説明

親水性を有する化粧シートの製造方法

【課題】コロナ放電処理を経て親水性を有する化粧シートを製造する方法であって、従来よりも親水性の持続性が改善された製造方法を提供する。
【解決手段】親水性を有する化粧シートの製造方法であって、
(1)熱可塑性樹脂からなる基材シートの表面に、最表面層が樹脂層となるように1又は2以上の層を積層する工程1と、工程1により得られる積層体を熱処理し、更に前記最表面層にコロナ放電処理する工程2とを有し、
(2)工程2における熱処理及びコロナ放電処理はインライン上で行われる
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性を有する化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、一般に基材シート上に1又は2以上の樹脂層が積層されている。
【0003】
化粧シートの表面の親水性を向上させることができれば、目的に応じて更にシート等を重ね貼りする際に良好な密着性が得られ易い。また、水洗によって表面の汚染物を容易に除去できるという効果もある。
【0004】
化粧シートの表面の親水性を向上させる方法として、例えば、光触媒技術を用いる方法(特許文献1等)、親水性樹脂の使用(特許文献2等)、親水化物の添加、コロナ放電処理等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、上記方法には次のような問題がある。即ち、上記光触媒技術を用いる方法は高コストであり、しかも耐擦り傷性が低下する。親水性樹脂を用いる場合には、樹脂の種類が限定される。親水化物の添加は高コストであり、しかも表面に汚染物質が浸透し易くなるとともに耐薬品性が低下する。また、コロナ放電処理は親水効果が低下し易く、効果に持続性がない。
【0006】
上記方法のうち、コロナ放電処理は簡便な方法であり、他の特性(例えば、表面の耐擦り傷性、耐薬品性等)に影響を与えずに親水性を付与できる点で有利である。そのため、コロナ放電処理によって親水性を付与し、持続性を改善することが課題となっている。
【特許文献1】特開2004−106303号公報
【特許文献2】特開平5−195499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コロナ放電処理を経て親水性を有する化粧シートを製造する方法であって、従来よりも親水性の持続性が改善された製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定条件下においてコロナ放電処理を行う場合に上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の親水性を有する化粧シートの製造方法に関する。
1.親水性を有する化粧シートの製造方法であって、
(1)熱可塑性樹脂からなる基材シートの表面に、最表面層が樹脂層となるように1又は2以上の層を積層する工程1と、工程1により得られる積層体を熱処理し、更に前記最表面層にコロナ放電処理する工程2とを有し、
(2)工程2における熱処理及びコロナ放電処理はインライン上で行われる
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。
2.前記熱処理は、前記基材シートの融点の70〜120%の温度で行う、上記項1に記載の製造方法。
3.前記樹脂層は、電離放射線硬化型樹脂層又は2液硬化型ウレタン系樹脂層である、上記項1又は2に記載の製造方法。
4.前記熱処理終了から前記コロナ放電開始までの時間が60秒以内である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5.前記樹脂層のおもて面からエンボス加工する工程を有する、上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記熱処理は、前記エンボス加工時の熱処理である、上記項5に記載の製造方法。
7.上記項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる化粧シート。
8.上記項7に記載の化粧シートの前記基材シートと被着材とを貼着してなる化粧材。
【0010】
以下、本発明の親水性を有する化粧シートの製造方法について説明する。
1.化粧シートの製造方法
本発明の親水性を有する化粧シートの製造方法(以下「本発明の製造方法」)は、
(1)熱可塑性樹脂からなる基材シートの表面に、最表面層が樹脂層となるように1又は2以上の層を積層する工程1と、工程1により得られる積層体を熱処理し、更に前記最表面層にコロナ放電処理する工程2とを有し、
(2)工程2における熱処理及びコロナ放電処理はインライン上で行われる
ことを特徴とする。
【0011】
上記特徴を有する本発明の化粧シートは、工程1において最表面層が樹脂層である積層体を作製し、工程2においてインライン上で積層体に熱処理し、更に最表面層にコロナ放電処理を行うため、コロナ放電処理により付与される親水性の持続性が大きい。
【0012】
≪工程1≫
工程1は、熱可塑性樹脂からなる基材シートの表面に、最表面層が樹脂層となるように1又は2以上の層を積層する。
【0013】
工程1で得られる積層体の種類は、最表面層が樹脂層であれば限定されない。例えば、熱可塑性樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層が積層されている積層体が好ましい例示である。なお、最表面層には、エンボス模様が付与されていてもよい。
【0014】
各層の形成方法は限定的でなく、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、転写印刷等の印刷;スプレー、ローラー、刷毛等の塗布;シート状物等の成形体を積層等のいずれも採用することができる。
【0015】
各層の厚みは限定的でなく、最終製品の用途、特性等に応じて適宜決定できる。通常は0.1〜500μm程度の範囲内とする。
【0016】
以下、積層体について、熱可塑性樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層が積層されている積層体を好ましい例として例示的に説明する。
【0017】
熱可塑性樹脂からなる基材シート
基材シートとしてはポリプロピレン樹脂(融点:135〜165℃程度)を含有するものが好ましい。ポリプロピレン樹脂としては、ポリプロピレンを主成分とする単独重合体だけでなく、共重合体であってもよい。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。その他、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等も挙げられる。
【0018】
基材シートは、着色されていても良い。その場合は、着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0019】
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0020】
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には50〜250μmが好ましい。
【0021】
基材シートは、必要に応じて、絵柄層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。
【0022】
絵柄模様層(絵柄層)
絵柄層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0023】
