説明

親水性を有する熱可塑性樹脂組成物

【課題】 高度の親水性を有し、かつ、長期安定性に優れた親水性を付与した熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
親水性付与剤として、アクリル変性グリコール系ポリマー1〜50重量部および熱可塑性樹脂99〜50重量部を含有してなる親水性を付与した熱可塑性樹脂組成物、さらにアクリル変性グリコール系ポリマーにシリカを配合してなる混合物1〜50重量部および熱可塑性樹脂99〜50重量部を含有してなる親水性を付与した熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性を有する熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、さらに詳しくは、親水性付与成分を含有し、長期安定的で半永久的な親水性を付与した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
本発明によれば、疎水性の高分子材料であっても、水に濡れることが要求される用途、例えば、台所、浴室等の家屋内の水廻り設備の材質、ボトル等の水充填容器、食品包装用フィルム、建材、さらには自動車等の部材としての用途での使用に適した親水性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性樹脂は、その一部を例示しても、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、その他のエチレンとの共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、フッ素系高分子、ABS樹脂等の多肢にわたり、通常、機械的強度、成形性、耐薬品性、透明性等に優れたものであるが、かかる熱可塑性樹脂は、一般的に親油性、つまり疎水性である。すなわち、これらの樹脂は、水との間の相互作用が弱く、親和力の小さい、水となじまない性質を有するために各種の用途に利用するには不都合なことが多い。
【0004】
従って、かかる熱可塑性樹脂に親水性を付与するには、前記樹脂に親水性を有する成分を添加するか、または樹脂表面に親水性付与成分を被覆するか、さらには樹脂表面に対し親水性化処理を行う必要がある。従来、疎水性を示す熱可塑性樹脂に親水性を付与する方法としては、界面活性剤を添加する方法、永久帯電防止剤を添加する方法等が提案され、また、親水性化処理として樹脂表面のコロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ放電処理等の荷電により処理する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、前記の界面活性剤を添加する方法によって得られる樹脂の親水性は、その持続性に問題があり、また、永久帯電防止剤を添加する方法では親水性能自体が十分なレベルになく、従って、所望の効果が得られないという難点がある。
【0006】
一方、前記のプラズマ放電処理等は、通常、樹脂の疎水性表面の親水性化処理による印刷性、接着性、コーティング性等の改善として採用されている方法であり、親水性化処理により得られる樹脂表面の親水性については持続性に劣ることは避けられないという状況である。
【0007】
かかる状況下において、親水性を付与したポリオレフィン組成物として、(イ)エチレン単位を20〜99重量%、(ロ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート単位を80〜1重量%、および(ハ)他のエチレン性不飽和単量体単位0〜40重量%からなり、親水性付与成分を含有するエチレン共重体からなるポリオレフィン組成物が提案されている(特開平2−248443号公報)。
かかる先行技術によれば、親水性付与剤として、エチレンとポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体が記載されており、これは、キシレン中で75℃で測定した極限粘度(η)が0.07〜0.40dl/gの低粘度のものであり、また、ポリアルキレングリコールに一個の(メタ)アクリル酸を反応させたモノエステルであることが開示されている。
しかしながら、かかる親水性付与剤を配合した樹脂組成物であっても、なお、親水性の持続性が十分でないことから、長期安定的な親水性の持続可能な熱可塑性樹脂を実現することが切望されてきた。
【特許文献1】特開平2−248443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、従来の開発状況によれば、すでに提案された開発技術では、前記の如き十分な長期安定性に優れた親水性を確保できていないことに鑑み、本発明の課題は、高度の親水性を有し、かつ、長期間にわたり安定した親水性を付与した熱可塑性樹脂を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、従来の親水性熱可塑性樹脂の開発状況に鑑み、前記の課題を解決するために、鋭意、検討を重ねた結果、前記熱可塑性樹脂にアクリル変性グリコール系ポリマーを配合することにより親水性が付与された熱可塑性樹脂が得られることに着目し、かつ前記親水性能が長期安定性に優れたものであることを把握した。
