説明

親水性フェノール樹脂、それを用いた成形可能材料、それらを用いた成形材および内装材

【課題】 本発明の課題は、フェノール系樹脂の水溶液を広いpH範囲にわたって安定化させること、あわせて物性均一な成形材を成形することが出来る成形可能材料を提供することにある。
【解決手段】フェノール系化合物とアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体との縮合物であるフェノール系樹脂であって、該フェノール系樹脂の一部又は全部にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基以外の親水基を導入して、該フェノール樹脂の親水性を向上せしめる。このような親水性フェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液を多孔質材料に含浸させて成形可能材料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の内装材や建材等に使用される親水性フェノール樹脂、それを用いた成形可能材料、それらを用いた成形材および内装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の内装材や建材等に使用される成形可能材料としては、従来から繊維シート等の多孔質材料にフェノール系合成樹脂を含浸した成形材料が使用されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−015386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の成形可能材料にあっては、フェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液を多孔質体に含浸させ、該初期縮合物を含浸させた多孔質体を加熱乾燥することによって製造される。
しかし従来のフェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液は不安定であることから、放置安定性を改良するために、通常はpHを強アルカリにする必要がある。また該初期縮合物のpHを酸性側にすると水溶性が無くなり、水希釈性が悪くなって白濁分離するおそれがあった。
このような不安定な初期縮合物水溶液を多孔質体に含浸させた場合には、多孔質体中の初期縮合物の含浸量にバラツキが発生し、このような成形可能材料を加熱成形して該成形可能材料中の初期縮合物を硬化せしめた場合、得られる成形物の剛性、耐水性、耐熱性等の物性に部分的なバラツキを生じると云う不具合が発生する。
したがって、本発明では、広いpH範囲で長期間安定である親水性フェノール樹脂の初期縮合物水溶液を提供することを課題とする。また本発明では、該親水性フェノール樹脂を用いた成形可能材料と、該成形可能材料を用いてなる成形材および内装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、フェノール系化合物とアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体との縮合物であるフェノール系樹脂であって、該フェノール系樹脂の一部又は全部にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基以外の親水基が導入されている親水性フェノール系樹脂を提供するものである。
また親水性フェノール系樹脂の初期縮合物を含浸した多孔質材料からなり、該初期縮合物はB状態とされている成形可能材料を提供するものである。
該成形可能材料はシート状であることが望ましい。
更に基材と、該基材の表面の一部又は全部に貼着されている上記シート状の成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂の初期縮合物を硬化した硬化シートとからなり、所定形状に成形されている成形材を、また上記成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂を硬化した硬化シートからなる基材と、該基材の表面に貼着されている表皮材とからなる内装材を提供するものである。
該基材と該表皮材とは、接着面に点状に散在されている接着剤層によって接着されていることが望ましい。
【0005】
一般に上記成形可能材料はシート状で提供され、該シート状成形可能材料を使用すれば、基材と、該基材の表面の一部又は全部に貼着されている該シート状の成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂初期組成物を硬化した硬化シートとからなり、所定形状に成形されていることを特徴とする成形材を提供することができる。
また該シート状成形可能材料を使用すれば、上記成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂初期組成物を硬化した硬化シートからなる基材と、該基材の表面に貼着されている表皮材とからなることを特徴とする内装材を提供することもでき、この場合、該基材と該表皮材とは、接着面に点状に散在されている接着剤層によって接着されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明の親水性フェノール系樹脂にあっては、該フェノール系樹脂の一部又は全部にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基以外の親水基が導入されているから、フェノール系樹脂は高い親水性を有し、広いpH範囲にわたって安定な水溶液を形成する。
〔効果〕
本発明の親水性フェノール系樹脂は、多孔質材料に均一に含浸させることが出来るため、物性が均一な成形材を与える成形可能材料を提供することが出来る。
したがって本発明によれば、親水性フェノール系樹脂を用いた成形可能材料を使用することにより、ドアトリム、ダッシュボード、天井材、床材、インシュレーターフード、ダッシュインナー、ダッシュアウター、エンジンアンダーカバー、トランクサイドトリム等の車輌用の内装材、壁材等の建築材、ベッド等の芯材、椅子、ソファー、シート等のクッション材、各種パッド等として有用な成形材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔A.成形可能材料〕
〔フェノール系樹脂〕
本発明に使用されるフェノール系樹脂は、通常初期縮合物の水溶液又は有機溶剤−水混合溶液として提供される。
