親水性ポリマーで被覆されたカバー膜層を含む酵素センサー
本開示は、多孔質ポリマー性材料のカバー膜層を含む改善された酵素センサーであって、該多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリマー、具体的には、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで被覆されている酵素センサーに関する。該センサーは、生物学的被検体、例えば、グルコース、ラクテート、クレアチン、クレアチニン等の存在または量を決定するのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ポリマー性材料のカバー膜層を含む改善された酵素センサーであって、多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリマーで被覆されている酵素センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
酵素センサーは、測定される化学種(被検体)が、検出前にそのセンサー中において酵素で触媒される反応を起こすセンサーである。被検体と酵素(被検体が基質である場合)または酵素カスケードとの反応は、(理想的な条件下における)濃度が、被検体の濃度に比例するまたはそれと一致する第二種を生じる。次に、その第二種の濃度を、変換器によって、例えば、電極によって検出する。
【0003】
酵素センサーの酵素は、典型的には、流体試料に接触するのに適するセンサー膜中に包含される。最も典型的には、酵素は、センサー膜の別々の酵素層中に包含されるが、それは、カバー膜によって流体試料から隔てられている。したがって、被検体は、センサーのカバー膜を介して拡散後に酵素と接触し、次に、酵素/被検体反応が起こり、そして次に、第二種がセンサーの検出器部分、例えば、電極へと拡散して、被検体濃度に関連した応答を生じる。
【0004】
酵素センサーにおいて、カバー膜は、一方では、被検体が流体試料から酵素層へと制御方式で拡散するような適する多孔度を有するべきである、すなわち、被検体についての拡散抵抗は、好ましくは、被検体の第二種への変換が、被検体濃度によって制限されるにすぎないようなものであるべきである。
【0005】
もう一方において、カバー膜は、カバー膜の両側のタンパク質に、具体的には、酵素層の酵素に不浸透性または実質的に不浸透性であって、流体試料中への酵素の浸出を免れるはずである。
【0006】
酵素センサーに有用な多孔質カバー膜には、トラックエッチング処理済み(track-etched)膜(すなわち、不連続の、貫通している細孔が、原子衝撃後のエッチングによって生じている膜)、およびくねり細孔(すなわち、連通した細孔セルで形成される細孔)を有する溶液流延膜が含まれる。後者は、溶媒中に溶解した材料を不連続の薄膜としてまたは現場で流延することによって製造することができるが、その場合の材料は、大部分が容易に洗浄除去されうることで細孔が形成されるような化合物を含んでよい。
【0007】
トラックエッチング処理済みカバー膜を含む慣用的な酵素基剤センサーは、大形分子(すなわち、約1,000ダルトンを上回る分子量)が、その細孔を介して拡散可能であるということに関していくつかの問題を有する。
【0008】
図4のAおよびBは、酵素基剤センサーについて、大形のトラックエッチング処理済み細孔を含有するカバー膜の問題を示している。酵素(25)が、多孔質カバー膜(26)の細孔中にどのように移行しうるかを理解することができる。いろいろな程度の充填(27)は、感度の変動をもたらす。センサー線形性は、例えば、カバー膜の外側に浸透する酵素(28)によって影響されることがありうるし、または高レベルおよび低レベル試料中の被検体が、二つの異なった酵素集団(低被検体レベルでの活性酵素(33)および高被検体レベルでの活性酵素(32))で分解されているという理由で影響されることがありうる。試料の側から、血液タンパク質(31)は、細孔に入り且つ細孔壁上に沈殿し、それによって、被検体の拡散係数を減少させ、したがって、血液試料測定時にセンサー感度を減少させることがありうる。更に、細孔中に血液タンパク質が単に存在するだけで、血液バイアスが生じることがありうる。もう一つの問題は、特に、トラックエッチング処理済み膜が用いられる場合の酵素層中の被検体の分布に関する。
【0009】
基底酵素層からの活性酵素が、多孔質カバー膜中にまたはそれを介して移行可能である場合、それは、別の問題を引き起こすかもしれない。第一に、カバー膜を介する酵素の損失(29)は、センサーユニットの寿命を減少させる。第二に、酵素が、膜の細孔中に移行する場合(27)、それは、いろいろなセンサーごとの感度を生じるであろう。更に、センサーの感度は、沈殿/溶解が平衡に達するまで、最初の数日にわたって変化する傾向もある。このような変化は、センサー性能を変動させるので好ましくない。酵素が、膜の外側に浸透する場合(28)、その酵素は、流体試料中においてその酵素作用を行うことが可能であろう。しかしながら、このような場合、第二種(例えば、H2O2)に変換される被検体(例えば、グルコース、ラクテート、クレアチン、クレアチニン)の量は、第一被検体の濃度に線形的に相関しないが、それは、Kmおよび他の可能性のある基質(例えば、O2)の濃度のような他の因子も、変換速度に影響するからである。
【0010】
流体試料からのタンパク質(例えば、血液タンパク質)が、カバー膜の細孔中に通過可能である場合(31)、それらタンパク質は、細孔の液体カラム中に残るので、酵素層中への被検体について、面積を低下させ且つ拡散長さを増加させるであろう。したがって、センサーは、いろいろなタンパク質含有率を有する流体試料の被検体についていろいろな感度を有するであろう。この現象を、血液バイアスと称するが、それは、カバー膜の細孔を占有する血液成分によって引き起こされ、それによって、カバー膜の細孔、ひいては、酵素膜それ自体の細孔に、より高い(しかしながら、いろいろな)有効な拡散抵抗が与えられる。
【0011】
更に、細孔の表面が、全く血液適合性でない場合、それらタンパク質は、細孔内部を含めた膜表面上に沈殿し(30)、そして被検体が酵素層中へと十分に拡散する面積を徐々に小さくする(有効な細孔サイズを徐々に減少させる)ことがありうる。この現象を、血液ドリフトと称するが、それは、細孔の内面上に沈殿し、ひいては、感度を減少させる血液成分(具体的には、タンパク質および脂質)によって引き起こされる。
【0012】
これら作用(血液バイアスおよび血液ドリフト)は双方とも、既知の酵素センサーが、しばしば、水性液で検量されるし、しかもそれらは、血液試料を測定するためのものであるという理由で、血液分析器のセンサーには、特に望ましくない。
【0013】
慣用的な溶液流延膜も、センサーの変動性、線形性、酵素層中の不十分な被検体分布等のような上記のタイプの問題を引き起こす。
更に、酵素センサーに有効なすすぎ溶液、具体的には、プロテアーゼ(例えば、ズブチリシン)を含むすすぎ溶液を使用することが望まれる。更に、このようなプロテアーゼは、酵素層中に浸透不能であることが重要である。
【0014】
US4,919,767号は、被検体を通過させる能力を有すると同時に、試料の他の種を拒絶する液体を充填した多孔質材料の液状膜と酵素層を含む酵素センサーを開示している。
【0015】
US6,413,393号は、UV吸収性ポリマー、例えば、ポリ(アルキレングリコール)およびポリ(アルキレンオキシド)などの親水性セグメントを含む変異体を含めた、ポリウレタン、ポリ尿素またはポリウレタン/ポリ尿素コポリマーを包含する少なくとも一つの機能性コーティング層を含むセンサーを開示している。そのセンサーは、酵素層と、二つの機能性層、例えば、被検体制限層および生体適合性層を含んでよい。
【0016】
US2003/0217966A1号は、同じタイプのもの、すなわち、ポリエーテルウレタン尿素であってよい別のポリマーのミクロドメインの網状構造を有するポリウレタン(具体的には、ポリエーテルウレタン尿素)母材を包含する、それによって被検体の輸送を調節する植込み可能膜を開示している。
【0017】
US6,652,720B1号は、少なくとも一つの電極と複合膜を有する電気化学センサーを開示している。その複合膜は、ポリウレタン基剤化合物、例えば、異なった水吸収性を有するポリウレタンの混合物を含む拡散制御用外層を含む。
【0018】
US2002/065332A1号は、多孔質ポリマーまたは親水性可塑剤を、親油性ポリマー、例えば、ポリウレタンとの組合せで含むポリマー性参照電極膜を開示している。
【0019】
US6,350,524B1号は、親水性ポリウレタンから形成される保護膜と、不溶性金属塩層を含む、塩化物選択的電極用の固体状態膜を開示している。
US6,200,772B1号は、非イオン界面活性剤、例えば、脂肪族ポリエーテルで修飾されたポリウレタンを含む膜を有するセンサーデバイスを開示している。
【0020】
US5,322,063A号は、親水性ポリウレタン組成物の均一膜を開示している。その膜は、グルコース酵素センサーに有用である。
WO2003/076648A1号は、酵素およびメディエーターを含むポリマー(例えば、脂肪族ポリエーテルウレタン)の均一層を有する平面厚手皮膜バイオセンサーを開示している。
【0021】
US2004/0154933A1号は、電気化学センサーに用いるためのポリマー性膜を開示している。その膜は、例えば、ポリウレタンと混合された、カルボキシル化ポリ塩化ビニルを含有する。
【0022】
WO2004/062020A2号は、燃料電池用の、多孔質ポリマー性材料、例えば、フォームのガス拡散層を開示している。その材料は、ポリウレタンフォームまたはポリエーテルポリウレタンフォームであってよい。同様に、US2004/0001993A1号は、燃料電池用のガス拡散層を開示している。
【0023】
EP1486778A2号は、その中に包括された生物活性剤、例えば、酵素を有するポリマーの膜を含む電気化学バイオセンサーを開示している。
WO92/04438A1号は、疎水性プラスチック層、例えば、ポリウレタン層の基質制限層を有する電気化学バイオセンサーを開示している。
【0024】
EP0025110A2号は、例えば、ポリ塩化ビニルの非対称半透膜を有する電気化学センサーを開示している。
US2004/0011671A1号は、酵素層と、生体保護膜、例えば、ポリウレタン層、そして例えば、PTFE、PVF、セルロースエステル、PVC、ポリプロピレン、ポリスルホンまたはポリ(メチルメタクリレート)の血管新生性外層を有する植込み可能デバイスを開示している。
【0025】
WO90/05910A1号は、酵素層と、「被検体減衰層」、例えば、ポリウレタン層を含む完全微小成形加工(wholly microfabricated)バイオセンサーを開示している。
WO96/26668A1号は、ポリウレタンまたはシリコーンでコーティングされていてよい軟質細管膜であって、酵素センサー、例えば、グルコースセンサーと接触しているチャンネルに連通している細管膜を含む植込み可能センサーシステムを開示している。
【0026】
US5,523,118号は、経皮ドラッグデリバリーシステムのための微孔質膜を開示している。その微孔質膜は、例えば、ポリ塩化ビニルから製造することができ、そして接着剤適合性のウレタン系ポリマー、例えば、脂肪族ポリエーテルウレタン分散液から形成される実質的に多孔質のコーティングでコーティングされる。そのウレタン系ポリマーは、微孔質膜の表面をコーティングするが、その細孔をブロックすることはない。
【0027】
US6,509,148号は、酵素と混合された親水性ポリウレタンを利用したバイオセンサーを開示している。
JP2655727B2号は、ポリウレタンまたはセルロースアセテートの基質制限層またはこれらの二重層と、ポリビニルアルコール(PVOH)の生体適合性外部皮膜を有する酵素センサーを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上記を考慮すると、酵素および他のタンパク質および第二被検体に有効なバリアを与え、そしてなお、酵素層への第一被検体の優れた且つ安定な拡散制御を与えるカバー膜を有する改善された酵素センサーが、依然として要求される。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、流体試料中の被検体の濃度を決定する酵素センサーであって、電極、少なくとも一つの酵素層、およびその少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリマーで被覆されている酵素センサーを提供することにより、既知の酵素センサーに関連した上述の少なくとも若干のまたは全ての問題を減少させるまたは排除さえもするということが判明した。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0030】
更に、例えば、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートを用いて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の外部表面および細孔口を被覆する場合、多孔質ポリマー性材料の異なった多孔度に依存して、親水性ポリマーの拡散性を調節して、異なった試料被検体濃度範囲に適する酵素膜を製造するための所望の拡散制限を得ることが可能である。
【0031】
上述の改善とは別に、前記カバー膜を有するセンサーは、プロテアーゼを含む液体で洗浄することが可能であるということも判明したが、既知のセンサーは、典型的には、プロテアーゼ不含の洗浄液を必要とする。
【0032】
本発明は、更に、新規な膜、および記載の酵素センサーのカバー膜を洗浄する方法を提供する。
発明の詳細な説明
本明細書中に記載のように、本発明は、流体試料中の被検体の濃度を決定する新規な酵素センサーを提供する。
【0033】
本明細書中に記載のように、「酵素センサー」という用語は、概して、問題の被検体を第二種へと変換することができる酵素(または酵素カスケード)を含む電気化学センサーを包含するものである。問題の被検体は、可能性のある流体試料成分である。すなわち、酵素センサーは、典型的には、流体試料中の被検体の濃度を測定するのに用いられる。「被検体」は、本明細書中において時々、「酵素基質」または簡単に「基質」とも称される。
【0034】
本発明のセンサーは、典型的には、多使用(multi-use)センサーである。多使用センサーとは、二つ以上の測定に用いられるセンサーとして理解されるはずであり、したがって、2種類以上の試料容量に曝露され、そして検量液、洗浄液等と断続接触することもありうる。このようなセンサーは、通常は、より長い時間用いられる。したがって、上述の問題、例えば、寿命、酵素移動による試料ごとの感度、血液ドリフト、血液バイアス等は、既知の多使用センサーの場合に特に顕著となるであろう。単一使用(single use)センサーについては、本発明は、血液バイアス、被検体分布等の問題を解決するか、または軽減するであろう。
【0035】
流体試料は、主に、センサーに、具体的には、カバー膜に適合性であるいずれかの液体(好ましくは、水性液)でありうる。流体試料には、尿、唾液、間質液、髄液および血液などの体液が含まれる。血液には、全血試料、希薄血液試料、血液画分、反応前血液試料等が含まれる。センサーは、具体的には、全血試料に十分に適している。
【0036】
本発明のセンサーは、慣用的なタイプのものであってよいし、または平面タイプのもの、例えば、厚手皮膜センサーまたは薄膜センサーであってよい。このようなセンサーの酵素膜は、しばしば、積層構造体であり、積層膜と称される。
【0037】
慣用的なタイプの酵素センサーの場合、膜、例えば、多層膜であって、例えば、支持層、酵素層およびカバー膜を含むものは、典型的には、離散物体として組み立てられた後、それを、電極と接続して配置する(すなわち、概して、その先端に取り付ける)。例えば、図1を参照されたい。このような多層膜の構築方法は、当該技術分野において周知である。例えば、WO98/21356号を参照されたい。慣用的なタイプの酵素センサーは、トラックエッチング処理済み膜、更には、溶液流延膜を包含することができる。
【0038】
平面タイプの酵素センサー、例えば、厚手皮膜センサーおよび薄膜センサーの場合、酵素層およびカバー膜を含む酵素膜と電極は、電極、いずれかのスペーサー層および一つまたは複数の中間層、酵素層、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料および親水性ポリマーに該当する材料を(典型的には、逐次的に且つ個々に)、固体の誘電性支持体、例えば、セラミックまたはウェファー材料上に付着させることによって配置される。平面センサー構築の一例を、図3に示す。平面タイプセンサー、例えば、厚手皮膜センサーおよび薄膜センサーの構築方法は、当該技術分野において周知である。例えば、WO01/90733号、WO01/65247号およびWO90/05910号を参照されたい。このようなセンサー膜の層に該当する材料は、ほとんど、溶液流延によって付着される。
【0039】
本発明の酵素センサーは、電極、少なくとも一つの酵素層、およびその少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口は、親水性ポリマーで被覆されている。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0040】
カバー膜
酵素センサーのカバー膜は、例えば、一定の十分に規定された典型的な量の被検体を、酵素層中に確実に拡散させることにより、すなわち、制御条件下において、酵素センサーの品質に重要な役割を果たしている。このような被検体で制限される変換は、センサー応答と、妥当な範囲内の被検体濃度との間に実質的線形関係を得るための前提条件である。
【0041】
したがって、本発明の酵素センサーは、酵素層を流体試料から分離するのに適応しているカバー膜の形の拡散制限層を含む。そのカバー膜は、被検体の変換のための固定化酵素の能力を超えないように、および被検体の酵素変換に十分な酸素(O2)が酵素層中に存在するように、酵素層中への被検体の拡散を制限する多孔質膜である。拡散制限層の原理は、例えば、デンマーク特許第170103号に記載されている。
【0042】
更に、カバー膜を介する被検体の拡散は、二つの別々の流体試料の同一被検体濃度が、十分に規定されたセンサー応答を生じるように、時間経過中におよび試料ごとに不変であるということが望まれる。更に望まれるのは、カバー膜が、その膜を越えて少量の被検体を急速拡散させることが可能であるという特徴であり、それによって、酵素層中の被検体の一様分散が容易になるので、酵素層の酵素は、被検体を第二種へと速やかに変換して、急速センサー応答を生じる。酵素による被検体のこのようなほぼ同時の変換は、改善された線形性をもたらす。更に、流体試料中に存在する巨大分子、例えば、タンパク質および酵素は、カバー膜を越えて移動するのを実質的に妨げられることが望ましい。例えば、洗浄溶液または血液試料中に存在するプロテアーゼは、このようなプロテアーゼが、カバー膜中におよびそれを介して移動することが可能である場合、酵素層に有害な作用を有するであろうということが注目された。
【0043】
もう一方において、カバー膜は、センサー内の第二種(例えば、H2O2およびO2)の高い保持性を与えることが可能であるということも重要であり、その結果、その第二種に由来する応答は、カバー膜の細孔を介して拡散し通すそれら種の実質的な量によって偏ることがないし、そして被検体で制限される変換を維持するための十分な量のO2が、酵素層中に保持される。これら特徴は、具体的には、拡散制限作用を有する中間層が、酵素層と電極との間に配置されるかどうかを考慮するのに関係がある(下を更に参照されたい)。
【0044】
これら好都合な特性のいくつかを有するカバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれるがこれに制限されるわけではない親水性ポリマーで被覆される場合に達成される。
【0045】
その少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、かなり広範囲の材料から選択することができる。代表的な例には、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PETP)、グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート(PETG)およびグリコール修飾ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)など)、ポリカーボネート、セルロース(再生、アセテート、トリアセテート、アセテートブチレート)、ポリオレフィンおよびそれらの誘導体、フッ素化炭化水素ポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー)、ポリイミド(例えば、Kapton)、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニルおよびその誘導体(塩化ビニルコ(メタ)アクリレート型コポリマーなどのコポリマーを含む)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン、およびオルガノシロキサンポリカーボネートのコポリマー(例えば、US3,189,662号に開示されたもの)が含まれる。
【0046】
本発明のある側面において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択される。
一つの態様において、多孔質ポリマー性材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)である。
【0047】
別の態様において、多孔質ポリマー性材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)である。
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリウレタンを含まないということが好適であるが、それは、このような材料が、特に、拡散制限作用を有する中間層が包含される場合、過剰レベルのH2O2拡散を与えるであろうと考えられるからである。
【0048】
カバー膜(そして更に、その少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料)は、二つの面、すなわち、酵素層に近接する一面および酵素層に遠位の一面を含むが、後者は、更に、酵素センサーが使用中の時に、流体試料に面している。上述のように、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面は、親水性ポリマーで被覆されている。
【0049】
本発明のある側面において、少なくとも、酵素層に遠位の面は、親水性ポリマーで被覆されている。この側面は、血液バイアスおよび血液ドリフトの減少または排除に関する利点を与え且つセンサーの寿命を延長する。
【0050】
別の側面において、少なくとも、酵素層に近接する面は、親水性ポリマーで被覆されている。変化する感度、線形性の欠如、酵素層中の被検体分布、および減少した寿命に関する問題は、この方法で減少させるまたは排除することができると考えられる。少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、例えば、適する血液適合性を有する多孔質ポリマー性材料を選択することによって適切に選択される場合、血液バイアスおよび血液ドリフトに関する問題は、酵素層に遠位の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の面の外部表面および細孔口を被覆している親水性ポリマーの不存在下においてさえも、少なくとも一部分減少させることができる。
【0051】
好ましい態様において、双方の面は、親水性ポリマーで被覆されている。この態様は、血液バイアスおよび血液ドリフトの減少または排除さえも、酵素層中の被検体分布、感度および線形性の改善に関する利点を与え、センサーの寿命を延長し、酵素の移動を制限し、そして線形性を改善する。
【0052】
図5のAおよびBは、図4のAおよびBと比較したところ、親水性ポリマー、例えば、親水性ポリウレタンまたは親水性ポリ(メタ)アクリレートの(両面)コーティングが、トラックエッチング処理済み膜を含む慣用的なセンサーの問題をどのように解決するかを示している。カバー膜が、親水性ポリマー、例えば、親水性ポリウレタンの層中に埋封されている場合(34)、上述の問題は、酵素層からの大形分子、すなわち、酵素と、流体試料からの血液タンパク質または他のタンパク質が、親水性ポリマーの層に入るまたはそれを通過することができないという理由で、全て軽減される。
【0053】
「外部表面および細孔口」という表現は、細孔口(細孔開口部)で中断される表面である少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の各々二つの面を意味する。
本文中の「で被覆される」という表現は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の表面のみならず、細孔口も、親水性ポリマーで被覆されるということを意味する。
【0054】
本明細書中で用いられる「親水性ポリマー」という用語は、単一親水性ポリマー、更には、二つまたはそれを超える親水性ポリマーの混合物を意味するものである。上記の一つまたは複数の親水性ポリマーは、30%までの他の非親水性ポリマーと混合することができるということは理解されるはずである。一つの好ましい態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料上のコーティングは、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーを含む。
【0055】
平面センサーについて、親水性ポリマーのコーティングは、典型的には、親水性ポリマーの溶液を、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の表面(および細孔口)上に分配する、噴霧する、スクリーン印刷すること等によって得られる。本発明のある側面において、酵素層に最も遠位の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口は、親水性ポリマーで被覆される。別の態様、すなわち、酵素層を親水性ポリマーでコーティングした後に、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を与える(そして場合により、その多孔質ポリマー材料を同じまたは別の親水性ポリマーでコーティングする)態様も、まさに、少なくとも多孔質ポリマー材料の両面がコーティングされている態様の通りであると考えられる。
