解析装置および解析方法
【課題】磁場と運動の連成解析においてエネルギ保存をより強固なものとする。
【解決手段】解析装置1は、解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する。解析装置1は、磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算する磁場演算部66と、磁場演算部66によって演算された磁場と磁場演算部66における演算で生じた誤差とに基づき各粒子の運動を演算し、各粒子の位置を更新する機構・弾性演算部と、を備える。
【解決手段】解析装置1は、解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する。解析装置1は、磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算する磁場演算部66と、磁場演算部66によって演算された磁場と磁場演算部66における演算で生じた誤差とに基づき各粒子の運動を演算し、各粒子の位置を更新する機構・弾性演算部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置および解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの計算能力の向上に伴い、モータなどの電気機器の設計開発の現場では磁場解析を取り入れたシミュレーションがよく使用されるようになっている。シミュレーションを使用すると、実際にプロトタイプを製作しなくてもある程度の評価が可能となるので、設計開発のスピードが向上しうる。
【0003】
例えば特許文献1には、磁場解析を実行する演算処理装置を具えるモータ解析装置が記載されている。演算処理装置は、ユーザの操作に基づく外部指令に応じて、有限要素法による静磁場解析やマクスウェルの応力法によるトルク計算を実行する。有限要素法による静磁場解析のためにメッシュ分割が行われる。メッシュ分割は、コア領域及びハウジング領域、さらには外部空気層領域についても行われる。
【0004】
また、繰り込み群分子動力学を使用したシミュレーションの手法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−146688号公報
【特許文献2】特開2006−285866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は特願2010−128664において、例えば磁場と機構と弾性と制御とを連成して解析する手法を提案している。この手法では、ひとつのラグランジアンから導出される正準変数(太字のHip’’、太字の傍点付きHip’’)の仮想粒子の運動方程式および正準変数(太字のri’’、太字の傍点付きri’’)の粒子の運動方程式を、常微分方程式の一般的な解法のひとつである蛙跳び法によってそれぞれ数値積分を行い、連成解析を実施する。
(特願2010−128664では、仮想粒子の運動方程式を磁場の運動方程式と名づけ記述している。特願2010−128664で示す手法は、本来、仮想的な粒子を用いて、磁性体を有する系の磁場解析を行っており、仮想的な粒子を磁場と名づけている。本明細書においては、呼び名を限定し物理的により明確とするよう、仮想粒子として記載する)。
仮想粒子の運動方程式を数値積分することにより、図11(a)に示す位相空間での仮想粒子の挙動が計算され(磁場解析)、粒子の運動方程式を数値積分することにより、図11(b)に示す位相空間での粒子の挙動が計算される(機構・弾性解析)。仮想粒子の挙動、粒子の挙動を交互に計算することで、磁場・機構・弾性連成解析が行われる。運動方程式の形にして蛙跳び法を採用することにより、仮想粒子の運動方程式、粒子の運動方程式それぞれの数値計算において系のエネルギは保存されうる。
【0007】
しかしながら、仮想粒子の運動方程式によって磁性体を有する系の磁場状態が定常に到達するまで繰り返し計算を行う場合、任意の誤差値で繰り返し計算を打ち切る必要がある。なお、繰り返し計算を行うほど誤差は減少していくが、誤差がゼロということは実質的にあり得ない。
【0008】
この打ち切り誤差のために仮想粒子の挙動の計算(磁場解析)から粒子の挙動の計算(機構・弾性解析)までのサイクルを繰り返すたびに系全体のエネルギが変動しうる。サイクルの数が多くなるほど、すなわちシミュレーションが複雑で大規模になるほど、この変動の影響が蓄積されて無視できなくなっていく。
【0009】
また、打ち切り誤差に限らず、磁場の演算で生じた誤差がサイクルを重ねるうちに蓄積され、そのエネルギ保存への影響が無視できなくなることも考えられる。
【0010】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁場と機構・弾性の連成解析においてエネルギ保存をより強固なものとする解析技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は解析装置に関する。この解析装置は、解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する解析装置であって、磁性体を構成する粒子は内部に仮想粒子をもち、仮想粒子が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解き、仮想粒子の挙動から、系の磁場状態を演算する磁場演算部と、粒子の運動方程式を数値的に解くことにより粒子の挙動を演算する機構・弾性演算部と、を備える。
【0012】
この態様によると、粒子の運動方程式には、磁場解析で生じた数値誤差が復元力として含まれており、磁場解析によって生じた数値誤差は自動的に粒子の挙動に反映され、系全体のエネルギ保存が強固となる。
またこの態様によると、磁場の演算で生じた数値誤差を粒子の挙動(機構・弾性の演算)の演算に組み入れることができる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁場と機構・弾性の連成解析においてエネルギ保存をより強固なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る解析装置の機能および構成を示すブロック図である。
【図2】SPMモータの構成の概略を示す図である。
【図3】SPMモータのステータティースの1つの周囲の拡大斜視図である。
【図4】図1の解析装置における一連の処理を示すフローチャートである。
【図5】コイルの説明図である。
【図6】直方体導体とローカル座標との関係を示す図である。
【図7】円弧状柱状導体とローカル座標との関係を示す図である。
【図8】図4に示される処理の一部の詳細を示すフローチャートである。
【図9】磁性体に対応する粒子(立方体要素)およびその内部の仮想粒子の説明図である。
【図10】復元力を導入する場合としない場合とでの系全体のエネルギの推移を示す説明図である。
【図11】図11(a)、(b)は、仮想粒子および粒子がそれぞれ運動する位相空間を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付する場合がある。また、適宜重複した説明は省略する。
【0017】
実施の形態に係る解析装置では、モータなどの現実の物体に対して、磁場と機構・弾性の連成シミュレーションが行われる。解析対象を粒子の集合体とし、特に、機構・弾性解析に関しては粒子の運動方程式(分子動力学)、磁性体の磁場解析に関しては磁性体を構成する粒子内の仮想粒子の運動方程式を用いて連成計算が実施される。この連成計算において解析装置は、仮想粒子の運動方程式による磁場解析で発生した数値誤差を粒子の運動方程式に復元させる。これにより系全体のエネルギ保存がより強固となり、高精度な連成解析が可能となる。
【0018】
仮想粒子の運動方程式による磁場解析で発生する数値誤差は少なくとも、反復解法で本来は無限に繰り返す反復を中途で打ち切ったときに発生する近似解と厳密解の差である打ち切り誤差と、離散化近似を行って得た問題の解と元の連続問題の解との差に対応する離散化誤差と、を含む。以下では、仮想粒子の運動方程式による磁場解析で発生する数値誤差のうち打ち切り誤差を取り扱う場合を考える。なお、他の実施の形態では、打ち切り誤差以外の他の数値誤差が取り扱われてもよい。
【0019】
図1は、実施の形態に係る解析装置1の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0020】
解析装置1は、解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として当該物体の振る舞いを解析する。ここでの粒子系としては、特に繰り込まれた粒子系が使用される。繰り込みについては、特許文献2に詳しい。
解析装置1は、制御部3と、記憶装置5と、メディア入出力部6と、入力部7と、表示部9と、プリンタポート11と、を備え、これらの部材はバス13を介して互いに接続されている。
【0021】
制御部3は、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、記憶手段としての記憶装置5に格納されたプログラムに従って、バス13を介して接続された各装置を駆動制御する。
【0022】
記憶装置5は、初期条件を有する情報である入力情報を有している。メディア入出力部6は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD等のメディアとの間で情報の入出力を行う装置である。入力部7は、キーボード、マウス等の入力装置であり、表示部9はディスプレイ等の表示機器である。プリンタポート11には出力装置としてのプリンタ12等が接続される。
【0023】
制御部3は、粒子モデル生成部60と、繰り込み部62と、相互作用演算部64と、磁場演算部66と、機構・弾性演算部68と、制御パラメータ更新部70と、終了判定部72と、を含む。各部の詳細は後述する。
【0024】
以下では、解析装置1による解析対象の物体としてモータ、特に永久磁石モータ(Permanent Magnet Motor)の一種であるSPMモータ31(Surface Permanent Magnet Motor)を採用する場合を説明する。
