説明

親油性界面活性剤および油を含むマイクロカプセル

本発明は、カプセル壁がラジカル重合モノマーから作られ、カプセルコアが少なくとも1種の油および少なくとも1種の親油性界面活性剤を含むマイクロカプセルを含む水性分散液に関する。分散液の連続相は少なくとも1種の農薬を含む。本発明はまた、i) カプセル壁がラジカル重合モノマーから作られ、カプセルコアが少なくとも1種の油および少なくとも1種の親油性界面活性剤を含むマイクロカプセルを含む水性分散液(マイクロカプセル粗分散液)の提供、およびii)少なくとも1種の農薬の添加の段階を含む水性分散液の製造方法に関する。本発明はまた、水性分散液を製造するためのマイクロカプセル粗分散液の使用、ならびに分離した構成要素としてマイクロカプセル粗分散液および少なくとも1種の農薬を含む、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはダニ駆除剤(acaricide)の植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除に組み合わせて使用するための製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油を含む、水性分散液である。さらなる主題は、水性分散液の調製方法である。さらなる主題は、本発明の水性分散液を調製するための、カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油および少なくとも1種の親油性界面活性剤を含むマイクロカプセルを含む水性分散液(マイクロカプセル粗分散液)の使用である。さらなる主題は、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除において組み合わせて使用するための、分離した構成要素としてマイクロカプセル粗分散液および少なくとも1種の農薬を含む製品である。最後に、もう1つの主題は、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除における使用である。本発明のさらなる主題は、特許請求の範囲および実施例から推測することができる。
【0002】
好ましい特徴と他の好ましい特徴の組合せは、本発明の範囲に含まれる。
【背景技術】
【0003】
マイクロカプセルは、さまざまな形態のものが、さまざまな産業上の応用目的で文献に記載されてきた。ゼラチン、ポリウレタン樹脂、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂およびポリアクリレートをベースとするマイクロカプセルが知られている。特に、ポリアクリレートをベースとするマイクロカプセルは、とりわけ安定な形態として当業者に公知である。例えば、ポリアクリレートを含むマイクロカプセルはコア物質を保護するために使用され、ここで、コア物質は、例えば複写紙用の着色剤のように、カプセル外皮の選択的な機械的破壊によってのみ放出される。別の商品の例は、コンクリートまたは石膏プラスターボード用のマイクロカプセル化した潜熱蓄熱材などの、数十年に渡ってカプセル化された状態に保たれるようにコア物質を保護するためのポリアクリレートを含むマイクロカプセルである。
【0004】
EP 0 457 154は、アクリル酸モノマーの重合により得ることができるマイクロカプセルに関する。好適な成分としては、複写紙用の発色剤に加えて、香料、接着剤、農薬、食品、液晶および触媒、ならびに洗剤および油が挙げられる。
【0005】
WO 03/099005はマイクロカプセル製剤に関し、この製剤は、固体の農薬活性化合物の水性懸濁液に加えて、ポリ尿素および/またはポリウレタンにより作られた外皮およびカプセル充填物として少なくとも1種の浸透促進剤を含むマイクロカプセルを含む。好適な浸透促進剤は、とりわけ、油およびアルカノールアルコキシレートである。
【0006】
WO 04/017734は、マイクロカプセル化された農薬の水性分散液に関する。カプセルは、農薬、界面活性作用をほとんどまたは全く示さない水不溶性補助剤および水不溶性溶媒を含む。カプセル内容物は、乾燥すると製剤から放出される。
【0007】
DE 102007055813は、アクリル酸モノマーの重合により得ることができるマイクロカプセルに関する。親油性物質がカプセルコアとして好適である。
【0008】
US 2003/0119675 A1は、マイクロカプセル水性懸濁液に関し、このマイクロカプセルの外皮はイソシアネートとジアミンまたはポリアミンとの反応生成物であり、また、このマイクロカプセルには農薬活性化合物、炭化水素および界面活性剤が充填されている。
【0009】
DE 100 58 878 A1は、水性マイクロカプセル懸濁液に関し、このマイクロカプセルの外皮はイソシアネートとジアミンまたはポリアミンとの反応生成物であり、また、このマイクロカプセルには農薬活性化合物、炭化水素および界面活性剤が充填されている。
【0010】
ポリウレタンのモノマーとして有毒なイソシアネートが使用され、このモノマーを高レベルの安全対策を講じて取り扱わなければならないため、ポリウレタンを含むマイクロカプセルはラジカル重合モノマーを含むマイクロカプセルと比較して不利である。さらに、イソシアネートは、アルコールおよびアミンなどの酸性Hを含む基に関して反応性が高いので、重付加の間に、十分に選択された添加剤、界面活性剤または油のみしか存在させることができない。さらに、ある種の界面活性剤または油を分散させるためには比較的高い温度を使用しなければならないので、イソシアネートの反応性はますます増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP 0 457 154
【特許文献2】WO 03/099005
【特許文献3】WO 04/017734
【特許文献4】DE 102007055813
【特許文献5】US 2003/0119675 A1
【特許文献6】DE 100 58 878 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、補助剤により低下する可能性のある懸濁液濃縮物の安定性を増大するための好条件を見出すことであった。さらなる目的は、油または親油性界面活性剤などの浸透促進化合物を含み、再放出可能な、農薬に使用するためのマイクロカプセル水性分散液を提供することであった。
【0013】
さらに、本発明の目的は、油または親油性界面活性剤などの浸透促進化合物を含む植物保護剤の懸濁液濃縮物において、活性化合物結晶の結晶化を減少させた、前記懸濁液濃縮物を提供することであった。さらなる目的は、補助剤を添加しない従来の懸濁液濃縮物と比較して増大した生物活性を示す植物保護剤の懸濁液濃縮物を提供することであった。
【0014】
さらなる目的は、イソシアネートを使用することなく調製することができる、農業に使用するためのマイクロカプセル水性分散液を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的は、カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油を含むマイクロカプセルを含む水性分散液であって、カプセルコアが少なくとも1種の親油性界面活性剤を含み、分散液の連続相が少なくとも1種の農薬を含む前記水性分散液により達成された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語「水性分散液」は、本特許出願において、いくつかの相の系であって、その連続相が水性であり、少なくとも1つの別の相が微細に分離されているものを意味すると理解される。本発明によれば、水性分散液の連続相は少なくとも1種の農薬を含む。ここで、農薬は、25℃で固体、液体または固体および液体の形態で連続相中に存在し得る。好ましくは、分散液の連続相は、25℃で、少なくとも1種の農薬を懸濁した(すなわち固体の)粒子の形態で含む。
【0017】
本発明の水性分散液のマイクロカプセルは、カプセル壁およびカプセルコアを含む。また、本発明によれば、マイクロカプセルは少なくとも1つのカプセル壁および少なくとも1つのカプセルコアを含むものと理解されるべきである。したがって、マイクロカプセルは、例えば、1つのカプセルコアおよび2つのカプセル壁を有する可能性がある。同様に、マイクロカプセルは、例えばいくつかのカプセルコア(例えば、互いに隣接する2つのカプセルコアまたは一方が他方の内部に存在する2つのカプセルコア)、および1つのカプセル壁、例えば互いに隣接する2つのカプセル壁または一方が他方の内部に存在する2つのカプセル壁を有する可能性がある。好ましくは、マイクロカプセルは1つのカプセル壁および1つのカプセルコアを含む。
【0018】
本発明の方法によれば、一般に、同一のまたは類似の構造を有するマイクロカプセルが得られる。本発明の方法はマイクロカプセルの集合体を製造するので、少数の個々のマイクロカプセルはその構造が異なっている可能性があり、例えば、カプセルコアを含まない可能性がある。好ましくは、基本的にすべての、特に、すべてのマイクロカプセルがカプセル壁およびカプセルコアを含む。
【0019】
カプセルの平均粒径(光散乱によるZ平均)は、0.5〜100μm、好ましくは0.8〜50μm、特に1〜20μmである。
【0020】
