説明

観察システム、マーキング装置、観察装置及び内視鏡診断システム

【課題】医師等の医療従事者の作業負担を増大させることなく、体腔内部の患部情報をタイムリーに医師に提供すること。
【解決手段】観察システムは、患者の体腔内の患部にマーキングを施すマーキング装置と、患部の映像を表示する観察装置と、を有する。マーキング装置は、患部情報に、固有のマークを割り当てて、患部情報と固有のマークとが対応付けられたデータベースを記憶する記憶装置と、体腔に導入可能なマーキングユニットと、固有のマークを患部又は患部付近にマーキングするようマーキングユニットを駆動する駆動部と、を有する。観察装置は、患部の映像信号を取得する取得部と、患部又は患部付近にマーキングされた固有のマークを、映像信号を用いて検出する検出部と、データベースから患部情報を、検出された固有のマークに基づいて抽出する抽出部と、患部又は患部付近の映像と患部情報とを画面上に表示させる表示処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内部の観察を行う観察システム、並びにこの観察システムに用いられるマーキング装置及び観察装置に関する。また、本発明は、このマーキング装置又は観察装置を備えた内視鏡診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
先端部に固体撮像素子等のカメラを備えた内視鏡を用いて体腔(消化器系の場合、食道及び胃等)内部を観察する技術が、広く用いられている。内視鏡は一般に、長尺のプローブ又は処置具等を挿通可能なチャンネルを備えており、内視鏡カメラを用いて体腔内の患部を観察しつつ、プローブを用いて患部について測定を行ったり処置具を用いて患部に処置を施したりすることができる。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のクリップが装填されているシースを、内視鏡のチャンネルから体腔内部に導入し、これらのクリップを順次使用して患部の生体組織を止血又はマーキングの目的で挟持(クリッピング)する技術が、開示されている。各クリップ上には、シース内のクリップ残数が例えば数字で表示されている。そのため、処置を行う医師は、内視鏡カメラで撮像した体腔内部の映像を画面上で見て、その体腔内部の生体組織を挟持しているクリップ上に表示された数字を確認することができ、この数字からシース内のクリップ残数を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−233315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、患者の体腔内の患部に手術を施そうとする場合、手術前に、手術対象の患部或いはその周辺の患部についての過去の検査或いは処置に関する情報を参照して、手術における処置方法を検討することは、非常に重要である。これは手術中においても同様である。また、過去の手術或いは投薬等の処置による患部の状態変化を観察してその効果を確認する場合がある。さらに、体内検査の際に、処置を施さないまでも、病変に結び付く可能性のある何らかの兆候を医師が発見したときに、その兆候を発現した患部を所見に基づいて分類しておき、後日その患部について病変が生じているかどうか等を確認する場合もある。ここで、検査或いは処置は、複数回にわたって行われることがあり、検査或いは処置を受けた患部も、複数箇所に点在することがある。そのため、各患部についての毎回の検査或いは処置に関する情報を記録及び管理することが求められる。
【0006】
しかしながら、多くの情報が記録及び管理されている場合に、例えば手術中に、それらの情報のうち参照したい情報だけを抽出して参照するために何らかの煩雑な手作業が伴えば、手術中の医師等、医療従事者の作業負担を増大させる虞がある。
【0007】
本発明の目的は、医師等の医療従事者の作業負担を増大させることなく、体腔内部の患部情報をタイムリーに医師に提供することができる、観察システム、マーキング装置、観察装置及び内視鏡診断システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る観察システムは、
患者の体腔内の患部にマーキングを施すマーキング装置と、
前記患部の映像を観察のために表示する観察装置と、を有し、
前記マーキング装置は、
前記患部についての情報である患部情報に、固有のマークを割り当てて、前記患部情報と前記固有のマークとが対応付けられたデータベースを記憶する記憶装置と、
前記体腔に導入可能なマーキングユニットと、
前記固有のマークを前記患部又は患部付近にマーキングするよう前記マーキングユニットを駆動する駆動部と、を有し、
前記観察装置は、
前記患部の映像信号を取得する取得部と、
前記患部又は患部付近にマーキングされた前記固有のマークを、取得された前記映像信号を用いて検出する検出部と、