絵柄層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。
【0024】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
【0025】
結着材樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。
【0026】
より具体的には、例えば、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等を使用できる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性又は混合樹脂、その他の樹脂も使用できる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0027】
絵柄層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等がある。また、基材シートと絵柄層との間に全面ベタ状の着色層(着色隠蔽層とも言う)を更に形成する場合には、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。
【0028】
上記以外にも、例えば、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0029】
絵柄層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。着色隠蔽層の乾燥後の膜厚としても0.1〜10μm程度が好ましい。
【0030】
接着剤層
接着剤層は、絵柄層と透明性樹脂層との間に存在する。接着剤層で使用する接着剤は、絵柄層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等を含む各種接着剤を使用できる。また、反応硬化タイプのほか、ホットメルトタイプ、電離放射線硬化タイプ、紫外線硬化タイプ等の接着剤でもよい。
【0031】
なお、本発明では、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって絵柄層と透明性樹脂層とを積層することもできる。
【0032】
接着剤層は、絵柄層が認識できる限り、透明でも半透明でもよい。
【0033】
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0034】
接着剤層の厚みは、透明性樹脂層、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0035】
透明性樹脂層
透明性樹脂層は透明である限り着色されていてもよく、絵柄層が視認できる範囲内で半透明であってもよい。
【0036】
上記樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。上記の中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。より好ましくは、立体規則性を有するポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は、溶融ポリオレフィン系樹脂を押し出し法により透明性樹脂層を形成することが望ましい。
【0037】
透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0038】
透明性樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般的には10〜150μm程度とする。
【0039】
透明性表面保護層
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層が形成されている。本実施態様では透明性表面保護層が最表面の樹脂層であり、この樹脂層にコロナ放電処理を行う。
【0040】
透明性表面保護層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により透明性表面保護層を形成する場合には、化粧シートの耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【0041】
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0042】
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0043】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250〜100000程度が好ましい。
【0044】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0046】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0047】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190〜380nmが好ましい。
【0048】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
【0049】
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0050】
これらの透明性表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等を含んでもよい。例えば、シリケート、シリカ等を含んでもよい。
【0051】
透明性表面保護層は、例えば、透明性樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電子線照射により樹脂硬化する。
【0052】
透明性表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0053】
エンボス模様
積層体は、透明性表面保護層側からエンボス模様を付与されていてもよい。
【0054】
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチァーを付与するために行う。例えば、加熱ドラム上で透明性表面保護層を加熱軟化させた後、さらに赤外線輻射ヒーターで加熱し、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧・賦形し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。
【0055】
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
【0056】
≪工程2≫
工程2は、工程1により得られる積層体を熱処理し、更に前記最表面層にコロナ放電処理する。本発明では、この熱処理とコロナ放電処理をインライン上で行う。
【0057】
積層体の熱処理は、基材シート(熱可塑性樹脂)が軟化又は溶融する程度が好ましい。例えば、基材シートの融点の70〜120%の温度で行うことが好ましく、80〜120%の温度で行うことがより好ましい。加熱温度の上限については、積層体の各層に悪影響(過度の溶融、変形等)を与えない範囲で調整することが好ましい。
【0058】
コロナ放電処理の条件(強度、照射量)は所定の効果が得られる限り限定されないが、強度は1〜10kw程度が好ましく、照射直後の最表面層(樹脂層)の濡れ性が50dyne以上となるようにコロナ放電処理することが好ましい。
【0059】