本発明のフェノール系樹脂は、フェノール系化合物とアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体との縮合物である。
【0008】
〔フェノール系化合物〕
上記フェノール系化合物は、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよい。また、本発明におけるフェノール系樹脂は、一価フェノールとアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体とを縮合させた初期縮合物と、多価フェノールとアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体とを縮合させた初期縮合物とを共縮合させた初期共縮合物であってもよい。
【0009】
〔一価フェノール〕
一価フェノールとしては、フェノールや、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、あるいはo−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール等の一価フェノール置換体、あるいはナフトール等の多環式一価フェノールなどが挙げられ、これら一価フェノールは単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0010】
〔多価フェノール〕
多価フェノールとしては、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノール、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられ、これら多価フェノールは単独で又は二種以上を混合して使用することができる。多価フェノールのうち好ましいものは、レゾルシン又はアルキルレゾルシンであり、特に好ましいものはレゾルシンよりもアルデヒドとの反応速度が速いアルキルレゾルシンである。
アルキルレゾルシンとしては、例えば5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシン等がある。
エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は安価であり、かつ5−メチルレゾルシンのほか反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含むので、本発明において特に好ましい多価フェノール原料である。
【0011】
〔アルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体〕
上記アルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体とは、アルデヒド、分解するとアルデヒドを生成供与する化合物又はそれらの混合物を意味し、このような化合物としては、ホルマリン、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等の単独又は二種以上の混合物が例示される。
【0012】
〔硬化剤〕
上記フェノール系化合物とアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体との縮合は、通常酸性硬化剤(酸触媒)またはアルカリ性硬化剤(アルカリ触媒)存在下で行われる。なお、酸性硬化剤を使用した場合は、まずノボラックが得られ、該ノボラックをヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を用いて硬化させる。アルカリ性硬化剤を使用した場合は、まずレゾールが得られ、該レゾールを加熱、加圧するか、あるいは酸触媒を用いて硬化させる。
上記酸性硬化剤としては、例えば塩酸、硫酸、オルト燐酸、ホウ酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機又は有機酸、あるいは蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、あるいはマレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、あるいは塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、イミドスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩類、あるいはモノクロル酢酸又はそのナトリウム塩、あるいはα,α’−ジクロロヒドリン等の有機ハロゲン化物、あるいはトリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、あるいはサルチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクト、ヘプタン酸尿素アダクト等の尿素アダクト、あるいはN−トリメチルタウリン、塩化亜鉛、塩化第2鉄等が例示される。
上記アルカリ性硬化剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、あるいは石灰等のアルカリ土類金属の酸化物、あるいは炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属の弱酸塩類、あるいはアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン等のアミン類等が例示される。
【0013】
〔親水基〕
本発明において、上記フェノール系樹脂に導入される親水基としては、−SO3H、−SO3M、−OSO3H、−OSO3M、−COOM、−NR3X、−COOH、−NH2、−CN、−OH、−NHCONH2、−(OCH2CH2)、−SO3NH2、CO−、=N−SO3H、リン酸基等が例示される。
上記親水基は、単独あるいは二種以上がフェノール系樹脂に導入されてもよい。
【0014】
〔第三成分〕
上記硬化剤の他、必要に応じて、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、メチロール尿素、メチル化メチロール尿素、尿素樹脂、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、アルキロール化トリアゾン誘導体等のアルデヒド又は分解するとアルデヒドを生成する化合物を硬化剤として混合してもよい。
【0015】