前記データベースから前記患部情報を、検出された前記固有のマークに基づいて抽出する抽出部と、
取得された前記映像信号に基づく映像と共に、抽出された前記患部情報を、前記画面上に表示させる表示処理部と、を有する。
【0009】
本発明に係るマーキング装置は、
患者の体腔内の患部についての情報である患部情報に、固有のマークを割り当てて、前記患部情報と前記固有のマークとが対応付けられたデータベースを記憶する記憶装置と、
前記体腔に導入可能なマーキングユニットと、
前記固有のマークを前記患部又は患部付近にマーキングするよう前記マーキングユニットを駆動する駆動部と、
を有する。
【0010】
本発明に係る観察装置は、
患者の体腔内の患部の映像信号を取得する取得部と、
前記患部又は患部付近にマーキングされたマークを、取得された前記映像信号を用いて検出する検出部と、
前記患部についての情報である患部情報と前記患部情報に割り当てられた固有のマークとが対応付けられたデータベースから、前記患部情報を、検出された前記マークに基づいて抽出する抽出部と、
取得された前記映像信号に基づく映像と共に、抽出された前記患部情報を、前記画面上に表示させる表示処理部と、
を有する。
【0011】
本発明に係る内視鏡診断システムは、
上記のマーキング装置と、
前記体腔に導入可能に形成され、前記患部を撮像する撮像素子を有する内視鏡本体と、
撮像された前記患部の映像信号を処理する内視鏡装置と、を有し、
前記マーキング装置の前記マーキングユニットは、前記内視鏡本体に装着されている。
【0012】
本発明に係る内視鏡診断システムは、
上記の観察装置と、
前記体腔に挿入可能に形成され、前記患部を撮像する撮像素子を有する内視鏡本体と、
前記観察装置を内蔵し、撮像された前記患部の映像信号を処理する内視鏡装置と、
を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医師等の医療従事者の作業負担を増大させることなく、体腔内部の患部情報をタイムリーに医師に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る内視鏡診断システムの構成を示す図
【図2】同実施の形態に係る内視鏡本体の先端部の斜視図
【図3A】同実施の形態に係るマーキングユニットの構成を示す図
【図3B】図3Aのマーキングユニットの駆動状態を示す図
【図3C】図3Bのマーキングユニットによりマーキングされたマークを示す図
【図4】同実施の形態に係るマーキング動作を説明するためのフロー図
【図5】同実施の形態に係る患部IDと患部情報とを対応付けて記録するデータベースを示す図
【図6】同実施の形態に係る患部IDとマークパターン情報を対応付けて記録するデータベースを示す図
【図7】図4のマーキング動作によりマークを患部付近にマーキングした状態を示す図
【図8】同実施の形態に係る画像処理動作を説明するためのフロー図
【図9】図8の画像処理動作により合成映像を表示した状態を示す図
【図10】本発明の実施の形態2に係る内視鏡診断システムの構成を示す図
【図11】本発明の実施の形態3に係る内視鏡診断システムの構成を示す図
【図12】同実施の形態に係る内視鏡本体の先端部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る内視鏡診断システムの構成を示す図である。図1の内視鏡診断システム1は、内視鏡本体2、内視鏡装置3、ベースユニット4、入力装置6、及びモニター8を有する。なお、図1においては、オプショナルな診断装置として、光学プローブ10及びベースユニット4から構成される光学的な診断装置を装着した例が示されている。
【0017】
内視鏡本体2は、体腔内に導入可能に形成された可撓性を有する長尺の導入部21と、導入部21の基端部21aに設けられた操作部22と、操作部22を介して導入部21と内視鏡装置3とを通信可能に接続するケーブル23と、を有する。
【0018】
導入部21は、体腔内部を進入する際に体腔の湾曲に追従して容易に湾曲可能な可撓性を、その略全長にわたって有する。また、導入部21は、操作部22のノブ22aの操作に従って先端部21b側の一定範囲(操作可能部21c)を任意の角度で湾曲させることができる機構(図示せず)を有する。
【0019】
導入部21は、その先端部21bの斜視図である図2に示すように、カメラCA、ライトガイドLG、チャンネルCH及びマーキングユニットMUを有する。
【0020】
ライトガイドLGは、内視鏡装置3の照明光源31により発光された光(可視光)を先端部21bまで導光し、その光を先端部21bから出射させる。
【0021】
カメラCAは、固体撮像素子を備えた電子カメラであり、ライトガイドLGから出射された光で照明された領域を撮像し、その信号(撮像信号)を内視鏡装置3に伝送する。