カプセルコアとカプセル壁の重量比は、一般に50:50〜99:1である。70:30〜98:2、特に80:20〜95:5のコア/壁比が好ましい。カプセルコアとカプセル壁の重量比は、油と親油性界面活性剤の合計とモノマーの合計の比から計算する。
【0021】
カプセル壁はラジカル重合モノマーから形成される。一般に、用語「ラジカル重合モノマー」は、モノマーのラジカル連鎖反応により重合してポリマーを形成したモノマーを意味することが当業者により理解される。通常、当業者は、ラジカル重合モノマーと、例えば重縮合により重合してポリエステルを与えるモノマーまたは重付加により重合してポリウレタンを与えるモノマーとを区別する。好ましいラジカル重合モノマーは、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、マレイン酸およびそのエステル、スチレン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルである。アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、1,4-ブタジエンジオールジアクリレート、メタクリル酸無水物、ペンタエリスリチルテトラアクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリレートが特に好ましい。
【0022】
好ましい実施形態において、カプセル壁は、
30〜100重量%の、アクリル酸のC1〜C24-アルキルエステル、メタクリル酸のC1〜C24-アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸無水物およびマレイン酸である1種以上のモノマー(モノマーI)、
0〜20重量%の、水に不溶性または難溶性の1種以上の二官能基および/または多官能基モノマー(モノマーII)、および
0〜50重量%の1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
から形成される(各場合において、モノマーの総重量を基準とする)。
【0023】
カプセル壁のポリマーは、一般に、モノマーの総重量を基準として、少なくとも30重量%、好ましい形態において少なくとも40重量%、特に好ましい形態において少なくとも50重量%、特に少なくとも60重量%、非常に好ましくは少なくとも65重量%、さらには100重量%までの1種以上のモノマーIを、共重合した形で含む。
【0024】
さらに、カプセル壁のポリマーは、一般に、20重量%まで、好ましくは15重量%以下、特に好ましい形態において10重量%以下の少なくとも1種のモノマーIIを、共重合した形で含み得る。好ましい実施形態において、カプセル壁のポリマーは、共重合したモノマーIIを含み得ない。別の好ましい実施形態において、カプセル壁のポリマーは、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%のモノマーIIを、共重合した形で含み得る。
【0025】
さらに、カプセル壁のポリマーは、50重量%まで、好ましくは40重量%まで、特に20重量%までの少なくとも1種の他のモノマーIIIを、共重合した形で含み得る。好ましい実施形態において、カプセル壁のポリマーは、共重合したモノマーIIIを含み得ない。別の好ましい実施形態において、カプセル壁のポリマーは、1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%のモノマーIIIを、共重合した形で含み得る。
【0026】
好ましい実施形態において、カプセル壁は群I、IIおよびIIIのモノマーから形成される。別の好ましい実施形態において、カプセル壁は群IおよびIIのモノマーから形成される。別の好ましい実施形態において、カプセル壁は、群IおよびIIIのモノマーから形成される。別の好ましい実施形態において、カプセル壁は群Iのモノマーから形成される。
【0027】
アクリル酸および/またはメタクリル酸のC1〜C24-アルキルエステルならびにメタクリル酸無水物が好適なモノマーIである。さらに、不飽和C3-およびC4-カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸が好適である。例として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチルおよびアクリル酸tert-ブチルならびにメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec-ブチルおよびメタクリル酸tert-ブチルが挙げられる。アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸およびメタクリル酸無水物が好ましい。
【0028】
好適なモノマーIIは、水に不溶性または難溶性の二官能基または多官能基モノマーである。しかしながら、好ましくは、モノマーIIは、親油性物質に対して十分乃至は限られた溶解度を有する。用語「難溶性」は20℃の水に対する60 g/l未満の溶解度を意味すると理解される。用語「二官能基または多官能基モノマー」は、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有する化合物を意味すると理解される。特に好適であるのは、重合中にカプセル壁の架橋を作るジビニルおよびポリビニルモノマーである。
【0029】
好ましいジビニルモノマーは、ジオールとアクリル酸またはメタクリル酸とのジエステルならびにこれらのジオールのジアリルおよびジビニルエーテルである。例として、エタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、メタリルメタクリルアミド、アリルアクリレートおよびアリルメタクリレートが挙げられる。特に好ましいのは、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールジアクリレートおよび対応するメタクリレートである。
【0030】
好適なポリビニルモノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンならびにジビニルシクロヘキサンおよびトリビニルシクロヘキサンである。好ましいポリビニルモノマーは、ポリオールとアクリル酸および/またはメタクリル酸のポリエステルならびにこれらのポリオールのポリアリルおよびポリビニルエーテルである。トリメチロールプロパントリアクリレートおよびメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアリルエーテル、ペンタエリスリチルテトラアリルエーテル、ペンタエリスリチルトリアクリレートおよびペンタエリスリチルテトラアクリレートまたは対応するメタクリレートならびにそれらの工業用混合物(technical mixtures)が好ましい。
【0031】
他のモノマーIIIとして好適なものは、モノマーI以外のモノエチレン性不飽和モノマーである。酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびビニルピリジン、スチレン、塩化ビニルまたは二塩化ビニリデンなどのモノマーIIIaが好ましい。別の好ましい実施形態において、水溶性モノマーIIIb、例えば、アクリロニトリル、メタクリルアミド、イタコン酸、マレイン酸無水物、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよびアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸が好ましい。それに加えて、特に、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびジエチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
【0032】
カプセルコアは、少なくとも1種の親油性界面活性剤および少なくとも1種の油を含む。
【0033】
用語「界面活性剤」は、分子の少なくとも1つの疎水性部分および分子の少なくとも1つの親水性部分を有する両親媒性化合物を意味すると理解される。界面活性剤は2つの相の間の表面張力を減少させる特性を有する。
【0034】
本発明の親油性界面活性剤として好適なものは、カプセルコア中に存在する油または油混合物に、20℃で、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%まで溶解する界面活性剤である。好ましい実施形態において、好適な界面活性剤は、カプセルコア中に存在する油または油混合物に、60℃で、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%まで溶解するものである。界面活性剤の油に対する溶解度は、カプセルコア中の重量比に相当する親油性界面活性剤と油の重量比で測定する。
【0035】