上記硬化剤の他、更に必要ならば、一価フェノール系樹脂、多価フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂等のアミノ系樹脂、あるいは天然ゴム又はその誘導体、例えばスチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム、他にビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルエステル、メタクリルエステル、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン等のビニル単量体の単独重合体又はこれらビニル単量体の二種以上の共重合体、他にポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸 ビニル−エチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリエステル等の各種合成樹脂のエマルジョンやラテックス又は水溶液、他にポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類、他に炭酸カルシウム、タルク、石膏、カーボンブラック、木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の充填剤、他に界面活性剤、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、他にブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類、他に脂肪酸アミド類 、他にカルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類、他にパラフィン類、パラフィン油、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤、他にヘキサン、ブタン、n−ペンタン、アルコール、エーテル、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルフルオロメタン、1,1,2−トリクロル−1,2,2−トリフルオロエタン等の低沸点溶剤、他にアゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等のガスを発生するもの、他に炭酸ガスを発生しながら酸性硬化剤と反応する物質、例えば炭素又は重炭酸ナトリウム、カリウム、アンモニウム又はカルシウム、他にn−ペンタン、イソペンタン、ブタン、イソブタン等をマイクロカプセル化した熱可塑性膨張性微小球等の発泡剤、他にシラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体、他に発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等の発泡体や発泡粒、他に顔料、染料、難燃剤、防炎剤、防虫剤、防腐剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、他にDBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタール酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤などの第三成分を添加して、共縮合や混合等により上記硬化性樹脂を変性してもよい。
【0016】
〔フェノール系樹脂の製造〕
上記フェノール系樹脂は常法により製造することができるが、特に該フェノール系樹脂として、フェノール系化合物とアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体とを、硬化剤の存在下で縮合させた初期縮合物を使用する場合、該初期縮合物は、(a)一価フェノールおよび/または多価フェノールとアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体とを、硬化剤の存在下で縮合させるか、(b)一価フェノールとアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体とを硬化剤の存在下で縮合させた初期縮合物Aと、多価フェノールBおよび/または多価フェノールとアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体とを硬化剤の存在下で縮合させた初期縮合物Cとを共縮合させることにより製造することができる。
【0017】
上記(a)の一価フェノールおよび/または多価フェノールとアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体との縮合においては、通常一価フェノール1モルに対し、アルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体0.2〜3モル、多価フェノール1モルに対し、アルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体0.1〜0.8モルと、必要に応じて溶剤と、第三成分と、そして硬化剤とを添加し、液温55〜100℃で8〜20時間加熱反応させる。このときアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体は、反応開始時に全量加えてもよいし、分割添加又は連続滴下してもよい。
【0018】
上記(b)の2段階の共縮合を行う場合においては、上記(a)の方法により製造した初期縮合物Aに、多価フェノールBおよび/または上記(a)の方法により製造した初期縮合物Cと、必要に応じてアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体と、溶剤と、錯化剤と、第三成分と、触媒と、そして硬化剤とを添加し、液温60〜100℃で1〜10時間加熱反応させる。
このとき添加する多価フェノールの総量は、一価フェノール1モルに対して0.01〜3モルであるのが好ましい。また、硬化剤の添加量は、フェノール系化合物に対して0.01〜20重量%であるのが好ましく、特に0.01〜15重量%であるのが好ましい。
上記錯化剤は、多価フェノールとアルデヒドとの反応性を緩和するために添加してもよい。かかる錯化剤としては、多価フェノールのヒドロキシル基に対して錯化形成能をもつケトン基又はアミド基等を有する化合物を使用することができ、例えばアセトン、カプロラクタム等が例示され、特にアセトンが好ましい。錯化剤の添加量は特に制限はないが、通常多価フェノール1モルに対し錯化剤0.4〜0.8モル程度が好ましい。この錯化剤は、上記初期縮合物Cを製造する際に添加してもよい。