【0056】
慣用的なセンサーについては、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料上のコーティングは、親水性ポリマーの溶液を、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の(両面かまたはその一つの面だけの)表面(および細孔口)上に分配する、噴霧する、スクリーン印刷すること等によって得ることができるし、または少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を、親水性ポリマー等の溶液中に浸漬することができる。
【0057】
したがって、具体的には、トラックエッチング処理済み多孔質材料を含む慣用的なセンサーについて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の両面は、親水性ポリマーで被覆されていてよい。酵素層に近接する少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の面も、親水性ポリマーで被覆されるということは、一つ一つの細孔間の比較的大きい距離が、親水性ポリマーコーティングの不存在下において非線形応答を生じるという理由で、具体的には、トラックエッチング処理済み多孔質ポリマー性材料について特別な利点を与えると考えられる。この状況において、被検体(酵素基質)は、酵素層内の非占有酵素分子へと拡散すべきであろうが、一層長い拡散距離は、非同時変換を引き起こす。対照的に、酵素層に近接する少なくとも一つの多孔質ポリマー材料の面上の親水性ポリマーコーティングは、その層内の被検体の拡散を容易にし且つ被検体を一層一様に酵素層に与えるであろうが、それによって、より高いまたはより線形の応答が得られる。したがって、少なくとも一つの多孔質ポリマー材料の面上の親水性ポリマーコーティングが、酵素層に近接している態様において、被検体は、利用可能な酵素分子に到達するまで、より稠密な酵素層において短距離を移動すべきであるにすぎないであろう。
【0058】
本発明の若干の側面において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の外部表面および細孔口だけが、親水性ポリマーで被覆されているのではなく、その親水性ポリマーもまた、その少なくとも一つの面から多孔質ポリマー性材料の細孔に少なくとも一部分浸透している。
【0059】
これらの具体的な態様では、カバー膜層の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されていると言われている。
本文中の「含浸されている」という用語は、親水性ポリマーが、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の両面の外部表面および細孔口を被覆し、そして更に、多孔質ポリマー性材料の細孔に浸透しているということを意味するものである。
【0060】
「少なくとも一部分含浸されている」という用語は、親水性ポリマーが、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口を被覆し、そして更に、その少なくとも一つの面に由来する多孔質ポリマー性材料の細孔に少なくとも一部分浸透しているということを意味するものである。
【0061】
本発明の別の側面において、親水性ポリマーは、センサー使用時に、実質的に水に不溶性である。しかしながら、親水性ポリマーは、カバー膜に適用されてそれを被覆する場合に、好ましくは、架橋していないし、そして好ましくは、引き続きの架橋は起こらないということが理解されるはずである。代わりに、親水性ポリマーの親水性および水への不溶性の組合せは、親水性ポリマーの親水性セグメントおよび疎水性セグメント/部分の適切な組合せによって得られる。この配置は、架橋工程を完全に省略することができるという点で、はるかに単純化された製造手順を提供する。
【0062】
「水に不溶性」という用語は、親水性ポリマーで被覆されたカバー膜を水溶液中において25℃で24時間貯蔵時に、実質的に水中に溶解しないポリマーを意味するものである。
【0063】
本発明のある態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、0.002〜30%(vol/vol)の範囲内の多孔度を有する。
ポリマー性材料の望ましい多孔度は、ある程度は、検出範囲の望ましい上限に依存する。検出範囲のきわめて高い上限は、カバー膜が、被検体にかなり高い拡散抵抗を与えるはずであるような広い線形範囲を得るために、かなり低い多孔度を必要とするであろう。多孔度(%(vol/vol))および線形検出範囲の上限(被検体のmM)の数積として表される場合、その値は、好ましくは、0.05〜10[%(vol/vol)・mM]または好ましくは、0.1〜2[%(vol/vol)・mM]のように、0.01〜50[%(vol/vol)・mM]の範囲内である。
【0064】
本発明のいろいろな側面において、多孔質ポリマー性材料の平均細孔サイズは、1〜150nmまたは10〜110nmのように、0.05〜250nmの範囲内である。
一つの態様において、具体的には、センサーが慣用的なタイプのものである場合、多孔質ポリマー性材料は、例えば、40,000〜40,000,000個細孔/cm2の範囲内の細孔密度を有するトラックエッチング処理済み材料である。
【0065】
トラックエッチング処理済みカバー膜を含むクレアチニン/クレアチンセンサーおよび尿素センサーについて、多孔度は、好ましくは、0.2〜0.25%のように、0.05〜0.1%の範囲内である。トラックエッチング処理済みカバー膜を含むラクテートセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.003〜0.004%のように、0.0005〜0.015%の範囲内である。トラックエッチング処理済みカバー膜を含むグルコースセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.01〜0.02%のように、0.001〜0.05%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度は、多孔度(%)=π×(細孔直径/2)2×(細孔密度)×100%として決定される。
【0066】
溶液流延膜の多孔度は、膜が水で湿潤している時に水で占有される体積として一層容易に決定することができる。溶液流延膜の多孔度は、典型的には、3〜30%のように、1〜40%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度と溶液流延膜の多孔度との間の少なくとも1オーダーの差は、トラックエッチング処理済み膜の「有効な」細孔(すなわち、貫通している細孔)だけを考慮しているということによって説明することができるが、溶液流延膜の細孔度の決定には、全ての細孔およびキャビティが含められる。
【0067】
一つの態様において、親水性ポリマーは、親水性ポリウレタンである。
ポリウレタンは、血液接触表面に、例えば、インプラントおよび医療用具に最も広く用いられている生物医学的ポリマーである。ポリウレタンエラストマーは、硬質および軟質のセグメントの交互ブロックから成る多相ブロックコポリマーである。疎水性硬質セグメントは、脂肪族、環状脂肪族または芳香族のジイソシアネートと、ジオール、ジアミンまたは水との反応で形成される。軟質の親水性または相対的に親水性のセグメントは、低分子量のヒドロキシ末端付きポリエーテル、ポリエステルまたは脂肪族ポリオレフィンから構成される。親水性ポリオールは、連鎖延長剤として用いられるし、または或いは、プレポリマー中に包含することができる。硬質と軟質のセグメント間の、および疎水性と親水性のセグメント間の化学的不適合性は、ポリウレタン中の相凝離をもたらす。硬質セグメントドメインは、第二結合で相互連結していて且つ軟質セグメントマトリックス中に分散しているが、システム全体を強化する物理的架橋として働く。軟質マトリックスは、異なった親水性を有するポリエーテルまたはポリエステルの混合物を用いることにより、親水性に関して調節することができる。きわめて親水性のポリウレタンには、ポリエチレングリコールがしばしば用いられるが、それらの親水性の調節は、高級ポリアルキルエーテル、例えば、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコールで達成することができる。この方法で、ポリウレタンは、親水性、疎水性、親水性/疎水性、硬質且つ剛性または軟質且つ弾性、加水分解安定性、または意図的に分解性となるように製造することができる。それらの硬質および軟質セグメント構造のゆえに、それらポリウレタンは、機械的に強く、引裂抵抗性であり、そして良好な屈曲寿命を示す。これら性質は、それらポリウレタンを、センサー膜用の親水性コーティングとして適切なものにする。それらコーティングは、親水性セグメントの含有率による高吸水および良好な使用安定性を有する。それらの疑似架橋セグメント構造のゆえに、それらコーティングは、水に不溶性でもある。
【0068】
親水性ポリウレタンは、その中に包含される親水性セグメント、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド等のセグメントを有するポリウレタンより選択することができる。このような親水性ポリウレタンは、末端ヒドロキシ基またはアミノ基を有することによって、ジイソシアネートとの反応により線状ポリマー鎖を形成するポリアルキレングリコール(ポリアルキレンオキシド)から製造することができる。このような親水性ポリウレタンの例は、US4,789,720号;同4,798,876号;および同5,563,233号に開示されたものである。他の適する例は、親水性基、例えば、脂肪族ポリエーテルで修飾されたポリウレタンである(例えば、US6,200,772B1号を参照されたい)。
【0069】
親水性セグメントは、典型的には、ポリエチレングリコール、アミノ基末端付きポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミノ基末端付きポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレンイミン、特に、ポリエチレングリコールから誘導される。
【0070】
いくつかの態様において、親水性ポリウレタンは、脂肪族ポリエーテルウレタン、脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエーテルウレタン、環状脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、芳香族ポリエーテルウレタン、芳香族ポリエーテルウレタン尿素、脂肪族ポリエステルウレタン、脂肪族ポリエステルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエステルウレタン、環状脂肪族ポリエステルウレタン尿素、芳香族ポリエステルウレタンおよび芳香族ポリエステルウレタン尿素より選択される。脂肪族ポリエーテルウレタンまたは環状脂肪族ポリエーテルウレタン(例えば、シクロヘキシルポリエーテルウレタン)は、線状または環状の脂肪族ジイソシアネートが用いられている場合の膜コーティングとして好適である。天然起原のイソシアネート(例えば、リシンジイソシアネート)も適している。シクロヘキシルポリエーテルウレタンは、良好な生体適合性を膜に与え且つ膜の汚染を抑制するまたは排除さえもすると考えられる。
【0071】
本発明のある側面において、親水性ポリウレタンは、ポリエチレングリコールの主鎖セグメント−(CH2−CH2−O−)n−を、少なくとも7%(w/w)または少なくとも10%(w/w)のように、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの典型的な重量比で含む。ポリエチレングリコールセグメントの有意の含有率は、適当な親水性を与え且つ血液適合性を改善すると考えられる。
【0072】
好ましい親水性ポリウレタンの適する例は、例えば、本明細書中にそのまま援用されるUS5,322,063号に開示されたものである。
本発明のある側面において、親水性ポリウレタンは、多糖(例えば、アルギネート、カラゲナン、ペクチンおよびデキストラン)、ポリ(HEMA)、部分加水分解ポリビニルアセテート(PVA)またはセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース)の主鎖セグメントを、少なくとも7%(w/w)または少なくとも10%(w/w)のように、少なくとも5%(w/w)の多糖、ポリビニルアセテートまたはセルロース誘導体セグメントそれぞれの典型的な重量比で含む。
【0073】
商業的に入手できる好適な親水性ポリウレタンの例には、Hydromed D4(湿潤時の含水率:50%(w/w))および Hydromed D640(湿潤時の含水率:93%(w/w))が含まれるが、これに制限されるわけではない。いずれのポリウレタンも、Cardiotech International Inc., Wilminton, MA, USA の商品名である。
【0074】
Hydromed D4およびD640製品は、中心ポリブチレンオキシドセグメントと、ポリアルキレンオキシド末端基を含む。ポリアルキレンオキシド基は、ポリエチレンオキシドかまたはポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドであってよい。どちらの場合も、ポリエチレンオキシドセグメントは、好ましくは、ポリブチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのセグメント長さより長い。これは、十分な親水性および吸水、更には、適切な血液適合性を与えると考えられる。
【0075】
別の態様において、親水性ポリマーは、親水性ポリ(メタ)アクリレートである。
親水性ポリ(メタ)アクリレートの例には、エステルのアルコール部分の一部分としてポリ(エチレンオキシド)置換基を有するアクリル酸エステルから成る第一モノマー単位と、メタクリレートおよびアクリレートより選択される一つまたはそれを超える第二モノマー単位を含むアクリルコポリマーが含まれる。第一モノマー単位のポリ(エチレンオキシド)置換基は、典型的には、200〜2000、例えば、500〜1500の平均分子量を有する。このような第一モノマーの例には、メトキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、メトキシポリ(エチレンオキシド)アクリレート等が含まれる。第二モノマー単位の例には、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート等が含まれる。
【0076】
好ましい親水性ポリ(メタ)アクリレートには、本明細書中にそのまま援用されるWO93/15651A1号に開示されたアクリルコポリマーが含まれる。
モノマーの好ましい組合せは、メトキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートである。
【0077】
他の好ましい親水性ポリ(メタ)アクリレートには、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)のセグメントまたは側鎖を有するものが含まれる。
本発明のある側面において、親水性ポリマーの親水性は、湿潤時の含水率が、25〜95%(w/w)または45〜95%(w/w)のように、5〜100%(w/w)または10〜95%(w/w)の範囲内となるようなものである。典型的には、その含水率は、より高い親水性セグメント含有率が(湿潤時の)より高い含水率を生じるという意味で、例えば、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートそれぞれにおける親水性ポリマーのタイプおよび含有率に依存する。多孔度も、含水率の好ましい範囲に関して、ある種の役割を果たすことがありうる、すなわち、小さい細孔を有する膜について、含水率の好ましい範囲は、10〜30%(w/w)のように、5〜80%(w/w)または8〜40%(w/w)であってよい。拡散、拡散速度、および特に大形の分子を排除する能力に関して、カバー膜の性質は重要である。
【0078】
更に考慮されるべきことは、グルコースの拡散を可能にするが、もう一方では、H2O2の拡散を制限するカバー膜の能力である。したがって、一つの態様において、カバー膜を介するグルコースの拡散速度に対する、カバー膜を介するH2O2の拡散速度は、3〜15または3〜10のように、3〜20の範囲内である。拡散速度は、「実験」部分に記載のように決定される。カバー膜の相対拡散速度は、典型的な既知のポリウレタンカバー膜のそれより優れているということが注目される。
【0079】
カバー膜を介するグルコースの見掛け拡散係数は、グルコースセンサーについて、好ましくは、0.3〜1.5x10−9または0.5〜1.1x10−9のように、0.1〜5.0x10−9の範囲内であるべきである。該当するラクテートセンサーについて、カバー膜を介するラクテートの見掛け拡散係数は、好ましくは、1.2〜3.2x10−10のように、0.5〜5x10−10の範囲内であるべきである。見掛け拡散係数は、「実験」部分に記載のように測定される。
【0080】
更に関係があるのは、「大形」分子(例えば、ペプチド、タンパク質、および酵素層の酵素などの酵素(例えば、グルコースオキシダーゼおよびラクテートオキシダーゼ))を排除するが、同時に、関係のある被検体、例えば、ラクテート、グルコース、クレアチン、クレアチニン等の拡散を可能にするカバー膜の能力である。このような被検体は、典型的には、約200までの分子量を有するが、ペプチド、タンパク質および酵素は、小形ペプチドの場合の約300〜タンパク質の場合の数千またはそれを上回る、例えば、グルコースオキシダーゼの場合の約30,000の分子量を有することがありうる。
【0081】
カバー膜層は(湿潤形の場合)、慣用的なセンサーについて、典型的には、6〜30μmまたは10〜17μmのように、5〜40μmの範囲内の厚みを有する。厚手皮膜センサーについて、(湿潤形の)カバー膜層は、典型的には、2〜10μmまたは3〜5μmのように、1〜20μmの範囲内の厚みを有する。
【0082】
更に、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層は、具体的には、厚手皮膜センサーについて、0.25〜3μmまたは0.5〜1μmのように、0.1〜5μmの範囲内の厚みを有することができる。
【0083】
すなわち、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層は、典型的には、ポリマー性材料の平均細孔サイズの100〜1000%または200〜500%のように、100〜2000%の範囲内の厚みを有する。
【0084】
好ましい吸水性を考えると、湿潤形のカバー膜の厚みと、乾燥形のカバー膜の厚みとの間の比率は、好ましくは、2:1〜1:1の範囲内である。
湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、100:1〜1:1または80:1〜2:1の範囲内であってよい。
【0085】
いくつかの態様において、具体的には、慣用的なセンサーについて、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、10:1〜2:1の範囲内のように、20:1〜1.5:1の範囲内であってよい。いくつかの他の態様において、具体的には、例えば、トラックエッチング処理済み膜を含む慣用的なセンサーについて、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、好ましくは、50:1〜30:1の範囲内のように、80:1〜10:1の範囲内である。
【0086】
例えば、溶液流延膜を含む平面センサーについて、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、好ましくは、6:1〜3:1の範囲内のように、10:1〜2:1の範囲内である。
【0087】
他の態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料と親水性ポリマー(非湿潤状態)との間の重量比は、100:1〜1:1、例えば、80:1〜10:1または50:1〜30:1の範囲内である。
【0088】
本発明の一つの態様において、カバー膜は、酵素センサーの最も外部層である。
いくつかの利点は、例えば、親水性ポリウレタンを用いて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面(および細孔口)を被覆することによって確認された。一つには、ポリウレタンは、酵素/タンパク質の浸透/移行について、多孔質ポリマー性材料の細孔を有効にブロックする小さい細孔を有するが、親水性がより少なく且つ疎水性の分子の拡散を依然として可能にする。更に、親水性ポリウレタンは、通常は水に不溶性であるが、ポリウレタンは、膨潤性であり且つ実質的な量の水を保持することが可能である。結果として、ポリウレタンコーティングの浸出および退化は、センサーの寿命期間中に実質的に存在しないであろう。同じことが、例えば、親水性ポリ(メタ)アクリレートにも当てはまる。
【0089】
電極
酵素センサーの電極は、被検体と、一つまたは複数の酵素、例えば、クレアチニンセンサーの場合のような酵素カスケードとの反応生成物を考慮して選択される。電極は、貴金属、例えば、金、パラジウム、白金、ロジウム、インジウムまたはイリジウム、好ましくは、金または白金、またはそれらの混合物から製造することができる。他の好適な電子伝導性材料は、MnO2、プルシアンブルー、黒鉛、鉄、ニッケルおよびステンレス鋼である。
【0090】
場合によっては、必須の電極に隣接した追加の電極、例えば、内部参照電極および/または対向電極を更に包含するのが好適である。例えば、図3を参照されたい。
酵素層
酵素センサーの(一つまたは複数の)酵素層は、一つまたはそれを超える酵素が、電極表面で検出することができる二次種への被検体の変換を容易にするという点で、重要な役割を果たしている。いくつかの態様において、単一酵素が用いられるが(例えば、グルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼ、ウレアーゼ)、複数の酵素(例えば、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼ)を用いて、電極で検出することができる種をもたらす反応カスケードを容易にすることができる。
【0091】
一つまたは複数の酵素は、それ自体で付着させてよいし、または直接的にまたは間接的に固定した形、例えば、ポリマー中に埋封又は混合させた形、または移動を減少させるか又は排除するように基底層またはカバー層に架橋したまたは固定した形であってよい。若干の態様において、複数の酵素は、別々の層に配置することができる。酵素層は、更に、過剰量の酵素の使用を免れるように且つ十分に決定された量の酵素を、センサー膜の十分に規定された領域に確実に入れるように、リングまたはガスケットによって定位置に保持することができる。
【0092】
酵素層は、炭水化物オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼ、アルドースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、α−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ウレアーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、P−450、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよび関連補酵素が含まれるがこれに制限されるわけではない少なくとも一つの酵素を含んでよい。
【0093】
クレアチンの検出には、酵素層は、好ましくは、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼを含む。クレアチニンの検出には、酵素層は、好ましくは、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼを含む。グルコースの検出には、酵素層は、好ましくは、グルコースオキシダーゼを含む。ラクテートの検出には、酵素層は、好ましくは、ラクテートオキシダーゼを含む。尿素の検出には、酵素層は、好ましくは、ウレアーゼを含む。
【0094】
追加の層
本発明のある態様において、酵素層は、電極と直接接触していない。したがって、酵素センサーは、好ましくは、電極と酵素層を隔離する1〜3個の層を更に含む。このような一つまたは複数の層は、典型的には、中間層、例えば、妨害制限層を包含する。その一つまたは複数の層は、電極と中間層を隔離する含水多孔質スペーサー層を更に包含してよい。
【0095】
一つの態様において、電極と酵素層を隔離する少なくとも一つの層は、セルロースアセテート(CA)、NafionTM、硬質PVC、BaytronTM、電気重合ポリマー(例えば、ポリチオフェン、1,3−ジアミノベンゼン、フェノール)およびSPEES−PES(ポリアリールエーテルスルホン/ポリエーテルスルホンコポリマー)が含まれるがこれに制限されるわけではない材料の層である。このような層は、妨害制限層として機能することができる。一つの態様において、中間層は、妨害制限セルロースアセテート(CA)層である。
【0096】
別の(上記の態様と組み合わせることができる)態様において、電極と酵素層を隔離する少なくとも一つの層は、含水多孔質スペーサー層である。
センサーが、きわめて低濃度で存在する被検体(例えば、クレアチニン、クレアチン、または1〜20μMの範囲内の検出限界を有する他の被検体)を検出するのに用いられる場合、被検体不含の流体試料は、電極上に疑似信号を生じることがありうるということが認められた。それら疑似信号は、−25μM〜25μM被検体の信号に該当するかもしれないが、それらは、酵素センサーと接触状態にされるいろいろな液体、例えば、血液試料、洗浄液、湿潤液、検量液等の組成差(ゼロである被検体以外)に由来する。疑似信号の知見は、おそらくは、二つの因子の組合せによる。
【0097】
第一に、非イオン種は、妨害制限層を越えて、イオン種よりも急速に拡散する。したがって、試料中に存在するが、すすぎ溶液中には存在しないビカーボネート/CO2は、妨害制限層より下のpHを降下させるであろう。同じ作用は、大部分のすすぎ溶液中に存在するが、試料中には存在しないイミダゾール/H−イミダゾールで認められる。pHの降下は、水の酸化に由来するゼロ電流の降下を引き起こすであろう。