【0025】
SPMモータ31の構成の概略を図2および図3を参照して説明する。
図2に示すように、SPMモータ31は、回転子(移動子)であるロータ33と、固定子であるステータ35と、を有している。ロータ33は、鉄等の磁性体である円柱状のロータコア37を有し、ロータコア37の表面には永久磁石39が設けられている。ロータコア37の軸中心には棒状のロータシャフト41が設けられている。
【0026】
ステータ35は、磁性体である歯状のステータティース43と、ステータティース43の外側に設けられた円筒状の磁性体であるコアバック44と、コアバック44の外側に設けられた円筒状のフレーム46と、を含む。
【0027】
図2および図3に示すように、ステータティース43には、金属等の導電体であるコイル45が巻きつけられている。なお、実際のSPMモータ31ではコイル45は仕様に応じたターン数でステータティース43に巻きつけられて束となっているが、本実施の形態では、図2および図3に描かれているように、コイル一本一本をモデル化せず、コイルの束を1つの導体として扱う。
【0028】
このような構造のSPMモータ31は、永久磁石39の磁場、およびコイル45に電流を流すことにより発生する磁場によって、ロータ33、ステータ35が磁化する。磁性体の磁気エネルギの偏差によりSPMモータ31は駆動する。
【0029】
そのため、SPMモータ31の解析を行うためにはコイル45、永久磁石39がロータ33、ステータ35を構成する磁性体上に作る磁場ベクトルを計算し、これら磁性体の磁化現象を解析する必要がある。
【0030】
図4は、実施の形態に係る解析装置1における一連の処理を示すフローチャートである。以下の手順において、磁性体とは、ロータ33、ステータ35を構成する磁性体と永久磁石39を指し示し、磁化曲線を表す関数によってこれらは区別される。導体とは、例えばコイル45である。
【0031】
(ステップS202)
解析装置1は、SPMモータ31の形状に関する情報や材料の特徴(材料定数など)を含む初期条件を取得し、記憶装置5に入力情報として記憶する。この初期条件は例えばメディア入出力部6を介してCD−ROM等の記録媒体から読み込んだものであってもよい。さらに、あらかじめ上記初期条件が入力情報として記憶されている場合は、ステップS202は不要である。
【0032】
初期条件は、SPMモータ31の3次元構造(形状、座標点)、質量密度、磁性体の磁化曲線を表す関数、導体の電流密度ベクトル、を含む。SPMモータ31の3次元構造の情報とは例えばCAD等のデータである。電流密度ベクトルは、コイル45の作る磁場ベクトルを計算する際に必要になる。磁性体の磁化曲線を表す関数は磁化ベクトルを計算する際に必要になる。
【0033】
(ステップS204)
粒子モデル生成部60は、記憶装置5が記憶する初期条件からSPMモータ31の粒子モデルを生成する。粒子モデル生成部60は、まず、初期条件に含まれる3次元構造の情報から、SPMモータ31をN個の粒子に分割し(Nは2以上の整数)、各粒子の位置ベクトルを計算し,記憶装置5に記憶する。次に、粒子モデル生成部60は、磁性体を構成する各粒子内の仮想粒子の位置ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。N個の粒子は粒子系Sを構成する。粒子は、原子、分子単位であってもよいし、粒子の位置を重心とする多面体要素であってもよい。仮想粒子の詳細については後述する。
【0034】
粒子の数Nおよび位置ベクトルは初期条件に含まれる3次元構造およびあらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状により計算される。また、磁性体を構成する各粒子の重心と表面で構成された多面体要素を仮想粒子とする。以下ではSPMモータ31の磁性体に対応する粒子は、粒子の位置を重心とする立方体要素であるとし、仮想粒子は、粒子の重心と各表面で構成される五面体であるとする。つまり,ひとつの粒子は6つの仮想粒子を内包する。仮想粒子の位置の計算に関しては、ステップS102の解説において詳細を述べる。
【0035】
また、導体であるコイル45に対応する粒子は、以下のように決定する。
図5は、コイル45の説明図である。図5(a)は、コイル45の拡大斜視図であり、図5(b)は、コイル45をローカル導体に分割した例を示す図である。図6は、直方体導体とローカル座標との関係を示す図である。図7は、円弧状柱状導体とローカル座標との関係を示す図である。
【0036】
粒子モデル生成部60は、初期条件に含まれる3次元構造の情報から、図5(a)に示されるコイル45を図5(b)に示すようにローカル導体(直方体導体45a、45bと円弧状柱状導体45c、45d)に分割し、それぞれの導体が作る磁場ベクトルを計算するための係数を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0037】
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、粒子モデル生成部60は、図6に示すように、ローカル座標系(xs,ys,zs)を適用する。このローカル座標系においてはローカル導体(直方体導体45a)の重心を原点Osとし、直方体導体45aの寸法はxs方向に2a、ys方向に2b、zs方向に2cの長さを持つものとする。また原点Osに粒子は位置するものとする。
【0039】
粒子モデル生成部60は、初期条件に含まれるコイル45の3次元構造を読み込み、ローカル導体(直方体導体45a)の寸法であるa、b、cと粒子位置ベクトルとを計算し記憶装置5に記憶する。
【0040】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、粒子モデル生成部60は、図7に示すようにローカル座標系(xc,yc,zc)を適用する。このローカル座標系においては原点Ocは円弧の中心軸上に存在し、かつ円弧状柱状導体45cの高さ方向(図7のzc方向)に対して円弧状柱状導体45cが対称となる点に存在するものとする。
【0042】
また、xc,yc,zcは、xc−yc平面でみると、+xc軸を基点とし、円弧状柱状導体45cの円弧が+zc軸からみて反時計回りになるようして決定する。円弧状柱状導体45cの内径と外径の平均値をRcとし、径方向の厚さを2ra、zc方向の高さを2zbとする。
【0043】
電流は+xc軸を基点として、+zcから見て反時計回りの方向への角度をθとし、電流はこの方向に一様な電流密度jで流れているものとする。粒子は円筒座標系で(Rc、θ/2、0)に位置するものとする。
【0044】
粒子モデル生成部60は、初期条件に含まれるコイル45の3次元構造を読み込み、ローカル導体(円弧状柱状導体45c)の寸法であるra、zb、θ、Rcおよび粒子位置ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
なお、粒子モデル生成部60は磁性体、導体の別なく同じように粒子を設定してもよい。
【0045】
(ステップS206)
繰り込み部62は、特許文献2で説明されている繰り込み群分子動力学の手法を使用して粒子系Sを繰り込み処理し、繰り込まれた粒子系S’を生成する。以下では、第1の繰り込み因子をα、第2の繰り込み因子をγ=0、第3の繰り込み因子δ=2、空間の次元数d=3とする。特許文献2によると、粒子系Sのパラメータと繰り込まれた粒子系S’のパラメータとの間には、
【数1】
の関係が成り立つ。また、本発明者による独自の考察(後述)によると、
【数2】
の関係が成り立つ。以下の解説で述べる物理量は、すべて繰り込まれた粒子系S’における量とする。
【0046】
(ステップS208)
相互作用演算部64は、粒子間の相互作用による相互作用ポテンシャルエネルギφ’を演算する。相互作用ポテンシャルエネルギφ’の演算については特許文献2に詳しい。特に本実施の形態では、相互作用ポテンシャルエネルギφ’は弾性を考慮した形を有する。
【0047】
(ステップS210)
磁場演算部66は、磁性体を構成する粒子内の仮想粒子が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより、粒子位置ベクトル上の磁場を演算する。その際、磁場演算部66は、所定の定常的な状態に達するまで仮想粒子の運動方程式に基づく演算を反復的に行う。詳細は後述する。
【0048】
(ステップS212)
機構・弾性演算部68は、相互作用演算部64によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギφ’と磁場演算部66によって演算された粒子の位置ベクトル上の磁場に基づき各粒子の運動方程式を数値積分し、各粒子の位置、速度を更新する。次に更新された粒子の位置を基に仮想粒子の位置を更新する。なお、粒子の運動方程式は,磁場解演算における誤差に起因した復元力の項を有する。詳細は後述する。
【0049】
(ステップS214)
制御部3は、ユーザからの出力指示の有無を確認する。
(ステップS216)
制御部3は、ユーザからの出力指示がある場合(ステップS214のY)、繰り込まれた粒子系S’にステップS206に対応するリスケーリングを施す。
(ステップS218)
制御部3は、リスケーリングの結果得られる粒子の位置ベクトル、力ベクトル、磁化ベクトル、粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトル、磁束密度ベクトルなどを,プリンタポート11を介してプリンタ12より出力する。
【0050】
(ステップS220)
終了判定部72は、ユーザからの出力指示がない場合(ステップS214のN)、所定の終了条件(時間、移動量等)を満たしているかを判断する。終了判定部72は、終了条件が満たされている場合は(ステップS220のY)、解析を終了する。
制御部3は、終了条件が満たされていない場合は(ステップS220のN)、処理をステップS208に戻す。すなわち、制御部3は、更新された各粒子の位置、速度を使用して、再度相互作用ポテンシャルエネルギφ’や磁場を演算する。
【0051】
