説明

角度変色性光沢顔料

本発明は、少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、干渉色を示す層を有し、該層中に官能基を介して層材料と相互作用できる極性有機溶剤が挿入されている角度変色性光沢顔料を開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、干渉色を示す層を有し、該層中に官能基を介して層材料と相互作用できる極性有機溶剤が挿入されている角度変色性光沢顔料に関する。
【0002】
更に本発明は、前記の光沢顔料の製造方法並びに塗料、印刷インキ、インキ、プラスチック、ガラス、セラミック製品及び装飾化粧品の着色のための使用に関する。
【0003】
光沢顔料又は効果顔料は、多くの技術分野で、例えば自動車塗料、化粧塗膜、プラスチック着色、塗料、印刷インキ、特に証券印刷インキ並びに化粧品において使用される。
【0004】
その光学的作用は、主に平板状に構成され、互いに平行に整列された、金属製の顔料粒子又は高い光屈折性の顔料粒子における指向性反射に基づくものである。顔料フレークの組成に応じて、干渉現象、反射現象及び吸収現象が角度依存性の色印象及び明度印象をもたらす。
【0005】
特に関心が持たれるのは、複数の強い干渉色の間での角度依存性の色変化を示し、更に魅力的な閃輝光を示す、角度変色性光沢顔料である。
【0006】
多くの公知の角度変色性光沢顔料は、光反射性の金属製の平板状のコア又は可視光を少なくとも部分的に透過する非金属製の平板状のコアを有し、該コアは、交互に低屈折性及び高屈折性もしくは反射性の層で覆われている。前記の種類の顔料は、例えばEP−A−668329号、WO−A−96/34917号、EP−A−708154号、EP−A−753545号、EP−A−940451号、EP−A−959109号、DE−A−19746067号及びUS−A−5135812号に記載されている。
【0007】
それに対して、WO−A−93/08237号から、二酸化ケイ素小板を基礎とし、該小板が高屈折性の金属酸化物からなる層で覆われている角度変色性光沢顔料が知られている。
【0008】
全ての市販の角度変色性光沢顔料は、少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、特に二酸化ケイ素又はフッ化マグネシウムからなる層を有し、該層は顔料の角度依存性の色印象の原因であり、そしてその弱い干渉色は反射性(高屈折性又は強吸収性)の層との組み合わせによって増強される。
【0009】
これらの光沢顔料は、飽和するまで空気/周囲から水/湿分を吸収する傾向があり、これは特に被覆もしくは光学系の主成分を形成する、誘電性の、低屈折性の層中に挿入される。含水量に依存して、光沢顔料の色特性が変化する。光沢顔料は使用時に熱処理を受ける(これは焼き付け塗料での自動車塗装の場合である)ので、該顔料は、焼き付けの後に脱水に基づいて色特性に不所望の変化を示し、一定の色特性は数時間又は数日後に初めて周囲からの再度の吸水によって達成される。自動車量産塗装における品質コントロールはこのため相当困難である。
【0010】
その塗布及び使用媒体中への分散もしくはその凝縮水耐性を改善するために光沢顔料をシランで被覆することがEP−A−634459号、DE−A−19708167号、EP−A−832943号及びWO−A−99/57204号から公知である。
【0011】
本発明の課題は、色特性が焼き付け塗料中で使用する場合でさえも殆ど変化せず、より迅速に安定化する角度変色性光沢顔料を提供することであった。
【0012】
従って、少なくとも1つの誘電性の、低屈折率の、干渉色を示す層を有し、該層中に官能基を介して層材料と相互作用できる極性有機溶剤が挿入されている角度変色性光沢顔料が見出された。
【0013】
更に、付加的にシランで処理されている有利な角度変色性光沢顔料が見出された。
【0014】
更に、前記の光沢顔料の製造方法において、顔料粒子を有機溶剤中で≧100℃の温度で加熱することを特徴とする方法が見出された。
【0015】
最後に、前記の光沢顔料の、塗料、印刷インキ、インキ、プラスチック、ガラス、セラミック製品及び装飾化粧品の着色のための使用が見出された。
【0016】
本発明による角度変色性光沢顔料は、少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、干渉色を示す層を有する。前記の層は、被覆として基小板上に施与されているか、又はそれ自体が光沢顔料のコアを形成してよい。
