観測装置
【課題】海底泥中、海水中などの酸素量の二次元的な分布状況の時間変動を観測できる観測措置を提供する。
【解決手段】本発明の観測装置100は、耐圧窓部120が設けられ耐圧容器蓋体部111によって密閉可能な耐圧容器本体部110と、酸素消光材料を含み前記耐圧窓部に配されるセンサホイル200と、耐圧容器本体部に設けられ前記センサホイル222を照射する励起光源(210、211)と、センサホイル200を撮影する撮像装置222と、からなることを特徴とする。
【解決手段】本発明の観測装置100は、耐圧窓部120が設けられ耐圧容器蓋体部111によって密閉可能な耐圧容器本体部110と、酸素消光材料を含み前記耐圧窓部に配されるセンサホイル200と、耐圧容器本体部に設けられ前記センサホイル222を照射する励起光源(210、211)と、センサホイル200を撮影する撮像装置222と、からなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底における底泥−底層水境界の酸素濃度分布の時間変動を可視化することにより観測する観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底における健全な生態系の維持において、海底の底泥表面における溶存酸素量は極めて重要な役割を果たしている。底泥表面の溶存酸素量の調査のためには、例えば、現場の海底にベルジングチャンバーという酸素電極付きの酸素濃度測定室を備えた容器を降ろし、現場で酸素の減少量を測定する方法が用いられている。
【0003】
また、特許文献1(特開2007−120992号公報)には海底酸素量測定装置であって、架設フレームに立設された複数の支柱の上端に透明円板を設け、透明円板が円筒体の上面となって酸素濃度測定室を形成し、透明円板に、酸素濃度測定室内の溶存酸素量測定用の光学式溶存酸素計と、室内攪拌用の攪拌装置とを配置されたものが開示されている。
【特許文献1】特開2007−120992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のものは、海底泥中、海水中の酸素量分布の時間的な変化を捉えることはできない、という問題があった。また、電極などでは海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況を観測することもできない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、耐圧窓部が設けられ耐圧容器蓋体部によって密閉可能な耐圧容器本体部と、酸素消光材料を含み前記耐圧窓部に配されるセンサホイルと、前記耐圧容器本体部に設けられ前記センサホイルを照射する励起光源と、前記センサホイルを撮影する撮像装置と、からなることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の観測装置において、前記耐圧容器本体部の外周にスイッチが設けられ、前記スイッチによって観測が起動されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の観測装置において、前記耐圧容器本体部の内部に前記励起光源と前記撮像装置とを制御する制御回路が設けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の観測装置において、前記耐圧容器本体部の内部に設けられると共に、前記制御回路への電源供給のオンオフを行うメインスイッチを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の観測装置によれば、海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況の時間的な変動について観測することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る観測装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る観測装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る観測装置の耐圧容器内の構成の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る観測装置のブロック構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における処理のフローチャートを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る観測装置の観測ポイントへの設置ステップを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る観測装置による底泥−底層水境界の酸素濃度分布の観測例を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る観測装置の側面図であり、図2は本発明の実施の形態に係る観測装置の正面図であり、図3は本発明の実施の形態に係る観測装置の耐圧容器内の構成の概略を示す図である。図1乃至図3において、100は観測装置、110は耐圧容器本体部、111は耐圧容器蓋体部、112、112’は螺子体、113はOリング、114は取っ手部、115は光スイッチ取付部材、120は耐圧窓部、121は耐圧ガラス、130は脚部取付部材、131は第1脚部、132は第2脚部、140は脚部取付部材、141は第3脚部、142は第4脚部、150は光スイッチ、152はピン、160は水中コネクタ、161はケーブル、163は環状弾性体、200はセンサホイル、210、211は励起光源、220はフィルタ、221はレンズ部、222は撮像装置、231は制御回路基板、232はメインスイッチ、240は電源部をそれぞれ示している。
【0012】
以下、本発明の観測装置100を、潜水艇を用いて1000m〜2000m程度の深海における底泥−底層水境界にセットし、酸素量分布の二次元的な分布状況を時間の変動と共に観測することを基本的には想定しつつ説明することとするが、本発明の観測装置100は、湖沼、河川等より広範に用いることができるものである。また、本発明の観測装置100は、海、湖沼、河川等の底泥−底層水境界に限らず、任意の場所における酸素分布量の調査に用いることができる。
【0013】
観測装置100は、ステンレス製の円柱状の耐圧容器本体部110の両端部に耐圧容器蓋体部111と耐圧窓部120とによって、内部に密閉された空間を形成するようになっている。耐圧容器蓋体部111は取り外し可能に構成されるものであり、防水のためのOリング113が耐圧容器本体部110と耐圧容器蓋体部111との間に設けられ、螺子体112、112’によって、耐圧容器本体部110と耐圧容器蓋体部111とを固着するようになっている。
【0014】
本発明の観測装置100による観測においては、耐圧容器本体部110から耐圧容器蓋体部111をはずした上で、耐圧容器本体部110の内部空間に観測のための構成をセットし、次に観測装置100を水中の観測ポイントに配置し観測を行い、観測終了後、観測装置100を水中から引き上げて、耐圧容器蓋体部111を取り外し、内部の構成を取り
出し、データ等を取得するようにする。
【0015】
耐圧容器本体部110上部に設けられている取っ手部114は、観測装置100を所望の観測ポイントにセットするときなどのハンドリグ性を向上させるために設けられている。また、耐圧容器本体部110の両側部には、第1脚部131及び第2脚部132が設けられている脚部取付部材130、第3脚部141及び第4脚部142が設けられている脚部取付部材140が配されている。これら第1脚部131、第2脚部132、第3脚部141、第4脚部142が設けられているために、観測装置100を深海における底泥にセットする際、底泥に観測装置100が没してしまうことがなく、観測装置100が底泥−底層水境界付近で留まり、底泥−底層水境界の二次元酸素分布量の時間変動の観測が可能となる。
【0016】
観測装置100の耐圧容器本体部110の一方端に装着される耐圧窓部120には耐圧ガラス121が配されており、耐圧容器本体部110内部から耐圧容器本体部110外部の様子を観察できるようになっている。観測装置100の外部における耐圧窓部120には、センサホイル200が設けられている。本発明の観測装置100においては、このセンサホイル200によって、酸素分布量を可視化し、これを耐圧容器本体部110内部にセットされる撮像装置222によって、適当な時間間隔毎に撮影するようにしている。
【0017】
センサホイル200は、PETなどの透明樹脂フィルム上に、酸素消光材料の薄膜を形成し、さらにその上に黒色シリコン樹脂を塗膜した構成となっている。ここで、酸素消光材料は励起光によって発光する色素と酸素透過性を有するバインダとを含むものである。また、黒色シリコン樹脂は泥や海水中に溶在している酸素を透過する。センサホイル200は、センサホイル200の透明樹脂フィルム側を耐圧窓部120を完全に覆うように添着し、黒色シリコン樹脂側が測定対象である泥や海水と触れるようにされている。
