説明

解撚した繊維材料から編み地を製造する編み機

本発明は、ストレッチ(伸縮加工)した繊維材料(4)を使用して編み地を製造する機械に関する。この機械はストレッチング(伸縮加工)デバイス、スピニング(糸紡ぎ)要素を備えたスピニングデバイス、当該スピニングデバイスに接続された移送パイプ(17)、および繊維材料(4)用の通路(30)を備えた糸ガイド(27)を装備している。本発明によれば、移送パイプ(17)の出口端は、通路(30)の出口端の内側断面(D1)と同じ大きさであるか、あるいは小さい断面(D2)を有している。空気ブラスト流の強さは、ループを形成する機械の編みニードル内に繊維材料(4)を確実に挿入するのを可能にするだけの強さに選択されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載されたタイプの機械に関する。
【背景技術】
【0002】
丸編み機として構成された上記タイプの公知機械(特許文献1)は、ドラフティングアセンブリ(drafting assembly)から繊維材料が出た直後に、編成のために使用された繊維材料がスピニング(糸紡ぎ)デバイス(spinning device)によってヤーン(yarn)に変形されることを特徴としている。特に利点があるのは、繊維材料が本物の撚りを持つ仮ヤーン(temporary yarn)に変形され、繊維材料の仮撚り(temporary twist)が全移送プロセス期間の間保持されていることである。その結果として、他方では、通常のヤーンに比べて強度が弱いにもかかわらず、ドラフティングデバイスから関連編成システムまでの長くなった距離にわたって繊維材料を移送することが可能であるのは、この人工的な取り扱いの結果として、仮ヤーンに形成された繊維材料がドラフティングアセンブリから編成システムまでの移送路に要求される強度条件をすべて満たしているからである。従って、繊維材料がほどけたり、破断したりするおそれなしで繊維材料を長距離にわたって移送することができる。他方、スピニングデバイスの出口端から編成システムまでの短距離では、すなわち、繊維材料が編みニードル内に入り込むまでは、仮ヤーンの撚りはゼロに減少されので(仮撚り原則(false twist principle))、編み製品で実際に処理された繊維材料は撚りヤーンではなく、相互に対して平行に配列された解撚ステープル繊維からなっている。その結果、非常に柔軟性のある編み製品が最終製品として得られている。
【0003】
上記に代わる方法として、スピニングデバイスは、永続的に接着されたヤーン、特にいわゆる異例のヤーンを形成するように構成することができ、例えば、エアスピニングデバイス(air spinning device)として構成することができる(例えば、特許文献2および特許文献3を参照)。このようなヤーンにはなんらかの撚りまたは巻き付けがあるが、例えば、束(bundle)やカバリングヤーン(covering yarn)のように標準的な意味におけるヤーンではない。スピニングプロセスは、好ましくは、上述した仮ヤーンの場合のように、望ましい移送目的に十分である十分に堅固なスライバが形成されるように調整されているが、その場合でも、十分に柔軟性のある編み製品が得られている。
【0004】
公知の機械の欠点として認識されていることは、スピニングデバイスから離れた糸ガイドの側とニードルの裏側に吸引要素を備えていることである。この吸引要素の目的は、ニードルシリンダに対して半径方向に糸ガイドから出た繊維材料を緊張させ、緊張したままに保って、繊維ピックアップ位置に上昇した編みニードルによって繊維材料がテークアップされ、編み目に処理されるようにすることである。さらに、吸引要素は、特に、機械を短時間停止したあとや、繊維材料が破断したあとで、丸編み機のスタートアップを容易にするために必要であると、従来から考えられていた。
【0005】
追加コストのほかに、このような吸引要素は、例えば、丸編み機の48個またはそれ以上の編成システムの各々にそのような吸引要素を設ける必要があるために、特に高エネルギ消費を必要としている。さらに、抜き出した繊維材料の中の引き込まれた繊維のすべてが吸引要素によってテークアップされるとは限らないおそれがあるため、望ましくない繊維の蓄積(いわゆる繊維の塊)が筒状ニット内にハネ(drop)を形成し、そのニットを傷つけるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】PCT WO2004/079068A2
【特許文献2】EP1518949A2
【特許文献3】EP1826299A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上を出発思想として、本発明の基礎を形成する技術的課題は、構造上の支出を増加することなく、吸引要素をまったく省くことを可能にするように上述したタイプの機械を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は請求項1に記載した特徴を備えた機械によって解決している。