好ましい親油性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、アルコールアルコキシレート、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、エトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸グルカミド、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪アルコール、脂肪アミンアルコキシレート、脂肪酸アミドアルコキシレート、ポリグリセロール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドまたはエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーである。
【0036】
好ましい非イオン性界面活性剤は、アルカノールアルコキシレートおよびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマー、特にアルカノールアルコキシレートである。さらに、前記の親油性界面活性剤の混合物が好ましい。
【0037】
好ましいアルカノールアルコキシレートは、式(I)
Ra-O-(AO)m-R1 式(I)
[式中、
Raは、4〜32個、好ましくは10〜22個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキレンであり、
AOは、エチレンオキシドラジカル、プロピレンオキシドラジカル、ブチレンオキシドラジカル、ペンチレンオキシドラジカル、スチレンオキシドラジカルまたはランダム配列またはブロック配列の前記のラジカルの混合物であり、
mは、1〜30の数であり、かつ
R1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルである]
で表されるものである。
【0038】
特に好ましいアルカノールアルコキシレートは、式(II)
Rb-O-(EO)p-(PO)q-R1 式(II)
[式中、
Rbは、4〜32個、好ましくは10〜22個、特に好ましくは6〜18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキレンであり、
EOは、-CH2CH2-O-であり、
POは、-CH2-CH(CH3)-O-または-(CH2)3-O-であり、
pは、0〜20、好ましくは3〜10、特に4〜8の数であり、
qは、1〜25、好ましくは4〜15の数であり、かつ
R1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、EOおよびPO単位はランダム配列で、またはブロックとして存在し得る]
で表されるものである。
【0039】
式(II)のアルカノールアルコキシレートに関する別の実施形態において、
Rbは、4〜32個、好ましくは6〜22個、特に好ましくは10〜18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキレンであり、
qは、1〜25、好ましくは3〜15の数であり、
他のラジカルは上で式(II)に関して記載した通りである。
【0040】
別の特に好ましい実施形態は、式(III)
Rc-O-(EO)p-(BO)q-R1 式(III)
[式中、
Rcは、4〜32個、好ましくは7〜18個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキレンであり、
EOは、-CH2CH2-O-であり、
BOは、-C4H8O-であり、これは直鎖または分枝鎖であってよく、
pは、1〜25、好ましくは3〜12、特に4〜7の数であり、
qは、1〜25、好ましくは1〜15、特に1〜7の数であり、かつ
R1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
ここで、EOおよびBO単位はランダム配列で、またはブロックとして存在し得る]
のアルカノールアルコキシレートである。
【0041】
別の特に好ましい実施形態は、式(IV)
Rd-O-(EO)p-R1 式(IV)
[式中、
Rdは、4〜32個、好ましくは10〜15個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルキレンであり、
EOは、-CH2CH2-O-であり、
pは、1〜10、好ましくは1〜3の数であり、
R1は、水素または1〜4個の炭素原子を有するアルキルである]
のアルカノールアルコキシレートである。
【0042】
油として好適な化合物は、例えば、脂肪族化合物、芳香族化合物、蝋、植物油、植物油のエステル、シリコーン油、脂肪族C6〜C18アルコール、酸部分に8〜40個の炭素原子を有し、アルコール部分に1〜20個の炭素原子を有する脂肪酸エステル、好ましくはエチルヘキシルラウレート、または式(V)
R2-O(O)R3(O)O-R4 式(V)
[式中、
R2およびR4は、互いに独立して、1〜32個、好ましくは2〜26個、特に4〜22個の炭素原子を有するアルキルまたはアルキレンであり、
O(O)R3(O)Oはジカルボキシルラジカルであり、ここで、R3 は、少なくとも3個、好ましくは4〜8個の炭素原子を有する]
のジアルキルエステルである。好ましいジアルキルエステルは、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジブチルおよびフタル酸ジブチルである。前記の油の混合物も好適である。
【0043】
植物油および植物油のエステルの例は、ナタネ油、ダイズ油、パーム油、ヒマワリ油、コーン油、亜麻仁油、コルザ油、オリーブ油、綿実油、ナタネ油メチルエステル、ナタネ油エチルエステルおよび植物油、植物油のエステルまたはその両方の混合物である。
【0044】
芳香族化合物の例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ビフェニル、o-またはm-テルフェニル、1個以上のC1〜C20-アルキル基により置換された芳香族炭化水素、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、メチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ヘキシルナフタレンまたはデシルナフタレンである。30〜250℃の沸点範囲を有する芳香族化合物の工業用混合物ならびに前記の芳香族化合物の混合物も好適である。好ましい芳香族化合物は、30〜250℃の沸点範囲を有する芳香族化合物の工業用混合物である。
【0045】
脂肪族化合物の例は、分枝鎖であるか、好ましくは直鎖である、飽和または不飽和C10〜C40-炭化水素、例えば、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン、n-エイコサン、n-ヘンエイコサン、n-ドコサン、n-トリコサン、n-テトラコサン、n-ペンタコサン、n-ヘキサコサン、n-ヘプタコサン、n-オクタコサン、環状炭化水素、例えば、シクロヘキサン、シクロオクタンもしくはシクロデカン、飽和炭化水素を含む鉱油、または高圧水素化鉱油(「白色鉱油」)である。前記の脂肪族化合物の混合物も好適である。鉱油は脂肪族化合物として好ましい。
【0046】
蝋の例は、天然および合成の蝋、例えば、モンタン酸ワックス、モンタン酸エステルワックス、カルナウバロウ、ポリエチレンワックス、酸化ワックス、ポリビニルエーテルワックス、エチレン/酢酸ビニルワックスおよび前記の蝋の混合物である。低融点の蝋、特に30〜100℃、とりわけ35〜70℃で液体であるものが好ましい。
【0047】
脂肪族C6〜C18アルコールの例は、第一級、第二級または第三級ヒドロキシ基を有する分枝鎖または直鎖C6〜C18アルコール、好ましくはC8〜C14アルコールである。脂肪族C6〜C18アルコールの水に対する溶解度は、好ましくは20℃で10 g/l未満である。脂肪族C6〜C18アルコールの好適な例は、n-デカノール、n-ウンデカノールおよびn-ドデカノールである。ドデカノールが好ましい。
【0048】
好ましい油は、芳香族化合物、脂肪族化合物、植物油および植物油のエステルであり、それぞれ単独であっても混合物であってもよい。特に好ましい油は植物油および脂肪族化合物であり、それぞれ単独であっても混合物であってもよい。
【0049】
一般に、油は、その融点および周囲温度に依存して液体および/または固体の形態でカプセルコア中に存在する。20℃の周囲温度で、油は好ましくは液体の形態でカプセルコア中に存在する。
【0050】
浸透促進作用を示す親油性界面活性剤および油の組合せが好ましい。
【0051】
これに関して、浸透促進作用を有する組合せとして好適なものは、農薬活性化合物の植物への浸透を改善するために通常使用されるすべての物質である。ここで、浸透促進剤は、それらが水性噴霧混合物からおよび/または噴霧コーティングから植物のクチクラに浸透し、これにより、活性化合物のクチクラへの移動性の増大を可能にするものであると定義される。文献(Baur et al., 1997, Pesticide Science 51, 131-152)に記載される片側脱離(unilateral desorption)の方法をこの特性を測定するために使用することができる。別の好適な方法は、葉の上に試験される混合物を1滴ずつ置いて、数日後に葉の上の残留物を測定することからなる。
【0052】
