説明

角型飲料用プラスチック容器及びそれを用いた飲料製品

【課題】本発明の目的は、非炭酸系飲料充填用の角型飲料用プラスチック容器において、必要な座屈強度を有し、かつ、ボトル曲がりが少ない構造の容器を提供することである。
【解決手段】本発明に係る角型飲料用プラスチック容器は、非炭酸系飲料充填用であり、胴部4に、垂直方向を振幅方向とする横波状のリブ9を、同一形状のリブの波頂部10,11が上下揃うように複数本並べかつ側面を周回させて形成し、横波状のリブは、胴部の長辺壁6の幅中央を通る垂直中心線X上の任意の点を対称点12とする点対称の波形状を有し、かつ、胴部の短辺壁7の幅中央を通る垂直中心線Y上の任意の点を対称点13とする点対称の波形状を有し、かつ、長辺壁に形成したリブと短辺壁に形成したリブとは隅壁8にて波形状を維持した状態で接続されてなり、かつ、対称点12,13はいずれも同一水平面上にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お茶、水、果汁飲料、スポーツドリンクなど、非炭酸系飲料の容器として用いられる角型飲料用プラスチック容器に関し、特に、軽量・薄肉でも縦圧縮荷重に対して座屈強度があり、かつ、ボトル曲がり(容器に縦圧縮荷重がかかったときに、無荷重時の容器主軸を基準として容器主軸が横に傾く変形をいう。)の少ない角型飲料用プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
お茶、水、果汁飲料、スポーツドリンクなど、非炭酸系飲料の容器として用いられる飲料用プラスチック容器としては、PETボトル(ポリエチレンテレフタレート樹脂製ボトル)が多用されている。飲料用プラスチック容器は、環境面及びコスト面から軽量化・薄肉化の要請が強い。その一方で、飲料用プラスチック容器は数本〜数十本単位で段ボール箱に入れられて輸送・保管されるが、このとき段ボール箱は段積みされるため、飲料用プラスチック容器には縦圧縮荷重がかかる。そこで、縦圧縮荷重に対して座屈強度のあるプラスチックボトルの技術が開示されている(例えば特許文献1又は2を参照。)。
【0003】
特許文献1又は2の技術では、水平方向に直線状のリブ又は水平に周回する環状のリブが座屈の発生を軽減している。ここで、容器に大きな座屈強度が求められるのは、倉庫などにおける荷積みや物流における積載などにおいて一旦座屈すると、容器に座屈変形跡が残り、美観上の商品価値を低下させてしまうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6‐69114号公報
【特許文献2】特開平11‐236022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1又は2に記載された技術は、水平方向に直線状のリブ又は水平に周回する環状のリブによって、飲料用プラスチック容器の座屈強度を高めると思われるが、縦圧縮荷重がかかったときのボトル曲がりの抑制は十分でない。
【0006】
特に、非炭酸系飲料を充填した容器は、内圧が減圧若しくは常圧であるため、高い内圧にて充填されている炭酸系飲料製品と比較して、容器自体がより一層高い座屈強度を有し、かつ、ボトル曲がりが少ないことが望まれる。さらに、1.5リットル又は2リットルの大容量の飲料用プラスチック容器は、冷蔵庫等における収納性を考慮して角型(水平断面形状が隅を落とした矩形であることが多い。)が採用されているが、このような角型容器においても、座屈強度を有し、かつ、ボトル曲がりが少ないことが望まれる。
【0007】
そこで本発明の目的は、非炭酸系飲料充填用の角型飲料用プラスチック容器において、必要な座屈強度を有し、かつ、ボトル曲がりが少ない構造の容器を提供することである。また、この軽量化・薄肉化された容器を用いて、美観上の商品価値の低下が起こりにくい非炭酸系飲料製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、容器の胴部に、特定形状の波状のリブを特定の配置とすることで、縦圧縮荷重がかかったとき座屈を抑制し、かつ、ボトル曲がり軽減できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明に係る角型飲料用プラスチック容器は、上から順に口部、肩部、ラベル部、胴部及び底部を有し、かつ、前記胴部が、長辺壁と、短辺壁と、前記長辺壁と前記短辺壁とをつなぐ隅壁とを有し、非炭酸系飲料充填用の角型飲料用プラスチック容器において、前記胴部に、垂直方向を振幅方向とする横波状のリブを、同一形状のリブの波頂部が上下揃うように複