【0018】
酸素消光材料に含有されている色素としては、白金ポルフィリンなどの金属ポルフィリンやルテニウム錯体などの遷移金属錯体などが使用されている。これらの色素に励起光を照射すると、色素分子は励起状態に遷移し、励起状態の色素分子(励起分子)は、基底状態に戻る際に励起光より長い波長のルミネセンス光(蛍光、燐光)を発する。しかし、励起分子の周辺に酸素分子が存在すると、励起分子は酸素分子にエネルギを奪われ、酸素分子と励起分子との衝突確率に比例して消光現象が生じる。すなわち、色素の発光強度は、色素周辺の雰囲気の酸素濃度によって増減する。本発明の観測装置100では、この発光強度を例えば撮像装置によって撮影し、色素周辺の酸素濃度を測定することができる。
【0019】
実施形態においては、センサホイル200は、厚さ100μmのPETフィルム上に、PtOEP(白金ポルフィリン)とポリスチレンペレットを溶かしたトルエン溶液を滴下し、薄膜を形成し、さらにその上に、黒色シリコン樹脂をナイフコートすることによって作製した。
【0020】
なお、酸素消光材料に含有する色素としては、励起光により蛍光、燐光等を発光し、酸素消光性を示すものであれば特に制限されるものではない。例えば、白金オクタエチルポルフィリン、白金テトラペンタフルオロフェニルポルフィリンなどの白金ポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体、フェナンスロリン・ルテニウム・クロライドなどの遷移金属錯体、ピレン、ペリレンなどの多環式芳香族化合物及びその誘導体を使用することができる。特に発光寿命、発光強度、熱的安定性の点から、白金テトラペンタフルオロフェニルポルフィリン又はフェナンスロリン・ルテニウム・クロライドが好ましい。
【0021】
光スイッチ150は、観測装置100の実観測をスタートするときのトリガーとして用いられ、耐圧容器本体部110外部に光スイッチ取付部材115によって取り付けられて
いる。光スイッチ150は、光スイッチ150本体部に挿入されているピン152を光スイッチ150本体部から引き抜くことがトリガーとなるように構成されるものである。また、本発明の観測装置100を観測ポイントにセットするまでに、光スイッチ150本体部からピン152が脱落しないように環状弾性体163の弾性力によって、ピン152が光スイッチ150本体部側に挿入された状態を維持することができるようになっている。
【0022】
なお、スイッチのトリガーには発光ダイオードなどの発光素子とフォトトランジスタなどの受光素子を配し、ピンが引き抜かれることで、受光素子に光があたり、制御回路をスタートさせる方式の他に、ピンに磁石を取り付け、ピンを抜いた時に磁気スイッチがオンになるような方式やSeacon社製のプラグ式スイッチなども使用することができる。
【0023】
観測ポイントに観測装置100がセットされると、潜水作業員による操作、潜水艇のマニピュレータからの操作によって、環状弾性体163が取り外され、光スイッチ150本体部からピン152から引き抜かれる。これによって、観測装置100の耐圧容器本体部110内に収められた制御回路で観測のためのシーケンスが開始されるようになっている。
【0024】
観測装置100の耐圧容器本体部110内部の空間は限られており、撮像装置222や制御回路などのための電源部240を設けるスペースは限られている。したがって、観測のために用いることができる電源容量は限られたものとなるが、本発明の観測装置100においては、観測装置100が観測ポイントにセットされた後に、光スイッチ150によるトリガーで観測を開始するようになっているので、限られた電源容量を有効に観測のために用いることができるようになっている。
【0025】
光スイッチ150にはケーブル161が接続されており、当該ケーブル161のもう一端には水中コネクタ160が接続されており、この水中コネクタ160が耐圧容器蓋体部111側の水中コネクタに嵌合することによって、光スイッチ150と耐圧容器本体部110内に収容されている制御回路などとの電気接続が確保される。
【0026】
次に、主に図3を参照しつつ、耐圧容器本体部110内部に収容されている制御回路や撮像装置などの構成について説明する。耐圧窓部120の耐圧ガラス121は、無色透明の耐高圧性を有するガラスであり、耐圧容器本体部110内部から耐圧ガラス121に取り付けられているセンサホイル200を観察することできるようになっている。励起光源210、211は、耐圧ガラス121に取り付けられているセンサホイル200に励起光を照射するための光源である。この励起光源210、211としては、例えば、酸素消光材料に白金オクタエチルポリオレフィンを用いる材料、日亜化学社製紫外線LED、型番NCCU001Eなど発光波長の中心が380nm付近に来るものを用いることができる。励起光源210、211により照射されたセンサホイル200に含有される酸素消光材料は励起状態(励起分子)に遷移し、続いて、基底状態に戻る際に励起光より長い波長のルミネセンス光(蛍光、燐光)を発する。しかし、励起分子の周辺に酸素分子が存在すると、励起分子は酸素分子にエネルギを奪われ、酸素分子と励起分子との衝突確率に比例して消光現象が生じる。このような現象により、センサホイル200の平面の広がりにおいて酸素が存在する箇所としない箇所に応じてルミネセンス光(蛍光、燐光)の強弱が生じることとなる。この様子を撮像装置222で撮影することによって、海底泥中、海水中の酸素量分布の二次元的な分布状況を観測することが可能となる。また、この撮像装置222によって、例えば一定間隔毎に撮影を繰り返すことで、海底泥中、海水中の酸素量分布の時間的な変化を観測することが可能となる。
【0027】
フィルタ220は酸素消光材料からのルミネセンス光を透過するものであり、撮像装置222のレンズ部221の先端に装着されている。本実施形態においては、撮像装置22
2としてはデジタル一眼レフカメラ(Canon社製、型番EOS30D)を用い、レンズ部221としては、マクロレンズ(Canon社製、型番EF50mmF2.5)を用い、フィルタ220としては赤色フィルタを用いた。
【0028】
本発明の観測装置100はセンサホイル200からのルミネセンス光を撮影する構成となっているために、上記ルミネセンス光以外の光が進入しないようにする。このため、例えば、センサホイル200と耐圧窓120の面積が一致しておらず、センサホイル200と耐圧窓120の広がりの差分の箇所から光が進入してくる可能性があるような場合には、その箇所には黒色テープでマスクを施し、耐圧容器内に外部の光が入らないようにする。耐圧容器本体部110内や耐圧容器蓋体部111を含む耐圧容器内部は黒色に塗装し、内面反射を防ぐようにするとよい。また、撮像装置222にインジケーターランプなどが設けられているようなときには、このようなランプには、黒色テープでマスクを施しておくとよい。
【0029】
制御回路基板231は、励起光源210、211や撮像装置222などの構成を制御するための制御回路などが搭載された基板である。本発明の観測装置100においては、光スイッチ150によるトリガーで観測を開始するようになっているが、この光スイッチ150自体を起動するためのスイッチがメインスイッチ232である。このメインスイッチ232は、例えば制御回路基板231に設けておくことができる。また、電源部240は、撮像装置222や制御回路基板231に設けられている制御回路に電源を供給するためのバッテリーである。
【0030】
次に、観測装置100の制御回路についてより詳しく説明する。図4は本発明の実施の形態に係る観測装置のブロック構成を示す図である。図4において、150は光スイッチ、210、211は励起光源、222は撮像装置、232はメインスイッチ、240は電源部、250は制御回路部、251は電源監視部、252は計時部、260は記憶部、261は観測シーケンス記憶部(撮影間隔、露光時間など)、262は撮影画像データ記憶部をそれぞれ示している。
【0031】
電源部240は制御回路部250と撮像装置222に電源を供給するようになっており、この電源部240は電源監視部251によって、例えばその電圧値などが監視されるようになっている。電源監視部251による電源部240の監視結果は制御回路部250に入力されるようになっている。
【0032】
メインスイッチ232は、そのオンオフによって制御回路部250に電力を供給したり、遮断したりすることを可能とするものである。
【0033】
制御回路部250は、例えばマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータと他の構成を接続するインターフェイス手段、観測シーケンスを指定するための入力装置などで構成されており、記憶部260に記述されているプログラムによって動作するようになっている。
