説明

親油性キャリアーを伴うキレート剤

【課題】 シグナルの緩和度を制御可能な磁気共鳴画像を得る。
【解決手段】 ナノ粒子又はマイクロ粒子エマルジョンと結合するのに有用な化合物で、且つ、容易に該微粒子成分と結合する化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2003年1月24日付けで提出された米国第10/351,463号の一部継続出願であるが、それは2002年1月24日付けで提出された米国第60/351,390号に基づく利益を主張する。この出願は、また、2003年7月9日付けで提出された米国仮特許出願第60/485,970号に基づく利益を主張する。これらの出願内容は引用により本書に組み込む。
【政府の補助への謝辞】
【0002】
本発明は部分的にアメリカ合衆国政府の補助金による支援を受けている。アメリカ合衆国政府は本発明に一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本発明は、核磁気共鳴画像法(MRI)用の金属イオンのキャリアーとして有用なキレート剤(該キレートは、親油性の粒子又は小滴を含むキャリアーとして提供される)を指向している。更に、とりわけ、本発明は、ホスホグリセリドと任意にスペーサーを介して結合するキレート剤を指向する。
【背景技術】
【0004】
核磁気共鳴画像法においては、有用な金属イオンを捕捉する様々な型のキレート剤の使用が、よく知られている。一般的にキレート剤は、相当数の非共有電子対、又は、負に荷電した若しくは潜在的に負に荷電した種(species)を含む。おそらく、これらの中で最も単純なのは、硬水軟化剤として一般に使用されているエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。しかし、多くの薬剤が知られており、その中には、非常に且つ一般的に使用されているジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びテトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)及びそれらの誘導体を含む。米国特許第5,573,752号及び第6,056,939号を参照により本書に組み込むが、これらは有用なDOTA(該DOTAはベンジル又はイソチオシアネートで置換されたフェニル環であるフェニル成分と結合している)誘導体について詳しく開示している。このイソチオシアネートは、様々な付加的な化合物と結合する反応性のある基を提供する。これらの特許で記述されているように、イソチオシアネート基は、抗体又はそのフラグメントなどの標的薬剤にキレートを結合させるために使用出来る。
【0005】
MRI用にキレート化した金属を投与するのに使用される送達ビヒクル組成(delivery vehicle compositions)に関する一つの文献がある。これらの組成(compositions)の幾つかは、標的薬剤を含まない一方、その他の組成(compositions)は標的薬剤を含む。例えば、米国特許第5,690,907;5,780,010;5,989,520;5,958,371;及びPCT公開公報第WO 02/060524号であるが、これらの中身は引用により本書の中に組み込むが、様々な標的薬剤、並びに、MRI画像用薬剤、放射性核種、及び/又は生理活性物質のような所望の化合物に結合する全フッ素化炭素ナノ粒子のエマルジョン(乳濁液)について記述している。その他の標的イメージング(targeted imaging)のために使用される組成は、PCT公開公報第WO 99/58162;第WO 00/35488号;第WO 00/35887号;及び第WO 00/35492号で開示されているものを含む。これらの公報の内容も、また引用により本書に組み込む。
【0006】
本発明の一つの態様は、核磁気共鳴画像法で有用な造影剤の改良に焦点を合わせている;出願人らによる方法を理解する上で、この技術の幾らかの背景説明が必要である。
【0007】
核磁気共鳴画像法(MRI)は診断及び研究のための有益な手段となっている。(本)技術は、組織及び体液中の水に含まれる水素原子核がラジオ波で励起された後に基底状態に戻る際放出されたエネルギーを検出することに基づいている。この現象の観察は、水素原子核スピンの分布が統計学的に磁場と整列するよう非観察領域内を横断する磁場を印加し、その後適切なラジオ波を課すことに依存する。この結果、当該統計学的な整列が乱される励起状態が生じる。そして、基底状態へと向かう前記分布の衰退は、エネルギーの放出として測定され得るが、そのパターンは画像として検出可能である。
【0008】
実際には、関連する水素原子核の緩和速度は、独自の素子のままでは、検出可能なエネルギー量を生成するには遅すぎることが判明している。この状況を改善するために、画像化されるべき領域に造影剤、通常強力な常磁性金属を供給する。この造影剤は減衰を加速するための触媒として有効に作用し、検出可能なはっきりとしたシグナルの生成を可能とする十分な量のエネルギーの放出を可能にする。簡潔に説明すると、造影剤は、緩和時間を短縮し、かつ緩和時間の逆数、即ち、周囲の水素原子核の「緩和度」を増加させる。
【0009】
二つの型の緩和時間が測定可能である。Tは、磁場分布が、磁場に関して縦方向に元の分布が63%まで戻るのに要する時間であり、そして緩和度ρはその逆数である。Tは、磁場を横断する方向に分布の63%が基底状態まで戻る時間を測定したものである。その逆数は緩和度の指数であるρである。一般的には、緩和時間及び緩和度は磁場の強度により変化する;これは縦方向の成分の場合に最も明白である。
【0010】
従って、造影剤の望ましい性質は、ρ及びρ両者の緩和度を増強したシグナルを提供することである。本発明は、そのような造影剤を提供する。
【0011】
被検体内に保持された場合に毒性を有するかもしれない常磁性イオンの排出を促進するのにも有利である。従って、細胞若しくは肝臓への取り込みを生じさせ得る粒子若しくは任意の脂質成分から、キレート化された金属イオンを切断する機構を提供するのに有利かもしれない。
【0012】
キレート化常磁性金属を基礎とする造影剤に関する広範な文献が存在する。例えば、米国特許第5,512,294号及び同第6,132,764号は、MRI造影剤として、その表面に金属キレートを有するリポソーム粒子について記載している。米国特許第5,064,636号及び同第5,120,527号は、消化管内のMRIのための常磁性オイルエマルジョンについて記載している。米国特許第5,614,170号及び同第5,571,498号は、血液プール造影剤として、親油性ガドリニウムキレート例えばガドリニウム−ジエチレン−トリアミン−五酢酸−ビスオレアート(Gd−DTPA−BOA)を組み込むエマルジョンについて記載している。
【0013】
米国特許第5,804,164号には、特別に設計されたキレート剤及び常磁性金属を含む水溶性親油性剤について記載されている。米国特許第6,010,682号及び同じパテントファミリーに属する他の公報には、リポソーム、ミセル又は脂質エマルジョンとして投与可能とされる常磁性金属を含む脂溶性キレート化造影剤について記載されている。
【0014】
従って、一般的には、造影剤は、所望の画像領域に送達される常磁性金属が実質的な濃度になるような形態で、流動性のある希土類又は鉄のような常磁性金属の形態をとる。
【0015】
造影剤の有用な濃度を提供する一つの方法が、本出願人によって、米国特許第5,780,010号及び同第5,909,520号に記載されている。ナノ粒子は、脂質/界面活性剤コーティングによって覆われた不活性コアから形成される。さらに、粒子は、特異的な部位への標的にするためのリガンドと結合され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一つの視点は、シグナルの緩和度が制御され得、且つ、排出が促進され得るように、造影剤の設計における改良を提供することである。しかしながら、本発明の化合物は、他の局面すなわち核放出を基礎とするイメージングにおいて所望の位置への放射性核種の送達においても有用である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、リポソーム、フルオロカーボンナノ粒子、油滴などのような種々の親油性送達ビヒクルのキャリアーと容易に結合し得る化合物(該化合物は、これらの送達ビヒクルとの相対的な位置において、シグナルの緩和度の制御を提供する、また、好ましくは共鳴画像を増強する毒性を潜在的に有する常磁性イオンの排出を促進するための機構も提供する)を提供する。常磁性イオンのキレート化の代替法として、放射性核種も含まれるが、この核種の排出促進が望ましいのは明白である。常磁性イオン又は放射性核種は、以下の式のキレートを含む化合物の中で提供される:

ここで、Chはキレート成分を表し;
mは0―3;
は非妨害性置換基であり;
lは0―2;
ZはS又はO;
はH又はアルキル(1―4C);
nは0又は1;及び
各Rは、独立して、任意的に置換された飽和又は不飽和の、少なくとも10のCを含むヒドロカルビル基である。
【0018】
式(1)の化合物は、キレート剤と結合する少なくとも一つの常磁性イオン又は放射性核種を含んでいてもよい。
【0019】
別の態様において、本発明は、式(1)の化合物と結合する親油性送達ビヒクルを含む組成物、並びに、これらの組成物を用いた磁気共鳴又は放射性核種イメージを得るための方法を目的とする。さらに別の態様において、本発明は、式(1)の化合物を調製する方法、及び、本発明の送達ビヒクル組成物を調製する方法を目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、一般に、式(1)の化合物(常磁性イオン又は放射性核種を含有する該化合物も含む)に向けられる。一つの実施態様において、本発明は、実施例1で説明する特異的構造を含有する組成物又は化合物を含まない。
【0021】
式(1)の化合物は、適切な常磁性イオンを含む場合、簡便に調製されるMRI用造影剤を提供するが、それは少なくとも二つの有益な特徴を有する。まず、そのリン脂質への結合能によって、リポソーム、フルオロカーボンナノ粒子などの親油性送達ビヒクルと容易に結合する。第二に、一つのスペーサーを含有していてもよいので、シグナルの緩和度が、キャリアー送達ビヒクルからのスペーサーによって課される距離により制御され得る。任意の、三つ目の利点は、スペーサーが、一旦画像が取得された後に造影剤が粒子から解離され排出されるような切断部位を提供するかもしれない。式(1)の化合物は、キレート剤と結合するベンゼン環と共役するイソシアン酸塩又はイソチオシアネートから簡単に調製される。これらの基の反応性のため、共役は広範なスペーサー及びリン脂質との間でなされ得る。
【0022】
