説明

角形状缶の製造方法及び缶成形装置

【課題】胴部にビードが形成された角形状缶を、搬送ライン内にて搬送しながら効率的に製造することが可能な角形状缶の製造方法及び缶成形装置を提供すること。
【解決手段】略四角形状に形成された側壁部W2の開口に端板を接合してなる角形状缶の筒体の胴部にビードを成形する缶成形装置であって、搬送ラインと、前記搬送ラインで搬送される筒体W11の前記側壁部W2内側に配置される内ビードローラ11と、前記筒体W11の前記側壁部W2外側に配置されるとともに前記側壁部W2を挟んで前記内ビードローラ11と対向可能に配置される外ビードローラ12とを備え、前記内ビードローラ11と前記外ビードローラ12は、回転ながら協働して前記側壁部W2を押圧して、前記側壁部W2にビードを成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる18リットル缶等の角形状缶の缶胴に効率的にビードを形成するための角形状缶の製造方法及び缶成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、角形状缶の耐荷重を向上することにより、角形状缶の材料鋼板板厚の薄肉化が図られている。このような、角形状缶の耐荷重を向上するために、角形状缶の胴部及びコーナー部に補強ビードを形成する方法が知られている。
このように、角形状缶の胴部及びコーナー部に縦補強凸ビードをはじめとする補強ビードを形成する場合、端板を取付けて角系状缶とする前の筒状に形成された筒体に対して、筒体胴部の内側に配置した内金型と外側に配置した外金型により筒体の胴部を挟んでプレス加工によりビードを成形することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−237185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献に示される缶成形装置では、ビード金型を構成する内金型と外金型を互いに近接離間することで、角形状缶上に縦補強凸ビードをプレス加工で形成するようにしているが、このようなプレス加工によるビード形成では、ラインに沿って次々と供給される角形状缶を一時停止した上で、缶材を挟んで内側及び外側に配置された内金型、外金型でプレス加工する必要があり、作業効率が悪いという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、胴部にビードが形成された角形状缶を、搬送ライン内にて搬送しながら効率的に製造することが可能な角形状缶の製造方法及び缶成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、略四角形状に形成された胴部の両端が開放された筒体の少なくとも一方の開口に端板を接合してなる角形状缶の筒体の胴部にビードを成形する缶成形装置であって、前記胴部の一方の開口から他方の開口に向かって前記筒体を搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインで搬送される筒体の前記胴部内側に配置される内ビードローラと、前記筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内ビードローラと対向可能に配置される外ビードローラとを備え、前記内ビードローラと前記外ビードローラは、回転ながら協働して前記胴部を押圧して、前記胴部にビードを成形することを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明は、略四角形状に形成された胴部の両端が開放された筒体の少なくとも一方の開口に端板を接合してなる角形状缶の製造方法であって、矩形状の材料板材を、前記筒体と対応するように折り曲げるとともに、前記胴部の両端を開放させて対辺同士を接合して第1筒体を形成し、前記胴部の一方の開口から他方の開口に向かって前記第1筒体を搬送し、前記搬送ラインで搬送される前記第1筒体の前記胴部内側に配置した内ビードローラと、前記第1筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内ビードローラと対向可能に配置した外ビードローラとを、前記第1筒体の前記胴部に回転ながら協働して押圧して、前記胴部にビードを成形することを特徴とする。
【0008】
この明細書において、筒体とは、未成形筒体(第1筒体)、ビード付筒体(第2筒体)、リフォーム筒体(第3筒体)を含んでおり、未成形筒体はビードが未成形の状態を、ビード付筒体はビードが成形された状態を表し、リフォーム筒体はビード付筒体をリフォームしたものであり端部が端板と対応する形状に開口されている。なお、未成形筒体からビード付筒体、ビード付筒体からリフォーム筒体に成形される中間工程品も筒体に含まれる。
【0009】