なお、制御パラメータ更新部70は、終了条件が満たされていない場合であって(ステップS220のN)ユーザからの求めがある場合は、繰り込まれた粒子系S’の外部から与えられる制御パラメータであって、各粒子に作用する磁場に影響を及ぼす制御パラメータ、例えば電流密度ベクトルを更新する。磁場演算部66は更新された電流密度ベクトルを使用して磁場を演算する。
【0052】
ステップS210およびステップS212について以下に詳述する。
図8は、図4のステップS210およびステップS212の詳細を示すフローチャートである。
【0053】
(ステップS102)
磁場演算部66は、コイルの寸法および電流密度ベクトルを用いて、ビオ・サバールの法則を積分することにより得られる解析解により、通電されたコイルが磁性体に対応する粒子内の仮想粒子位置ベクトル上に作る磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0054】
図9は、磁性体に対応する粒子と、仮想粒子の説明図である。粒子の形状は立方体としている。図9では、立方体要素を2次元表示した場合の形状の一例が示される。
ここで、粒子の位置ベクトル(立方体要素の重心)を(太字の)rg’とし、粒子(立方体要素)表面の中点をq’点とする。粒子位置と粒子表面で構成された五面体要素を仮想粒子とし,粒子位置とq’点との中間点p’点を仮想粒子の位置とする。太字のn’q’は中点q’が属する要素境界面の法線ベクトル、ΔS’q’は中点q’が属する仮想粒子の表面積である。
【0055】
図8に戻る。
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、図6で定義されるローカル座標系(xs’,ys’,zs’)を適用する。
次に、任意の点であるP点の位置ベクトルをローカル座標系(xs’,ys’,zs)に変換する。
【0057】
通電された直方体導体がP点に作る磁場ベクトルは、以下に示す式(1)〜(3)で記載される。
【0058】
【数3】
【0059】
ここで、(太字の)rps’はローカル座標系(xs’,ys’,zs’)でのP点の位置ベクトルであり、xps’,yps’,zps’はxs’,ys’,zs’方向の値である。πは円周率である。Hx’s’、Hy’s’、Hz’s’はローカル座標系(xs’,ys’,zs’)における磁場ベクトルの各成分である。j’は電流密度である。
【0060】
また、xi’,yj’,zk’はxs’,ys’,zs’方向の積分の上限、下限を表しており、式(4)に示す関係が成立する。
【0061】
【数4】
【0062】
ここで、a’,b’,c’は直方体導体の寸法である。
【0063】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、図7で定義されるローカル座標系(xc’,yc’,zc’)を適用する。
ローカル座標系(xc’,yc’,zc’)に変換後のP点の位置ベクトルを以下の式(5)に示すように円筒座標系(太字の)rpc’=(Rpc’、φpc’、Zpc’)に変換する。
通電された円弧状柱状導体45cがP点に作る磁場ベクトルは、以下の式(6)〜(11)で表される。
【0065】
【数5】
【0066】
ここで、Hrc’、Htc’、Hzc’は円筒座標系での磁場ベクトルの各成分である。j’は電流密度である。ra’、θ’、zb’は円弧状柱状導体45cの寸法であり、Rc’は円弧の内径と外径の平均値である。sgnはZk’の符号であり、Rj’、Zk’は積分の上限、下限を表しており、式(12)に示す関係が成立する。
【0067】
【数6】
【0068】
以上が任意の点Pにコイル45が作る磁場ベクトルの計算手順である。
磁場演算部66は、繰り込まれた粒子系S’における、磁性体に対応するすべての仮想粒子の位置p’点の位置ベクトルを読み込む。
なお、ステップS212おいて粒子および仮想粒子の位置ベクトルが更新され記憶装置5に記憶されている場合は、磁場演算部66はその値を読み込む。
【0069】
次に、磁場演算部66は、図9のp’点の位置ベクトルをローカル座標系(xs’,ys’,zs’)に変換し、直方体導体45aの寸法と、電流密度ベクトルとを読み込み、式(1)〜(4)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
【0070】
次に、磁場演算部66は、式(1)〜(4)で計算された磁場ベクトルをグローバル座標系(x’,y’,z’)に変換し、変換後の磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
これにより、通電された直方体導体45aが、p’点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0071】
さらに磁場演算部66は、p’点の位置ベクトルをローカル座標系(xc’,yc’,zc’)に変換し、さらに円筒座標系(太字の)rpc’=(Rpc’、φpc’、Zpc’)に変換する。
【0072】
次に磁場演算部66は、円弧状柱状導体45cの寸法ra’、θ’、zb’およびRc’を読み込み、また、磁場演算部66は電流密度ベクトルを読み込む。
【0073】
磁場演算部66は式(6)〜(12)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
次に、磁場演算部66は、計算された磁場ベクトルを直交座標系に変換し、さらにグローバル座標系(x’,y’,z’)に変換し記憶装置5に記憶する。
これにより、通電された円弧状柱状導体45cがp’点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0074】
(ステップS104)
磁場演算部66は、永久磁石39が磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の位置に作る磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0075】
(ステップS106)
磁場演算部66は、ステップS102で計算した磁場ベクトルとステップS104で計算した磁場ベクトルとの和を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0076】
(ステップS108)
磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子位置ベクトルと、粒子(立方体要素)の位置、形状により、磁性体に対応する仮想粒子の運動方程式の係数を計算し記憶装置5に記憶する。
【0077】
磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子および仮想粒子の位置ベクトルを読み込む。
なお、ステップS212おいて粒子および仮想粒子の位置ベクトルが更新され記憶装置5に記憶されている場合は、磁場演算部66はその値を読み込む。
【0078】
磁場演算部66は、粒子の位置ベクトルと粒子(立方体要素)の形状から、仮想粒子表面のq’点の位置ベクトルと仮想粒子表面の法線ベクトル(太字の)n’を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0079】
次に、磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子表面積ΔS’、および仮想粒子の体積ΔV’を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0080】
次に、磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の運動方程式から拘束条件を考慮せずに時間刻み幅δt’後の仮想粒子の挙動(正準変数の値)を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0081】
磁性体に対応する(N’−w)個の粒子のラグランジアンを式(13)〜式(15)で表される形とする。wは自然数であり、繰り込まれた粒子系S’においてコイル45に対応する粒子の数である。
【0082】
【数7】
【0083】
ここで、式(13)において、α’は仮想質量、太字のr’は位置ベクトル、太字のH’および太字の傍点付きH’は正準変数、太字のM’は磁化ベクトル、太字のHext’は外部からの印加磁場ベクトル、χ’は磁気感受率、μ0’は真空の透磁率、λ’はラグランジュの未定定数、πは円周率、s’は粒子内の仮想粒子数である。
【0084】
また、各物理量の添え字ip’は繰り込まれた粒子系におけるi番目の粒子内のp’番目の仮想粒子、添え字jq’は繰り込まれた粒子系におけるj番目の粒子内のq’番目の仮想粒子の物理量を示す。
【0085】
式(13)において、m’は粒子の質量、v’は速度、φ’(ri’−rj’)はi番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギである。添え字i、jはそれぞれ、i、j番目の粒子の物理量を示す。
【0086】
次に、正準変数を(太字の)Hip’’、(太字の傍点付き)Hip’’とし、式(13)〜式(15)で示されるラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入すると、仮想粒子の運動方程式は式(16)のように記載できる。
【0087】
【数8】
【0088】
ここで、式(16)の右辺第3項は、ラグランジュの未定定数を通して拘束条件(磁化ベクトルの発散は0)を課している。
式(16)の右辺第4項は外部からの印加磁場ベクトルが変化したときにすばやく追従させるための減衰項であり、γ’は減衰定数である。
【0089】
式(16)の右辺第3項に示される拘束条件を含んだ運動方程式を解くにあたり、本実施形態では、一般化された拘束条件の導入法であるSHAKE法を採用する。
拘束条件を考慮せずに蛙跳び法により式(16)を離散化すると以下の式(17)、式(18)、(19)になる。
【0090】
【数9】
【0091】
ここで、δt’は磁化現象の収束計算を行う上で用いる時間刻み幅である。
添え字のnは任意の整数であり、nδt’における物理量、n−1/2は(n−1/2)δt’における物理量、n+1/2は(n+1/2)δt’における物理量、n+1は(n+1)δt’における物理量に対応している。