【0022】
マーキングユニットMUについては後述する。
【0023】
チャンネルCHは、操作部22に形成された導入口22bと連通するように導入部21に形成された例えば2.6mm径の内腔である。チャンネルCHには、患部の観察、患部の診断及び患部の手術等を行うための様々な機器を挿通することができる。例えば、図1に示すように、体腔内の対象部位の検査及び診断を光学的に行うためのプローブ本体11を挿通可能である。
【0024】
プローブ本体11は、図1に示すように、プローブ基端部11aからプローブ先端部11bまで延在する長尺の可撓性線状部材である。プローブ本体11は、プローブ基端部11aに設けられたコネクターを介してベースユニット4に接続されている。プローブ本体11は、チャンネルCHへの挿通により体腔に導入され、ベースユニット4のレーザー41から発光されたレーザー光を導光し、その光を体腔内の観察対象部位(例えば患部)への照射光として出射する。
【0025】
また、プローブ本体11は、観察対象部位からの反射光を受光し、その光をベースユニット4の分光器42へ導光する。分光器42へ導光された光は、分光器42によりスペクトル解析を施される。スペクトル解析結果は、コンピューター43のCPU(Central Processing Unit)43aにより画像処理等を施され、グラフとしてモニター7に表示される。CPU43aにおいて病状等についての判定を行い、その判定結果をメモリー43bに保存すると共にモニター7に表示するようにしても良い。また、コンピューター43における各種の解析及び判定の実行及び設定等は、入力装置5(例えばキーボード又はマウス等)を操作することによって行うことができる。
【0026】
なお、本実施の形態では上記のとおり、内視鏡診断システム1に組み合わせるためのオプショナルな装置として、光学プローブ10と分光法による解析を行うベースユニット4とを使用する構成を例示しているが、これらの使用は一例であり、必須ではない。
【0027】
マーキングユニットMUは、図2に示すように内視鏡本体2の導入部21の先端部21bに埋設により装着されているため、内視鏡本体2と共に体腔に導入可能である。
【0028】
マーキングユニットMUの先端部には、図3Aに示すように多数のAPC(Argon Plasma Coagulation)アプリケーター素子51がマトリクス状に配設されている。
【0029】
APCアプリケーター素子(以下、単に「素子」という)51は、内視鏡装置3のマーカードライバー32(駆動部)により個別に駆動される。各素子51は、駆動されると、アルゴンガスを噴射すると共にこのアルゴンガスを媒体として高周波電流を流し、これにより、アルゴンガスを吹き付けられた個所の生体組織を焼灼(凝固)させる。したがって、体腔内の任意の部位にマーキングユニットMUを近接させた状態で、任意の素子51を駆動させる(図3B)ことによって、その部位に任意のマーク(図3C)をマーキングすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、高周波により体腔内の生体組織を焼灼する非接触型の焼灼方式として周知であるAPCを、マークのマーキング方法として利用しているが、APC以外の方式も使用可能である。例えば、レーザーによる光学的焼灼方式、吸引若しくは押圧による圧痕方式、生体適合材料のプレートによるインプラント方式、又は生体適合材料の色素による入れ墨方式等が使用可能である。
【0031】
また、本実施の形態では、マークの種類としてマトリクス型二次元コードを採用しているが、これとは異なる種類も使用可能である。例えば、バーコード、文字又は記号等が使用可能である。
【0032】
内視鏡装置3は、既述の照明光源31及びマーカードライバー32のほかに、映像処理部33、画像処理部34、記憶装置35、及びCPU36を有し、入力装置6及びモニター8に接続されている。
【0033】
映像処理部33は、内視鏡本体2から撮像信号を受信し、この撮像信号に対して所定の信号処理を施し、処理後の信号を内視鏡映像信号としてモニター8に出力して、内視鏡映像信号に基づく映像(内視鏡映像)をモニター8の画面上に表示させる。すなわち、体腔内の患部が撮像されると、その映像がモニター8に表示される。映像処理部33は、内視鏡映像信号を画像処理部34にも出力する。
【0034】
画像処理部34は、患者情報の画像を示す患者情報画像信号を生成し、モニター8の画面上で内視鏡映像に患者情報を重畳させる。画像処理動作については後述する。
【0035】
記憶装置35は、内視鏡装置3に内蔵されたHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置である。なお、記憶装置35は、内視鏡装置3に内蔵されたものでなくても良く、例えば内視鏡装置3に外付けされたものであっても良いし、或いは通信ネットワーク上に存在するものであっても良い。