【0019】
溶媒としては通常は水が用いられるが、必要ならば更にメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコー ル、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、n一オクタノール、トリメチルノニルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アビエチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、あるいはアセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルオキシド、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、 アセトフェノン、ショウノウ等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロ ピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、あるいはエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の上記グリコール類のエステル類やその誘導体、あるいは1,4−ジオキサン等のエーテル類、あるいはジエチルセロソルプ、ジエチルカルビトール、エチルラクテート、イソプロピルラクテート、ジグリコールジアセテート、ジメチルホルムアミド等の水可溶性又は親水性有機溶剤の単独又は二種以上の混合物を添加使用することができる。
アセトン等は、溶剤であると同時にアルキルレゾルシンの錯化剤としても作用するため、より穏やかな反応をもたらす。
【0020】
上記親水基のフェノール系樹脂への導入は、一価フェノールおよび/または多価フェノールとアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体との縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよく、上記初期縮合物Aと多価フェノールBおよび/または初期縮合物Cとの共縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
上記親水基の導入量は、フェノール系化合物1モルに対して通常は0.001〜1.5モルであるが、製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
このようにして親水基が導入されたフェノール系樹脂の初期縮合物は、水溶液としての安定性が広いpH範囲にわたって良好になって相分離等が生じ難くなり、また硬化速度が大きくなる。
【0021】
〔多孔質材料〕
本発明に使用される多孔質材料としては、繊維集合体、連続気泡を有するプラスチック発泡体、プラスチックビーズの焼結体等がある。
該繊維集合体を構成する繊維としては、木綿、麻、羊毛、絹、ケナフ、ヤシ繊維、竹繊維等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維等の有機合成繊維、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー等の無機繊維、あるいは上記繊維を使用した繊維製品のスクラップを解織して得られた再生繊維、あるいはこれらの繊維の二種以上の混合物、あるいはこれら繊維と200℃以下の融点を有するポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維等の低融点繊維との混合物等が挙げられる。
該繊維集合体は、不織布、フェルト、編織物、それらの積層物等のシート状のものであってもよいし、該シート状繊維集合体を小さく切断して得られる繊維小片や、あるいは綿状のもの、スライバ状のもの等であってもよい。該繊維集合体には、ポリエチレン粉末、ポリアミド粉末、ポリ塩化ビニリデン粉末、低融点ポリエステル樹脂粉末等のホットメルト粉末等が混合されてもよい。
上記プラスチック発泡体としては、例えば連続気泡構造を有するポリウレタン発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリスチレン発泡体、メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ系樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体等がある。該プラスチック発泡体は、自動車の内装材基材の原反として使用される場合には通常シート状で提供されるが、用途に応じてブロック状、粒状等任意の形状にされてもよい。
【0022】
〔成形可能材料の製造〕
本発明の成形可能材料を製造するには、上記多孔質材料に上記親水性フェノール系樹脂の初期縮合物水溶液を含浸せしめる。含浸方法としては、浸漬法、スプレー法等公知の方法が適用されるが、あらかじめ起泡および/または発泡させた該初期縮合物水溶液中に該多孔質材料を浸漬して抑圧し、該多孔質材料中に該初期縮合物水溶液を含浸させるのが好ましい。
このように起泡および/または発泡させた初期縮合物水溶液を使用すれば、該初期縮合物水溶液を水又は溶剤で希釈することなく、多孔質材料に対する該初期縮合物含浸量を調節することができ、したがって該多孔質材料中の水又は水溶性溶剤の量を減らして乾燥時間を短縮することができる。
上記初期縮合物水溶液を起泡させるには、該初期縮合物水溶液に空気吹込みを行うか、該初期縮合物水溶液を撹拌するが、好ましくはそれら両者を同時に行い、特に好ましくは、更に起泡剤、整泡剤、泡安定剤等を添加する。起泡剤、整泡剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルまたはアルキルアリル硫酸エステル塩やナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレンエキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のノニオン性界面活性剤、オクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体又はその塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等カチオン性界面活性剤や両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤、浸透剤、天然油脂誘導体、グリコール類等が使用され、泡安定剤としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸のナトリウム塩又はカリウム塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル樹脂の部分鹸化物、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、糖類、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸、長鎖脂肪酸アミド等 の油滑剤等が使用される。上記起泡剤、整泡剤、泡安定剤は二種以上併用されてもよい。