Chで表されるキレート剤は、典型的には、少なくとも二つの、そして好ましくは多種多様な窒素を含む。該窒素は、アルキレン基によって間隔をあけられ、且つ、カルボン酸関連成分(carboxylic acid-bearing moieties)がそこに結合する。キレート剤は、所望の金属イオンを隔離ないし捕捉(sequester)するのに供される多重の非共有電子対又は潜在的な負電荷(potential negative charges)を含むことによって特徴付けられる。キレート剤として一般に使用されているものには、ポルフィリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン-N,N,N',N'',N''-ペンタアセテート(DTPA)、1,4,10,13-テトラオキサ-7,16-ジアザシクロオクタデカン-7(ODDA)、16-ジアセテート,N-2-(アゾール-1(2)-イル)エチルイミド二酢酸, 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)、1,7,13-トリアザ-4,10,16-トリオキサシクロ-オクタデカン-N,N',N''-トリアセテート(TTTA)、テトラエチレングリコール,1,5,9-トリアザシクロドデカン-N,N',N'',-トリス(メチレンホスホン酸(DOTRP)、N,N',N''-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)及びこれらのアナログが含まれる。本発明の化合物において、特に好ましいキレート剤は、DOTAである。
【0023】
キレート剤の目的は、勿論、所望の常磁性金属又は放射性核種を隔離ないし捕捉(sequester)することにある。適当な常磁性金属には、原子番号58−70のランタニド又は原子番号21−29、42又は44の遷移金属を含む―すなわち、例えば、スカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、及びイッテルビウムで、最も好ましくは、ガドリニウム(III)、マンガン(II)、鉄、ユウロピウム、及び/又はジスプロシウムである。適当な放射性核種には、例えば、Sm、Ho、Y、Pm、Gd、La、Lu、Yb、Sc、Pr、Tc、Re、Ru、Rh、Pd、Pt、Cu、Au、Ga、In、Sn、及びPbについての放射性の型を含む。
【0024】
本発明はこれらの放射性核種及び常磁性イオンの組成に限定されるものではないが、前記で列挙したものは代表的なものである。
【0025】
式(1)に含まれるホスホグリセリドは、天然に生成するレシチンから最も簡便に誘導される(但し、RCOOによって表される基は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等のような脂肪酸である)。しかしながら、本発明の方法で同じように有用なのは、各Rが任意的に置換されている飽和若しくは不飽和のヒドロカルビル成分である、ホスホグリセリドである。ヒドロカルビル成分は十分な親油性を授与されるためには、少なくとも10のCを含むべきである;しかし、それらの炭素は1以上のヘテロ原子(O、N、又はSから選択される)によって別々に隔てられてもよい。適当な置換基にはヘテロ原子含有−芳香族成分を含む置換基を含み、及び/又は、置換基はハロ、=O、OR、SR、及びNRでもよい(但し各Rは独立して任意的に置換されたアルキル(1‐6C)である)。Rによって表されるヒドロカルビル成分は分枝又は直鎖であってもよく、そして、1以上の環状部分を含んでいてもよい。各Rは、キャリアーを構成する親油性の微粒子又は小滴(droplets)と会合(association)する手段を提供するために、単純に十分に親油性でなければならない。熟練した技術者であれば、直ちに、この条件を満たすRの態様を選択することが出来る。
【0026】
式中に記載されているスペーサー成分は、存在しても存在していなくともよい。スペーサーはホスホグリセリド自体に起源を持つ部分を含んでいてもよい―例えば、一つの重要な態様において、スペーサーは、ホスファチジルエタノールアミンであるホスホジグリセリドから誘導されたCHCH成分であるか、又は、それを含んでいてもよい(ここで、式(1)で示されるNRはホスファチジルエタノールアミンから誘導されたものである)。Rの好ましい態様には、メチル、エチル、及び、Hを含む。ある態様においては、スペーサーは、ペプチド、偽ペプチド、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコールなどに由来する部分を含む。(偽ペプチドはペプチド結合がイソステリック結合で置換されたペプチドに類似したポリマーである―即ち、ここで、CONH結合が例えばCHNH、CH=CHなどで置換される。)スペーサーの長さは以下に記述するようにシグナルの緩和度を制御するために選択されてもよく、そして更に、キャリアー粒子からキレートの離脱を許容するような切断部位を含んでいてもよい。
【0027】
式(1)のベンゼン環上にある「非妨害性置換基」Rは、アルキル(1‐6C)、ハロ、アルコキシ(1‐6C)などの任意の置換基であり、そして、「非妨害性置換基」Rは、分子の残部とキレート剤の結合を、又は、キレート剤が適切な金属イオンを捕捉する能力を、又は、イメージングにおいて式(1)の化合物を含有する組成物の使用を妨害しないものである。メトキシが好ましい。種々の置換基が化合物の本質的特徴を妨害せずに前記ベンゼン環上に存在し得ることが理解されている。金属のキレート化又はイメージングとの関係において、式(1)の化合物の性能を有意に低下させることが分かっている任意の置換基は、本発明の範囲内に含まれない。好適な置換基には、OR、NR、SR、CN、NO、SOH、及びR(但しRは、任意的に例えばハロ、=Oなどで置換され、且つ、任意的にO、S、若しくはNのようなヘテロ原子を含有するアルキル又はアルケニルである)を含む。
【0028】
一般的には、式(1)の化合物は、次式の化合物:


(ここで、m、l及びRは上述のように定義される)と、次式の化合物から合成される


ここで、R、n、及びRは上述のように定義される。このタイプの反応は容易であり、そうした反応を行うための条件は当業者において既知である。典型的には、この反応は、弱塩基の存在下で非プロトン性の溶媒中で行う。
【0029】
式(1)の化合物は、典型的には、金属と会合し、親油性送達ビヒクルを含有する組成物の中に含まれる。「送達ビヒクル」は、微粒子のキャリアーで、少なくともその表面は親油性であり、また、親水性又は水溶性の媒体中に懸濁されている。これらのビヒクルはマイクロ粒子又はナノ粒子であり、平均直径は10nm〜100μm、好ましくは、50nm〜50μmの範囲でよい。しかしながら、in vivoでの使用においては、直径の範囲は50〜500nm、好ましくは、50〜300nmである。この粒子は種々の組成物であってよく、良く知られているリポソーム(種々の大きさであってよく、単層または多層であってよい)、ミセル、油滴、リポ蛋白のようなビヒクルを含み、それらは例えば、HDL、LDL、IDL、VLDL、カイロミクロン、フルオロカーボンナノ粒子、マイクロバブル(microbubbles)若しくはナノバブル(nanobubbles)で、又は、上述した範囲の大きさで少なくともその表面が親油性であり、更に以下に述べるような広範な種類の任意の粒子である。従って、これらナノ粒子の表面は、脂質、又は、界面活性剤、又は、その両者である。
【0030】
式(1)の化合物は、常磁性イオン及びキャリアーシステム中に含有される親油性粒子と会合する場合、磁気共鳴画像を得るのに有用である。送達システム中のビヒクルは更に、造影剤を所望の組織又は器官に運ぶためのターゲティング剤のような他の有用な成分を含んでもよく、また、任意的に、治療薬又は生理活性剤を含んでいてもよい。ある態様においては、これらのビヒクルは放射性核種のような他のイメージング剤(imaging agents)を含んでもよく、又は、より一般的には、キレート中に代替的に該放射性核種を含んでよい。
【0031】
ターゲティング剤は、典型的には抗体又はその免疫特異的な断片、所望の標的又は組織上に存在する受容体に対するリガンド、細胞成分を標的にするよう特異的に設計された分子(例えばインテグリンを標的にする環状RGDペプチドを基に設計された分子)などを含んでいてもよい。親油性粒子それ自体が、ターゲティング剤と結合し得る反応基を含んでいてもよい。
【0032】
送達ビヒクルの脂質/界面活性剤成分は、脂質/界面活性剤成分中に含有されている機能性を介して、これらの反応基と結合可能である。例えば、ホスファチジルエタノールアミンはそのアミノ基を介して所望の成分と直接結合してもよく、又は、以下に記載するようなカルボキシル、アミノ、スルフヒドリル基を提供する短いペプチドのようなリンカーと結合してもよい。或いは、マレイミドのような標準的な連結剤(linking agents)を用いても良い。ターゲティングリガンドと補助物質をナノ粒子に結合させるために、種々の方法が使用されてよい;これらの戦略には、例えば、ポリエチレングリコール又はペプチドのようなスペーサーの使用も含む。
【0033】
ターゲティングリガンド又はその他の有機成分と、外層成分との共有結合のために、種々のタイプの結合剤及び連結剤(linking agent)を使用することができる。そのような結合を形成するための典型的な方法には、カルボジアミドの使用によるアミドの形成、又はマレイミドのような不飽和成分の使用によるスルフィド結合の形成が含まれる。他の結合剤には、例えば、グルタルアルデヒド、プロパンジアール、又は、ブタンジアール、2-イミノチオランハイドロクロライド、スベリン酸ジスクシンイミジル、酒石酸ジスクシンイミジル、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スル-ホンのような二機能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-(5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、及び、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチラートのようなヘテロ二機能性剤、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、4,4'-ジフルオロ-3,3'-ジニトロジフェニルスルホン、4,4'-ジイソチオシアノ-2,2'-ジスルホン酸 スチルベン、p-フェニレンジイソチオシアナート、カルボニルビス(L-メチオニン p-ニトロフェニル エステル)、4,4'-ジチオビスフェニルアジド、エリトリトールビスカルボナートのようなホモ二機能性剤、並びに、アジプイミド酸ジメチル塩酸塩、ジメチルスベルイミダート、ジメチル3,3'-ジチオビスプロピオンイミダート塩酸塩のような二機能性イミドエステルなどを含む。連結は、また、アシル化、スルホン化、還元的アミノ化等によっても成し得る。所望のリガンドを外層の1以上の成分に共有結合で結合する多様な方法が、当業者には既知である。その特性に適合性があるならば、リガンド自体が表層内に含まれていてもよい。例えば、リガンドが高親油性を有しているならば、リガンド自体を脂質/界面活性剤コーティング中に埋め込んでもよい。さらに、リガンドがコーティングに直接吸着され得るならば、この吸着は結合を形成するであろう。例えば、核酸は、その負電荷のためにカチオン性界面活性剤に直接吸着される。
