解像度検査用チャート及び解像度の検査方法
【課題】照明の影響を極力抑え、同一像高位置の検査精度を向上させた解像度検査用チャート、及び解像度検査方法を提供する。
【解決手段】横縞パターン22と縦縞パターン23とが隣接して設けられ、且つ黒色基準部24がその間に配置されているので、横縞パターン22と縦縞パターン23と黒色基準部24とを、同じ照明環境下で撮像できるため、検査データのバラツキを抑え、例えば縦解像度と横解像度とを精度良く検査することができる。
【解決手段】横縞パターン22と縦縞パターン23とが隣接して設けられ、且つ黒色基準部24がその間に配置されているので、横縞パターン22と縦縞パターン23と黒色基準部24とを、同じ照明環境下で撮像できるため、検査データのバラツキを抑え、例えば縦解像度と横解像度とを精度良く検査することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも撮像レンズと撮像素子とを備えた撮像装置により撮像した画像の解像度を検査するための解像度検査用チャート及び解像度の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小型で薄型の撮像装置が携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の小型、薄型の電子機器である携帯端末に搭載されるようになり、これにより遠隔地へ音声情報だけでなく画像情報も相互に伝送することが可能となっている。
【0003】
このような撮像装置は一つのユニットとして製造されており、携帯端末に搭載する前に、撮像装置について種々の検査を行うことが一般的である。その中でも重要な検査は、解像度の検査である。
【0004】
解像度の検査に関しては、各種の解像度検査用チャートが用いられている。ある解像度検査用チャートでは、線幅とピッチが同一の白黒の線を多数設けており、これを撮像することにより画像のコントラスト比を判別し検査を行っている。具体的には、黒色の線と白色の線とが複数本交互に配置された縞パターンを、解像度検査用チャートの中心と周辺4カ所などの検査を行いたい像高に配置し、更に線の方向が互いに90度異なる縞パターンを各々配置することによって、異なる方向の解像度特性を検査することができる。但し、この場合は、縞パターンのコントラストを判別するときに基準となる階調レベルが必要であり、このために所定の面積を有する真っ黒な基準パターンと真っ白な基準パターンを縞パターンの近傍に配置し、撮像した画像の黒基準パターンと白基準パターンの輝度データを基準値とする。
【0005】
ここで、撮像装置は、製造誤差や組立誤差によって撮像素子に対して撮像レンズの光軸の位置が個々にばらつく恐れがある。一方、解像度検査は撮像された画像の定められた位置(像高)で検査を行うため、撮像素子に対して撮像レンズの光軸の位置がばらついた撮像装置で、上述の如きコントラストを判別する解像度検査用チャートを撮像した場合に、撮像した画像上で解像度検査用チャートの位置がずれて撮像される恐れがある。かかる場合、画像上で所定の周辺の位置に撮像された縞パターンのコントラストを判別するとしても、これに対応する解像度検査用チャートの縞パターン上の位置が個々に異なってしまうことになる。
【0006】
又、解像度検査用チャートは撮像時に光源によって照明されるが、実際に均一に照明するのは困難であって、縞パターンの中でも部分的に明るさが異なって照明されることが多い。このために、縞パターンにおける照明が暗い部分では白の階調レベルが低下するため、同じ白でも場所により撮像素子から得られた画像信号値が変わる恐れがある。従って、基準パターンの階調レベルは一定であっても、縞パターンに関しては個々の撮像装置のバラツキにより検出する位置が異なってしまい、また照明の明るい部分と暗い部分とでコントラスト比が異なってしまう恐れがある。このため、縞パターンのどこの部分を検出したかによって、良品の撮像装置であっても不良品と判別される場合があり、検査の信憑性が問題となる。
【0007】
これに対し本発明者は、特許文献1に示すように、複数本の黒色の線と白色の線とが交互に配置された縞パターン、該縞パターンの一方の側に隣接した黒色の太線からなる基準パターン、及び前記縞パターンの他方の側に隣接した白色の太線からなる基準パターンが各線の幅方向に複数組隣接して配置された検査用パターンを有する解像度検査用チャートを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−53019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術によれば、縞パターンに基準パターンが隣接した検査用パターンを用いて撮像装置の検査を行うので、撮像素子に対して撮像レンズの光軸の位置が個々にずれていたり、解像度検査用チャートへの照明ムラがあってもその影響が少なく、撮像装置の良否の判別を正確に行うことができる。
【0010】
しかるに、特許文献1の解像度検査用チャートでも、縦縞パターンと横縞パターンとを別個の位置に作成しなければならないため、縦縞パターン撮像による縦解像度の検査位置と、横縞パターン撮像による横解像度の検査位置とが異なってしまうこととなり、両者の相関関係がとれず、レンズの同一像高位置(特に光軸上)の解像度検査を行えないという問題がある。又、フォーカシングのためレンズを光軸方向に移動させるような場合、画角が変化することによって検査位置がずれると検査データの連続性が喪失し、レンズの同一像高位置の解像度検査を行えないという恐れもある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、照明の影響を極力抑え、同一像高位置の検査精度を向上させた解像度検査用チャート、及び解像度検査方法を提供することを発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の解像度検査用チャートは、検査対象の撮像装置によって撮影され、該撮像装置からの画像信号に基づいて解像度を検査するために用いる解像度検査用チャートにおいて、
第1の方向に延在するようにして、第1のピッチで配置された複数本の黒線を含む第1パターンと、
前記第1パターンに隣接して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在するようにして、第2のピッチで配置された複数本の黒線を含む第2パターンと、
少なくとも前記第1パターンと前記第2パターンの間に設けられた黒色基準部と、
白色基準部と、
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記第1パターンと前記第2パターンとが隣接して設けられ、且つ前記黒色基準部がその間に配置されているので、前記第1パターンと前記第2パターンと前記黒色基準部とを、同じ照明環境下で撮像できるため、検査データのバラツキを抑え、例えば縦解像度と横解像度とを精度良く検査することができる。
【0014】
更に、従来の解像度検査チャートでは、図17(a)に示すように、チャート中心Oに対して、縦解像度検査パターン22’と、横解像度検査パターン23’とを異なる位置に配置していたので、真に測定したい光軸近傍の解像度を検査できないという問題があった。これに対し、本発明によれば、17(b)に示すように、縦解像度検査パターンに相当する第1パターン22と、横解像度検査パターンに相当する第2パターン23とを隣接して配置しているので、例えば前記黒色基準部24を光軸上に配置することで、パターンをチャート中心Oに極力近づけて配置することが出来、真に測定したい光軸近傍の解像度を検査できる。
【0015】
請求項2に記載の解像度検査用チャートは、請求項1に記載の発明において、前記黒色基準部は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを囲む枠であることを特徴とする。このように、前記黒色基準部にて、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを囲むことで、前記第1のパターン及び前記第2のパターンをブロック化でき、かかるブロックを任意の位置に配置することで、検査対象となる撮像装置のフォーカシング動作等により画角が変化するような場合でも、同じブロックを追跡することができ、検査位置が変化することによる検査データの非連続性を排除できる。
【0016】
請求項3に記載の解像度検査用チャートは、請求項1又は2に記載の発明において、前記第1のパターンは横縞であり、前記第2のパターンは縦縞であることを特徴とする。但し、横解像度の検査に用いられる縦縞は鉛直方向に対して20度以内で傾き、縦解像度の検査に用いられる横縞は水平方向に対して20度以内で傾いていると、モワレ縞等の不具合を回避できるので好ましい。
【0017】
請求項4に記載の解像度検査用チャートは、請求項3に記載の発明において、前記白色基準部は、第1白色基準部と第2白色基準部を含み、前記第1のパターンに隣接する前記黒色基準部と、前記第1のパターンとは、縦方向に前記第1のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第1白色基準部が設けられ、前記第2のパターンに隣接する前記基準部と、前記第2のパターンとは、横方向に前記第2のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第2白色基準部が設けられていることを特徴とする。これにより、照明環境に影響されない白色の基準を確保できる。
【0018】
請求項5に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンとは、繰り返し形成されていることを特徴とする。これにより、検査対象となる撮像装置において、レンズの光軸の傾きなどが生じても所定の像高位置の検査を行うことができる。