浸透促進作用を有する親油性界面活性剤と油の好ましい組合せは、例えば、各場合において少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と各場合において少なくとも1種の芳香族化合物、および/または脂肪族化合物、および/または植物油、および/または植物油のエステル、および/またはシリコーン油および/または蝋との組合せである。別の実施形態において、各場合において少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、各場合において少なくとも1種の芳香族化合物および/または脂肪族化合物、および/または植物油、および/または植物油のエステル、および/またはシリコーン油、および/または蝋および/または脂肪族C6〜C18アルコールとの組合せが好ましい。
【0053】
アルカノールアルコキシレートと芳香族化合物、アルカノールアルコキシレートと脂肪族化合物、アルカノールアルコキシレートと植物油、アルカノールアルコキシレートと植物油のエステル、およびアルカノールアルコキシレートと蝋の組合せが特に好ましい。好ましい実施形態において、アルカノールアルコキシレートと脂肪族C6〜C18アルコールとの組合せが特に好ましい。
【0054】
少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと少なくとも1種の芳香族化合物、少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと少なくとも1種の脂肪族化合物、少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと少なくとも1種の植物油、および少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと少なくとも1種の植物油のエステルの組合せが格別好ましい。
【0055】
別の実施形態において、少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールとの組合せが格別好ましい。
【0056】
特に好ましい実施形態において、親油性界面活性剤として少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートを使用し、油として少なくとも1種の植物油または少なくとも1種の鉱油を使用する。別の特に好ましい実施形態において、親油性界面活性剤として少なくとも1種の式IIのアルカノールアルコキシレートを使用し、油として少なくとも1種の植物油または少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールを使用する。
【0057】
カプセルコアは、一般に、各場合においてカプセルコアを基準として、10重量%よりも多い、好ましくは15重量%よりも多い、特に20重量%よりも多い、とりわけ25重量%よりも多い少なくとも1種の親油性界面活性剤、および90重量%未満、好ましくは85重量%未満、特に80重量%未満、特に75重量%未満の少なくとも1種の油を含む。
【0058】
別の実施形態において、カプセルコアは、各場合においてカプセルコアを基準として、10重量%よりも多く90重量%までの、好ましくは15〜85重量%の、特に20〜80重量%の、特に25〜75重量%の少なくとも1種の親油性界面活性剤および10重量%よりも多く90重量%までの、好ましくは15〜85重量%の、特に20〜80重量%の、とりわけ25〜75重量%の少なくとも1種の油を含む。
【0059】
浸透促進作用を有する量の親油性界面活性剤と油の好ましい組合せは、例えば、各場合においてカプセルコアを基準として、10重量%よりも多い少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と90重量%未満の少なくとも1種の芳香族化合物、10重量%よりも多い少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と90重量%未満の少なくとも1種の脂肪族化合物、10重量%よりも多い少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と90重量%未満の少なくとも1種の植物油、10重量%よりも多い少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と90重量%未満の少なくとも1種の植物油のエステル、および10重量%よりも多い少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と90重量%未満の少なくとも1種の蝋である。別の実施形態において、浸透促進作用を有する量の親油性界面活性剤と油の好ましい組合せは、例えば、10重量%よりも多い少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と90重量%未満の少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールである。
【0060】
特に好ましいのは、10重量%よりも多い少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の芳香族化合物、10重量%よりも多い少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の脂肪族化合物、10重量%よりも多い少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の植物油、10重量%よりも多い少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の植物油のエステル、および10重量%よりも多い少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の蝋の量の組合せである。別の特に好ましい実施形態は、10重量%よりも多い少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールの量の組合せである。
【0061】
格別好ましいのは、10重量%よりも多い少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の芳香族化合物、10重量%よりも多い少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の脂肪族化合物、10重量%よりも多い少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の植物油、および10重量%よりも多い少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の植物油のエステルの量の組合せである。別の格別好ましい実施形態は、10重量%よりも多い少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと90重量%未満の少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールの量の組合せである。
【0062】
親油性界面活性剤と油の好ましい組合せは、さらに、各場合においてカプセルコアを基準として、30〜90重量%の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と70〜10重量%の少なくとも1種の芳香族化合物、30〜90重量%の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と70〜10重量%の少なくとも1種の脂肪族化合物、30〜90重量%の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と70〜10重量%の少なくとも1種の植物油、30〜90重量%の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と70〜10重量%の少なくとも1種の植物油のエステル、および30〜90重量%の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と70〜10重量%の少なくとも1種の蝋である。別の好ましい実施形態は、30〜90重量%の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と70〜10重量%の少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールの親油性界面活性剤と油の組合せである。
【0063】
特に好ましいのは、30〜90重量%の少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の芳香族化合物、30〜90重量%の少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の脂肪族化合物、30〜90重量%の少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の植物油、30〜90重量%の少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の植物油のエステル、および30〜90重量%の少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の低融点蝋の量の組合せである。別の特に好ましい実施形態は、30〜90重量%の少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールの量の組合せである。