【0010】
さらに、前記アクリル変性グリコール系ポリマーにシリカを配合することにより得られるアクリル変性グリコールとシリカとの組成物を熱可塑性樹脂に配合することにより得られる熱可塑性樹脂組成物が一層長期安定性にすぐれた親水性を有することを見出した。
本発明は、かかる知点に基づいて完成したものである。
【0011】
かくして、本発明によれば、
アクリル変性グリコール系ポリマー1〜50重量部及び熱可塑性樹脂99−50重量部の割合で配合してなることを特徴とする親水性熱可塑性樹脂組成物
が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、
アクリル変性グリコール系ポリマー50〜90重量%とシリカ50〜10重量%の割合からなる組成物1〜50重量部及び熱可塑性樹脂99〜50重量部の割合で配合してなる親水性熱可塑性樹脂組成物
が提供される。
【0013】
前記の通り、第一の発明は、熱可塑性樹脂にアクリル変性グリコール系ポリマーを配合してなる樹脂組成物であって、アクリル変性グリコール系ポリマー1〜50重量部と熱可塑性樹脂99〜50重量部とを含有してなる親水性熱可塑性樹脂組成物を提供するものであり、第二の発明は、前記アクリル変性グリコール系ポリマーにシリカを配合してなる組成物であって、前記アクリル変性グリコール系ポリマー50〜90重量%と前記シリカ50重量〜10重量%の割合で含有してなる組成物1〜50重量%及び熱可塑性樹脂99〜50重量部を含有してなる親水性熱可塑性樹脂組成物を提供するものであるが、さらに好ましい実施の態様として次の1)〜7)および8)に掲げるものを包含する。前記1)〜7)は親水性熱可塑性樹脂組成物について、8)は前記親水性熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0014】
1)前記アクリル変性グリコール系ポリマーが、アクリル変性ポリアルキレングリコー ルである前記親水性熱可塑性樹脂組成物。
【0015】
2)前記アクリル変性グリコール系ポリマーが、ポリアルキレングリコールとアクリル 酸化合物またはメタクリル酸化合物との反応生成物である前記親水性熱可塑性樹脂組 成物。
【0016】
3)前記アクリル変性グリコール系ポリマーが、ポリエチレングリコールまたはポリプ ロピレングリコールとアクリル酸化合物またはメタクリル酸化合物との反応生成物で ある前記親水性熱可塑性樹脂組成物。
【0017】
4)前記アクリル変性グリコール系ポリマーがポリアルキレングリコールジアクリレート またはポリアルキレングリコールジメタクリレートである前記親水性熱可塑性樹脂組 成物。
【0018】
5)前記アクリル変性グリコール系ポリマーのポリアルキレングリコール部分の一般式 (1)において、nの値が5〜17の整数である前記親水性熱可塑性樹脂組成物。
【0019】
6)前記ポリアルキレングリコールジアクリレートまたはポリアルキレングリコールジメ タクリレートのポリアルキレングリコール部分の一般式(1)においてnの値が7〜 14の整数である親水性熱可塑性樹脂組成物。
【0020】
7)前記シリカの親水性改善有効量が前記メタクリル変性グリコール系ポリマーと前記シ リカとの合計量100重量%に対して10〜50重量%である前記親水性熱可塑性樹 脂組成物。
【0021】
8)前記シリカの親水性改善有効量が、前記アクリル変性グリコール系ポリマーと前記シ リカとの合計量100重量%に対して20〜45重量%である親水性熱可塑性樹脂組 成物。
【0022】
9)前記熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエ チレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン系共重合体、及びABS樹脂から なる群より選択される少なくとも一種の高分子材料である前記親水性熱可塑性樹脂組 成物。
【0023】
10)アクリル変性グリコール系ポリマー、シリカ及び熱可塑性樹脂を含有してなり、さ らに、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤および紫外線吸収剤からなる群より選択され る少なくとも一種の添加剤を配合してなる親水性熱可塑性樹脂組成物。
【0024】
11)前記アクリル変性グリコール系ポリマーとシリカを配合してなる親水性付与組成物 を調製する工程(1)及び前記工程(1)にて得られた前記親水性付与組成物を熱可 塑性樹脂と
溶融混練する工程(2)