【0009】
本発明は、仮ヤーン用に使用されるブラスト空気を移送チューブ内に使用して、繊維材料を編みニードルに挿入することおよび/または繊維材料を編みニードルによって形成されたニードル列の背後に移送することを同時に行なうという考え方を基礎にしている。これは、移送チューブ内のブラスト圧力の値を不必要に高くしなくても、および繊維材料および切り離された繊維(detached fibers)が移送チューブと糸ガイドの間の間隙にまたは糸ガイドの通路内に累積して、望ましくない乱れを引き起こしたり、および/または繊維材料を編みニードルに挿入するのを妨げたり、完成した編み製品を傷つけたりするその他の障害を引き起こすことなく、本発明の特徴によって達成されている。これとは別に、上記から得られる追加の利点として、糸ガイドの通路から排出される空気流が編みニードルを絶えず自己クリーニングすること、および丸編み機のスタートアップ期間に都合よく使用できることがある。
【0010】
本発明のその他の有利な特徴は従属請求項に記載されている通りである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ほぼ解撚したステープル繊維からなる繊維材料から編み製品を製造するための本発明の目的に適した丸編み機を示す概略図である。
【図2】図1に示す丸編み機のスピニングデバイスの縦断面を示す概略図である。
【図3】本発明の好適例示実施形態による図1に示す丸編み機用の移送チューブと糸ガイドの縦断面を示す図である。
【図4】図3のX部を示す詳細図である。
【図5】第2の例示実施形態による図4に対応する図である。
【図6】本発明のさらに3つの例示実施形態のなかの一つの垂直断面を示す図である。
【図7】本発明のさらに3つの例示実施形態の中の一つの垂直断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解撚した繊維材料(4)を少なくとも部分的に使用することによって編み地を製造する機械であって、その上を編み目形成要素(3)が繊維ピックアップ位置まで持ち込まれることが可能である少なくとも1つの編み目形成システムと、編み目形成システムと関連付けられていて、繊維材料(4)用の通路(30)をもつ糸ガイド(27)と、繊維材料をアテネート(attenuate:けん切)するために編み目形成システムと関連付けられたドラフティングアセンブリ(9)と、ドラフティングアセンブリ(9)と糸ガイド(27)の間に配置されていて、ブラスト空気流と共に作用する少なくとも1つのスピニング(糸紡ぎ)要素(16)およびスピニング要素(16)に接続されていて、繊維材料を糸ガイド(27)に送り込むために開いた出口端(17d)を持つ移送チューブ(17)を備えたスピニング(糸紡ぎ)デバイス(15)と、を装備した機械において、
出口端(17d)が通路(30)の出口端における内側断面と正確に同じであるか、あるいは小さい内側断面を有し、ブラスト空気流の強さが別の補助手段なしでも編み目形成要素(3)まで繊維材料(4)を少なくとも確実に移送するのに十分であるように選択されていることを特徴とする機械。
【請求項2】
入口セクションにおける通路(30)は、移送チューブ(17)の出口端(17d)の断面にほぼ対応している内側断面を有し、移送チューブ(17)の出口端(17d)は少なくとも部分的に通路(30)内に突入していることを特徴とする請求項1に記載の機械。
【請求項3】
出口端(17d)の背後に配置された出口セクションでは、通路(30)はその内側セクション(D2)よりも大である内側断面(D1)を有し、出口端(17d)を受け入れる入口セクションでは、出口端(17d)の外側断面に対応する内側断面を有していることを特徴とする請求項2に記載の機械。
【請求項4】
入口セクションは段部(30a)において出口セクションに合流し、移送チューブ(17)の出口端(17d)は段部(30a)に当接していることを特徴とする請求項3に記載の機械。
【請求項5】
通路(30)の入口セクションおよび/または出口セクションにブシュ(31)が挿入されていることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の機械。
【請求項6】
ブシュ(31)は、繊維材料(4)用のガイド要素(32)を備えた内側シェルを有していることを特徴とする請求項5に記載の機械。
【請求項7】
糸ガイド(27)の出口は、通路(30)の中心軸と共に0度と90度の間の角度を形成している面(28a)に隣接していることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の機械。
【請求項8】