【0034】
光スイッチ150は、図4には図示されていない発光素子と受光素子とから構成されており、発光素子と受光素子との間の光路が遮られているときにはオフ状態をとるようになっており、
受光素子が発光素子からの光を受光しているときにはオン状態をとるようになっている。このような光スイッチ150の動作は、制御回路250によって制御することができる。
【0035】
励起光源210、211は、制御回路250によって制御されて、明滅するものである。なお、必要に応じて、励起光源210、211の電力を電源部240から供給するよう
にしてもよい。計時部252は、観測装置100における観測シーケンスを管理するために基本となる時間をカウントしておくためのものである。
【0036】
記憶部260は、制御回路部250を動作させるためのプログラムを記憶したり、制御回路部250のワークエリアとして機能したりする。また、特に本発明においては、記憶部260には、観測シーケンス(撮影間隔、露光時間、撮影回数、励起光源明滅タイミングなど)記憶部261のエリアと、撮影画像データ記憶部262のエリアとを有している。
【0037】
観測シーケンス記憶部261には、観測装置100における観測シーケンスが記憶される。このような観測シーケンスとしては、例えば、励起光源210、211をどのタイミングで明滅させ、そしてそれに合わせて、撮像装置222でどのように撮影を行うか(露光時間をどうするか、絞り値をどのように設定して撮影を行うか)、一度に何回の撮影を行うか、次の撮影までの待ち時間をどれだけとするか、一連の観測シーケンスにおいて、全部で何回の撮影を行うか、などが記述されている。最も単純な観測シーケンスとしては、撮像装置222の撮影間隔、露光時間と、それに合わせた励起光源210、211の明滅タイミングからなる。観測シーケンス記憶部261に記憶される観測シーケンスは必要に応じて書き換えたり、あるいは、制御回路部250の入力装置の操作によって変更したりできるようになっている。
【0038】
また、撮影画像データ記憶部262には、撮像装置222で記憶された撮影画像データが記憶される。この撮影画像データ記憶部262に記憶されている撮影画像データは、適当なインターフェイス手段により外部に取り出すことができるようになっている。このため、海底での観測終了後に、観測装置100から撮影画像データを取得することができるようになっている。
【0039】
なお、撮像装置222に撮影画像データを記憶する適当な記憶装置が設けられている場合には、記憶部260に必ずしも撮影画像データ記憶部262を設ける必要はない。
【0040】
次に、観測装置100の設置工程や制御回路250における処理フローについて説明する。図5は本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における処理のフローチャートを示す図であり、図6は本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図であり、図7は本発明の実施の形態に係る観測装置の観測ポイントへの設置ステップを示す図である。
【0041】
本発明の観測装置100による観測においては、耐圧容器本体部110から耐圧容器蓋体部111を取り外し、制御回路基板231等を取り出し、撮影画像データ記憶部262の容量を十分に確保し、電源部240を満充電として、メインスイッチ232をオンとする。次に、制御回路部の観測シーケンス記憶部261用の、例えばBCDスイッチを操作し、全撮影回数を設定する。制御回路は外部のコンピュータとのインターフェイス(例えば、RS232C、USARTやUSB)を内蔵させ、コンピュータのプログラムによって、観測シーケンス記憶部261に撮影回数などの情報を入力することもできる。最後に耐圧容器蓋体部111を閉め、光スイッチ150、水中コネクタ160をセットする。
【0042】
観測装置100を、このような状態とした上で、潜水艇や潜水作業員によって観測装置100を海底面のポイントにセットする。その様子を示しているのが図7(A)である。観測装置100には、第1脚部131、第2脚部132、第3脚部141、第4脚部142が設けられているために、観測装置100を深海における底泥にセットする際、底泥に観測装置100が没してしまうことがなく、観測装置100が底泥−底層水境界付近で留まり、図7(B)に示すような状態となる。
【0043】
観測装置100がセットされ、潜水作業員による操作、図7(B)に示すような状態となり、潜水艇のマニピュレータからの操作によって、環状弾性体163が取り外され、光スイッチ150本体部からピン152から引き抜かれる。これによって、観測装置100の耐圧容器本体部110内に収められた制御回路で観測のためのシーケンスが開始されるようになっている。この状態を示すのが、図7(C)のステップである。
【0044】
ここで、光スイッチ150の構造、動作についてより詳しく説明する。図8は本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図であり、図9は本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図である。図8及び図9において、150は光スイッチ、152はピン、153は遮光部、154は操作部、155、155’はフック、156は発光素子、157は受光素子、158、158’は取付調整穴、160は水中コネクタ、161はケーブルをそれぞれ示している。
【0045】
光スイッチ150は、観測装置100の実観測をスタートするときのトリガーとして用いられるスイッチであり、発光素子156及び受光素子157が内蔵される光スイッチ150本体部と、光スイッチ150本体部に挿入されているピン152とからなっている。
【0046】
ピン152は、潜水作業員や潜水艇のマニピュレータが光スイッチ150を扱うときのハンドルの役目をする操作部154と、この操作部154に連なるようにして設けられている遮光部153とから構成されており、全体として図示するようにT字形状をなしている。ピン152の遮光部153は、光スイッチ150本体部に装着されているときに、発光素子156と受光素子157との間の光路を遮る。潜水作業員や潜水艇のマニピュレータがピン152を光スイッチ150本体部から引き抜くことにより、遮光部153が取り外され、受光素子157が発光素子156が発する光を受光し、光スイッチ150はオン状態となる。
【0047】
取付調整穴158、158’は発光素子156と受光素子157とを光スイッチ150本体部に取り付けるため、及び、発光素子156と受光素子157とを取り付けるとき、発光素子156、受光素子157の取付位置を調整するために利用される穴である。これらの取付調整穴158、158’からは、発光素子156、受光素子157の取付後、エポキシ樹脂等が充填されて、素子の封入が行われる。
【0048】
フック155、155’は、光スイッチ150本体部からピン152が脱落しないように環状弾性体163を掛け回しておくときに利用される突状体である。光スイッチ150は、フック155、155’に掛け回された環状弾性体163の弾性力によって、ピン152が光スイッチ150本体部側に挿入された状態を維持する。この状態が図8に示す状態である。
【0049】
これに対して、観測装置100が観測ポイントにセットされると、潜水作業員による操作、潜水艇のマニピュレータからの操作によって、環状弾性体163が取り外され、光スイッチ150本体部からピン152から引き抜かれる。これによって、観測装置100において、観測のための観測シーケンスが開始されるようになっているが、この状態を示しているが図9や図7(C)である。
【0050】
次に、以上のように観測装置100が観測ポイントにセットされ、光スイッチ150でトリガーされると、制御回路250がどのような処理を行うかについてフローチャートで説明する。なお、図5及び図6に示すフロー処理は観測装置100の1つの制御形態であり、その他の制御形態を排するものではない。
【0051】
図5のステップS100においては、メインスイッチ232がオンとされ、制御回路250の処理が開始される。この動作は、観測装置100を海底にセットする前の陸上で行われる。次に、耐圧容器蓋体部111が装着され、光スイッチ150本体部にピン152が挿入されて、水中コネクタ160がセットされる。そして、図7(A)、図7(B)に示されるように観測装置100が海底の観測ポイントにセットされる。
【0052】
ステップS101では、光スイッチ150がオンされたか否かが判定される。ステップS101における判定の結果がYESであるときにはステップS102に進み、ステップS101における判定の結果がNOであるときにはステップS101をループする。
【0053】