数本並べかつ側面を周回させて形成し、前記横波状のリブは、前記胴部の長辺壁の幅中央を通る垂直中心線上の任意の点を対称点とする点対称の波形状を有し、かつ、前記胴部の短辺壁の幅中央を通る垂直中心線上の任意の点を対称点とする点対称の波形状を有し、かつ、前記長辺壁に形成したリブと前記短辺壁に形成したリブとは隅壁にて波形状を維持した状態で接続されてなり、かつ、前記対称点はいずれも同一水平面上にあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る角型飲料用プラスチック容器では、前記隅壁の幅中央を通る垂直中心線上に、前記横波状のリブの対称点があることが好ましい。隅壁においてもリブによる補強効果を均質化することができ、座屈及びボトル曲がりがより抑制されやすくなる。
【0010】
本発明に係る角型飲料用プラスチック容器では、前記横波状のリブは、前記長辺壁一つ当たり、上方向の波頂部と下方向の波頂部をそれぞれ1つずつ有し、かつ、前記短辺壁一つ当たり、上方向の波頂部と下方向の波頂部をそれぞれ1つずつ有することが好ましい。上方向の波頂部と下方向の波頂部をそれぞれ1つずつ設けることで、長辺壁及び短辺壁のいずれにおいてもリブによる補強効果を均質化することができ、また、波頂部の数を必要最小限の数とすることで、リブ同士の間隔を近づける設計がしやすくなる。
【0011】
本発明に係る角型飲料用プラスチック容器では、前記胴部のうち、上側に、水平方向に側面を周回させた環状リブを複数本並べて形成し、かつ、下側に、前記横波状のリブを形成することが好ましい。容器の胴部の下方において変形が生じやすいため、当該部位に横波状リブを配置することで、容器の座屈、ボトル曲がりなどの容器変形を効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明に係る角型飲料用プラスチック容器では、前記横波状のリブの振幅は、該リブ幅より大きいことが好ましい。上方向の波頂部におけるリブ下側縁と下方向の波頂部におけるリブ上側縁とが、容器高さ方向を軸としてみると離れあうこととなるから、容器主軸の横断面(すなわち、水平面である。)のうち、横波状のリブを胴全周にわたって横断する面が存在しなくなり、この結果、特にボトル曲がりの抑制に効果がある。
【0013】
本発明に係る飲料製品は、本発明に係る角型飲料用プラスチック容器に非炭酸系飲料が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、非炭酸系飲料充填用の角型飲料用プラスチック容器において、必要な座屈強度を有し、かつ、ボトル曲がりを少なくすることができる。また、この軽量化・薄肉化された容器にて非炭酸系飲料製品を提供することができ、このとき物流・保管時における容器変形が抑制され、消費者に着くまでに製品外観を損ねることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器の第1形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。
【図2】図1に示した容器の斜視図である。
【図3】本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器の第2形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。
【図4】図3に示した容器の斜視図である。
【図5】本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器の第3形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。
【図6】図5に示した容器の斜視図である。
【図7】容器の圧縮強度の評価の結果を示すグラフである。
【図8】ボトル単体でのボトル曲がりの評価の結果を示すグラフである。
【図9】パレット段積みのときの評価の結果を示すグラフである。
【図10】比較例1の角型飲料用プラスチック容器を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。
【図11】図10に示した容器の斜視図である。
【図12】比較例2の角型飲料用プラスチック容器を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。
【図13】図12に示した容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0017】