【0019】
請求項6に記載の解像度検査用チャートは、請求項5に記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンのうち一方が、他方に挟まれるようにして、行もしくは列状に並べられていることを特徴とする。これにより、いずれの像高位置でも検査を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の解像度検査用チャートは、請求項5に記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンとは、千鳥状に並べられていることを特徴とする。解像度検査用チャートの中心付近は像高に影響されないので、縦縞と横縞のパターンの検出が容易になる。
【0021】
請求項8に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンとは同一形状を有し、前記第1の方向と前記第2の方向とは直交することを特徴とする。これにより、それぞれのパターンを撮影した画像信号の差が明瞭になる。
【0022】
請求項9に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、中央と周辺とに配置したことを特徴とする。これにより、レンズの光軸と所定の像高に対応した検査を行える。
【0023】
請求項10に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、全面に形成したことを特徴とする。これにより、任意の像高に対応した検査を行える。
【0024】
請求項11に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンの黒線の本数は4〜8本のいずれかであることを特徴とする。前記黒線の本数が少なすぎる場合には、検査の精度が低下し、ピントが合っていない状態で誤検出を招く恐れがある。一方、前記黒線の本数が多すぎる場合には、パターンの面積が増大し、解像度検査用チャートの大型化を招くため、撮像装置を配置する位置が遠ざかり、精度よく測定を行えない恐れがある。前記黒線の本数を4〜8本とすることで、かかる恐れを回避できる。
【0025】
請求項12に記載の解像度の検査方法は、請求項1〜11の解像度検査用チャートを用いた解像度の検査方法であって、
いずれかの前記第1パターン又は前記第2パターンが、前記撮像装置の撮像レンズの光軸に対し所定の像高位置になるように、解像度検査用チャートに対して前記撮像装置を配置するステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、得られた画像信号を解析することにより前記所定の像高位置の座標を記憶するステップと、
前記撮像装置のピント調整を行うステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、前記所定の像高位置の座標に対して所定範囲内のみの画像信号を用いて、前記所定の像高位置の解像度を検査するステップと、を有することを特徴とする。
【0026】
一般的には、解像度検査用チャートを撮影した場合、検査対象とするパターンを見つけるためには、その都度、広範囲にわたって画像信号を解析する必要がある。これに対し本発明によれば、前記第1パターンと前記第2パターンと前記黒色基準部とで構成されるパターンが特有であるために、最初に解像度検査用チャート全体をスキャンして、画像信号全体の解析を行って任意の像高位置(レンズの光軸位置を含む)に対応する座標(撮像素子の特定画素)を記憶することで、ピント調整後に、該像高位置を含む所定範囲の画像信号だけに絞って検査を行うことが出来、これにより検査時間を大幅に短縮できる。尚、「スキャン」とは、撮像素子の画素から画像信号を得ることをいい、「解析」とは、例えば得られた画像信号の値を比較することをいうものとする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、照明の影響を極力抑え、同一像高位置の検査精度を向上させた解像度検査用チャート、及び解像度検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】解像度の検査対象となる撮像装置の一例を示す断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる解像度検査チャートの正面図である。
【図3】パターン部21を拡大して示す図である。
【図4】パターン部21から、1つの横縞パターン22と縦縞パターン23とを周囲の黒色基準部24と共に切り出して示す図である。
【図5】解像度検査装置の模式図である。
【図6】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図7】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図8】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図9】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図10】別なパターン部21を拡大して示す図である。
【図11】変形例にかかる解像度検査チャートの正面図である。
【図12】本実施の形態にかかる解像度の検査方法のフローチャートである。
【図13】解像度検査方法で用いた解像度検査チャートの模式図である。
【図14】パターンの一部を切り出して示す図である。
【図15】パターンの一部を切り出して示す図である。
【図16】画角変化時の状態を示す図である。
【図17】従来例と本発明とを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明における解像度検査用チャート及び解像度検査方法に関する実施の形態を説明する。図1は、解像度の検査対象となる撮像装置の一例を示す断面図である。図1において、撮像素子12はCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサやCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等である。そして、撮像素子12は基板13に実装されている。また、被写体を撮像素子12に結像させる撮像レンズ11は、鏡枠15に対して光軸方向に移動可能に支持されている。具体的には、撮像レンズ11は、コイルバネ17により像側に付勢された状態で支持され、アクチュエータ18によりコイルバネ17の付勢力に抗して任意の光軸方向位置に駆動されるようになっている。更に、鏡枠15は接着剤Sにて基板13に接合されている。また、撮像レンズ11の被写体側には赤外カットフィルタ16及び絞り板14が配置されている。更に、基板13には撮像素子12以外にコンデンサ等の複数の電子部品19も実装されている。
【0030】
図2は、本実施の形態にかかる解像度検査チャートの正面図である。図2において、解像度検査チャート20は、同じ形状の5つのパターン部21を、中心及び周辺4カ所に配置しており、これらは同一色の黒と白のみからなる。図3は、パターン部21を拡大して示す図である。図3のパターン部21は、複数の横縞パターン(第1のパターン)22と縦縞パターン(第2のパターン)23とを隣接して、互いに千鳥状(つまり市松模様状)に配置してなる。隣接する横縞パターン22と縦縞パターン23との間と周囲には、直線的に延在する黒色基準部24が配置されている。言い換えると、各横縞パターン22と縦縞パターン23は、それぞれ黒色基準部24により囲まれている。
【0031】
図4は、パターン部21から、1つの横縞パターン22と縦縞パターン23とを周囲の黒色基準部24と共に切り出して示す図である。これをペアパターンという。パターン部21におけるペアパターンの数は任意である。1つのペアパターンにおいて、黒色基準部24は、等間隔Δで離れて鉛直方向に延在する3つの等幅Wの柱部24a、24b、24cと、柱部24a、24b、24cの上端と下端を連結するようにして等間隔Δで離れて水平に延在する等幅Wの梁部24d、24eとからなる。
【0032】
柱部24a、24bと、梁部24d、24eとに挟まれた正方形状の空間内には、水平方向に対して10度前後で傾いて(即ち第1の方向に)等間隔δでストレートに延在する等幅Tの8本の黒線22aからなる横縞パターン22が形成されている。つまり、黒線22aのピッチ(第1のピッチ)は等しく、(δ+T)である。一方、柱部24b、24cと、梁部24e、24dとに挟まれた正方形状の空間内には、鉛直方向に対して10度前後で傾いて(即ち第2の方向に)等間隔δでストレートに延在する等幅Tの8本の黒線23aからなる横縞パターン23が形成されている。つまり、黒線23aのピッチ(第2のピッチ)は等しく、(δ+T)である。黒線22aと黒線23aとは、互いに直交する方向に延在すると好ましい。
【0033】
梁部24dと、それに最も近い黒線22aとの最小間隔Dは、黒線22aの間隔δより大きくなっており、ここに第1白色基準部25が設けられる。一方、柱部24bと、それに最も近い黒線23aとの最小間隔Dは、黒線23aの間隔δより大きくなっており、ここに第2白色基準部26が設けられる。1つのペアパターンにおいて、梁部24d、横縞パターン22,梁部24eが、縦解像度検査に用いられるブロックであり、柱部24b、縦縞パターン23,柱部24cが、横解像度検査に用いられるブロックである。
【0034】