糸ガイド(27)は補助糸(12)用の第2の通路(33)を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の機械。
【請求項9】
糸ガイド(27)が省かれていて、その代わりに出口端(17a)は、移送チューブ(17)の残余部分に比べて大であるか、あるいは幅広である内側断面を有していることを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の機械。
【請求項10】
出口端(17d)はギャップなしで糸ガイド(27)の通路(30)に合流していることを特徴とする請求項1乃至8の1つに記載の機械。
【請求項11】
スピニングデバイスは仮ヤーン(22)の製造のために配置され、スピニング要素(16)は撚り要素として構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載の機械。
【請求項12】
丸編み機として構成されていることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載の機械。

【図6】本発明のさらに3つの例示実施形態の中の一つの垂直断面を示す図である。
【図9】移送チューブに接続され、補助糸の追加供給に適した本発明による糸ガイドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示実施形態と関連付けて添付図面を参照して本発明について詳しく説明する。
【0013】
図1は、ニードルシリンダ2を備えた丸編み機1であって、ニードルシリンダ2にはニードル列を形成する標準の編みニードル3が移動可能に配置されていて、編みニードル3が、以下では編成システムと呼ぶ編成ロケーションでカム部品(図示せず)によって繊維材料4をピックアップするのに適したピックアップ位置まで移動可能になっているような丸編み機1の垂直部分断面を示す概略図である。この丸編み機1は、例えば、右/左丸編み機として構成可能であり、工場の建物または編成ルームの、参照符号5で示すフロア上に設置されている。オペレータは工場のフロア5から編み機を操作することができる。さらに、複数のケンス(can)6が工場フロア5上に配置されており、そこには繊維からなるスライバ7が保管されている。ケンス6の代わりに、フライヤフレームスライバ(flyer frame sliver)の供給コイルを設けることも可能である。
【0014】
スライバは、例えば、移送ベルトとして構成された移送手段8を通してドラフティングアセンブリ(drafting assembly)9に供給され、このドラフティングアセンブリ9は、工場フロア5上に配置された作業プラットフォーム10からオペレータがアクセス可能になっている。図1には1つの編成システムだけが示されているが、複数の編成システムの各々は、このようなドラフティングアセンブリを備えており、このドラフティングアセンブリは、例えば、それ自体は公知であるように3ペアのドラフティングローラ11を装備している。さらに、供給コイル14から戻された補助糸12が必要時に各編成システムに供給可能になっている。この補助糸12は、選択的に糸ガイドから直接に編成システムに供給することも、図1に示すように、ドラフティングアセンブリ9のフロントローラペア11aによって供給することも可能になっている。
【0015】
ドラフティングアセンブリ9から出たスライバは、相互に対し平行に配列されたほぼ解撚されたステープル繊維からなり、図2により詳細に示すように、全体を15で示すスピニングデバイスによって関連編成システムに供給される。現時点では最良と考えられている例示実施形態によれば、スピニングデバイス15は少なくとも1つの撚り要素16およびそこに接続されたスピニングまたは移送チューブ17を備えているが、図1に示す例示実施形態では、3つの撚り要素16a、16b、16cおよび移送チューブ17a、17b、17cは、丸編み機1とドラフティングアセンブリ9との間隔が比較的大きいために、一方が他方の背後になるように接続されている。繊維材料4の移送方向の第1撚り要素16aは、ドラフティングアセンブリ9のフロントローラペア11aのすぐ背後に、すなわち、その出口ガセット(outlet gusset)18に配置されており、移送方向の最後の移送チューブ17cの終端は、それぞれの編成システム上で繊維ピックアップ位置まで持ち上げられた編みニードル3のフック19に近接している。最後に、例えば、中央引き出し手段(central extraction means)21に接続された吸引要素20は編みニードル3の背後に配置されている。
【0016】