この発明に係る缶成形装置及び角形状缶の製造方法によれば、搬送ラインで搬送される筒体の胴部内側に配置される内ビードローラと、筒体の胴部外側に配置される外ビードローラにより胴部を挟み、筒体を搬送ラインで搬送しながら内外ビードローラが回転して搬送方向に沿ったビードを効率的に形成することができる。その結果、搬送を一時的に停止することなく、胴部にビードが形成された角形状缶を搬送ライン内にて搬送しながら効率的に製造することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の缶成形装置であって、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラは、それぞれ前記筒体の搬送方向と直交する軸線周りに回転し、少なくともいずれか一方が近接することにより、回転しながら搬送される前記筒体の前記胴部を押圧して前記ビードを成形することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の角形状缶の製造方法であって、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラを、それぞれ前記第1筒体の搬送方向と直交する軸線周りに回転し、少なくともいずれか一方が近接することにより回転しながら搬送される前記第1筒体の前記胴部を押圧して前記ビードを成形することを特徴とする。
【0012】
この発明に係る缶成形装置及び角形状缶の製造方法によれば、内ビードローラ及び外ビードローラが、それぞれ筒体の搬送方向と直交する軸線周りに回転するとともに、少なくともいずれか一方が近接して、搬送される筒体の胴部を押圧してビードを成形するので、構成を簡単かつ小型化するとともに、筒体に対する挟み込みを安定して行なうことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の缶成形装置であって、前記搬送ラインが前記筒体を、前記胴部のビード成形予定部と、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラとが対応する位置に搬送したのに同期して、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラを相対的に接近させて前記ビードを形成することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の角形状缶の製造方法であって、前記搬送ラインにより搬送された前記第1筒体の前記胴部のビード成形予定部が、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラと対応する位置に来たときに、前記ビード成形予定部と同期させて前記内ビードローラ及び前記外ビードローラを相対的に接近させて前記胴部を押圧して前記ビードを形成することを特徴とする。
【0015】
この発明に係る缶成形装置及び角形状缶の製造方法によれば、搬送ラインが筒体を、胴部のビード成形予定部と内外ビードローラとが対応する位置に搬送したのに同期して、内外ビードローラが相対的に接近するので、筒体の挟み込み及び押圧を安定かつ確実に行なうことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の缶成形装置であって、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラよりも前記搬送方向前側には、前記筒体の胴部をリフォームするリフォームローラが設けられ、前記リフォームローラは、前記筒体の前記胴部内側に配置される内リフォームローラと、前記筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内リフォームローラと対向可能に配置される外リフォームローラとを備え、前記内リフォームローラと前記外リフォームローラは、リフォームローラ押圧機構により前記胴部のコーナーを回転ながら協働して押圧するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の角形状缶の製造方法であって、前記第1筒体の胴部に前記ビードを成形して前記第2筒体を形成した後に、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラよりも前記搬送方向前側に配置した、前記第2筒体の前記胴部内側に配置される内リフォームローラと、前記第2筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内リフォームローラと対向可能に配置される外リフォームローラとからなるリフォームするリフォームローラを、回転ながら協働して前記胴部のコーナーを押圧して前記第2筒体をリフォームされた第3筒体とすることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る缶成形装置及び角形状缶の製造方法によれば、筒体の胴部にビードを成形した後に、内外リフォームローラにより、筒体をリフォームするので、ビード加工後の筒体における胴部を、搬送ラインを一時的に停止することなく、安定した平面状に形成してリフォームすることができる。