【0098】
第二に、アノード表面におけるイオン種の濃度は、異なった試料の関数として変化する。このような変化は、電極上のイオン組成の変化をもたらし、それによって、非ファラデー電流として知られる電流をもたらすであろう。非ファラデー電流として送られている電荷の全量は、イオン組成の差に依存するにすぎないであろうが、しかしながら、拡散の時定数は、変化することがありうる。
【0099】
上の問題は、アノードと妨害制限層との間に含水多孔質スペーサー層を導入することによって軽減することができるということが判明した。含水多孔質スペーサー層中の水は、アノードが経験するイオン組成の変化を緩衝するであろう。したがって、非ファラデー電流は、一層長い時間間隔にわたって延長するので、より小さい振幅を有するであろう。拡散は、少ない距離でのきわめて速やかな過程(すなわち、約50μMにわたるO2の拡散について約1s未満)である。したがって、スペーサー層は、拡散抵抗(すなわち、妨害制限層)との組合せでのみ機能し、その結果、システムは、抵抗体を含む直列のコンデンサーのように機能する。したがって、妨害制限層は、イオンにむしろ不浸透性であるということ、さもなければ、スペーサー層は、きわめて厚くあるべきであるということが重要である。
【0100】
慣用的なセンサーのための含水多孔質スペーサー層の多孔質ポリマー性マトリックスを形成する(トラックエッチング処理済みまたは溶液流延)材料の好適な例は、多孔質ポリマー性材料について上に記載されたのと同じである。一つの態様において、それら材料には、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートが含まれるが、これに制限されるわけではない。具体的な態様において、このようなセンサーのためのスペーサー層材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)である。このようなスペーサー層は、トラックエッチング処理済みであってよく、そして電極を中間層または酵素層から隔離する含水多孔質スペーサー層として機能する。
【0101】
平面センサー、例えば、厚手被膜センサーのための含水多孔質スペーサー層の多孔質ポリマー性マトリックスを形成する(溶液流延)材料の好適な例には、親水性ポリウレタン、親水性ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリウレタン、NafionTMポリマー、電気重合ポリマー(例えば、ポリチオフェン、1,3−ジアミノベンゼン、フェノール)およびSPEES−PES(ポリアリールエーテルスルホン/ポリエーテルスルホンコポリマー)に制限されるわけではないポリマーが含まれる。或いは、多孔質ポリマー性母材を形成する材料は、多孔性形成(porosity forming)化合物(例えば、洗剤または水溶性親水性ポリマー)と混合された多孔質ポリマー性材料について上に記載されたのと同じ材料、具体的には、このような多孔性形成化合物と混合されたポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択することができる。このような層は、電極を中間層または酵素層から隔離する含水多孔質スペーサー層として機能する。
【0102】
「含水多孔質スペーサー層」という用語は、センサー使用時に、電極表面におけるpH不安定性を減少させるという意味で緩衝作用を与える層を意味するものである。
本文中の、多孔質スペーサー層と連結して用いられる「含水」という用語は、多孔質ポリマー性マトリックスが、実質的な量の水、例えば、多孔質ポリマー性マトリックスの重量に基づいて少なくとも6%の量の水を含むということを意味するものである。含水率は、なお一層高くてよく、例えば、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも40%または少なくとも50%またはそれより高くてよい。溶液流延平面センサーについて、全膨潤(水吸収)度は、過剰の水吸収が、酵素膜の構造保全性に有害であるかもしれないので、考慮すべきことである。したがって、平面センサーについて、含水率は、好ましくは、150%のように、200%を超えるべきではない。
【0103】
酵素センサーの任意のスペーサー層は、概して、直ぐ使用できる形、すなわち、含水多孔質スペーサー層が、実質的な量の水の含有する形で記載され、そしてここにおいて、酵素センサーは、流体試料中の被検体を測定することが可能であるということが理解されるはずである。一つの態様において、酵素センサーは、乾燥形で、すなわち、スペーサー層が実質的に乾燥している形で保管され且つ最終使用者に供給される。したがって、最終使用者は、実質的な量の水を吸収可能であるスペーサー層が、含水多孔質スペーサー層へと変換するように、酵素センサーの膜を水性液で湿潤させる必要があるであろう。他の層(例えば、カバー膜)も、実質的な量の水を吸収することが可能であってよい。
【0104】
慣用的な酵素センサー構築に関して、湿潤は、酵素センサーの内部液によって行うことができる。例えば、図1を参照されたい。平面センサーは、典型的には、特定の湿潤液、洗浄液または検量液等によって湿潤される。
【0105】
緩衝液、陽イオン交換材料または電解質塩をスペーサー層中に包含して、流体試料および他の液体中のビカーボネート(HCO3−)の作用を更に制限することは、好都合であると考えられる。したがって、一つの態様において、含水多孔質スペーサー層は、例えば、緩衝剤、電解質塩(例えば、電解質ポリマー)および陽イオン交換材料より選択される一つまたはそれを超える成分を更に含む。
【0106】
スペーサー層は、トラックエッチング処理済み材料について0.0005〜2%(vol/vol)の範囲内、そして溶液流延材料について1〜90%の範囲内の多孔度を有することができる。
【0107】
トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用的なクレアチニン/クレアチンセンサーおよび尿素センサーについて、多孔度は、好ましくは、0.2〜0.25%のように、0.05〜0.1%の範囲内である。トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用的なラクテートセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.003〜0.004%のように、0.0005〜0.015%の範囲内である。トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用的なグルコースセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.01〜0.02%のように、0.001〜0.05%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度は、多孔度(%)=π×(細孔直径/2)2×(細孔密度)×100%として決定される。スペーサー層の平均細孔サイズは、1〜150nmまたは10〜110nmのように、0.05〜250nmの範囲内であってよく、そして細孔密度は、40,000〜40,000,000個細孔/cm2の範囲内である。
【0108】
溶液流延スペーサー層の多孔度は、膜が水で湿潤している時に水で占有される体積として最も容易に決定することができる。溶液流延スペーサー層の多孔度は、好ましくは、3〜85%のように、1〜90%の範囲内であるべきである。トラックエッチング処理済み膜の多孔度と溶液流延膜の多孔度との間の少なくとも1オーダーの差は、トラックエッチング処理済み膜の「有効な」細孔だけを考慮しているということによって説明することができるが、溶液流延膜の細孔度の決定には、全ての細孔およびキャビティが包含される。
【0109】
含水多孔質スペーサー層は、0.5〜15μmのように、0.2〜20μmの範囲内の厚みを有することができる。平面センサーについて、その厚みは、0.5〜5μmのように、0.2〜10μmの範囲内であってよい。慣用的なセンサーについて、その厚みは、2〜15μmのように、1〜20μmの範囲内であってよい。
【0110】
含水多孔質スペーサー層は、溶液流延層の形であってよいし、またはトラックエッチング処理済み膜の形であってよい。本発明のある側面において、平面センサー、例えば、厚手皮膜センサーのためのスペーサー層は、上記ポリマー性材料と、多孔性形成化合物(例えば、洗剤、水溶性親水性ポリマー等)との混合により、好適な多孔度を得るように形成される。
【0111】
慣用的なセンサーの場合、電極で検出される第二種が、電極表面へと一層正確に向けられるように、細孔は、電極表面に対して実質的に垂直に配向されていること(例えば、図1を参照されたい)が重要であると考えられるので、トラックエッチング処理済み膜は好適である。
【0112】
センサーは、慣用的なタイプのものであってよいし、そして含水多孔質スペーサー層は、トラックエッチング処理済みポリエチレンテレフタレート材料であってよい。或いは、センサーは、平面タイプのものであってよいし、そして含水多孔質スペーサー層は、例えば、親水性ポリウレタンまたは親水性ポリ(メタ)アクリレートであって、好ましくは、多孔性形成化合物、例えば、洗剤、水溶性親水性ポリマー等と混合されたものの溶液流延層であってよい。
【0113】
含水多孔質スペーサー層および中間層は、中間層およびスペーサー層について記載されたタイプの材料の不均一層になるように組み合わせることができる。その層は、スペーサー層の材料が、中間層の材料の連続相中に分散されるような方法で形成される。
【0114】
上に定義のいろいろな態様について、電極および酵素層を隔離する1〜3個の層は、パラセタモール、アスコルビン酸および尿酸などの化合物の拡散を、最初の15秒間に信号を、少なくとも95%のように、少なくとも90%減少させるような方法で制限可能であることが好適である。
【0115】
好ましい態様
本発明のある側面は、流体試料中のクレアチンの濃度を決定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETP));そのスペーサー層と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);そのセルロースアセテート層と接触している、サルコシンオキシダーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0116】
本発明の別の側面は、流体試料中のクレアチニンの濃度を測定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETP));そのスペーサー層と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);その妨害制限層と接触している、例えば、サルコシンオキシダーゼ、クレアチニナーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、例えば、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、例えば、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0117】
本発明の別の側面は、流体試料中のラクテートの濃度を測定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);その妨害制限層と接触している、例えば、ラクテートオキシダーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、例えば、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、例えば、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0118】
本発明の別の側面は、流体試料中のグルコースの濃度を測定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);その妨害制限層と接触している、グルコースキシダーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、例えば、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、例えば、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0119】
カバー膜
本発明のある側面は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、トラックエッチング処理済み材料の膜に関する。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレート、具体的には、親水性ポリウレタンが含まれる。
【0120】
本発明の別の側面は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の膜に関する。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレート、具体的には、親水性ポリウレタンが含まれる。その材料は、好ましくは、トラックエッチング処理済みである。更に好ましくは、代表的なポリエチレンテレフタレート材料は、0.003〜2%の範囲内の多孔度を有する。
【0121】
更に、本発明の別の側面は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、例えば、ポリ塩化ビニル材料の溶液流延膜に関する。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレート、具体的には、親水性ポリウレタンが含まれる。好ましくは、代表的なポリ塩化ビニル材料は、2〜30%の範囲内の多孔度を有する。
【0122】
代表的なカバー膜についての上記規格は、必要な変更を加えて、上に定義のカバー膜にも当てはまる。
酵素センサーの使用
本発明の酵素センサーは、その最初の使用前に、通常は、信号が安定するまで、湿潤液または検量液に曝露されてよい。
【0123】
体液試料中の、例えば、クレアチニン、クレアチン、グルコース、ラクテート等の測定は、いろいろな自動または半自動分析器で行うことができるが、その多くは、マルチプルセンサーを用いて、多数のパラメーターを測定する。一つの例は、臨床分析器、具体的には、血液分析器である。流体試料は、分析器のフローシステム中にまたは分析器中への導入用カセットのフローシステム中に手動でまたは自動的に導入される。したがって、一つまたはそれを超える生理学的試料パラメーターのセンサーは、フローシステム中に導入された流体試料に曝露することができる。
【0124】
したがって、本発明は、更に、流体試料中の被検体の濃度を測定する装置であって、本明細書中に定義の一つまたはそれ以上の酵素センサーを含む装置を提供する。
更に、本発明は、流体試料中の被検体の濃度を測定する方法であって、流体試料と、本明細書中に記載の酵素センサーとを接触させ、そして酵素センサーの電極が関与する少なくとも一つの測定を行う工程を含む方法を更に提供する。
【0125】
それらセンサーは、通常、そのセンサーへとおよびから通される流体試料および他の流体、例えば、湿潤液、洗浄液、検量液等に曝露される。
酵素センサーを洗浄する方法
驚くべきことに、本発明の背後にある原理は、酵素センサー用の洗浄液中にプロテアーゼを利用することを可能にするということが判明した。したがって、本発明は、更に、酵素センサーを洗浄する方法であって、そのセンサーは、電極、少なくとも一つの酵素層および少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、そのカバー膜の表面を、プロテアーゼを含む洗浄溶液に接触させる工程を含む方法を提供する。
【0126】
酵素センサーのカバー膜を洗浄するのに適するプロテアーゼの例は、Subtilisin Aである。
洗浄工程が、流体試料を測定する測定工程の前および後にあるということは理解されるはずである(しかし必ずしも直前又は直後であるとは限らない)。したがって、その方法は、好ましくは、カバー膜と洗浄溶液とを接触させる工程の前に、更には、後に、被検体の濃度を測定する工程を更に含む。
【0127】
好ましくは、カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、ここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口は、親水性ポリマーで被覆されている。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0128】
上の説明は、いずれにせよ、請求の範囲に記載の発明を制限するものではない。更に、論じられた特徴の組合せは、本発明の解釈に絶対に必要というわけではない。更に、本明細書中に引用された全ての特許または公開出願の開示は、本明細書中にそのまま援用される。
【0129】
本発明を、次の実施例に更に詳しく説明する。しかしながら、これら実施例は、単に例示するためのものであり、どのような形でも、本発明の範囲を制限するのに用いられるべきではないということは理解されるはずである。
【実施例】
【0130】
実験
材料
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)からのクレアチニナーゼは、Roche Diagnostics, Mannheim, Germany より入手した。Hydromed D4、Hydromed D640および Hydromed TPは、Cardiotech International Inc., Wilminton, MA, USA より入手した。
【0131】
一般的な手順
拡散性の測定
拡散性は、拡散セル中で測定することができるが、その場合、基質の見掛け拡散係数の値は、全細孔度および水中の基質の拡散係数の結果として得られる。「見掛け拡散係数」とは、膜の細孔度を考慮していない膜全体の面積の「有効な」拡散係数を意味する。
【0132】
拡散セル(直径15mm、Oリングを有する)は、使用前に完全に清浄であるべきである。汚染を減少させるために、Oリングが配置されているセルの半分(cell half)には、高基質濃度の溶液を有することが望ましい。分析用の流体試料を、Oリング不含のセルの半分に充填する。それらセルの半分の間の開口部より約1/2cm大きい膜試料を切断し、Oリングの上に配置する。次に、そのセルを閉じ、密閉する。膜およびマグネチックバー(10mm)を含む拡散セルを、マグネチックスターラー上に置く(320±30r.p.m.)。30mLの洗浄液(S4970)中の基質溶液と、30mLの純洗浄液(S4970)とを、拡散セルの二つのハーフセル中に同時に充填する。48時間後および72時間後それぞれに、1mLの試料をシリンジで取り出し、そして1mLの純洗浄液を充満させることにより、純洗浄液中の基質濃度を測定する。試料中の基質濃度は、ABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical ApS, Copenhagen, Denmark)で測定する。
【0133】
見掛け拡散係数は、次のように決定する。流束:全てのシステムにおいて、化合物の受動輸送過程は、システム中の化合物の分布が、化合物の熱力学的平衡分布に該当しない場合に生じるであろう。流束は、1秒につき、面積単位(輸送方向に垂直な面積)を通過する化合物の量として定義し、J=量・cm−2・s−1の単位を有する。
【0134】
Fick の第一法則は、定常拡散にあてはまる、すなわち、線形濃度勾配が確定された。
【0135】
【数1】
【0136】
ここにおいて、Dは、化合物の拡散係数、すなわち、与えられた条件下における拡散性分子タイプに特有の値であり(それは、サイズおよび形のような、輸送速度を決定する因子を包含するのみならず、例えば、粘性のような周囲媒体の性質も包含する);dC/dxは、x地点における濃度プロフィールの勾配である(dC/dx値は、x方向の濃度勾配とも称され、その場合の符号文字は、濃度が増加する方向を示す、すなわち、dC/dxの正値は、濃度がx軸の正方向に増加することを示す)。
【0137】
コーティングされたカバー膜上の被検体の見掛け拡散係数の決定
ポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層の多孔質膜(細孔直径約0.1μm;細孔密度:1.6・106個細孔/cm2)に、親水性ポリウレタン(PUR;Hydromed D4および/またはHydromed D640)を、150・200mmのサイズのシートを96%EtOH中の1%PUR溶液中に十分に浸漬することにより含浸させた。5秒後、その膜を、約50mm/sの一定速度で溶液から取り出した。その後、エタノールが蒸発するまで(30分未満)、膜を乾燥させた。引き続き、それらシートを、必要な場合に切断して、適切な試験片とした。
【0138】
それら膜を、いろいろな被検体の見掛け拡散係数(cm2/s)を決定するために、拡散セル(上を参照されたい)中に配置した。結果を図6に示す。結果は、親水性ポリウレタンコーティングの組成を変更することにより、PETP膜の拡散係数を調節することが可能であるということを示している。
【0139】
一般的なセンサー構築(慣用的なセンサータイプ)
図1に関して、センサー1は、電極2を含み、その上に、膜リング3が取り付けられている。電極2は、ミクロプラグ6を介して銀アノード接触体7と接続している白金線5と接続した白金アノード4を含む。その白金アノード4と、白金線の下方部分は、ガラス体8中に密封されている。ガラス体8とミクロプラグ6との間で、白金線5は、熱収縮チューブで保護されている。チューブ状銀参照電極10は、ガラス体8の上方部分を取り囲み、そして固定体11およびエポキシ12によって参照電極内部に固定されているアノード接触体7へと、電極2の長さで延びている。ガラス体8の下方部分は、電極基材13によって取り囲まれ、それに、膜リング3が取り付けられている。
【0140】
図1および図2に関して、参照電極10の上方部分は、プラグ部材14によって、分析装置(示されていない)の該当するプラグ中に電極2を取り付けるために且つマントル15を固定するために取り囲まれている。ガスケット16および17は、電極2の測定用表面にあるいずれかの電解質が蒸発しないことを確実にするために、電極2とマントル15との間に置かれている。膜リング3は、マントル15の一端に取り付けられていて、リング20を含む。膜21は、リング20の下方開口部の上に張られている。この膜21は、図2に詳細に示されるが、実施例2および実施例3に詳細に記載の通りである。
【0141】
一般的なセンサー構築(厚手皮膜センサータイプ)
図3は、作用電極(120)および参照電極(130;140)が形成されている誘電性支持体(110)上に形成された代表的な平面厚手皮膜センサー構築を示している。それら電極は、二層誘電性封入材(150;160および151;161)によって境界形成されている。作用電極は、本明細書中に開示のように、含水多孔質スペーサー層(121)、中間層(170)、酵素層(180)およびカバー膜(190)で被覆されている。
【0142】
図3に関して、200μmの厚みのアルミナ支持体110の一つの表面には、直径1000μmおよび10μmの厚みの円形白金作用電極120;その作用電極の外周の30〜330°の角度範囲を被覆している、外径3000μm、内径2000μmおよび10μmの厚みの環状白金対向電極130;およびその作用電極の外周の0°に位置している、直径50μmの円形銀/塩化銀参照電極140が設けられている。これら3種類の電極構造は全て、センサーエレクトロニクス(示されていない)へと、アルミナ支持体110を越えて、支持体を横行する白金仕上げ(filed)スルーホール(示されていない)を経て接続されている。操作時に、作用電極120は、参照電極140に対して、+675mVへと分極する。
【0143】
更に、アルミナ支持体110上には、ガラスおよびポリマー封入材の二層構造がある。これら二層構造は、作用電極120を取り囲んでいる、外径1800μm、内径1200μmおよび50μmの厚みの環状構造160、161;および完全な電極システムを取り囲んでいる、50μmの厚みの構造150、151を包含する。これら二層構造は両方とも、ESL Europe of United Kingdom 製のESLガラス4904のアルミナ支持体110に面している、20μmの厚みの内層150、160;および SenDx Medical Inc. of California, USA の国際特許出願WO97/43634号に開示されたような、28.1重量%のポリエチルメタクリレート(Elvacite,製品番号2041,DuPont 製)、36.4重量%のカルビトールアセテート、34.3重量%のシラン化(silaninized)カオリン(Engelhard 製の製品番号HF900)、0.2重量%のヒュームドシリカおよび1.0重量%のトリメトキシシランを含む、SenDx Medical Inc. of California, USA 製のポリマー封入材の外層151、161から成る。
【0144】
直径1200μmおよび10μmの厚みの、セルロースアセテートおよびセルロースアセテートブチレートの円形内膜170は、作用電極120を被覆している。
直径1200μmおよび2μmの厚みの、グルタルアルデヒドで架橋したグルコースオキシダーゼの円形酵素層180は、その内膜170を被覆している。
【0145】
酵素層180は、グルタルアルデヒドで架橋したグルコースオキシダーゼの緩衝化した溶液0.4μlを、セルロースアセテート膜170上に分配することによって製造した。酵素層は、37℃で30分間乾燥させた。
【0146】
直径4000μmおよび10μmの厚みの、PVC/トリメチルノニルトリエチレングリコール/ジエチレングリコールの円形カバー膜層190は、作用電極120上に中心を置く完全な電極システムを被覆している。
【0147】
カバー膜は、1.35グラムのポリ塩化ビニル(Aldrich 34, 676-4)、0.0149グラムのトリメチルノニルトリエチレングリコール(Th. Goldschmidt 製の Tergitol TMN3)および0.134グラムのジエチレングリコールから、それらに、21.3グラムのテトラヒドロフランおよび7.58グラムのシクロヘキサノンに加えて製造した。その混合物を、PVCが溶解するまで撹拌し、そして均一溶液を得た。28.5グラムのテトラヒドロフランを加えて、90/1/9のPVC/界面活性剤/親水性化合物組成の2%溶液を得た。その溶液を、3種類の電極全てを被覆するように且つポリマー封入材151と約0.5mmのオーバーラップを有するように、センサー面積上に分配した。それらカバー膜を、23±2℃で30分間および40℃で1.5時間乾燥させた。