【0092】
磁場演算部66は、既に計算され記憶装置5に記憶されているp’点、q’点の位置ベクトルを読み込む。
【0093】
次に、磁場演算部66は、ステップS106で既に計算され記憶装置5に記憶されているコイル45および永久磁石39が、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子位置p’点に作る磁場ベクトルを外部からの印加磁場ベクトルとして読み込む。
さらに、磁場演算部66は、既に計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体に対応する仮想粒子の表面積、法線ベクトルおよび体積を読み込む。
また、磁場演算部66はあらかじめ記憶装置5に記憶されている減衰定数、仮想質量、時間刻み幅を読み込む。
【0094】
次に、磁場演算部66はあらかじめ記憶装置5に記憶されている仮想粒子の正準変数((太字の)Hip’’、(太字の傍点付き)Hip’’)の初期値を読み込む。
なお、磁場演算部66は後述するステップS110において仮想粒子の正準変数が更新されている場合は、その値を読み込む。
なお、磁化ベクトルは、初期条件に含まれる磁化曲線を表す関数と(太字の)Hip’’とを使用して計算される。
【0095】
磁場演算部66は、式(17)、式(18)、式(19)を、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子に対して計算し、計算された正準変数((太字の)Hip’’、(太字の傍点付き)Hip’’)の値を記憶装置5に記憶する。
【0096】
(ステップS110)
磁場演算部66は、ステップS108で計算し記憶装置5に記憶されている、(太字の)Hip’’に拘束条件を加え、計算された(太字の)Hip’’を、記憶装置5に記憶する。
【0097】
以下に示す式(20)、式(21)に従って仮想粒子に拘束条件を加える。
【0098】
【数10】
【0099】
磁場演算部66は、ステップS108で計算され記憶装置5に記憶されている磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の正準変数の値を読み込む。
磁場演算部66は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている仮想質量、時間刻み幅、減衰定数を読み込む。
磁場演算部66は、磁性体に対応する各粒子内の仮想粒子に対して式(20)、式(21)に基づく計算を行い、計算された(太字の)Hip’’を記憶装置5に記憶する。
【0100】
(ステップS112)
次に、磁場演算部66はステップS110で求めた(太字の)Hip’’が拘束条件を満たしているかを判断し、満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップS110に戻る。
【0101】
具体的には磁場演算部66は、ステップS110で計算し記憶装置5に記憶されている磁性体に対応する粒子内の仮想粒子各々の(太字の)Hip’’から計算される磁化ベクトルを用いて式(22)に基づく計算を行う。
【0102】
【数11】
【0103】
erri’は磁性体に対応する粒子の内、i番目の粒子の拘束条件に対する誤差値である。
【0104】
磁化ベクトル(太字の)M’は、ステップS110において計算され記憶装置5に記憶されている(太字の)Hip’’を磁場演算部66が読み込み、これと初期条件に含まれる磁化曲線を表す関数とを使用することで計算される。
【0105】
法線ベクトル(太字の)n’には、既に計算され記憶装置5に記憶されているものを磁場演算部66は読み込み代入する。
【0106】
磁場演算部66は、すべての粒子に対して、誤差の値が式(23)を満たさなければステップS110に戻る。
【0107】
【数12】
【0108】
式(23)においてA1’は誤差判別値であり、あらかじめ記憶装置5に任意の値が記憶されている。
【0109】
(ステップS114)
磁場演算部66は、仮想粒子の運動方程式に基づく反復的な演算を打ち切るか否かを判定するための所定の打ち切り条件が満たされるか否かを判定する。ここでは打ち切り条件として、磁性体の磁化現象が定常状態に到達したか否かという基準が使用される。
磁性体に対応する粒子内の仮想粒子が定常状態に到達したか否かは、以下の式(24)により判定される。
【0110】
【数13】
【0111】
A2’は仮想粒子が定常状態に到達したかを判断するための誤差判定値であり、任意に設定されうる。
【0112】
磁場演算部66は、あらかじめ記憶装置5に記憶されているA2’、μ0’を読み込む。
また、磁場演算部66は、ステップS110で計算され記憶装置5に記憶されている、(太字の)Hip’’を読み込む。
【0113】
次に、磁場演算部66は式(24)を計算し、式(24)を満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップS108に戻る。
【0114】
なお、式(24)が満たされ次のステップに進む、すなわち磁場演算部66における反復計算が打ち切られたときの
【数14】
は、上記打ち切り条件のもとでの打ち切り誤差であり、大抵の場合ゼロでない有限値である。
ステップS210は、ステップS102,ステップS104、ステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、ステップS114、を含む。
【0115】
(ステップS116)
機構・弾性演算部68は、SPMモータ31に対応するすべての粒子の位置での磁場ベクトル、磁化ベクトル、磁束密度ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。すなわち、機構・弾性演算部68は、磁性体に対応するすべての粒子の位置での磁場ベクトル、磁化ベクトル、磁束密度ベクトルと、コイル45に対応するすべての粒子の位置での磁場ベクトル、磁束密度ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0116】
(磁性体に対応する粒子)
磁性体に対応する粒子の位置での磁場ベクトルは、仮想粒子より以下の式(25)で表される。
【0117】
【数15】
【0118】
ここで、(太字の)ex’’=(1,0,0)、(太字の)ey’’=(0,1,0)、(太字の)ez’’=(0,0,1)である。
磁性体に対応する粒子の磁化ベクトルは、粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルと磁化曲線を表す関数とを使用して求めることができる。
【0119】
磁性体に対応する粒子の位置での磁束密度ベクトルは、式(26)で表される。
【0120】
【数16】
【0121】
ここで、太字のB’は磁束密度ベクトルである。
【0122】
機構・弾性演算部68は、既に計算されている、磁性体に対応する粒子内の(太字の)Hip’’を記憶装置5から読み込む。
【0123】
次に、機構・弾性演算部68は、既に計算され記憶装置5に記憶されている法線ベクトルを読み込み、式(25)に基づいて磁性体に対応する粒子の位置での磁場ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0124】
さらに、機構・弾性演算部68は、このステップで計算された磁場ベクトルと初期条件に含まれる磁化曲線を表す関数とを使用して、磁性体に対応する粒子の磁化ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0125】
次に機構・弾性演算部68は、このステップで計算された磁場ベクトルと磁化ベクトルを式(26)に代入し、磁性体に対応する粒子の位置での磁束密度ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
なお、真空の透磁率はあらかじめ記憶装置5に記憶されているものを制御部3が読み込む。
【0126】
(コイルに対応する粒子)
コイル45に対応する粒子の位置での磁場ベクトルは式(27)、式(28)で記載される。
【0127】
【数17】
【0128】
式(27)の右辺第一項は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子がコイル45に対応する粒子の位置に作る磁場ベクトルを記述する項であり、式(28)で表される。
式(27)の右辺第二項は、コイル45に対応する粒子がコイル45に対応する粒子の位置に作る磁場ベクトルであり式(1)〜(12)で表される。
【0129】
機構・弾性演算部68は、繰り込まれた粒子系S’におけるコイル45に対応する粒子の位置ベクトルを記憶装置5より読み込む。
なお、ステップS120においてコイル45に対応する粒子の位置ベクトルが更新されている場合は、機構・弾性演算部68はその値を読み込む。
【0130】
機構・弾性演算部68は計算され記憶装置5に記憶されている磁性体に対応する粒子の数と仮想粒子数、および仮想粒子表面のq’点の位置ベクトルと表面積を読み込む。
また、機構・弾性演算部68はこのステップまでに計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の磁化ベクトルを読み込む。
さらに、機構・弾性演算部68はコイル45の寸法および電流密度ベクトルを読み込む。
【0131】
その後、機構・弾性演算部68は式(27)、式(28)および式(1)〜(12)に従い、コイル45に対応する粒子の位置での磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0132】
機構・弾性演算部68は、コイル45に対応する粒子の位置での磁束密度ベクトル(太字の)Bi’を、すでに計算されているコイル45に対応する粒子の位置での磁場ベクトルに真空の透磁率を掛けて計算し記憶装置5に記憶する。なお、真空の透磁率は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている。
【0133】