【0034】
ターゲティングリガンド又は抗体は、ナノ粒子に直接結合することもできる。即ち、リガンド又は抗体は、上述のようにナノ粒子自体と結合する。或いは、ビオチン/アビジンを介した間接的結合を使用してもよい。典型的には、ビオチン/アビジン媒介のターゲティングにおいて、リガンド又は抗体は、エマルジョンに結合するのではなく、むしろビオチン化の形態で、標的組織に結合する。
【0035】
コーティング層に取り込まれることによりナノ粒子と結合してもよい付属的な薬剤には、放射性核種(常磁性イオンの代わりでも、又は、常磁性イオンに加えてもよい)が含まれる。放射性核種は、治療的なものでも診断的なものでもよい;そのような放射性核種を使用する診断イメージングは既知であり、また、好ましくない組織へ放射性核種を標的化することによって治療上の効果が得られることも同様に既知である。典型的な診断用放射性核種には、99mTc、95Tc、lllIn、62Cu、64Cu、67Ga、及び68Gaが含まれ、治療用放射性核種には、186Re、188Re、153Sm、166Ho、177Lu、149Pm、90Y、212Bi、103Pd、109Pd、159Gd、140La、198Au、199Au、169Yb、175Yb、165Dy、166Dy、67Cu、105Rh、111Ag、及び192Irが含まれる。放射性核種は、予め形成されたエマルジョンに種々の方法で供与することができる。例えば、99Tc-ペルテクン酸(pertechnate)を、過剰量の塩化スズと混合し、予め形成されたナノ粒子エマルジョンの中に組み込むことができる。塩化スズの代わりに、オキシン酸第一スズ(Stannous oxinate)を使用することもできる。更に、市販のキット、例えばニコメドアマシャム(Nycomed Amersham)によりCeretek(登録商標)として販売されているHM−PAO(exametazine)キットも使用することができる。本発明のナノ粒子に種々の放射性リガンドを付着する手段は、当業者には既知である。上述のように、組成物が放射性核種を基礎とした診断的又は治療的目的で使用される場合、放射性核種は付属的な物質ではなく、常磁性イオンの代わりにキレート剤を占有してもよい。
【0036】
その他の付属的な薬剤としては、フルオレセン、ダンシル、量子ドット(quantum dots)のようなフルオロフォアが含まれる。
【0037】
本発明のある実施形態において、補助的薬剤として親油性キャリアービヒクルの中に含まれるものに、生理活性物質がある。このような生理活性物質は、例えばタンパク質、核酸、医薬等、多種多様なものであり得る。そのため、好適な医薬に含まれるものとして、抗悪性腫瘍薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤若しくは駆虫薬、抗ウイルス薬、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗凝血薬等がある。
【0038】
前記の全てのケースにおいて、会合成分が組織若しくは器官に対するターゲティングリガンドであるか又は補助剤であるかに関わらず、規定の成分が、非共有結合的に親油性ビヒクルと結合してもよいし、ビヒクルの構成成分と直接に結合してもよいし、又は、スペーサー成分を介して該構成成分と結合してもよい。
【0039】
多様性のあるビヒクルが本発明の組成物中で使用されてよい―例えば、リポソーム粒子がある。種々のタイプのリポソームについて記載した文献が広範に存在し、当業者には既知である。リポソーム自体が脂質成分を含んでいるため、上述の脂質及び界面活性剤がリポソーム自体に含有されている成分の記述において適用可能である。これらの親油性の構成成分は、不活性の核を有するナノ粒子上へのコーティングに関しては上述したものと同様の方法で、キレート剤に結合させるのに使用され得る。ミセルは、同様の材料から構成され、所望の材料特にキレート剤を結合させるこのアプローチはそれらに同様に適用される。固体状の脂質もまた使用される。
【0040】
もう一つの例では、タンパク質又はその他のポリマーが、微粒子のキャリアーを形成するのに使用できる。これらの物質は、親油性のコーティングを施せるような不活性な核を形成することが可能であり、又は、キレート剤は、例えば、微粒子の固体担体(particulate solid supports)に結合親和剤中で使用するような技術により、直接に重合体物質に結合させることが可能である。よって、例を挙げれば、タンパク質から形成された粒子は、例えばカルボジイミドによって仲介される脱水反応を通してカルボン酸及び/又はアミノ基を含む分子と共に結合されることが可能である。硫黄含有‐蛋白質は、他の有機分子(該分子はキレート剤が結合する部分を一緒に含む)にマレイミド連結を介して結合され得る。微粒子キャリアーの性質に依存して、キレート剤の鋸歯状部分と粒子の表面との間でオフセット(本来の中心位置からある方向に移動して画像を表示すること)が得られるように結合する方法は、当業者には明白であろう。
【0041】
さらに、もう一つの例では、国際特許出願国際公開W0 95/03829号により、薬物が油滴内部に分散又は溶解され、該油滴がリガンドによって特定の部位を標的にするオイルエマルジョンが記載されている。米国特許第5,542,935号には、ガス充填ペルフルオロカーボンミクロスフェアを用いた部位特異的薬物送達について記載されている。薬物送達は、ミクロスフェアの標的を目指した進行が可能となり、そして、ミクロスフェアの破裂が誘発されることによって達成される。ガス気泡(gas bubbles)を生成可能にするために、低沸点フルオロ化合物を用いて粒子を形成することもできる。
【0042】
一つの重要な態様には、上掲米国特許第5,958,371号に記載されているような高沸点ペルフルオロカーボン液を基礎としたナノ粒子エマルジョンを含む。前記液体エマルジョンは、脂質及び/又は界面活性剤から構成された被膜(コーティング)によって囲まれた比較的高沸点のペルフルオロカーボンを含有するナノ粒子から構成される。周囲被膜(コーティング)は、ターゲティング成分に直接結合することができ、又はターゲティング成分−任意的にリンカーを介して−と共有結合する中間物を捉えることができ、又は、ビオチンのような非特異的カップリング剤を含んでもよい。或いは、被膜(コーティング)は、一般的には核酸とりわけアプタマーのような負荷電ターゲティング剤をその表面に吸着可能とするような、カチオンであってもよい。
【0043】
好ましいエマルジョンは、1又は2以上の所望の成分の多数のコピーをナノ粒子に結合するためのビヒクルを提供する脂質/界面活性剤混合物である外被及びコアとしての高沸点ペルフルオロカーボンを含むナノ粒子システムである。基礎粒子の構築及びそれらを含むエマルジョンの形成について、外表面に結合する成分とは関係なく、上掲米国特許ないし特許出願第5,690,907号及び同第5,780,010号;及び娘出願(daughter applications)第5,989,520号及び同第5,958,371号として発行された米国特許に記載されている。これら文献は、引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。
【0044】
高沸点フルオロケミカル液とは、沸点が体温すなわち37℃より高いようなものを言う。従って、フルオロケミカル液の沸点は、好ましくは少なくとも30℃、より好ましくは37℃、一層好ましくは50℃以上、最も好ましくは凡そ90℃以上である。本発明に有用な「フルオロケミカル液」には、他の官能基を有するペルフルオロ化化合物(perfluorinated compounds)を含む直鎖状、分枝状及び環状ペルフルオロカーボンが含まれる。「ペルフルオロ化化合物」には、純粋なペルフルオロカーボン(だけ)ではなく、寧ろ他のハロ基(halo groups)も存在し得る化合物が含まれる。このような化合物には、例えばペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロジクロロオクタンが含まれる。
【0045】
有用なペルフルオロカーボンエマルジョンは、米国特許第4,927,623号、同第5,077,036号、同第5,114,703号、同第5,171,755号、同第5,304,325号、同第5,350,571号、同第5,393,524号、及び同第5,403,575号に開示されており、これら文献の内容は引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。また、有用なペルフルオロカーボンエマルジョンは、含有されるペルフルオロカーボン化合物が、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロジクロロオクタン、ペルフルオロ-n-オクチルブロミド、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロデカン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロモルホリン、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオルトリブチルアミン、ペルフルオロジメチルシクロヘキサン、ペルフルオロトリメチルシクロヘキサン、ペルフルオロジシクロヘキシルエーテル、ペルフルオロ-n-ブチルテトラヒドロフラン、及びこれらの化合物と構造的に類似する化合物、及びペルフルオロアルキル化エーテル、ポリエーテル又はクラウンエーテルを含む部分的又は完全にハロゲン化された(少なくともフッ素置換基を幾つか含む)又は部分的又は完全にフッ化された化合物、であるエマルジョンが含まれる。
【0046】
高沸点ハロカーボンに加えて、本発明の組成物において有用な粒子は、マイクロバブル(microbubbles)又はナノバブル(nanobubbles)を含んでもよい事に、注意すべきである。従って、低沸点成分の粒子が、蒸発をもたらすin vivoの温度で、使用されてもよい。
【0047】
更に、リポ蛋白及びカイロミクロンを使用してもよい。種々のタイプにリポ蛋白が良く知られており、例えば、LDL、HDL、及びVLDLが含まれる。
【0048】
一つの態様において、脂質/界面活性剤被覆ナノ粒子は、エマルジョンを形成するための水性媒体中の懸濁において、コアを形成するフルオロカーボン脂質と、外層を形成する脂質/界面活性剤混合物との、微小流動化(microfluidizing)によって形成される。この方法では、脂質/界面活性剤は、ナノ粒子を被覆される際に付加的リガンドと既に結合していてもよく、又は単に後の結合のための反応基を含んでいてもよい。或いは、脂質/界面活性剤層に含有されるべき成分は、付属物質の溶解特性の効力によって、当該層に単に溶解するだけでもよい。水性媒体中の脂質/界面活性剤の懸濁を得るために、超音波処理及び他の技術が必要となることもある。典型的には、脂質/界面活性剤外層中の少なくとも1つの物質は、所望の付加的成分と結合するのに有用なリンカー又は官能基を含み、又は所望の付加的成分は、エマルジョンが調製される時には既に当該物質と結合していてもよい。