光スイッチ150がオンとなり、ステップS102に進むと、観測シーケンスを管理するために計時部252の計時処理が開始される。
【0054】
ステップS103では、観測シーケンスにて設定されている全ての撮影回数分の撮影が終了したか否かが判定される。ステップS103における判定の結果がYESであるときには、ステップS108に進み処理を終了する。ステップS103における判定の結果がNOであるときには、ステップS104に進む。
【0055】
続いてステップS104では、電源監視部251からの信号が参照され、電源部240の電圧が所定電圧以上であるか否かが判定される。ステップS104の判定の結果がYESであるとき、すなわち電源部240の電圧が所定値以上であり、電源部240に撮像装置220を駆動するために十分な電力が確保されているときにはステップS105に進む。
【0056】
これに対して、ステップS104の判定の結果がNOであるとき、すなわち電源部240の電圧が所定値未満であり、電源部240に撮像装置220を駆動するために十分な電力が確保できないときにはステップS108に進み、制御回路250での処理を終了する。
【0057】
ステップS105では、計時部252が参照され、撮影シーケンス記憶部261に設定されている所定の時間が経過したか否かが判定される。ステップS105における判定の結果がNOであるときにはステップS105をループし、所定時間が経過し、判定の結果がYESであるときにはループを抜けて、ステップS106に進む。
【0058】
ステップS106では、撮影処理のサブルーチンが実行される。この撮影処理サブルーチンからリターンすると、ステップS107に進むようになっている。
【0059】
ステップS107においては、観測シーケンスにて設定されている撮影回数をカウントするためのカウンタを1ディクリメントする。引き続いて、ステップS103に進む。
【0060】
本フローのように撮影処理のサブルーチンが設定した回数実行されるので、本発明の観測装置100では、海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況の時間的な変化を観測することができることとなる。
【0061】
次に図6を参照して撮影処理サブルーチンについて説明する。図6においてステップS200で撮影処理のサブルーチンが開始されると、続いて、ステップS201に進み、励起光源210、211がオンされて、センサホイル200における酸素消光材料の色素を励起光によって発光させる。
【0062】
続いて、ステップS202では、撮像装置222のシャッターを開放して露光を開始す
る。ステップS203では、撮影シーケンス記憶部261に記憶されている所定の露光時間が経過したか否かが判定される。ステップS203の判定結果がNOであるときにはステップS203をループし、判定結果がYESであるときにはステップS204に進む。
【0063】
ステップS204では、撮像装置222のシャッターを閉じて露光を終了する。続く、ステップS205では、励起光源210、211がオフされる。そして、ステップS206では、撮影画像データ記憶部260に撮影画像データを記憶する処理を行う。次のステップS207でメインルーチンへリターンする。
【0064】
以上のように構成される観測装置100によって取得される撮影画像データ例を示す。図10は本発明の実施の形態に係る観測装置による底泥−底層水境界の酸素濃度分布の観測例を示す図である。図10の観測例は、撮影画像データ記憶部260に記憶された撮影画像データに、酸素の分布量が把握しやすいように画像加工を施したものである。
【0065】
以上のように本発明の観測装置100によれば、海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況の時間的な変動について観測することができるようになる。
【0066】
なお、図5におけるステップS106の撮影処理サブルーチンについては種々のルーチンが考えられる。そこで、次に、図11を参照しつつ、撮影処理サブルーチンに係る他の実施形態について説明する。図11は本発明の他の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。本実施形態における撮影処理サブルーチンでは、1回の撮影処理サブルーチンで、数回の撮影画像データを取得するように設定したものである。
【0067】
図11において、ステップS300で撮影処理のサブルーチンが開始されると、続いて、ステップS301に進み、撮影シーケンス記憶部261の撮影シーケンスが読み込まれて、1回撮影時の露光回数が読み込まれる。このように撮影シーケンスには、撮影時1回につき、複数回の露光を行うようにしておいてもよい。撮影時1回につき、複数回の露光を実行すると、後のデータ処理などの段階で、複数回露光の平均値を算出することができ、より酸素濃度画像の精度を向上させることができる。
【0068】
次に、ステップS302では、撮像装置222のシャッターを開放して露光の準備を行う。そして、ステップS303で励起光源210、211がオンされて、センサホイル200における酸素消光材料の色素を励起光によって発光させる。続く、ステップS304では、撮影シーケンス記憶部261に記憶されている所定の露光時間が経過したか否かが判定される。ステップS304の判定結果がNOであるときにはステップS304をループし、判定結果がYESであるときにはステップS305に進む。ステップS305では、で励起光源210、211をオフとし、続くステップS306で、撮影画像データ記憶部260に撮影画像データを記憶する処理を行う。
【0069】
続いて、ステップS307では、撮影シーケンスに設定された露光回数に達したか否かが判定される。ステップS307の判定結果がNOであるときにはステップS303に進み、再び露光を行う。一方、ステップS307の判定結果がYESであるときにはステップS308に進み、撮像装置222のシャッターを閉じて、次のステップS309でメインルーチンへリターンする。
【0070】
このような本発明の他の実施形態によれば、1回の撮影時に、複数回露光して撮影画像データを得るものであるので、後の撮影画像データの画像処理において、画像を積算して平均値をとることで、酸素濃度画像の精度を向上させることができる。
【0071】
また、本発明の他の実施形態においては、撮像装置222のシャッターを開いてから励起光源210、211がオンとなり、センサホイル200における酸素消光材料の色素の励起を行い、露光時間に達したと判定された後に、励起光源210、211をオフとして励起を終え、露光1回分の撮像画像データを取得するような動作が実行される。励起光源210、211によって、励起時間を制御する方が、シャッターによって励起時間を制御するよりも、露光の時間制御を正確に制御することができるため、本実施形態によれば、より正確なデータを取得することが可能となる。なお、撮影は光が当たらない状態で行うこととなるので、撮像装置222のシャッターを開放してから励起光源210、211で励起を行うようにしても支障はない。
【符号の説明】
【0072】
100・・・観測装置、110・・・耐圧容器本体部、111・・・耐圧容器蓋体部、112、112’・・・螺子体、113・・・Oリング、114・・・取っ手部、115・・・光スイッチ取付部材、120・・・耐圧窓部、121・・・耐圧ガラス、130・・・脚部取付部材、131・・・第1脚部、132・・・第2脚部、140・・・脚部取付部材、141・・・第3脚部、142・・・第4脚部、150・・・光スイッチ、152・・・ピン、153・・・遮光部、154・・・操作部、155、155’・・・フック、156・・・発光素子、157・・・受光素子、158、158’・・・取付調整穴、160・・・水中コネクタ、161・・・ケーブル、163・・・環状弾性体、200・・・センサホイル、210、211・・・励起光源、220・・・フィルタ、221・・・レンズ部、222・・・撮像装置、231・・・制御回路基板、232・・・メインスイッチ、240・・・電源部、250・・・制御回路部、251・・・電源監視部、252・・・計時部、260・・・記憶部、261・・・観測シーケンス記憶部(撮影間隔、露光時間、励起光源明滅タイミング等記憶部)、262・・・撮影画像データ記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底における底泥−底層水境界の酸素濃度分布の時間変動を可視化することにより観測する観測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底における健全な生態系の維持において、海底の底泥表面における溶存酸素量は極めて重要な役割を果たしている。底泥表面の溶存酸素量の調査のためには、例えば、現場の海底にベルジングチャンバーという酸素電極付きの酸素濃度測定室を備えた容器を降ろし、現場で酸素の減少量を測定する方法が用いられている。
【0003】