上記初期縮合物水溶液を発泡させるには、該初期縮合物水溶液に例えば重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、アジド化合物等の無機化合物、ニ卜ロソ化合物、アゾ化合物、スルホニル化合物等の発泡剤を添加し、該発泡剤の分解温度以上の温度に加熱するか、あるいはn−ペンタン、メタノール、メチルエーテル、エチルエーテル、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルフルオルメタン等の低沸点溶剤を添加混合し、該溶剤の沸点以上に加熱して発泡させる。この場合、該初期縮合物水溶液は撹拌することが望ましく、また起泡の場合と同様の起泡剤、整泡剤、浸透剤、泡安定剤等を添加してもよい。
上記空気吹込みおよび/または撹拌による起泡と、該発泡剤による発泡とは同時に行ってもよい。
上記初期縮合物水溶液の起泡又は発泡倍率は、通常0.8〜50倍、好ましくは2〜20倍とされ、一般的には該初期縮合物溶液を含浸させる多孔質材料が低密度の場合には気泡は粗くてもよいが、高密度の場合には気泡は細かい方が望ましい。
上記初期縮合物水溶液を上記多孔質材料に含浸させるには、例えば、起泡および/または発泡させた該初期縮合水物溶液を含浸槽に充填し、該含浸槽内に該多孔質材料を浸漬し、次いで該初期縮合物水溶液が付着した多孔質材料を絞りロール又はプレス盤等で抑圧する。あるいは、該多孔質材料を絞りロー ルに送り込む直前で、起泡および/または発泡させた初期縮合物水溶液を該多孔質材料の片面又は両面に供給する。この場合、該絞りロールの後段に更に一個又は二個以上の絞りロールを配置してもよい。また、絞りロールの配置は縦方向であっても横方向であってもよい。
このような押圧によって、多孔質材料に付着している起泡および/または発泡した初期縮合物水溶液は、該多孔質材料の内部にまで浸透する。
上記初期縮合物水溶液を含浸した多孔質材料は加熱乾燥工程に付されるが、この工程において、該初期縮合物はB状態にされる。該初期縮合物をB状態にとどめるには、該初期縮合物水溶液に添加する硬化触媒の量、加熱温度、加熱時間等を調節すればよく、通常加熱温度は40〜170℃程度、加熱時間は0.1〜5時間程度とされる。該加熱乾燥には、通常熱風乾燥、遠赤外線乾燥、高周波加熱乾燥等が適用される。
【0023】
このように多孔質材料に含浸された親水性フェノール系樹脂の初期縮合物をB状態にすることにより、該フェノール系樹脂の安定性が向上して成形材料の長期間保存が可能となるとともに、該フェノール系樹脂の水分含有量が少なくなるため、成形時間が短縮され、かつホットプレスによって成形した際にも水分の蒸気によるパンク現象が起らない。また、該成形材料をホットプレス成形した後には、該フェノール系樹脂は完全硬化するため、形状保持性及び耐熱性に優れた成形物が得られる。
【0024】
〔成形〕
本発明の成形可能材料はB状態の親水性フェノール系樹脂初期縮合物を含浸しているので成形性を有し、通常、所望の形状を有する下型及び上型を使用したホットプレスによって成形される。ホットプレスの条件は、該B状態のフェノール系樹脂が完全硬化する温度及び時間に設定され、プレス圧は通常1〜10kg/cm2とされる。このとき、他のシートと重ね合わせてホットプレスし、積層成形材としてもよい。
得られる成形材は、特に、ドアトリム、ダッシュボード、天井材、床材、インシュレーターフード、ダッシュインナー、ダッシュアウター、エンジンアンダーカバー、トランクサイドトリム等の車輌用の内装材、又は建築用材等に有用である。
【0025】
〔B.成形材〕
本発明の成形材は、基材の表面の一部又は全部にシート状の上記成形可能材料が貼着され、所定形状に成形されてなるものであり、該成形材にあっては該シート状の成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂は硬化しており、もって該シート状の成形材料は硬化シートとなっている。
該基材は、成形性を有するものであればいかなるものであってもよく、例えば、各種のプラスチック発泡体、パーティクルボード、ファイバーボード、フェルト、プラスチックシート、低融点繊維含有不織布、ガラスウール、石綿等が挙げられる。
該プラスチック発泡体としては、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン発泡体、ポリ塩化 ビニル発泡体、ポリスチレン発泡体、メラミン樹脂発泡体、尿素樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体等がある。
【0026】
該成形材の製造方法としては、第1に、図1に示すように、基材11を所定の形状に成形するとともに、シート状成形可能材料を該基材11の形状に適合する形状に硬化成形し、該成形した硬化シート12を該基材11の表面に貼着する方法がある。
該硬化シート12を該基材11の表面に貼着するには、接着剤を使用すればよく、あるいは該基材11が熱可塑性の材料からなる場合には、加熱融着すればよい。
第2には、図2に示すように、シート状成形可能材料12aと、基材の成形前の原体11aとを重ね合わせ、所定の形状を有する上型13と下型14とでホットプレス成形する方法がある。このとき、基材(原体)の材料によっては、該硬化シート12aと該基材原体11aとの問に、ホットメルトシートや天然樹脂、天然ゴム、合成樹脂、合成ゴム等の接着剤を介在させてもよい。
第3には、図3に示すように、シート状成形可能材料をあらかじめ所定の形状に硬化成形し、該成形した硬化シート12を成形型15の型面151にセットするとともに、樹脂注入口152から該成形型15内に発泡樹脂液Rを注入、硬化する方法がある。