【0049】
送達ビヒクル(結合リガンド、又は、所望の成分をその表面に結合するための試薬を含む)上の外被の形成に使用される脂質/界面活性剤には、天然又は合成型のリン脂質、脂肪酸、コレステロール、リソ脂質(lysolipids)、スフィンゴミエリン等が含まれ、更に脂質複合(conjugated)ポリエチレングリコールが含まれる。市販されている各種のアニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン(Tweens)、スパン(Spans)、及びトライトン(Tritons)等も使用することができる。界面活性剤の中には、ペルフルオロヘキサン酸及びペルフルオロオクタン酸のようなペルフルオロ化アルカン酸(alkanoic acids)、ペルフルオロ化アルキルスルホンアミド、アルキレン4級アンモニウム塩(alkylene quaternary ammonium salts)等のようなそれ自体がフッ化されているものもある。更に、ペルフルオロ化アルコールリン酸エステルも使用することができる。外層に含まれるカチオン性脂質は、核酸、とりわけアプタマーのようなリガンドを保持するのに有利であり得る。典型的なカチオン性脂質には、DOTMA,N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド; DOTAP,1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン; DOTB,1,2-ジオレオイル-3-(4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール,1,2-ジアシル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン; 1,2-ジアシル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-エチルホスホコリン;及び3β-[N',N'-ジメチルアミノエタン]-カルバモール]コレステロール-HClが含まれる。
【0050】
幾つかの態様においては、表面の脂質/界面活性剤中に、ターゲティングリガンド又は抗体、及び/又はイメージング若しくは治療のための補助的物質を結合するのに使用できる反応基が付随した成分を含む。
【0051】
MRIにおける本組成の使用
磁気共鳴画像において使用する場合は、本発明の組成物は典型的にはキレート化構造中に常磁性イオンを含有する。そのような適用において、スペーサーの内包は特に有利である。
【0052】
上に説明したようにスペーサーの機能は二つある:第一に、粒子からのキレート剤の距離を(それにより常磁性イオンを)制御することにより、粒子周囲の水中の水素への常磁性イオンの暴露を制御し、シグナルの緩和度を調整できる。第二に、スペーサーは、分断可能な基を含んでもよく、それにより、イメージングの機能が果たされた時にキレート化された金属イオンの排出を促進する。
【0053】
第一の緩和度の効果に戻ると、得られる緩和度を最大にするには、スペーサーの寸法は、常磁性イオンが粒子の表面からオフセットされるような距離的には好ましくは少なくとも5又は10Åである。
【0054】
使用されている、ビヒクルの「表面(surface)」とは、キレート剤が結合する位置の粒子を構成する物質の外側限界を意味する。結局、粒子自体の平均直径は、常磁性イオンが存在する位置の中心からの平均距離に匹敵する。これは少なくとも5Å、好ましくは少なくとも10Åであるべきである。
【0055】
オフセットの程度は、オフセットによって与えられる緩和度への影響の立場から規定され得る。与えられた緩和度は、磁場の強度に依存する;粒子あたりの緩和度はもちろん粒子自体と結合している常磁性イオンの数により部分的には規定される。任意に選択された0.47Tの磁場強度で、オフセットは、イオンあたりで少なくとも1.2倍に、好ましくは1.5倍に、より好ましくは2.5倍に、又は、ρ及び同様の量のρについて10倍に、緩和度を増強するのに十分である。任意に選択された1.5Tの磁場強度において、オフセットは同様の要因により、これらの緩和度を増強する。4.7Tでは、好ましくはρの増強は、イオンあたり、少なくとも1.5倍、好ましくは2倍、及び、ρの増強は、少なくとも2倍、好ましくは3倍である。緩和度それ自体の単位に関しては、0.47Tにおける(smM)‐1でρの値でみるとオフセットは少なくとも20好ましくは25、より好ましくは30で;1.5 Tでは、これらの値は、少なくとも20、好ましくは30、及び、4.7Tでは、少なくとも10、好ましくは14である。ρに関しては、0.47Tでの相当する値は、少なくとも20、好ましくは30、そして、より好ましくは35で;1.5Tでは、少なくとも20、好ましくは30;及び、4.7Tでは、少なくとも20、より好ましくは40、最も好ましくは60である。
【0056】
適切にキレート剤を結合することにより、相当数のキレート剤及び常磁性イオンが粒子に結合出来る。典型的には常磁性イオン含有キレーターについては、粒子は少なくも2000コピーを、典型的には少なくとも5000コピーを、より典型的には少なくとも10,000又は100,000又は500,000コピーを含む。ターゲティング剤については、1若しくは2、又は、幾つか、又は、それ以上のコピーを含んでいてよい。種々の数の薬物分子が含まれていてもよい。
【0057】
出願人らはビヒクル組成物に常磁性イオンを含有する多様なキレーターを適用出来るので、相当高い緩和度を粒子あたりで獲得し得る。粒子あたりのρ及びρにおける増加倍数は、もちろん、イオンあたりのそれらの増加倍数と似ている。出願人らは、しかし、0.47Tでの粒子あたり(smM)‐1の単位で、ρ値を評価することが出来き、少なくとも1.8×10、好ましくは2.0×10、より好ましくは2.5×10であった。1.5Tでは、これらの値は似ており、そして、4.7Tにおいてはρに関する緩和度の値は少なくとも8×10、より好ましくは1×10、より好ましくは1. 1×10である。
【0058】
0.47Tでのρに関しては、緩和度は、この単位において、好ましくは少なくとも2×10、より好ましくは2.5×10、そして、より好ましくは3×10である。1.5Tでは、ρに関する値は、少なくとも1.6×10、好ましくは2.5×10、そして、より好ましくは3×10である。4.7Tでは、ρは少なくとも3×10、より好ましくは4×10、そして、より好ましくは5×10である。
【0059】
オフセットは、ホスホグリセリドがビヒクル表面で親油性物質と結合すると、ビヒクルの表面にスペーサーを介してキレートの鋸歯状部分の間隔を空けることによって成される。
【0060】
分断可能なスペーサー(Cleavable Spacers)
スペーサーを使用する二番目の利点は、常磁性イオン又は放射性核種イオンキレートが、粒子から、又は、ビヒクルの部分を構成する脂質から、分離可能なように、スペーサーが分断されてもよいことである。排出を促進するために、親油性の状態にあるキレートを解放により排出が増大することは望ましいことである。それゆえに、スペーサーは、外部的に活性化されるような(例えば光活性化によって)、又は、細胞若しくは血流中に存在する酵素によって連続的に接近されるような、1以上の切断部位を有していてもよい。前者の例は、当業者に理解されているような、光活性化される又は超音波で切断されるような特別な連結(linkages)を含む。イメージング又は治療が終了した後に、ナノ粒子は、適切に切断を起こさせるような電磁波エネルギー又は超音波を受ける。二つ目の事例は、スペーサーが、循環しているプロテアーゼによる切断に感受性のあるアミノ酸配列を含むペプチドであるか又は該ペプチドを含んでもよく、或いは、そのような切断にそれ自体感受性のある多糖類を含んでもよい。そのような切断部位の任意の組み合わせが含まれてよい。切断するためのスペーサー又は繋ぎの感受性は、そのため、排出を促進し常磁性イオンの潜在的な毒性を減少させる。
【0061】
もし連続的な分解が行われるならば、その率は、有効な酵素活性に従ってスペーサーを選択することにより、及び、所望の数の切断部位を供給することにより、調整してもよい。しかしながら、血流中を循環している任意のペプチドが最終的には循環しているプロテアーゼにより分解されることが知られているように、同様に、多糖類は内因性の酵素によって切断に供される。
【0062】
調製の方法
本発明の組成物を調製するための明確なプロセスは一定しておらず、粒子ビヒクルの性質及びスペーサー分子の選択(それが存在する場合)に依存する。前述のように、反応基を含む固体粒子はスペーサーに直接結合し得る;オイルエマルジョン、固体脂質、リポソーム、フルオロカーボンなどのような脂質ベース粒子は、キレート剤の鋸歯状部分を支える(bear)連結成分に共有結合的に結合される反応基を含有する親油性物質を含む事が出来る。一つの微粒子の好ましい態様では、そのプロセスは、水性懸濁液中で、ナノ粒子の核及びその粒子に対して脂質/界面活性剤コーティング成分が形成された液体フルオロカーボン化合物を混合すること、微小流動化(microfluidizing)すること、及び、望ましいのであれば、微粒子を回収しサイジング(分粒)することを含む。結合されるべき構成成分は、1以上の脂質/界面活性剤コーティングへの最初の結合により元々の混合物中に含むことが出来るし、又は、微粒子が形成された後で付加的成分への結合を行うことも可能である。
【0063】
キット
本発明のエマルジョンは、調製後に本発明の方法において直接使用してもよいし、或いは、エマルジョンの構成成分をキットの形で供給してもよい。キットは、バッファー中に又は凍結乾燥状態で、全ての所望の補助剤を含有する予め調製された標的化成分を含んでいてもよい。或いは、キットは式(1)の化合物を欠いたエマルジョンの及び/又は、別個に供給されるターゲティング剤との形態でもよい。ターゲティング剤が直接に結合される場合、エマルジョンはマレイミド基のような反応基(該反応基はエマルジョンがターゲティング剤と混合された際にターゲティング剤のエマルジョン自体への結合をもたらす)を含む。別個の容器で結合を行わせるのに有用な付属的薬剤を供給してもよい。あるいは、エマルジョンは、それ自体が反応基を含み別々に供給されるべき所望の成分と結合したリンカーに結合する反応基を含んでいてもよい。適切なキットを構築するための広範な種類のアプローチが想定されよい。最終的にエマルジョンを形成するための個々の成分は別個の容器で供給されてもよいし、又は、キットは単純に、キットそれ自体とは別個に供給される他の物質とを組み合わせるための試薬を含んでいてもよい。
【0064】