また、特許文献1(特開2007−120992号公報)には海底酸素量測定装置であって、架設フレームに立設された複数の支柱の上端に透明円板を設け、透明円板が円筒体の上面となって酸素濃度測定室を形成し、透明円板に、酸素濃度測定室内の溶存酸素量測定用の光学式溶存酸素計と、室内攪拌用の攪拌装置とを配置されたものが開示されている。
【特許文献1】特開2007−120992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のものは、海底泥中、海水中の酸素量分布の時間的な変化を捉えることはできない、という問題があった。また、電極などでは海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況を観測することもできない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、耐圧窓部が設けられ耐圧容器蓋体部によって密閉可能な耐圧容器本体部と、酸素消光材料を含み前記耐圧窓部に配されるセンサホイルと、前記耐圧容器本体部に設けられ前記センサホイルを照射する励起光源と、前記センサホイルを撮影する撮像装置と、からなることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の観測装置において、前記耐圧容器本体部の外周にスイッチが設けられ、前記スイッチによって観測が起動されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の観測装置において、前記耐圧容器本体部の内部に前記励起光源と前記撮像装置とを制御する制御回路が設けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の観測装置において、前記耐圧容器本体部の内部に設けられると共に、前記制御回路への電源供給のオンオフを行うメインスイッチを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の観測装置によれば、海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況の時間的な変動について観測することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る観測装置の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る観測装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る観測装置の耐圧容器内の構成の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る観測装置のブロック構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における処理のフローチャートを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る観測装置の観測ポイントへの設置ステップを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る観測装置による底泥−底層水境界の酸素濃度分布の観測例を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る観測装置の側面図であり、図2は本発明の実施の形態に係る観測装置の正面図であり、図3は本発明の実施の形態に係る観測装置の耐圧容器内の構成の概略を示す図である。図1乃至図3において、100は観測装置、110は耐圧容器本体部、111は耐圧容器蓋体部、112、112’は螺子体、113はOリング、114は取っ手部、115は光スイッチ取付部材、120は耐圧窓部、121は耐圧ガラス、130は脚部取付部材、131は第1脚部、132は第2脚部、140は脚部取付部材、141は第3脚部、142は第4脚部、150は光スイッチ、152はピン、160は水中コネクタ、161はケーブル、163は環状弾性体、200はセンサホイル、210、211は励起光源、220はフィルタ、221はレンズ部、222は撮像装置、231は制御回路基板、232はメインスイッチ、240は電源部をそれぞれ示している。
【0012】
以下、本発明の観測装置100を、潜水艇を用いて1000m〜2000m程度の深海における底泥−底層水境界にセットし、酸素量分布の二次元的な分布状況を時間の変動と共に観測することを基本的には想定しつつ説明することとするが、本発明の観測装置100は、湖沼、河川等より広範に用いることができるものである。また、本発明の観測装置100は、海、湖沼、河川等の底泥−底層水境界に限らず、任意の場所における酸素分布量の調査に用いることができる。
【0013】
観測装置100は、ステンレス製の円柱状の耐圧容器本体部110の両端部に耐圧容器蓋体部111と耐圧窓部120とによって、内部に密閉された空間を形成するようになっている。耐圧容器蓋体部111は取り外し可能に構成されるものであり、防水のためのOリング113が耐圧容器本体部110と耐圧容器蓋体部111との間に設けられ、螺子体112、112’によって、耐圧容器本体部110と耐圧容器蓋体部111とを固着するようになっている。
【0014】
本発明の観測装置100による観測においては、耐圧容器本体部110から耐圧容器蓋体部111をはずした上で、耐圧容器本体部110の内部空間に観測のための構成をセットし、次に観測装置100を水中の観測ポイントに配置し観測を行い、観測終了後、観測装置100を水中から引き上げて、耐圧容器蓋体部111を取り外し、内部の構成を取り
出し、データ等を取得するようにする。
【0015】
耐圧容器本体部110上部に設けられている取っ手部114は、観測装置100を所望の観測ポイントにセットするときなどのハンドリグ性を向上させるために設けられている。また、耐圧容器本体部110の両側部には、第1脚部131及び第2脚部132が設けられている脚部取付部材130、第3脚部141及び第4脚部142が設けられている脚部取付部材140が配されている。これら第1脚部131、第2脚部132、第3脚部141、第4脚部142が設けられているために、観測装置100を深海における底泥にセットする際、底泥に観測装置100が没してしまうことがなく、観測装置100が底泥−底層水境界付近で留まり、底泥−底層水境界の二次元酸素分布量の時間変動の観測が可能となる。
【0016】
観測装置100の耐圧容器本体部110の一方端に装着される耐圧窓部120には耐圧ガラス121が配されており、耐圧容器本体部110内部から耐圧容器本体部110外部の様子を観察できるようになっている。観測装置100の外部における耐圧窓部120には、センサホイル200が設けられている。本発明の観測装置100においては、このセンサホイル200によって、酸素分布量を可視化し、これを耐圧容器本体部110内部にセットされる撮像装置222によって、適当な時間間隔毎に撮影するようにしている。
【0017】
センサホイル200は、PETなどの透明樹脂フィルム上に、酸素消光材料の薄膜を形成し、さらにその上に黒色シリコン樹脂を塗膜した構成となっている。ここで、酸素消光材料は励起光によって発光する色素と酸素透過性を有するバインダとを含むものである。また、黒色シリコン樹脂は泥や海水中に溶在している酸素を透過する。センサホイル200は、センサホイル200の透明樹脂フィルム側を耐圧窓部120を完全に覆うように添着し、黒色シリコン樹脂側が測定対象である泥や海水と触れるようにされている。
【0018】
酸素消光材料に含有されている色素としては、白金ポルフィリンなどの金属ポルフィリンやルテニウム錯体などの遷移金属錯体などが使用されている。これらの色素に励起光を照射すると、色素分子は励起状態に遷移し、励起状態の色素分子(励起分子)は、基底状態に戻る際に励起光より長い波長のルミネセンス光(蛍光、燐光)を発する。しかし、励起分子の周辺に酸素分子が存在すると、励起分子は酸素分子にエネルギを奪われ、酸素分子と励起分子との衝突確率に比例して消光現象が生じる。すなわち、色素の発光強度は、色素周辺の雰囲気の酸素濃度によって増減する。本発明の観測装置100では、この発光強度を例えば撮像装置によって撮影し、色素周辺の酸素濃度を測定することができる。
【0019】
実施形態においては、センサホイル200は、厚さ100μmのPETフィルム上に、PtOEP(白金ポルフィリン)とポリスチレンペレットを溶かしたトルエン溶液を滴下し、薄膜を形成し、さらにその上に、黒色シリコン樹脂をナイフコートすることによって作製した。
【0020】