また、搬送方向に複数の内外リフォームローラを配列した場合には、安定したリフォームを行なうことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る角形状缶の製造方法及び缶成形装置によれば、搬送ラインを一時停止させることなく、ビードを形成することができ、ひいては角形状缶製造における効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る角形状缶の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る筒体の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る角形状缶の製造工程の概略を示す図である。
【図4】一実施形態に係る缶成形装置の概略構成を示す図である。
【図5】ビード成形ユニットのビードローラの配置を示す概略構成図であり、(A)は側壁部W2のA面側でのビード加工を行うビードローラ(A面1ST、A面2ND)の配置を示し、(B)は側壁部W2のB面側でのビード加工(B面1ST、B面2ND)を行うビードローラの配置を示している。
【図6】A面1ST、B面1ST、A面2ND、B面2NDの内ビードローラと外ビードローラの位置関係を示す図である。
【図7】(A)内ビードローラの使用時、(B)内ビードローラの不使用時の位置を示す図である。
【図8】内ビードローラと外ビードローラの形状を示す図である。
【図9】筒体に対する2セットの内ビードローラと外ビードローラの配置状態を示す図である。
【図10】筒体に対する各セットの内ビードローラと外ビードローラの配置状態を示す図である。
【図11】(A)リフォームユニットのリフォームローラの配置を示す概略構成図、(B)角形状缶に対するリフォームローラの配置状態を示す図である。
【図12】内リフォームローラと外リフォームローラの形状を示す図である。
【図13】角形状缶に対して内リフォームローラと外リフォームローラが接触回転する状態を示す図である。
【図14】図3(C)におけるY−Y断面を示す図であり、(A)溶接後の未成形筒体を、(B)ビード加工後のビード付筒体を、(C)リフォーム加工後のリフォーム筒体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜図14を参照して、本発明の一実施形態に係る缶成形装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る角形状缶W10の概略構成を示す図であり、図1(A)は上面図を、図1(B)は一部破断側面図を示している。
【0022】
角形状缶W10は、図1に示すように、平面視して略四角形とされ四隅がコーナー部とされた天板(端板)WT及び底板(端板)WBと、これら天板WT及び底板WBの周縁部と連結され側面視略矩形の4つの側壁部W2から形成される胴部とを備え、それぞれの側壁部W2には段差W4による補強凹部が形成されている。
また、各側壁部W2の上下に伸びる段差W4近傍のコーナー部W3側には直線状のビードB(例えば、補強用)が全長にわたり形成されている。
【0023】
図2は、一実施形態に係る角状缶W10の製造工程で成形される略矩形筒状の筒体Wを示す斜視図である。
リフォーム筒体W13の上端部及び下端部には、例えば、溶接又はカシメ等により天板WT及び底板WBの周縁部を取付け、固定することで角形状缶W10の胴部が構成されている。
【0024】
この実施形態において、筒体Wは、胴部を構成する4つの側壁部W2と、側壁部W2を接続する4つのコーナー部W3とを備えている。また、筒体Wは、未成形筒体(第1筒体)W11、ビード付筒体(第2筒体)W12、リフォーム筒体(第3筒体)W13、未成形筒体W11からビード付筒体W12、ビード付筒体W12からリフォーム筒体W13に成形される途中の中間工程品を含む概念である。
未成形筒体W11はビードBが未成形の状態を、ビード付筒体W12はビードBが成形された状態を表し、リフォーム筒体W13はビード付筒体W12をリフォームしたものであり両端部が天板WT及び底板WBと対応する形状に開口されている。
【0025】
図3は、一実施形態に係る角状缶W10の製造工程(製造手順)のうち、筒体W(W11、W12、W13を形成する工程を説明する図である。
まず、例えば、鋼板をプレス加工して、図3(A)に示すような材料板P0を成形する。
材料板P0は、外形が矩形状に切り出され、それぞれの側壁部W2には段差W3により補強凹部が形成されている。符号P11は、筒体Wのコーナー部W3を成形するための屈曲予定部である。