【0036】
CPU36は、内視鏡装置3内の上記各部の動作を制御する制御部である。CPU36の制御の実行及び停止、並びに内視鏡装置3への各種情報の入力等は、入力装置6(例えばキーボード又はマウス等)を操作することによって行うことができる。
【0037】
次いで、内視鏡診断システム1において実行されるマーキング動作について説明する。図4は、マーキング動作を説明するためのフロー図である。
【0038】
まず、マーキングユニットMUを近接させている患部(マーキング対象患部)の識別情報(患部ID)が選定される(ステップS11)。
【0039】
ここで、患部IDは、過去に検査又は処置が施された患部を識別するための情報である。患部IDは、図5に示すように、患者の識別情報(患者ID)、患部についての検査又は処置が行われた日時の情報、及びその検査又は処置についての判定結果の情報と共に、データベースDB1として記憶装置35に記憶されている。患部に関するこれらの情報(以下、総称として「患部情報」という)は、図5に例示した情報に限定されるものではなく、医師による現在又は将来の診断に役立つものであればいかなる情報であっても良い。例えば、検査時又は処置時に撮像された患部の画像情報等も、患部情報として利用可能である。
【0040】
患部IDの選定は、例えば、入力装置6の操作によって、データベースDB1内の情報を記憶装置35から読み出してモニター8に一覧表示させた後、任意の患部IDを選択することによって、行うことができる。
【0041】
CPU36は、選定された患部IDに対応する患部情報に所定の計算アルゴリズムを適用することにより、マークのパターンを生成する(ステップS12)。マークのパターンが、マーキング対象患部に固有の情報から生成されるため、患部ごとに異なるマークを得ることができる。また、患部情報は、対応する患部についての過去の検査又は処置に関する情報(履歴情報)を含んでいるため、その情報に変更があれば異なるマークを生成することもできる。よって、1つの患部に対して複数の履歴情報がある場合には、これら複数の履歴情報に対して共通のマークを生成することも、履歴情報ごとに異なるマークを生成することも、可能である。
【0042】
なお、生成されるマークのパターンは、入力装置6によるユーザー指示に従ったパターンであっても良い。また、患部情報だけでなく別の情報(例えば、内視鏡本体2の製品シリアル番号、或いは患者についての電子カルテから生成される関連情報等)も加味して、マークのパターンを生成しても良い。
【0043】
本実施の形態では、マークのパターンの生成とは、マーキングの際にオン(駆動状態)にすべき素子51とマーキングの際にオフ(非駆動状態)にすべき素子51とを決定することを意味する。よって、マーキングユニットMUにおいて例えば図3Aに示すように76本の素子51が使用される場合は、パターン生成の結果として得られるマークパターン情報は、各素子51のオンオフを示す情報である。マークパターン情報の一例としては、76桁のビットから成り且つ各桁のビット値により各素子51のオンオフ(例えば、オンの場合、ビット値=1とし、オフの場合、ビット値=0とする)を示すビット列が挙げられる。
【0044】
このようにしてCPU36は、患部情報に、固有のマークを割り当てる。
【0045】
CPU36は、生成されたマークパターン情報を、図6に示すように、患者ID及び患者ID等の患者情報に対応付けてデータベースDB2として記憶装置35に記憶させる(ステップS13)。なお、図5、6のデータベースDB1、DB2は統合されていても良い。
【0046】
そして、マーカードライバー32がマークパターン情報に従って各素子51を駆動し、これにより、マーキングユニットMUは、固有のマークをマーキング対象患部又は患部付近にマーキングする(ステップS14)。なお、マークは、図7に示すように患部周辺の部位にマーキングされることが好ましい。
【0047】
以上のようにして内視鏡診断システム1においてマーキング動作が実行される。
【0048】
上記マーキングに関与する記憶装置35、マーカードライバー32及びマーキングユニットMUの組合せは、患者の体腔内の患部又は患部付近にマーキングを施すマーキング装置を構成する。
【0049】
次いで、内視鏡診断システム1において実行される画像処理動作について説明する。図8は、画像処理動作を説明するためのフロー図である。
【0050】
まず、画像処理部34は、映像処理部33から内視鏡映像信号を受信する(ステップS21)。すなわち、画像処理部34は、患部の映像信号を取得可能な取得部を構成する。
【0051】