なお、酸素消光材料に含有する色素としては、励起光により蛍光、燐光等を発光し、酸素消光性を示すものであれば特に制限されるものではない。例えば、白金オクタエチルポルフィリン、白金テトラペンタフルオロフェニルポルフィリンなどの白金ポルフィリン等の金属ポルフィリン錯体、フェナンスロリン・ルテニウム・クロライドなどの遷移金属錯体、ピレン、ペリレンなどの多環式芳香族化合物及びその誘導体を使用することができる。特に発光寿命、発光強度、熱的安定性の点から、白金テトラペンタフルオロフェニルポルフィリン又はフェナンスロリン・ルテニウム・クロライドが好ましい。
【0021】
光スイッチ150は、観測装置100の実観測をスタートするときのトリガーとして用いられ、耐圧容器本体部110外部に光スイッチ取付部材115によって取り付けられて
いる。光スイッチ150は、光スイッチ150本体部に挿入されているピン152を光スイッチ150本体部から引き抜くことがトリガーとなるように構成されるものである。また、本発明の観測装置100を観測ポイントにセットするまでに、光スイッチ150本体部からピン152が脱落しないように環状弾性体163の弾性力によって、ピン152が光スイッチ150本体部側に挿入された状態を維持することができるようになっている。
【0022】
なお、スイッチのトリガーには発光ダイオードなどの発光素子とフォトトランジスタなどの受光素子を配し、ピンが引き抜かれることで、受光素子に光があたり、制御回路をスタートさせる方式の他に、ピンに磁石を取り付け、ピンを抜いた時に磁気スイッチがオンになるような方式やSeacon社製のプラグ式スイッチなども使用することができる。
【0023】
観測ポイントに観測装置100がセットされると、潜水作業員による操作、潜水艇のマニピュレータからの操作によって、環状弾性体163が取り外され、光スイッチ150本体部からピン152から引き抜かれる。これによって、観測装置100の耐圧容器本体部110内に収められた制御回路で観測のためのシーケンスが開始されるようになっている。
【0024】
観測装置100の耐圧容器本体部110内部の空間は限られており、撮像装置222や制御回路などのための電源部240を設けるスペースは限られている。したがって、観測のために用いることができる電源容量は限られたものとなるが、本発明の観測装置100においては、観測装置100が観測ポイントにセットされた後に、光スイッチ150によるトリガーで観測を開始するようになっているので、限られた電源容量を有効に観測のために用いることができるようになっている。
【0025】
光スイッチ150にはケーブル161が接続されており、当該ケーブル161のもう一端には水中コネクタ160が接続されており、この水中コネクタ160が耐圧容器蓋体部111側の水中コネクタに嵌合することによって、光スイッチ150と耐圧容器本体部110内に収容されている制御回路などとの電気接続が確保される。
【0026】
次に、主に図3を参照しつつ、耐圧容器本体部110内部に収容されている制御回路や撮像装置などの構成について説明する。耐圧窓部120の耐圧ガラス121は、無色透明の耐高圧性を有するガラスであり、耐圧容器本体部110内部から耐圧ガラス121に取り付けられているセンサホイル200を観察することできるようになっている。励起光源210、211は、耐圧ガラス121に取り付けられているセンサホイル200に励起光を照射するための光源である。この励起光源210、211としては、例えば、酸素消光材料に白金オクタエチルポリオレフィンを用いる材料、日亜化学社製紫外線LED、型番NCCU001Eなど発光波長の中心が380nm付近に来るものを用いることができる。励起光源210、211により照射されたセンサホイル200に含有される酸素消光材料は励起状態(励起分子)に遷移し、続いて、基底状態に戻る際に励起光より長い波長のルミネセンス光(蛍光、燐光)を発する。しかし、励起分子の周辺に酸素分子が存在すると、励起分子は酸素分子にエネルギを奪われ、酸素分子と励起分子との衝突確率に比例して消光現象が生じる。このような現象により、センサホイル200の平面の広がりにおいて酸素が存在する箇所としない箇所に応じてルミネセンス光(蛍光、燐光)の強弱が生じることとなる。この様子を撮像装置222で撮影することによって、海底泥中、海水中の酸素量分布の二次元的な分布状況を観測することが可能となる。また、この撮像装置222によって、例えば一定間隔毎に撮影を繰り返すことで、海底泥中、海水中の酸素量分布の時間的な変化を観測することが可能となる。
【0027】
フィルタ220は酸素消光材料からのルミネセンス光を透過するものであり、撮像装置222のレンズ部221の先端に装着されている。本実施形態においては、撮像装置22
2としてはデジタル一眼レフカメラ(Canon社製、型番EOS30D)を用い、レンズ部221としては、マクロレンズ(Canon社製、型番EF50mmF2.5)を用い、フィルタ220としては赤色フィルタを用いた。
【0028】
本発明の観測装置100はセンサホイル200からのルミネセンス光を撮影する構成となっているために、上記ルミネセンス光以外の光が進入しないようにする。このため、例えば、センサホイル200と耐圧窓120の面積が一致しておらず、センサホイル200と耐圧窓120の広がりの差分の箇所から光が進入してくる可能性があるような場合には、その箇所には黒色テープでマスクを施し、耐圧容器内に外部の光が入らないようにする。耐圧容器本体部110内や耐圧容器蓋体部111を含む耐圧容器内部は黒色に塗装し、内面反射を防ぐようにするとよい。また、撮像装置222にインジケーターランプなどが設けられているようなときには、このようなランプには、黒色テープでマスクを施しておくとよい。
【0029】
制御回路基板231は、励起光源210、211や撮像装置222などの構成を制御するための制御回路などが搭載された基板である。本発明の観測装置100においては、光スイッチ150によるトリガーで観測を開始するようになっているが、この光スイッチ150自体を起動するためのスイッチがメインスイッチ232である。このメインスイッチ232は、例えば制御回路基板231に設けておくことができる。また、電源部240は、撮像装置222や制御回路基板231に設けられている制御回路に電源を供給するためのバッテリーである。
【0030】
次に、観測装置100の制御回路についてより詳しく説明する。図4は本発明の実施の形態に係る観測装置のブロック構成を示す図である。図4において、150は光スイッチ、210、211は励起光源、222は撮像装置、232はメインスイッチ、240は電源部、250は制御回路部、251は電源監視部、252は計時部、260は記憶部、261は観測シーケンス記憶部(撮影間隔、露光時間など)、262は撮影画像データ記憶部をそれぞれ示している。
【0031】
電源部240は制御回路部250と撮像装置222に電源を供給するようになっており、この電源部240は電源監視部251によって、例えばその電圧値などが監視されるようになっている。電源監視部251による電源部240の監視結果は制御回路部250に入力されるようになっている。
【0032】
メインスイッチ232は、そのオンオフによって制御回路部250に電力を供給したり、遮断したりすることを可能とするものである。
【0033】
制御回路部250は、例えばマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータと他の構成を接続するインターフェイス手段、観測シーケンスを指定するための入力装置などで構成されており、記憶部260に記述されているプログラムによって動作するようになっている。
【0034】
光スイッチ150は、図4には図示されていない発光素子と受光素子とから構成されており、発光素子と受光素子との間の光路が遮られているときにはオフ状態をとるようになっており、
受光素子が発光素子からの光を受光しているときにはオン状態をとるようになっている。このような光スイッチ150の動作は、制御回路250によって制御することができる。
【0035】
励起光源210、211は、制御回路250によって制御されて、明滅するものである。なお、必要に応じて、励起光源210、211の電力を電源部240から供給するよう
にしてもよい。計時部252は、観測装置100における観測シーケンスを管理するために基本となる時間をカウントしておくためのものである。
【0036】
記憶部260は、制御回路部250を動作させるためのプログラムを記憶したり、制御回路部250のワークエリアとして機能したりする。また、特に本発明においては、記憶部260には、観測シーケンス(撮影間隔、露光時間、撮影回数、励起光源明滅タイミングなど)記憶部261のエリアと、撮影画像データ記憶部262のエリアとを有している。
【0037】