【0064】
格別好ましいのは、30〜90重量%の少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の芳香族化合物、30〜90重量%の少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の脂肪族化合物、30〜90重量%の少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の植物油、30〜90重量%の少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の植物油のエステルの量の組合せである。別の格別好ましい実施形態は、30〜90重量%の少なくとも1種の式(II)のアルカノールアルコキシレートと70〜10重量%の少なくとも1種の脂肪族C6〜C18アルコールの量の組合せである。
【0065】
本発明の水性分散液は、
(i) カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油および少なくとも1種の親油性界面活性剤を含むマイクロカプセルを含む水性分散液(マイクロカプセル粗分散液)を提供し、
(ii) 少なくとも1種の農薬と混合する
ことにより調製される。
【0066】
好ましくは、マイクロカプセル粗分散液は、ラジカル重合性モノマー、親油性界面活性剤および油を含む水性エマルションを加熱することにより調製される。使用する油および親油性界面活性剤に依存して、水性エマルションは室温で既に形成されているか、または加熱して初めて形成される。好ましい実施形態において、水性エマルションはラジカル重合性モノマー、ラジカル開始剤、保護コロイド、親油性界面活性剤および油を含む。
【0067】
一般に、まず、ラジカル重合性モノマー、親油性界面活性剤および油を含む水性エマルションを提供し、次いで、水性エマルションを加熱する。好ましい実施形態において、保護コロイドを含むエマルションの水相、ならびに親油性界面活性剤、油および少なくとも1種のモノマーを含むエマルションの油相を別々に調製した後、二つの相を乳化する。好ましくは、安定な水性エマルションを調製するための乳化条件は、それ自体は公知の方法により、油滴が所望のマイクロカプセルの大きさを有するように選択される。一般に、マイクロカプセルが小さい程、せん断力および撹拌速度により反応に導入されるエネルギーが大きくなる。
【0068】
モノマーの重合は加熱により開始される。適切な場合には、重合はさらに温度を上げることにより制御することができ、製造されるポリマーはカプセルコアを包み込むカプセル壁を形成する。この一般的原理は、例えば、WO 03/0166050のp. 7, l. 17〜p. 8, l. 8に記載されており、その内容を明確に参照する。一般に、重合中には、乳化中よりも小さいエネルギーを導入する。好ましくは、このために、撹拌速度を減少させ、および/または別のタイプの撹拌機を使用する。
【0069】
一般に、重合は20〜150℃、好ましくは40〜120℃、特に60〜95℃の温度で実施する。好ましくは、加熱を段階的に実施する。当然ながら、分散温度は、また、好ましくは重合温度も、油と親油性界面活性剤の混合物の融点よりも高い。
【0070】
所望の油および親油性界面活性剤に依存して、一般にエマルションはコア物質が液体または油状である温度で形成することができる。したがって、ラジカル開始剤はこの温度よりも高い分解温度を有するものを選択しなければならない。したがって、重合も同様にこの温度よりも2℃〜50℃高い温度で実施すべきなので、適切な場合には、ラジカル開始剤は、油と親油性界面活性剤の混合物の融点よりも高い分解温度を有するものが選択される。
【0071】
約60℃以下の融点を有する油のための通常の方法は、60℃で開始し、反応の過程で85℃まで昇温する反応温度である。有利なラジカル開始剤は、45〜65℃の範囲で10時間の半減期を有するものであり、例えば、t-ブチルペルピバレートまたはジラウロイルペルオキシドである。さらなるラジカル開始剤については下に記載する。
【0072】
60℃よりも高い融点を有する油のための別の方法によれば、温度プログラムは、それに応じて比較的高い反応温度で開始するように選択される。約85℃の開始温度に対しては、70〜90℃の範囲で10時間の半減期を有するラジカル開始剤、例えば、t-ブチルペル-2-エチルヘキサノエートが好ましい。さらなるラジカル開始剤については下に記載する。
【0073】
有利には、重合は標準圧力で実施する。しかしながら、それは減圧または少し加圧して実施することも可能であり、例えば、100℃よりも高い重合温度では、およそ0.5〜10 barの範囲の圧力で実施することができる。
【0074】
重合の反応時間は、通常1〜10時間、一般に2〜5時間である。
【0075】
保護コロイドとしてポリビニルアルコールおよび/または部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルを使用する方法により、分散および重合が高温で直接起こる有利な方法が可能になる。
【0076】
90〜99重量%の変換を伴う実際の重合反応に続いて、一般に、水性分散液から、大部分の臭気担体(odor carrier)、例えば、残ったモノマーおよび他の揮発性有機成分を取り除くことが有利である。それ自体は公知の方法を用いて、これは、蒸留による除去により(特に水蒸気蒸留により)、または不活性ガスを用いて揮散させることにより物理的に達成することができる。さらに、これは、有利には、例えばtert-ブチルヒドロペルオキシドなどの少なくとも1種の水溶性過酸化物とアスコルビン酸との組合せを用いるレドックス開始重合により、化学的に実施することができる。
【0077】
一般に、マイクロカプセル粗分散液は、少なくとも1種の有機または無機保護コロイドの存在下で調製される。有機および無機保護コロイドはどちらも、イオン性または中性であり得る。ここで、保護コロイドは、単独で使用することも、同じまたは異なる電荷を有する数種の保護コロイドの混合物として使用することも可能である。
【0078】
好ましい有機保護コロイドは水溶性ポリマーである。特に好ましいのは、水の表面張力を73 mN/mの最大値から45〜70 mN/mに減少させることにより、閉じたカプセル壁の形成を促進し、好ましい粒径を有するマイクロカプセルを形成する有機保護コロイドである。
【0079】
中性有機保護コロイドは、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンコポリマー、ゼラチン、アラビアガム、キサンタンガム、カゼイン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールおよび部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ならびにメチルヒドロキシプロピルセルロースである。
【0080】
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを、適切な場合にはコモノマーの存在下で重合し、ポリ酢酸ビニルを加水分解してアセチル基を開裂してヒドロキシ基を形成することにより得ることができる。ポリマーの加水分解の程度は、例えば、1〜100% であってよく、好ましくは50〜100%、特に65〜95%の範囲である。用語「部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル」は、本特許出願の文脈において、50%未満の加水分解の程度を意味するものと理解され、用語「ポリビニルアルコール」は、少なくとも50〜100%の加水分解の程度を意味すると理解される。
【0081】
その4重量%の水溶液の粘度が、DIN 53015により測定して、20℃で3〜56 mPa・sの範囲の値、好ましくは14〜45 mPa・sの値を示すポリビニルアルコールまたは部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルが好ましい。少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも75%の加水分解の程度を有するポリビニルアルコールが好ましい。
【0082】
アニオン性有機保護コロイドは、例えば、アルギン酸ナトリウム、ポリメタクリル酸およびそのコポリマー、ならびにスルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、N-(スルホエチル)マレイミド、2-アクリルアミド-2-アルキルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびビニルスルホン酸のコポリマーである。好ましいアニオン性有機保護コロイドは、ナフタレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、ならびに、特にポリアクリル酸およびフェノールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物である。
【0083】