又、柱部24a、24b、24c、梁部24e、24dの線幅Wは、黒線22a、23aの線幅Tの2倍乃至6倍であることが望ましいが、必要以上に太くすることはチャートの大型化を招き望ましくない。又、黒線22a、23aの幅は撮像素子の画素数にして3以上が望ましい。更に、黒色基準部24の線幅が細すぎると、撮像素子に対する撮像レンズの焦点調節が適正でないときに白線及び黒線が灰色に近くなり、判別の基準になり難い恐れがある。一方、黒色基準部24の線幅が太すぎると、パターン部21が大きくなり、その結果、解像度検査チャート20も大きくなる恐れがある。よって、上記の範囲が望ましい。
【0035】
図5は、解像度検査装置の模式図である。撮像装置の検査の概要を説明する。画像処理装置4に接続した検査対象となる撮像装置1の撮像レンズ11が、チャート貼り付け板5に貼り付けた解像度検査用チャート20の中心と対向するようにして、不図示の検査台にセットする。かかる状態で、解像度検査用チャート20を、その周囲に配置した複数の照明装置3でなるべく均一に照明し、撮像装置1により解像度検査用チャート20を撮像する。照明装置3は蛍光灯が好ましいが、LED等でも良い。
【0036】
解像度検査用チャート20の光像は、撮像装置1の撮像素子によって光電変換され、画像信号として画像処理装置4に出力される。画像処理装置4においては、画像信号に所定の画像処理を施して画像信号を生成する。更に、この解像度検査用チャート20の画像信号を画像処理装置4にて画像処理し、解像度の検査を行う。尚、画像処理装置4は、撮像装置1のアクチュエータ18を駆動制御可能となっている。
【0037】
ここで、解像度の検査を行う場合、撮像装置1の撮像素子12において、撮像素子12に向かって左上の画素から右に向かってスキャンしてゆき、1行目のスキャンが終わったら、続けて2行目の左端から右に向かってスキャンしてゆくというようにして、全体の画像信号を得る。得られた画像信号を解析して、解像度の検査を行う。
【0038】
ここで、上述のようにして得られた画像信号において、図6(a)に示すペアパターンに対応する画像信号を解析する。まず、画像処理装置4により画像信号を生成したときに、図6(a)に矢印で示す位置の画像信号を解析することにより、画素出力と位置との関係から、図6(b)に示す波形が得られる。即ち、黒色基準部24の柱部24aに対応する領域Aでは輝度が低くなり、その後、第1白色基準部25に対応する広範な領域B(領域Aより広い)では輝度が高くなり、更に、柱部24bに対応する領域Cでは再び階調が低くなり、その後、第2白色基準部26に対応する狭い領域D(領域B、Cと同程度)では輝度が高くなり、更に、縦縞パターン23に対応する領域Eでは短い周期で輝度が変化した後、柱部24cに対応する領域Fでは再び輝度が低くなる。ここで、ほぼ等間隔な領域A,C,Fの輝度が黒色基準に相当し、領域Dの輝度が白色基準に相当するので、この間隔αが最大輝度差となる。尚、領域Bの幅が領域Dの幅より広いことから、領域Bは領域Dと区別できるが、ここでは白基準として用いないこととする。一方、領域Eの振れ幅βが最も大きくなる位置がピント位置であり、その最大値を用いて解像度(β/α)を検査できる。
【0039】
これに対し、図7(a)に示すペアパターン(図6(a)と同じ)の矢印で示す位置の画像信号を解析することにより、図7(b)に示す波形が得られる。即ち、黒色基準部24の柱部24aに対応する領域A’では輝度が低くなり、その後、横縞パターン22に対応する広範な領域B’では中間輝度となり、更に、柱部24bに対応する領域C’では再び輝度が低くなり、その後、第2白色基準部26に対応する狭い領域D’では輝度が高くなり、更に、縦縞パターン23に対応する領域E’では短い周期で輝度が変化した後、柱部24cに対応する領域F’では再び階調が低くなる。同様に、ほぼ等間隔な領域A’,C’,F’の階調が黒色基準に相当し、領域D’の階調が白色基準に相当するので、この間隔αが最大輝度差となる。一方、領域Eの振れ幅βが最も大きくなる位置がピント位置であり、その最大値を用いて解像度(β/α)を検査できる。従って、図6の矢印位置の画像信号でも図7の矢印位置の画像信号でも、解像度検査を行えることとなる。
【0040】
ここで、図6(b)の波形と、図7(b)の波形とを比較してみると、領域B、B’の波形が明らかに異なっている。つまり、パターンの解析が図6(a)の矢印位置なのか、図7(a)の矢印位置なのかは、領域B、B’の波形を解析することで判別できる。又、明らかであるが、梁部24d、24eを解析した場合、全領域で階調が低くなる。つまり、図6(b)の波形又は図7(b)の波形の数を数えることで、解像度検査チャート20のいずれの位置を解析しているか、ピンポイントで判別できることとなる。
【0041】
具体的な解像度検査において、おおよそのピントの位置は白基準と黒基準の出力差(階調差)から求められる。基準の検出は、黒色基準部や白色基準部の幅に相当する画素数に合致するパターンの画像信号を解析することで実現できる。つまり、あらかじめ黒色基準部や白色基準部の幅が、検査対象となる撮像装置の撮像素子の画素数に対応するか計算しておき、黒色基準部や白色基準部と判断する画素の誤差を決定しておく必要がある。計算上の黒色基準部や白色基準部の幅が20画素であるとした場合、例えば15〜22画素範囲を黒色基準部や白色基準部と認識するというように検出ピクセル幅を決定しておくのが好ましい。
【0042】
黒色基準部や白色基準部の輝度差がある一定以上になったら、縦縞、横縞いずれのパターンであるかの検出を開始する。縦縞、横縞パターン検出を開始する黒色基準部や白色基準部の輝度差の値は、検査する撮像装置により値が異なる。
【0043】
縦縞、横縞パターンの輝度差が一番大きくなるようにピントを合わせる。その際に検出された縞の本数がチャートの縞の本数と一致していることを確認することが望ましい。ピントが合っていない状態でもピントが一致したような疑似ピークを検出する場合がある為、本数を確認することで、誤検出を防ぐことができる。
【0044】
図8(a)はピントがずれた状態でパターンを撮影した状態を示すが、かかる場合、縦縞パターン23がぼやけるため、図8(b)に示すように、出力された画像信号の領域Eの振れ幅βが基準輝度差αに対して小さくなる。一方、図9(a)はピントが合った状態でパターンを撮影した状態を示すが、かかる場合、縦縞パターン23の輪郭がシャープであり、図9(b)に示すように、領域Eの振れ幅βが基準機度差αに対して大きくなる。撮像装置1のアクチュエータ18により撮像レンズ11を光軸方向に動かしながら、振れ幅βが基準輝度差αに対して最も大きくなった位置を探索すると、その位置がピントがあった位置になる。
【0045】
このようにピントがあった状態で、解像度の検査を行う。一方、縦解像度検査を行う場合は、解像度検査チャート20を縦に画像信号解析して同様に行うことができる。
【0046】
解像度を測定する横縞パターン22及び縦縞パターン23の黒線22a、23aの本数は、検査対象である撮像装置1により変更することが可能であるが、下記のような理由により理論的には3本以上が望ましい。実際には4本以上が望ましく、最適は6本から8本程度である。但し、8本を超えて本数を増やしても、検査精度は上がらない上、チャートが大きくなるため望ましくないといえる。
【0047】
図10は、変形例にかかるパターン部21’を示す図である。図3に示すパターン部21では、千鳥状に横縞パターン22と縦縞パターン23を配置しているが、この変形例では、横縞パターン22を配置した行と、縦縞パターン23を配置した行とを交互に並べている。横縞パターン22と縦縞パターン23自体は、上述した実施の形態と同様である。
【0048】
図11は、変形例にかかる解像度検査チャート20’を示す図である。図2に示す解像度検査チャート20では、中央と周辺にのみパターン部21を形成しているが、本変形例では、チャート全面に、横縞パターン22と縦縞パターン23を交互に形成したパターン部21’を有する。この変形例では、横縞パターン22と縦縞パターン23を千鳥状に配置しても良いし、各々を行もしくは列状に並べても良い。
【0049】
次に、本実施の形態にかかる解像度の検査方法について説明する。尚、検査の前提として、
(1)解像力検査はコントラスト法を用いる。
(2)合焦位置の検出は山登り法を用いる。
【0050】
一般的に焦点位置を検出する際は、撮影、データ取得、解像度検査、レンズ移動を繰り返して解像力の一番高いところを焦点位置とする。解像力の一番高いところを求める方法として、よく知られているものに山登り方式がある。これは上記の解像度検査を行い、求められた解像力の値が山のような形になることから命名されている。この方法を用いた場合、山の頂点(解像力の最も高いところ)付近のデータ変化量は少なくなる為、レンズを微小移動させ無ければならないが、撮影回数が多くなる為検査時間が反比例して長くなる問題を抱えている。そのため最初にレンズを大きく移動させて山のおおよその形を測定し、焦点位置と思われる付近のみ、レンズを微小移動させて検査する方法が有効と考えられる。但し、通常撮影したチャートから検査対象のチャートを見つける為には、大きなエリアを画像信号解析する必要がある。本実施形態の解像度検査チャートは、その基本構成である縞パターンが四角形状の黒枠で囲われている為、最初に1回チャートの画像信号全体を解析して、検査対象の基本パターンの中心座標を覚えておくことで、次回検査時に目的とする基本パターンの位置を予測することが出来、目的とする基本パターンの周辺のわずかなエリアの画像信号のみを解析することで基本パターンを検出することが出来る。そのため基本パターンの解析に必要な時間を短縮でき、結果として検査時間全体を短縮することが出来る。
【0051】