【0148】
0.3μLの96%EtOH中の5%親水性ポリウレタン(80%の含水率を有するHydromed D640/Hydromed D4混合物)溶液(実施例1を参照されたい)を、乾燥した外膜上に分配した。
【0149】
全3種類の層170、180、190を、自動分配装置(IVEKポンプ)を取り付けられたx、y、z平面上に分配した。
実施例1−慣用的なグルコースセンサー用のカバー膜の製造
ポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層の拡散制限多孔質膜(細孔直径約0.1μm;細孔密度:1.6・106個細孔/cm2)に、親水性ポリウレタン(Hydromed D4)を、150×200mmのサイズのシートを96%EtOH中の1%PUR溶液中に十分に浸漬することにより含浸させた。5秒後、その膜を、約50mm/sの一定速度で溶液から取り出した。その後、エタノールが蒸発するまで(30分未満)、膜を乾燥させた。引き続き、それらシートを、必要な場合には切断して、適切な試験片とした。
【0150】
実施例2−代表的なクレアチンおよびクレアチニンセンサー構築
クレアチンセンサーおよびクレアチニンセンサーは各々、既知のアンペロメトリックセンサーとして層成する。図1は、このようなセンサー1(上記)を示しているが、それは、生体試料中の被検体の濃度を測定するための装置、例えば、ABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical ApS, Copenhagen, Denmark)に取り付けるのに適している。
【0151】
図2は、四つの層、すなわち、電極2の白金アノード4に面している含水多孔質スペーサー層22;妨害制限膜層23;酵素層25を取り囲むガスケット24;および約80%の含水率を有する親水性ポリウレタンを含浸した拡散制限多孔質ポリマー性材料26を含む膜21の詳細を示している。コーティングされた膜層26は、分析される試料に面している。
【0152】
スペーサー層22は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)の21±2μmのトラックエッチング処理済み膜(細孔直径約1.3〜1.5μm;細孔密度:2.2・107個細孔/cm2)であってよい。妨害制限膜層23は、セルロースアセテート(CA)の6±2μm多孔質膜であってよい。
【0153】
ガスケット24は、1500μmの直径のセンター穴を有する30±5μmの両面接着ディスクであってよい。ガスケット24の接着剤は、妨害制限層23および拡散制限層26に、それら層間から酵素を漏出させない程度に接着する。
【0154】
クレアチンセンサーの酵素層25は、典型的には、緩衝剤などの適する添加剤と混合されたグルタルアルデヒドに架橋したクレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼの約20μm層である。クレアチニンセンサーの酵素層25は、典型的には、緩衝剤などの適する添加剤と混合されたグルタルアルデヒドに架橋したクレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼの約20μm層である。
【0155】
拡散制限多孔質ポリマー性材料26は、親水性ポリウレタン(約80%の含水率を有するHydromed D640/Hydromed D4混合物)を含浸したポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層(細孔直径約0.1μm;細孔密度:3・107個細孔/cm2)であってよい(実施例1を参照されたい)。
【0156】
クレアチニンセンサーの場合、クレアチンおよびクレアチニン双方を、過酸化水素に変換する。クレアチンセンサーの場合、クレアチンのみを過酸化水素に変換する。
アンペロメトリック電極では、過酸化水素を、Ag/AgClに対して+675mVでアノード酸化する。得られた電流の流れは、試料中のクレアチニン/クレアチン濃度に比例する。
【0157】
クレアチニンの濃度は、クレアチニンセンサー信号(クレアチン+クレアチニンを示している)と、クレアチンセンサー信号(クレアチンを示している)との間の差から決定する。
【0158】
実施例3−代表的なラクテートセンサー構築
酵素に触媒されたラクテートと酸素との間の反応は、過酸化水素(H2O2)およびピルベートを生じる。次に、過酸化水素を、アンペロメトリック電極で検出する。センサー1(図1)は、生体試料中の被検体の濃度を測定するための装置、例えば、ABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical A/S, Copenhagen, Denmark)に取り付けるのに適している。
【0159】
層22が省略されている図2に関して、ラクテートセンサーの膜21は、三つの層、すなわち、電極2の白金アノード4に面している妨害制限膜層23;酵素層25;および流体試料に面している拡散制限多孔質膜層26を含む。妨害制限膜層23は、セルロースアセテート(CA)の6±2μm多孔質膜であってよい。酵素層は、典型的には、架橋したラクテートオキシダーゼ(7単位/膜)の約1〜2μm層である。拡散制限多孔質膜層26は、実施例1に記載のように、親水性ポリウレタン(Hydromed D4)を含浸したポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層(細孔直径約0.1μm;細孔密度:8・105個細孔/cm2)であってよい。
【0160】
実施例4−実施例3のラクテートセンサーの結果
線形性
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。取り付け後1日目に、それらセンサーを、適切な液体(Radiometer Rinse 溶液S4970)中の異なった濃度の被検体に曝露する。理論濃度と真濃度との間の偏差を、図9の真濃度に対してプロットする。塗りつぶした四角は、未コーティング膜を含むセンサーであり、空白丸は、コーティングされた膜を含むセンサーである。理解されうるように、より高い偏差は、コーティングされた膜を含むセンサーと比較して、未コーティング膜を含むセンサーについて認められる。
【0161】
寿命
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。1日1回、それらセンサーを、Radiometer QC5アンプルで測定することによって品質管理する。センサー寿命は、そのセンサーが、QC限界内で作動できなくなるまでの時間として示す。
【0162】
感度
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。2〜6日後に(センサータイプに依存して)得られた「定常状態」感度に対する実測感度を、始動以後の時間に対してプロットするが、ラクテートセンサーについては(実施例3)図7を、また、クレアチニンセンサーについては(実施例2)図8をそれぞれ参照されたい。
【0163】
血液バイアス/血液ドリフト
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。取り付け後1日目に、それらセンサーを、適切な液体(Radiometer QC5レベル3)中の同じ濃度の被検体に、追加のBSA(50g/L)を含有させて及び含有させずに曝露する(BSAは、血液試料を模擬するためにQC液に加える)。血液バイアスは、センサーが、タンパク質を含む試料中において、タンパク質不含の試料よりも低い濃度または同じ濃度を測定する原因となりうる。
【0164】
実施例5−一連の試料での信号の低減
この研究の目的は、平面センサー(ここでは、グルコースセンサー。「一般的なセンサー構築(厚手皮膜センサータイプ)」を参照されたい)に関して用いられる、親水性ポリマー(ここでは、親水性ポリウレタン)でコーティングされた膜が、一連の試料測定について、測定ごとに0.5%未満の信号の減少を得ることを可能にするということを示すことであった。
【0165】
全てのセンサーで、10mMグルコースでの一連の20回連続した血液測定を、中間の検量または洗浄を伴うことなく行った。
結果
血液測定
図10は、20種類の連続した試料について、血液での最初の測定(=100)に対する実測値を示している。各2回の測定の平均を、コーティングされたセンサー(実線)および未コーティングのセンサー(破線)それぞれについて示している。
【0166】
顕著な改善は、Hydromed D4でコーティングすることによって得られると考えられる(実線)。その一連の測定における減少は、未コーティングのセンサー(破線)の一連の測定における減少の半分にすぎない。
【0167】
結論
親水性ポリウレタン(Cardiotech Inc. 製の Hydromed D4)でコーティングされたカバー膜を有するセンサーは、該当する未コーティングのセンサーの場合よりも、有意に低い信号減少を引き起こすということが判明した。10mMグルコースでの10回の血液測定にわたる実測値の減少は、コーティングされたセンサーについては約2%であったが、該当する未コーティングのセンサーの減少は、約6%であった。
【0168】
この作用は、細孔の内部表面上に沈殿している血液成分(具体的には、タンパク質および脂質)のために、電極が異なって(より低く)測定する原因となるであろう血液ドリフトに関係している。
【0169】
実施例6−プロテアーゼを含む溶液でのグルコースセンサーの洗浄
この実験では、グルコースセンサー(実施例1に記載のように製造される、すなわち、2種類の未コーティング(「PUR不含」)および3種類のコーティング済み(「PUR含有」))(High met. レベル1(S7570)Radiometer Medical Aps;QCレベル1液)を、測定番号1および番号7の前に検量し、そして測定2〜6および8〜12各々の前に、Cleaning 液(S4706Radiometer Medical Aps)で洗浄した。この洗浄溶液は、プロテアーゼ(Subtilisin A)を含有する。表Aから、親水性ポリウレタン(PUR)のコーティングを含まない装置について、感度が増加するということが理解されうる。したがって、それら結果は、カバー膜が親水性ポリマーで被覆されている場合の感度の減少を伴うことなく、プロテアーゼを含む洗浄溶液を利用することが可能であるということを示している。
【0170】
【表1】
【0171】
実施例7−親水性ポリマーで被覆されたカバー膜を介する酵素の拡散
PETPカバー膜(親水性ポリウレタンでコーティングされたおよび未コーティングの)を介して通過する酵素溶液の活量百分率を決定した(表B)。親水性ポリウレタンでコーティングされた膜は、酵素の移動を有効にブロックし、それによって、このようなコーティングされたカバー膜を有する酵素センサーの線形性、寿命および試料ごとの感度を改善するということが分かった。
【0172】
【表2】
【0173】
実施例8−慣用的な酵素センサーのためのカバー膜の製造
親水性ポリ(メタ)アクリレートを、表Dに記載の出発物質の量を用いて、次のように製造した。
【0174】
メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)およびメトキシポリ(エチレンオキシド)モノメタクリレート(M−PEG−MMA;Aldrich #44,795-1)(表Dによる量)、12.5mgの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび12.5mLのエトキシエチルアセテートを、丸底フラスコ中で撹拌しながら混合した。その溶液に、窒素を15分間吹き付けた。そのフラスコを、75℃で24時間加熱した後、溶液を室温に冷却した。その粘性溶液を、12.5mlのアセトンで希釈し、そして375mLのヘキサン中にその溶液を注入することにより、ポリマーを沈殿させた。そのポリマーを濾去し、25mLのアセトン中に再溶解させた。ポリマーを、375mLのヘキサン中に再沈殿させ、そして125mLのヘキサン中で16時間放置した。ポリマーを濾過によって集め、そして真空オーブン中において50℃で16時間乾燥させた。
【0175】
【表3】
【0176】
ポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層の拡散制限多孔質膜(細孔直径約0.1μm;細孔密度:3・107個細孔/cm2)に、親水性ポリ(メタ)アクリレート(ポリマーA〜D;表Dを参照されたい)を、150×200mmのサイズのシートを96%EtOH中の1%ポリ(メタ)アクリレート溶液中に十分に浸漬することにより含浸させた。5秒後、その膜を、約50mm/sの一定速度で溶液から取り出した。その後、エタノールが蒸発するまで(30分未満)、膜を乾燥させた。引き続き、それらシートを、必要な場合には切断して、適切な試験片とした。
【0177】
それら膜の見掛け拡散係数は、表Eに概略の通りであった。
【0178】
【表4】
【0179】
表Eより、(メタ)アクリレートタイプの親水性ポリマーでコーティングされた膜の拡散性は、細孔密度の差を考慮して、ポリウレタンタイプの親水性ポリマーでコーティングされた膜の拡散性と同程度と考えられる(図6を参照されたい)。
【0180】
実施例9−代表的なクレアチンおよびクレアチニンセンサー構築
クレアチニンセンサーおよびクレアチンセンサーを、拡散制限多孔質ポリマー性材料26を、実施例10に記載のように、親水性ポリ(メタ)アクリレートA(L555−1)およびD(L555−4)を用いて製造したことを除いて、実施例2の場合のように製造した。
【0181】
実施例10−クレアチンおよびクレアチニンセンサーの結果
実施例9で製造したクレアチニンセンサーの二つタイプを調べ(2x4センサー)、クレアチニンへの感度を測定した。親水性ポリ(メタ)アクリレートA(L555−1)のカバー層を有するセンサーは、数時間以内に所望の感度を得たが、親水性ポリ(メタ)アクリレートA(L555−4)のカバー層を有するセンサーは、やや遅い「起動」であった。図11を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】図1は、電極および膜を含む慣用的な酵素センサーを示す。
【図2】図2は、図1のセンサーの膜を示す。
【図3】図3は、代表的な平面厚手皮膜センサー構築を示す。
【図4】図4のAおよびBは、トラックエッチング処理済み膜を含有する慣用的な酵素基剤センサーに関連した問題を示す。
【図5】図5のAおよびBは、親水性ポリマー(親水性ポリウレタンまたは親水性ポリ(メタ)アクリレートなどであるが、これに制限されるわけではない)の(両面)コーティングが、トラックエッチング処理済み膜を含有する慣用的なセンサーに関連した問題をどのように解決するかを示す。
【図6】図6は、親水性ポリウレタンコーティングの組成を、同じ多孔質ポリマー性材料を用いて変更することにより、トラックエッチング処理済み膜の拡散係数を変更することが可能であるということを示す。
【図7】図7は、ラクテートセンサーの時間経過中の感度を示す。相対感度(すなわち、(センサータイプに依存して)2〜6日後に得られた実測「定常状態」感度に対する実測感度)は、起動以後の時間に対してプロットされる。コーティング不含センサーは、黒四角を用いてプロットし、コーティング含有センサーは、空白丸を用いてプロットしている。
【図8】図8は、クレアチニンセンサーの時間経過中の感度を示す。相対感度は、起動以後の時間に対してプロットされる。コーティング不含センサーは、黒四角を用いてプロットし、コーティング含有センサーは、空白丸を用いてプロットしている。
【図9】図9は、ラクテートセンサーの真試料濃度からの血液についての測定値偏差(血液バイアス)を示す。コーティング不含センサーは、黒四角を用いてプロットし、コーティング含有センサーは、空白丸を用いてプロットしている。
【図10】図10は、平面センサーを用いた一連の血液測定値について、グルコースセンサーにおける信号の減少(血液ドリフト)を示す。
【図11】図11は、200μMのクレアチニンを含む検量溶液に曝露された二つのタイプの親水性ポリ(メタ)アクリレートで被覆されたクレアチニンセンサーのセンサー応答を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ポリマー性材料のカバー膜層を含む改善された酵素センサーであって、多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリマーで被覆されている酵素センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
酵素センサーは、測定される化学種(被検体)が、検出前にそのセンサー中において酵素で触媒される反応を起こすセンサーである。被検体と酵素(被検体が基質である場合)または酵素カスケードとの反応は、(理想的な条件下における)濃度が、被検体の濃度に比例するまたはそれと一致する第二種を生じる。次に、その第二種の濃度を、変換器によって、例えば、電極によって検出する。
【0003】
酵素センサーの酵素は、典型的には、流体試料に接触するのに適するセンサー膜中に包含される。最も典型的には、酵素は、センサー膜の別々の酵素層中に包含されるが、それは、カバー膜によって流体試料から隔てられている。したがって、被検体は、センサーのカバー膜を介して拡散後に酵素と接触し、次に、酵素/被検体反応が起こり、そして次に、第二種がセンサーの検出器部分、例えば、電極へと拡散して、被検体濃度に関連した応答を生じる。
【0004】
酵素センサーにおいて、カバー膜は、一方では、被検体が流体試料から酵素層へと制御方式で拡散するような適する多孔度を有するべきである、すなわち、被検体についての拡散抵抗は、好ましくは、被検体の第二種への変換が、被検体濃度によって制限されるにすぎないようなものであるべきである。
【0005】
もう一方において、カバー膜は、カバー膜の両側のタンパク質に、具体的には、酵素層の酵素に不浸透性または実質的に不浸透性であって、流体試料中への酵素の浸出を免れるはずである。
【0006】
酵素センサーに有用な多孔質カバー膜には、トラックエッチング処理済み(track-etched)膜(すなわち、不連続の、貫通している細孔が、原子衝撃後のエッチングによって生じている膜)、およびくねり細孔(すなわち、連通した細孔セルで形成される細孔)を有する溶液流延膜が含まれる。後者は、溶媒中に溶解した材料を不連続の薄膜としてまたは現場で流延することによって製造することができるが、その場合の材料は、大部分が容易に洗浄除去されうることで細孔が形成されるような化合物を含んでよい。
【0007】
トラックエッチング処理済みカバー膜を含む慣用的な酵素基剤センサーは、大形分子(すなわち、約1,000ダルトンを上回る分子量)が、その細孔を介して拡散可能であるということに関していくつかの問題を有する。
【0008】
図4のAおよびBは、酵素基剤センサーについて、大形のトラックエッチング処理済み細孔を含有するカバー膜の問題を示している。酵素(25)が、多孔質カバー膜(26)の細孔中にどのように移行しうるかを理解することができる。いろいろな程度の充填(27)は、感度の変動をもたらす。センサー線形性は、例えば、カバー膜の外側に浸透する酵素(28)によって影響されることがありうるし、または高レベルおよび低レベル試料中の被検体が、二つの異なった酵素集団(低被検体レベルでの活性酵素(33)および高被検体レベルでの活性酵素(32))で分解されているという理由で影響されることがありうる。試料の側から、血液タンパク質(31)は、細孔に入り且つ細孔壁上に沈殿し、それによって、被検体の拡散係数を減少させ、したがって、血液試料測定時にセンサー感度を減少させることがありうる。更に、細孔中に血液タンパク質が単に存在するだけで、血液バイアスが生じることがありうる。もう一つの問題は、特に、トラックエッチング処理済み膜が用いられる場合の酵素層中の被検体の分布に関する。
【0009】
基底酵素層からの活性酵素が、多孔質カバー膜中にまたはそれを介して移行可能である場合、それは、別の問題を引き起こすかもしれない。第一に、カバー膜を介する酵素の損失(29)は、センサーユニットの寿命を減少させる。第二に、酵素が、膜の細孔中に移行する場合(27)、それは、いろいろなセンサーごとの感度を生じるであろう。更に、センサーの感度は、沈殿/溶解が平衡に達するまで、最初の数日にわたって変化する傾向もある。このような変化は、センサー性能を変動させるので好ましくない。酵素が、膜の外側に浸透する場合(28)、その酵素は、流体試料中においてその酵素作用を行うことが可能であろう。しかしながら、このような場合、第二種(例えば、H2O2)に変換される被検体(例えば、グルコース、ラクテート、クレアチン、クレアチニン)の量は、第一被検体の濃度に線形的に相関しないが、それは、Kmおよび他の可能性のある基質(例えば、O2)の濃度のような他の因子も、変換速度に影響するからである。
【0010】
流体試料からのタンパク質(例えば、血液タンパク質)が、カバー膜の細孔中に通過可能である場合(31)、それらタンパク質は、細孔の液体カラム中に残るので、酵素層中への被検体について、面積を低下させ且つ拡散長さを増加させるであろう。したがって、センサーは、いろいろなタンパク質含有率を有する流体試料の被検体についていろいろな感度を有するであろう。この現象を、血液バイアスと称するが、それは、カバー膜の細孔を占有する血液成分によって引き起こされ、それによって、カバー膜の細孔、ひいては、酵素膜それ自体の細孔に、より高い(しかしながら、いろいろな)有効な拡散抵抗が与えられる。
【0011】
更に、細孔の表面が、全く血液適合性でない場合、それらタンパク質は、細孔内部を含めた膜表面上に沈殿し(30)、そして被検体が酵素層中へと十分に拡散する面積を徐々に小さくする(有効な細孔サイズを徐々に減少させる)ことがありうる。この現象を、血液ドリフトと称するが、それは、細孔の内面上に沈殿し、ひいては、感度を減少させる血液成分(具体的には、タンパク質および脂質)によって引き起こされる。
【0012】
これら作用(血液バイアスおよび血液ドリフト)は双方とも、既知の酵素センサーが、しばしば、水性液で検量されるし、しかもそれらは、血液試料を測定するためのものであるという理由で、血液分析器のセンサーには、特に望ましくない。
【0013】
慣用的な溶液流延膜も、センサーの変動性、線形性、酵素層中の不十分な被検体分布等のような上記のタイプの問題を引き起こす。
更に、酵素センサーに有効なすすぎ溶液、具体的には、プロテアーゼ(例えば、ズブチリシン)を含むすすぎ溶液を使用することが望まれる。更に、このようなプロテアーゼは、酵素層中に浸透不能であることが重要である。
【0014】
US4,919,767号は、被検体を通過させる能力を有すると同時に、試料の他の種を拒絶する液体を充填した多孔質材料の液状膜と酵素層を含む酵素センサーを開示している。
【0015】
US6,413,393号は、UV吸収性ポリマー、例えば、ポリ(アルキレングリコール)およびポリ(アルキレンオキシド)などの親水性セグメントを含む変異体を含めた、ポリウレタン、ポリ尿素またはポリウレタン/ポリ尿素コポリマーを包含する少なくとも一つの機能性コーティング層を含むセンサーを開示している。そのセンサーは、酵素層と、二つの機能性層、例えば、被検体制限層および生体適合性層を含んでよい。
【0016】
US2003/0217966A1号は、同じタイプのもの、すなわち、ポリエーテルウレタン尿素であってよい別のポリマーのミクロドメインの網状構造を有するポリウレタン(具体的には、ポリエーテルウレタン尿素)母材を包含する、それによって被検体の輸送を調節する植込み可能膜を開示している。
【0017】
US6,652,720B1号は、少なくとも一つの電極と複合膜を有する電気化学センサーを開示している。その複合膜は、ポリウレタン基剤化合物、例えば、異なった水吸収性を有するポリウレタンの混合物を含む拡散制御用外層を含む。
【0018】
US2002/065332A1号は、多孔質ポリマーまたは親水性可塑剤を、親油性ポリマー、例えば、ポリウレタンとの組合せで含むポリマー性参照電極膜を開示している。
【0019】
US6,350,524B1号は、親水性ポリウレタンから形成される保護膜と、不溶性金属塩層を含む、塩化物選択的電極用の固体状態膜を開示している。
US6,200,772B1号は、非イオン界面活性剤、例えば、脂肪族ポリエーテルで修飾されたポリウレタンを含む膜を有するセンサーデバイスを開示している。
【0020】
US5,322,063A号は、親水性ポリウレタン組成物の均一膜を開示している。その膜は、グルコース酵素センサーに有用である。
WO2003/076648A1号は、酵素およびメディエーターを含むポリマー(例えば、脂肪族ポリエーテルウレタン)の均一層を有する平面厚手皮膜バイオセンサーを開示している。
【0021】
US2004/0154933A1号は、電気化学センサーに用いるためのポリマー性膜を開示している。その膜は、例えば、ポリウレタンと混合された、カルボキシル化ポリ塩化ビニルを含有する。
【0022】
WO2004/062020A2号は、燃料電池用の、多孔質ポリマー性材料、例えば、フォームのガス拡散層を開示している。その材料は、ポリウレタンフォームまたはポリエーテルポリウレタンフォームであってよい。同様に、US2004/0001993A1号は、燃料電池用のガス拡散層を開示している。
【0023】
EP1486778A2号は、その中に包括された生物活性剤、例えば、酵素を有するポリマーの膜を含む電気化学バイオセンサーを開示している。
WO92/04438A1号は、疎水性プラスチック層、例えば、ポリウレタン層の基質制限層を有する電気化学バイオセンサーを開示している。
【0024】
EP0025110A2号は、例えば、ポリ塩化ビニルの非対称半透膜を有する電気化学センサーを開示している。
US2004/0011671A1号は、酵素層と、生体保護膜、例えば、ポリウレタン層、そして例えば、PTFE、PVF、セルロースエステル、PVC、ポリプロピレン、ポリスルホンまたはポリ(メチルメタクリレート)の血管新生性外層を有する植込み可能デバイスを開示している。
【0025】
WO90/05910A1号は、酵素層と、「被検体減衰層」、例えば、ポリウレタン層を含む完全微小成形加工(wholly microfabricated)バイオセンサーを開示している。
WO96/26668A1号は、ポリウレタンまたはシリコーンでコーティングされていてよい軟質細管膜であって、酵素センサー、例えば、グルコースセンサーと接触しているチャンネルに連通している細管膜を含む植込み可能センサーシステムを開示している。
【0026】