このように、制御部3は、仮想粒子の運動方程式を解くことにより磁性体の磁化現象を解析する。そのため、有限要素法のように空間全域をメッシュ分割する必要がなく、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる。
また、運動方程式を解くため、行列を扱わず、計算に必要なメモリ量は粒子数に比例する。
【0134】
(ステップS118)
機構・弾性演算部68はSPMモータ31に対応する全ての粒子に働く力ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。機構・弾性演算部68は、相互作用演算部64によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギφ’から導かれる粒子に働く弾性力と、磁場演算部66によって演算された磁場から導かれる当該粒子に働く磁気力と、磁場演算部66における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく復元力と、を足し合わせて当該粒子に働く合計の力とする。
【0135】
(磁性体に対応する粒子)
正準変数を太字のri’、太字の傍点付きri’とし、式(13)のラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入する。すると、磁性体に対応する粒子の運動方程式は式(29)のように記載できる。
【0136】
【数18】
【0137】
式(29)の右辺第1項は、相互作用演算部64によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギφ’から導かれる粒子に働く力である。特に相互作用ポテンシャルエネルギφ’が弾性を考慮して決定されている場合、この力は弾性力に相当する。式(29)の右辺第2項は、磁場演算部66によって演算された磁場から導かれる粒子に働く磁気力である。式(29)の右辺第3項は、磁場演算部66における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく復元力である。仮に打ち切り誤差がゼロになった場合、右辺第3項において
【数19】
となるので復元力はゼロとなる。
式(29)は、磁性体に対応する粒子には弾性力と磁気力と復元力とを足し合わせた力が働くことを示す。
【0138】
(コイルに対応する粒子)
コイル45に対応する粒子のうち、i番目の粒子の位置ベクトルを太字のri’、その位置ベクトルでの電流の単位ベクトルを太字のti’、磁束密度ベクトルを太字のBi’、電流の流れる方向のコイルの長さをLi’とすると、コイル45に対応する粒子の内、i番目の粒子に働く力ベクトルは以下の式(30)で記載される。
【0139】
【数20】
【0140】
(ステップS120)
機構・弾性演算部68は、粒子の運動方程式を数値的に解くことにより、各粒子の位置ベクトル、速度ベクトルを更新する。
ステップS212は、ステップS116、ステップS118、ステップS120、を含む。
【0141】
本実施の形態に係る解析装置1によると、仮想粒子の運動方程式による磁場解析において生じた誤差を粒子の運動方程式に復元力として含ませている。これは具体的には、式(13)のラグランジアンの右辺第1項の外側[]の中の第2項に起因する。これにより、磁場解析において生じた誤差による系全体のエネルギへの影響を、復元力の形で機構・弾性解析側で補償できる。その結果、磁場・機構・弾性の連成解析において系全体のエネルギ保存をより強固なものにすることができる。
【0142】
図10は、復元力を導入する場合としない場合とでの系全体のエネルギの推移を示す説明図である。図10の横軸は図4のステップS208、S210、S212を合わせて1ステップと見た場合のステップ数を示し、このステップ数が増大するにつれてシミュレーションも進んでいく。図10の縦軸は解析対象の系全体のエネルギを示す。
【0143】
図10の一点鎖線90は、復元力を導入しない場合の系全体のエネルギの推移を示す。この場合、磁場解析において生じた誤差を単純に切り捨ててしまう結果、ステップ数が増大するにつれて系全体のエネルギは真の値E0から離れてゆく。
【0144】
図10の実線96は、復元力を導入する本実施の形態の場合の系全体のエネルギの推移を示す。この場合、系全体のエネルギはステップ数が増大しても真の値E0の周りに存在する。
【0145】
また、本実施の形態に係る解析装置1では、磁場演算部66は定常的な状態に達するまで仮想粒子の運動方程式に基づく演算を反復的に行い、機構・弾性演算部68は磁場演算部66における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく復元力を使用して粒子の運動を演算する。したがって、反復的に仮想粒子の運動方程式に基づく演算を行うことによって磁場解析がなされている場合に、その打ち切り誤差による系全体のエネルギのドリフトを抑止することができる。
【0146】
また、本実施の形態に係る解析装置1によると、相互作用演算部64における弾性解析、磁場演算部66における磁場解析、機構・弾性演算部68における機構解析、制御パラメータ更新部70における制御解析、が連成されている。したがって、解析対象の物体に対する高精度かつエネルギ保存が強化されたシミュレーションが可能となる。
【0147】
以上、実施の形態に係る解析装置1の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0148】
上記では、磁性体に対応する粒子のラグランジアンから導出される仮想粒子の運動方程式を解くことで磁性体の磁化現象を計算した場合について説明したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、方程式であればラグランジアンから導出されたもの以外のものであってもよい。
【0149】
また、上記では本実施の形態をSPMモータ31の解析に使用したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を解析するものであれば、例えばリニアモータ等のSPMモータ31以外のモータ、あるいは磁性体で空間を囲む磁気シールドにおいて、磁性体でシールドされた空間内の解析に用いても良い。
【0150】
以下、粒子系Sのパラメータと繰り込まれた粒子系S’のパラメータとの間の関係について、本発明者が独自に行った考察を説明する。
第1の繰り込み因子をα、第2の繰り込み因子をγ、第3の繰り込み因子をδ、空間の次元数をdとした場合、特許文献2によると、
【数21】
となる。
【0151】
(磁場の繰り込み)
N個の原子上にスピン(核磁気モーメント)μi(i=1、2、…、N)があるバルクを考える。バルク内部の核スピンμiが遠方に作る磁気誘導は、
【数22】
と表される。これを粗視化すると、
【数23】
となる。
【0152】
以下に示されるように磁気モーメントを繰り込む。
【数24】
繰り込まれた磁束密度は、
【数25】
と表される。
【0153】
磁束密度と同様に磁場を繰り込むと、
【数26】
であり、繰り込まれた磁化は、
【数27】
である。粗視化された磁気モーメントm=Σμiに働く力は、
【数28】
であり、以下に示されるようにスケールされる。
【数29】
【0154】
粗視化された電荷の流れjが作る磁束密度は、
【数30】
である。粗視化された磁気モーメントmiと電流密度jの作る磁束密度との相互作用は、
【数31】
であるから、電流密度は以下に示されるようにスケールされる。
【数32】
【0155】
以上を纏めると、
【数33】
となる。
【符号の説明】
【0156】
1 解析装置、 3 制御部、 5 記憶装置、 6 メディア入出力部、 7 入力部、 9 表示部、 11 プリンタポート、 12 プリンタ、 13 バス、 60 粒子モデル生成部、 62 繰り込み部、 64 相互作用演算部、 66 磁場演算部、 68 機構・弾性演算部、 70 制御パラメータ更新部、 72 終了判定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置および解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの計算能力の向上に伴い、モータなどの電気機器の設計開発の現場では磁場解析を取り入れたシミュレーションがよく使用されるようになっている。シミュレーションを使用すると、実際にプロトタイプを製作しなくてもある程度の評価が可能となるので、設計開発のスピードが向上しうる。
【0003】
例えば特許文献1には、磁場解析を実行する演算処理装置を具えるモータ解析装置が記載されている。演算処理装置は、ユーザの操作に基づく外部指令に応じて、有限要素法による静磁場解析やマクスウェルの応力法によるトルク計算を実行する。有限要素法による静磁場解析のためにメッシュ分割が行われる。メッシュ分割は、コア領域及びハウジング領域、さらには外部空気層領域についても行われる。
【0004】
また、繰り込み群分子動力学を使用したシミュレーションの手法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−146688号公報
【特許文献2】特開2006−285866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は特願2010−128664において、例えば磁場と機構と弾性と制御とを連成して解析する手法を提案している。この手法では、ひとつのラグランジアンから導出される正準変数(太字のHip’’、太字の傍点付きHip’’)の仮想粒子の運動方程式および正準変数(太字のri’’、太字の傍点付きri’’)の粒子の運動方程式を、常微分方程式の一般的な解法のひとつである蛙跳び法によってそれぞれ数値積分を行い、連成解析を実施する。
(特願2010−128664では、仮想粒子の運動方程式を磁場の運動方程式と名づけ記述している。特願2010−128664で示す手法は、本来、仮想的な粒子を用いて、磁性体を有する系の磁場解析を行っており、仮想的な粒子を磁場と名づけている。本明細書においては、呼び名を限定し物理的により明確とするよう、仮想粒子として記載する)。