網羅的に列挙できないが、組み合わせの例には以下のものが含まれる:脂質−界面活性剤層中に、フルオロフォア又はキレート化剤及びターゲティング剤との結合のための反応成分のような補助成分を含むエマルジョン調製物;逆に、エマルジョンがターゲティング剤と結合する所に、補助剤と結合するための反応基を含むもの;エマルジョンはターゲティング剤とキレート化剤の両方を含むが、キレート化されるべき金属はキットに含まれるか利用者によって別に用意されるもの;界面活性剤/脂質層を含むナノ粒子の調製物であって、該層中の物質は異なる反応基、即ちターゲティング剤のための1セットの反応基と補助剤のためのもう一つの反応基のセットを含むもの;前述の組み合わせの任意のものを含むエマルジョンの調製物であって、反応基が連結剤(linking agent)によって提供されるもの。
【0065】
適用
エマルジョン及びその調製のためのキットは本発明の方法(組織の画像化及び治療剤の提供を含む)において有用である。
【0066】
本発明の磁気共鳴画像法用造影剤は、米国特許第5,155,215号;同第5,087,440号;Margerstadt, et al., Magn. Reson. Med. (1986) 3: 808; Runge, et al., Radiology (1988) 166: 835; 及び Bousquet, et al., Radiology (1988) 166: 693に記載されているような他のMRI剤と同様に使用することができる。使用可能な他の剤には、米国特許公開第2002/0127182号に記載されているpH感受性でかつパルスに依存してコントラスト特性が変化する剤もある。一般的には、造影剤の滅菌水溶液は、体重1kg当り0.01〜1.0mモルの範囲の用量で患者に静脈内投与される。
【0067】
通常、放射性画像のための診断用成分は、生理食塩水に溶かして、静脈内注入により、体重70kg当り1〜100mCiの用量、好ましくは5〜50mCiの用量で投与される。イメージングは、既知の方法によって実行される。
【0068】
治療用放射性医薬品は、通常生理食塩水に溶かし、静脈内注入により、体重1kg当り0.01〜5mCiの用量、好ましくは体重1kg当り0.1〜4mCiの用量で投与される。比較可能な類似の治療用放射性医薬品に関しは、現在の臨床実務では、ゼバリン(登録商標)について0.3〜0.4mCi/kg、標識されたソマトスタチンペプチドであるオクトレオセル(OctreoTher)(登録商標)について1〜2mCi/kgの範囲の用量が規定されている。このような治療用放射性医薬品については、癌細胞の殺傷と正常組織への毒性とりわけ放射能による腎炎とのバランスがある。これらのレベルでは、そのバランスは一般的には癌細胞殺傷効果の方に片寄っている。これらの用量はイメージング用の同位元素の相当量よりも高い。
【0069】
本発明の組成物が標的送達ビヒクルを含む場合、適合性のある標的は癌組織、アテローム硬化型のプラーク、凝血塊などの任意の組織を含む。ターゲティング剤の選択はもちろん標的そのものの性質に依存する。例えば、アテローム硬化型のプラーク又は凝血塊を標的にするなら、坑フィブリン抗体は、αβ受容体と相互作用するペプチド擬態のため適切である。癌に対する適当なターゲティング剤は、癌関連抗原に対して又は癌宿主組織との関係で調製された抗体を含む。特定の組織のイメージングは、受容体、又は、標的自体と関係するその他の特有な成分と相互作用するターゲティング剤を使用する。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は、本発明の説明のためのものに過ぎず、本発明を限定することを意図したものではない。
【0071】
調製A
ナノ粒子の調製
常磁性ナノ粒子は、Lanza, G, et al., Circulation (1996) 94:3334-3340に記載された方法を修正した方法により作成した。簡潔にいえば、エマルジョンは、40%(v/v)ペルフルオロオクチルブロマイド(PFOB;MMM、セントポール、ミネソタ州)、2%(w/v)ベニバナ油、2%(w/v)界面活性剤共混合物、1.7%(w/v)グリセリン及び残部としての水から構成した。界面活性剤共混合物は、63mol%レシチン(アヴェンティ・ポーラー・リピズ・インク.、アラバスター、アラバマ州)、15mol%コレステロール(シグマ・ケミカル・コー、セントルイス、ミズーリ州)、2mol%ジパルミトイル−ホスファチジルエタノールアミン(アヴェンティ・ポーラー・リピズ・インク、アラバスター、アラバマ州)及び20mol%常磁性親油性キレートを含んでいた。親油性キレートは、ガドリニウムジエチレン−トリアミン−五酢酸−ビス−オレアート(Gd−DTPA−BOA;ゲートウェイ・ケミカル・テクノロジーズ、セントルイス、ミズーリ州)又はDTPA−ホスファチジルエタノールアミン(DTPA−PE;ゲートウェイ・ケミカル・テクノロジーズ、セントルイス、ミズーリ州)の何れかであった。界面活性剤の成分は、クロロホルムに溶解し、減圧下で蒸発させ、50℃真空乾燥器で終夜乾燥し、超音波処理により水中に分散した。(生じた)懸濁液は、PFOB、ベニバナ油及び蒸留脱イオン水と共にブレンダーで30〜60秒間前乳化処理したのち、20,000PSIで4分間、M110Sマイクロフルイディクス乳化機(マイクロフルイディクス、ニュートン、マサチューセッツ州)で乳化処理した。完成した処方物は、圧着シールしたガラス瓶に入れ、窒素を封入した(blanketed)。粒径は、レーザー光散乱サブミクロン粒子寸法測定器(モルヴァン・インスツルメンツ、モルヴァン、ウスターシア州、英国)で3重測定した。
【0072】
[実施例1]
式(1)の化合物の調製
ホスホエタノールアミンジグリセリド(PE)を、まず、t‐boc保護トリグリシンに結合させる。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)のいずれかと、ジイソプロピルカルボジイミド(若しくはそれと等価なもの)を用いて、t−boc−トリグリシンの遊離酸の活性エステルを形成するような、標準的な結合技術を用い、そして、t−boc−トリグリシン−PEを精製する。
【0073】
トリフルオロ酢酸によりt−boc−トリグリシン−PEを処理することにより、トリグリシン−PEが生成し、次いで、これをDMF/CHCl中の過剰のDOTA−NCSと50℃で反応させる。溶媒を除去することにより、最終産物を分離し、次いで固形残滓を過剰の水でリンスし、過剰の溶媒と未反応又は加水分解されたDOTA−NCSを除去する。

【0074】
トリグリシンスペーサーが、プロテアーゼに対する基質として、切断され得るリンカーであることは良く知られている。或いは、トリグリシンスペーサーの代わりに、カプロイルアミン‐PE(Avanti Polar Lipidsから市販されている)を用いて同様の構造を調製した。この物質は、上述のグリシンスペーサーに関して述べたのと類似の方法により、DOTA‐NCSと反応させる。
【0075】
[実施例2]
ガドリニウムイオンの導入
ガドリニウムイオンのキレートへの導入は、最初にDOTA‐NCSを金属化して行ってもよいし、又は、合成後に式(1)の化合物を金属化して行ってもよい。
【0076】
MeO‐DOTA‐NCSの先行金属化はGdCl水溶液中で行った。反応混合物は凍結乾燥させて乾燥させ、PE又はトリグリシル-PEと結合させる前に、更なる精製を行わずに使用した。塩が最後の結合においてネガティブな影響を与えないように、乾燥させたMeODOTA‐Gd‐PE反応混合物を水でリンスした。
【0077】
GdをGdClの置換に使用してもよい―すなわち、MeOH/クロロホルム中でGdを含む溶液を長時間沸騰させることにより、「塩を除去した(salt free)」金属複合体が生成される。
【0078】
結合したMeO‐DOTA‐PEの後の金属化は、沸騰したクロロホルムメタノール混合液中で、GdClで行う。
【0079】
Gd‐MeO‐DOTAはHPLCにより特徴づけを行った。LCの条件は: Zorbax CB C8 カラム、25% アセトニトリル、0.2%TFAによるアイソクラティック溶出、260nmで検出。非複合型のMeO‐DOTA‐NCSは3.8‐4.0分で溶出される。MeO‐DOTA‐PEは、LC及びMSにより特徴付けを行った。Gd‐MeODOTA‐PEの特徴付けのためのHPLCの条件は: Astec、Pholipidecカラム;溶媒システム:溶媒A(80%CHCl、19%MeOH、1%NHOH)及び溶媒B(MeOH)、勾配プロファイル:0‐10分 100−75% A、0‐25% B;10‐15分 25‐100% B、15‐20分から100% Bで固定、20‐22分から100‐0% B、5分間100%Aで固定。ELSD及びUV検出器を使用した。
【0080】
Gd‐MeO‐DOTA‐NCS及び、それに対応する結合したGd‐MeO‐DOT‐PEのHPLCの結果を、各々、図1A及び図1Bに示す。得られたGd‐MeO‐DOTA‐PEの質量スペクトルを図2に示す。
【0081】
[実施例3]
動物実験のための結合体の合成
A. GdMeODOTA‐NCSの調製
MeO‐DOTA‐NCS(ダウケミカル)(18.71g、33mmol)を、脱イオン水(500mL)中に溶解させた。pHプローブを溶液の中に入れ、撹拌しながら、溶液のpHをNaOH(50%)の添加により〜6に調整した。別のフラスコ中で、GdCl×6H0(Ohduch)(18.37g)を100mLの脱イオン水に溶解した。Gd溶液を注意深く5mLのアリコートで3回、撹拌中の溶液に添加した。各添加の後で、pHを測定し、水酸化ナトリウム(50%)の添加によりpH6〜7にPRNを調整した。溶液は凍結乾燥した。この過程により、43.9gのかすかに緑色の粉末が得られ、純度は92%であった。
【0082】
B. Gd‐MeO‐DOTA‐PEの調製
2リッターの三つ首丸底フラスコに、上記Aで調製したGd‐MeO‐DOTA‐NCS(43.9g、mmol);PE(15g、22mmol);DMF(500mL);Et3N(4.57mL);及びCHCl(300mL)を入れた。PEは、アバンチ(Avanti)から得た1,2-ジパルミトイル-sn-グリセリン-3-ホスホエタノールアミンとして供給された。混合物を8時間、50℃で加熱した。反応はHPLCでモニターした。溶媒を減圧下で除去し、得られた固体を水(〜100mL)に懸濁し、そして、粗いフィルター漏斗を使って、Celpure社の濾過剤(8‐10cm厚)上で濾過した。その固体を大量の水(1L‐1.5L)でリンスした。固体層から水の大部分を除いた後に、その固体をCHCl:MeOH(3:1)(約1L〜1.5Lの総容量)でリンスした。ろ液の有機溶媒は、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濾過し減圧下で乾燥させると、20gの明るいベージュ色のガラス状の固体が得られた。LCでは、90%の純度であった。
【0083】
最終産物の調製のためのプロセスの流れ図を図3に示す。
【0084】
[実施例4]
緩和度におけるスペーサーの長さの影響