図1は、本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器の第1形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。図2は、図1に示した容器の斜視図である。図1及び図2に示した本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器100は、上から順に口部1、肩部2、ラベル部3、胴部4及び底部5を有し、かつ、胴部4が、長辺壁6(6a,6b)と、短辺壁7(7a,7b)と、長辺壁6と短辺壁7とをつなぐ隅壁8(8a,8b,8c,8d)とを有する非炭酸系飲料充填用の角型飲料用プラスチック容器である。そして、角型飲料用プラスチック容器100は、胴部4に、垂直方向を振幅方向とする横波状のリブ9(9a,9b)を、同一形状のリブ9の波頂部10(10a,10b),11(11a,11b),が上下揃うように複数本並べかつ側面を周回させて形成し、横波状のリブ9は、胴部4の長辺壁6の幅中央を通る垂直中心線X上の任意の点を対称点12(12a,12b)とする点対称の波形状を有し、かつ、胴部4の短辺壁7の幅中央を通る垂直中心線Y上の任意の点を対称点13(13a,13b)とする点対称の波形状を有し、かつ、長辺壁6に形成したリブと短辺壁7に形成したリブとは隅壁8にて波形状を維持した状態で接続されてなり、かつ、対称点12a,13aはいずれも同一水平面上にあり、対称点12b,13bはいずれも同一水平面上にある。
【0018】
口部1は中身の飲料を注ぎやすいように通常、1.5〜4cmの直径で形成されており、また肩部2は、胴径の大きいラベル部3につながるようにラベル部に向かって胴径を拡径させて錐体形状をしている。なお、図1及び図2に示した容器の肩部2は複数のカット面から形成されているが、曲面で形成してもよい。ラベル部3はその外側にシュリンクラベル又はロールラベル等の商品表示ラベルが装着される。胴部4は、主として消費者に把持される箇所であり、ラベル部3とほぼ同様の胴径が与えられるか、或いは、ラベルのこすれを防止するためにラベル部3よりも長辺、短辺共に1mm程度大きい胴径が与えられる。底部5は、縦リブが複数設けられて強度を向上させており、自立型を実現している。
【0019】
飲料用プラスチック容器は、ブロー成形、好ましくは2軸延伸ブロー成形によって得られる。飲料用プラスチック容器の材質は、PET樹脂が好ましいが、必要に応じて他の熱可塑性樹脂を用いてもよい。また、プラスチック容器は角型であり、図1及び図2に示すように長辺壁6と短辺壁7と隅壁8とからなる。なお、長辺壁6の長辺と短辺壁7の短辺とが同じ長さである形状、すなわち断面がほぼ正方形の角型であってもよい。図3は本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器の第2形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。図4は、図3に示した容器の斜視図である。図3及び図4の角型飲料用プラスチック容器200に示すように、隅壁8は、水平断面が円弧状又は楕円弧状のR面とし、かつ、長辺壁と隅壁との境界24b及び短辺壁及び隅壁との境界24aが曲面上にある形状とすることが好ましい。また、図1及び図2で示すように角が面取りされ、かつ、長辺壁と隅壁との境界24b及び短辺壁及び隅壁との境界24aが曲面上にある形状としてもよい。隅壁8を角が面取りされた形状とすることでカット調の外観を持たせることができる。隅壁8では、縦圧縮荷重を支える構造としつつも水平に周回する環状のリブがあることで弾性変形させることができる。
【0020】
角型飲料用プラスチック容器は、例えば500ml〜2リットルの容量を対象とするが、特に座屈強度が要求される容量1.5〜2リットルの容器を好適な対象とする。例えば、プラスチック容器の高さが200〜370mm、矩形で外挿した胴径、つまり長辺壁と短辺壁の接線で囲まれる矩形で近似した胴径が(60〜120)×(60〜100)mm、胴部肉厚が0.10〜0.30mmである。無菌充填用のボトルの場合、胴部肉厚は0.10〜0.30mmとすることが好ましい。また、ホット充填用の容器とすることも可能であり、この場合、胴部肉厚は0.20〜0.50mmとすることが好ましい。本発明は、肉厚を薄くすることが求められる無菌充填用のボトルとして、胴部肉厚が0.10〜0.30mmである場合に好適である。なお、500ml以下の容量で高さが200mm未満であるプラスチック容器についても、耐座屈性を有し、ボトル曲がりの少ないプラスチック容器とすることができる。この場合、前記寸法のプラスチック容器を基準として相似形状を維持しながら小型化させることで対応できる。