【0017】
一般に前記の層の屈折率nは<2、有利には≦1.8、特に有利には≦1.6である。
【0018】
層材料として、とりわけ低屈折性の金属酸化物、金属酸化物水和物及び金属フッ化物、例えば二酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物及びフッ化マグネシウムが適当である。
【0019】
一般に低屈折性の層の幾何学的層厚は、80〜800nm、特に150〜500nmである。他の構成に関して、本発明による角度変色性光沢顔料は如何ようにも限定されず、全ての公知の種類の顔料が適当である。
【0020】
本発明による光沢顔料は、相応して、例えば高屈折性の材料で1回被覆された低屈折性の基体小板、例えば金属酸化物、例えば二酸化チタン又は酸化鉄(III)で被覆された二酸化ケイ素フレークを基礎とするか、又は複層に構成されていよく、その際、前記の基体材料は交互に低屈折性及び高屈折性のもしくは反射性の層で覆われている。
【0021】
複層に構造の光沢顔料は、所望の層材料の高真空における担体薄板への蒸着(物理蒸着)、引き続きいての複層被膜と担体薄板との分離、そして顔料粒度までの粉砕によって製造できる。通常は前記の光沢顔料は、中心の反射性層、特に金属、例えばアルミニウムからなる層からなり、該層は上側及び下側でまず低屈折性の材料、例えばフッ化マグネシウムで被覆され、次いで金属、例えばクロムで被覆されている。
【0022】
しかしながら有利には本発明による角度変色性光沢顔料は、特に湿式化学的に又は気相分解(化学蒸着)によって複数回被覆される平板状の基体粒子を基礎とする。
【0023】
基体材料としては、この場合に、直角に入射する光を完全に又は部分的に(通常、少なくとも10%までが)反射する全ての平板状の材料が適当である。一般に前記の材料は高屈折性であり、そして通常、一般に≧2、有利には≧2.4の屈折率を有し、該材料は乳白色、半乳白色又は透明であってよく、そして反射もしくは透過において有色であってよい。
【0024】
適当な基体材料の群は金属小板である。メタリック効果顔料のために公知の全ての金属及び合金、例えば鋼、銅及びその合金、例えば真鍮及び青銅、特にアルミニウム及びその合金、例えばアルミニウムブロンズが該当する。有利には、容易にアルミニウムシートからの押抜又は適当な微粉砕及び粉砕技術により製造されるアルミニウムフレークが有利であるが、表面が十分に油脂又は類似の被膜を含有すべきでなく、かつ不動態化されてよい、すなわち特に水に対して安定性であってよい慣用の製品を使用できる。
【0025】
金属製の基体粒子は、望ましくは既に高屈折性の金属化合物、例えば高屈折性の金属酸化物、金属窒化物又は金属硫化物、特に例えば酸化鉄又は酸化チタンで被覆されていてよく、かつ従って干渉効果及び場合により吸収効果によって既に(弱い)自然色を示すことがある。しかしながら前記の被覆は、あまり厚くするべきでなく(約5〜150nm)、従って基体粒子はそのメタリック調の色特性を保持すべきでない。更に金属製の基体粒子は、磁性材料、例えば鉄、コバルト、ニッケル又はγ−酸化鉄(III)で覆われてよく、従って磁化可能であってよい。
【0026】
適当な基体材料の他の群は、“本来から”高屈折性であるか、又は“本来は”低屈折性であるにすぎず、従って高屈折性の被覆が施されている非金属製小板である。
【0027】
特に適当な本来から高屈折性の材料のための例は、選択的吸収性又は非選択的吸収性の材料、例えば平板状の金属酸化物、金属硫化物及び金属窒化物、例えばとりわけケイ素、アルミニウム又はアルミニウムとマンガンでドーピングされていてよい平板状の(半乳白色の)α−酸化鉄(III)(α−Fe、ヘマタイト)、フレーク状の(乳白色の)酸化鉄(II/III)(Fe、マグネタイト)、硫化モリブデンフレーク、窒化ホウ素フレーク及びグラファイトフレークである。同様に、非吸収性の(無色の)透明な材料、例えば平板状のオキシ塩化ビスマス、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムのフレークが適当である。
【0028】
特に適当な本来は低屈折性にすぎない材料のための例は、とりわけケイ酸塩フレーク、例えば特に淡色もしくは白色のマイカ、有利には湿式粉砕されたムスコバイト、また別の天然マイカ、例えばフロゴパイト及びビオタイト、合成マイカフレーク、タルクフレーク及びガラスフレークである。
【0029】