本実施例では、キレーター(Ch)としてDTPAを、常磁性イオンとしてガドリニウムを用いた本発明の実施態様は、緩和度におけるスペーサーの長さの影響を示すのに使用したホスファチジルエタノールアミンと最終的に結合させた。Gd‐DTPA‐PE自体は本発明の化合物の範囲に入らないが、緩和度における組成物中の微粒子からキレート剤を離す影響を、本実施例のデータにより図示した。DTPA‐PEはゲートウェイ・ケミカル・テクノロジーズ(セントルイス、ミズーリ州)から購入できる。ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸-ビソレアート(Gd‐DTPA‐BOA)(ゲートウェイから購入可能)によって生成される緩和度を比較した。
【0085】
調製Aにおいて記述したように調製したナノ粒子及びゲートウェイから購入したキレートとを、記述したように組み込んだ。DTPA‐PEで処理されたナノ粒子への乳化ステップとは反対に過剰量の塩化ガドリニウムを添加した。非結合のガドリニウムは、滅菌脱イオン水(300,000mwカットオフ、スペクトラムラボラトリーズ、ランコドミゲッチュ、カリフォルニア州)で透析することにより除去した。Gd‐DTPA‐BOAは、記述したように、完成した化合物として組み込まれた。両組成物は、アルセナゾIII反応を用いて遊離Gd3+を調べ、非結合のガドリニウムの兆候が無いことが示された。
【0086】
Gd−DTPA−BOA及びGd−DTPA−PEナノ粒子は、以下の特性を有している:
表1:常磁性ナノ粒子の特性

【0087】
実施例1で調製したGd−DTPA−BOA及びGd−DTPA−PEナノ粒子を蒸留脱イオン水で希釈して、0、4、6、8、10及び12%PFOB(v/v)を調製した。初期ナノ粒子処方物は、26.1mol/L19Fを含み、希釈アリコートは、それぞれ、0、3.915、5.22、6.525及び7.83mol/L19Fを有していた。総ガドリニウム含量は、中性子放射化分析によって求めた。Gd−DTPA−BOAナノ粒子希釈物のガドリニウム含量は、それぞれ、0;0.336;0.504;0.672;0.84;及び1.01mmol/LGd3+であった。 Gd−DTPA−PE試料中の常磁性イオン濃度は、それぞれ、0;0.579;0.869;1.16;1.45;及び1.74mmol/L Gd3+であった。
【0088】
各試料のプロトン縦及び横緩和速度(1/T及び1/T)は、40℃、0.47Tの磁場強度によりブルカーMQ20ミニスペックNMRアナライザーで測定した。Tは、10反転遅延値によるインバージョンリカバリーシークエンスを用いて測定し、Tは、カー−パーセル−マイブーム−ジル(Carr-Purcell-Meiboom-Gill:CPMG)によって測定した。T及びT緩和度(即ちρ及びρ)は、縦及び横緩和速度対Gd3+濃度(即ちイオン緩和度)又は縦及び横緩和速度対ナノ粒子濃度(即ち粒子緩和度)の線形最小自乗回帰の傾きから計算した。その単位は(s*mM)−1で示す。
【0089】
標準的な11cm径サーフェスコイルにより得られたクリニカルスキャナー(ジャイロスキャンNT、パワートラック6000、フィリップス・メディカル・システムズ、ベスト、オランダ)からのスピンエコー画像を用いて、1.5Tで2種のナノ粒子処方物の緩和度を測定した。6室ファントムにより、6つの希釈物をすべて並行して検査することができた。2種の常磁性処方物の異なる緩和時間に対応するために、異なるイメージングパラメータを適用した。Tは、インバージョンリカバリーMRIパルスシークエンスから計算した。Gd−DTPA−BOAファントムに対する測定は、50〜1500msの範囲の6つの反転時間(TI)を含み、Gd−DTPA−PE値は、5〜200msの範囲の7つのT値を使用した。各室からのシグナル強度(S1)は、式:
S1TI=S1×(1−EXP(−TI/T)) [1]
にはめ込んだ。ここに、S1は、平衡シグナル強度である。Gd−DTPA−BOAに対するT値は、20ms〜160msの範囲の8つのエコー時間(TE)によるマルチエコーシークエンスから導出した。4.5ms〜200msの範囲のエコー時間による9つの異なる画像を用いて、Gd−DTPA−PEファントムに対するT緩和を計算した。MRIシグナル強度を式:
S1TE=S1×EXP(−TE/T) [2]
にはめ込んだ。2つの処方物に共通のイメージングパラメータは、TR=1000ms、TE=5ms(特段に記載がない場合に限る)、シグナル平均数=4、画像マトリックス=128×128、FOV=7cm×7cm、フリップ角度=90°、スライス厚=5mmであった。
【0090】
また、2つの常磁性処方物の緩和度は、5cmバードケージコイルを用いヴァリアンINOVAコンソール(ヴァリアン・アソシエイツ、パロアルト、カリフォルニア州)に調整された4.7Tマグネットによって測定した。既に述べたように、6室ファントムを用いて種々のエマルジョンを並行して試験した。T及びT値は、それぞれ、インバージョンリカバリー(TE=7.2ms、Tは1〜800msの間で可変)及びスピンエコー(TEは7.2〜100msの間で可変)パルスシークエンスによって得た。画像は、TR=3000ms、シグナル平均数=4、画像マトリックス=256×256、FOV=4cm×4cm、フリップ角度=90°、スライス厚=2mmで収集した。
【0091】
最後に、2つの常磁性調製物の緩和度を、カスタムビルト可変フィールドリラクソメータ(relaxometer)(サウスウエスト・リサーチ・インスティチュート、サンアントニオ、テキサス州)を用い0.05T〜1.3Tの範囲の磁場(2〜56MHz)で独立的に測定した。試料は、3℃及び37℃で測定した。32増分τ値を有する飽和回復パルスシークエンスを用いてρを測定し、ρは、500エコーを有するCPMGパルスシークエンス及び2msインターエコー遅延時間を用いて測定した。
【0092】
表2に、3つの磁場強度において求めたGd−DTPA−BOA及びGd−DTPA−PE常磁性処方物のT及びT緩和度を示す。
【0093】
表2 3つの異なる磁場強度におけるGd−DTPA−BOA及びGd−DTPA−PEエマルジョンの緩和度

【0094】
(3つの)すべての磁場強度において、Gd−DTPA−PE処方物のイオン緩和度ρ及び粒子緩和度ρは何れもGd−DTPA−BOA剤のρより凡そ2倍大きかった(p<0.05)。同様に、Gd−DTPA−PE剤のイオン緩和度ρ及び粒子緩和度ρは最小磁場強度(0.47T)では何れもGd−DTPA−BOA系のρより凡そ2倍大きかった(p<0.05)。この相対的差異は、最大磁場強度(4.7T)では3倍より大きかった(p<0.05)。
【0095】
一般的な医用イメージング磁場強度である1.5Tでは、Gd−DTPA−BOAのイオン緩和度ρ及びρは、それぞれ、17.7±0.2(s*mM)−1(平均値±標準誤差)及び25.3±0.6(s*mM)−1であった。これは我々が以前報告した推定値(Flacke, S., et al., Circulation (2001) 104:1280-1285)と一致している。Gd−DTPA−PEの組み入れにより、(Gd−DTPA−BOAとは対照的に)、イオン緩和度ρ及びρは、それぞれ、33.7±0.7(s*mM)−1及び50.0±2(s*mM)−1に増加した。標的化された剤の観点からより重要な粒子緩和度ρ及びρは、Gd−DTPA−BOAに対しては、それぞれ、1,010,000±10,000(s*mM)−1及び1,440,000±30,000(s*mM)−1であり、Gd−DTPA−PEナノ粒子に対しては、それぞれ、2,480,000±50,000(s*mM)−1及び3,700,000±100,000(s*mM)−1であった。我々が知る限りでは、このような範囲の粒子ないし分子緩和度は、このような磁場強度における標的化された又は血液プール用の任意の常磁性造影剤について現在までに報告されている中で最も大きなものである。
【0096】
緩和度に対する磁場の影響を図2に示す。イオン及び粒子縦緩和度の大きさは、磁場強度が0.47Tから4.7Tに増加するに従って減少したが、イオン及び粒子横緩和度は、磁場強度が大きくなるに連れて連続的に増加した。粒子縦緩和度は4.7Tでは1.5Tと比べて凡そ50%減少したが、粒子緩和度ρは、非常に高いレベルで維持された。リガンド−標的化造影剤としては、より大きい磁場強度における緩和度の減少は、ボクセルサイズの減少、より小さい部分体積希釈効果、及びシグナル対雑音比の改善によって効果的にオフセットされるであろう。
【0097】
可変フィールドリラクソメトリー(relaxometry)測定により、2つのエマルジョンのρは、緩慢にタンブルするエマルジョン複合体(錯体)の長い相関時間(τ)によって支配されることが分かった(図3)。事実、粒子は比較的大きいので磁場依存性(拡散)はなかった。これに対し、ρ値は、最初は、ρのそれに従うが、(τを伴う非拡散時間のため)ソロモン−ブルームバーゲンの式(Wood, M. L., J. Mag. Res. Imag. (1993) 3:149-156)に基づく予想通りに、より大きい磁場では減少しなかった。Gd−DTPA−BOAエマルジョンに対しては、緩和度ρの「ピーク」は、凡そ25(s*mM)−1であり、ρの最大値は、30(s*mM)−1であった。ρの値は、温度には殆ど依存しないが、ρは、比較的低い温度では増加した。しかしながら、Gd−DTPA−PEエマルジョンに対しては、緩和度は遥かにより大きく、ρは40MHz(凡そ1.7T)で40(s*mM)−1に達し、ρは56MHz(1.3T)で50(s*mM)−1に達した。また、Gd−DTPA−PEの温度依存性もGd−DTPA−BOAとは異なり、ρは低温では減少し、ρは温度とは無関係に維持された。リラクソメトリーの値は、0.47T及び1.5Tでの類似の測定と一致した(表2)。更に、これらの曲線の温度依存性は、Gd−DTPA−PEキレートはGd−DTPA−BOAと比べて水に対するより良好なアクセス(接近能)(即ちより迅速な交換)を有することを示唆している。
【0098】
[実施例5]
ナノ粒子と結合した造影剤の増加した緩和度
Gd‐MeO‐DOTA‐PE及びGd‐MeO‐DOTA-トリグリシン-PE結合体は、調製Aのように調製されたナノ粒子と結合された、そして、ナノ粒子との結合はその調製に記述されたように行われた。各微粒子は、凡そ33,000Gd3+−キレートを含む。ρ緩和度を、実施例4で記述したように、同等の量のGd‐DTPA‐BOA及びGd‐DTPA‐PEと結合した同様のナノ粒子から得られた緩和度と比較した。イオンあたり及び粒子あたりの結果とを、各々、図4及び図5に示す。
【0099】
Gd‐DTPA‐BOAナノ粒子のイオンあたりのρ値は21.3smM‐1;Gd‐MeO‐DOTA‐PEナノ粒子の場合は29.8smM‐1、及び、Gd‐MeO‐DOTA‐トリグリシン‐PEナノ粒子は33.0smM‐1であった。各微粒子が33,000Gd3+‐キレートを保有しているので、微粒子の緩和度は、Gd‐DTPA‐BOA:700,000smM‐1、Gd‐MeO‐DOTA‐PE:980,000smM‐1、及び、Gd‐MeO‐DOTA‐トリグリシン‐PE:1,100, smM‐1であった。トリグリシンスペーサーが緩和度を改善しており、そして、DOTA及びPEスペーサーを用いた両結合体に関する緩和度はGd‐DTPA‐BOAの緩和度を越えて改善されているのが、分かる。