以下、横解像度の検査を例にとり、具体的に説明する。図12は、本実施の形態にかかる解像度の検査方法のフローチャートである。図12のステップS101において、図5に示すようにして、図1の撮像装置1により、図13に概略を示す解像度検査チャート20を撮像する。パターン部21は、上述した実施の形態と同様である。これにより、画像処理装置4は、撮像装置1の撮像素子の各画素から出力された画像信号を入力する。
【0052】
次いで、画像処理装置4は、ステップS102において、スキャンにより画像信号を得る。尚、画像信号解析は、図13の解像度検査チャート20に対応する画素において、左上から右方向に1列ずつ順に、矢印に示す方向に行う。尚、解像度検査希望位置は、左上のパターン部21におけるSの像高位置であるものとする。
【0053】
更にステップS103において、画像処理装置4は、解像度検査希望位置に最も近い検査する方向のパターンを検出する。これを基本パターンという。具体的には、解像度検査希望位置Sは、画素並びのN列目において、M個の黒色基準部を通過した後に現れる縦縞パターン23を基本パターンであるとする。
【0054】
次に、ステップS104で、画像処理装置4は、コントラスト法を用いて解像力を検査する。更に、ステップS105で、画像処理装置4は、基本パターンの中心座標S(x、y)を記憶する(図14参照)。尚、中心座標S(x、y)は、撮像素子の左上の画素から数えて、x列目におけるy番目の画素であることを示す。
【0055】
その後、画像処理装置4は、ステップS106で検査値が最高であると判断すれば、検査を終了するが、最高ではないと判断すれば、ステップS107へと進み、撮像装置1の撮像レンズを光軸方向に駆動してフォーカシング動作を行う。ピントを合わせた後、ステップS108で再び撮像装置1が解像度検査チャート20を撮影して、画像信号を出力する。
【0056】
更にステップS109で、画像処理装置4は、記憶した基本パターンの中心座標S(x、y)に対して、縦縞パターンの縦横寸法X、Yに相当する画素数に、更に係数1.5を乗算した数値を引いた座標(x−1.5X、y−1.5Y)の位置から、座標(x+1.5X、y+1.5Y)までの画像信号を切り出して、不図示の一時メモリに記憶する(図15参照)。これにより、切り出された画像信号中に必ず基本パターンが含まれるので、画素数が多い撮像素子を用いた撮像装置でも、短時間で解像度検査を行える。
【0057】
その後、フローはステップS104へと戻り、画像処理装置4は、上述したようにステップS104から始まる処理を実行することにより、解像度検査を行うことができる。
【0058】
ところで、画像信号を切り出すエリアの大きさは、検査する対象レンズの特性とレンズの移動量に応じて変化させることで対応出来る。このエリアは、基本パターンよりもある程度大きく取る必要がある。その理由は、フォーカス機能を持っているレンズの場合、ピントを移動させると若干画角が変化するものがある為、基本チャートの座標が前回の検査位置からずれる場合があるからである。焦点位置に近い位置にレンズがある場合、レンズの移動量を少なくして検査する為、画角の変化量も少なくなり、前回の検査位置がわかっている場合、ほとんど同じところだけ解析すれば良い事になる。
【0059】
以下に、画角が移動した場合の画像信号の切り出しエリア設定方法を、図面を参照して説明する。図16は、解像度検査チャートの左上部分の解像検査箇所周辺を抜き出したものであり、縦横線は黒色基準部となる枠である。ここで、レンズ移動により画角に変化が生じると、図16(a)から(d)に示すように、撮影画像上でチャートが移動することとなる。具体的には、画像の中で検査位置(S)は変わらないが、チャート自体が左上へ移動している。よって、上述したように、基本パターンの中心座標に対して、縞パターンの縦横寸法に相当する画素数に更に係数を乗算した数値を引いた座標の位置を画像信号の切り出し開始位置とすることで、画角変化に関わらず、検査対象とする基本パターンに追従することができる。
【0060】
このように、画角変化に応じて移動する量がある程度わかっている場合、基本パターンの位置が予測できるため、その分を見込んだ位置からチャートの画像信号の切り出しを開始することで、全チャートの画像信号の解析を行わずとも、基本パターンを迅速に検出することが出来る。この基本パターンを追跡する方法の最大の利点は、必ず同じ基本パターンを検査する為、検査値に不連続が発生しないことである。本発明とは異なる基本パターンを追跡しない方式の場合、画角の変動が大きいと、隣のパターンを測定する恐れがあり、これにより検査データが不連続になる場合がある。
【0061】
以上述べた本実施の形態によれば、固有のパターン部21を用いることで、縦解像度エリアと横解像度エリアとを隣接して配置でき、更に黒色基準もほぼ等しい環境下で得られるので、縦解像度と横解像度との精度良い相関関係を得ることができる。又、パターン部21がブロック状になっており、検査するブロックを意図的に選択することができるため、撮像レンズのフォーカシングなどによって画角が変化してゆくときも、同じブロックを追跡することができ、検査エリアが変化することによる検査データの非連続性を排除できる。尚、黒線や黒色基準部の線の太さは従来と同様にできる。又、枠としての黒色基準部を用いることで、物理的なチャート位置を検出することにも利用できる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、第1のパターンのピッチは第2のパターンのピッチと変えても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 撮像装置
11 撮像レンズ
12 撮像素子
20 解像度検査用チャート
21 パターン部
22,23 縞パターン
3 照明装置
4 画像処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも撮像レンズと撮像素子とを備えた撮像装置により撮像した画像の解像度を検査するための解像度検査用チャート及び解像度の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、小型で薄型の撮像装置が携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の小型、薄型の電子機器である携帯端末に搭載されるようになり、これにより遠隔地へ音声情報だけでなく画像情報も相互に伝送することが可能となっている。
【0003】
このような撮像装置は一つのユニットとして製造されており、携帯端末に搭載する前に、撮像装置について種々の検査を行うことが一般的である。その中でも重要な検査は、解像度の検査である。
【0004】
解像度の検査に関しては、各種の解像度検査用チャートが用いられている。ある解像度検査用チャートでは、線幅とピッチが同一の白黒の線を多数設けており、これを撮像することにより画像のコントラスト比を判別し検査を行っている。具体的には、黒色の線と白色の線とが複数本交互に配置された縞パターンを、解像度検査用チャートの中心と周辺4カ所などの検査を行いたい像高に配置し、更に線の方向が互いに90度異なる縞パターンを各々配置することによって、異なる方向の解像度特性を検査することができる。但し、この場合は、縞パターンのコントラストを判別するときに基準となる階調レベルが必要であり、このために所定の面積を有する真っ黒な基準パターンと真っ白な基準パターンを縞パターンの近傍に配置し、撮像した画像の黒基準パターンと白基準パターンの輝度データを基準値とする。
【0005】
ここで、撮像装置は、製造誤差や組立誤差によって撮像素子に対して撮像レンズの光軸の位置が個々にばらつく恐れがある。一方、解像度検査は撮像された画像の定められた位置(像高)で検査を行うため、撮像素子に対して撮像レンズの光軸の位置がばらついた撮像装置で、上述の如きコントラストを判別する解像度検査用チャートを撮像した場合に、撮像した画像上で解像度検査用チャートの位置がずれて撮像される恐れがある。かかる場合、画像上で所定の周辺の位置に撮像された縞パターンのコントラストを判別するとしても、これに対応する解像度検査用チャートの縞パターン上の位置が個々に異なってしまうことになる。
【0006】
又、解像度検査用チャートは撮像時に光源によって照明されるが、実際に均一に照明するのは困難であって、縞パターンの中でも部分的に明るさが異なって照明されることが多い。このために、縞パターンにおける照明が暗い部分では白の階調レベルが低下するため、同じ白でも場所により撮像素子から得られた画像信号値が変わる恐れがある。従って、基準パターンの階調レベルは一定であっても、縞パターンに関しては個々の撮像装置のバラツキにより検出する位置が異なってしまい、また照明の明るい部分と暗い部分とでコントラスト比が異なってしまう恐れがある。このため、縞パターンのどこの部分を検出したかによって、良品の撮像装置であっても不良品と判別される場合があり、検査の信憑性が問題となる。
【0007】
これに対し本発明者は、特許文献1に示すように、複数本の黒色の線と白色の線とが交互に配置された縞パターン、該縞パターンの一方の側に隣接した黒色の太線からなる基準パターン、及び前記縞パターンの他方の側に隣接した白色の太線からなる基準パターンが各線の幅方向に複数組隣接して配置された検査用パターンを有する解像度検査用チャートを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−53019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術によれば、縞パターンに基準パターンが隣接した検査用パターンを用いて撮像装置の検査を行うので、撮像素子に対して撮像レンズの光軸の位置が個々にずれていたり、解像度検査用チャートへの照明ムラがあってもその影響が少なく、撮像装置の良否の判別を正確に行うことができる。