発泡樹脂液Rの種類としては、例えば、ポリウレタン発泡樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン発泡樹脂、ポリ塩化ビニル発泡樹脂、ポリスチレン発泡樹脂、メラミン発泡樹脂、尿素発泡樹脂、フェノール発泡樹脂等がある。
以上のようにして得られる本発明の成形材は、種々の用途に用いることができ、例えば、壁材;ベッドの芯材;椅子、ソファー、シート等のクッション材;内装材;各種パッド等として好適である。
本発明の成形材において基材の表面に貼着された硬化シートは、単なる繊維シートと異なり成形性に優れるため、該成形材は所望の形状に成形することができる。
【0027】
〔C.内装材〕
本発明の内装材は、上記成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂初期縮合物を硬化してなる基材と、該基材の表面に貼着されている表皮材とからなるものである。
該表皮材としては、例えば、人工皮革、レザー、繊維編織物、不織布、あるいはこれらとポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体等のプラスチック発泡体との積層材等がある。
該表皮材は、接着剤によって上記基材に貼着される。該接着剤としては、アクリル系接着剤、合成ゴム系接着剤、エラストマー系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等、通常使用される接着剤である。該接着剤は溶液型あるいはエマルジョン型として提供される。
更に上記接着剤層に使用される接着剤としては、ホットメルト型接着剤がある。該ホットメルト型接着剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系樹脂、あるいは該ポリオレフィン系樹脂の変性物、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の単独又は二種以上の混合物が使用される。
該ホットメルト接着剤は溶液型、エマルジョン型として提供される他、該ホットメルト接着剤粉末を水に分散させた分散液型としても提供される。
上記接着剤層は表皮材および/または基材の接着面に点状に散在されているのが好ましい。このように、表皮材と基材とを点状に散在している接着剤層によって接着すれば、該接着剤層の剛性は内装材の成形形状や表面の凹凸形状に影響せず、したがって該内装材の成形形状や表面の凹凸形状がシャープに成形される。また表皮材が通気性を有する場合は、該接着剤層も通気性を有するので、優れた防音性を有する内装材が得られる。
該表皮材および/または基材の接着面に接着剤層を点状に散在せしめるには、例えばスプレー塗装法、凸版印刷法、シルクスタリーン印刷法等が適用されるが、接着面にマスキングシートを被着しておいてからスプレー、ナイフコーター、ロールコーター、フローコーター等で接着剤を塗布し、その後マスキングシートを剥離する方法が適用されてもよい。
上記表皮材および/または基材の接着面に接着剤層を点状に散在させる望ましい方法としてはホットメルト接着剤粉末分散液をスプレー塗布する方法である。
【0028】
上記ホットメルト接着剤粉末分散液に使用される該ホットメルト接着剤粉末は通常20〜400メッシュ程度のサイズの粉末とされ、該ホットメルト接着剤粉末は通常水に5〜60重量%の範囲で分散される。該水には例えばメチルセルロース、メトキシセルロース、エチルセルロース、エトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤の一種又は二種以上、例えば高級アルコールサルフェート(Na塩又はアミン塩)、アルキルアリルスルホン酸塩(Na塩又はアミン塩)、アルキルナフタレンスルホン酸塩(Na塩又はアミン塩)、アルキルナフタレンスルホン酸塩縮合物、アルキルホスフェート、ジアルキルスルホサクシネート、ロジン石鹸、脂肪酸塩(Na塩又はアミン塩)等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキロールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアマイド、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤、オクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体又はその塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルア ミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等のカチオン性界面活性剤等の界面活性剤の一種又は二種以上が分散剤として添加されてもよい。上記分散剤としては、特に曳糸性増粘剤を使用することが望ましい。該曳糸性増粘剤としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アルギン酸等のナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、ポリエチレンオキサイド等の水溶性合成高分子、トロロアオイ、グルテン、ビロウドアオイ、ノリウツギ等の植物性粘質物からなる水溶性天然高分子があり、特に望ましい曳糸性増粘剤としてはポリアクリル酸ナトリウムがある。上記曳糸性増粘剤の添加量はその分子量によって左右され、通常スプレー時の該ホットメルト接着剤粉末分散液の粘度が50〜10000cps/25℃になるように添加される。例えば粘度平均重合度が約38000のポリアクリル酸ナトリウムの場合の添加量は0.01〜1.0質量%程度である。
【0029】
更に上記ホットメルト接着剤粉末分散液には例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の合成樹脂エマルジョンやアクリルゴム、ブチルゴム、ケイ素ゴム、ウレタンゴム、フッ化物系ゴム、多硫化物系ゴム、グラフトゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテンゴム、イソプテン−イソプレンゴム、アタリレート−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水素添加ポリオレフィン−スチレン共重合体やプタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ゴム中間ブロック−スチレン共重合体等のブロック共重合体等の合成ゴムやエラストマーの粉末やエマルジョンが添加されてもよい。更に必要ならば炭酸カルシウム、タルク、石膏、カーボンブラック、木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉等の充填剤、増粘剤、顔料、染料、難燃剤、防炎剤、防虫剤、防腐剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光染料、界面活性剤、発泡剤、パラフィン、ワックス、シリコーン等の軟化剤や撥水剤、あるいは離型剤や可塑剤等を添加してもよい。