図2に示すように、スピニングデバイス15または撚り要素6および移送チューブ17からなる各ユニットは、ドラフティングアセンブリ9から排出されたスライバを、最初に本物の撚り(genuine twist)からなる仮ヤーン(temporary yarn)22(図2)に変形する働きをする。この目的のために、撚り要素16は、例えば、ほぼ中空の円筒体23から形成され、その内側のくぼみは移送チューブの先端部分を受け入れ、これと共に前面24を同一面に閉じている。少なくとも1つのエアダクト25、好ましくは多数のエアダクト25が前面24から突出し、これらのダクトはすべて移送チューブ17の中心軸に対して角度をなして配置されている。エアダクト25は本体23の壁および移送チューブ17を通り抜け、移送チューブ17の内壁で終端している。エアダクト23の半径方向の間隔は、前面23から移送方向(矢印v)に向かって徐々に狭くなり、好ましくは直線のエアダクト25は、それぞれ移送チューブの中心軸に対して約45度の角度をなしている。稼動時には、圧縮空気またはブラスト空気が本体23の外側に隣接するエアダクト25の端(図示せず)から供給されるので、撚り要素16はフロントローラペアの出口ガセット(outlet gusset)18に現れた繊維材料を移送チューブに引き入れ、これと同時に、移送チューブ17を通して繊維材料をそれぞれの編成システム側に引き渡す。さらに、エアダクト25は傾斜構成になっているので、フロントローラ11aから出た繊維材料が吸引されるだけでなく、同時に繊維材料をコンパクト化する複数の回転を受けることによって仮ヤーン22にスピニング(糸紡ぎ)されるような形で渦流26が移送チューブ17内に発生している。この仮ヤーン22は、基本的に移送チューブの終端まで撚りを保持しており、終端に達すると、これらの撚りは、最後に受け入れられた繊維材料4が編みニードル3に入るとき解撚される。すなわち、撚りはゼロに減少される(仮撚り原則)。従って、コンパクト化されているが、ほぼ解撚された繊維材料4は編みニードル3に入り込む。撚り要素および移送チューブ16a/17a−16c/17cからなる3つのユニットが、図1に示すように一方が他方の背後になるように配置されている場合も得られる効果は同じである。これらのユニットは図1に示すように、相互に対して事前に選択した角度で配置することもできるので、その結果として、ドラフティングアセンブリ9から出たアテネート(けん切)された(attenuated)繊維材料9を、傷つけることなく比較的長距離にわたって移送することが可能である。
【0017】
上記に簡単に説明したように、他のスピニングデバイスを使用したときも、同じような構成が得られる。
【0018】
上述したタイプの丸編み機は公知であり(例えば、特許文献1)、ここでは説明の重複を避けるために、上記特許文献を引用するだけに留める。
【0019】
図3は、関連の糸ガイド27およびピックアップ位置に置かれている編みニードル3と関連付けて図1および図2に基づいて説明したスピニングまたは移送チューブ17の本発明による構成を示す概略図である。糸ガイド27は、好ましくはほぼ平面上平行のプレート28から構成されている。このような構成にすると、従来のヤーンを処理する丸編み機におけるように、糸ガイド27が他の機能も実行するのと同時に、例えば、編みニードル28がラッチニードルとして構成された場合、編みニードル28のフック19を開き、または開いたままに保持できるという利点がある。さらに、プレート28には長孔29が設けられているので、この長孔29を使用すると、糸ガイド27を編みニードル3に対して垂直方向に調整するのに好都合である。
【0020】
特に図4に示すように、糸ガイド27は通路30を有し、この通路30は、図4中右側に位置し、段部30aまで延びている入口セクションと図4中左側に位置し、出口開口まで延びている出口セクションを備えており、図示実施形態では、入口セクションと出口セクションは共にプレート28の厚さの約半分にわたっている。入口セクションは、出口セクションの内側断面D1よりも若干大きく、図2にも示すように移送チューブ17の出口端17dの外側断面にほぼ相当する内側セクションを有している。さらに、移送チューブ17の出口端17dは段部30aまで通路30内に突入し、接着(gluing)または他の手段によってプレート28に堅固に、かつ可能な限り気密に接続されている。出口端17dの内側断面は、例示実施形態では寸法D1と同じ寸法D2になっている。その結果、移送チューブ17によって包囲された移送ダクトは、糸ガイド27の通路30の出口セクションから無段に、好ましくは同心状に延長され、段部などの断面が狭くなったため糸ガイド27の個所に繊維累積などによって閉塞が起ることがないようにしている。
【0021】
現時点で最良と考えられている図5に示す糸ガイド27の例示実施形態において、図4と同一部品は同一番号を付けて示しているが、図5の例示実施形態が図4の例示実施形態と異なっているのは、通路30の出口セクションの内側断面D1が移送チューブ17の江口端17dの内側断面D2よりも大きくなっていることだけである。段部30aの高さは、ここでは出口端17aにおける移送チューブ17の壁厚さよりも若干小さくなっている。従って、編みニードル3に面する通路30の出口までは、その内側断面は出口端17dの内側断面に比べて広くなっている。