とからなる親水性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、熱可塑性樹脂にアクリル変性グリコール系ポリマーを配合してなるものであり、後述の実施例で示すように長期安定性に優れた親水性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
また、前記アクリル変性グリコールポリマーに特定割合のシリカを配合し得られた熱可塑性組成物が、親水性能の長期安定性を一層改良することができる。
従って、本発明によって、疎水性の高分子材料であっても、水に濡れることが要求される台所、浴室等の材料、ボトル等の水充填用容器、建材及び自動車等の部材として、また、透明性を保持することが必要な材質として有用な長期安定性に優れた親水性を有する熱可塑性樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
アクリル変性グリコール系ポリマー
第一及び第二の発明において、親水性熱可塑性樹脂組成物を構成するアクリル変性グリコール系ポリマーは、ポリアルキレングリコールとアクリル酸化合物またはメタクリル酸化合物との反応生成物であり、次の一般式(1);

【0027】
で表されるポリアルキレングリコール部分と
次の一般式(2);


で表されるアクリル酸化合物またはメタクリル酸化合物部分を含有するものであり、モノエステル化合物またはジエステル化合物を包含するものであるが、特に、ジエステル化合物が親水性改良の観点から好ましい。
【0028】
前記の一般式(1)および(2)において、
およびRは、それぞれ、メチル基または水素原子であり、nは2〜17、好ましくは5〜15の整数である。
さらに好ましくは5〜14、特に好ましくは10〜14の範囲である。nの値が2以下の小さい場合には、十分な親水性付与効果が得られず、また17を超える場合には溶解性の問題が生ずるおそれがあり、十分な親水性付与効果が得られない。
【0029】
アクリル変性グリコール系ポリマーの具体例は、アクリル変性ポリアルキレングリコールであり、さらに具体的にはアクリル変性ポリエチレングリコール、アクリル変性ポリプロピレングリコール、アクリル変性ポリブチレングリコール等を挙げることができる。例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等が好ましい。さらに具体的には、前記nの値が10〜14のポリプロピレングリコールジアクリレートが好適である。
【0030】
かかるアクリル変性グリコール系ポリマーの含有量は、親水性熱可塑性樹脂組成物の100重量部に対して全重量基準で、1〜50重量部である。好ましい含有量は、2〜40重量部であるが、熱可塑性樹脂の前記の各種用途への展開を図り、親水性と他の性状とのバランスを図る観点から3〜30重量部、特に4〜25重量部が好ましい。アクリル変性グリコール系ポリマーの含有量が1重量部に達しないと親水性について効果を奏することができず、一方50重量部を超えるとさらに増量しても親水性の効果がさらに向上することはないばかりでなく、熱可塑性樹脂の割合が減少することから、機械的強度その他の性能が低下し、熱可塑性樹脂の用途面の材料としての性能を欠如するおそれが生ずる。
【0031】
次に、第二の発明において、親水性熱可塑性樹脂組成物を構成する成分のシリカ(SiO)は、通常、各種用途に使用され、本発明の目的を達成できるものであれば、結晶性または無定形のいずれのものでも差しつかえがない。また、含水形態SiO・nHOのものでもよい。シリカは、通常、可溶性ケイ素塩の水溶液に適当な酸を加えて得られる物質を適宜処理して用いることもできる。本発明に係る親水性熱可塑性樹脂組成物の構成成分としてのシリカの好ましい使用形態は粒状体のものである。
シリカの含有量は、親水性改善有効量でよいが、具体的には、前記アクリル変性グリコール系ポリマーとの合計量を100重量%として10〜50重量%、好ましくは、15〜40重量%、さらに好ましくは、20〜35重量%である。シリカの含有量が10重量%に達しないと親水性の長期安定性に欠け、一方、50重量%を超えると、親水性の改善効果が低下するという不都合が生ずるおそれがある。
【0032】
従って、前記アクリル変性グリコール系ポリマーの含有量は、シリカ含有量の増減に応じて前記合計量を基準として50〜90重量%であり、好ましくは60〜85重量%となる。
かくして、アクリル変性グリコール系ポリマーにシリカを配合して得られる組成物1〜50重量部と熱可塑性樹脂99〜50重量部とを含有してなる親水性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0033】
熱可塑性樹脂