【0021】
本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器では、図1又は図2の角型飲料用プラスチック容器100のように、ラベル部3と胴部4との間の胴径を他の場所のリブ深さよりも深くして絞り形状の掴み部25を形成してもよい。掴み部の深さは例えは2.0〜4.5mmとし、好ましくは2.5〜3.5mmとする。ラベルとの境界を目立たせ、消費者に容器の掴み所を視認させることができる。また、図3及び図4の角型飲料用プラスチック容器200に示すように、胴部4の上端部の長辺壁6の中央にエンボスを設け、それを把持用エンボス部15としてもよい。把持用エンボス部15の深さは、例えば、6〜15mmとする。
【0022】
垂直方向を振幅方向とする横波状のリブ9(9a,9b)は、リブ9a,9bともに リブ幅が例えば4〜7mm、好ましくは5〜6mmである。リブ幅は一定幅であることが好ましい。ここで、長辺壁6及び短辺壁7における横波状のリブ9を、隅壁8における横波状のリブ9よりも深くすることが好ましい。長辺壁6及び短辺壁7では、横波状のリブ9が深いため容器を掴むときに壁面を容器内方向に向けて押す力がかかるが、このような力が働いても壁面形状を保ちやすくなる。また、隅壁8では横波状のリブ9の深さが浅いため、縦圧縮荷重に耐えながらも弾力を有する構造となる。そして、図1及び図2に示した角型飲料用プラスチック容器100又は図3及び図4に示した角型飲料用プラスチック容器200で示したように、長辺壁6及び短辺壁7における横波状のリブ9は、リブを深く形成するために断面V文字型溝あることが好ましい。壁面を容器内方向に向けて押す力に対してより強度が向上する。そして、隅壁8ではリブを浅く形成するために断面U文字型溝であることが好ましい。隅壁8において縦圧縮荷重をより支える構造とすることができる。そして、図3及び図4に示すように隅壁8がR面である場合には、長辺壁6と隅壁8との境界と、断面V文字型溝と断面U文字型溝との境界とを一致させ、かつ、短辺壁7と隅壁8との境界と、断面V文字型溝と断面U文字型溝との境界とを一致させることが好ましい。隅壁8の水平周方向全体にわたって縦圧縮荷重を支えることができ、かつ、長辺壁6及び短辺壁7の全体にわたって壁面を容器内方向に向けて押す力に対して強度が向上する。断面V文字型溝の深さは、例えば2.0〜4.0mmであり、断面U文字型溝の深さは例えば1.0〜2.0mmである。断面V文字型溝の深さは断面U文字型溝の深さよりも大きいことが好ましい。このような形態実現するために、例えば、断面U文字型溝を1段溝としたとき、断面V文字型溝を更に深い2段溝とする。
【0023】
横波状のリブ9は、同一形状のリブ9a,9bの上向きの波頂部10a,10bの位置が上下揃うように、かつ、下向きの波頂部11a,11bの位置が上下揃うように、複数本並べて形成する。図1及び図2の角型飲料用プラスチック容器100では、横波状のリブ9を2本並列させた形態を示し、図3及び図4の角型飲料用プラスチック容器200では、横波状のリブ9を3本並列させた形態を示した。図5は、本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器の第3形態を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。図6は、図5に示した容器の斜視図である。図5及び図6の角型飲料用プラスチック容器300では、横波状のリブ9を6本並列させた形態であり、ラベル部3に設けたリブ26は全て波形でない環状リブであり、胴部に設けたリブ9は全て横波状のリブである。そして、図1〜図6に示したいずれの角型飲料用プラスチック容器においても、横波状のリブ9は、胴部3の側面を周回するよう形成させる。すなわち、横波状のリブ9は、スパイラル状に設けるのではなく、1周するごとにそれぞれが始点と終点が一致しており、閉じている。横波状のリブ9は1本1本それぞれ閉じて、スパイラル状のようにリブの始点及び終点が無いため、ボトル曲がりに対して胴周方向の位置による強度の違いが少ない。
【0024】
図1(a)に示すように、横波状のリブ9(9a,9b)は、胴部4の長辺壁6の幅中央を通る垂直中心線X上の任意の点を対称点12(12a,12b)とする点対称の波形状を有する。例えば、上方向の波頂部10aは、下方向の波頂部11aと、対称点12aを基準として点対称の位置にある。上方向の波頂部10bは、下方向の波頂部11bと、対称点12bを基準として点対称の位置にある。