【0010】
しかるに、特許文献1の解像度検査用チャートでも、縦縞パターンと横縞パターンとを別個の位置に作成しなければならないため、縦縞パターン撮像による縦解像度の検査位置と、横縞パターン撮像による横解像度の検査位置とが異なってしまうこととなり、両者の相関関係がとれず、レンズの同一像高位置(特に光軸上)の解像度検査を行えないという問題がある。又、フォーカシングのためレンズを光軸方向に移動させるような場合、画角が変化することによって検査位置がずれると検査データの連続性が喪失し、レンズの同一像高位置の解像度検査を行えないという恐れもある。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、照明の影響を極力抑え、同一像高位置の検査精度を向上させた解像度検査用チャート、及び解像度検査方法を提供することを発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の解像度検査用チャートは、検査対象の撮像装置によって撮影され、該撮像装置からの画像信号に基づいて解像度を検査するために用いる解像度検査用チャートにおいて、
第1の方向に延在するようにして、第1のピッチで配置された複数本の黒線を含む第1パターンと、
前記第1パターンに隣接して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在するようにして、第2のピッチで配置された複数本の黒線を含む第2パターンと、
少なくとも前記第1パターンと前記第2パターンの間に設けられた黒色基準部と、
白色基準部と、
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記第1パターンと前記第2パターンとが隣接して設けられ、且つ前記黒色基準部がその間に配置されているので、前記第1パターンと前記第2パターンと前記黒色基準部とを、同じ照明環境下で撮像できるため、検査データのバラツキを抑え、例えば縦解像度と横解像度とを精度良く検査することができる。
【0014】
更に、従来の解像度検査チャートでは、図17(a)に示すように、チャート中心Oに対して、縦解像度検査パターン22’と、横解像度検査パターン23’とを異なる位置に配置していたので、真に測定したい光軸近傍の解像度を検査できないという問題があった。これに対し、本発明によれば、17(b)に示すように、縦解像度検査パターンに相当する第1パターン22と、横解像度検査パターンに相当する第2パターン23とを隣接して配置しているので、例えば前記黒色基準部24を光軸上に配置することで、パターンをチャート中心Oに極力近づけて配置することが出来、真に測定したい光軸近傍の解像度を検査できる。
【0015】
請求項2に記載の解像度検査用チャートは、請求項1に記載の発明において、前記黒色基準部は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを囲む枠であることを特徴とする。このように、前記黒色基準部にて、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを囲むことで、前記第1のパターン及び前記第2のパターンをブロック化でき、かかるブロックを任意の位置に配置することで、検査対象となる撮像装置のフォーカシング動作等により画角が変化するような場合でも、同じブロックを追跡することができ、検査位置が変化することによる検査データの非連続性を排除できる。
【0016】
請求項3に記載の解像度検査用チャートは、請求項1又は2に記載の発明において、前記第1のパターンは横縞であり、前記第2のパターンは縦縞であることを特徴とする。但し、横解像度の検査に用いられる縦縞は鉛直方向に対して20度以内で傾き、縦解像度の検査に用いられる横縞は水平方向に対して20度以内で傾いていると、モワレ縞等の不具合を回避できるので好ましい。
【0017】
請求項4に記載の解像度検査用チャートは、請求項3に記載の発明において、前記白色基準部は、第1白色基準部と第2白色基準部を含み、前記第1のパターンに隣接する前記黒色基準部と、前記第1のパターンとは、縦方向に前記第1のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第1白色基準部が設けられ、前記第2のパターンに隣接する前記基準部と、前記第2のパターンとは、横方向に前記第2のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第2白色基準部が設けられていることを特徴とする。これにより、照明環境に影響されない白色の基準を確保できる。
【0018】
請求項5に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンとは、繰り返し形成されていることを特徴とする。これにより、検査対象となる撮像装置において、レンズの光軸の傾きなどが生じても所定の像高位置の検査を行うことができる。
【0019】
請求項6に記載の解像度検査用チャートは、請求項5に記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンのうち一方が、他方に挟まれるようにして、行もしくは列状に並べられていることを特徴とする。これにより、いずれの像高位置でも検査を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の解像度検査用チャートは、請求項5に記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンとは、千鳥状に並べられていることを特徴とする。解像度検査用チャートの中心付近は像高に影響されないので、縦縞と横縞のパターンの検出が容易になる。
【0021】
請求項8に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンとは同一形状を有し、前記第1の方向と前記第2の方向とは直交することを特徴とする。これにより、それぞれのパターンを撮影した画像信号の差が明瞭になる。
【0022】
請求項9に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、中央と周辺とに配置したことを特徴とする。これにより、レンズの光軸と所定の像高に対応した検査を行える。
【0023】
請求項10に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、全面に形成したことを特徴とする。これにより、任意の像高に対応した検査を行える。
【0024】
請求項11に記載の解像度検査用チャートは、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、前記第1パターンと前記第2パターンの黒線の本数は4〜8本のいずれかであることを特徴とする。前記黒線の本数が少なすぎる場合には、検査の精度が低下し、ピントが合っていない状態で誤検出を招く恐れがある。一方、前記黒線の本数が多すぎる場合には、パターンの面積が増大し、解像度検査用チャートの大型化を招くため、撮像装置を配置する位置が遠ざかり、精度よく測定を行えない恐れがある。前記黒線の本数を4〜8本とすることで、かかる恐れを回避できる。
【0025】
請求項12に記載の解像度の検査方法は、請求項1〜11の解像度検査用チャートを用いた解像度の検査方法であって、
いずれかの前記第1パターン又は前記第2パターンが、前記撮像装置の撮像レンズの光軸に対し所定の像高位置になるように、解像度検査用チャートに対して前記撮像装置を配置するステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、得られた画像信号を解析することにより前記所定の像高位置の座標を記憶するステップと、
前記撮像装置のピント調整を行うステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、前記所定の像高位置の座標に対して所定範囲内のみの画像信号を用いて、前記所定の像高位置の解像度を検査するステップと、を有することを特徴とする。
【0026】
一般的には、解像度検査用チャートを撮影した場合、検査対象とするパターンを見つけるためには、その都度、広範囲にわたって画像信号を解析する必要がある。これに対し本発明によれば、前記第1パターンと前記第2パターンと前記黒色基準部とで構成されるパターンが特有であるために、最初に解像度検査用チャート全体をスキャンして、画像信号全体の解析を行って任意の像高位置(レンズの光軸位置を含む)に対応する座標(撮像素子の特定画素)を記憶することで、ピント調整後に、該像高位置を含む所定範囲の画像信号だけに絞って検査を行うことが出来、これにより検査時間を大幅に短縮できる。尚、「スキャン」とは、撮像素子の画素から画像信号を得ることをいい、「解析」とは、例えば得られた画像信号の値を比較することをいうものとする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、照明の影響を極力抑え、同一像高位置の検査精度を向上させた解像度検査用チャート、及び解像度検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】解像度の検査対象となる撮像装置の一例を示す断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる解像度検査チャートの正面図である。
【図3】パターン部21を拡大して示す図である。
【図4】パターン部21から、1つの横縞パターン22と縦縞パターン23とを周囲の黒色基準部24と共に切り出して示す図である。
【図5】解像度検査装置の模式図である。