【0100】
[実施例6]
金属交換反応
上述のように、結合したナノ粒子は、血液プール造影剤のような非標的化(non-targeted)キレート剤と比較した場合、対象からのクリアランスを遅延させるターゲティング剤(targeting agent)と結合してもよい。これは、キレートによる有意な金属の保持をもたらす;DOTAのような大環状のキレートによる金属の保持は、DTPA又はEDTAのような直鎖状のキレートよりも桁違いに強いことが知られている。更に、キレーター自体の一部ではない結合部位の使用は、キレート化の強度を犠牲にせずに効率的な結合をもたらす。
【0101】
過剰量の亜鉛をGD‐DTPA‐BOA粒子における金属交換反応を起こさせるのに競合種として使用し、ナノ粒子を本発明の結合体(conjugate)に結合させた。DOTAキレートが緩和度における高率又は高振幅いずれの変化も示さなかったのに対し、Gd‐DTPA‐BOAナノ粒子の縦緩和度は、ZnClの添加後すぐに減少し、本発明のGd3+複合体の改善された安定性を反映している。二つのDOTAキレートについての平衡状態で保持されたガドリニウムは(91%)、DTPAキレートの場合(75%)に比較して非常に高かった。したがって、DOTAキレートは、直鎖状のGd‐DTPA‐BOAキレートに比較して、緩和度で40‐55%より高く、金属交換反応で64%より低いことが証明された。
【0102】
[実施例7]
クリアランスにおける切断可能なリンカーの効果
Gd‐MeO‐DOTA‐PE及びGd‐MeO‐DOTA-トリグリシン-PEナノ粒子を、標準的な用量すなわち40wt%ペルフルオロカーボンエマルジョンを0.5ml/kgで、Sprague−Dawleyラットの静脈内に投与した。各時点において各々の動物(各処置群あたりn=3)から肝臓と脾臓を取り出し、ガドリニウムを解析した。その結果を、器官ごとに注入した用量のうち保持されたパーセントとして、図6A及び6Bに示す。図に示すように、切断可能なトリグリシンリンカーを含む形態が、より速やかに消えている。
【0103】
[実施例8]
腫瘍イメージング
A.DSPE−PEG(2000)マレイミド−メルカプト酢酸付加体

【0104】
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)2000]をDMFに溶解し、窒素又はアルゴンでのスパージングによって脱気する。この無酸素溶液をDIEAを用いてpH7−8に調節し、メルカプト酢酸で処理する。開始材料が完全になくなったことが示されるまで外界温度で撹拌を続ける。この溶液は、以下の反応で直接利用する。
B.DSPE−PEG(2000)マレイミド−メルカプト酢酸付加体と坑腫瘍関連抗原との結合
【0105】
上記パートAの生成物溶液を、HBTUと十分なDIEAを加えることによりpH8−9に維持しつつプレ活性する。この溶液に、腫瘍関連抗原に特異的なモノクローナル抗体を加え、そして、その溶液を窒素の存在下室温で18時間撹拌する。DMFを減圧下で除去し、粗生成物を調製用HPLCで精製し、リンカーを介して坑腫瘍抗体に結合したPEを得る。
【0106】
C.ナノ粒子の調製
常磁性ナノ粒子は、Flacke, S. , et al., Circulation (2001) 104: 1280-1285に記載されたようにして作成した。簡単にいえば、ナノ粒子エマルジョンは、40%(v/v)ペルフルオロオクチルブロマイド(PFOB)、2%(w/v)界面活性剤共混合物、1.7%(w/v)グリセリン及び平衡を表す水から構成される。
【0107】
対照、即ち非標的化常磁性エマルジョンの界面活性剤は、60モル%レシチン(アヴァンティ・ポーラー・リピズ・インク社、アラバスター、アラバマ州)、8モル%コレステロール(シグマ・ケミカル・コー社、セントルイス、ミズーリ州)、2モル%ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)アヴァンティ・ポーラー・リピズ・インク社、アラバスター、アラバマ州)及び30モル%ガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸-ビソレアート(bisoleate)(Gd−DTPA−BOA、ゲートウェイ・ケミカル・テクノロジーズ社、セントルイス、ミズーリ州)を含んでいた。キレートの調製は、実施例1において記載されている。
【0108】
腫瘍−標的化常磁性ナノ粒子は、60モル%レシチン、0.05モル%の段落Bに記載のコンジュゲート、8モル%コレステロール、30モル%のGd3+含有キレート、及び1.95モル%DPPEを含む界面活性剤共混合物によって上述のように調製した。
【0109】
腫瘍−標的化非常磁性ナノ粒子は、親油性Gd3+キレート(該キレートは増量されたレシチン(70モル%)及びコレステロール(28モル%)を含む界面活性剤共混合物において置換される)を加えたことを除いて、標的化形態のものと同じ方法で調製した。
【0110】
ナノ粒子処方物の各々の成分は、M110Sマイクロフルイディクス乳化機(マイクロフルイディクス社、ニュートン、マサチューセッツ州)により、20,000PSIで4分間、乳化を行った。完成したエマルジョンは、クリンプシールされる小ビンに入れて窒素を封入した。
【0111】
D.腫瘍モデル
オスのニュージーランドホワイトラビット(〜2.0kg)をケタミン及びキシラジン(それぞれ、65及び13mg/kg)による筋肉内注射によって麻酔する。各個体の左後肢を剃毛し、膝窩上に小切開部を形成する前にマルカイン(Marcaine)(登録商標)で局所的に浸潤し滅菌処置する。2×2×2mmのVx−2癌腫瘍塊をドナー動物から新たに取得し、凡そ0.5cmの深さで移植する。切開面を再び接合し、単一の吸収性縫糸で縫合する。最後に、皮膚の切開部をデルマボンド・スキン・グルー(Dermabond skin glue)で接着する。腫瘍移植処置の後、キシラジンの影響をヨヒンビンで覆滅し、ウサギを回復させる。
【0112】
Vx−2移植の12日後、ウサギを1%〜2%イソフルラン(登録商標)で麻酔し、実験のため挿管し、人工呼吸し、MRI装置の空洞部に配置する。静脈及び動脈カテーテルは、個々のウサギの両耳に(それぞれ1つ)セットすることにより、ナノ粒子の全身投与及び後述する動脈血のサンプリングのために使用する。ウサギは、ワシントン大学医学部動物実験委員会で承認された方法・手順に従って、実験中、生理学的にモニターする。
【0113】
移植後12日目に、ニュージーランドラビットのVx−2腫瘍体積は、腫瘍-標的化ナノ粒子が投与されたもの(130±39mm)と、非標的化ナノ粒子が投与されたもの(148±36mm)では異なっていた(P>0.05)。
【0114】
上述のように、Vx−2腫瘍が移植された12匹のニュージーランドラビットは、無作為に3つの処置群に分けられ、各々以下の剤を投与される:
1)腫瘍−標的化常磁性ナノ粒子(腫瘍−標的化、n=4)、
2)非標的化常磁性ナノ粒子(即ち対照群、n=4)、又は
3)腫瘍−標的化非常磁性ナノ粒子、次いで、腫瘍−標的化常磁性ナノ粒子(即ち、競合群、n=4)。
【0115】
処置群1及び2では、ウサギに対し、基準MR画像を得た後、0.5ml/kgの腫瘍−標的化常磁性ナノ粒子又は対照常磁性ナノ粒子を投与する。処置群3では、すべてのウサギに対し、MRイメージングの2時間前に0.5ml/kgの腫瘍−標的化非常磁性ナノ粒子を投与し、次いで0.5ml/kgの腫瘍−標的化常磁性ナノ粒子を投与する。腫瘍及び筋肉領域におけるシグナル増強の初期変化をモニターするために、動的MR画像を、各ウサギに対し2時間に亘り、注射時と30分毎に得る。MR分子イメージングの結果を確認するための組織学的検査のために、腫瘍をすべて摘出し凍結保存する。
【0116】
E.磁気共鳴画像法及び組織学的方法
腫瘍移植後12日目に、動物に対し1.5テスラ・クリニカルスキャナー(NTインテラ・ウィズ・マスター・グラジエンツ、フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)でMRIスキャンを行う。各動物は、それぞれ、腫瘍付近の後肢に対向してセットされる11cm径環状表面コイル(circular surface coil)を有するクアドラーチャ・ヘッド/ネック・バードケージ・コイル(quadrature head/neck birdcage coil)の内部に置く。クアドラーチャー体コイルは、全ての高周波放射のために使用する。バードケージコイルは、単純(scout)イメージング中の検出に使用する。表面コイルは、高分解能イメージング中の検出に使用する。ガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸(Gd−DTPA)ドープ水(doped water)を充填した10mLシリンジは、高分解能視野(FOV)内にセットし、シグナル強度基準として使用する。
【0117】
腫瘍は、まず、T-重み付け(weighted)ターボスピン-エコースキャン(TR:2000ミリ秒、TE:100ミリ秒、FOV:150mm、断層(スライス)厚:3mm、マトリックス:128×256、シグナル平均:2、ターボファクター:3、スキャン時間:3分)によって移植部位で局在化する。腫瘍の、高分解能、T-重み付け、脂肪抑制(fat suppressed)、三次元、グラジエントエコースキャン(TR:40ミリ秒、TE:5.6ミリ秒、FOV:64mm、断層厚:0.5mm、連続断層:30、平面(in-plane)解像度:250マイクロメートル、シグナル平均:2、フリップ角度:65°、スキャン時間:15分)は、ベースラインで収集し、常磁性ナノ粒子の注入直後、並びに30分後、60分後、90分後、及び120分後に繰り返し行う。
【0118】
腫瘍体積は、オフラインイメージプロセッシングワークステーション(イージーヴィジョン v5.1、フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)で計算した。目的領域(ROI)を、T-重み付けベースラインスキャンの各断層において腫瘍の周囲に手動で設定し、三次元対象へと連合させ、体積を算出する。
【0119】
時間経過による画像増強を定量するため、不偏(unbiased)画像分析プログラムを利用した。ナノ粒子の静脈注入前、直後、及び30分後、60分後、90分後、120分後に収集したT-重み付け画像(各腫瘍の中心を通過する3つの連続断層)をMATLAB(ザ・マスワークス・インク社、ネーティック、マサチューセッツ州)で分析する。各時点における画像強度は、参照ガドリニウム基準を用いベースライン画像をもとに標準化する。連続画像は空間的に共記録し(co-registered)、コントラスト増強は、注入後の各時点においてピクセル毎に求める。ベースライン画像内にある後肢筋肉の一部分の周囲に、ROIを手動で描写し、ROI内部のピクセル毎の平均シグナル増強を各時点において計算する。各個体に対するベースライン画像において、腫瘍の周囲に第2のROIを手動で描写し、腫瘍シグナルの標準偏差を計算する。シグナル強度がベースラインの腫瘍シグナル標準偏差の3倍以上に増加した時(即ち、ベースラインの偏差(variation)の99%以上の増強が見られたとき)、ピクセルが増強したとみなす。孤立(Solitary)増強ピクセル、即ち、平面内のその周囲のピクセル全てが増強していないピクセルは、ノイズとして計算から除外する。残りの増強ピクセルクラスターから、直後、30分後、60分後、及び90分後の画像をマッピングして、各時間間隔ごとの平均シグナル増加を求める。統計的な比較は、ANOVA(SAS、SAS研究所、ケアリー、ノースカロライナ州)を利用して、各時点毎に、腫瘍及び筋肉について行う。処置手段(Treatment means)は、LSD法(p<0.05)を用いて分離する。