仮想粒子の運動方程式を数値積分することにより、図11(a)に示す位相空間での仮想粒子の挙動が計算され(磁場解析)、粒子の運動方程式を数値積分することにより、図11(b)に示す位相空間での粒子の挙動が計算される(機構・弾性解析)。仮想粒子の挙動、粒子の挙動を交互に計算することで、磁場・機構・弾性連成解析が行われる。運動方程式の形にして蛙跳び法を採用することにより、仮想粒子の運動方程式、粒子の運動方程式それぞれの数値計算において系のエネルギは保存されうる。
【0007】
しかしながら、仮想粒子の運動方程式によって磁性体を有する系の磁場状態が定常に到達するまで繰り返し計算を行う場合、任意の誤差値で繰り返し計算を打ち切る必要がある。なお、繰り返し計算を行うほど誤差は減少していくが、誤差がゼロということは実質的にあり得ない。
【0008】
この打ち切り誤差のために仮想粒子の挙動の計算(磁場解析)から粒子の挙動の計算(機構・弾性解析)までのサイクルを繰り返すたびに系全体のエネルギが変動しうる。サイクルの数が多くなるほど、すなわちシミュレーションが複雑で大規模になるほど、この変動の影響が蓄積されて無視できなくなっていく。
【0009】
また、打ち切り誤差に限らず、磁場の演算で生じた誤差がサイクルを重ねるうちに蓄積され、そのエネルギ保存への影響が無視できなくなることも考えられる。
【0010】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁場と機構・弾性の連成解析においてエネルギ保存をより強固なものとする解析技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は解析装置に関する。この解析装置は、解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する解析装置であって、磁性体を構成する粒子は内部に仮想粒子をもち、仮想粒子が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解き、仮想粒子の挙動から、系の磁場状態を演算する磁場演算部と、粒子の運動方程式を数値的に解くことにより粒子の挙動を演算する機構・弾性演算部と、を備える。
【0012】
この態様によると、粒子の運動方程式には、磁場解析で生じた数値誤差が復元力として含まれており、磁場解析によって生じた数値誤差は自動的に粒子の挙動に反映され、系全体のエネルギ保存が強固となる。
またこの態様によると、磁場の演算で生じた数値誤差を粒子の挙動(機構・弾性の演算)の演算に組み入れることができる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁場と機構・弾性の連成解析においてエネルギ保存をより強固なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る解析装置の機能および構成を示すブロック図である。
【図2】SPMモータの構成の概略を示す図である。
【図3】SPMモータのステータティースの1つの周囲の拡大斜視図である。
【図4】図1の解析装置における一連の処理を示すフローチャートである。
【図5】コイルの説明図である。
【図6】直方体導体とローカル座標との関係を示す図である。
【図7】円弧状柱状導体とローカル座標との関係を示す図である。
【図8】図4に示される処理の一部の詳細を示すフローチャートである。
【図9】磁性体に対応する粒子(立方体要素)およびその内部の仮想粒子の説明図である。
【図10】復元力を導入する場合としない場合とでの系全体のエネルギの推移を示す説明図である。
【図11】図11(a)、(b)は、仮想粒子および粒子がそれぞれ運動する位相空間を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付する場合がある。また、適宜重複した説明は省略する。
【0017】
実施の形態に係る解析装置では、モータなどの現実の物体に対して、磁場と機構・弾性の連成シミュレーションが行われる。解析対象を粒子の集合体とし、特に、機構・弾性解析に関しては粒子の運動方程式(分子動力学)、磁性体の磁場解析に関しては磁性体を構成する粒子内の仮想粒子の運動方程式を用いて連成計算が実施される。この連成計算において解析装置は、仮想粒子の運動方程式による磁場解析で発生した数値誤差を粒子の運動方程式に復元させる。これにより系全体のエネルギ保存がより強固となり、高精度な連成解析が可能となる。
【0018】
仮想粒子の運動方程式による磁場解析で発生する数値誤差は少なくとも、反復解法で本来は無限に繰り返す反復を中途で打ち切ったときに発生する近似解と厳密解の差である打ち切り誤差と、離散化近似を行って得た問題の解と元の連続問題の解との差に対応する離散化誤差と、を含む。以下では、仮想粒子の運動方程式による磁場解析で発生する数値誤差のうち打ち切り誤差を取り扱う場合を考える。なお、他の実施の形態では、打ち切り誤差以外の他の数値誤差が取り扱われてもよい。
【0019】
図1は、実施の形態に係る解析装置1の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0020】
解析装置1は、解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として当該物体の振る舞いを解析する。ここでの粒子系としては、特に繰り込まれた粒子系が使用される。繰り込みについては、特許文献2に詳しい。
解析装置1は、制御部3と、記憶装置5と、メディア入出力部6と、入力部7と、表示部9と、プリンタポート11と、を備え、これらの部材はバス13を介して互いに接続されている。
【0021】
制御部3は、CPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、記憶手段としての記憶装置5に格納されたプログラムに従って、バス13を介して接続された各装置を駆動制御する。
【0022】
記憶装置5は、初期条件を有する情報である入力情報を有している。メディア入出力部6は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD等のメディアとの間で情報の入出力を行う装置である。入力部7は、キーボード、マウス等の入力装置であり、表示部9はディスプレイ等の表示機器である。プリンタポート11には出力装置としてのプリンタ12等が接続される。
【0023】
制御部3は、粒子モデル生成部60と、繰り込み部62と、相互作用演算部64と、磁場演算部66と、機構・弾性演算部68と、制御パラメータ更新部70と、終了判定部72と、を含む。各部の詳細は後述する。
【0024】
以下では、解析装置1による解析対象の物体としてモータ、特に永久磁石モータ(Permanent Magnet Motor)の一種であるSPMモータ31(Surface Permanent Magnet Motor)を採用する場合を説明する。
【0025】
SPMモータ31の構成の概略を図2および図3を参照して説明する。
図2に示すように、SPMモータ31は、回転子(移動子)であるロータ33と、固定子であるステータ35と、を有している。ロータ33は、鉄等の磁性体である円柱状のロータコア37を有し、ロータコア37の表面には永久磁石39が設けられている。ロータコア37の軸中心には棒状のロータシャフト41が設けられている。
【0026】
ステータ35は、磁性体である歯状のステータティース43と、ステータティース43の外側に設けられた円筒状の磁性体であるコアバック44と、コアバック44の外側に設けられた円筒状のフレーム46と、を含む。
【0027】
図2および図3に示すように、ステータティース43には、金属等の導電体であるコイル45が巻きつけられている。なお、実際のSPMモータ31ではコイル45は仕様に応じたターン数でステータティース43に巻きつけられて束となっているが、本実施の形態では、図2および図3に描かれているように、コイル一本一本をモデル化せず、コイルの束を1つの導体として扱う。
【0028】
このような構造のSPMモータ31は、永久磁石39の磁場、およびコイル45に電流を流すことにより発生する磁場によって、ロータ33、ステータ35が磁化する。磁性体の磁気エネルギの偏差によりSPMモータ31は駆動する。
【0029】
そのため、SPMモータ31の解析を行うためにはコイル45、永久磁石39がロータ33、ステータ35を構成する磁性体上に作る磁場ベクトルを計算し、これら磁性体の磁化現象を解析する必要がある。
【0030】
図4は、実施の形態に係る解析装置1における一連の処理を示すフローチャートである。以下の手順において、磁性体とは、ロータ33、ステータ35を構成する磁性体と永久磁石39を指し示し、磁化曲線を表す関数によってこれらは区別される。導体とは、例えばコイル45である。
【0031】
(ステップS202)
解析装置1は、SPMモータ31の形状に関する情報や材料の特徴(材料定数など)を含む初期条件を取得し、記憶装置5に入力情報として記憶する。この初期条件は例えばメディア入出力部6を介してCD−ROM等の記録媒体から読み込んだものであってもよい。さらに、あらかじめ上記初期条件が入力情報として記憶されている場合は、ステップS202は不要である。
【0032】
初期条件は、SPMモータ31の3次元構造(形状、座標点)、質量密度、磁性体の磁化曲線を表す関数、導体の電流密度ベクトル、を含む。SPMモータ31の3次元構造の情報とは例えばCAD等のデータである。電流密度ベクトルは、コイル45の作る磁場ベクトルを計算する際に必要になる。磁性体の磁化曲線を表す関数は磁化ベクトルを計算する際に必要になる。
【0033】
(ステップS204)
粒子モデル生成部60は、記憶装置5が記憶する初期条件からSPMモータ31の粒子モデルを生成する。粒子モデル生成部60は、まず、初期条件に含まれる3次元構造の情報から、SPMモータ31をN個の粒子に分割し(Nは2以上の整数)、各粒子の位置ベクトルを計算し,記憶装置5に記憶する。次に、粒子モデル生成部60は、磁性体を構成する各粒子内の仮想粒子の位置ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。N個の粒子は粒子系Sを構成する。粒子は、原子、分子単位であってもよいし、粒子の位置を重心とする多面体要素であってもよい。仮想粒子の詳細については後述する。