US5,523,118号は、経皮ドラッグデリバリーシステムのための微孔質膜を開示している。その微孔質膜は、例えば、ポリ塩化ビニルから製造することができ、そして接着剤適合性のウレタン系ポリマー、例えば、脂肪族ポリエーテルウレタン分散液から形成される実質的に多孔質のコーティングでコーティングされる。そのウレタン系ポリマーは、微孔質膜の表面をコーティングするが、その細孔をブロックすることはない。
【0027】
US6,509,148号は、酵素と混合された親水性ポリウレタンを利用したバイオセンサーを開示している。
JP2655727B2号は、ポリウレタンまたはセルロースアセテートの基質制限層またはこれらの二重層と、ポリビニルアルコール(PVOH)の生体適合性外部皮膜を有する酵素センサーを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上記を考慮すると、酵素および他のタンパク質および第二被検体に有効なバリアを与え、そしてなお、酵素層への第一被検体の優れた且つ安定な拡散制御を与えるカバー膜を有する改善された酵素センサーが、依然として要求される。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、流体試料中の被検体の濃度を決定する酵素センサーであって、電極、少なくとも一つの酵素層、およびその少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリマーで被覆されている酵素センサーを提供することにより、既知の酵素センサーに関連した上述の少なくとも若干のまたは全ての問題を減少させるまたは排除さえもするということが判明した。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0030】
更に、例えば、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートを用いて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の外部表面および細孔口を被覆する場合、多孔質ポリマー性材料の異なった多孔度に依存して、親水性ポリマーの拡散性を調節して、異なった試料被検体濃度範囲に適する酵素膜を製造するための所望の拡散制限を得ることが可能である。
【0031】
上述の改善とは別に、前記カバー膜を有するセンサーは、プロテアーゼを含む液体で洗浄することが可能であるということも判明したが、既知のセンサーは、典型的には、プロテアーゼ不含の洗浄液を必要とする。
【0032】
本発明は、更に、新規な膜、および記載の酵素センサーのカバー膜を洗浄する方法を提供する。
発明の詳細な説明
本明細書中に記載のように、本発明は、流体試料中の被検体の濃度を決定する新規な酵素センサーを提供する。
【0033】
本明細書中に記載のように、「酵素センサー」という用語は、概して、問題の被検体を第二種へと変換することができる酵素(または酵素カスケード)を含む電気化学センサーを包含するものである。問題の被検体は、可能性のある流体試料成分である。すなわち、酵素センサーは、典型的には、流体試料中の被検体の濃度を測定するのに用いられる。「被検体」は、本明細書中において時々、「酵素基質」または簡単に「基質」とも称される。
【0034】
本発明のセンサーは、典型的には、多使用(multi-use)センサーである。多使用センサーとは、二つ以上の測定に用いられるセンサーとして理解されるはずであり、したがって、2種類以上の試料容量に曝露され、そして検量液、洗浄液等と断続接触することもありうる。このようなセンサーは、通常は、より長い時間用いられる。したがって、上述の問題、例えば、寿命、酵素移動による試料ごとの感度、血液ドリフト、血液バイアス等は、既知の多使用センサーの場合に特に顕著となるであろう。単一使用(single use)センサーについては、本発明は、血液バイアス、被検体分布等の問題を解決するか、または軽減するであろう。
【0035】
流体試料は、主に、センサーに、具体的には、カバー膜に適合性であるいずれかの液体(好ましくは、水性液)でありうる。流体試料には、尿、唾液、間質液、髄液および血液などの体液が含まれる。血液には、全血試料、希薄血液試料、血液画分、反応前血液試料等が含まれる。センサーは、具体的には、全血試料に十分に適している。
【0036】
本発明のセンサーは、慣用的なタイプのものであってよいし、または平面タイプのもの、例えば、厚手皮膜センサーまたは薄膜センサーであってよい。このようなセンサーの酵素膜は、しばしば、積層構造体であり、積層膜と称される。
【0037】
慣用的なタイプの酵素センサーの場合、膜、例えば、多層膜であって、例えば、支持層、酵素層およびカバー膜を含むものは、典型的には、離散物体として組み立てられた後、それを、電極と接続して配置する(すなわち、概して、その先端に取り付ける)。例えば、図1を参照されたい。このような多層膜の構築方法は、当該技術分野において周知である。例えば、WO98/21356号を参照されたい。慣用的なタイプの酵素センサーは、トラックエッチング処理済み膜、更には、溶液流延膜を包含することができる。
【0038】
平面タイプの酵素センサー、例えば、厚手皮膜センサーおよび薄膜センサーの場合、酵素層およびカバー膜を含む酵素膜と電極は、電極、いずれかのスペーサー層および一つまたは複数の中間層、酵素層、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料および親水性ポリマーに該当する材料を(典型的には、逐次的に且つ個々に)、固体の誘電性支持体、例えば、セラミックまたはウェファー材料上に付着させることによって配置される。平面センサー構築の一例を、図3に示す。平面タイプセンサー、例えば、厚手皮膜センサーおよび薄膜センサーの構築方法は、当該技術分野において周知である。例えば、WO01/90733号、WO01/65247号およびWO90/05910号を参照されたい。このようなセンサー膜の層に該当する材料は、ほとんど、溶液流延によって付着される。
【0039】
本発明の酵素センサーは、電極、少なくとも一つの酵素層、およびその少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口は、親水性ポリマーで被覆されている。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0040】
カバー膜
酵素センサーのカバー膜は、例えば、一定の十分に規定された典型的な量の被検体を、酵素層中に確実に拡散させることにより、すなわち、制御条件下において、酵素センサーの品質に重要な役割を果たしている。このような被検体で制限される変換は、センサー応答と、妥当な範囲内の被検体濃度との間に実質的線形関係を得るための前提条件である。
【0041】
したがって、本発明の酵素センサーは、酵素層を流体試料から分離するのに適応しているカバー膜の形の拡散制限層を含む。そのカバー膜は、被検体の変換のための固定化酵素の能力を超えないように、および被検体の酵素変換に十分な酸素(O2)が酵素層中に存在するように、酵素層中への被検体の拡散を制限する多孔質膜である。拡散制限層の原理は、例えば、デンマーク特許第170103号に記載されている。
【0042】
更に、カバー膜を介する被検体の拡散は、二つの別々の流体試料の同一被検体濃度が、十分に規定されたセンサー応答を生じるように、時間経過中におよび試料ごとに不変であるということが望まれる。更に望まれるのは、カバー膜が、その膜を越えて少量の被検体を急速拡散させることが可能であるという特徴であり、それによって、酵素層中の被検体の一様分散が容易になるので、酵素層の酵素は、被検体を第二種へと速やかに変換して、急速センサー応答を生じる。酵素による被検体のこのようなほぼ同時の変換は、改善された線形性をもたらす。更に、流体試料中に存在する巨大分子、例えば、タンパク質および酵素は、カバー膜を越えて移動するのを実質的に妨げられることが望ましい。例えば、洗浄溶液または血液試料中に存在するプロテアーゼは、このようなプロテアーゼが、カバー膜中におよびそれを介して移動することが可能である場合、酵素層に有害な作用を有するであろうということが注目された。
【0043】
もう一方において、カバー膜は、センサー内の第二種(例えば、H2O2およびO2)の高い保持性を与えることが可能であるということも重要であり、その結果、その第二種に由来する応答は、カバー膜の細孔を介して拡散し通すそれら種の実質的な量によって偏ることがないし、そして被検体で制限される変換を維持するための十分な量のO2が、酵素層中に保持される。これら特徴は、具体的には、拡散制限作用を有する中間層が、酵素層と電極との間に配置されるかどうかを考慮するのに関係がある(下を更に参照されたい)。
【0044】
これら好都合な特性のいくつかを有するカバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれるがこれに制限されるわけではない親水性ポリマーで被覆される場合に達成される。
【0045】
その少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、かなり広範囲の材料から選択することができる。代表的な例には、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PETP)、グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート(PETG)およびグリコール修飾ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG)など)、ポリカーボネート、セルロース(再生、アセテート、トリアセテート、アセテートブチレート)、ポリオレフィンおよびそれらの誘導体、フッ素化炭化水素ポリマーおよびコポリマー(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー)、ポリイミド(例えば、Kapton)、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニルおよびその誘導体(塩化ビニルコ(メタ)アクリレート型コポリマーなどのコポリマーを含む)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン、およびオルガノシロキサンポリカーボネートのコポリマー(例えば、US3,189,662号に開示されたもの)が含まれる。
【0046】
本発明のある側面において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択される。
一つの態様において、多孔質ポリマー性材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)である。
【0047】
別の態様において、多孔質ポリマー性材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)である。
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリウレタンを含まないということが好適であるが、それは、このような材料が、特に、拡散制限作用を有する中間層が包含される場合、過剰レベルのH2O2拡散を与えるであろうと考えられるからである。
【0048】
カバー膜(そして更に、その少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料)は、二つの面、すなわち、酵素層に近接する一面および酵素層に遠位の一面を含むが、後者は、更に、酵素センサーが使用中の時に、流体試料に面している。上述のように、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面は、親水性ポリマーで被覆されている。
【0049】
本発明のある側面において、少なくとも、酵素層に遠位の面は、親水性ポリマーで被覆されている。この側面は、血液バイアスおよび血液ドリフトの減少または排除に関する利点を与え且つセンサーの寿命を延長する。
【0050】
別の側面において、少なくとも、酵素層に近接する面は、親水性ポリマーで被覆されている。変化する感度、線形性の欠如、酵素層中の被検体分布、および減少した寿命に関する問題は、この方法で減少させるまたは排除することができると考えられる。少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、例えば、適する血液適合性を有する多孔質ポリマー性材料を選択することによって適切に選択される場合、血液バイアスおよび血液ドリフトに関する問題は、酵素層に遠位の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の面の外部表面および細孔口を被覆している親水性ポリマーの不存在下においてさえも、少なくとも一部分減少させることができる。
【0051】
好ましい態様において、双方の面は、親水性ポリマーで被覆されている。この態様は、血液バイアスおよび血液ドリフトの減少または排除さえも、酵素層中の被検体分布、感度および線形性の改善に関する利点を与え、センサーの寿命を延長し、酵素の移動を制限し、そして線形性を改善する。
【0052】
図5のAおよびBは、図4のAおよびBと比較したところ、親水性ポリマー、例えば、親水性ポリウレタンまたは親水性ポリ(メタ)アクリレートの(両面)コーティングが、トラックエッチング処理済み膜を含む慣用的なセンサーの問題をどのように解決するかを示している。カバー膜が、親水性ポリマー、例えば、親水性ポリウレタンの層中に埋封されている場合(34)、上述の問題は、酵素層からの大形分子、すなわち、酵素と、流体試料からの血液タンパク質または他のタンパク質が、親水性ポリマーの層に入るまたはそれを通過することができないという理由で、全て軽減される。
【0053】
「外部表面および細孔口」という表現は、細孔口(細孔開口部)で中断される表面である少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の各々二つの面を意味する。
本文中の「で被覆される」という表現は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の表面のみならず、細孔口も、親水性ポリマーで被覆されるということを意味する。
【0054】
本明細書中で用いられる「親水性ポリマー」という用語は、単一親水性ポリマー、更には、二つまたはそれを超える親水性ポリマーの混合物を意味するものである。上記の一つまたは複数の親水性ポリマーは、30%までの他の非親水性ポリマーと混合することができるということは理解されるはずである。一つの好ましい態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料上のコーティングは、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーを含む。
【0055】
平面センサーについて、親水性ポリマーのコーティングは、典型的には、親水性ポリマーの溶液を、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の表面(および細孔口)上に分配する、噴霧する、スクリーン印刷すること等によって得られる。本発明のある側面において、酵素層に最も遠位の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口は、親水性ポリマーで被覆される。別の態様、すなわち、酵素層を親水性ポリマーでコーティングした後に、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を与える(そして場合により、その多孔質ポリマー材料を同じまたは別の親水性ポリマーでコーティングする)態様も、まさに、少なくとも多孔質ポリマー材料の両面がコーティングされている態様の通りであると考えられる。
【0056】
慣用的なセンサーについては、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料上のコーティングは、親水性ポリマーの溶液を、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の(両面かまたはその一つの面だけの)表面(および細孔口)上に分配する、噴霧する、スクリーン印刷すること等によって得ることができるし、または少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を、親水性ポリマー等の溶液中に浸漬することができる。
【0057】
したがって、具体的には、トラックエッチング処理済み多孔質材料を含む慣用的なセンサーについて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の両面は、親水性ポリマーで被覆されていてよい。酵素層に近接する少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の面も、親水性ポリマーで被覆されるということは、一つ一つの細孔間の比較的大きい距離が、親水性ポリマーコーティングの不存在下において非線形応答を生じるという理由で、具体的には、トラックエッチング処理済み多孔質ポリマー性材料について特別な利点を与えると考えられる。この状況において、被検体(酵素基質)は、酵素層内の非占有酵素分子へと拡散すべきであろうが、一層長い拡散距離は、非同時変換を引き起こす。対照的に、酵素層に近接する少なくとも一つの多孔質ポリマー材料の面上の親水性ポリマーコーティングは、その層内の被検体の拡散を容易にし且つ被検体を一層一様に酵素層に与えるであろうが、それによって、より高いまたはより線形の応答が得られる。したがって、少なくとも一つの多孔質ポリマー材料の面上の親水性ポリマーコーティングが、酵素層に近接している態様において、被検体は、利用可能な酵素分子に到達するまで、より稠密な酵素層において短距離を移動すべきであるにすぎないであろう。
【0058】
本発明の若干の側面において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の外部表面および細孔口だけが、親水性ポリマーで被覆されているのではなく、その親水性ポリマーもまた、その少なくとも一つの面から多孔質ポリマー性材料の細孔に少なくとも一部分浸透している。
【0059】
これらの具体的な態様では、カバー膜層の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されていると言われている。
本文中の「含浸されている」という用語は、親水性ポリマーが、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の両面の外部表面および細孔口を被覆し、そして更に、多孔質ポリマー性材料の細孔に浸透しているということを意味するものである。
【0060】
「少なくとも一部分含浸されている」という用語は、親水性ポリマーが、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口を被覆し、そして更に、その少なくとも一つの面に由来する多孔質ポリマー性材料の細孔に少なくとも一部分浸透しているということを意味するものである。
【0061】
本発明の別の側面において、親水性ポリマーは、センサー使用時に、実質的に水に不溶性である。しかしながら、親水性ポリマーは、カバー膜に適用されてそれを被覆する場合に、好ましくは、架橋していないし、そして好ましくは、引き続きの架橋は起こらないということが理解されるはずである。代わりに、親水性ポリマーの親水性および水への不溶性の組合せは、親水性ポリマーの親水性セグメントおよび疎水性セグメント/部分の適切な組合せによって得られる。この配置は、架橋工程を完全に省略することができるという点で、はるかに単純化された製造手順を提供する。
【0062】
「水に不溶性」という用語は、親水性ポリマーで被覆されたカバー膜を水溶液中において25℃で24時間貯蔵時に、実質的に水中に溶解しないポリマーを意味するものである。
【0063】
本発明のある態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料は、0.002〜30%(vol/vol)の範囲内の多孔度を有する。
ポリマー性材料の望ましい多孔度は、ある程度は、検出範囲の望ましい上限に依存する。検出範囲のきわめて高い上限は、カバー膜が、被検体にかなり高い拡散抵抗を与えるはずであるような広い線形範囲を得るために、かなり低い多孔度を必要とするであろう。多孔度(%(vol/vol))および線形検出範囲の上限(被検体のmM)の数積として表される場合、その値は、好ましくは、0.05〜10[%(vol/vol)・mM]または好ましくは、0.1〜2[%(vol/vol)・mM]のように、0.01〜50[%(vol/vol)・mM]の範囲内である。
【0064】
本発明のいろいろな側面において、多孔質ポリマー性材料の平均細孔サイズは、1〜150nmまたは10〜110nmのように、0.05〜250nmの範囲内である。
一つの態様において、具体的には、センサーが慣用的なタイプのものである場合、多孔質ポリマー性材料は、例えば、40,000〜40,000,000個細孔/cm2の範囲内の細孔密度を有するトラックエッチング処理済み材料である。
【0065】
トラックエッチング処理済みカバー膜を含むクレアチニン/クレアチンセンサーおよび尿素センサーについて、多孔度は、好ましくは、0.2〜0.25%のように、0.05〜0.1%の範囲内である。トラックエッチング処理済みカバー膜を含むラクテートセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.003〜0.004%のように、0.0005〜0.015%の範囲内である。トラックエッチング処理済みカバー膜を含むグルコースセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.01〜0.02%のように、0.001〜0.05%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度は、多孔度(%)=π×(細孔直径/2)2×(細孔密度)×100%として決定される。
【0066】
溶液流延膜の多孔度は、膜が水で湿潤している時に水で占有される体積として一層容易に決定することができる。溶液流延膜の多孔度は、典型的には、3〜30%のように、1〜40%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度と溶液流延膜の多孔度との間の少なくとも1オーダーの差は、トラックエッチング処理済み膜の「有効な」細孔(すなわち、貫通している細孔)だけを考慮しているということによって説明することができるが、溶液流延膜の細孔度の決定には、全ての細孔およびキャビティが含められる。
【0067】
一つの態様において、親水性ポリマーは、親水性ポリウレタンである。
ポリウレタンは、血液接触表面に、例えば、インプラントおよび医療用具に最も広く用いられている生物医学的ポリマーである。ポリウレタンエラストマーは、硬質および軟質のセグメントの交互ブロックから成る多相ブロックコポリマーである。疎水性硬質セグメントは、脂肪族、環状脂肪族または芳香族のジイソシアネートと、ジオール、ジアミンまたは水との反応で形成される。軟質の親水性または相対的に親水性のセグメントは、低分子量のヒドロキシ末端付きポリエーテル、ポリエステルまたは脂肪族ポリオレフィンから構成される。親水性ポリオールは、連鎖延長剤として用いられるし、または或いは、プレポリマー中に包含することができる。硬質と軟質のセグメント間の、および疎水性と親水性のセグメント間の化学的不適合性は、ポリウレタン中の相凝離をもたらす。硬質セグメントドメインは、第二結合で相互連結していて且つ軟質セグメントマトリックス中に分散しているが、システム全体を強化する物理的架橋として働く。軟質マトリックスは、異なった親水性を有するポリエーテルまたはポリエステルの混合物を用いることにより、親水性に関して調節することができる。きわめて親水性のポリウレタンには、ポリエチレングリコールがしばしば用いられるが、それらの親水性の調節は、高級ポリアルキルエーテル、例えば、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコールで達成することができる。この方法で、ポリウレタンは、親水性、疎水性、親水性/疎水性、硬質且つ剛性または軟質且つ弾性、加水分解安定性、または意図的に分解性となるように製造することができる。それらの硬質および軟質セグメント構造のゆえに、それらポリウレタンは、機械的に強く、引裂抵抗性であり、そして良好な屈曲寿命を示す。これら性質は、それらポリウレタンを、センサー膜用の親水性コーティングとして適切なものにする。それらコーティングは、親水性セグメントの含有率による高吸水および良好な使用安定性を有する。それらの疑似架橋セグメント構造のゆえに、それらコーティングは、水に不溶性でもある。
【0068】
親水性ポリウレタンは、その中に包含される親水性セグメント、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキシド等のセグメントを有するポリウレタンより選択することができる。このような親水性ポリウレタンは、末端ヒドロキシ基またはアミノ基を有することによって、ジイソシアネートとの反応により線状ポリマー鎖を形成するポリアルキレングリコール(ポリアルキレンオキシド)から製造することができる。このような親水性ポリウレタンの例は、US4,789,720号;同4,798,876号;および同5,563,233号に開示されたものである。他の適する例は、親水性基、例えば、脂肪族ポリエーテルで修飾されたポリウレタンである(例えば、US6,200,772B1号を参照されたい)。
【0069】
親水性セグメントは、典型的には、ポリエチレングリコール、アミノ基末端付きポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アミノ基末端付きポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレンイミン、特に、ポリエチレングリコールから誘導される。
【0070】
いくつかの態様において、親水性ポリウレタンは、脂肪族ポリエーテルウレタン、脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエーテルウレタン、環状脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、芳香族ポリエーテルウレタン、芳香族ポリエーテルウレタン尿素、脂肪族ポリエステルウレタン、脂肪族ポリエステルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエステルウレタン、環状脂肪族ポリエステルウレタン尿素、芳香族ポリエステルウレタンおよび芳香族ポリエステルウレタン尿素より選択される。脂肪族ポリエーテルウレタンまたは環状脂肪族ポリエーテルウレタン(例えば、シクロヘキシルポリエーテルウレタン)は、線状または環状の脂肪族ジイソシアネートが用いられている場合の膜コーティングとして好適である。天然起原のイソシアネート(例えば、リシンジイソシアネート)も適している。シクロヘキシルポリエーテルウレタンは、良好な生体適合性を膜に与え且つ膜の汚染を抑制するまたは排除さえもすると考えられる。