観測シーケンス記憶部261には、観測装置100における観測シーケンスが記憶される。このような観測シーケンスとしては、例えば、励起光源210、211をどのタイミングで明滅させ、そしてそれに合わせて、撮像装置222でどのように撮影を行うか(露光時間をどうするか、絞り値をどのように設定して撮影を行うか)、一度に何回の撮影を行うか、次の撮影までの待ち時間をどれだけとするか、一連の観測シーケンスにおいて、全部で何回の撮影を行うか、などが記述されている。最も単純な観測シーケンスとしては、撮像装置222の撮影間隔、露光時間と、それに合わせた励起光源210、211の明滅タイミングからなる。観測シーケンス記憶部261に記憶される観測シーケンスは必要に応じて書き換えたり、あるいは、制御回路部250の入力装置の操作によって変更したりできるようになっている。
【0038】
また、撮影画像データ記憶部262には、撮像装置222で記憶された撮影画像データが記憶される。この撮影画像データ記憶部262に記憶されている撮影画像データは、適当なインターフェイス手段により外部に取り出すことができるようになっている。このため、海底での観測終了後に、観測装置100から撮影画像データを取得することができるようになっている。
【0039】
なお、撮像装置222に撮影画像データを記憶する適当な記憶装置が設けられている場合には、記憶部260に必ずしも撮影画像データ記憶部262を設ける必要はない。
【0040】
次に、観測装置100の設置工程や制御回路250における処理フローについて説明する。図5は本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における処理のフローチャートを示す図であり、図6は本発明の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図であり、図7は本発明の実施の形態に係る観測装置の観測ポイントへの設置ステップを示す図である。
【0041】
本発明の観測装置100による観測においては、耐圧容器本体部110から耐圧容器蓋体部111を取り外し、制御回路基板231等を取り出し、撮影画像データ記憶部262の容量を十分に確保し、電源部240を満充電として、メインスイッチ232をオンとする。次に、制御回路部の観測シーケンス記憶部261用の、例えばBCDスイッチを操作し、全撮影回数を設定する。制御回路は外部のコンピュータとのインターフェイス(例えば、RS232C、USARTやUSB)を内蔵させ、コンピュータのプログラムによって、観測シーケンス記憶部261に撮影回数などの情報を入力することもできる。最後に耐圧容器蓋体部111を閉め、光スイッチ150、水中コネクタ160をセットする。
【0042】
観測装置100を、このような状態とした上で、潜水艇や潜水作業員によって観測装置100を海底面のポイントにセットする。その様子を示しているのが図7(A)である。観測装置100には、第1脚部131、第2脚部132、第3脚部141、第4脚部142が設けられているために、観測装置100を深海における底泥にセットする際、底泥に観測装置100が没してしまうことがなく、観測装置100が底泥−底層水境界付近で留まり、図7(B)に示すような状態となる。
【0043】
観測装置100がセットされ、潜水作業員による操作、図7(B)に示すような状態となり、潜水艇のマニピュレータからの操作によって、環状弾性体163が取り外され、光スイッチ150本体部からピン152から引き抜かれる。これによって、観測装置100の耐圧容器本体部110内に収められた制御回路で観測のためのシーケンスが開始されるようになっている。この状態を示すのが、図7(C)のステップである。
【0044】
ここで、光スイッチ150の構造、動作についてより詳しく説明する。図8は本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図であり、図9は本発明の実施の形態に係る観測装置の光スイッチの構成・利用形態を示す図である。図8及び図9において、150は光スイッチ、152はピン、153は遮光部、154は操作部、155、155’はフック、156は発光素子、157は受光素子、158、158’は取付調整穴、160は水中コネクタ、161はケーブルをそれぞれ示している。
【0045】
光スイッチ150は、観測装置100の実観測をスタートするときのトリガーとして用いられるスイッチであり、発光素子156及び受光素子157が内蔵される光スイッチ150本体部と、光スイッチ150本体部に挿入されているピン152とからなっている。
【0046】
ピン152は、潜水作業員や潜水艇のマニピュレータが光スイッチ150を扱うときのハンドルの役目をする操作部154と、この操作部154に連なるようにして設けられている遮光部153とから構成されており、全体として図示するようにT字形状をなしている。ピン152の遮光部153は、光スイッチ150本体部に装着されているときに、発光素子156と受光素子157との間の光路を遮る。潜水作業員や潜水艇のマニピュレータがピン152を光スイッチ150本体部から引き抜くことにより、遮光部153が取り外され、受光素子157が発光素子156が発する光を受光し、光スイッチ150はオン状態となる。
【0047】
取付調整穴158、158’は発光素子156と受光素子157とを光スイッチ150本体部に取り付けるため、及び、発光素子156と受光素子157とを取り付けるとき、発光素子156、受光素子157の取付位置を調整するために利用される穴である。これらの取付調整穴158、158’からは、発光素子156、受光素子157の取付後、エポキシ樹脂等が充填されて、素子の封入が行われる。
【0048】
フック155、155’は、光スイッチ150本体部からピン152が脱落しないように環状弾性体163を掛け回しておくときに利用される突状体である。光スイッチ150は、フック155、155’に掛け回された環状弾性体163の弾性力によって、ピン152が光スイッチ150本体部側に挿入された状態を維持する。この状態が図8に示す状態である。
【0049】
これに対して、観測装置100が観測ポイントにセットされると、潜水作業員による操作、潜水艇のマニピュレータからの操作によって、環状弾性体163が取り外され、光スイッチ150本体部からピン152から引き抜かれる。これによって、観測装置100において、観測のための観測シーケンスが開始されるようになっているが、この状態を示しているが図9や図7(C)である。
【0050】
次に、以上のように観測装置100が観測ポイントにセットされ、光スイッチ150でトリガーされると、制御回路250がどのような処理を行うかについてフローチャートで説明する。なお、図5及び図6に示すフロー処理は観測装置100の1つの制御形態であり、その他の制御形態を排するものではない。
【0051】
図5のステップS100においては、メインスイッチ232がオンとされ、制御回路250の処理が開始される。この動作は、観測装置100を海底にセットする前の陸上で行われる。次に、耐圧容器蓋体部111が装着され、光スイッチ150本体部にピン152が挿入されて、水中コネクタ160がセットされる。そして、図7(A)、図7(B)に示されるように観測装置100が海底の観測ポイントにセットされる。
【0052】
ステップS101では、光スイッチ150がオンされたか否かが判定される。ステップS101における判定の結果がYESであるときにはステップS102に進み、ステップS101における判定の結果がNOであるときにはステップS101をループする。
【0053】
光スイッチ150がオンとなり、ステップS102に進むと、観測シーケンスを管理するために計時部252の計時処理が開始される。
【0054】
ステップS103では、観測シーケンスにて設定されている全ての撮影回数分の撮影が終了したか否かが判定される。ステップS103における判定の結果がYESであるときには、ステップS108に進み処理を終了する。ステップS103における判定の結果がNOであるときには、ステップS104に進む。
【0055】
続いてステップS104では、電源監視部251からの信号が参照され、電源部240の電圧が所定電圧以上であるか否かが判定される。ステップS104の判定の結果がYESであるとき、すなわち電源部240の電圧が所定値以上であり、電源部240に撮像装置220を駆動するために十分な電力が確保されているときにはステップS105に進む。
【0056】
これに対して、ステップS104の判定の結果がNOであるとき、すなわち電源部240の電圧が所定値未満であり、電源部240に撮像装置220を駆動するために十分な電力が確保できないときにはステップS108に進み、制御回路250での処理を終了する。
【0057】
ステップS105では、計時部252が参照され、撮影シーケンス記憶部261に設定されている所定の時間が経過したか否かが判定される。ステップS105における判定の結果がNOであるときにはステップS105をループし、所定時間が経過し、判定の結果がYESであるときにはループを抜けて、ステップS106に進む。
【0058】
ステップS106では、撮影処理のサブルーチンが実行される。この撮影処理サブルーチンからリターンすると、ステップS107に進むようになっている。
【0059】