上記ホットメルト接着剤粉末分散液を表皮材および/または基材の接着面にスプレー塗布する場合、該表皮材および/または基材を裏側から吸引することによって該ホットメルト接着剤粉末のスプレー時の衝撃による跳ね返りを防止し、該ホットメルト接着剤粉末を接着面に吸着することが望ましい。該ホットメルト接着剤粉末分散液のスプレー塗布量は通常固形分として5〜100g/m2である。上記曳糸性増粘剤を使用するとホットメルト接着剤粉末分散液は曳糸性のある構造粘性を有するようになるので、スプレーするとミスト状に分散されず、団塊状飛沫になって接着面に付着する。このような団塊状飛沫は接着面にけば(毛羽)があってもけば(毛羽)の間に入り込まず、けば(毛羽)表面に付着する。したがって乾燥後は接着面表面にホットメルト接着剤粉末が効率良く付着した状態が得られる。
【0030】
以上のように表皮材および/または基材の接着面にホットメルト接着剤粉末分散液をスプレー塗布した後、該表皮材および/または基材は加熱乾燥せしめられ、該ホットメルト接着剤粉末は接着面に融着する。該加熱乾燥の条件は通常使用されるホットメルト接着剤の融点以上の温度で100〜200℃、5秒〜5分程度である。
上記接着剤層によって該表皮材は該基材表面に貼着されるが、該接着剤が溶液型あるいはエマルジョン型の場合には、接着面に形成された接着剤層が完全に乾燥する前に両者を貼り合わせる。また該接着剤層がホットメルト型の場合には、接着面を加熱して接着面に形成された接着剤層を軟化させた上で両者を貼り合わせる。
該基材の成形は該表皮材を貼り合わせる前、あるいは該表皮材を貼り合わせる時同時に、あるいは該表皮材を貼り合わせた後のいずれの時点で行われてもよい。
上記表皮材が通気性でありかつ基材に表皮材を貼り合わせてから成形する場合には、該基材に含まれている空気、あるいは該基材に含まれている合成樹脂から発生するガス(例えばフェノール樹脂の場合にはホルマリンガス、多価イソシアナートの場合には水又は炭酸ガス)は成形時に点状接着剤層を通過して表皮材から順調に外界へ排出されるので、製造される内装材にはパンク現象が発生せず、また残存ガスによる臭気の問題も解消される。
本発明の内装材は、種々の用途に使用することができ、例えば、自動車のトランクルーム内装材やダッ シュボード内装材等として好適である。該内装材において、特に表皮材と基材とを点状に散在している接着剤層によって接着した場合には、該接着剤層の剛性は内装材の成形形状や表面の凹凸形状に影響せず、したがって該内装材の成形形状や凹凸形状がシャープに成形される。また表皮材が通気性の場合は該接着剤層も通気性を有するので、得られる内装材は優れた防音性を有する。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
〔実施例1〕
温度計、冷却管、および攪拌機を備えた反応容器中に、フェノールを1モル、37%ホルムアルデヒドを1.8モル、水酸化ナトリムを0.02モル、および親水基としてスルファニル酸ナトリウムを0.2モル添加し、70℃で5時間反応後、アルキルレゾルシノールを0.2モル添加し、さらに70℃で2時間反応させ、初期縮合物(A)を得た。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1と同様の反応容器中に、p−クレゾールを1モル、37%ホルムアルデヒドを2.0モル、アンモニアを0.1モル、および親水基としてn−テトラデシル硫酸ナトリウムを添加し、65℃で8時間反応後、5−エチルレゾルシンを0.3モル、錯化剤としてアセトンを0.15モル添加し、さらに60℃で3時間反応させ、初期縮合物(B)を得た。
【0034】
〔比較例1〕
実施例1において、親水基を除いた他は同様にして初期縮合物(C)を得た。
【0035】
〔水溶性および安定性の検証〕
実施例1,2、比較例1により得られた初期縮合物(A)、(B)、(C)を用い、pH調整試薬として酢酸および苛性ソーダを用いて各pHに調整した。そして、各pHに調整したものについて水希釈性を調べて水溶性を検証するとともに、安定性を検証した。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果より、本発明による溶液は、酸性〜アルカリ性側での水溶性および安定性に優れていることが分かった。
【0038】
〔実施例3〕
実施例1で得られた初期縮合物(A)の50質量%水溶液、および0.5質量%のラウリルジメチルアミンオキシドを添加溶解し、図4に示す起泡タンク21に充填する。該水溶液Sは該起泡タンク21内において撹拌機22によって撹拌されつつ空気吹込みノズル23から空気を吹込まれ起泡せしめられる。この場合の発泡倍率は8倍とする。
このようにして起泡せしめられた該水溶液Sはバルブ24を開いて排出管25から浸漬槽26に供給される。多孔質材料211 はポリエステル繊維:竹繊維=6:4の混合繊維からなるニードルパンチ不織布であって目付500g/m2であり、該多孔質材料211 はガイドロール27A,27B,27C,27Dを介して該浸漬槽26に浸潰され、該浸漬槽26内の該水溶液Sを付着せしめられ、それから絞りロール28によって押圧され該多孔質材料211に付着している該水溶液Sは該多孔質材料211 の内部にまで浸透せしめられる。
該水溶液Sを含浸した多孔質材料211 は次いで乾燥室29に導入され、該乾燥室29において80℃の熱風により10分間加熱乾燥され、該多孔質材料211内に含浸されている親水性アルキルレゾルシノール−ホルムアルデヒド初期縮合物は若干縮合してB状態とされる。該多孔質材料211 の合成樹脂含浸量は15質量%である。
得られた成形可能材料211Aは加熱乾燥後、カッター210によって所定寸法に切断され、図5に示すように表皮材212と共に上型215Aと下型215Bとからなる熱圧成形機215にセットされる。該表皮材212はポリプロピレンニードルパンチ不織布からなり、裏面にはポリエチレンフィルム213が裏打ちされている。