前記の低屈折性の材料のための高屈折性の被覆として、特に高屈折性の金属酸化物、金属窒化物及び金属硫化物、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛及び酸化スズ、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄、酸化クロム及びイルメナイト並びに酸化数<4〜2を有するチタンを含有する還元されたチタン化合物、例えば二酸化チタン被覆された基体のアンモニア、水及び/又は炭化水素による還元によって生じるTi、Ti、TiO、オキシ窒化チタン及びTiNが適当である。この場合に、イルメナイトの他に、特に二酸化チタン及びその還元生成物並びに酸化鉄(III)が有利である。前記の高屈折性の被覆のために慣用の幾何学的な層厚は、約10〜300nm、特に20〜200nmの範囲である。
【0030】
一般に、該基体小板は、約1〜200μm、特に5〜100μmの平均最大直径及び金属製基体の場合には約0.1〜1μm、特に約0.5μmの厚さ及び非金属製基体の場合には約0.3μmの厚さを有する。その比自由表面積(BET)は、通常は金属製基体の場合には1〜15m/g、特に0.1〜5m/gであり、非金属製基体の場合には1〜12m/gである。
【0031】
典型的に、前記の基体小板をまず誘電性の、低屈折性の、無色又は可視光を選択的に吸収できる層で覆い、かつ次いで反射性の、可視光を少なくとも部分的に透過する層で覆う。もちろん、複数の同じ又は異なるかかる層パケットでの被覆も可能であるが、1つの層パケットのみでの被覆が有利である。
【0032】
低屈折性の層のために慣用の材料は、本願では、例えば金属酸化物及び金属酸化物水和物、例えば酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、水酸化アルミニウム及びその混合物であり、その際、酸化ケイ素(水和物)が有利である。前記の酸化物層中に着色剤を導入することによって、選択的吸収性の被覆を得ることもできる。
【0033】
光学系を完全なものにする反射性層に関しては、高屈折性であり、かつ可視光を吸収できない、選択的吸収性又は非選択的吸収性であるか、低屈折性であってよいが、その際、可視波長領域で高い吸収定数(一般に≧4)を示す材料のシェルが適当である。
【0034】
詳細には、以下の特に適当な高屈折性の材料が挙げられる:
− 非吸収性材料:
金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化チタン水和物、二酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム水和物、二酸化スズ、酸化スズ水和物、酸化亜鉛、酸化亜鉛水和物及びその混合物、その際、二酸化チタン及び酸化チタン水和物及び約5質量%までの別の金属酸化物、特に二酸化スズ、また二酸化ケイ素を含有するその混合物が有利である;オキシ塩化ビスマス;金属硫化物、例えば硫化亜鉛;
− 選択的吸収性の材料:
金属酸化物及び金属窒化物、例えば特に有利には酸化鉄(III)(α−及びγ−Fe)、酸化クロム(III)、酸化チタン(III)及び窒化チタン(TiN及びオキシ窒化チタンTiO)、その際、二酸化チタンとの混合物中には一般に少量の酸化チタン及び窒化チタンが存在し、またバナジン酸ビスマス及び亜酸化モリブデン(モリブデンブルー)並びに選択的吸収性の着色剤で“着色された”無色の金属酸化物層、例えば選択的吸収性の金属カチオンでドーピングされているか又は着色剤含有被膜で被覆されている二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる層;
− 非選択的吸収性の材料:
揮発性金属化合物の気相分解によって堆積されうる金属、特に有利にはモリブデン、有利には鉄、タングステン及びクロム、またコバルト及びニッケル並びに前記の金属の混合物並びに例えば湿式化学的に還元によって金属塩溶液から堆積されうる金属、例えば銀、銅、金、パラジウム、白金及び合金、例えばNiP、NiB、NiCo、NiWP、CoP及びAgAu、金属酸化物、例えば有利にはマグネタイト(Fe)、また酸化コバルト(CoO、Co)及び酸化バナジウム(VO、V)並びにまた前記の酸化物と金属との混合物、例えばマグネタイト/鉄;金属硫化物、例えば特に有利には硫化モリブデン、有利には硫化鉄、硫化タングステン及び硫化クロム、また硫化コバルト及び硫化ニッケル並びに前記の硫化物の混合物、例えばMoS/WS及び、とりわけまた前記の硫化物とそれぞれの金属との混合物、例えばMoS/モリブデン及びそれぞれの金属の酸化物との混合物、例えばMoS/酸化モリブデン;炭素。