【0034】
粒子の数Nおよび位置ベクトルは初期条件に含まれる3次元構造およびあらかじめ記憶装置5に記憶されている多面体要素の形状により計算される。また、磁性体を構成する各粒子の重心と表面で構成された多面体要素を仮想粒子とする。以下ではSPMモータ31の磁性体に対応する粒子は、粒子の位置を重心とする立方体要素であるとし、仮想粒子は、粒子の重心と各表面で構成される五面体であるとする。つまり,ひとつの粒子は6つの仮想粒子を内包する。仮想粒子の位置の計算に関しては、ステップS102の解説において詳細を述べる。
【0035】
また、導体であるコイル45に対応する粒子は、以下のように決定する。
図5は、コイル45の説明図である。図5(a)は、コイル45の拡大斜視図であり、図5(b)は、コイル45をローカル導体に分割した例を示す図である。図6は、直方体導体とローカル座標との関係を示す図である。図7は、円弧状柱状導体とローカル座標との関係を示す図である。
【0036】
粒子モデル生成部60は、初期条件に含まれる3次元構造の情報から、図5(a)に示されるコイル45を図5(b)に示すようにローカル導体(直方体導体45a、45bと円弧状柱状導体45c、45d)に分割し、それぞれの導体が作る磁場ベクトルを計算するための係数を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0037】
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0038】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、粒子モデル生成部60は、図6に示すように、ローカル座標系(xs,ys,zs)を適用する。このローカル座標系においてはローカル導体(直方体導体45a)の重心を原点Osとし、直方体導体45aの寸法はxs方向に2a、ys方向に2b、zs方向に2cの長さを持つものとする。また原点Osに粒子は位置するものとする。
【0039】
粒子モデル生成部60は、初期条件に含まれるコイル45の3次元構造を読み込み、ローカル導体(直方体導体45a)の寸法であるa、b、cと粒子位置ベクトルとを計算し記憶装置5に記憶する。
【0040】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、粒子モデル生成部60は、図7に示すようにローカル座標系(xc,yc,zc)を適用する。このローカル座標系においては原点Ocは円弧の中心軸上に存在し、かつ円弧状柱状導体45cの高さ方向(図7のzc方向)に対して円弧状柱状導体45cが対称となる点に存在するものとする。
【0042】
また、xc,yc,zcは、xc−yc平面でみると、+xc軸を基点とし、円弧状柱状導体45cの円弧が+zc軸からみて反時計回りになるようして決定する。円弧状柱状導体45cの内径と外径の平均値をRcとし、径方向の厚さを2ra、zc方向の高さを2zbとする。
【0043】
電流は+xc軸を基点として、+zcから見て反時計回りの方向への角度をθとし、電流はこの方向に一様な電流密度jで流れているものとする。粒子は円筒座標系で(Rc、θ/2、0)に位置するものとする。
【0044】
粒子モデル生成部60は、初期条件に含まれるコイル45の3次元構造を読み込み、ローカル導体(円弧状柱状導体45c)の寸法であるra、zb、θ、Rcおよび粒子位置ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
なお、粒子モデル生成部60は磁性体、導体の別なく同じように粒子を設定してもよい。
【0045】
(ステップS206)
繰り込み部62は、特許文献2で説明されている繰り込み群分子動力学の手法を使用して粒子系Sを繰り込み処理し、繰り込まれた粒子系S’を生成する。以下では、第1の繰り込み因子をα、第2の繰り込み因子をγ=0、第3の繰り込み因子δ=2、空間の次元数d=3とする。特許文献2によると、粒子系Sのパラメータと繰り込まれた粒子系S’のパラメータとの間には、
【数1】
の関係が成り立つ。また、本発明者による独自の考察(後述)によると、
【数2】
の関係が成り立つ。以下の解説で述べる物理量は、すべて繰り込まれた粒子系S’における量とする。
【0046】
(ステップS208)
相互作用演算部64は、粒子間の相互作用による相互作用ポテンシャルエネルギφ’を演算する。相互作用ポテンシャルエネルギφ’の演算については特許文献2に詳しい。特に本実施の形態では、相互作用ポテンシャルエネルギφ’は弾性を考慮した形を有する。
【0047】
(ステップS210)
磁場演算部66は、磁性体を構成する粒子内の仮想粒子が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより、粒子位置ベクトル上の磁場を演算する。その際、磁場演算部66は、所定の定常的な状態に達するまで仮想粒子の運動方程式に基づく演算を反復的に行う。詳細は後述する。
【0048】
(ステップS212)
機構・弾性演算部68は、相互作用演算部64によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギφ’と磁場演算部66によって演算された粒子の位置ベクトル上の磁場に基づき各粒子の運動方程式を数値積分し、各粒子の位置、速度を更新する。次に更新された粒子の位置を基に仮想粒子の位置を更新する。なお、粒子の運動方程式は,磁場解演算における誤差に起因した復元力の項を有する。詳細は後述する。
【0049】
(ステップS214)
制御部3は、ユーザからの出力指示の有無を確認する。
(ステップS216)
制御部3は、ユーザからの出力指示がある場合(ステップS214のY)、繰り込まれた粒子系S’にステップS206に対応するリスケーリングを施す。
(ステップS218)
制御部3は、リスケーリングの結果得られる粒子の位置ベクトル、力ベクトル、磁化ベクトル、粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトル、磁束密度ベクトルなどを,プリンタポート11を介してプリンタ12より出力する。
【0050】
(ステップS220)
終了判定部72は、ユーザからの出力指示がない場合(ステップS214のN)、所定の終了条件(時間、移動量等)を満たしているかを判断する。終了判定部72は、終了条件が満たされている場合は(ステップS220のY)、解析を終了する。
制御部3は、終了条件が満たされていない場合は(ステップS220のN)、処理をステップS208に戻す。すなわち、制御部3は、更新された各粒子の位置、速度を使用して、再度相互作用ポテンシャルエネルギφ’や磁場を演算する。
【0051】
なお、制御パラメータ更新部70は、終了条件が満たされていない場合であって(ステップS220のN)ユーザからの求めがある場合は、繰り込まれた粒子系S’の外部から与えられる制御パラメータであって、各粒子に作用する磁場に影響を及ぼす制御パラメータ、例えば電流密度ベクトルを更新する。磁場演算部66は更新された電流密度ベクトルを使用して磁場を演算する。
【0052】
ステップS210およびステップS212について以下に詳述する。
図8は、図4のステップS210およびステップS212の詳細を示すフローチャートである。
【0053】
(ステップS102)
磁場演算部66は、コイルの寸法および電流密度ベクトルを用いて、ビオ・サバールの法則を積分することにより得られる解析解により、通電されたコイルが磁性体に対応する粒子内の仮想粒子位置ベクトル上に作る磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0054】
図9は、磁性体に対応する粒子と、仮想粒子の説明図である。粒子の形状は立方体としている。図9では、立方体要素を2次元表示した場合の形状の一例が示される。
ここで、粒子の位置ベクトル(立方体要素の重心)を(太字の)rg’とし、粒子(立方体要素)表面の中点をq’点とする。粒子位置と粒子表面で構成された五面体要素を仮想粒子とし,粒子位置とq’点との中間点p’点を仮想粒子の位置とする。太字のn’q’は中点q’が属する要素境界面の法線ベクトル、ΔS’q’は中点q’が属する仮想粒子の表面積である。
【0055】
図8に戻る。
まず、ローカル導体が直方体導体45aの場合について説明する。
なお、ローカル導体が直方体導体45bの場合は、ローカル導体が直方体導体45aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
ローカル導体が直方体導体45aの場合は、図6で定義されるローカル座標系(xs’,ys’,zs’)を適用する。
次に、任意の点であるP点の位置ベクトルをローカル座標系(xs’,ys’,zs)に変換する。
【0057】
通電された直方体導体がP点に作る磁場ベクトルは、以下に示す式(1)〜(3)で記載される。
【0058】
【数3】
【0059】
ここで、(太字の)rps’はローカル座標系(xs’,ys’,zs’)でのP点の位置ベクトルであり、xps’,yps’,zps’はxs’,ys’,zs’方向の値である。πは円周率である。Hx’s’、Hy’s’、Hz’s’はローカル座標系(xs’,ys’,zs’)における磁場ベクトルの各成分である。j’は電流密度である。
【0060】
また、xi’,yj’,zk’はxs’,ys’,zs’方向の積分の上限、下限を表しており、式(4)に示す関係が成立する。
【0061】
【数4】
【0062】
ここで、a’,b’,c’は直方体導体の寸法である。
【0063】
次に、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合について説明する。
なお、ローカル導体が円弧状柱状導体45dの場合は、ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
ローカル導体が円弧状柱状導体45cの場合は、図7で定義されるローカル座標系(xc’,yc’,zc’)を適用する。
ローカル座標系(xc’,yc’,zc’)に変換後のP点の位置ベクトルを以下の式(5)に示すように円筒座標系(太字の)rpc’=(Rpc’、φpc’、Zpc’)に変換する。