【0026】
次に、図3(B)に示すように、材料板P0の屈曲予定部P11をコーナー部W3を設けて屈曲させ、屈曲により対向する材料板P0の長手方向端部同士を溶接して接合部W5とし、図3(C)に示すような未成形筒体W11を製造する。
【0027】
次いで、図3(C)は筒体Wを示しており、本発明に係る製造方法により未成形筒体W11からビード付筒体W12、ビード付筒体W12からリフォーム筒体W13の順に順次成形される。その後、リフォーム筒体W13の両端開口部に底板WB及び天板WTを取付けて角形状缶W10を製造する。
【0028】
図4は、本発明に係る缶成形装置の概略構成を示す図であり、符号5は缶成形装置を、符号1は筒体Wを矢印X方向に順次搬送する搬送ラインを示している。
搬送ライン1は、略四角形状の筒状に形成された両端が開放された筒体Wを一方の開口から他方の開口に向かって搬送するようになっている。
本例において、図5、図6に示すように、筒体Wの胴部は、互いに対向する位置関係にあるA面の側壁部W2とB面の側壁部W2(図5〜図6参照)とを備えている。
【0029】
また、この搬送ライン1では、筒体Wの搬送方向(矢印X方向)に沿って、ビード成形ユニット2と、リフォームユニット3とが直列に設けられている。
ビード成形ユニット2は、図5〜図10に示すように、搬送ライン1において筒体Wの搬送経路に配置された複数のビードローラセット10と、筒体Wの搬送時に、これらビードローラセット10を動作させるビードローラ押圧機構15(図7参照)とを備えている。
【0030】
ビードローラセット10は、搬送ライン1において筒体Wの搬送経路の内側及び外側に配置されて互いに近接離間する一対の内ビードローラ11と外ビードローラ12とを備え、ビードローラ11と外ビードローラ12はそれぞれ回転軸11A、12Aを中心として回転するようになっている。
ビードローラセット10は、図5、図6に示すように、筒体Wの一方(A面)側において対向するふたつの側壁部W2と、筒体Wの他方(B面)側において対向するふたつの側壁部W2と対応して配置されている。
【0031】
この実施形態では、A面側の各側壁部W2の2条のビードBと対応して各側壁部W2に二組のビードローラセット10が配置され、同様に、B面の各側壁部W2には二組のビードローラセット10が配置されており、搬送方向(矢印X方向)の同じ位置に8組のビードローラセット10が配置されている。
また、A面のビードローラセット10の回転軸11A、12Aと、B面のビードローラセット10の回転軸11A、12Aとは、筒体Wの軸線W1方向から見たときに互いに直交して配置されている。
【0032】
また、この実施形態では、例えば、上記8組のビードローラセット10が、搬送方向(矢印X方向)に(搬送方向後側位置:1ST、搬送方向前側位置:2ND)に一定間隔をあけて直列に2段に設けられている。
また、それぞれの内ビードローラ11は、ビードローラ押圧機構15により、対応する外ビードローラ12に対して進退可能とされている。
【0033】
また、この実施形態では、例えば、1STのB面用のビードローラセット10及び2NDのA面用のビードローラセット10を縮径して、1STのA面用のビードローラセット10と、2NDのB面用のビードローラセット10のみによりビードBを成形することで各側壁部W2のビードBに位置ずれ等が生じるのを抑制している。なお、図5、図6は、1STのB面及び2NDのA面のビードローラセット10を便宜上縮径していない状態で図示している。
【0034】
ビードローラ押圧機構15は、アクチュエータ(例えば、エアシリンダ)16と、連結部17と、テーパ状のローラ作動部18とを備えている。アクチュエータ16のロッドは先端部で同期用伝達板16Aに連結され、同期用伝達板16Aが連結部17を介してローラ作動部18と連結されていて、アクチュエータ16が矢印F、R方向に進退するとローラ作動部18が移動するようになっている。
【0035】
また、ローラ作動部18は、内ビードローラ11及び外ビードローラ12のカムフォロアと接触していて、内ビードローラ11及び外ビードローラ12を矢印M方向とその逆方向に移動させるようになっている。また、筒体Wは案内ローラ19(搬送方向後側位置19A、搬送方向前側位置位置19B)が内接して案内されるようになっている。
【0036】
その結果、図7(A)に示すように、アクチュエータ16のロッドが後退してローラ作動部18が同期用伝達板16Aを矢印R方向に移動させると、内ビードローラ11が矢印M方向に外ビードローラ12に向かって前進した「ローラ使用位置」に移動するようになっている。
【0037】
また、図7(B)に示すように、アクチュエータ16のロッドが前進してローラ作動部18が同期用伝達板16Aを矢印F方向に移動させると、内ビードローラ11が外ビードローラ12から後退した「ローラ不使用位置」に移動するようになっている。