【0035】
低屈折性であるが、強吸収性である材料の例として、金属、例えばアルミニウムが挙げられる。
【0036】
前記の被覆の幾何学的層厚は、選択される層材料の光学特性に依存して変化し、そして1〜約500nmであってよい。有利な幾何学的層厚は、高屈折性の、非吸収性の材料の場合には5〜50nm、特に10〜40nmであり、かつ高屈折性の、選択的吸収性の材料の場合には1〜500nm、特に10〜150nmである。高屈折性の、非選択的吸収性の材料については、幾何学的層厚は、有利には1〜100nmの範囲にあり、その際、強吸収性の金属、例えばモリブデン及びクロムについては、層厚は1〜25nmが特に有利であり、弱吸収性の材料、例えばマグネタイトについては、層厚は10〜50nmが特に有利であり、かつ金属硫化物を含有する材料、例えばMoS含有層については層厚は5〜20nmが特に有利である。低屈折性の、強吸収性の材料の場合には、幾何学的層厚は専ら、有利には1〜25nm、特に有利には5〜20nmである。
【0037】
角度変色性光沢顔料は、名称Variocrom(R)(BASF)、(Colorstream(R)、Merck)及びChromaflair(R)(Flex Products)として市販されている。
【0038】
本発明による角度変色性光沢顔料の低屈折性の層において、該層の分子格子中を通過するのに十分に小さく、かつ分子格子と相互作用することができ、そして溶剤を持続的に格子中に固定できる官能基を有する極性の有機溶剤が挿入されている。
【0039】
従って前記の溶剤は、既に層中に挿入された水分子を十分に排出し、そして該層中への水分子の新たな挿入を十分に抑制することが可能である。それによって前記層の層厚及び、従ってその色特性は実質的に一定に保持される。
【0040】
前記の溶剤の分子容積は、相応して一般に60〜500Åである。
【0041】
適当な官能基は、例えばヒドロキシル基及びアミド基である。ヒドロキシル基は、この場合に有利であり、そしてSiO格子中でエーテル化により溶剤分子を固定する。アミド基はこの場合にまず鹸化し、そして次いで同様にエーテル架橋を介して溶剤分子を結合せねばならない。
【0042】
特に有利な溶剤のための例として、エチレングリコール、グリセリン及びホルムアミドが挙げられ、その際、エチレングリコールがより特に有利である。
【0043】
本発明による角度変色性光沢顔料は、極性の有機溶剤を用いて熱処理によって得られる。
【0044】
通常はこの場合に、溶剤中の顔料粒子の懸濁液を、有利には撹拌しながら100℃乃至それぞれの還流温度にまで加熱する。エチレングリコールを溶剤として使用する場合には、有利には少なくとも150℃にまで、特に有利には少なくとも180℃にまで加熱する。
【0045】
一般に該懸濁液は約1〜50質量%、特に10〜40質量%の顔料含有量を有する。
【0046】
一般に溶剤を用いる熱処理は0.5〜120時間、有利には2〜12時間続ける。
【0047】
特に有利な光沢顔料は、付加的なシランでの処理によって得られる。もちろんこの場合に、種々のシランの混合物を使用してもよい。
【0048】
このためには、とりわけ、1〜3個の加水分解可能なアルコキシ基を有し、かつ炭素原子を介してケイ素原子に結合された、官能化されていてよい1〜3個の有機基を有するシランが適当である。
【0049】
従って一般式I
SiX
[式中、変値は以下の意味を有する:
Rは、一不飽和又は多不飽和であり、かつ/又はC〜C−アルカノールオキシ、ハロゲン、アミノ及び/又は飽和もしくは不飽和の、エポキシ基を有してよいC〜C−アルコキシによって置換されていてよい、C〜C18−アルキル基であり、その際、基Rは、a>1の場合は同一又は異なってよく;
Xは、C〜C−アルコキシであり、その際、基Xは、b>1の場合は同一又は異なってよく;
aは、1、2又は3であり;
bは、1、2又は3であり、その際、合計a+b=4である]のシランが特に適当である。
【0050】
一般式Ia
R′SiX′ Ia
[式中、変値は以下の意味を有する:
R′は、末端で飽和又は不飽和の、エポキシ基を有してよいC〜C−アルコキシによって置換されていてよいビニル又はプロピルであり、
X′はメトキシ又はエトキシである]のシランがより特に有利である。
【0051】