無機保護コロイドとして、非常に微細な固体粒子により安定化を可能にし、また、水に不溶性であるが分散性であるか、または水に不溶性かつ非分散性であるが親油性物質により濡らすことができる、「ピカリング系(pickering system)」を挙げることができる。
【0084】
ここで、ピカリング系は固体粒子のみから成るか、またはこれに加えて水中での粒子の分散性または親油性相による粒子の濡れを改善する助剤から成ることができる。
【0085】
固体の無機粒子は、金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素、バリウムまたはマンガンの塩、酸化物および水酸化物であってよい。水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび硫化亜鉛を挙げることができる。ケイ酸塩、ベントナイト、ヒドロキシアパタイトおよびハイドロタルサイトも同様に挙げることができる。高分散シリカ、ピロリン酸マグネシウムまたはリン酸三カルシウムが特に好ましい。
【0086】
高分散シリカは、水中に微細な固体粒子として分散可能である。しかしながら、水中のシリカコロイド分散液として知られるもの(シリカゾルとも記載される)を使用することも可能である。このようなコロイド分散液は、シリカのアルカリ性水性混合物である。アルカリ性のpH領域において、粒子は膨潤して、水中で安定である。これらの分散液をピカリング系として使用するために、水中油型エマルションのpHを酸によりpH 2〜7に調節すると有利である。
【0087】
一実施形態によれば、無機保護コロイドおよびそれらの有機保護コロイドとの混合物が好ましい。
【0088】
別の実施形態によれば、中性の有機保護コロイドが好ましい。OH基を有する保護コロイド、例えば、ポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。特に好ましいのは少なくとも2種の中性保護コロイド、特に少なくとも2種のOH基を有する保護コロイドの混合物である。非常に好ましいのは、ポリビニルアルコールとメチルヒドロキシプロピルセルロースとの混合物である。
【0089】
一般に、保護コロイドは、水相を基準として、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の量で使用する。ここで、無機保護コロイドについては、水相を基準として、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の混合物を選択するのが好ましい。
【0090】
エマルションの水相を基準として、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の量の有機保護コロイドが好ましい。特定の実施形態において、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%の中性有機保護コロイドが好ましい。ここで、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%のOH基を有する保護コロイド、例えばポリビニルアルコール、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0091】
ここで、選択された調製方法および保護コロイド(1種または複数種)に依存して、これも同様にマイクロカプセルの成分となり得る。したがって、マイクロカプセルの総重量を基準として、10重量%までが保護コロイドであってよい。この実施形態によれば、マイクロカプセルは、ポリマーの表面上に保護コロイド(1種または複数種)を有する。
【0092】
調製プロセスにおいて、場合により従来の添加剤を加えることができる。好ましくは、低分子量アニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムまたはラウリルエーテル硫酸ナトリウムを添加剤として加える。
【0093】
ラジカル条件下で進行する重合反応のラジカル開始剤として、通常のペルオキソおよびアゾ化合物を、モノマーの重量を基準として有利には0.2〜5重量%の量で使用することができる。ラジカル開始剤の凝集条件およびその溶解度特性に依存して、これをそのまま導入することも可能であるが、好ましくは、溶液、エマルションまたは懸濁液として導入することができ、それにより、特に少量のラジカル開始剤をより高い精度で量り入れることができる。
【0094】
好ましいラジカル開始剤として、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、ジラウロイルペルオキシド、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンおよびクメンヒドロペルオキシドを挙げることができる。特に好ましいラジカル開始剤は、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、4,4’-アゾビスイソブチロニトリル、tert-ブチルペルピバレート、ジラウロイルペルオキシドおよびジメチル2,2-アゾビスイソブチレートである。これらは、30〜100℃の温度範囲で10時間の半減期を示す。
【0095】
さらに、重合に、通常の量の当業者に公知の重合調整剤、例えばtert-ドデシルメルカプタンまたはエチルヘキシルチオグリコレートを加えることも可能である。
【0096】
カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油および少なくとも1種の親油性界面活性剤を含むマイクロカプセルを含む水性分散液(マイクロカプセル粗分散液)は、本発明の水性分散液を調製するために使用される。
【0097】
マイクロカプセル粗分散液は、調製の後、好ましくは直接加工することができる。固体含有量は一般に5〜80重量%、好ましくは20〜60重量%である。マイクロカプセル粗分散液は、適切な場合には液相から一部を除去することにより濃縮した後に、農薬と混合することも可能である。
【0098】
マイクロカプセル粗分散液は少なくとも1種の農薬と混合される。好適な農薬は下に記載する。マイクロカプセル粗分散液を、少なくとも1種の液体および/または固体の農薬を含む水性組成物と混合することが好ましい。マイクロカプセル粗分散液を、少なくとも1種の、特に1種の固体の農薬を含む水性組成物と混合することが特に好ましい。マイクロカプセル粗分散液を固体の農薬と混合する場合、通常、連続相は、懸濁した粒子の形態で農薬を含む。ここで、重量比は広い範囲で変化し得る。一般に、成分は、1重量部の農薬に対して、マイクロカプセル化された形の油および親油性界面活性剤が、0.1〜5重量部、好ましくは0.4〜2重量部の量で存在するような重量比で使用する。好ましい実施形態において、成分は、1重量部の農薬に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.4〜2重量部の親油性界面活性剤がマイクロカプセル化された形で存在するような重量比で使用する。
【0099】
特定の実施形態において、本発明の水性分散液は、マイクロカプセル、懸濁した粒子の形態の少なくとも1種の植物保護剤、および適切な場合には、さらなる製剤助剤を含む「懸濁液濃縮物」である。このような製剤助剤の例は、凍結防止剤、着色剤、増粘剤、湿潤剤または分散剤である。
【0100】
本発明のマイクロカプセルを含む水性分散液は、施用の前に、農業に通常使用される量の水により希釈することもできる。
【0101】
本発明のマイクロカプセルの水性分散液は、一般に、乾燥すると、油および親油性界面活性剤を含むカプセル内容物を放出することができる。考え得る説明としては(これに固執するわけではないが)、マイクロカプセル壁が水溶液中で水和し、それにより水と保護コロイドがカプセル壁の外側に堆積するというものである。このタイプの「第二の外皮」は非常に極性が高く、油および親油性界面活性剤がカプセルコアから外側に拡散することを防止する。分散液を乾燥すると、「第二の外皮」は破壊され、そのため非常に極性の高い拡散障壁が失われる。そこで、油および親油性界面活性剤はより容易にカプセル壁の中に拡散することが可能となり、またカプセル壁を通して拡散することが可能となる。カプセル壁の中に拡散した親油性界面活性剤は可塑剤として作用し、カプセル壁の不安定化に寄与し得ると考えられる。
【0102】
本発明のマイクロカプセルを含む水性分散液は、マイクロカプセルの水性分散液を乾燥するとカプセル内容物が放出されることを含む産業用途に使用することができる。水性分散液の乾燥は、一般に、施用された分散液の水性成分の蒸発により起こる。乾燥は、例えば、地方の野外で、-20〜+100℃、好ましくは0〜40℃の温度、標準大気圧、および例えば95%以下、好ましくは80%以下の大気湿度で起こり得る。高温または減圧の人工的な条件下で乾燥を促進することも可能である。
【0103】
本発明はまた、分離した構成要素として、マイクロカプセル粗分散液および少なくとも1種の農薬を含む、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除に組み合わせて使用するための製品に関する。該製品は、好ましくは、分離した構成要素として、マイクロカプセル粗分散液および少なくとも1種の、好ましくは1種の農薬を含む。分離した構成要素は、使用の前に混合することも可能であるし、または時間的に段階を踏んで別々に、好ましくは48時間以内に、特に24時間以内に、とりわけ8時間以内に使用することも可能である。分離した構成要素は好ましくは使用の前に混合する。