【0071】
本発明のある側面において、親水性ポリウレタンは、ポリエチレングリコールの主鎖セグメント−(CH2−CH2−O−)n−を、少なくとも7%(w/w)または少なくとも10%(w/w)のように、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの典型的な重量比で含む。ポリエチレングリコールセグメントの有意の含有率は、適当な親水性を与え且つ血液適合性を改善すると考えられる。
【0072】
好ましい親水性ポリウレタンの適する例は、例えば、本明細書中にそのまま援用されるUS5,322,063号に開示されたものである。
本発明のある側面において、親水性ポリウレタンは、多糖(例えば、アルギネート、カラゲナン、ペクチンおよびデキストラン)、ポリ(HEMA)、部分加水分解ポリビニルアセテート(PVA)またはセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース)の主鎖セグメントを、少なくとも7%(w/w)または少なくとも10%(w/w)のように、少なくとも5%(w/w)の多糖、ポリビニルアセテートまたはセルロース誘導体セグメントそれぞれの典型的な重量比で含む。
【0073】
商業的に入手できる好適な親水性ポリウレタンの例には、Hydromed D4(湿潤時の含水率:50%(w/w))および Hydromed D640(湿潤時の含水率:93%(w/w))が含まれるが、これに制限されるわけではない。いずれのポリウレタンも、Cardiotech International Inc., Wilminton, MA, USA の商品名である。
【0074】
Hydromed D4およびD640製品は、中心ポリブチレンオキシドセグメントと、ポリアルキレンオキシド末端基を含む。ポリアルキレンオキシド基は、ポリエチレンオキシドかまたはポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドであってよい。どちらの場合も、ポリエチレンオキシドセグメントは、好ましくは、ポリブチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのセグメント長さより長い。これは、十分な親水性および吸水、更には、適切な血液適合性を与えると考えられる。
【0075】
別の態様において、親水性ポリマーは、親水性ポリ(メタ)アクリレートである。
親水性ポリ(メタ)アクリレートの例には、エステルのアルコール部分の一部分としてポリ(エチレンオキシド)置換基を有するアクリル酸エステルから成る第一モノマー単位と、メタクリレートおよびアクリレートより選択される一つまたはそれを超える第二モノマー単位を含むアクリルコポリマーが含まれる。第一モノマー単位のポリ(エチレンオキシド)置換基は、典型的には、200〜2000、例えば、500〜1500の平均分子量を有する。このような第一モノマーの例には、メトキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、メトキシポリ(エチレンオキシド)アクリレート等が含まれる。第二モノマー単位の例には、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート等が含まれる。
【0076】
好ましい親水性ポリ(メタ)アクリレートには、本明細書中にそのまま援用されるWO93/15651A1号に開示されたアクリルコポリマーが含まれる。
モノマーの好ましい組合せは、メトキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートである。
【0077】
他の好ましい親水性ポリ(メタ)アクリレートには、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)のセグメントまたは側鎖を有するものが含まれる。
本発明のある側面において、親水性ポリマーの親水性は、湿潤時の含水率が、25〜95%(w/w)または45〜95%(w/w)のように、5〜100%(w/w)または10〜95%(w/w)の範囲内となるようなものである。典型的には、その含水率は、より高い親水性セグメント含有率が(湿潤時の)より高い含水率を生じるという意味で、例えば、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートそれぞれにおける親水性ポリマーのタイプおよび含有率に依存する。多孔度も、含水率の好ましい範囲に関して、ある種の役割を果たすことがありうる、すなわち、小さい細孔を有する膜について、含水率の好ましい範囲は、10〜30%(w/w)のように、5〜80%(w/w)または8〜40%(w/w)であってよい。拡散、拡散速度、および特に大形の分子を排除する能力に関して、カバー膜の性質は重要である。
【0078】
更に考慮されるべきことは、グルコースの拡散を可能にするが、もう一方では、H2O2の拡散を制限するカバー膜の能力である。したがって、一つの態様において、カバー膜を介するグルコースの拡散速度に対する、カバー膜を介するH2O2の拡散速度は、3〜15または3〜10のように、3〜20の範囲内である。拡散速度は、「実験」部分に記載のように決定される。カバー膜の相対拡散速度は、典型的な既知のポリウレタンカバー膜のそれより優れているということが注目される。
【0079】
カバー膜を介するグルコースの見掛け拡散係数は、グルコースセンサーについて、好ましくは、0.3〜1.5x10−9または0.5〜1.1x10−9のように、0.1〜5.0x10−9の範囲内であるべきである。該当するラクテートセンサーについて、カバー膜を介するラクテートの見掛け拡散係数は、好ましくは、1.2〜3.2x10−10のように、0.5〜5x10−10の範囲内であるべきである。見掛け拡散係数は、「実験」部分に記載のように測定される。
【0080】
更に関係があるのは、「大形」分子(例えば、ペプチド、タンパク質、および酵素層の酵素などの酵素(例えば、グルコースオキシダーゼおよびラクテートオキシダーゼ))を排除するが、同時に、関係のある被検体、例えば、ラクテート、グルコース、クレアチン、クレアチニン等の拡散を可能にするカバー膜の能力である。このような被検体は、典型的には、約200までの分子量を有するが、ペプチド、タンパク質および酵素は、小形ペプチドの場合の約300〜タンパク質の場合の数千またはそれを上回る、例えば、グルコースオキシダーゼの場合の約30,000の分子量を有することがありうる。
【0081】
カバー膜層は(湿潤形の場合)、慣用的なセンサーについて、典型的には、6〜30μmまたは10〜17μmのように、5〜40μmの範囲内の厚みを有する。厚手皮膜センサーについて、(湿潤形の)カバー膜層は、典型的には、2〜10μmまたは3〜5μmのように、1〜20μmの範囲内の厚みを有する。
【0082】
更に、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層は、具体的には、厚手皮膜センサーについて、0.25〜3μmまたは0.5〜1μmのように、0.1〜5μmの範囲内の厚みを有することができる。
【0083】
すなわち、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層は、典型的には、ポリマー性材料の平均細孔サイズの100〜1000%または200〜500%のように、100〜2000%の範囲内の厚みを有する。
【0084】
好ましい吸水性を考えると、湿潤形のカバー膜の厚みと、乾燥形のカバー膜の厚みとの間の比率は、好ましくは、2:1〜1:1の範囲内である。
湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、100:1〜1:1または80:1〜2:1の範囲内であってよい。
【0085】
いくつかの態様において、具体的には、慣用的なセンサーについて、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、10:1〜2:1の範囲内のように、20:1〜1.5:1の範囲内であってよい。いくつかの他の態様において、具体的には、例えば、トラックエッチング処理済み膜を含む慣用的なセンサーについて、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、好ましくは、50:1〜30:1の範囲内のように、80:1〜10:1の範囲内である。
【0086】
例えば、溶液流延膜を含む平面センサーについて、湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの間の比率は、好ましくは、6:1〜3:1の範囲内のように、10:1〜2:1の範囲内である。
【0087】
他の態様において、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料と親水性ポリマー(非湿潤状態)との間の重量比は、100:1〜1:1、例えば、80:1〜10:1または50:1〜30:1の範囲内である。
【0088】
本発明の一つの態様において、カバー膜は、酵素センサーの最も外部層である。
いくつかの利点は、例えば、親水性ポリウレタンを用いて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面(および細孔口)を被覆することによって確認された。一つには、ポリウレタンは、酵素/タンパク質の浸透/移行について、多孔質ポリマー性材料の細孔を有効にブロックする小さい細孔を有するが、親水性がより少なく且つ疎水性の分子の拡散を依然として可能にする。更に、親水性ポリウレタンは、通常は水に不溶性であるが、ポリウレタンは、膨潤性であり且つ実質的な量の水を保持することが可能である。結果として、ポリウレタンコーティングの浸出および退化は、センサーの寿命期間中に実質的に存在しないであろう。同じことが、例えば、親水性ポリ(メタ)アクリレートにも当てはまる。
【0089】
電極
酵素センサーの電極は、被検体と、一つまたは複数の酵素、例えば、クレアチニンセンサーの場合のような酵素カスケードとの反応生成物を考慮して選択される。電極は、貴金属、例えば、金、パラジウム、白金、ロジウム、インジウムまたはイリジウム、好ましくは、金または白金、またはそれらの混合物から製造することができる。他の好適な電子伝導性材料は、MnO2、プルシアンブルー、黒鉛、鉄、ニッケルおよびステンレス鋼である。
【0090】
場合によっては、必須の電極に隣接した追加の電極、例えば、内部参照電極および/または対向電極を更に包含するのが好適である。例えば、図3を参照されたい。
酵素層
酵素センサーの(一つまたは複数の)酵素層は、一つまたはそれを超える酵素が、電極表面で検出することができる二次種への被検体の変換を容易にするという点で、重要な役割を果たしている。いくつかの態様において、単一酵素が用いられるが(例えば、グルコースオキシダーゼまたはラクテートオキシダーゼ、ウレアーゼ)、複数の酵素(例えば、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼ)を用いて、電極で検出することができる種をもたらす反応カスケードを容易にすることができる。
【0091】
一つまたは複数の酵素は、それ自体で付着させてよいし、または直接的にまたは間接的に固定した形、例えば、ポリマー中に埋封又は混合させた形、または移動を減少させるか又は排除するように基底層またはカバー層に架橋したまたは固定した形であってよい。若干の態様において、複数の酵素は、別々の層に配置することができる。酵素層は、更に、過剰量の酵素の使用を免れるように且つ十分に決定された量の酵素を、センサー膜の十分に規定された領域に確実に入れるように、リングまたはガスケットによって定位置に保持することができる。
【0092】
酵素層は、炭水化物オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、グリコレートオキシダーゼ、アルドースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、α−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ウレアーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、P−450、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよび関連補酵素が含まれるがこれに制限されるわけではない少なくとも一つの酵素を含んでよい。
【0093】
クレアチンの検出には、酵素層は、好ましくは、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼを含む。クレアチニンの検出には、酵素層は、好ましくは、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼを含む。グルコースの検出には、酵素層は、好ましくは、グルコースオキシダーゼを含む。ラクテートの検出には、酵素層は、好ましくは、ラクテートオキシダーゼを含む。尿素の検出には、酵素層は、好ましくは、ウレアーゼを含む。
【0094】
追加の層
本発明のある態様において、酵素層は、電極と直接接触していない。したがって、酵素センサーは、好ましくは、電極と酵素層を隔離する1〜3個の層を更に含む。このような一つまたは複数の層は、典型的には、中間層、例えば、妨害制限層を包含する。その一つまたは複数の層は、電極と中間層を隔離する含水多孔質スペーサー層を更に包含してよい。
【0095】
一つの態様において、電極と酵素層を隔離する少なくとも一つの層は、セルロースアセテート(CA)、NafionTM、硬質PVC、BaytronTM、電気重合ポリマー(例えば、ポリチオフェン、1,3−ジアミノベンゼン、フェノール)およびSPEES−PES(ポリアリールエーテルスルホン/ポリエーテルスルホンコポリマー)が含まれるがこれに制限されるわけではない材料の層である。このような層は、妨害制限層として機能することができる。一つの態様において、中間層は、妨害制限セルロースアセテート(CA)層である。
【0096】
別の(上記の態様と組み合わせることができる)態様において、電極と酵素層を隔離する少なくとも一つの層は、含水多孔質スペーサー層である。
センサーが、きわめて低濃度で存在する被検体(例えば、クレアチニン、クレアチン、または1〜20μMの範囲内の検出限界を有する他の被検体)を検出するのに用いられる場合、被検体不含の流体試料は、電極上に疑似信号を生じることがありうるということが認められた。それら疑似信号は、−25μM〜25μM被検体の信号に該当するかもしれないが、それらは、酵素センサーと接触状態にされるいろいろな液体、例えば、血液試料、洗浄液、湿潤液、検量液等の組成差(ゼロである被検体以外)に由来する。疑似信号の知見は、おそらくは、二つの因子の組合せによる。
【0097】
第一に、非イオン種は、妨害制限層を越えて、イオン種よりも急速に拡散する。したがって、試料中に存在するが、すすぎ溶液中には存在しないビカーボネート/CO2は、妨害制限層より下のpHを降下させるであろう。同じ作用は、大部分のすすぎ溶液中に存在するが、試料中には存在しないイミダゾール/H−イミダゾールで認められる。pHの降下は、水の酸化に由来するゼロ電流の降下を引き起こすであろう。
【0098】
第二に、アノード表面におけるイオン種の濃度は、異なった試料の関数として変化する。このような変化は、電極上のイオン組成の変化をもたらし、それによって、非ファラデー電流として知られる電流をもたらすであろう。非ファラデー電流として送られている電荷の全量は、イオン組成の差に依存するにすぎないであろうが、しかしながら、拡散の時定数は、変化することがありうる。
【0099】
上の問題は、アノードと妨害制限層との間に含水多孔質スペーサー層を導入することによって軽減することができるということが判明した。含水多孔質スペーサー層中の水は、アノードが経験するイオン組成の変化を緩衝するであろう。したがって、非ファラデー電流は、一層長い時間間隔にわたって延長するので、より小さい振幅を有するであろう。拡散は、少ない距離でのきわめて速やかな過程(すなわち、約50μMにわたるO2の拡散について約1s未満)である。したがって、スペーサー層は、拡散抵抗(すなわち、妨害制限層)との組合せでのみ機能し、その結果、システムは、抵抗体を含む直列のコンデンサーのように機能する。したがって、妨害制限層は、イオンにむしろ不浸透性であるということ、さもなければ、スペーサー層は、きわめて厚くあるべきであるということが重要である。
【0100】
慣用的なセンサーのための含水多孔質スペーサー層の多孔質ポリマー性マトリックスを形成する(トラックエッチング処理済みまたは溶液流延)材料の好適な例は、多孔質ポリマー性材料について上に記載されたのと同じである。一つの態様において、それら材料には、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートが含まれるが、これに制限されるわけではない。具体的な態様において、このようなセンサーのためのスペーサー層材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)である。このようなスペーサー層は、トラックエッチング処理済みであってよく、そして電極を中間層または酵素層から隔離する含水多孔質スペーサー層として機能する。
【0101】
平面センサー、例えば、厚手被膜センサーのための含水多孔質スペーサー層の多孔質ポリマー性マトリックスを形成する(溶液流延)材料の好適な例には、親水性ポリウレタン、親水性ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリウレタン、NafionTMポリマー、電気重合ポリマー(例えば、ポリチオフェン、1,3−ジアミノベンゼン、フェノール)およびSPEES−PES(ポリアリールエーテルスルホン/ポリエーテルスルホンコポリマー)に制限されるわけではないポリマーが含まれる。或いは、多孔質ポリマー性母材を形成する材料は、多孔性形成(porosity forming)化合物(例えば、洗剤または水溶性親水性ポリマー)と混合された多孔質ポリマー性材料について上に記載されたのと同じ材料、具体的には、このような多孔性形成化合物と混合されたポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートより選択することができる。このような層は、電極を中間層または酵素層から隔離する含水多孔質スペーサー層として機能する。
【0102】
「含水多孔質スペーサー層」という用語は、センサー使用時に、電極表面におけるpH不安定性を減少させるという意味で緩衝作用を与える層を意味するものである。
本文中の、多孔質スペーサー層と連結して用いられる「含水」という用語は、多孔質ポリマー性マトリックスが、実質的な量の水、例えば、多孔質ポリマー性マトリックスの重量に基づいて少なくとも6%の量の水を含むということを意味するものである。含水率は、なお一層高くてよく、例えば、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも40%または少なくとも50%またはそれより高くてよい。溶液流延平面センサーについて、全膨潤(水吸収)度は、過剰の水吸収が、酵素膜の構造保全性に有害であるかもしれないので、考慮すべきことである。したがって、平面センサーについて、含水率は、好ましくは、150%のように、200%を超えるべきではない。
【0103】
酵素センサーの任意のスペーサー層は、概して、直ぐ使用できる形、すなわち、含水多孔質スペーサー層が、実質的な量の水の含有する形で記載され、そしてここにおいて、酵素センサーは、流体試料中の被検体を測定することが可能であるということが理解されるはずである。一つの態様において、酵素センサーは、乾燥形で、すなわち、スペーサー層が実質的に乾燥している形で保管され且つ最終使用者に供給される。したがって、最終使用者は、実質的な量の水を吸収可能であるスペーサー層が、含水多孔質スペーサー層へと変換するように、酵素センサーの膜を水性液で湿潤させる必要があるであろう。他の層(例えば、カバー膜)も、実質的な量の水を吸収することが可能であってよい。
【0104】
慣用的な酵素センサー構築に関して、湿潤は、酵素センサーの内部液によって行うことができる。例えば、図1を参照されたい。平面センサーは、典型的には、特定の湿潤液、洗浄液または検量液等によって湿潤される。
【0105】
緩衝液、陽イオン交換材料または電解質塩をスペーサー層中に包含して、流体試料および他の液体中のビカーボネート(HCO3−)の作用を更に制限することは、好都合であると考えられる。したがって、一つの態様において、含水多孔質スペーサー層は、例えば、緩衝剤、電解質塩(例えば、電解質ポリマー)および陽イオン交換材料より選択される一つまたはそれを超える成分を更に含む。
【0106】
スペーサー層は、トラックエッチング処理済み材料について0.0005〜2%(vol/vol)の範囲内、そして溶液流延材料について1〜90%の範囲内の多孔度を有することができる。
【0107】
トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用的なクレアチニン/クレアチンセンサーおよび尿素センサーについて、多孔度は、好ましくは、0.2〜0.25%のように、0.05〜0.1%の範囲内である。トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用的なラクテートセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.003〜0.004%のように、0.0005〜0.015%の範囲内である。トラックエッチング処理済みスペーサー層を含む慣用的なグルコースセンサーについて、多孔度は、好ましくは、0.01〜0.02%のように、0.001〜0.05%の範囲内である。トラックエッチング処理済み膜の多孔度は、多孔度(%)=π×(細孔直径/2)2×(細孔密度)×100%として決定される。スペーサー層の平均細孔サイズは、1〜150nmまたは10〜110nmのように、0.05〜250nmの範囲内であってよく、そして細孔密度は、40,000〜40,000,000個細孔/cm2の範囲内である。
【0108】
溶液流延スペーサー層の多孔度は、膜が水で湿潤している時に水で占有される体積として最も容易に決定することができる。溶液流延スペーサー層の多孔度は、好ましくは、3〜85%のように、1〜90%の範囲内であるべきである。トラックエッチング処理済み膜の多孔度と溶液流延膜の多孔度との間の少なくとも1オーダーの差は、トラックエッチング処理済み膜の「有効な」細孔だけを考慮しているということによって説明することができるが、溶液流延膜の細孔度の決定には、全ての細孔およびキャビティが包含される。
【0109】
含水多孔質スペーサー層は、0.5〜15μmのように、0.2〜20μmの範囲内の厚みを有することができる。平面センサーについて、その厚みは、0.5〜5μmのように、0.2〜10μmの範囲内であってよい。慣用的なセンサーについて、その厚みは、2〜15μmのように、1〜20μmの範囲内であってよい。
【0110】
含水多孔質スペーサー層は、溶液流延層の形であってよいし、またはトラックエッチング処理済み膜の形であってよい。本発明のある側面において、平面センサー、例えば、厚手皮膜センサーのためのスペーサー層は、上記ポリマー性材料と、多孔性形成化合物(例えば、洗剤、水溶性親水性ポリマー等)との混合により、好適な多孔度を得るように形成される。
【0111】
慣用的なセンサーの場合、電極で検出される第二種が、電極表面へと一層正確に向けられるように、細孔は、電極表面に対して実質的に垂直に配向されていること(例えば、図1を参照されたい)が重要であると考えられるので、トラックエッチング処理済み膜は好適である。
【0112】
センサーは、慣用的なタイプのものであってよいし、そして含水多孔質スペーサー層は、トラックエッチング処理済みポリエチレンテレフタレート材料であってよい。或いは、センサーは、平面タイプのものであってよいし、そして含水多孔質スペーサー層は、例えば、親水性ポリウレタンまたは親水性ポリ(メタ)アクリレートであって、好ましくは、多孔性形成化合物、例えば、洗剤、水溶性親水性ポリマー等と混合されたものの溶液流延層であってよい。
【0113】
含水多孔質スペーサー層および中間層は、中間層およびスペーサー層について記載されたタイプの材料の不均一層になるように組み合わせることができる。その層は、スペーサー層の材料が、中間層の材料の連続相中に分散されるような方法で形成される。
【0114】
上に定義のいろいろな態様について、電極および酵素層を隔離する1〜3個の層は、パラセタモール、アスコルビン酸および尿酸などの化合物の拡散を、最初の15秒間に信号を、少なくとも95%のように、少なくとも90%減少させるような方法で制限可能であることが好適である。
【0115】
好ましい態様
本発明のある側面は、流体試料中のクレアチンの濃度を決定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETP));そのスペーサー層と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);そのセルロースアセテート層と接触している、サルコシンオキシダーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0116】
本発明の別の側面は、流体試料中のクレアチニンの濃度を測定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PETP));そのスペーサー層と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);その妨害制限層と接触している、例えば、サルコシンオキシダーゼ、クレアチニナーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、例えば、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、例えば、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0117】