【0038】
また、図8〜図10に示すように、内ビードローラ11の先端部には凹形状部11Bが形成され、かつ外ビードローラ12の先端部には、凹形状部11Bと対応する凸形状部12Bが形成されており、これらの間に、搬送ライン1で搬送された筒体Wの側壁部W2が挟まれた状態で、搬送ライン1による搬送で筒体Wが矢印X方向に移動した場合に、これらビードローラ11、12が筒体Wの側壁部W2に回転しながら接触、押圧することで、未成形筒体W11にビードBが形成されるようになっている。
【0039】
内ビードローラ11が前進して外ビードローラ12に近接して「ローラ使用位置」に位置した状態で、搬送されてきた筒体Wが内ビードローラ11と外ビードローラ12に挟まれて、内外ビードローラ11、12が回転しながら筒体Wに接触、協働して押圧することにより筒体Wの側壁部W2にビードBが形成されるようになっている。
【0040】
この実施形態では、筒体Wの全長にわたってビードBが形成されるため、ビード成形ユニット2は、図7(A)に示すように、内ビードローラ11が外ビードローラ12に対して矢印M方向に前進したローラ使用位置で常に運転されるようになっている。
【0041】
リフォームユニット3は、搬送ライン1におけるビード成形ユニット2の搬送方向前側(後工程)に、ビード加工後に湾曲した筒体Wをリフォームするものであり、図11~13に示すように、筒体Wの搬送経路に沿って、筒体Wの側壁部W2のコーナー部W3の内側に配置される内リフォームローラ21と、内リフォームローラ21と対向し側壁部W2を挟んで外側に配置される外リフォームローラ22とを有するリフォームローラセット20を備え、内リフォームローラ21と外リフォームローラ22は、側壁部W2のコーナー部W3を回転ながら協働して押圧するようになっている。
【0042】
内リフォームローラ21及び外リフォームローラ22は、図11(B)に示すように、筒体Wの軸線W1に対称に筒体Wの4つのコーナー部W3にそれぞれ1セット(合計4セット)が搬送方向の同位置に設けられており、筒体Wの搬送方向(矢印X方向)に一定間隔で5段(合計20セット)に配置され、筒体Wが通過することで側壁部W2がリフォームされるようになっている。なお、内リフォームローラ21及び外リフォームローラ22は、筒体Wの形態に合わせて軸線W1からの位置が調整できるようになっている。
【0043】
また、図12に示すように、内リフォームローラ21の先端部には凸形状部21Bが形成され、かつ外リフォームローラ22の先端部には、凸形状部21Bと対応する凹形状部22Bが形成されている。
また、リフォームユニット3は、図13に示すように、搬送ライン1で搬送された筒体Wのコーナー部W3を内リフォームローラ21及び外リフォームローラ22で挟んで、内外リフォームローラ21、22が回転しながら筒体Wの側壁部W2に接触して、筒体Wのコーナー部W3に外側(矢印N方向)に押圧する。これにより、ビード加工後に湾曲したビード付筒体W12の側壁部W2を、平面状に成形してリフォームする。
【0044】
次に、缶成形装置5による筒体Wの製造は以下のように行なわれる。なお、図14は、図3(C)におけるY−Y断面を示す図であり、(A)溶接後の未成形筒体W11、(B)ビード加工後のビード付筒体W12、(C)リフォーム加工後のリフォーム筒体W13に係る断面を示している。なお、図14(A)〜(C)において二点鎖線の丸で示したのは、各筒体W(W11、W12、W13)のコーナ部W3を拡大した図である。
まず、缶成形装置5における成形をする前に、矩形状の材料鋼板を両端が開放された四角形の開口部となるようにコーナ部W3を成形しつつ折曲げて、一方の開口部から他方の開口部に向かう上記両端を結ぶ辺を溶接等により接合して、第1筒中間体W11を製造する(図3(A)参照)。
【0045】
次に、搬送ライン1によって未成形筒体W11がビード成形ユニット2に搬入されたら、未成形筒体W11を搬送しつつ内外ビードローラ11、12により未成形筒体W11を挟んで回転しながら押圧する。その結果、筒体WにビードBが形成されてビード付筒体W12が形成される(図14(A)〜(B)参照)。
ビード成形ユニット2による未成形筒体W11へのビード加工は、搬送ライン1を一時停止させることなく、搬送ライン1で搬送される未成形筒体W11に、順次行なわれる。
【0046】
次いで、搬送ライン1によってビード付筒体W12がリフォームユニット3に搬送されたら、内リフォームローラ21及び外リフォームローラ22により筒体Wのコーナ部W3を挟み、内外リフォームローラ21、22を回転しながら側壁部W2に接触させるとともに押圧する。その結果、ビード付筒体W12の側壁部W2が平面状にリフォームされて筒体W10が形成される。
リフォームユニット3によるビード付筒体W12のリフォームは、搬送ライン1を一時停止させることなく、搬送ライン1で搬送されるビード付筒体W12に、順次行なわれる。