【図6】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図7】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図8】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図9】パターンと画像信号との相関関係を示す図である。
【図10】別なパターン部21を拡大して示す図である。
【図11】変形例にかかる解像度検査チャートの正面図である。
【図12】本実施の形態にかかる解像度の検査方法のフローチャートである。
【図13】解像度検査方法で用いた解像度検査チャートの模式図である。
【図14】パターンの一部を切り出して示す図である。
【図15】パターンの一部を切り出して示す図である。
【図16】画角変化時の状態を示す図である。
【図17】従来例と本発明とを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明における解像度検査用チャート及び解像度検査方法に関する実施の形態を説明する。図1は、解像度の検査対象となる撮像装置の一例を示す断面図である。図1において、撮像素子12はCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサやCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等である。そして、撮像素子12は基板13に実装されている。また、被写体を撮像素子12に結像させる撮像レンズ11は、鏡枠15に対して光軸方向に移動可能に支持されている。具体的には、撮像レンズ11は、コイルバネ17により像側に付勢された状態で支持され、アクチュエータ18によりコイルバネ17の付勢力に抗して任意の光軸方向位置に駆動されるようになっている。更に、鏡枠15は接着剤Sにて基板13に接合されている。また、撮像レンズ11の被写体側には赤外カットフィルタ16及び絞り板14が配置されている。更に、基板13には撮像素子12以外にコンデンサ等の複数の電子部品19も実装されている。
【0030】
図2は、本実施の形態にかかる解像度検査チャートの正面図である。図2において、解像度検査チャート20は、同じ形状の5つのパターン部21を、中心及び周辺4カ所に配置しており、これらは同一色の黒と白のみからなる。図3は、パターン部21を拡大して示す図である。図3のパターン部21は、複数の横縞パターン(第1のパターン)22と縦縞パターン(第2のパターン)23とを隣接して、互いに千鳥状(つまり市松模様状)に配置してなる。隣接する横縞パターン22と縦縞パターン23との間と周囲には、直線的に延在する黒色基準部24が配置されている。言い換えると、各横縞パターン22と縦縞パターン23は、それぞれ黒色基準部24により囲まれている。
【0031】
図4は、パターン部21から、1つの横縞パターン22と縦縞パターン23とを周囲の黒色基準部24と共に切り出して示す図である。これをペアパターンという。パターン部21におけるペアパターンの数は任意である。1つのペアパターンにおいて、黒色基準部24は、等間隔Δで離れて鉛直方向に延在する3つの等幅Wの柱部24a、24b、24cと、柱部24a、24b、24cの上端と下端を連結するようにして等間隔Δで離れて水平に延在する等幅Wの梁部24d、24eとからなる。
【0032】
柱部24a、24bと、梁部24d、24eとに挟まれた正方形状の空間内には、水平方向に対して10度前後で傾いて(即ち第1の方向に)等間隔δでストレートに延在する等幅Tの8本の黒線22aからなる横縞パターン22が形成されている。つまり、黒線22aのピッチ(第1のピッチ)は等しく、(δ+T)である。一方、柱部24b、24cと、梁部24e、24dとに挟まれた正方形状の空間内には、鉛直方向に対して10度前後で傾いて(即ち第2の方向に)等間隔δでストレートに延在する等幅Tの8本の黒線23aからなる横縞パターン23が形成されている。つまり、黒線23aのピッチ(第2のピッチ)は等しく、(δ+T)である。黒線22aと黒線23aとは、互いに直交する方向に延在すると好ましい。
【0033】
梁部24dと、それに最も近い黒線22aとの最小間隔Dは、黒線22aの間隔δより大きくなっており、ここに第1白色基準部25が設けられる。一方、柱部24bと、それに最も近い黒線23aとの最小間隔Dは、黒線23aの間隔δより大きくなっており、ここに第2白色基準部26が設けられる。1つのペアパターンにおいて、梁部24d、横縞パターン22,梁部24eが、縦解像度検査に用いられるブロックであり、柱部24b、縦縞パターン23,柱部24cが、横解像度検査に用いられるブロックである。
【0034】
又、柱部24a、24b、24c、梁部24e、24dの線幅Wは、黒線22a、23aの線幅Tの2倍乃至6倍であることが望ましいが、必要以上に太くすることはチャートの大型化を招き望ましくない。又、黒線22a、23aの幅は撮像素子の画素数にして3以上が望ましい。更に、黒色基準部24の線幅が細すぎると、撮像素子に対する撮像レンズの焦点調節が適正でないときに白線及び黒線が灰色に近くなり、判別の基準になり難い恐れがある。一方、黒色基準部24の線幅が太すぎると、パターン部21が大きくなり、その結果、解像度検査チャート20も大きくなる恐れがある。よって、上記の範囲が望ましい。
【0035】
図5は、解像度検査装置の模式図である。撮像装置の検査の概要を説明する。画像処理装置4に接続した検査対象となる撮像装置1の撮像レンズ11が、チャート貼り付け板5に貼り付けた解像度検査用チャート20の中心と対向するようにして、不図示の検査台にセットする。かかる状態で、解像度検査用チャート20を、その周囲に配置した複数の照明装置3でなるべく均一に照明し、撮像装置1により解像度検査用チャート20を撮像する。照明装置3は蛍光灯が好ましいが、LED等でも良い。
【0036】
解像度検査用チャート20の光像は、撮像装置1の撮像素子によって光電変換され、画像信号として画像処理装置4に出力される。画像処理装置4においては、画像信号に所定の画像処理を施して画像信号を生成する。更に、この解像度検査用チャート20の画像信号を画像処理装置4にて画像処理し、解像度の検査を行う。尚、画像処理装置4は、撮像装置1のアクチュエータ18を駆動制御可能となっている。
【0037】
ここで、解像度の検査を行う場合、撮像装置1の撮像素子12において、撮像素子12に向かって左上の画素から右に向かってスキャンしてゆき、1行目のスキャンが終わったら、続けて2行目の左端から右に向かってスキャンしてゆくというようにして、全体の画像信号を得る。得られた画像信号を解析して、解像度の検査を行う。
【0038】
ここで、上述のようにして得られた画像信号において、図6(a)に示すペアパターンに対応する画像信号を解析する。まず、画像処理装置4により画像信号を生成したときに、図6(a)に矢印で示す位置の画像信号を解析することにより、画素出力と位置との関係から、図6(b)に示す波形が得られる。即ち、黒色基準部24の柱部24aに対応する領域Aでは輝度が低くなり、その後、第1白色基準部25に対応する広範な領域B(領域Aより広い)では輝度が高くなり、更に、柱部24bに対応する領域Cでは再び階調が低くなり、その後、第2白色基準部26に対応する狭い領域D(領域B、Cと同程度)では輝度が高くなり、更に、縦縞パターン23に対応する領域Eでは短い周期で輝度が変化した後、柱部24cに対応する領域Fでは再び輝度が低くなる。ここで、ほぼ等間隔な領域A,C,Fの輝度が黒色基準に相当し、領域Dの輝度が白色基準に相当するので、この間隔αが最大輝度差となる。尚、領域Bの幅が領域Dの幅より広いことから、領域Bは領域Dと区別できるが、ここでは白基準として用いないこととする。一方、領域Eの振れ幅βが最も大きくなる位置がピント位置であり、その最大値を用いて解像度(β/α)を検査できる。
【0039】
これに対し、図7(a)に示すペアパターン(図6(a)と同じ)の矢印で示す位置の画像信号を解析することにより、図7(b)に示す波形が得られる。即ち、黒色基準部24の柱部24aに対応する領域A’では輝度が低くなり、その後、横縞パターン22に対応する広範な領域B’では中間輝度となり、更に、柱部24bに対応する領域C’では再び輝度が低くなり、その後、第2白色基準部26に対応する狭い領域D’では輝度が高くなり、更に、縦縞パターン23に対応する領域E’では短い周期で輝度が変化した後、柱部24cに対応する領域F’では再び階調が低くなる。同様に、ほぼ等間隔な領域A’,C’,F’の階調が黒色基準に相当し、領域D’の階調が白色基準に相当するので、この間隔αが最大輝度差となる。一方、領域Eの振れ幅βが最も大きくなる位置がピント位置であり、その最大値を用いて解像度(β/α)を検査できる。従って、図6の矢印位置の画像信号でも図7の矢印位置の画像信号でも、解像度検査を行えることとなる。
【0040】
ここで、図6(b)の波形と、図7(b)の波形とを比較してみると、領域B、B’の波形が明らかに異なっている。つまり、パターンの解析が図6(a)の矢印位置なのか、図7(a)の矢印位置なのかは、領域B、B’の波形を解析することで判別できる。又、明らかであるが、梁部24d、24eを解析した場合、全領域で階調が低くなる。つまり、図6(b)の波形又は図7(b)の波形の数を数えることで、解像度検査チャート20のいずれの位置を解析しているか、ピンポイントで判別できることとなる。
【0041】