【0022】
移送チューブ17は、好ましくは全体が中空円筒になっており、円形の内径と外径はその長さ全体にわたって一定になっており、この場合、通路30の入口セクションと出口セクションの個所の断面も円形になっている。この場合、寸法D1とD2はそれぞれの部品の径と同じになっている。
【0023】
D1≧D2であるので、繊維が堆積することがなく、その結果として繊維の詰まりが通路30内に、特にその出口セクションで発生しないという利点が得られる。さらに、通路30における出口端17dがギャップのない構成であるため、撚り要素16によって移送チューブ17内に導入された圧縮空気によって仮ヤーンがニードルフック19(図3)のすぐ近くに案内され、圧縮空気またはブラスト空気がニードル領域内で作用状態のままになっているという利点が得られる。特に、その結果として、移送チューブ17内または移送チューブ17a、17bおよび17c内のブラスト空気流の量を適当に調節し、それをテストによって確かめることができる場合には、吸引要素20(図1)を完全に省くことができるので、コストおよびエネルギが節減されることになる。従って、繊維ピックアップ位置まで移された編みニードル3のフック19内に繊維材料4を確実に挿入するために、付加的ブラストまたは吸引空気流などの形体の補助的手段は不要になる。さらに、ブラスト空気流の強さは、編みニードル3が完全に上昇した位置にあるか、上昇した位置にないか、あるいは部分的に上昇した位置にあるかに関係なく、繊維材料4が編みニードル3によって形成された列の背後にまで移送されるような大きさに選択されていることが好ましく、このことは、例えば、繊維材料の破断の後またはその他の理由で編み目形成プロセスを自動開始するに望ましいとされている。
【0024】
図6乃至図8は、本発明の別の例示実施形態を図4および図5に対応させて示す図である。
【0025】
図4および図5とは対照的に、図6に示す例示実施形態では、通路30の出口セクションは内側断面が入口セクションよりも大きくなっているため、図4および図5に示す方向とは反対方向に段部30bが向いている。さらに、段部30bまで達しているブシュ31は、出口セクションに対応する外側断面および通路30の入口セクションの内側断面よりも小さい内側断面をもつ出口セクションに挿入されており、その寸法D1は、ここではブシュ31の内面が図4と図5に示す段部30aを形成するようになっている。さらに、図4および図5におけると同じように、段部30aまで達する移動チューブ17の出口端17dは通路30の入口セクションに挿入されている。例示実施形態では、この出口端17dは寸法がD2<D1である内側断面を有しているが、ここではD1=D2を適用することも可能である。
【0026】
出口開口のある糸ガイド27の側には、ブシュ31は取り付けフランジ31aを有し、このフランジはプレート28の内壁に圧接しており、例えば、繊維材料4に対する溝状ガイド要素32がその内側シェル内に機械加工されている。
【0027】
図7および図8による例示実施形態は糸ガイド27を示し、その通路30は、編みニードル3に向き合うように設けられ、繊維材料4の出口をもつ糸ガイド27の前面28aに対しある角度をなしている中心軸を有し、前面28aはほぼ垂直に位置し、前面28aと通路30の中心軸との間の角度は、0度と90度、好ましくは約45度の間の個所のいずれかに位置している。このタイプの糸ガイド27は、特に丸編み機に適しており、そこではそれぞれの最後の移送チューブ17c(図1)はある角度をなして上部から下方に向かっている。
【0028】
図7による例示実施形態が示すように、移送チューブ17の出口端17dは通路30の入口セクションの前で若干間隔を置いて終端している。この場合、通路30に対して同軸に配置されていると好都合であり、そこではその内側断面は他の例示実施形態(例えば、図4参照)と同様に、D1≧D2が適用されている。ギャップのないこの変形実施形態において空気が可能な限りサイドに逃げるのを防止するために、寸法は約5mmより大でないことが好ましく、通路30はその入口開口における内側断面が出口端17aよりも大になっていることが好ましい。移送チューブ17(または17c)におけるブラスト空気流の強さを適当な大きさにすると、この場合も、糸ガイド27から出た繊維材料がなんらの補助を必要としないで、繊維ピックアップ位置に置かれた編みニードルのフック19内に確実に挿入されることが保証される。
【0029】
最後に、図8は変形実施形態を示し、そこでは移送チューブ17の出口端17はギャップなしで糸ガイド27に当接し、好ましくは外側から完全に緊密になっている。出口端17dを糸ガイド27に確実に固定するために、出口端17dには、図6に示すブシュ31用の取り付けフランジ31aに相当する取り付けフランジを設けることが可能である。