筒体Wへのビード加工及びリフォームが完了したら、リフォーム筒体W13の両端部の開口のうち、一方又は両側に端板を取付けて角形状缶W10を製造する。
【0047】
缶成形装置5によれば、搬送ライン1で搬送される筒体Wの側壁部W2を内ビードローラ11及び外ビードローラ12により挟み、筒体Wを搬送ライン1で搬送しながら内外ビードローラ11、12が筒体WにビードBを効率的に形成することができる。その結果、搬送を一時的に停止することなく、側壁部W2にビードBが形成された角形状缶を搬送ライン1にて搬送しながら効率的に製造することができる。
【0048】
また、缶成形装置5によれば、内ビードローラ11及び外ビードローラ12が、それぞれ筒体W(W11、W12)の搬送方向と直交する回転軸11A周りに回転し、内ビードローラ11が外ビードローラ12に向かって前進、接近して、搬送される筒体Wの側壁部W2を押圧してビードBを成形するので、ビード成形ユニット2の構成を簡単かつ小型化するとことができる。その結果、ビード成形ユニット2を搬送ライン1及びリフォームユニット3と着脱可能に構成しておくことにより、ビード成形ユニット2を必要に応じて取付け又は取り外すことができる。また、既存のラインに容易に取付けることができる。
【0049】
また、缶成形装置5によれば、未成形筒体W11の側壁部W2にビードBを成形した後に、内外リフォームローラ21、22により、ビード付筒体W12をリフォームするので、ビード加工後のビード付筒体W12の側壁部W2を、搬送ライン1を一時的に停止し、又は搬送ライン1の外に移動することなく、側壁部W2を安定した平面状に形成してリフォームすることができる。また、搬送方向に複数の内外リフォームローラを配列した場合には、安定したリフォームしてリフォーム筒体W13とすることができる。
【0050】
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態が、第1の実施形態と異なるのは、第1の実施形態において、ビードBが筒体Wの全長にわたって形成されていたのに対して、第2の実施形態では、ビードBが筒体Wの長さ方向中央側のみに位置し、両端部にビードBを成形しない。以下、第1の実施形態と相違する点について説明する。その他は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
第2の実施形態では、ビード成形ユニット2への筒体Wの搬入に際し、筒体W両端部のビードBを成形しない部分が通過するときは、内ビードローラ11は後退していて、ビード成形予定部の到達と対応してビードローラ11が外ビードローラ12に向かって矢印M方向に前進し、内ビードローラ11及び外ビードローラ12の間に筒体W挟んで内外ビードローラ11、12が回転しながら搬送される筒体Wを協働して押圧することでビードBを成形する。
【0052】
また、筒体Wへのビード成形を完了してリフォームユニット3への筒体Wの搬出に際し、筒体Wを内外ビードローラ11、12間から次のリフォーム工程に搬送するときには、図7(B)に示すように、内ビードローラ11が外ビードローラ12から後退して「ローラ不使用位置」に位置する。
【0053】
この場合、第1の実施形態と同様に、例えば、1STのB面用のビードローラセット10及び2NDのA面用のビードローラセット10が、ビードBが成形できないように縮径されている。また、ビードローラ押圧機構15のローラ作動部18は、A面用のビードローラセット10とB面用のビードローラセット10が、A面及びB面のそれぞれのビードBの成形位置と対応して作動するように調整されている。
【0054】
次に、第2実施形態に係る筒体Wの製造について製造する。なお、第1筒中間体W11を製造については、第1の実施形態と同様である。
次に、搬送ライン1によって未成形筒体W11がビード成形ユニット2に搬送されて、ビードBを成形しない部分が通過したら、ビードローラ押圧機構15を駆動して、内ビードローラ11を外ビードローラ12に向かって前進させる。そして、未成形筒体W11を搬送しながら、内外ビードローラ11、12を回転しながら側壁部W2に接触させるとともに押圧する。その結果、筒体WにビードBが形成されてビード付筒体W12が形成される(図14(A)〜(B)参照)。
【0055】
次いで、筒体WにビードBが成形されたら、ビードローラ押圧機構15を駆動して、内ビードローラ11を外ビードローラ12から後退させる。ビード成形ユニット2による未成形筒体W11へのビード加工は、搬送ライン1を一時停止させることなく、搬送ライン1で搬送される未成形筒体W11に、順次行なわれる。
ビード付筒体W12のリフォーム及び端板の取付けについては、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