該成形可能材料211Aは該熱圧成形機215によってホットプレスされ、同時に該表皮材212 をポリエチレンフィルム213 を介して圧着せしめられる。該ホットプレス条件は、プレス温度180 ℃、プレス圧3g/m2、プレス時間0.5分である。
このようにして図6に示すような自動車の天井材214 が製造される。
【0039】
〔実施例4〕
実施例2で得られた初期縮合物(B)の98.5質量%水溶液に1質量%のラウリル硫酸ナトリウム及び酸化チタン0.2質量%、ポリビニルアルコール0.5質量%、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン4質量%を添加混合し、図4に示す起泡タンク21に充填し、撹挫機22によって撹拌しつつ空気吹込みノズル23から空気を吹込み起泡せしめる。この場合の発泡倍率は3倍とする。
上記起泡物を多孔質材料であるポリウレタン発泡体シートに実施例3と同様に浸透させた後60℃の熱風で5分間加熱乾燥し、含浸されている上記初期共縮合物を若干縮合してB状態とする。該ポリウレタン発泡体シートに対する上記B状態の共縮合物の含浸量は15質量%であった。
得られた成形材料を200℃で1分間熱成形したところ剛性の良好な成形物が得られた。
【0040】
〔実施例5〕
フェノール−アルキルレゾルシノール−ホルムアルデヒドとの初期共縮合物であって、該フェノールとアルキルレゾルシノールの合計1モルに対して1モルの−COOH基を導入した親水性初期縮合物の65質量%水溶液に0.1質量%の塩酸と0.5 質量%のラウリルジメチルアミンオキシドを添加溶解し、図4に示す起泡タンク21に充填する。該水溶液Sは該起泡タンク21内において攪拌機22によって撹拌されつつ空気吹込みノズル23から空気を吹込まれ起泡せしめられる。この場合の発泡倍率は6倍とする。
上記起泡物を実施例3と同様の多孔質材料211 に実施例3と同様に浸透させた後80℃の熱風で5分間加熱乾燥し、含浸されている上記初期共縮合物を若干縮合してB状態とする。該多孔質材料211 に対する上記B状態の共縮合物の含浸量は20質量%である。
得られた成形材料211 は、加熱乾燥後カッター210 によって所定寸法に切断され、次いでプレス温度を200℃とする以外、実施例3と同様にしてホットプレスされる。
このようにして図6に示すような自動車の天井材214 が製造される。
【0041】
〔実施例6〕
実施例2で得られた初期縮合物(B)が10.0質量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合ゴムラテックス(固形分40%)が60質量%、ホルムアルデヒド(37%)が15質量%、水が15質量%からなる混合樹脂溶液に、目付量50g/mのスパンボンド法によるポリエステル繊維不織布を、該ポリエステル繊維の20%の付着量となるように浸漬させた後、120℃で2分乾燥させ、樹脂繊維シートを得た。次に、天然ゴムからなる厚さ2mmの未加硫ゴムシートの両面に該樹脂繊維シートを重合し、熱圧プレス機にて145℃×15分、20kg/cm加圧し該未加硫ゴムを加硫させたところ、該樹脂繊維シートとゴムとの接着性に優れた成形シートが得られた。この実施例6においては、初期縮合物(B)に各種の添加物を混合した加工液としても、pHの変化にかかわらず加工液は安定していた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の成形材を製造する工程の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の成形材を製造する工程の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の成形材を製造する工程の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の成形材料を製造する工程を示す説明図である。
【図5】本発明の成形材料を成形する工程を示す説明図である。
【図6】本発明の成形材料を成形して得られる成形物(自動車天井材)の斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
11 基材
11a 基材原体
12 硬化シート
12a シート状成形可能材料
13 上型
14 下型
15 成形型
151 型面
152 樹脂注入口
21 起泡タンク
22 撹拌機
23 空気吹込みノズル
24 バルブ
25 排出管
26 浸漬槽
211 多孔質材料
27A〜27D ガイドロール
28 絞りロール
29 乾燥室
210 カッター
211A 成形可能材料
212 表皮材
213 ポリエチレンフィルム
214 自動車の天井材
215 熱圧成形機
215A 上型
215B 下型
R 発泡樹脂液
S 水溶液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール系化合物とアルデヒドおよび/またはアルデヒド供与体との縮合物であるフェノール系樹脂であって、該フェノール系樹脂の一部又は全部にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基以外の親水基が導入されていることを特徴とする親水性フェノール系樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の親水性フェノール系樹脂の初期縮合物を含浸した多孔質材料からなり、該初期縮合物はB状態とされていることを特徴とする成形可能材料。
【請求項3】
該成形可能材料はシート状である請求項2に記載の成形可能材料。
【請求項4】
基材と、該基材の表面の一部又は全部に貼着されている請求項3に記載のシート状の成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂の初期縮合物を硬化した硬化シートとからなり、所定形状に成形されていることを特徴とする成形材。
【請求項5】
請求項3に記載の成形可能材料中の親水性フェノール系樹脂を硬化した硬化シートからなる基材と、該基材の表面に貼着されている表皮材とからなることを特徴とする内装材。
【請求項6】
該基材と該表皮材とは、接着面に点状に散在されている接着剤層によって接着されている請求項5に記載の内装材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−173808(P2009−173808A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15319(P2008−15319)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】