【0120】
イメージング後、腫瘍病理検証を行い関連する血管分布(vascularity)及び血管形成を評価するための組織学的及び免疫組織化学的検査のために、腫瘍を摘出する。腫瘍は、元の解剖学的体位及びMRI画像面に対する既知の配向で、OCT培地中で凍結(−78℃)する。アセトン中で−20℃、15分間固定し、終夜空気乾燥した(4℃)4ミクロン凍結薄片(ライカ・ミクロシステムズ・インク社、バノックバーン、イリノイ州)を、ヘマトキシリン−エオシン、マウス抗ヒト/ウサギ内皮抗体(QBEND/40、1:10希釈、リサーチ・ダイアグノスティクス・インク社、フランダース、ニュージャージー州)、又はマウス抗ヒトαβ−インテグリン抗体(LM−609、1:200希釈、ケミコン・インターナショナル社、テメクラ(Temecula)、カリフォルニア州)で染色する。免疫組織化学検査は、ベクタステイン(Vectastain)(登録商標)エリートABCキット(ベクター・ラボラトリーズ社、バーリンゲーム、カリフォルニア94010)を使用し、ベクター(登録商標)VIPキットで顕色(developed)し、ベクター(登録商標)メチルグリーン-核-対比染色剤で対比染色することによって行う。スライドは、ニコン製デジタルカメラ(モデルDXM1200)を備えニコンACT−1ソフトウェアで取り込みを行うニコン・エクリプス・E800検査顕微鏡(ニコンUSA社、メルヴィル、ニューヨーク州)により、観察する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1A及び1Bは、各々、Gd‐MeO‐DOTA‐NCS及びGd‐MeO‐DOTA‐PEについての、HPLCの結果を示している。
【図2】図2は、Gd‐MeO‐DOTA‐PEの質量スペクトルを示している。
【図3】図3は、Gd‐MeO‐DOTA‐PE調製過程のフローチャートを示している。
【図4】図4は、種々の粒子性キレート調製品のイオンを基準としたρ(緩和度)の値を示す。
【図5】図5は、これらの粒子性キレートの粒子を基準としたρ(緩和度)の値を示す。
【図6】図6A及び6Bは、切断可能なトリグリシンリンカーを有するものと有しないものの粒子性キレートを投与された動物の肝臓及び脾臓に、各々、保持されたガドリニウムのパーセントを示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物:

ここで、Chはキレート成分を表し;
mは0―3;
は非妨害性置換基であり;
lは0―2;
ZはS又はO;
はH又はアルキル(1―4C);
nは0又は1;及び
各Rは、独立して、任意的に置換された飽和又は不飽和の、少なくとも10のCを含むヒドロカルビル基である。
【請求項2】
nが1であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
スペーサーがCHCH、且つ、RがHであることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
ZがSであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
lが0、且つ、mが1又は0であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
各RCOOが天然に生じた脂肪酸の残基又は該残基の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
がCHOであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
スペーサーがペプチド又はポリアルキレングリコールを含むことを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
Chと結合する、常磁性金属イオン又は放射性核種の金属を、更に、含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
親油性ナノ粒子又はマイクロ粒子と結合した請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
親油性ナノ粒子又はマイクロ粒子と結合した請求項10に記載の化合物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項13】
前記粒子が、請求項1に記載の化合物を少なくとも2000コピー含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記粒子が、請求項10に記載の化合物を少なくとも2000コピー含むことを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、更にターゲティング剤を含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、更にターゲティング剤を含むことを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記ターゲティング剤が、受容体リガンド又は抗体又はそれらのフラグメントであることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記ターゲティング剤が、受容体リガンド又は抗体又はそれらのフラグメントであることを特徴とする請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、更に生理活性剤を含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、更に生理活性剤を含むことを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、リポソーム、油滴、ペルフルオロカーボンナノ粒子、脂質−皮膜蛋白粒子、又は、脂質‐皮膜多糖類であることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項22】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、リポソーム、油滴、ペルフルオロカーボンナノ粒子、脂質−皮膜蛋白粒子、又は、脂質‐皮膜多糖類であることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項23】
請求項12に記載の化合物と結合した組織をイメージングすることを含む、磁気共鳴画像又は放射性核種によって生成される画像を獲得する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物:

ここで、Chはキレート成分を表し;
mは0―3;
は非妨害性置換基であり;
lは0―2;
ZはS又はO;
はH又はアルキル(1―4C);
nは0又は1;及び
各Rは、独立して、任意的に置換された飽和又は不飽和の、少なくとも10のCを含むヒドロカルビル基である。
【請求項2】
nが1であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
スペーサーがCHCHであるか又はペプチド若しくはポリエチレングリコールを含み、且つ、RがHであることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
ZがSであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
lが0、且つ、mが1又は0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
各RCOOが天然に生じた脂肪酸の残基又は該残基の混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
がCHOであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Chと結合する、常磁性金属イオン又は放射性核種の金属を、更に、含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
親油性ナノ粒子又はマイクロ粒子と結合した請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項10】
前記粒子が、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物を少なくとも2000コピー含むことを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、更にターゲティング剤を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ターゲティング剤が、受容体リガンド又は抗体又はそれらのフラグメントであることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、更に生理活性剤を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記ナノ粒子又はマイクロ粒子が、リポソーム、油滴、フルオロカーボンナノ粒子、脂質−皮膜蛋白粒子、又は、脂質‐皮膜多糖類であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
請求項11又は12に記載の化合物と結合した組織をイメージングすることを含む、磁気共鳴画像又は放射性核種によって生成される画像を獲得する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−516993(P2006−516993A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503076(P2006−503076)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/002257
【国際公開番号】WO2004/067483
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(503271970)バーンズ−ジューイッシュ ホスピタル (4)
【Fターム(参考)】