【0104】
本発明はまた、本発明の水性分散液または本発明の方法により調製された水性分散液により有用な植物の種子を処理することを含む、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除の方法に関する。別の実施形態は、本発明の水性分散液または本発明の方法により調製された水性分散液により有用な植物の種子を処理することを含む、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除における使用である。
【0105】
さらに、本発明は、菌類/昆虫、それらの生息環境または菌類もしくは昆虫の蔓延から保護すべき植物もしくは土壌、あるいは望ましくない植物、望ましくない植物が成長する土壌またはそれらの種子を、本発明の水性分散液または本発明の方法により調製された水性分散液により処理することを含む、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除の方法に関する。別の実施形態は、菌類/昆虫、それらの生息環境または菌類もしくは昆虫の蔓延から保護すべき植物もしくは土壌、あるいは望ましくない植物、望ましくない植物が成長する土壌またはそれらの種子を、本発明の水性分散液または本発明の方法により調製された水性分散液により処理することを含む、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除における使用に関する。
【0106】
前記の菌類、昆虫、植物および/またはそれらの生息環境の処理は、好ましくは、本発明のマイクロカプセルの水性分散液の施用により行う。施用は好ましくは噴霧により実施する。
【0107】
用語「農薬」は、植物保護剤および肥料を意味すると理解される。好適な植物保護剤は、殺ダニ剤、殺藻剤、アブラムシ駆除剤、殺細菌剤、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、発芽阻害剤、薬害軽減剤または成長調節物質である。肥料の例は、単一のまたは複数の栄養素を含む無機肥料、有機および有機/無機肥料または微量元素を含む肥料である。好ましい農薬は植物保護剤である。
【0108】
殺菌剤は、真菌およびそれらの胞子を破壊するか、またはそれらの成長を阻害する化合物である。好適な殺菌剤の例は、ストロビルリン類、カルボキシアミド類、アゾール類、含窒素複素環化合物、カルバメート類およびジチオカルバメート類、ならびに他の殺菌剤、例えば、グアニジン類、抗生物質、有機金属化合物、含硫黄複素環化合物、有機リン化合物、有機塩素化合物、ニトロフェニル誘導体または無機活性化合物である。
【0109】
殺虫剤は、それらの作用において、特に昆虫およびそれらの発達形態を標的とする化合物である。好適な殺虫剤の例は、有機(チオ)ホスフェート類、カルバメート類、ピレスロイド類、成長調節物質、ニコチン受容体アゴニスト/アンタゴニスト、GABAアンタゴニスト、マクロライド類、METI I化合物、METI IIおよびIII化合物、脱共役化合物、酸化的リン酸化阻害剤、脱皮攪乱物質、混合機能オキシダーゼ阻害剤またはナトリウムチャネル遮断剤である。
【0110】
用語「除草剤」は、一般にその各々の位置において望ましくない野生植物または作物(有害植物)に対して活性である化合物を意味すると理解される。好適な除草剤の例は、脂質生合成阻害剤、ALS阻害剤、光合成阻害剤、プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ阻害剤、漂白除草剤、EPSPシンターゼ阻害剤、グルタミンシンターゼ阻害剤、DHPシンターゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、VLCFA阻害剤、セルロース生合成阻害剤、脱共役除草剤、オーキシン除草剤、オーキシン輸送阻害剤または薬害軽減剤除草剤である。
【0111】
以上の通り、本発明のマイクロカプセルを含む水性分散液は、マイクロカプセルを含む従来の分散液と比較して多くの利点を有する。本発明の水性分散液中のマイクロカプセルは、前記マイクロカプセルの水性分散液が乾燥すると、カプセルコアの内容物を放出する。マイクロカプセルは農薬への使用に好適であり、油または親油性界面活性剤などの浸透促進化合物を含むことおよび再放出することができる。前記マイクロカプセルを使用することにより、植物保護剤の結晶化が減少した、油および/または親油性界面活性剤などの浸透促進化合物を含む植物保護剤の懸濁液濃縮物を提供することができる。前記マイクロカプセルを使用することにより、補助剤を含まない従来の懸濁液濃縮物と比較して増大した生物活性を示す植物保護剤の懸濁液濃縮物を提供することができる。マイクロカプセルを調製する際に、有毒で、使用する他の材料と高い反応性を有するイソシアネートを使用する。
【0112】
次の実施例により本発明を説明するが、これにより限定されない。
【実施例】
【0113】
使用した材料
油1:235〜290℃の沸点範囲、-5℃未満の流動点および12℃のアニリン点を有する工業用芳香族混合物。
【0114】
油2:精製ダイズ油。
【0115】
油3:ドデカノール。
【0116】
油4:40℃で約68 mm2/sの粘度、および-21℃の流動点を有する高圧水素化鉱油。
【0117】
油5:コーン油。
【0118】
界面活性剤1:平均2〜7個のエチレンオキシド単位および5〜15個のプロピレンオキシド単位を有するC16/C18-脂肪アルコールアルコキシレート。
【0119】
界面活性剤2:平均2〜7個のエチレンオキシド単位および1〜5個のプロピレンオキシド単位を有するC13-アルコールアルコキシレート。
【0120】
界面活性剤3:平均5〜8個のエチレンオキシド単位を有するC13-アルコールアルコキシレート。
【0121】
界面活性剤4:平均3〜5個のエチレンオキシド単位および1個のブチレンオキシド単位を有するC13/C15-アルコールアルコキシレート、メチル化されている。
【0122】
保護コロイド1:メチルヒドロキシプロピルセルロース(90〜125 mPa・sのブルックフィールド(Brookfield)粘度(20℃、20 rpm、2重量%)を有するもの)、5重量%水溶液。
【0123】
保護コロイド2:ポリビニルアルコール溶液:10重量%水溶液、加水分解の程度79%、平均重合度PW:1900
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
BDA2:1,4-ブタンジオールジアクリレート
実施例1
まず、水相および油相を以下の組成で別々に調製した。
【0124】
水相:
240.0 g 水
95.0 g 保護コロイド1
23.8 g 保護コロイド2
1.1 gの2.5重量%亜硝酸ナトリウム水溶液
油相:
132 g 界面活性剤1
88 g 油1
8.6 g メタクリル酸メチル
3.7 g メタクリル酸
0.35 gの75% tert-ブチルペルピバレートの脂肪族炭化水素溶液
フィード1:
2.69 gの10重量% tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液
フィード2:
14.15 gの1%アスコルビン酸水溶液
水相を室温で導入した。油相を加えた後、溶解撹拌機(dissolver stirrer)により3500 rpmで40分間分散を行った。得られたエマルションを、アンカースターラーにより撹拌しながら、60分間で70℃に、さらに60分以内に85℃に加熱し、85℃に1時間維持した。製造したマイクロカプセル分散液に、撹拌しながらフィード1を加えた。フィード2を撹拌しながら90分間で量り入れ、その過程で分散液を室温に冷却した。製造したマイクロカプセル分散液は、40%の固体含有量および2.45μmの平均粒径(フラウンホーファー回折により測定した、体積による平均値)を有した。
【0125】
実施例2
まず、水相および油相を以下の組成で別々に調製した。
【0126】
水相:
240.0 g 水
95.0 g 保護コロイド1
23.8 g 保護コロイド2
2.04 gの15重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液
1.1 gの2.5重量%亜硝酸ナトリウム水溶液
油相:
132 g 界面活性剤1
88 g 油2
17.1 g メタクリル酸メチル
7.4 g メタクリル酸
0.35 gの75% tert-ブチルペルピバレートの脂肪族炭化水素溶液
フィード1:
2.69 gの10重量% tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液
フィード2:
14.15 gの1%アスコルビン酸水溶液
水相を室温で導入した。油相を加えた後、溶解撹拌機により3500 rpmで40分間分散を行った。得られたエマルションを、アンカースターラーにより撹拌しながら、60分間で70℃に、さらに60分以内に85℃に加熱し、85℃に1時間維持した。製造したマイクロカプセル分散液に、撹拌しながらフィード1を加えた。フィード2を撹拌しながら90分間で量り入れ、その過程で分散液を室温に冷却した。製造したマイクロカプセル分散液は、40.6%の固体含有量および2.68μmの平均粒径(フラウンホーファー回折により測定した、体積による平均値)を有した。