【0025】
また、図1(b)に示すように、横波状のリブ9(9a,9b)は、胴部4の短辺壁7の幅中央を通る垂直中心線Y上の任意の点を対称点13(13a,13b)とする点対称の波形状を有する。このように横波状のリブ9(9a,9b)は、短辺壁7においても長辺壁6における場合と同様に、点対称の形状をなしている。しかし、短辺壁7は長辺壁6よりも水平幅が小さいので、上方向の波頂部21aと対称点13aとの距離及び下方向の波頂部22aと対称点13aとの距離は、長辺壁6におけるそれに相当する距離よりも短い。また、上方向の波頂部21bと対称点13bとの距離及び下方向の波頂部22bと対称点13bとの距離は、長辺壁6におけるそれに相当する距離よりも短い。すなわち、短辺壁7に存在する横波状のリブ9の波長と、長辺壁6に存在する横波状のリブ9の波長とを比較すると、壁の幅に応じて、短辺壁7に存在する横波状のリブ9の波長は短い。このように、波長を壁の幅に応じて調整することで、長辺壁6及び短辺壁7に、上方向の波頂部と下方向の波頂部の両方をそれぞれ同じ数だけ配置させることができるため、座屈強度及びボトル曲がりに対する強度が胴周方向において均一となる。
【0026】
図1及び図2に示すように、長辺壁6に形成したリブと短辺壁7に形成したリブとは隅壁8にて波形状を維持した状態で接続される。ここで、波形状を維持するために、好ましくは、隅壁8の幅中央を通る垂直中心線Z上に、横波状のリブの対称点14a,14bがあることが好ましい。隅壁においてもリブによる補強効果を均一化することができ、座屈及びボトル曲がりがより抑制されやすくなる。
【0027】
対称点12aと13aとは同一水平面上にあり、かつ、対称点12bと13bとは同一水平面上にある。横波状のリブ9(9a,9b)は、当該同一水平面を中心に垂直方向に振幅する波形状となる。長辺壁6及び短辺壁7において座屈強度及びボトル曲がりに対する強度が胴周方向において均一となる。さらに、対称点12aと13aと14aとは同一水平面上にあり、かつ、対称点12bと13bと14bは同一水平面上にあることが好ましい。長辺壁6及び短辺壁7のみならず、隅壁8においても座屈強度及びボトル曲がりに対する強度が胴周方向において均一となる。
【0028】
図1及び図2の角型飲料用プラスチック容器100のように、横波状のリブ9aは、長辺壁6一つ当たり、上方向の波頂部10aと下方向の波頂部11aをそれぞれ1つずつ有し、かつ、短辺壁7一つ当たり、上方向の波頂部22aと下方向の波頂部22bをそれぞれ1つずつ有することが好ましい。横波状のリブ9bについても同様である。上方向の波頂部と下方向の波頂部をそれぞれ1つずつ設けることで、長辺壁及び短辺壁のいずれにおいてもリブによる補強効果を均一化することができ、かつ、リブの幅は、金型の加工性、容器の成形性及びリブによる強度向上の点から3〜8mm程度とされるところ、波頂部の数を必要最小限の数とすることで、リブ同士の間隔を近づける設計がしやすくなる。
【0029】
図1及び図2の角型飲料用プラスチック容器100、及び、図3及び図4の角型飲料用プラスチック容器200のように、胴部4のうち、上側に、波形でない水平方向に側面を周回させた環状リブ23を複数本並べて形成し、かつ、下側に、横波状のリブ9を形成することが好ましい。容器の胴部4の下方において変形を生じやすいため、当該部位に横波状リブ9を配置することで、容器の座屈、ボトル曲がりなどの容器変形を効果的に抑制することができる。波形でない水平方向に側面を周回させた環状リブ23は、均等間隔で配置することがより好ましい。また、横波状のリブ9は、均等間隔で配置することがより好ましい。
【0030】
図3及び図4の角型飲料用プラスチック容器200のように、横波状のリブ9の振幅は、リブ幅より大きいことが好ましい。上方向の波頂部におけるリブ下側縁30と下方向の波頂部におけるリブ上側縁31とが、容器高さ方向を軸としてみると離れあうこととなるから、容器主軸の横断面(すなわち、水平面である。)のうち、横波状のリブを胴全周にわたって横断する面が存在しなくなり、この結果、特にボトル曲がりの抑制に効果がある。なお、図1及び図2の角型飲料用プラスチック容器100及び図5及び図6の角型飲料用プラスチック容器300は、横波状のリブの振幅が、リブ幅以下の形態例である。
【0031】
本実施形態に係る角型飲料用プラスチック容器は、非炭酸系飲料が充填されている製品特に容量1〜2リットル、さらには容量1.5〜2リットル用として好適に使用される。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0033】