本発明の別の側面は、流体試料中のラクテートの濃度を測定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);その妨害制限層と接触している、例えば、ラクテートオキシダーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、例えば、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、例えば、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0118】
本発明の別の側面は、流体試料中のグルコースの濃度を測定する酵素センサーであって、金属電極(例えば、白金電極);その金属電極と接触している妨害制限層(例えば、セルロースアセテート(CA)のもの);その妨害制限層と接触している、グルコースキシダーゼを含む酵素層;およびその酵素層のためのカバー膜層を含み、ここにおいて、このカバー膜層は、例えば、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、例えば、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを、少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆されている、および/または少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有するセンサーに関する。好ましくは、カバー膜層の多孔質ポリマー性材料は、例えば、親水性ポリウレタンで少なくとも一部分含浸されている。
【0119】
カバー膜
本発明のある側面は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、トラックエッチング処理済み材料の膜に関する。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレート、具体的には、親水性ポリウレタンが含まれる。
【0120】
本発明の別の側面は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の膜に関する。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレート、具体的には、親水性ポリウレタンが含まれる。その材料は、好ましくは、トラックエッチング処理済みである。更に好ましくは、代表的なポリエチレンテレフタレート材料は、0.003〜2%の範囲内の多孔度を有する。
【0121】
更に、本発明の別の側面は、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、例えば、ポリ塩化ビニル材料の溶液流延膜に関する。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレート、具体的には、親水性ポリウレタンが含まれる。好ましくは、代表的なポリ塩化ビニル材料は、2〜30%の範囲内の多孔度を有する。
【0122】
代表的なカバー膜についての上記規格は、必要な変更を加えて、上に定義のカバー膜にも当てはまる。
酵素センサーの使用
本発明の酵素センサーは、その最初の使用前に、通常は、信号が安定するまで、湿潤液または検量液に曝露されてよい。
【0123】
体液試料中の、例えば、クレアチニン、クレアチン、グルコース、ラクテート等の測定は、いろいろな自動または半自動分析器で行うことができるが、その多くは、マルチプルセンサーを用いて、多数のパラメーターを測定する。一つの例は、臨床分析器、具体的には、血液分析器である。流体試料は、分析器のフローシステム中にまたは分析器中への導入用カセットのフローシステム中に手動でまたは自動的に導入される。したがって、一つまたはそれを超える生理学的試料パラメーターのセンサーは、フローシステム中に導入された流体試料に曝露することができる。
【0124】
したがって、本発明は、更に、流体試料中の被検体の濃度を測定する装置であって、本明細書中に定義の一つまたはそれ以上の酵素センサーを含む装置を提供する。
更に、本発明は、流体試料中の被検体の濃度を測定する方法であって、流体試料と、本明細書中に記載の酵素センサーとを接触させ、そして酵素センサーの電極が関与する少なくとも一つの測定を行う工程を含む方法を更に提供する。
【0125】
それらセンサーは、通常、そのセンサーへとおよびから通される流体試料および他の流体、例えば、湿潤液、洗浄液、検量液等に曝露される。
酵素センサーを洗浄する方法
驚くべきことに、本発明の背後にある原理は、酵素センサー用の洗浄液中にプロテアーゼを利用することを可能にするということが判明した。したがって、本発明は、更に、酵素センサーを洗浄する方法であって、そのセンサーは、電極、少なくとも一つの酵素層および少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、そのカバー膜の表面を、プロテアーゼを含む洗浄溶液に接触させる工程を含む方法を提供する。
【0126】
酵素センサーのカバー膜を洗浄するのに適するプロテアーゼの例は、Subtilisin Aである。
洗浄工程が、流体試料を測定する測定工程の前および後にあるということは理解されるはずである(しかし必ずしも直前又は直後であるとは限らない)。したがって、その方法は、好ましくは、カバー膜と洗浄溶液とを接触させる工程の前に、更には、後に、被検体の濃度を測定する工程を更に含む。
【0127】
好ましくは、カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、ここにおいて、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口は、親水性ポリマーで被覆されている。代表的な親水性ポリマーには、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0128】
上の説明は、いずれにせよ、請求の範囲に記載の発明を制限するものではない。更に、論じられた特徴の組合せは、本発明の解釈に絶対に必要というわけではない。更に、本明細書中に引用された全ての特許または公開出願の開示は、本明細書中にそのまま援用される。
【0129】
本発明を、次の実施例に更に詳しく説明する。しかしながら、これら実施例は、単に例示するためのものであり、どのような形でも、本発明の範囲を制限するのに用いられるべきではないということは理解されるはずである。
【実施例】
【0130】
実験
材料
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)からのクレアチニナーゼは、Roche Diagnostics, Mannheim, Germany より入手した。Hydromed D4、Hydromed D640および Hydromed TPは、Cardiotech International Inc., Wilminton, MA, USA より入手した。
【0131】
一般的な手順
拡散性の測定
拡散性は、拡散セル中で測定することができるが、その場合、基質の見掛け拡散係数の値は、全細孔度および水中の基質の拡散係数の結果として得られる。「見掛け拡散係数」とは、膜の細孔度を考慮していない膜全体の面積の「有効な」拡散係数を意味する。
【0132】
拡散セル(直径15mm、Oリングを有する)は、使用前に完全に清浄であるべきである。汚染を減少させるために、Oリングが配置されているセルの半分(cell half)には、高基質濃度の溶液を有することが望ましい。分析用の流体試料を、Oリング不含のセルの半分に充填する。それらセルの半分の間の開口部より約1/2cm大きい膜試料を切断し、Oリングの上に配置する。次に、そのセルを閉じ、密閉する。膜およびマグネチックバー(10mm)を含む拡散セルを、マグネチックスターラー上に置く(320±30r.p.m.)。30mLの洗浄液(S4970)中の基質溶液と、30mLの純洗浄液(S4970)とを、拡散セルの二つのハーフセル中に同時に充填する。48時間後および72時間後それぞれに、1mLの試料をシリンジで取り出し、そして1mLの純洗浄液を充満させることにより、純洗浄液中の基質濃度を測定する。試料中の基質濃度は、ABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical ApS, Copenhagen, Denmark)で測定する。
【0133】
見掛け拡散係数は、次のように決定する。流束:全てのシステムにおいて、化合物の受動輸送過程は、システム中の化合物の分布が、化合物の熱力学的平衡分布に該当しない場合に生じるであろう。流束は、1秒につき、面積単位(輸送方向に垂直な面積)を通過する化合物の量として定義し、J=量・cm−2・s−1の単位を有する。
【0134】
Fick の第一法則は、定常拡散にあてはまる、すなわち、線形濃度勾配が確定された。
【0135】
【数1】
【0136】
ここにおいて、Dは、化合物の拡散係数、すなわち、与えられた条件下における拡散性分子タイプに特有の値であり(それは、サイズおよび形のような、輸送速度を決定する因子を包含するのみならず、例えば、粘性のような周囲媒体の性質も包含する);dC/dxは、x地点における濃度プロフィールの勾配である(dC/dx値は、x方向の濃度勾配とも称され、その場合の符号文字は、濃度が増加する方向を示す、すなわち、dC/dxの正値は、濃度がx軸の正方向に増加することを示す)。
【0137】
コーティングされたカバー膜上の被検体の見掛け拡散係数の決定
ポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層の多孔質膜(細孔直径約0.1μm;細孔密度:1.6・106個細孔/cm2)に、親水性ポリウレタン(PUR;Hydromed D4および/またはHydromed D640)を、150・200mmのサイズのシートを96%EtOH中の1%PUR溶液中に十分に浸漬することにより含浸させた。5秒後、その膜を、約50mm/sの一定速度で溶液から取り出した。その後、エタノールが蒸発するまで(30分未満)、膜を乾燥させた。引き続き、それらシートを、必要な場合に切断して、適切な試験片とした。
【0138】
それら膜を、いろいろな被検体の見掛け拡散係数(cm2/s)を決定するために、拡散セル(上を参照されたい)中に配置した。結果を図6に示す。結果は、親水性ポリウレタンコーティングの組成を変更することにより、PETP膜の拡散係数を調節することが可能であるということを示している。
【0139】
一般的なセンサー構築(慣用的なセンサータイプ)
図1に関して、センサー1は、電極2を含み、その上に、膜リング3が取り付けられている。電極2は、ミクロプラグ6を介して銀アノード接触体7と接続している白金線5と接続した白金アノード4を含む。その白金アノード4と、白金線の下方部分は、ガラス体8中に密封されている。ガラス体8とミクロプラグ6との間で、白金線5は、熱収縮チューブで保護されている。チューブ状銀参照電極10は、ガラス体8の上方部分を取り囲み、そして固定体11およびエポキシ12によって参照電極内部に固定されているアノード接触体7へと、電極2の長さで延びている。ガラス体8の下方部分は、電極基材13によって取り囲まれ、それに、膜リング3が取り付けられている。
【0140】
図1および図2に関して、参照電極10の上方部分は、プラグ部材14によって、分析装置(示されていない)の該当するプラグ中に電極2を取り付けるために且つマントル15を固定するために取り囲まれている。ガスケット16および17は、電極2の測定用表面にあるいずれかの電解質が蒸発しないことを確実にするために、電極2とマントル15との間に置かれている。膜リング3は、マントル15の一端に取り付けられていて、リング20を含む。膜21は、リング20の下方開口部の上に張られている。この膜21は、図2に詳細に示されるが、実施例2および実施例3に詳細に記載の通りである。
【0141】
一般的なセンサー構築(厚手皮膜センサータイプ)
図3は、作用電極(120)および参照電極(130;140)が形成されている誘電性支持体(110)上に形成された代表的な平面厚手皮膜センサー構築を示している。それら電極は、二層誘電性封入材(150;160および151;161)によって境界形成されている。作用電極は、本明細書中に開示のように、含水多孔質スペーサー層(121)、中間層(170)、酵素層(180)およびカバー膜(190)で被覆されている。
【0142】
図3に関して、200μmの厚みのアルミナ支持体110の一つの表面には、直径1000μmおよび10μmの厚みの円形白金作用電極120;その作用電極の外周の30〜330°の角度範囲を被覆している、外径3000μm、内径2000μmおよび10μmの厚みの環状白金対向電極130;およびその作用電極の外周の0°に位置している、直径50μmの円形銀/塩化銀参照電極140が設けられている。これら3種類の電極構造は全て、センサーエレクトロニクス(示されていない)へと、アルミナ支持体110を越えて、支持体を横行する白金仕上げ(filed)スルーホール(示されていない)を経て接続されている。操作時に、作用電極120は、参照電極140に対して、+675mVへと分極する。
【0143】
更に、アルミナ支持体110上には、ガラスおよびポリマー封入材の二層構造がある。これら二層構造は、作用電極120を取り囲んでいる、外径1800μm、内径1200μmおよび50μmの厚みの環状構造160、161;および完全な電極システムを取り囲んでいる、50μmの厚みの構造150、151を包含する。これら二層構造は両方とも、ESL Europe of United Kingdom 製のESLガラス4904のアルミナ支持体110に面している、20μmの厚みの内層150、160;および SenDx Medical Inc. of California, USA の国際特許出願WO97/43634号に開示されたような、28.1重量%のポリエチルメタクリレート(Elvacite,製品番号2041,DuPont 製)、36.4重量%のカルビトールアセテート、34.3重量%のシラン化(silaninized)カオリン(Engelhard 製の製品番号HF900)、0.2重量%のヒュームドシリカおよび1.0重量%のトリメトキシシランを含む、SenDx Medical Inc. of California, USA 製のポリマー封入材の外層151、161から成る。
【0144】
直径1200μmおよび10μmの厚みの、セルロースアセテートおよびセルロースアセテートブチレートの円形内膜170は、作用電極120を被覆している。
直径1200μmおよび2μmの厚みの、グルタルアルデヒドで架橋したグルコースオキシダーゼの円形酵素層180は、その内膜170を被覆している。
【0145】
酵素層180は、グルタルアルデヒドで架橋したグルコースオキシダーゼの緩衝化した溶液0.4μlを、セルロースアセテート膜170上に分配することによって製造した。酵素層は、37℃で30分間乾燥させた。
【0146】
直径4000μmおよび10μmの厚みの、PVC/トリメチルノニルトリエチレングリコール/ジエチレングリコールの円形カバー膜層190は、作用電極120上に中心を置く完全な電極システムを被覆している。
【0147】
カバー膜は、1.35グラムのポリ塩化ビニル(Aldrich 34, 676-4)、0.0149グラムのトリメチルノニルトリエチレングリコール(Th. Goldschmidt 製の Tergitol TMN3)および0.134グラムのジエチレングリコールから、それらに、21.3グラムのテトラヒドロフランおよび7.58グラムのシクロヘキサノンに加えて製造した。その混合物を、PVCが溶解するまで撹拌し、そして均一溶液を得た。28.5グラムのテトラヒドロフランを加えて、90/1/9のPVC/界面活性剤/親水性化合物組成の2%溶液を得た。その溶液を、3種類の電極全てを被覆するように且つポリマー封入材151と約0.5mmのオーバーラップを有するように、センサー面積上に分配した。それらカバー膜を、23±2℃で30分間および40℃で1.5時間乾燥させた。
【0148】
0.3μLの96%EtOH中の5%親水性ポリウレタン(80%の含水率を有するHydromed D640/Hydromed D4混合物)溶液(実施例1を参照されたい)を、乾燥した外膜上に分配した。
【0149】
全3種類の層170、180、190を、自動分配装置(IVEKポンプ)を取り付けられたx、y、z平面上に分配した。
実施例1−慣用的なグルコースセンサー用のカバー膜の製造
ポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層の拡散制限多孔質膜(細孔直径約0.1μm;細孔密度:1.6・106個細孔/cm2)に、親水性ポリウレタン(Hydromed D4)を、150×200mmのサイズのシートを96%EtOH中の1%PUR溶液中に十分に浸漬することにより含浸させた。5秒後、その膜を、約50mm/sの一定速度で溶液から取り出した。その後、エタノールが蒸発するまで(30分未満)、膜を乾燥させた。引き続き、それらシートを、必要な場合には切断して、適切な試験片とした。
【0150】
実施例2−代表的なクレアチンおよびクレアチニンセンサー構築
クレアチンセンサーおよびクレアチニンセンサーは各々、既知のアンペロメトリックセンサーとして層成する。図1は、このようなセンサー1(上記)を示しているが、それは、生体試料中の被検体の濃度を測定するための装置、例えば、ABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical ApS, Copenhagen, Denmark)に取り付けるのに適している。
【0151】
図2は、四つの層、すなわち、電極2の白金アノード4に面している含水多孔質スペーサー層22;妨害制限膜層23;酵素層25を取り囲むガスケット24;および約80%の含水率を有する親水性ポリウレタンを含浸した拡散制限多孔質ポリマー性材料26を含む膜21の詳細を示している。コーティングされた膜層26は、分析される試料に面している。
【0152】
スペーサー層22は、ポリエチレンテレフタレート(PETP)の21±2μmのトラックエッチング処理済み膜(細孔直径約1.3〜1.5μm;細孔密度:2.2・107個細孔/cm2)であってよい。妨害制限膜層23は、セルロースアセテート(CA)の6±2μm多孔質膜であってよい。
【0153】
ガスケット24は、1500μmの直径のセンター穴を有する30±5μmの両面接着ディスクであってよい。ガスケット24の接着剤は、妨害制限層23および拡散制限層26に、それら層間から酵素を漏出させない程度に接着する。
【0154】
クレアチンセンサーの酵素層25は、典型的には、緩衝剤などの適する添加剤と混合されたグルタルアルデヒドに架橋したクレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼの約20μm層である。クレアチニンセンサーの酵素層25は、典型的には、緩衝剤などの適する添加剤と混合されたグルタルアルデヒドに架橋したクレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼの約20μm層である。
【0155】
拡散制限多孔質ポリマー性材料26は、親水性ポリウレタン(約80%の含水率を有するHydromed D640/Hydromed D4混合物)を含浸したポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層(細孔直径約0.1μm;細孔密度:3・107個細孔/cm2)であってよい(実施例1を参照されたい)。
【0156】
クレアチニンセンサーの場合、クレアチンおよびクレアチニン双方を、過酸化水素に変換する。クレアチンセンサーの場合、クレアチンのみを過酸化水素に変換する。
アンペロメトリック電極では、過酸化水素を、Ag/AgClに対して+675mVでアノード酸化する。得られた電流の流れは、試料中のクレアチニン/クレアチン濃度に比例する。
【0157】
クレアチニンの濃度は、クレアチニンセンサー信号(クレアチン+クレアチニンを示している)と、クレアチンセンサー信号(クレアチンを示している)との間の差から決定する。
【0158】
実施例3−代表的なラクテートセンサー構築
酵素に触媒されたラクテートと酸素との間の反応は、過酸化水素(H2O2)およびピルベートを生じる。次に、過酸化水素を、アンペロメトリック電極で検出する。センサー1(図1)は、生体試料中の被検体の濃度を測定するための装置、例えば、ABLTM735 Blood Gas Analyzer(Radiometer Medical A/S, Copenhagen, Denmark)に取り付けるのに適している。
【0159】
層22が省略されている図2に関して、ラクテートセンサーの膜21は、三つの層、すなわち、電極2の白金アノード4に面している妨害制限膜層23;酵素層25;および流体試料に面している拡散制限多孔質膜層26を含む。妨害制限膜層23は、セルロースアセテート(CA)の6±2μm多孔質膜であってよい。酵素層は、典型的には、架橋したラクテートオキシダーゼ(7単位/膜)の約1〜2μm層である。拡散制限多孔質膜層26は、実施例1に記載のように、親水性ポリウレタン(Hydromed D4)を含浸したポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層(細孔直径約0.1μm;細孔密度:8・105個細孔/cm2)であってよい。
【0160】
実施例4−実施例3のラクテートセンサーの結果
線形性
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。取り付け後1日目に、それらセンサーを、適切な液体(Radiometer Rinse 溶液S4970)中の異なった濃度の被検体に曝露する。理論濃度と真濃度との間の偏差を、図9の真濃度に対してプロットする。塗りつぶした四角は、未コーティング膜を含むセンサーであり、空白丸は、コーティングされた膜を含むセンサーである。理解されうるように、より高い偏差は、コーティングされた膜を含むセンサーと比較して、未コーティング膜を含むセンサーについて認められる。
【0161】
寿命
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。1日1回、それらセンサーを、Radiometer QC5アンプルで測定することによって品質管理する。センサー寿命は、そのセンサーが、QC限界内で作動できなくなるまでの時間として示す。
【0162】
感度
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。2〜6日後に(センサータイプに依存して)得られた「定常状態」感度に対する実測感度を、始動以後の時間に対してプロットするが、ラクテートセンサーについては(実施例3)図7を、また、クレアチニンセンサーについては(実施例2)図8をそれぞれ参照されたい。
【0163】
血液バイアス/血液ドリフト
親水性ポリウレタンのコーティングを含むセンサー及び含まないセンサーを、ABL735に入れ、定期的に検量する(1/2〜4時間毎に1回)。取り付け後1日目に、それらセンサーを、適切な液体(Radiometer QC5レベル3)中の同じ濃度の被検体に、追加のBSA(50g/L)を含有させて及び含有させずに曝露する(BSAは、血液試料を模擬するためにQC液に加える)。血液バイアスは、センサーが、タンパク質を含む試料中において、タンパク質不含の試料よりも低い濃度または同じ濃度を測定する原因となりうる。
【0164】
実施例5−一連の試料での信号の低減
この研究の目的は、平面センサー(ここでは、グルコースセンサー。「一般的なセンサー構築(厚手皮膜センサータイプ)」を参照されたい)に関して用いられる、親水性ポリマー(ここでは、親水性ポリウレタン)でコーティングされた膜が、一連の試料測定について、測定ごとに0.5%未満の信号の減少を得ることを可能にするということを示すことであった。
【0165】
全てのセンサーで、10mMグルコースでの一連の20回連続した血液測定を、中間の検量または洗浄を伴うことなく行った。
結果
血液測定
図10は、20種類の連続した試料について、血液での最初の測定(=100)に対する実測値を示している。各2回の測定の平均を、コーティングされたセンサー(実線)および未コーティングのセンサー(破線)それぞれについて示している。
【0166】
顕著な改善は、Hydromed D4でコーティングすることによって得られると考えられる(実線)。その一連の測定における減少は、未コーティングのセンサー(破線)の一連の測定における減少の半分にすぎない。
【0167】
結論
親水性ポリウレタン(Cardiotech Inc. 製の Hydromed D4)でコーティングされたカバー膜を有するセンサーは、該当する未コーティングのセンサーの場合よりも、有意に低い信号減少を引き起こすということが判明した。10mMグルコースでの10回の血液測定にわたる実測値の減少は、コーティングされたセンサーについては約2%であったが、該当する未コーティングのセンサーの減少は、約6%であった。
【0168】
この作用は、細孔の内部表面上に沈殿している血液成分(具体的には、タンパク質および脂質)のために、電極が異なって(より低く)測定する原因となるであろう血液ドリフトに関係している。
【0169】
実施例6−プロテアーゼを含む溶液でのグルコースセンサーの洗浄
この実験では、グルコースセンサー(実施例1に記載のように製造される、すなわち、2種類の未コーティング(「PUR不含」)および3種類のコーティング済み(「PUR含有」))(High met. レベル1(S7570)Radiometer Medical Aps;QCレベル1液)を、測定番号1および番号7の前に検量し、そして測定2〜6および8〜12各々の前に、Cleaning 液(S4706Radiometer Medical Aps)で洗浄した。この洗浄溶液は、プロテアーゼ(Subtilisin A)を含有する。表Aから、親水性ポリウレタン(PUR)のコーティングを含まない装置について、感度が増加するということが理解されうる。したがって、それら結果は、カバー膜が親水性ポリマーで被覆されている場合の感度の減少を伴うことなく、プロテアーゼを含む洗浄溶液を利用することが可能であるということを示している。
【0170】
【表1】
【0171】
実施例7−親水性ポリマーで被覆されたカバー膜を介する酵素の拡散
PETPカバー膜(親水性ポリウレタンでコーティングされたおよび未コーティングの)を介して通過する酵素溶液の活量百分率を決定した(表B)。親水性ポリウレタンでコーティングされた膜は、酵素の移動を有効にブロックし、それによって、このようなコーティングされたカバー膜を有する酵素センサーの線形性、寿命および試料ごとの感度を改善するということが分かった。