上記熱処理とコロナ放電処理は、インライン上で行う。当該「インライン上」は、同一製造ライン上の意味であり、熱処理とコロナ放電処理が連続的な工程であることを示す。このようなインライン上であれば、熱処理終了からコロナ放電開始までの時間は60秒以内(0〜60秒)程度であり、より好ましくは30秒以内(0〜30秒)程度である。
【0060】
製造効率の観点から、上記熱処理はエンボス加工時の熱処理を利用してもよい。例えば、最表面の樹脂層をエンボス加工する場合には、エンボス模様を賦型するために積層体を熱処理する。このときの熱処理により基材シートを軟化又は溶融させ、エンボス加工後にインライン上で樹脂層にコロナ放電処理を行ってもよい。
【0061】
このように、インライン上で熱処理とコロナ放電処理とを組み合わせることによって、最表面層に施すコロナ放電処理の持続性が向上する。
2.化粧材
本発明の化粧シートは、各種被着材と接合することにより、化粧材とできる。被着材の材質は特に限定されず、例えば、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の材質が挙げられる。
【0062】
具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(ガラス繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス材料などが挙げられる。
【0063】
金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料(金属鋼板)が挙げられる。
【0064】
木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙げられる。
【0065】
プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料からなる単板又は合板が挙げられる。また、前記の樹脂を発泡させた発泡樹脂材料も使用できる。このようなプラスチック系材料は、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー等の無機充填剤を含んでもよい。
【0066】
このような被着体の形状は特に限定されず、通常はフローリング等への設置を考慮して平板とすればよい。
【0067】
被着材と接合後は、例えば、最終製品の特性に応じて、裁断、テノーナーを用いてサネ加工、V字形状の条溝付与、四辺の面取り等を施してもよい。
【発明の効果】
【0068】
本発明の化粧シートは、工程1において最表面層が樹脂層である積層体を作製し、工程2においてインライン上で積層体に熱処理し、更に最表面層にコロナ放電処理を行うため、コロナ放電処理により付与される親水性の持続性が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0070】
実施例1
(積層体の作製)
0.06mm厚の着色ポリプロピレン(基材シート:融点145℃)を用意した。基材シートの上に、絵柄模様層(2μm)を印刷により形成した。次に、絵柄模様層の上に0.08mm厚の透明性ポリプロピレン系樹脂フィルム(透明性樹脂層)を、ウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いて接着した。透明性接着剤層の厚さは3μmであった。次に、透明性樹脂層の上に電子線硬化型透明性表面保護層(15μm)を形成した。表面保護層は電子線照射によって硬化させた。
(コロナ放電処理)
積層体を150℃に加熱して、透明性表面保護層側から深さ30μm程度の木目導管模様をエンボスした。次いで、インライン上(熱処理終了からコロナ放電処理までの時間:10秒)で電子線硬化型透明性表面保護層に5kwのコロナ放電処理を施した。照射直後の樹脂層の濡れ性は50dyne以上であった。
【0071】
比較例1
コロナ放電処理(及びコロナ放電処理のための加熱)を行わない以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0072】
比較例2
オフライン(熱処理終了からコロナ放電処理までの時間:90秒)でコロナ放電処理を行う以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0073】
比較例3
熱処理をすることなくコロナ放電処理を行う以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
【0074】
試験例1(汚染物質除去特性)
(1)実施例・比較例で作製した化粧シートの最表面に食用油を付着させた後、続けて同条件で流水により除去した。
(2)実施例・比較例で作製した化粧シートを室内に6ヶ月放置し、その後最表面に食用油を付着させた後、続けて同条件で流水により除去した。
【0075】
除去特性は次の通りに評価した。
○:食用油は十分に除去できた。
×:食用油は除去することは困難であった。
【0076】
試験例2(汚染物質付着特性)
(1)実施例・比較例で作製した化粧シートを屋外に6ヶ月間放置した。
(2)上記6ヶ月間放置した化粧シートを水洗後、更に屋外に6ヶ月間放置した。
【0077】
汚染物質付着特性は次の通りに評価した。
○:汚れ付着は殆ど認められなかった。
△:汚れ付着が若干認められた。
×:汚れ付着が顕著に認められた。
【0078】
【表1】

【0079】
以上の結果から、インライン上でコロナ放電処理する場合(実施例1)には、汚染物質除去特性、汚染物質付着特性のいずれにおいても、長期にわたり効果を持続できることが分かる。他方、オフラインによりコロナ放電処理を行う場合(比較例2)や非加熱でコロナ放電処理する場合(比較例3)には、コロナ放電処理の直後は効果が認められるものの、長期にわたって効果を持続できないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性を有する化粧シートの製造方法であって、
(1)熱可塑性樹脂からなる基材シートの表面に、最表面層が樹脂層となるように1又は2以上の層を積層する工程1と、工程1により得られる積層体を熱処理し、更に前記最表面層にコロナ放電処理する工程2とを有し、
(2)工程2における熱処理及びコロナ放電処理はインライン上で行われる
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理は、前記基材シートの融点の70〜120%の温度で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層は、電離放射線硬化型樹脂層又は2液硬化型ウレタン系樹脂層である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理終了から前記コロナ放電開始までの時間が60秒以内である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層のおもて面からエンボス加工する工程を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理は、前記エンボス加工時の熱処理である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる化粧シート。
【請求項8】
請求項7に記載の化粧シートの前記基材シートと被着材とを貼着してなる化粧材。

【公開番号】特開2010−52345(P2010−52345A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221251(P2008−221251)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】