本発明に係る親水性を付加した熱可塑性樹脂組成物の構成成分である熱可塑性樹脂としては、凡用熱可塑性樹脂が主たるものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリスチレン等の炭化水素系重合体を挙げることができる。ポリエチレンとしては高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超高分子ポリエチレン、架橋ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、その他のエチレンとの共重合体、例えばエチレン−プロピレン共重合体等を用いることができる。
【0034】
また、その他のポリオレフィン、スチレン系共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS),AS樹脂,ABS・PCアロイ,等)を挙げることができる。
【0035】
その他の添加剤
本発明に係る親水性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じ、本発明に係る親水性熱可塑性樹脂組成物の効果を阻害しない範囲において各種添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、染料、顔料等を配合することができる。
【0036】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール,n−オクタデシル−3−(3,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート,テトラキス[メチレン−3−(3,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系酸化防止剤,ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート,ペンタエリストールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)の如きイオウ系酸化防止剤,トリスノニルフェニルフォスファイト,ジステアリルペンタエリストールジホスファイト,等のリン系酸化防止剤が挙げられる。
光安定剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が用いられ、さらに、ヒンダードアミン系光安定剤として、ビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]セバケート,テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が用いられる。
また、帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性系の界面活性剤を練り込みまたは表面塗装により用いられる。
【0037】
親水性熱可塑性樹脂の製造方法
第一の発明によれば、アクリル変性グリコール系ポリマーと熱可塑性樹脂との配合により、親水性熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【0038】
かかる親水性熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、前記アクリル変性グリコール系ポリマー(成分A)と熱可塑性樹脂(成分B)を溶融温度条件下において、前記成分Aが前記成分Bに分散されるまで所定時間混練する方法が採用される。溶融混練温度は、混練に供される樹脂により決定されるが、ポリプロピレン樹脂等の炭化水素系樹脂に対しては200〜250℃の温度条件が採用される。
【0039】
また、第二の発明によれば、前記成分A及び成分Bにさらにシリカ(成分C)が配合される。具体的には前記成分Cを成分Aに配合し成分Aと成分Cとを含有する組成物を調製する工程、前記工程で得られた組成物をさらに成分Bに配合することにより熱可塑性樹脂組成物を調製する工程の二段階からなる親水性熱可塑性樹脂組成物の製造方法、または、成分A、成分Bおよび成分Cを同時に配合することからなる一段工程による親水性熱可塑性樹脂組成物の製造方法のいずれを採用してもよいが、後者の方法が効率上好適である。
一方、成分A及び成分Cが成分Bに対して少割合の場合、特に成分Cが少量の場合は、あらかじめ成分Aに成分Cを配合し、得られる組成物を成分Bと配合することにより、成分A及び成分Cを成分B中に短時間で均一に分散させることが容易である。
本発明に係る親水性熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素系樹脂の親水性化を効率よく達成することができる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例および比較例により、本発明についてさらに詳細に説明する。もっとも本発明は、実施例等により何ら限定されるものではない。
なお、実施例等において用いた熱可塑性樹脂、アクリル変性グリコール系ポリマー、シリカ等の材料は下記記載のものを使用し、親水性能の評価についても下記記載の試験方法を用いて測定した。