(実施例1)
実施例1として図1及び図2に図示した容器(1.5リットル)の形状とした。すなわち、容器高さを307mm、胴径90×77mm、胴部肉厚0.21mm(場所により0.19〜0.24mmと肉厚分布があり、平均的な厚さが0.21mmである)とした。環状リブ11本のうち、下2本を横波状のリブとした。横波状のリブの幅は6.90mm、深さ(U文字溝)を1.70mm、深さ(V文字溝)を2.50mmとした。ラベル部3に設けた水平に環状(横波でない)のリブの幅は7.80mm、深さ(U文字溝)を2.80mm、深さ(V文字溝)を3.70mmとした。胴部4に設けた水平に環状(横波でない)のリブ(胴部のリブのうち上から4本目まで)の幅は7.80mm、深さ(U文字溝)を2.80mmとした。さらにラベル部3と胴部4との境界には、前記環状リブ11本とは別に、深さ5.00mm、幅9.00mmの掴み部を一本設けた。PET樹脂使用量は38gとした。この容器に1.5リットルの水を無菌充填で入れて蓋をして密封した。
【0034】
(容器の圧縮強度の評価)
実施例1の容器に垂直荷重を負荷した。容器の圧縮強度を、23℃・50%RH、圧縮速度50mm/minの条件にしたがって測定した。結果を図7に示す。
【0035】
(ボトル曲がりの評価)
次に、実施例1の容器に垂直荷重400Nを負荷した。このとき、下から125mm高における胴部水平方向の飛び出し量を測定した。結果を図8に示す。
【0036】
(パレット段積みのときの評価)
市場に流通している段ボール箱(1.5リットル、8本収納用箱)に水入りの容器を入れ、箱を4段積み(一段ごとに交互に積む)を1パレットとし、パレット2段積みとして、最下段の箱に入れられたボトル(n=90本)で、ボトル曲がりを評価した。具体的には、パレット2段積みの状態で、30℃・80%RH、1週間保管した後、段ボール箱から水入りの容器を取り出し、CCDカメラでボトルを観察し、ボトルの傾き具合を観察した。結果を図9に示す。ボトルの傾き具合は、容器底面から高さ307mmのところにおけるズレ量を測定した。
【0037】
実施例1と同様に、容器の圧縮強度の評価、ボトル曲がりの評価及びパレット段積みのときの評価を行った。結果をそれぞれ図7、図8、図9に示す。
【0038】
(比較例1)
比較例1として図10及び図11に図示した容器(1.5リットル)の形状とした。図10は、比較例1の角型飲料用プラスチック容器を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。図11は、図10に示した容器の斜視図である。容器高さを307mm、胴径90×77mm、胴部肉厚0.21mm(場所により0.19〜0.24mmと肉厚分布があり、平均的な厚さが0.21mmである)とした。環状リブ12本のうち、下6本を横波状のリブとした。胴部に設けたリブは全て横波状のリブである。ただし、長辺壁及び短辺壁の中央に下向きの波頂部が位置し、隅壁の中央に上向きの波頂部が位置するようにした。横波状のリブ幅は6.90mm、深さ(U文字溝)を1.70mm、深さ(V文字溝)を2.50mmとした。ラベル部3に設けた水平に環状(横波でない)のリブの幅は7.80mm、深さ(U文字溝)を2.80mm、深さ(V文字溝)を3.70mmとした。ラベル部3と胴部4との境界には、掴み部を設けていない。PET樹脂使用量は38gとした。この容器に1.5リットルの水を無菌充填で入れて蓋をして密封した。
【0039】
実施例1と同様に、容器の圧縮強度の評価、ボトル曲がりの評価及びパレット段積みのときの評価を行った。結果をそれぞれ図7、図8、図9に示す。
【0040】
(比較例2)
比較例2として図12及び図13に示した容器(1.5リットル)を用いた。図12は、比較例2の角型飲料用プラスチック容器を示す概観図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は平面図を示す。図13は、図12に示した容器の斜視図である。比較例2の容器は、容器高さを307mm、胴径90×77mm、胴部肉厚0.21mm(場所により0.19〜0.24mmと肉厚分布があり、平均的な厚さが0.21mmである)とした。環状リブ11本の全てを水平に環状(横波でない)のリブとした。水平に環状(横波でない)のリブの幅は7.80mm、深さ(U文字溝)を2.80mm、深さ(V文字溝)を3.70mmとした。さらに胴部4の下端に水平方向に伸びる直線状のリブ27を長辺壁と短辺壁にそれぞれ形成した。ラベル部3と胴部4との境界には、掴み部25を設けている。PET樹脂使用量は38gとした。この容器に1.5リットルの水を無菌充填で入れて蓋をして密封した。