そして、画像処理部34は、内視鏡映像信号に対して画像認識(例えばパターンマッチング、形状認識、エッジ抽出処理、色抽出又はバーコード認識等)を実行し(ステップS22)、その結果として、患部又は患部付近にマーキングされているマークの位置情報を取得し(ステップS23)、そのマークのパターンを特定する(ステップS24)。つまり、画像認識により、内視鏡映像のどの部分にどのようなマークがあるかが検出される。すなわち、画像処理部34は、患部又は患部付近にマーキングされたマークを、内視鏡画像信号を用いて検出する検出部を構成する。
【0052】
なお、内視鏡診断システム1の解像度はマーク検出に十分なレベルであるものとする。試算によれば、カメラCAと患部との離間距離が5mm、画角が140度、カメラCAの画素数が正方40万画素と仮定すると、1平方mmあたり最大で18×18画素程度の二次元コードのマークを検出可能である。
【0053】
マーク検出後、画像処理部34は、データベースDB1、DB2を参照する。そして、画像処理部34は、特定されたパターンを表すマークパターン情報から患部IDを特定し、その患部IDを基に、検出されたマークに対応する患部情報をデータベースDB1から抽出する(ステップS25)。すなわち、画像処理部34は、検出されたマークに基づいて、データベースDB1、DB2から患部情報を抽出する抽出部を構成する。
【0054】
そして、画像処理部34は、抽出された患部情報のうち、内視鏡映像に重畳して表示する情報を選択する(ステップS26)。文字の情報或いは画像の情報等のように情報の形式による選択を行っても良いし、日時情報或いは判定結果情報等のように情報の内容による選択を行っても良い。また、複数の患部又は患部付近にそれぞれマーキングされた複数のマークが表示及び検出されるときには、複数の患部情報が抽出されることになるが、この場合は、これら複数の患部情報のうちいずれかの患部情報を選択しても良い。この選択は、入力装置6を用いてユーザーが手動で行っても良い。
【0055】
そして、画像処理部34は、選択された患部情報を示す患部情報画像信号を生成し(ステップS27)、これをモニター8に出力する(ステップS28)ことによって、モニター8の画面上で患部情報を内視鏡映像に重畳して表示させる。これにより、図9に示すように、内視鏡映像に患部情報が重畳された合成映像をモニター8の画面上に表示することができる。すなわち、内視鏡映像信号をモニター8に出力する映像処理部33と患部情報画像信号をモニター8に出力する画像処理部34との組合せは、内視鏡映像と共に患部情報をモニター8の画面上に表示させる表示処理部を構成する。
【0056】
図9に示すように、合成映像において、検出されたマークを囲む識別表示を追加し、患部情報をこの識別表示に隣接させることによって、表示中の患部情報とその患部情報の表示の根拠となったマークとの対応関係を明確にすることができる。
【0057】
なお、表示された合成映像を記憶装置35に記憶させるようにしても良い。
【0058】
また、内視鏡映像に重畳する患部情報を半透過状態で表示させても良い。また、モニター8の画面上で患部情報を、内視鏡映像に重畳せず内視鏡映像の枠外に表示させても良い。患部情報の表示位置は、ユーザーが選択できるようにしても良い。
【0059】
また、モニター8の画面上に内視鏡映像をそのまま表示させるモードと、モニター8の画面上に合成映像を表示させるモードと、をユーザーが任意に切り替えられるようにしても良い。
【0060】
また、モニター8の画面上に、複数の患部又は患部付近にそれぞれマーキングされた複数のマークが表示されるときには、これら複数のマークにそれぞれ対応する患部情報を同時に表示させるようにしても良い。この場合、各マークと各患部情報との対応関係が識別可能な態様で、複数のマーク及び複数の患部情報を表示させることが好ましい。対応関係が識別可能な態様とは、例えば色分けである。
【0061】
以上のようにして内視鏡診断システム1において画像処理動作が実行される。
【0062】
上記合成映像の表示に関与する映像処理部33及び画像処理部34の組合せは、患部の映像を医師の観察のために表示する観察装置を構成する。また、この観察装置と前述のマーキング装置との組合せは、観察システムを構成する。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、マーキング装置は、患部情報に、固有のマークを割り当てて、患部情報とそのマークとが対応付けられたデータベースDB1、DB2を記憶装置35に記憶させ、マーキングユニットMUによりそのマークを患部又は患部付近にマーキングする。そして、観察装置は、内視鏡映像信号を受信し、この信号を用いてマークを検出し、このマークを基にデータベースDB1、DB2から患部情報を抽出し、この患部情報を内視鏡映像信号と共にモニター8の画面上に表示させる。言い換えれば、患部情報を記号化したマークを予め患部又は患部付近にマーキングしておき、その後に体腔内の患部を撮像した際に、自動的にそのマークを認識して患部情報を患部の映像と共に表示する。その間、特に煩雑な手作業は必要でない。したがって、医師等の医療従事者の作業負担を増大させることなく、医師の診断に役立つ患部情報をタイムリーに医師に提供することができる。その結果として、手術中の医師の術技を簡便化するだけでなく医師の迅速且つ的確な判断に寄与することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、マーキングユニットMUを内視鏡本体2に装着し、観察装置を内視鏡装置3に内蔵させたことにより、上記と同様の作用効果を内視鏡手術環境において実現することができる。