適当なシランのための例を詳細に挙げる:ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、アセトキシプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシランであり、その際、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及びプロピルトリエトキシシランが有利である。
【0052】
本発明による角度変色性光沢顔料をシランで処理する場合に、一般に0.1〜20質量%、有利には1〜10質量%のシランが使用される。
【0053】
この場合にシランは、極性の有機溶剤中での加熱の前、間又は後に添加してよい。もちろんシランは少しずつ種々の時間まで添加してもよい。
【0054】
有利には顔料粒子をまず、溶剤を用いるだけで熱処理し、次いでシランを添加し、そして更に0.5〜12時間、特に1〜4時間、50℃乃至還流温度に、有利には少なくとも100℃まで加熱し、そしてエチレングリコールを使用する場合には特に有利には少なくとも180℃まで加熱する。
【0055】
予め加水分解されたシランを使用することが有利な場合がある。このために、予め水、水性の無機酸又は有機酸(例えば塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸)又は水性の無機塩基(例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム)を混合する。
【0056】
しかしながらまた、シラン及び水性の酸もしくは塩基を続けて顔料懸濁液に添加してもよい。
【0057】
極性の有機溶剤のみ又はシランと一緒のいずれかで処理された光沢顔料の単離は、目的に応じて濾過によって行い、その際、まず室温に冷却するか、又は有利には60〜130℃で高温濾過してもよい。通常は、顔料を他の溶剤(例えばエチレングリコール)又は前記の溶剤と混和可能な溶剤(例えばブチルアセテート、プロポキシプロパノール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)で洗浄する。光沢顔料を後に添加すべき溶剤を選択すれば、得られる顔料ペーストは直接又は約60〜150℃での乾燥後に使用できる。
【0058】
本発明による角度変色性光沢顔料は、種々の使用媒体、特に塗料、印刷インキ、インキ、プラスチック、ガラス、セラミック製品及び装飾化粧品の着色のための卓越して適当である。
【0059】
該顔料は、粉末塗料、とりわけ焼き付け塗料、例えば、典型的に100〜200℃で焼き付けられる溶剤含有のローソリッド、ミディアムソリッド及びハイソリッド系及び相応の水系の着色のために特に意義がある。
【0060】
該顔料は、この場合に未処理の顔料に対して明らかに一定の色特性、すなわち明らかに低減された色特性の変化及び実質的により迅速な最終安定状態への到達に優れている。
【0061】
望ましくは、本発明による角度変色性光沢顔料を、使用媒体中の分散又は調整を改善するために、慣用の顔料添加剤で更に被覆してもよい。
【0062】
実施例
A)本発明による光沢顔料の製造
実施例1
1.5lのエチレングリコール中の300gの、EP−A−708154号の例1と同様に得られた二酸化ケイ素及び酸化鉄(III)で被覆されたアルミニウム顔料(平均粒径17μmのアルミニウムフレーク、63質量%のSiO、10質量%のFe)の懸濁液を4時間、還流加熱(191℃)した。110℃に冷却した後に、該顔料を濾過分離し、そして更なるエチレングリコールで洗浄した。72質量%の顔料ペーストが得られた。
【0063】
実施例2
1.5lのエチレングリコール中の実施例1からの300gの光沢顔料の懸濁液を4時間、還流加熱した。16.5gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの10分間の添加後に、更に2時間、還流加熱(191℃)した。実施例1と同様に後処理した後に、74質量%の顔料ペーストが得られた。
【0064】
実施例3
実施例2と同様の措置をとるが、8.3gだけの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを使用した。
【0065】
実施例4
実施例2と同様の措置をとるが、4.1gだけの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを使用した。
【0066】
実施例5
実施例2と同様の措置をとるが、17.4gの3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランを使用した。