【0041】
実施例1と同様に、容器の圧縮強度の評価、ボトル曲がりの評価及びパレット段積みのときの評価を行った。結果をそれぞれ図7、図8、図9に示す。
【0042】
図7のグラフによれば、実施例1の圧縮強度は比較例1及び比較例2のそれよりも小さかったが、実用上は十分な圧縮強度を有していることが確認できた。図8のグラフによれば、実施例1の飛び出し量は比較例1及び比較例2のそれよりも小さく、容器の変形量が少ないことが確認できた。図9のグラフによれば、横波状のリブを設けた実施例1及び比較例1は、横波状のリブを設けずに水平方向の環状リブを設けた比較例2と比べて、ボトル曲り、特に最大ボトル曲がり量が低減されていることが確認できた。そして、比較例1は、横波状のリブを設けているが、長辺壁及び短辺壁の中央に下向きの波頂部が位置し、隅壁の中央に上向きの波頂部が位置するようにしたため、実施例1よりも最大ボトル曲がり量が大きく、また、平均ボトル曲がり量、最小ボトル曲がり量のいずれも大きかった。
【符号の説明】
【0043】
100,200,300,400角型飲料用プラスチック容器
1 口部
2 肩部
3 ラベル部
4 胴部
5 底部
6,6a,6b 長辺壁
7,7a,7b 短辺壁
8,8a,8b,8c,8d 隅壁
9,9a,9b 横波状のリブ
10,10a,10b,11,11a,11b リブの波頂部
12,12a,12b,13,13a,13b,14a,14b 対称点
15 把持用エンボス部
21b 上方向の波頂部
22b 下方向の波頂部
23 波形でない水平方向に側面を周回させた環状リブ
24a 短辺壁及び隅壁との境界
24b 長辺壁と隅壁との境界
25 掴み部
26 ラベル部に設けたリブ
27 水平方向に伸びる直線状のリブ
30 上方向の波頂部におけるリブ下側縁
31 下方向の波頂部におけるリブ上側縁
X 長辺壁の幅中央を通る垂直中心線
Y 短辺壁の幅中央を通る垂直中心線
Z 隅壁の幅中央を通る垂直中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上から順に口部、肩部、ラベル部、胴部及び底部を有し、かつ、前記胴部が、長辺壁と、短辺壁と、前記長辺壁と前記短辺壁とをつなぐ隅壁とを有し、非炭酸系飲料充填用の角型飲料用プラスチック容器において、
前記胴部に、垂直方向を振幅方向とする横波状のリブを、同一形状のリブの波頂部が上下揃うように複数本並べかつ側面を周回させて形成し、
前記横波状のリブは、前記胴部の長辺壁の幅中央を通る垂直中心線上の任意の点を対称点とする点対称の波形状を有し、かつ、前記胴部の短辺壁の幅中央を通る垂直中心線上の任意の点を対称点とする点対称の波形状を有し、かつ、前記長辺壁に形成したリブと前記短辺壁に形成したリブとは隅壁にて波形状を維持した状態で接続されてなり、かつ、前記対称点はいずれも同一水平面上にあることを特徴とする角型飲料用プラスチック容器。
【請求項2】
前記隅壁の幅中央を通る垂直中心線上に、前記横波状のリブの対称点があることを特徴とする請求項1に記載の角型飲料用プラスチック容器。
【請求項3】
前記横波状のリブは、前記長辺壁一つ当たり、上方向の波頂部と下方向の波頂部をそれぞれ1つずつ有し、かつ、前記短辺壁一つ当たり、上方向の波頂部と下方向の波頂部をそれぞれ1つずつ有することを特徴とする請求項1又は2に記載の角型飲料用プラスチック容器。
【請求項4】
前記胴部のうち、上側に、水平方向に側面を周回させた環状リブを複数本並べて形成し、かつ、下側に、前記横波状のリブを形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の角型飲料用プラスチック容器。
【請求項5】
前記横波状のリブの振幅は、該リブ幅より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の角型飲料用プラスチック容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の角型飲料用プラスチック容器に非炭酸系飲料が充填されていることを特徴とする飲料製品。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−116428(P2011−116428A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277205(P2009−277205)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】