきい値と、前記しきい値と前記操舵変化指標検出手段で検出された操舵変化指標との比較に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する覚醒度低下判定手段と、
を備えることを特徴とする覚醒度低下判定装置。
【請求項1】
車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、
前記車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、前記車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、
前記車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、
前記操舵変化指標が所定のしきい値を超えたときに、ドライバの覚醒度が低下状態であると判定する覚醒度低下判定手段と、
前記カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に基づいて、前記覚醒度低下判定手段で用いられる覚醒度低下判定しきい値を設定する覚醒度低下判定しきい値設定手段と、
を備えることを特徴とする覚醒度低下判定装置。
【請求項2】
前記覚醒度低下判定しきい値設定手段は、前記カーブ状態として、カーブが急な状態であるほど、前記覚醒度低下判定しきい値を大きくする請求項1に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項3】
前記操舵変化指標検出手段は、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、前記操舵変化指標となる修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、
前記操舵周期算出手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づく操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、前記操舵角信号と前記遅延手段によって前記操舵角信号を遅延させて得られる遅延信号との差分を演算する差分演算手段と、前記差分演算手段における演算結果に基づく差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備える請求項1または請求項2に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項4】
前記操舵変化指標検出手段は、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、修正操舵周期を算出する操舵周期算出手段を有し、
前記操舵周期算出手段は、前記操舵角信号を所定時間遅延させる遅延手段と、検出された操舵角信号と前記遅延手段からの遅延信号の差分を演算する差分手段と、前記差分手段からの差分出力の符号の変化からゼロ点を検出するゼロ点検出手段と、を備えており、
前記修正操舵周期の一周期中における前.記差分出力の積分値からなり、前記操舵変化指標となる操舵変化パワーを算出する操舵変化パワー算出手段と、を備える請求項1または請求項2に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項5】
前記車両の車速を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記カーブ状態検出手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角の経時変化および前記車速検出手段で検出された車速に基づいて、前記車両の走行路におけるカーブ状態を検出する請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項6】
前記車両の走行路における実際のカーブ状態を基準カーブ状態として予め記憶する基準カーブ状態記憶手段と、
前記カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態と前記基準カーブ状態とを比較するカーブ状態比較手段と、を備え、
前記カーブ状態比較手段による比較結果に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する請求項5に記載の覚醒度低下判定装置。
【請求項7】
車両を運転するドライバの覚醒度の低下状態を車両の操舵状態に基づいて判定する覚醒度低下判定装置であって、
前記車両の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって検出された操舵角に基づいて、前記車両を運転するドライバにおける操舵変化指標を検出する操舵変化指標検出手段と、
前記車両の走行路におけるカーブ状態を検出するカーブ状態検出手段と、
前記カーブ状態検出手段で検出されたカーブ状態に応じて設定されるしきい値と、前記しきい値と前記操舵変化指標検出手段で検出された操舵変化指標との比較に基づいて、ドライバの覚醒度を判定する覚醒度低下判定手段と、
を備えることを特徴とする覚醒度低下判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−244397(P2010−244397A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93987(P2009−93987)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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