缶成形装置5によれば、搬送ライン1が筒体Wを、側壁部W2のビード成形予定部と内外ビードローラ11、12とが対応する位置に搬送したのに同期して、ビードローラ押圧機構15が、内ビードローラ11を外ビードローラ12に向かって前進させるので、筒体WにおいてビードBを成形しない部分にビードが成形されるのを抑制することができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、缶成形装置5が、ビード成形ユニット2と、リフォームユニット3とを備える場合について説明したが、例えば、ビード成形ユニット2のみを備える構成としてもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、ビード成形ユニット2を流れる筒体Wが、ビードBが必要とされる筒体Wである場合について説明したが、ビードBが必要とされない筒体Wを流す場合に、ビード成形工程をスルーさせて筒体WにビードBを成形しないようにするビード成形セレクト機能を備えてもよい。また、かかる場合に、リフォームユニット3によるリフォームは実施してもよい。
【0059】
また、上記実施形態においては、ビード成形ユニット2において、筒体Wの各側壁部W2に2条のビードBが筒体Wの全長又は両端部をのぞく部分に成形される場合について説明したが、ビードの位置、長さ、数等については任意に設定することができる。
【0060】
また、上記実施の形態においては、A面1STのビードローラ11と、B面2NDのビードローラ11とを用いてビードBを成形する場合について説明したが、すべてのビードローラ11を用いてもよい。
また、ビードローラ11を縮径せずに、例えば、ローラ作動部材18の設定位置(例えば、矢印R方向に後退してもローラを持ち上げないようにし、または作動部材18を設けないようにしてローラを持ち上げないようにしてもよい。
【0061】
また、ビードローラセット10を2段ではなく、1段としまたは3段以上に設けてもよく、ひとつのビードBに複数のビードローラ11を作用させることで、複数段溝状のビード、深絞り成形されたビードを成形してもよいことはいうまでもない。
【0062】
また、上記実施の形態においては、ビードBが必要とされる筒体Wのみを対象とする場合について説明したが、ビードBを成形せずに、未成形筒体W11をスルーさせてリフォームのみを行なってもよいことはいうまでもない。
【0063】
また、上記実施形態において示したビードローラセット10を構成する内外ビードローラ11、12の形態及び回転軸11A、及びリフォームローラセット20を構成する内外リフォームローラ21、22の形態及び回転軸21Aについては、任意に設定することができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、内ビードローラ11を矢印M方向に移動して外ビードローラ12に近接させて、内外ビードローラ11、12の間に筒体Wを挟持する場合について説明したが、外ビードローラ12を内ビードローラ11に近接させてもよいし、外ビードローラ12と内ビードローラ11の双方が胴部に近接するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、胴部にビードが形成された角形状缶を、搬送ライン内にて搬送しながら効率的に製造することができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 搬送ライン
2 ビード成形ユニット
3 リフォームユニット
5 缶成形装置
10 ビードローラセット
11 内ビードローラ
11A 回転軸
12 外ビードローラ
12A 回転軸
15 ビードローラ押圧機構
20 リフォームローラ
21 内リフォームローラ
21A 回転軸
22 外リフォームローラ
22A 回転軸
P0 材料板(材料板材)
W 筒体
W1 軸線
W2 側壁部(壁面)
W3 コーナー部(壁面)
W11 未成形筒体
W12 ビード付筒体
W13 リフォーム筒体
WB 底板(端板)
WT 天板(端板)
B ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形状に形成された胴部の両端が開放された筒体の少なくとも一方の開口に端板を接合してなる角形状缶の筒体の胴部にビードを成形する缶成形装置であって、
前記胴部の一方の開口から他方の開口に向かって前記筒体を搬送する搬送ラインと、
前記搬送ラインで搬送される筒体の前記胴部内側に配置される内ビードローラと、前記筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内ビードローラと対向可能に配置される外ビードローラと、を備え、
前記内ビードローラと前記外ビードローラは、回転ながら協働して前記胴部を押圧して、前記胴部にビードを成形することを特徴とする缶成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の缶成形装置であって、