具体的な解像度検査において、おおよそのピントの位置は白基準と黒基準の出力差(階調差)から求められる。基準の検出は、黒色基準部や白色基準部の幅に相当する画素数に合致するパターンの画像信号を解析することで実現できる。つまり、あらかじめ黒色基準部や白色基準部の幅が、検査対象となる撮像装置の撮像素子の画素数に対応するか計算しておき、黒色基準部や白色基準部と判断する画素の誤差を決定しておく必要がある。計算上の黒色基準部や白色基準部の幅が20画素であるとした場合、例えば15〜22画素範囲を黒色基準部や白色基準部と認識するというように検出ピクセル幅を決定しておくのが好ましい。
【0042】
黒色基準部や白色基準部の輝度差がある一定以上になったら、縦縞、横縞いずれのパターンであるかの検出を開始する。縦縞、横縞パターン検出を開始する黒色基準部や白色基準部の輝度差の値は、検査する撮像装置により値が異なる。
【0043】
縦縞、横縞パターンの輝度差が一番大きくなるようにピントを合わせる。その際に検出された縞の本数がチャートの縞の本数と一致していることを確認することが望ましい。ピントが合っていない状態でもピントが一致したような疑似ピークを検出する場合がある為、本数を確認することで、誤検出を防ぐことができる。
【0044】
図8(a)はピントがずれた状態でパターンを撮影した状態を示すが、かかる場合、縦縞パターン23がぼやけるため、図8(b)に示すように、出力された画像信号の領域Eの振れ幅βが基準輝度差αに対して小さくなる。一方、図9(a)はピントが合った状態でパターンを撮影した状態を示すが、かかる場合、縦縞パターン23の輪郭がシャープであり、図9(b)に示すように、領域Eの振れ幅βが基準機度差αに対して大きくなる。撮像装置1のアクチュエータ18により撮像レンズ11を光軸方向に動かしながら、振れ幅βが基準輝度差αに対して最も大きくなった位置を探索すると、その位置がピントがあった位置になる。
【0045】
このようにピントがあった状態で、解像度の検査を行う。一方、縦解像度検査を行う場合は、解像度検査チャート20を縦に画像信号解析して同様に行うことができる。
【0046】
解像度を測定する横縞パターン22及び縦縞パターン23の黒線22a、23aの本数は、検査対象である撮像装置1により変更することが可能であるが、下記のような理由により理論的には3本以上が望ましい。実際には4本以上が望ましく、最適は6本から8本程度である。但し、8本を超えて本数を増やしても、検査精度は上がらない上、チャートが大きくなるため望ましくないといえる。
【0047】
図10は、変形例にかかるパターン部21’を示す図である。図3に示すパターン部21では、千鳥状に横縞パターン22と縦縞パターン23を配置しているが、この変形例では、横縞パターン22を配置した行と、縦縞パターン23を配置した行とを交互に並べている。横縞パターン22と縦縞パターン23自体は、上述した実施の形態と同様である。
【0048】
図11は、変形例にかかる解像度検査チャート20’を示す図である。図2に示す解像度検査チャート20では、中央と周辺にのみパターン部21を形成しているが、本変形例では、チャート全面に、横縞パターン22と縦縞パターン23を交互に形成したパターン部21’を有する。この変形例では、横縞パターン22と縦縞パターン23を千鳥状に配置しても良いし、各々を行もしくは列状に並べても良い。
【0049】
次に、本実施の形態にかかる解像度の検査方法について説明する。尚、検査の前提として、
(1)解像力検査はコントラスト法を用いる。
(2)合焦位置の検出は山登り法を用いる。
【0050】
一般的に焦点位置を検出する際は、撮影、データ取得、解像度検査、レンズ移動を繰り返して解像力の一番高いところを焦点位置とする。解像力の一番高いところを求める方法として、よく知られているものに山登り方式がある。これは上記の解像度検査を行い、求められた解像力の値が山のような形になることから命名されている。この方法を用いた場合、山の頂点(解像力の最も高いところ)付近のデータ変化量は少なくなる為、レンズを微小移動させ無ければならないが、撮影回数が多くなる為検査時間が反比例して長くなる問題を抱えている。そのため最初にレンズを大きく移動させて山のおおよその形を測定し、焦点位置と思われる付近のみ、レンズを微小移動させて検査する方法が有効と考えられる。但し、通常撮影したチャートから検査対象のチャートを見つける為には、大きなエリアを画像信号解析する必要がある。本実施形態の解像度検査チャートは、その基本構成である縞パターンが四角形状の黒枠で囲われている為、最初に1回チャートの画像信号全体を解析して、検査対象の基本パターンの中心座標を覚えておくことで、次回検査時に目的とする基本パターンの位置を予測することが出来、目的とする基本パターンの周辺のわずかなエリアの画像信号のみを解析することで基本パターンを検出することが出来る。そのため基本パターンの解析に必要な時間を短縮でき、結果として検査時間全体を短縮することが出来る。
【0051】
以下、横解像度の検査を例にとり、具体的に説明する。図12は、本実施の形態にかかる解像度の検査方法のフローチャートである。図12のステップS101において、図5に示すようにして、図1の撮像装置1により、図13に概略を示す解像度検査チャート20を撮像する。パターン部21は、上述した実施の形態と同様である。これにより、画像処理装置4は、撮像装置1の撮像素子の各画素から出力された画像信号を入力する。
【0052】
次いで、画像処理装置4は、ステップS102において、スキャンにより画像信号を得る。尚、画像信号解析は、図13の解像度検査チャート20に対応する画素において、左上から右方向に1列ずつ順に、矢印に示す方向に行う。尚、解像度検査希望位置は、左上のパターン部21におけるSの像高位置であるものとする。
【0053】
更にステップS103において、画像処理装置4は、解像度検査希望位置に最も近い検査する方向のパターンを検出する。これを基本パターンという。具体的には、解像度検査希望位置Sは、画素並びのN列目において、M個の黒色基準部を通過した後に現れる縦縞パターン23を基本パターンであるとする。
【0054】
次に、ステップS104で、画像処理装置4は、コントラスト法を用いて解像力を検査する。更に、ステップS105で、画像処理装置4は、基本パターンの中心座標S(x、y)を記憶する(図14参照)。尚、中心座標S(x、y)は、撮像素子の左上の画素から数えて、x列目におけるy番目の画素であることを示す。
【0055】
その後、画像処理装置4は、ステップS106で検査値が最高であると判断すれば、検査を終了するが、最高ではないと判断すれば、ステップS107へと進み、撮像装置1の撮像レンズを光軸方向に駆動してフォーカシング動作を行う。ピントを合わせた後、ステップS108で再び撮像装置1が解像度検査チャート20を撮影して、画像信号を出力する。
【0056】
更にステップS109で、画像処理装置4は、記憶した基本パターンの中心座標S(x、y)に対して、縦縞パターンの縦横寸法X、Yに相当する画素数に、更に係数1.5を乗算した数値を引いた座標(x−1.5X、y−1.5Y)の位置から、座標(x+1.5X、y+1.5Y)までの画像信号を切り出して、不図示の一時メモリに記憶する(図15参照)。これにより、切り出された画像信号中に必ず基本パターンが含まれるので、画素数が多い撮像素子を用いた撮像装置でも、短時間で解像度検査を行える。
【0057】
その後、フローはステップS104へと戻り、画像処理装置4は、上述したようにステップS104から始まる処理を実行することにより、解像度検査を行うことができる。
【0058】
ところで、画像信号を切り出すエリアの大きさは、検査する対象レンズの特性とレンズの移動量に応じて変化させることで対応出来る。このエリアは、基本パターンよりもある程度大きく取る必要がある。その理由は、フォーカス機能を持っているレンズの場合、ピントを移動させると若干画角が変化するものがある為、基本チャートの座標が前回の検査位置からずれる場合があるからである。焦点位置に近い位置にレンズがある場合、レンズの移動量を少なくして検査する為、画角の変化量も少なくなり、前回の検査位置がわかっている場合、ほとんど同じところだけ解析すれば良い事になる。
【0059】
以下に、画角が移動した場合の画像信号の切り出しエリア設定方法を、図面を参照して説明する。図16は、解像度検査チャートの左上部分の解像検査箇所周辺を抜き出したものであり、縦横線は黒色基準部となる枠である。ここで、レンズ移動により画角に変化が生じると、図16(a)から(d)に示すように、撮影画像上でチャートが移動することとなる。具体的には、画像の中で検査位置(S)は変わらないが、チャート自体が左上へ移動している。よって、上述したように、基本パターンの中心座標に対して、縞パターンの縦横寸法に相当する画素数に更に係数を乗算した数値を引いた座標の位置を画像信号の切り出し開始位置とすることで、画角変化に関わらず、検査対象とする基本パターンに追従することができる。
【0060】
このように、画角変化に応じて移動する量がある程度わかっている場合、基本パターンの位置が予測できるため、その分を見込んだ位置からチャートの画像信号の切り出しを開始することで、全チャートの画像信号の解析を行わずとも、基本パターンを迅速に検出することが出来る。この基本パターンを追跡する方法の最大の利点は、必ず同じ基本パターンを検査する為、検査値に不連続が発生しないことである。本発明とは異なる基本パターンを追跡しない方式の場合、画角の変動が大きいと、隣のパターンを測定する恐れがあり、これにより検査データが不連続になる場合がある。
【0061】