【0067】
実施例6
実施例2と同様の措置をとるが、10.4gのビニルトリメトキシシランを使用した。
【0068】
実施例7
実施例2と同様の措置をとるが、7.5gのプロピルトリエトキシシランを使用した。
【0069】
実施例8
実施例2と同様の措置をとるが、それぞれ170℃にまでだけ加熱した。72質量%の顔料ペーストが得られた。
【0070】
実施例9
実施例2と同様の措置をとるが、顔料ペーストを100℃で乾燥させた。
【0071】
実施例10
実施例2と同様の措置をとるが、顔料ペーストを130℃で乾燥させた。
【0072】
実施例11
1.5lのエチレングリコール中の実施例1からの300gの光沢顔料の懸濁液を4時間、還流加熱した。懸濁液を120℃に冷却させ、そして16.5gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの10分の添加後に、更に2時間前記の温度で撹拌した。実施例1と同様に後処理した後に、72質量%の顔料ペーストが得られた。
【0073】
実施例12
実施例2と同様の措置をとるが、150gだけの光沢顔料及び、1mlの水及び1mlの濃酢酸の添加によって使用の1時間前に予め加水分解された8.3gの3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを使用した。72質量%の顔料ペーストが得られた。
【0074】
実施例13
実施例と同様の措置をとるが、EP−A−708154号の例1と同様にして得られた、二酸化ケイ素及び酸化鉄(III)で被覆された300gのアルミニウム顔料(平均粒径16μmのアルミニウムフレーク、62質量%のSiO、14質量%のFe)を使用した。70質量%の顔料ペーストが得られた。
【0075】
実施例14
実施例13と同様の措置をとるが、まず8時間、還流加熱し、そしてシランの添加後に更に6時間還流加熱した。74質量%の顔料ペーストが得られた。
【0076】
B)本発明による光沢顔料の使用
得られた顔料の色特性の評価のために、アクリレートベースの768gの水系焼き付け塗料(20質量%の固体含量)中にそれぞれ32gの顔料を撹拌導入し、そしてプロペラ型撹拌機で30分間1700回転/分で分散させた。得られた塗料を、次いで6回の噴霧工程で黒色/白色に塗装されたアルミニウム板上に隠蔽適用し、そして15分間のフラッシュオフ及び水系焼き付けクリヤーコートの塗布後に130℃で30分間焼き付けた。
【0077】
CIELAB色値の測定を、変角分光測色計Multiflash(Optronik社)を用いて光沢角に対して25゜の角度差で、それぞれ焼き付け工程の0.5時間後、1時間後、そして24時間後に行った。次いで1時間後もしくは24時間後の測定値(試料)の0.5時間後の測定値(基準)に対する色差dEを以下の式に従って測定した。
【0078】
dE=[(dL+(da+(db1/2
その際、以下の意味を有する:
dL=L−L:試料と基準との明度差
da=a−a:試料と基準との赤緑差
db=b−b:試料と基準との黄青差
色差dEは、彩度、色相及び明度に関する試料と基準との間の差異の大きさについての尺度である。dE値が小さければ小さいほど、試料と基準の色特性はより高く一致する。
【0079】
得られた結果を以下の表にまとめる、その際、比較のためにそれぞれの未処理の顔料(V1及びV13)を一緒に挙げている。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、干渉色を示す層を有し、該層中に官能基を介して層材料と相互作用できる極性有機溶剤が挿入されている角度変色性光沢顔料。
【請求項2】
少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、干渉色を示す層を有し、かつ官能基を介して層材料と相互作用できる極性有機溶剤中で熱処理されている角度変色性光沢顔料。
【請求項3】
有機溶剤としてエチレングリコールが使用されている、請求項1又は2記載の光沢顔料。
【請求項4】
付加的にシランで処理されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の光沢顔料。
【請求項5】
一般式I
SiX
[式中、変値は以下の意味を有する:
Rは、一不飽和又は多不飽和であり、かつ/又はC〜C−アルカノールオキシ、ハロゲン、アミノ及び/又は飽和もしくは不飽和の、エポキシ基を有してよいC〜C−アルコキシによって置換されていてよい、C〜C18−アルキル基であり、その際、基Rは、a>1の場合は同一又は異なってよく;