ステップS107においては、観測シーケンスにて設定されている撮影回数をカウントするためのカウンタを1ディクリメントする。引き続いて、ステップS103に進む。
【0060】
本フローのように撮影処理のサブルーチンが設定した回数実行されるので、本発明の観測装置100では、海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況の時間的な変化を観測することができることとなる。
【0061】
次に図6を参照して撮影処理サブルーチンについて説明する。図6においてステップS200で撮影処理のサブルーチンが開始されると、続いて、ステップS201に進み、励起光源210、211がオンされて、センサホイル200における酸素消光材料の色素を励起光によって発光させる。
【0062】
続いて、ステップS202では、撮像装置222のシャッターを開放して露光を開始す
る。ステップS203では、撮影シーケンス記憶部261に記憶されている所定の露光時間が経過したか否かが判定される。ステップS203の判定結果がNOであるときにはステップS203をループし、判定結果がYESであるときにはステップS204に進む。
【0063】
ステップS204では、撮像装置222のシャッターを閉じて露光を終了する。続く、ステップS205では、励起光源210、211がオフされる。そして、ステップS206では、撮影画像データ記憶部260に撮影画像データを記憶する処理を行う。次のステップS207でメインルーチンへリターンする。
【0064】
以上のように構成される観測装置100によって取得される撮影画像データ例を示す。図10は本発明の実施の形態に係る観測装置による底泥−底層水境界の酸素濃度分布の観測例を示す図である。図10の観測例は、撮影画像データ記憶部260に記憶された撮影画像データに、酸素の分布量が把握しやすいように画像加工を施したものである。
【0065】
以上のように本発明の観測装置100によれば、海底泥中、海水中の酸素量の二次元的な分布状況の時間的な変動について観測することができるようになる。
【0066】
なお、図5におけるステップS106の撮影処理サブルーチンについては種々のルーチンが考えられる。そこで、次に、図11を参照しつつ、撮影処理サブルーチンに係る他の実施形態について説明する。図11は本発明の他の実施の形態に係る観測装置の制御回路における撮影処理サブルーチンのフローチャートを示す図である。本実施形態における撮影処理サブルーチンでは、1回の撮影処理サブルーチンで、数回の撮影画像データを取得するように設定したものである。
【0067】
図11において、ステップS300で撮影処理のサブルーチンが開始されると、続いて、ステップS301に進み、撮影シーケンス記憶部261の撮影シーケンスが読み込まれて、1回撮影時の露光回数が読み込まれる。このように撮影シーケンスには、撮影時1回につき、複数回の露光を行うようにしておいてもよい。撮影時1回につき、複数回の露光を実行すると、後のデータ処理などの段階で、複数回露光の平均値を算出することができ、より酸素濃度画像の精度を向上させることができる。
【0068】
次に、ステップS302では、撮像装置222のシャッターを開放して露光の準備を行う。そして、ステップS303で励起光源210、211がオンされて、センサホイル200における酸素消光材料の色素を励起光によって発光させる。続く、ステップS304では、撮影シーケンス記憶部261に記憶されている所定の露光時間が経過したか否かが判定される。ステップS304の判定結果がNOであるときにはステップS304をループし、判定結果がYESであるときにはステップS305に進む。ステップS305では、で励起光源210、211をオフとし、続くステップS306で、撮影画像データ記憶部260に撮影画像データを記憶する処理を行う。
【0069】
続いて、ステップS307では、撮影シーケンスに設定された露光回数に達したか否かが判定される。ステップS307の判定結果がNOであるときにはステップS303に進み、再び露光を行う。一方、ステップS307の判定結果がYESであるときにはステップS308に進み、撮像装置222のシャッターを閉じて、次のステップS309でメインルーチンへリターンする。
【0070】
このような本発明の他の実施形態によれば、1回の撮影時に、複数回露光して撮影画像データを得るものであるので、後の撮影画像データの画像処理において、画像を積算して平均値をとることで、酸素濃度画像の精度を向上させることができる。
【0071】
また、本発明の他の実施形態においては、撮像装置222のシャッターを開いてから励起光源210、211がオンとなり、センサホイル200における酸素消光材料の色素の励起を行い、露光時間に達したと判定された後に、励起光源210、211をオフとして励起を終え、露光1回分の撮像画像データを取得するような動作が実行される。励起光源210、211によって、励起時間を制御する方が、シャッターによって励起時間を制御するよりも、露光の時間制御を正確に制御することができるため、本実施形態によれば、より正確なデータを取得することが可能となる。なお、撮影は光が当たらない状態で行うこととなるので、撮像装置222のシャッターを開放してから励起光源210、211で励起を行うようにしても支障はない。
【符号の説明】
【0072】
100・・・観測装置、110・・・耐圧容器本体部、111・・・耐圧容器蓋体部、112、112’・・・螺子体、113・・・Oリング、114・・・取っ手部、115・・・光スイッチ取付部材、120・・・耐圧窓部、121・・・耐圧ガラス、130・・・脚部取付部材、131・・・第1脚部、132・・・第2脚部、140・・・脚部取付部材、141・・・第3脚部、142・・・第4脚部、150・・・光スイッチ、152・・・ピン、153・・・遮光部、154・・・操作部、155、155’・・・フック、156・・・発光素子、157・・・受光素子、158、158’・・・取付調整穴、160・・・水中コネクタ、161・・・ケーブル、163・・・環状弾性体、200・・・センサホイル、210、211・・・励起光源、220・・・フィルタ、221・・・レンズ部、222・・・撮像装置、231・・・制御回路基板、232・・・メインスイッチ、240・・・電源部、250・・・制御回路部、251・・・電源監視部、252・・・計時部、260・・・記憶部、261・・・観測シーケンス記憶部(撮影間隔、露光時間、励起光源明滅タイミング等記憶部)、262・・・撮影画像データ記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧窓部が設けられ耐圧容器蓋体部によって密閉可能な耐圧容器本体部と、
酸素消光材料を含み前記耐圧窓部に配されるセンサホイルと、
前記耐圧容器本体部に設けられ前記センサホイルを照射する励起光源と、
前記センサホイルを撮影する撮像装置と、からなることを特徴とする観測装置。
【請求項2】
前記耐圧容器本体部の外周にスイッチが設けられ、前記スイッチによって観測が起動されることを特徴とする請求項1に記載の観測装置。
【請求項3】
前記耐圧容器本体部の内部に前記励起光源と前記撮像装置とを制御する制御回路が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の観測装置。
【請求項4】
前記耐圧容器本体部の内部に設けられると共に、前記制御回路への電源供給のオンオフを行うメインスイッチを有することを特徴とする請求項3に記載の観測装置。
【請求項1】
耐圧窓部が設けられ耐圧容器蓋体部によって密閉可能な耐圧容器本体部と、
酸素消光材料を含み前記耐圧窓部に配されるセンサホイルと、
前記耐圧容器本体部に設けられ前記センサホイルを照射する励起光源と、
前記センサホイルを撮影する撮像装置と、からなることを特徴とする観測装置。
【請求項2】
前記耐圧容器本体部の外周にスイッチが設けられ、前記スイッチによって観測が起動されることを特徴とする請求項1に記載の観測装置。
【請求項3】
前記耐圧容器本体部の内部に前記励起光源と前記撮像装置とを制御する制御回路が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の観測装置。
【請求項4】
前記耐圧容器本体部の内部に設けられると共に、前記制御回路への電源供給のオンオフを行うメインスイッチを有することを特徴とする請求項3に記載の観測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−236902(P2009−236902A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39436(P2009−39436)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】
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