以上述べた本実施の形態によれば、固有のパターン部21を用いることで、縦解像度エリアと横解像度エリアとを隣接して配置でき、更に黒色基準もほぼ等しい環境下で得られるので、縦解像度と横解像度との精度良い相関関係を得ることができる。又、パターン部21がブロック状になっており、検査するブロックを意図的に選択することができるため、撮像レンズのフォーカシングなどによって画角が変化してゆくときも、同じブロックを追跡することができ、検査エリアが変化することによる検査データの非連続性を排除できる。尚、黒線や黒色基準部の線の太さは従来と同様にできる。又、枠としての黒色基準部を用いることで、物理的なチャート位置を検出することにも利用できる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、第1のパターンのピッチは第2のパターンのピッチと変えても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 撮像装置
11 撮像レンズ
12 撮像素子
20 解像度検査用チャート
21 パターン部
22,23 縞パターン
3 照明装置
4 画像処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の撮像装置によって撮影され、該撮像装置からの画像信号に基づいて解像度を検査するために用いる解像度検査用チャートにおいて、
第1の方向に延在するようにして、第1のピッチで配置された複数本の黒線を含む第1パターンと、
前記第1パターンに隣接して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在するようにして、第2のピッチで配置された複数本の黒線を含む第2パターンと、
少なくとも前記第1パターンと前記第2パターンの間に設けられた黒色基準部と、
白色基準部と、
を有することを特徴とする解像度検査用チャート。
【請求項2】
前記黒色基準部は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを囲む枠であることを特徴とする請求項1に記載の解像度検査用チャート。
【請求項3】
前記第1のパターンは横縞であり、前記第2のパターンは縦縞であることを特徴とする請求項1又は2に記載の解像度検査用チャート。
【請求項4】
前記白色基準部は、第1白色基準部と第2白色基準部を含み、
前記第1のパターンに隣接する前記黒色基準部と、前記第1のパターンとは、縦方向に前記第1のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第1白色基準部が設けられ、前記第2のパターンに隣接する前記基準部と、前記第2のパターンとは、横方向に前記第2のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第2白色基準部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の解像度検査用チャート。
【請求項5】
前記第1パターンと前記第2パターンとは、繰り返し形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項6】
前記第1パターンと前記第2パターンのうち一方が、他方に挟まれるようにして、行もしくは列状に並べられていることを特徴とする請求項5に記載の解像度検査用チャート。
【請求項7】
前記第1パターンと前記第2パターンとは、千鳥状に並べられていることを特徴とする請求項5に記載の解像度検査用チャート。
【請求項8】
前記第1パターンと前記第2パターンとは同一形状を有し、前記第1の方向と前記第2の方向とは直交することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項9】
前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、中央と周辺とに配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項10】
前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、全面に形成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項11】
前記第1パターンと前記第2パターンの黒線の本数は4〜8本のいずれかであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項12】
請求項1〜11の解像度検査用チャートを用いた解像度の検査方法であって、
いずれかの前記第1パターン又は前記第2パターンが、前記撮像装置の撮像レンズの光軸に対し所定の像高位置になるように、解像度検査用チャートに対して前記撮像装置を配置するステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、得られた画像信号を解析することにより前記所定の像高位置の座標を記憶するステップと、
前記撮像装置のピント調整を行うステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、前記所定の像高位置の座標に対して所定範囲内のみの画像信号を用いて、前記所定の像高位置の解像度を検査するステップと、を有することを特徴とする解像度の検査方法。
【請求項1】
検査対象の撮像装置によって撮影され、該撮像装置からの画像信号に基づいて解像度を検査するために用いる解像度検査用チャートにおいて、
第1の方向に延在するようにして、第1のピッチで配置された複数本の黒線を含む第1パターンと、
前記第1パターンに隣接して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在するようにして、第2のピッチで配置された複数本の黒線を含む第2パターンと、
少なくとも前記第1パターンと前記第2パターンの間に設けられた黒色基準部と、
白色基準部と、
を有することを特徴とする解像度検査用チャート。
【請求項2】
前記黒色基準部は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを囲む枠であることを特徴とする請求項1に記載の解像度検査用チャート。
【請求項3】
前記第1のパターンは横縞であり、前記第2のパターンは縦縞であることを特徴とする請求項1又は2に記載の解像度検査用チャート。
【請求項4】
前記白色基準部は、第1白色基準部と第2白色基準部を含み、
前記第1のパターンに隣接する前記黒色基準部と、前記第1のパターンとは、縦方向に前記第1のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第1白色基準部が設けられ、前記第2のパターンに隣接する前記基準部と、前記第2のパターンとは、横方向に前記第2のピッチより大きな距離で離れており、その間に前記第2白色基準部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の解像度検査用チャート。
【請求項5】
前記第1パターンと前記第2パターンとは、繰り返し形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項6】
前記第1パターンと前記第2パターンのうち一方が、他方に挟まれるようにして、行もしくは列状に並べられていることを特徴とする請求項5に記載の解像度検査用チャート。
【請求項7】
前記第1パターンと前記第2パターンとは、千鳥状に並べられていることを特徴とする請求項5に記載の解像度検査用チャート。
【請求項8】
前記第1パターンと前記第2パターンとは同一形状を有し、前記第1の方向と前記第2の方向とは直交することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項9】
前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、中央と周辺とに配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項10】
前記黒色基準部と前記第1パターンと前記第2パターンとを、全面に形成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項11】
前記第1パターンと前記第2パターンの黒線の本数は4〜8本のいずれかであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の解像度検査用チャート。
【請求項12】
請求項1〜11の解像度検査用チャートを用いた解像度の検査方法であって、
いずれかの前記第1パターン又は前記第2パターンが、前記撮像装置の撮像レンズの光軸に対し所定の像高位置になるように、解像度検査用チャートに対して前記撮像装置を配置するステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、得られた画像信号を解析することにより前記所定の像高位置の座標を記憶するステップと、
前記撮像装置のピント調整を行うステップと、
前記撮像装置により前記解像度検査用チャートを撮影し、前記撮像装置から出力された画像信号をスキャンして、前記所定の像高位置の座標に対して所定範囲内のみの画像信号を用いて、前記所定の像高位置の解像度を検査するステップと、を有することを特徴とする解像度の検査方法。
【図1】
【図2】
【図5】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図2】
【図5】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−247743(P2012−247743A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121670(P2011−121670)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
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