また、実施例等において、「%」、「部」は、それぞれ重量%、重量部を示す。
【0041】
材料
熱可塑性樹脂
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製J707G)
低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)
(旭化成ケミカルズ社製M6545)
ABS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラック121)
アクリル変性グリコール系ポリマー
アクリル変性ポリプロピレングリコール(東亞合成社製光硬化型樹脂「アロニック スM270」[ポリプロピレングリコールジアクリレート]n≒12)
帯電防止剤(三洋化成工業社製ペレスタット300):ポリオレフィン用
帯電防止剤(三洋化成工業社製ペレスタットNC6321):ABS用
【0042】
評価方法
親水性評価
評価方法として、次の実施例および比較例において作製した評価プレート上に水滴を50μl滴下し、接触角測定計を用いて、滴下直後、1分後、10分後、30分後および45分後の接触角を経時的に測定した。測定温度は、23℃に維持した。
接触角測定計は、協和科学社製CA−DT型を用いた。
【0043】
実施例1
アクリル変性ポリプロピレングリコールを表1に示す割合でポリプロピレン樹脂に配合し、この組成物を押出機に供給し、220〜240℃の温度で溶融混練し、前記ポリプロピレン樹脂中にアクリル変性ポリプロピレングリコールを分散させたペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。
次に、このペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を平板金型を装着した射出成形機に供給し、220〜240℃で射出成形し50×50×2mmの成形品を作製した。この成形品を評価プレートとし、前記接触角測定方法により水滴の接触角の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
アクリル変性ポリプロピレングリコールを表1に示す割合でポリプロピレン樹脂に配合し、その組成物を押出機に供給し、220〜240℃の温度で溶解混練し、前記ポリプロピレン樹脂中にアクリル変性ポロプロピレングリコールを分散させたペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。
ペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1に記載の方法と同一の方法により射出成形し、成形品を作製し、これを評価プレートとし、前記親水性の評価方法に従い水滴の接触角の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
アクリル変性ポリプロピレングリコールを表1に示す割合でポリプロピレンに配合し、得られた組成物を押出機に供給し、220〜240℃の温度で溶解混練し、アクリル変性ポリプロピレングリコールを分散させたペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。
ペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を実施例1に記載の方法と同一の方法により、射出成形し、評価プレートを作製した。評価プレートの評価結果を表1に示す。
【0046】
実施例4
アクリル変性ポリプロピレングリコール及びシリカを表2に示す割合でポリプロピレン樹脂に配合したこと以外すべて実施例1と同一の条件および同一の操作によりペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を調製し、同様に親水性能を評価した。評価結果を同表に示す。
【0047】
実施例5
アクリル変性ポリプロピレングリコール及びシリカを表2に示す割合でポリプロピレン樹脂に配合したこと以外、すべて実施例2と同一の条件および同一の操作によりペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を調製し、同様に親水性能を評価した。評価結果を同表に示す。
【0048】
実施例6
アクリル変性ポリプロピレングリコール及びシリカを表2に示す割合でポリプロピレン樹脂に配合したこと以外すべて実施例3と同一の条件および同一の操作によりペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を調製し、同様に親水性能を評価した。評価結果を同表に示す。
【0049】
実施例7
アクリル変性ポリプロピレングリコールを表3に示す割合で低密度ポリエチレン樹脂(以下、「LDPE」)に配合し、その組成物を押出機に供給し、実施例1に記載の方法と同一の方法で溶融混連し、ペレット状LDPE樹脂を調製した後、評価プレートを作製し、実施例1に記載の方法と同一の方法により親水性の評価に供した。結果を表3に示す。