【0030】
図6乃至図8に示す例示実施形態は、図4と図5に示す例示実施形態と同じような働きをする。
【0031】
従って、図3乃至図8に基づいて説明した移送チューブ17を糸ガイド27に接続するための例示実施形態は、一方が他方の背後になるように接続された撚り要素16と移送チューブ17からなる複数のユニットが、例えば、図1に示すように設けられている場合、それぞれ最後の移送チューブ17cに適用することができる。さらに、図9に示す糸ガイドに追加の通路33を設け、その通路を通して、例えば、図1に示す補助糸12を直接に編みニードル3に供給することが可能である。
【0032】
移送チューブ17をピボット回転可能にまたは調節可能な方法で糸ガイド27に接続すると、特に好都合な変形実施形態が得られる。例えば、図7乃至図9に基づいて説明した例示実施形態はこの変形実施形態に適用可能である。この場合における移送チューブ17の出口端17dは、例えば、糸ガイド27の通路30に結合されているので、起り得る複数の角度位置でもって、その中心軸を通路30の中心軸に対して垂直方向と水平方向の両方に都合よくピボット回転させることができる。その結果として、例えば、糸ガイド27に対する移送チューブ17の位置を、編みに関係する技術的理由のために糸ガイドの好ましい位置を変えなくても、および/または糸ガイド27と移送チューブ17の組み合わせ構造を変えなくても、調節することが可能である。これが好都合であるのは、例えば、個々のケースにおいて好ましいとされる編み目形成機械に対するスピニングデバイスの位置によるものである。糸ガイド27の出口またはそこまでに延びた移送チューブ17の出口端17dの出口が、図7と図8において表面28aに対して選択可能な角度で調節することができる構成にすると、特に有利である。
【0033】
本発明は上述した例示実施形態に限定されず、種々態様に変更することが可能である。特に明らかであるように、図3乃至図9は例示実施形態を表したにすぎず、これらの例示実施形態は種々に変形することが可能である。例えば、図5と図6における段部30aを値0に減らすことも、あるいは段部30aの向きを反対方向にし、図6と同じように入口セクションと出口セクションの両方における糸ガイド27の作用状態の通路のサイズを、挿入したスリーブによって決めることも可能である。当然のことであるが、出口端17dをその全体長にわたって通路30から突出させることも可能である。さらに、通路30および/または出口端17dを編みニードル3に向き合う出口の方向に向かって円錐状に広くすることも可能である。この場合には、出口端17dに続く通路の領域全体において、寸法D1は寸法D2と同じサイズか、あるいは大きくなる。さらに、移送チューブ17は異なる形状にして、異なる方法で糸ガイド27に接続することができる。図2に示す撚り要素の形状も都合よく変更することが可能である。さらに、上述した繊維材料4ではなく、撚りヤーン(twisted yarn)からなる通常のヤーンだけが、丸編み機の一部の編みロケーションで編みニードル3に供給されて、組み合わせ特徴を持つ編み製品を得るようにすることも可能である。例えば、チューブラまたは複合ニードルが適用されるとき糸ガイド27が不要である場合には、ニードル3に面する端における移送チューブ17の出口端17dの内側断面を円錐状にまたは段部の形状に広くすると、糸ガイド27が省かれたとき上述した効果が得られるのでさらに好都合である。さらに、本発明は丸編み機に限定されず、他の編み目形成機械、特に編み機および靴下編み機に応用することも可能である。最後に、当然に理解されるように、上述し、図示した特徴の組み合わせとは別の組み合わせで、異なる特徴を適用することも可能である。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−516913(P2010−516913A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546650(P2009−546650)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000131
【国際公開番号】WO2008/089744
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(591027710)ジプラ パテントエントビクルングス−ウント ベタイリグングスゲゼルシャフト エムベーハー (16)
【氏名又は名称原語表記】SIPRA PATENTENTWICKLUNGS−UND BETEILIGUNGS−GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】