【0065】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る内視鏡診断システムの構成を示す図である。図10に示す本実施の形態の内視鏡診断システムの構成は、図1に示す実施の形態1の内視鏡診断システムの構成と類似する。よって、本実施の形態では、実施の形態1で説明したものと同一の又は対応する構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0066】
本実施の形態では、観察装置60は、内視鏡装置3とは別体として形成された筐体を有し、内視鏡装置3に外付けされている。観察装置60は、内視鏡本体2とケーブル24により接続されており、マーカードライバー32、画像処理部34、記憶装置35、映像信号受信部61及びCPU62を有する。
【0067】
映像信号受信部61は、内視鏡映像信号の取得部として外部から映像信号を取り込み可能な信号端子を備えており、内視鏡装置3から内視鏡映像信号を受信することができる。信号端子は、例えば、BNC端子、S端子、AV端子、D端子、DV端子、SCART端子、RGB端子、又はHD−MI端子等である。また、映像信号受信部61は、アンプ回路を備えており、受信された内視鏡映像信号を増幅し、増幅後の内視鏡映像信号をモニター64及び画像処理部34に出力する。この結果として、内視鏡映像をモニター64の画面上に表示させることができる。
【0068】
また、画像処理部34は、患部情報画像信号をモニター64に出力する。
【0069】
よって、内視鏡映像に患部情報が重畳された合成映像を、モニター64の画面上に表示することができる。なお、これとは別に、モニター8の画面上に内視鏡映像をそのまま表示させることができる。
【0070】
CPU62は、観察装置60内の上記各部の動作を制御する制御部である。CPU62の制御の実行及び停止、並びに観察装置60への各種情報の入力等は、入力装置63(例えばキーボード又はマウス等)を操作することによって行うことができる。
【0071】
本実施の形態では、映像信号受信部61と画像処理部34との組合せが、表示処理部を構成する。
【0072】
このように、観察装置60と内視鏡装置3とを併用することによって、実施の形態1で述べたものと同様の作用効果を実現することができる。なお、本実施の形態においては、観察装置60を、内視鏡装置3とは別体にしているので、観察装置60を必要としない内視鏡診断システムが必要とされる場合は、比較的容易にそのようなシステムを製造することができる。この場合、内視鏡本体2の製造段階でマーキングユニットMUを設けないようにすればコスト低減に有利である。
【0073】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3に係る内視鏡診断システムの構成を示す図である。図11に示す本実施の形態の内視鏡診断システムの構成は、図10に示す実施の形態2の内視鏡診断システムの構成と類似する。よって、本実施の形態では、実施の形態1、2で説明したものと同一の又は対応する構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、実施の形態1、2との相違点を中心に説明する。
【0074】
本実施の形態では、図12に示すように、マーキングユニットMUが、内視鏡本体2の導入部21に装着されておらず、チャンネルCHを介して体腔に導入可能に形成されたユニット本体を有し、ケーブル71により観察装置60に接続されている。
【0075】
したがって、マーキングユニットMUを、内視鏡本体2のチャンネルCHを介して体腔に導入すれば、体腔内の患部又は患部付近にマーキングを施すことができる。
【0076】
本実施の形態においては、観察装置60が内視鏡装置3及び内視鏡本体2とは独立しているため、観察装置60を準備して、既存の内視鏡装置及び内視鏡本体に組み合わせることで、内視鏡診断システムを構成することができる。
【0077】