【0172】
【表2】
【0173】
実施例8−慣用的な酵素センサーのためのカバー膜の製造
親水性ポリ(メタ)アクリレートを、表Dに記載の出発物質の量を用いて、次のように製造した。
【0174】
メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)およびメトキシポリ(エチレンオキシド)モノメタクリレート(M−PEG−MMA;Aldrich #44,795-1)(表Dによる量)、12.5mgの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび12.5mLのエトキシエチルアセテートを、丸底フラスコ中で撹拌しながら混合した。その溶液に、窒素を15分間吹き付けた。そのフラスコを、75℃で24時間加熱した後、溶液を室温に冷却した。その粘性溶液を、12.5mlのアセトンで希釈し、そして375mLのヘキサン中にその溶液を注入することにより、ポリマーを沈殿させた。そのポリマーを濾去し、25mLのアセトン中に再溶解させた。ポリマーを、375mLのヘキサン中に再沈殿させ、そして125mLのヘキサン中で16時間放置した。ポリマーを濾過によって集め、そして真空オーブン中において50℃で16時間乾燥させた。
【0175】
【表3】
【0176】
ポリエチレンテレフタレート(PETP)の約12μm層の拡散制限多孔質膜(細孔直径約0.1μm;細孔密度:3・107個細孔/cm2)に、親水性ポリ(メタ)アクリレート(ポリマーA〜D;表Dを参照されたい)を、150×200mmのサイズのシートを96%EtOH中の1%ポリ(メタ)アクリレート溶液中に十分に浸漬することにより含浸させた。5秒後、その膜を、約50mm/sの一定速度で溶液から取り出した。その後、エタノールが蒸発するまで(30分未満)、膜を乾燥させた。引き続き、それらシートを、必要な場合には切断して、適切な試験片とした。
【0177】
それら膜の見掛け拡散係数は、表Eに概略の通りであった。
【0178】
【表4】
【0179】
表Eより、(メタ)アクリレートタイプの親水性ポリマーでコーティングされた膜の拡散性は、細孔密度の差を考慮して、ポリウレタンタイプの親水性ポリマーでコーティングされた膜の拡散性と同程度と考えられる(図6を参照されたい)。
【0180】
実施例9−代表的なクレアチンおよびクレアチニンセンサー構築
クレアチニンセンサーおよびクレアチンセンサーを、拡散制限多孔質ポリマー性材料26を、実施例10に記載のように、親水性ポリ(メタ)アクリレートA(L555−1)およびD(L555−4)を用いて製造したことを除いて、実施例2の場合のように製造した。
【0181】
実施例10−クレアチンおよびクレアチニンセンサーの結果
実施例9で製造したクレアチニンセンサーの二つタイプを調べ(2x4センサー)、クレアチニンへの感度を測定した。親水性ポリ(メタ)アクリレートA(L555−1)のカバー層を有するセンサーは、数時間以内に所望の感度を得たが、親水性ポリ(メタ)アクリレートA(L555−4)のカバー層を有するセンサーは、やや遅い「起動」であった。図11を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】図1は、電極および膜を含む慣用的な酵素センサーを示す。
【図2】図2は、図1のセンサーの膜を示す。
【図3】図3は、代表的な平面厚手皮膜センサー構築を示す。
【図4】図4のAおよびBは、トラックエッチング処理済み膜を含有する慣用的な酵素基剤センサーに関連した問題を示す。
【図5】図5のAおよびBは、親水性ポリマー(親水性ポリウレタンまたは親水性ポリ(メタ)アクリレートなどであるが、これに制限されるわけではない)の(両面)コーティングが、トラックエッチング処理済み膜を含有する慣用的なセンサーに関連した問題をどのように解決するかを示す。
【図6】図6は、親水性ポリウレタンコーティングの組成を、同じ多孔質ポリマー性材料を用いて変更することにより、トラックエッチング処理済み膜の拡散係数を変更することが可能であるということを示す。
【図7】図7は、ラクテートセンサーの時間経過中の感度を示す。相対感度(すなわち、(センサータイプに依存して)2〜6日後に得られた実測「定常状態」感度に対する実測感度)は、起動以後の時間に対してプロットされる。コーティング不含センサーは、黒四角を用いてプロットし、コーティング含有センサーは、空白丸を用いてプロットしている。
【図8】図8は、クレアチニンセンサーの時間経過中の感度を示す。相対感度は、起動以後の時間に対してプロットされる。コーティング不含センサーは、黒四角を用いてプロットし、コーティング含有センサーは、空白丸を用いてプロットしている。
【図9】図9は、ラクテートセンサーの真試料濃度からの血液についての測定値偏差(血液バイアス)を示す。コーティング不含センサーは、黒四角を用いてプロットし、コーティング含有センサーは、空白丸を用いてプロットしている。
【図10】図10は、平面センサーを用いた一連の血液測定値について、グルコースセンサーにおける信号の減少(血液ドリフト)を示す。
【図11】図11は、200μMのクレアチニンを含む検量溶液に曝露された二つのタイプの親水性ポリ(メタ)アクリレートで被覆されたクレアチニンセンサーのセンサー応答を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中の被検体の濃度を決定する酵素センサーであって、
電極、
少なくとも一つの酵素層および
該少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、そしてここにおいて、該少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで被覆されている酵素センサー。
【請求項2】
カバー膜層の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項3】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、0.002〜30%(vol/vol)の範囲内の多孔度を有する、請求項1又は2に記載の酵素センサー。
【請求項4】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、トラックエッチング処理済みである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項5】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の細孔密度が、40,000〜40,000,000個細孔/cm2の範囲内である、請求項4に記載の酵素センサー。
【請求項6】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の平均細孔サイズが、0.05〜250nmの範囲内である、請求項4又は5に記載の酵素センサー。
【請求項7】
親水性ポリマーが、親水性ポリウレタンより選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項8】
親水性ポリウレタンが、脂肪族ポリエーテルウレタン、脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエーテルウレタン、環状脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、芳香族ポリエーテルウレタン、芳香族ポリエーテルウレタン尿素、脂肪族ポリエステルウレタン、脂肪族ポリエステルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエステルウレタン、環状脂肪族ポリエステルウレタン尿素、芳香族ポリエステルウレタンおよび芳香族ポリエステルウレタン尿素より選択される、請求項7に記載の酵素センサー。
【請求項9】
親水性ポリマーが、親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項10】
親水性ポリマーが、10〜95%(w/w)の範囲内の含水率へと湿潤性である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項11】
センサーが慣用的なセンサーである場合、カバー膜層が、湿潤形であり且つ5〜40μmの範囲内の厚みを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項12】
センサーが平面センサーである場合、カバー膜層が、湿潤形であり且つ1〜20μmの範囲内の厚みを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項13】
カバー膜の親水性ポリマー層が、乾燥形であり且つ少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の平均細孔サイズの100〜2,000%の範囲内の厚みを有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項14】
カバー膜の親水性ポリマー層が、乾燥形であり且つ0.1〜5μmの範囲内の厚みを有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項15】
カバー膜が、乾燥形または湿潤形であり、そして湿潤形のカバー膜の厚みと、乾燥形のカバー膜の厚みとの比率が、2:1〜1:1の範囲内である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項16】
カバー膜が、乾燥形または湿潤形であり、そして湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの比率が、100:1〜1:1の範囲内である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項17】
親水性ポリマーが非湿潤形である場合、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料と親水性ポリマーとの重量比が、100:1〜1:1の範囲内である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項18】
カバー膜が、センサーの最も外部層である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項19】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートおよびそれらの混合物より選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項20】
電極と少なくとも一つの酵素層を隔離する1〜3個の層を更に含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項21】
電極と少なくとも一つの酵素層を隔離する少なくとも一つの層が、含水多孔質スペーサー層である、請求項20に記載の酵素センサー。
【請求項22】
流体試料中のクレアチンの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層、
該多孔質スペーサー層と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、サルコシンオキシダーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項23】
流体試料中のクレアチニンの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層、
該多孔質スペーサー層と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、サルコシンオキシダーゼ、クレアチニナーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項24】
流体試料中のラクテートの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、ラクテートオキシダーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項25】
流体試料中のグルコースの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、グルコースオキシダーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項26】
トラックエッチング処理済み多孔質ポリマー性材料を含む膜であって、該多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている膜。
【請求項27】
多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含む膜であって、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている膜。
【請求項28】
多孔質ポリ塩化ビニル材料を含む膜であって、該多孔質ポリ塩化ビニル材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーを少なくとも一部分含浸している膜。
【請求項29】
親水性ポリマーが、親水性ポリウレタンである、請求項26〜28のいずれか1項に記載の膜。
【請求項30】
酵素センサーを洗浄する方法であって、該センサーが、電極、少なくとも一つの酵素層および該少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、該カバー膜の表面と、プロテアーゼを含む洗浄溶液とを接触させる工程を含む方法。
【請求項31】
プロテアーゼが、ズブチリシンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
カバー膜と洗浄溶液とを接触させる工程の前後に、被検体の濃度を測定する工程を更に含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
カバー膜が、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、ここにおいて、該少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで被覆されている、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
流体試料中の被検体の濃度を測定する装置であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載の一つまたはそれ以上の酵素センサーを含む装置。
【請求項35】
流体試料中の被検体の濃度を測定する方法であって、該流体試料と、請求項1〜25のいずれか1項に記載の酵素センサーとを接触させ、そして該酵素センサーの電極を必要とする少なくとも一つの測定を行う工程を含む方法。
【請求項1】
流体試料中の被検体の濃度を決定する酵素センサーであって、
電極、
少なくとも一つの酵素層および
該少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜は、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、そしてここにおいて、該少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで被覆されている酵素センサー。
【請求項2】
カバー膜層の少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項3】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、0.002〜30%(vol/vol)の範囲内の多孔度を有する、請求項1又は2に記載の酵素センサー。
【請求項4】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、トラックエッチング処理済みである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項5】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の細孔密度が、40,000〜40,000,000個細孔/cm2の範囲内である、請求項4に記載の酵素センサー。
【請求項6】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の平均細孔サイズが、0.05〜250nmの範囲内である、請求項4又は5に記載の酵素センサー。
【請求項7】
親水性ポリマーが、親水性ポリウレタンより選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項8】
親水性ポリウレタンが、脂肪族ポリエーテルウレタン、脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエーテルウレタン、環状脂肪族ポリエーテルウレタン尿素、芳香族ポリエーテルウレタン、芳香族ポリエーテルウレタン尿素、脂肪族ポリエステルウレタン、脂肪族ポリエステルウレタン尿素、環状脂肪族ポリエステルウレタン、環状脂肪族ポリエステルウレタン尿素、芳香族ポリエステルウレタンおよび芳香族ポリエステルウレタン尿素より選択される、請求項7に記載の酵素センサー。
【請求項9】
親水性ポリマーが、親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項10】
親水性ポリマーが、10〜95%(w/w)の範囲内の含水率へと湿潤性である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項11】
センサーが慣用的なセンサーである場合、カバー膜層が、湿潤形であり且つ5〜40μmの範囲内の厚みを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項12】
センサーが平面センサーである場合、カバー膜層が、湿潤形であり且つ1〜20μmの範囲内の厚みを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項13】
カバー膜の親水性ポリマー層が、乾燥形であり且つ少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の平均細孔サイズの100〜2,000%の範囲内の厚みを有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項14】
カバー膜の親水性ポリマー層が、乾燥形であり且つ0.1〜5μmの範囲内の厚みを有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項15】
カバー膜が、乾燥形または湿潤形であり、そして湿潤形のカバー膜の厚みと、乾燥形のカバー膜の厚みとの比率が、2:1〜1:1の範囲内である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項16】
カバー膜が、乾燥形または湿潤形であり、そして湿潤形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みと、乾燥形のカバー膜の親水性ポリマー層の厚みとの比率が、100:1〜1:1の範囲内である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項17】
親水性ポリマーが非湿潤形である場合、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料と親水性ポリマーとの重量比が、100:1〜1:1の範囲内である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項18】
カバー膜が、センサーの最も外部層である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項19】
少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートおよびそれらの混合物より選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項20】
電極と少なくとも一つの酵素層を隔離する1〜3個の層を更に含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の酵素センサー。
【請求項21】
電極と少なくとも一つの酵素層を隔離する少なくとも一つの層が、含水多孔質スペーサー層である、請求項20に記載の酵素センサー。
【請求項22】
流体試料中のクレアチンの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層、
該多孔質スペーサー層と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、サルコシンオキシダーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項23】
流体試料中のクレアチニンの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している含水多孔質スペーサー層、
該多孔質スペーサー層と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、サルコシンオキシダーゼ、クレアチニナーゼおよびクレアチナーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項24】
流体試料中のラクテートの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、ラクテートオキシダーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項25】
流体試料中のグルコースの濃度を測定する酵素センサーであって、
金属電極、
該金属電極と接触している妨害制限層、
該妨害制限層と接触している、グルコースオキシダーゼを含む酵素層、および
該酵素層のためのカバー膜層
を含み、ここにおいて、該カバー膜層は、多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含み、そしてここにおいて、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、ポリエチレングリコールの主鎖セグメントを少なくとも5%(w/w)のポリエチレングリコールセグメントの重量比で含む親水性ポリウレタンで被覆され、および/または、少なくとも25%(w/w)の湿潤時含水率を有する酵素センサー。
【請求項26】
トラックエッチング処理済み多孔質ポリマー性材料を含む膜であって、該多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている膜。
【請求項27】
多孔質ポリエチレンテレフタレート材料を含む膜であって、該多孔質ポリエチレンテレフタレート材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで少なくとも一部分含浸されている膜。
【請求項28】
多孔質ポリ塩化ビニル材料を含む膜であって、該多孔質ポリ塩化ビニル材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーを少なくとも一部分含浸している膜。
【請求項29】
親水性ポリマーが、親水性ポリウレタンである、請求項26〜28のいずれか1項に記載の膜。
【請求項30】
酵素センサーを洗浄する方法であって、該センサーが、電極、少なくとも一つの酵素層および該少なくとも一つの酵素層のためのカバー膜層を含み、該カバー膜の表面と、プロテアーゼを含む洗浄溶液とを接触させる工程を含む方法。
【請求項31】
プロテアーゼが、ズブチリシンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
カバー膜と洗浄溶液とを接触させる工程の前後に、被検体の濃度を測定する工程を更に含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
カバー膜が、少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料を含み、ここにおいて、該少なくとも一つの多孔質ポリマー性材料の少なくとも一つの面の外部表面および細孔口が、親水性ポリウレタンおよび親水性ポリ(メタ)アクリレートより選択される親水性ポリマーで被覆されている、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
流体試料中の被検体の濃度を測定する装置であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載の一つまたはそれ以上の酵素センサーを含む装置。
【請求項35】
流体試料中の被検体の濃度を測定する方法であって、該流体試料と、請求項1〜25のいずれか1項に記載の酵素センサーとを接触させ、そして該酵素センサーの電極を必要とする少なくとも一つの測定を行う工程を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−545952(P2008−545952A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511555(P2008−511555)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000265
【国際公開番号】WO2006/122554
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(500554782)ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000265
【国際公開番号】WO2006/122554
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(500554782)ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス (20)
【Fターム(参考)】
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