Xは、C〜C−アルコキシであり、その際、基Xは、b>1の場合は同一又は異なってよく;
aは1、2又は3であり;
bは1、2又は3であり、その際、合計a+b=4である]のシランで処理されている、請求項4記載の光沢顔料。
【請求項6】
付加的に、一般式Ia
R′SiX′ Ia
[式中、変値は以下の意味を有する:
R′は、末端で飽和又は不飽和の、エポキシ基を有してよいC〜C−アルコキシによって置換されていてよいビニル又はプロピルであり、
X′はメトキシ又はエトキシである]のシランで処理されている、請求項4又は5記載の光沢顔料。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか1項記載の光沢顔料の製造方法において、顔料粒子を有機溶剤中で温度≧100℃に加熱することを特徴とする光沢顔料の製造方法。
【請求項8】
請求項4から6までのいずれか1項記載の光沢顔料の製造方法において、加熱の前、間及び/又は後にシランを添加することを特徴とする光沢顔料の製造方法。
【請求項9】
塗料、印刷インキ、インキ、プラスチック、ガラス、セラミック製品及び装飾化粧品の着色のための、請求項1から6までのいずれか1項記載の光沢顔料の使用。
【請求項10】
焼き付け塗料及び粉末塗料の着色のための、請求項1から6までのいずれか1項記載の光沢顔料の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、干渉色を示す層を有し、該層中にヒドロキシル基又はアミド基を介して層材料と相互作用できる極性有機溶剤が挿入されている角度変色性光沢顔料。
【請求項2】
少なくとも1つの誘電性の、低屈折性の、干渉色を示す層を有し、かつ極性有機溶剤中で熱処理されている角度変色性光沢顔料。
【請求項3】
有機溶剤としてエチレングリコールが使用されている、請求項1又は2記載の光沢顔料。
【請求項4】
付加的にシランで処理されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の光沢顔料。
【請求項5】
一般式I
SiX
[式中、変値は以下の意味を有する:
Rは、一不飽和又は多不飽和であり、かつ/又はC〜C−アルカノールオキシ、ハロゲン、アミノ及び/又は飽和もしくは不飽和の、エポキシ基を有してよいC〜C−アルコキシによって置換されていてよい、C〜C18−アルキル基であり、その際、基Rは、a>1の場合は同一又は異なってよく;
Xは、C〜C−アルコキシであり、その際、基Xは、b>1の場合は同一又は異なってよく;
aは1、2又は3であり;
bは1、2又は3であり、その際、合計a+b=4である]のシランで処理されている、請求項4記載の光沢顔料。
【請求項6】
付加的に、一般式Ia
R′SiX′ Ia
[式中、変値は以下の意味を有する:
R′は、末端で飽和又は不飽和の、エポキシ基を有してよいC〜C−アルコキシによって置換されていてよいビニル又はプロピルであり、
X′はメトキシ又はエトキシである]のシランで処理されている、請求項4又は5記載の光沢顔料。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか1項記載の光沢顔料の製造方法において、顔料粒子を有機溶剤中で温度≧100℃に加熱することを特徴とする光沢顔料の製造方法。
【請求項8】
請求項4から6までのいずれか1項記載の光沢顔料の製造方法において、加熱の前、間及び/又は後にシランを添加することを特徴とする光沢顔料の製造方法。
【請求項9】
塗料、印刷インキ、インキ、プラスチック、ガラス、セラミック製品及び装飾化粧品の着色のための、請求項1から6までのいずれか1項記載の光沢顔料の使用。
【請求項10】
焼き付け塗料及び粉末塗料の着色のための、請求項1から6までのいずれか1項記載の光沢顔料の使用。

【公表番号】特表2006−504810(P2006−504810A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−503563(P2004−503563)
【出願日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/004798
【国際公開番号】WO2003/095564
【国際公開日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】