なお、観察装置60は、実施の形態1のように内視鏡装置3に内蔵されていても良い。ここで、マーカードライバー32及びCPU62の組合せが、内視鏡装置3とは別体を成すように配置されていても良い。その場合、マーキングユニットMU、マーカードライバー32及びCPU62から構成されるマーキング装置を、内視鏡診断システム1のオプションユニットとして提供することができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明した。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 内視鏡診断システム
2 内視鏡本体
3 内視鏡装置
4 ベースユニット
5、6、63 入力装置
7、8、64 モニター
10 光学プローブ
31 照明光源
32 マーカードライバー
33 映像処理部
34 画像処理部
35 記憶装置
36、62 CPU
51 APCアプリケーター素子
61 映像信号受信部
CA カメラ
CH チャンネル
LG ライトガイド
MU マーキングユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体腔内の患部にマーキングを施すマーキング装置と、
前記患部の映像を観察のために表示する観察装置と、を有し、
前記マーキング装置は、
前記患部についての情報である患部情報に、固有のマークを割り当てて、前記患部情報と前記固有のマークとが対応付けられたデータベースを記憶する記憶装置と、
前記体腔に導入可能なマーキングユニットと、
前記固有のマークを前記患部又は患部付近にマーキングするよう前記マーキングユニットを駆動する駆動部と、を有し、
前記観察装置は、
前記患部の映像信号を取得する取得部と、
前記患部又は患部付近にマーキングされた前記固有のマークを、取得された前記映像信号を用いて検出する検出部と、
前記データベースから前記患部情報を、検出された前記固有のマークに基づいて抽出する抽出部と、
取得された前記映像信号に基づく映像と共に、抽出された前記患部情報を、前記画面上に表示させる表示処理部と、を有する、
観察システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記患部についての過去の検査又は処置に関する情報を含む前記患部情報に基づいてマークのパターンを生成することにより、前記患部情報に前記固有のマークを割り当てる、
請求項1に記載の観察システム。
【請求項3】
前記表示処理部は、複数の患部又は患部付近にそれぞれマーキングされた複数の固有のマークを前記画面上に表示するとき、いずれかの固有のマークに対応する患部情報を選択的に表示させる、
請求項1又は2に記載の観察システム。
【請求項4】
前記表示処理部は、複数の患部又は患部付近にそれぞれマーキングされた複数の固有のマークと前記複数の固有のマークにそれぞれ対応する患部情報とを、各固有のマークと各患部情報との対応関係が識別可能な態様で、前記画面上に表示させる、
請求項1又は2に記載の観察システム。
【請求項5】
患者の体腔内の患部についての情報である患部情報に、固有のマークを割り当てて、前記患部情報と前記固有のマークとが対応付けられたデータベースを記憶する記憶装置と、
前記体腔に導入可能なマーキングユニットと、
前記固有のマークを前記患部又は患部付近にマーキングするよう前記マーキングユニットを駆動する駆動部と、
を有するマーキング装置。
【請求項6】
前記マーキングユニットは、内視鏡本体とは別体として形成され、前記内視鏡本体のチャンネルを介して前記体腔に導入される、
請求項5に記載のマーキング装置。
【請求項7】
患者の体腔内の患部の映像信号を取得する取得部と、
前記患部又は患部付近にマーキングされたマークを、取得された前記映像信号を用いて検出する検出部と、
前記患部についての情報である患部情報と前記患部情報に割り当てられた固有のマークとが対応付けられたデータベースから、前記患部情報を、検出された前記マークに基づいて抽出する抽出部と、
取得された前記映像信号に基づく映像と共に、抽出された前記患部情報を、前記画面上に表示させる表示処理部と、
を有する観察装置。
【請求項8】
内視鏡装置に外付けされ、
前記取得部は、前記内視鏡装置から出力された前記映像信号を受信する、
請求項7に記載の観察装置。
【請求項9】
請求項5に記載のマーキング装置と、
前記体腔に導入可能に形成され、前記患部を撮像する撮像素子を有する内視鏡本体と、
撮像された前記患部の映像信号を処理する内視鏡装置と、を有し、
前記マーキング装置の前記マーキングユニットは、前記内視鏡本体に装着されている、
内視鏡診断システム。
【請求項10】
請求項7に記載の観察装置と、
前記体腔に挿入可能に形成され、前記患部を撮像する撮像素子を有する内視鏡本体と、
前記観察装置を内蔵し、撮像された前記患部の映像信号を処理する内視鏡装置と、
を有する内視鏡診断システム。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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