【0127】
実施例3
まず、水相および油相を以下の組成で別々に調製した。
【0128】
水相:
240.0 g 水
95.0 g 保護コロイド1
23.8 g 保護コロイド2
2.04 gの15%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液
1.1 gの2.5重量%亜硝酸ナトリウム水溶液
油相:
132 g 界面活性剤2
88 g 油3
17.1 g メタクリル酸メチル
7.4 g メタクリル酸
0.35 gの75% tert-ブチルペルピバレートの脂肪族炭化水素中の溶液
フィード1:
2.69 gの10重量% tert-ブチルヒドロペルオキシド水溶液
フィード2:
14.15 gの1%アスコルビン酸水溶液
水相を60℃で導入した。油相を60℃に加熱して加え、溶解撹拌機により、60℃、3500 rpmで40分間分散を行った。ラジカル開始剤を加えた後、エマルションをアンカースターラーにより撹拌しながら60分間で85℃に加熱し、85℃に2時間維持した。製造したマイクロカプセル分散液に、撹拌しながらフィード1を加えた。フィード2を90分間かけて撹拌しながら量り入れた。この過程で分散液を室温に冷却した。製造したマイクロカプセル分散液は、40.5%の固体含有量および24.9μmの平均粒径(フラウンホーファー回折により測定した、体積による平均値)を有した。
【0129】
実施例4〜7
実施例4は、実施例1と同様に実施した。
【0130】
実施例5および6は、実施例2と同様に実施した。
【0131】
実施例7は、実施例3と同様に実施した。
【0132】
実施例4〜7の詳細を表1にまとめた。
【0133】
実施例8
製剤の安定性
295 gのジモキシストロビン懸濁液濃縮物(SC)(500 g/l)および118 gのエポキシコナゾール懸濁液濃縮物(500 g/l)を、プロペラスターラーを取り付けた金属製ビーカーに加えた。2000 rpmで撹拌しながら489.2 gの実施例2の分散液を加えて、混合物を10分間撹拌した。
【0134】
試料を40または50℃で12週間保存し、10分後(開始)、2週間後および12週間後に粒径を測定した。これと同時に、カプセル化されていない親油性界面活性剤1を実施例2と同じ濃度で含む試料を調製し、また、親油性界面活性剤1を含まない試料を調製した。試料の粒径はMalvern Mastersizer 2000を用いて測定した。これを表2に示す。粒径は、50%の粒子の平均直径として表したD (v、50%)値として与える(分布の型:体積)。
【0135】
実験により、界面活性剤のカプセル化により、界面活性剤がカプセル化されていない製剤と比較して、より安定な製剤が得られることが示された。
【0136】
表2
【表1】

【0137】
1) 本発明によらない

実施例9
生物学的効果
本発明によりカプセル化した親油性界面活性剤を用いて、植物保護効果を測定する実験を行った。このために、実施例1、3、5または6のカプセル化された親油性界面活性剤の試料をエポキシコナゾール懸濁液濃縮物(SC)(500 g/l)と混合して、1重量部の活性化合物に対して2重量部の親油性界面活性剤が存在するようにした。これらの混合物を、コムギ葉さび病に感染したコムギ植物に50、25および12.5 ppmの濃度で噴霧することにより施用した。カプセル化されていない界面活性剤および界面活性剤を含まないSC製剤を、各回に比較として試験した。植物保護剤を加えない植物の感染は80%であった。評価のために、8日後に植物の感染パーセンテージを観察した。実験の結果を表3に表す。
【0138】
表3
【表2】

【0139】
1) 本発明によらない
2) 施用された製剤中のエポキシコナゾールの濃度

表1
【表3】

【0140】
a) 重量比
b) コア/壁重量比は、油と親油性界面活性剤の合計のモノマーの合計に対する比である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油を含むマイクロカプセルを含む水性分散液であって、カプセルコアが少なくとも1種の親油性界面活性剤を含み、分散液の連続相が少なくとも1種の農薬を含む、前記水性分散液。
【請求項2】
カプセルコアが、各場合においてカプセルコアを基準として、10重量%よりも多い少なくとも1種の親油性界面活性剤および90重量%未満の少なくとも1種の油を含む、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
分散液の連続相が、少なくとも1種の農薬を懸濁した粒子の形態で含む、請求項1または2に記載の水性分散液。
【請求項4】
親油性界面活性剤が、少なくとも1種のアルカノールアルコキシレートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項5】
モノマーが、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、マレイン酸およびそのエステル、スチレン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項6】
カプセル壁が、
各場合においてモノマーの総重量を基準として、
30〜100重量%の、アクリル酸のC1〜C24-アルキルエステル、メタクリル酸のC1〜C24-アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸無水物およびマレイン酸である1種以上のモノマー(モノマーI)、
0〜20重量%の、水に不溶性または難溶性の1種以上の二官能基および/または多官能基モノマー(モノマーII)、および
0〜50重量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
から形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項7】
(i) カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油および少なくとも1種の親油性界面活性剤を含むマイクロカプセルを含む水性分散液(マイクロカプセル粗分散液)を提供すること、および
(ii) 少なくとも1種の農薬と混合すること
による、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性分散液の調製方法。
【請求項8】
マイクロカプセル粗分散液が、ラジカル重合性モノマー、親油性界面活性剤および油を含む水性エマルションを加熱することにより調製される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水性エマルションが、ラジカル重合性モノマー、ラジカル開始剤、保護コロイド、親油性界面活性剤および油を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性分散液を調製するための、カプセル壁がラジカル重合モノマーから形成され、カプセルコアが少なくとも1種の油および少なくとも1種の親油性界面活性剤を含むマイクロカプセルを含む水性分散液(マイクロカプセル粗分散液)の使用。
【請求項11】
分離した構成要素として、
請求項7〜9のいずれか1項に記載のマイクロカプセル粗分散液、および
少なくとも1種の農薬
を含む、望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除において組み合わせて使用するための製品。
【請求項12】
望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除における使用であって、有用な植物の種子を、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性分散液、または請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法により調製された水性分散液、または請求項11に記載の製品により処理する、前記使用。
【請求項13】
望ましくない植物の成長の防除および/または望ましくない昆虫もしくはコナダニの植物への蔓延の防除および/または植物病原性菌類の防除における使用であって、菌類/昆虫、それらの生息環境または菌類もしくは昆虫の蔓延から保護すべき植物もしくは土壌、または望ましくない植物、望ましくない植物が成長する土壌もしくはそれらの種子を、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性分散液、または請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法により調製された水性分散液、または請求項11に記載の製品により処理する、前記使用。

【公表番号】特表2011−510959(P2011−510959A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544732(P2010−544732)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051272
【国際公開番号】WO2009/098232
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】