【0050】
実施例8
アクリル変性ポリプロピレングリコール及びシリカを表3に示す割合でLDPE樹脂に配合したこと以外、すべて実施例7と同一の条件および同一の操作によりペレット状LDPE樹脂を調製し、親水性能の評価に供した。評価結果を同表に示す。
【0051】
実施例9
アクリル変性ポリプロピレングリコールを表4に示す割合でABS樹脂に配合し、その組成物を押出機に供給し、溶融混練し、前記アクリル変性ポリプロピレングリコールを分散させたペレット状ABS樹脂組成物を調製した。ペレット状ABS樹脂組成物を実施例1に記載の方法と同一の方法で評価プレートを作製し、前記の水滴の接触角の経時変化を測定し、親水性の評価に供した。結果を表4に示す。
【0052】
実施例10
アクリル変性ポリプロピレングリコール及びシリカを表4に示す割合でペレット状ABS樹脂に配合したこと以外すべて実施例9と同一の条件および同一の操作によりペレット状ABS樹脂組成物を調製し、同様に親水性能を評価した。評価結果を同表に示す。
【0053】
比較例1
ポリプロピレン樹脂のみを実施例1に記載の方法と同一の方法によりペレット状ポリプロピレン樹脂とし、射出成形し、評価プレートを作製した。評価結果を表2に示す。
【0054】
比較例2
ポリプロピレン樹脂に帯電防止剤を配合し、実施例1に記載の方法と同一の方法により溶融混練し、ペレット状ポリプロピレン樹脂組成物を調製した後、射出成形により評価プレートを作製し、親水性能の評価に供した。評価結果を表2に示す。
【0055】
比較例3
LDPE樹脂のみを押出機に供給し、実施例1に記載の方法と同一の方法により溶融混練し、ペレット状LDPE樹脂組成物を調製した後、射出成形により評価プレートを作製した。評価結果を表3に示す。
【0056】
比較例4
ABS樹脂のみを押出機に供給し、実施例1に記載の方法と同一の方法により、ペレット状ABS樹脂組成物を調製した後、射出成形に供し、評価プレートを作製した。評価結果を表4に示す。
【0057】
以上の実施例および比較例の結果から、本発明に係る特定のアクリル変性ポリプロピレングリコールをポリプロピレン樹脂等に配合することにより、親水性能の長期安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を調製することができるが、さらに、アクリル変性ポリプロピレングリコールとシリカとの併用により、水滴の接触角の経時変化で示すように長期安定性に優れた親水性能を有するポリプロピレン樹脂、LDPE樹脂、ABS樹脂等の親水性熱可塑性樹脂組成物を調製することができる。
【0058】
特に、実施例5の親水性ポリプロピレン樹脂組成物の親水性及び親水性の持続性を比較例1のポリプロピレン樹脂組成物の親水性初期性能及び親水性の持続性との対比によれば、実施例5の親水性ポリプロピレン樹脂組成物については滴下直後の接触角が80°であり、45分後においては43°に低下しているのに対し、比較例1のポリプロピレン樹脂組成物によれば、滴下直後の接触角が96°であり、45分後においても84°にとどまっており、アクリル変性ポリプロピレングリコール及びシリカが親水性改良に対し顕著な効果を奏することが明らかである。
【0059】
また、シリカを併用しないアクリル変性ポリプロピレングリコールのみをポリプロピレン樹脂に配合した場合、実施例2で示すように比較例1と比較して初期親水性能及び親水性能の長期安定性に優れていることが示されている。
実施例7と比較例3との対比及び実施例9と比較例4との対比によっても本発明による顕著な効果が明らかである。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル変性グリコール系ポリマー1〜50重量部および熱可塑性樹脂99〜50重量部の割合で配合してなることを特徴とする親水性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
アクリル変性グリコール系ポリマー50〜90重量%とシリカ50〜10重量%の割合からなる組成物1〜50重量部および熱可塑性樹脂99〜50重量部の割合で配合してなることを特徴とする親水性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル変性グリコール系ポリマーが、ポリアルキレングリコールジアクリレートまたはポリアルキレングリコールジメタクリレートである請求項1または2に記載の親水性熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−32467(P2011−32467A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154324(P2010−154324)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】