前記内ビードローラ及び前記外ビードローラは、
それぞれ前記筒体の搬送方向と直交する軸線周りに回転し、少なくともいずれか一方が近接することにより、回転しながら搬送される前記筒体の前記胴部を押圧して前記ビードを成形することを特徴とする缶成形装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の缶成形装置であって、
前記搬送ラインが前記筒体を、前記胴部のビード成形予定部と、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラとが対応する位置に搬送したのに同期して、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラを相対的に接近させて前記ビードを形成することを特徴とする缶成形装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の缶成形装置であって、
前記内ビードローラ及び前記外ビードローラよりも前記搬送方向前側には、前記筒体の胴部をリフォームするリフォームローラが設けられ、
前記リフォームローラは、
前記筒体の前記胴部内側に配置される内リフォームローラと、前記筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内リフォームローラと対向可能に配置される外リフォームローラと、を備え、
前記内リフォームローラと前記外リフォームローラは、リフォームローラ押圧機構により前記胴部のコーナーを回転ながら協働して押圧するように構成されていることを特徴とする缶成形装置。
【請求項5】
略四角形状に形成された胴部の両端が開放された筒体の少なくとも一方の開口に端板を接合してなる角形状缶の製造方法であって、
矩形状の材料板材を、前記筒体と対応するように折り曲げるとともに、前記胴部の両端を開放させて対辺同士を接合して第1筒体を形成し、
前記胴部の一方の開口から他方の開口に向かって前記第1筒体を搬送し、
前記搬送ラインで搬送される前記第1筒体の前記胴部内側に配置した内ビードローラと、前記第1筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内ビードローラと対向可能に配置した外ビードローラとを、前記第1筒体の前記胴部に回転ながら協働して押圧して、前記胴部にビードを成形することを特徴とする角形状缶の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の角形状缶の製造方法であって、
前記内ビードローラ及び前記外ビードローラを、それぞれ前記第1筒体の搬送方向と直交する軸線周りに回転し、少なくともいずれか一方が近接することにより回転しながら搬送される前記第1筒体の前記胴部を押圧して前記ビードを成形することを特徴とする角形状缶の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の角形状缶の製造方法であって、
前記搬送ラインにより搬送された前記第1筒体の前記胴部のビード成形予定部が、前記内ビードローラ及び前記外ビードローラと対応する位置に来たときに、前記ビード成形予定部と同期させて前記内ビードローラ及び前記外ビードローラを相対的に接近させて前記胴部を押圧して前記ビードを形成することを特徴とする角形状缶の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の角形状缶の製造方法であって、
前記第1筒体の胴部に前記ビードを成形して前記第2筒体を形成した後に、
前記内ビードローラ及び前記外ビードローラよりも前記搬送方向前側に配置した、前記第2筒体の前記胴部内側に配置される内リフォームローラと、前記第2筒体の前記胴部外側に配置されるとともに前記胴部を挟んで前記内リフォームローラと対向可能に配置される外リフォームローラとからなるリフォームするリフォームローラを、回転ながら協働して前記胴部のコーナーを押圧して前記第2筒体をリフォームされた第3筒体とすることを特徴とする角形状缶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−756(P2013−756A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132229(P2011−132229)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【特許番号】特許第4876192号(P4876192)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000207540)大日製罐株式会社 (13)
【出願人】(591185412)株式会社N.P.W技研 (3)