通電された円弧状柱状導体45cがP点に作る磁場ベクトルは、以下の式(6)〜(11)で表される。
【0065】
【数5】
【0066】
ここで、Hrc’、Htc’、Hzc’は円筒座標系での磁場ベクトルの各成分である。j’は電流密度である。ra’、θ’、zb’は円弧状柱状導体45cの寸法であり、Rc’は円弧の内径と外径の平均値である。sgnはZk’の符号であり、Rj’、Zk’は積分の上限、下限を表しており、式(12)に示す関係が成立する。
【0067】
【数6】
【0068】
以上が任意の点Pにコイル45が作る磁場ベクトルの計算手順である。
磁場演算部66は、繰り込まれた粒子系S’における、磁性体に対応するすべての仮想粒子の位置p’点の位置ベクトルを読み込む。
なお、ステップS212おいて粒子および仮想粒子の位置ベクトルが更新され記憶装置5に記憶されている場合は、磁場演算部66はその値を読み込む。
【0069】
次に、磁場演算部66は、図9のp’点の位置ベクトルをローカル座標系(xs’,ys’,zs’)に変換し、直方体導体45aの寸法と、電流密度ベクトルとを読み込み、式(1)〜(4)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
【0070】
次に、磁場演算部66は、式(1)〜(4)で計算された磁場ベクトルをグローバル座標系(x’,y’,z’)に変換し、変換後の磁場ベクトルを記憶装置5に記憶する。
これにより、通電された直方体導体45aが、p’点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0071】
さらに磁場演算部66は、p’点の位置ベクトルをローカル座標系(xc’,yc’,zc’)に変換し、さらに円筒座標系(太字の)rpc’=(Rpc’、φpc’、Zpc’)に変換する。
【0072】
次に磁場演算部66は、円弧状柱状導体45cの寸法ra’、θ’、zb’およびRc’を読み込み、また、磁場演算部66は電流密度ベクトルを読み込む。
【0073】
磁場演算部66は式(6)〜(12)に基づいて磁場ベクトルを計算する。
次に、磁場演算部66は、計算された磁場ベクトルを直交座標系に変換し、さらにグローバル座標系(x’,y’,z’)に変換し記憶装置5に記憶する。
これにより、通電された円弧状柱状導体45cがp’点に作る磁場ベクトルが求められる。
【0074】
(ステップS104)
磁場演算部66は、永久磁石39が磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の位置に作る磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0075】
(ステップS106)
磁場演算部66は、ステップS102で計算した磁場ベクトルとステップS104で計算した磁場ベクトルとの和を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0076】
(ステップS108)
磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子位置ベクトルと、粒子(立方体要素)の位置、形状により、磁性体に対応する仮想粒子の運動方程式の係数を計算し記憶装置5に記憶する。
【0077】
磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子および仮想粒子の位置ベクトルを読み込む。
なお、ステップS212おいて粒子および仮想粒子の位置ベクトルが更新され記憶装置5に記憶されている場合は、磁場演算部66はその値を読み込む。
【0078】
磁場演算部66は、粒子の位置ベクトルと粒子(立方体要素)の形状から、仮想粒子表面のq’点の位置ベクトルと仮想粒子表面の法線ベクトル(太字の)n’を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0079】
次に、磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子表面積ΔS’、および仮想粒子の体積ΔV’を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0080】
次に、磁場演算部66は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の運動方程式から拘束条件を考慮せずに時間刻み幅δt’後の仮想粒子の挙動(正準変数の値)を計算し、記憶装置5に記憶する。
【0081】
磁性体に対応する(N’−w)個の粒子のラグランジアンを式(13)〜式(15)で表される形とする。wは自然数であり、繰り込まれた粒子系S’においてコイル45に対応する粒子の数である。
【0082】
【数7】
【0083】
ここで、式(13)において、α’は仮想質量、太字のr’は位置ベクトル、太字のH’および太字の傍点付きH’は正準変数、太字のM’は磁化ベクトル、太字のHext’は外部からの印加磁場ベクトル、χ’は磁気感受率、μ0’は真空の透磁率、λ’はラグランジュの未定定数、πは円周率、s’は粒子内の仮想粒子数である。
【0084】
また、各物理量の添え字ip’は繰り込まれた粒子系におけるi番目の粒子内のp’番目の仮想粒子、添え字jq’は繰り込まれた粒子系におけるj番目の粒子内のq’番目の仮想粒子の物理量を示す。
【0085】
式(13)において、m’は粒子の質量、v’は速度、φ’(ri’−rj’)はi番目の粒子とj番目の粒子の相互作用ポテンシャルエネルギである。添え字i、jはそれぞれ、i、j番目の粒子の物理量を示す。
【0086】
次に、正準変数を(太字の)Hip’’、(太字の傍点付き)Hip’’とし、式(13)〜式(15)で示されるラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入すると、仮想粒子の運動方程式は式(16)のように記載できる。
【0087】
【数8】
【0088】
ここで、式(16)の右辺第3項は、ラグランジュの未定定数を通して拘束条件(磁化ベクトルの発散は0)を課している。
式(16)の右辺第4項は外部からの印加磁場ベクトルが変化したときにすばやく追従させるための減衰項であり、γ’は減衰定数である。
【0089】
式(16)の右辺第3項に示される拘束条件を含んだ運動方程式を解くにあたり、本実施形態では、一般化された拘束条件の導入法であるSHAKE法を採用する。
拘束条件を考慮せずに蛙跳び法により式(16)を離散化すると以下の式(17)、式(18)、(19)になる。
【0090】
【数9】
【0091】
ここで、δt’は磁化現象の収束計算を行う上で用いる時間刻み幅である。
添え字のnは任意の整数であり、nδt’における物理量、n−1/2は(n−1/2)δt’における物理量、n+1/2は(n+1/2)δt’における物理量、n+1は(n+1)δt’における物理量に対応している。
【0092】
磁場演算部66は、既に計算され記憶装置5に記憶されているp’点、q’点の位置ベクトルを読み込む。
【0093】
次に、磁場演算部66は、ステップS106で既に計算され記憶装置5に記憶されているコイル45および永久磁石39が、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子位置p’点に作る磁場ベクトルを外部からの印加磁場ベクトルとして読み込む。
さらに、磁場演算部66は、既に計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体に対応する仮想粒子の表面積、法線ベクトルおよび体積を読み込む。
また、磁場演算部66はあらかじめ記憶装置5に記憶されている減衰定数、仮想質量、時間刻み幅を読み込む。
【0094】
次に、磁場演算部66はあらかじめ記憶装置5に記憶されている仮想粒子の正準変数((太字の)Hip’’、(太字の傍点付き)Hip’’)の初期値を読み込む。
なお、磁場演算部66は後述するステップS110において仮想粒子の正準変数が更新されている場合は、その値を読み込む。
なお、磁化ベクトルは、初期条件に含まれる磁化曲線を表す関数と(太字の)Hip’’とを使用して計算される。
【0095】
磁場演算部66は、式(17)、式(18)、式(19)を、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子に対して計算し、計算された正準変数((太字の)Hip’’、(太字の傍点付き)Hip’’)の値を記憶装置5に記憶する。
【0096】
(ステップS110)
磁場演算部66は、ステップS108で計算し記憶装置5に記憶されている、(太字の)Hip’’に拘束条件を加え、計算された(太字の)Hip’’を、記憶装置5に記憶する。
【0097】
以下に示す式(20)、式(21)に従って仮想粒子に拘束条件を加える。
【0098】
【数10】
【0099】
磁場演算部66は、ステップS108で計算され記憶装置5に記憶されている磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の正準変数の値を読み込む。
磁場演算部66は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている仮想質量、時間刻み幅、減衰定数を読み込む。
磁場演算部66は、磁性体に対応する各粒子内の仮想粒子に対して式(20)、式(21)に基づく計算を行い、計算された(太字の)Hip’’を記憶装置5に記憶する。
【0100】
(ステップS112)
次に、磁場演算部66はステップS110で求めた(太字の)Hip’’が拘束条件を満たしているかを判断し、満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップS110に戻る。
【0101】
具体的には磁場演算部66は、ステップS110で計算し記憶装置5に記憶されている磁性体に対応する粒子内の仮想粒子各々の(太字の)Hip’’から計算される磁化ベクトルを用いて式(22)に基づく計算を行う。
【0102】
【数11】
【0103】
erri’は磁性体に対応する粒子の内、i番目の粒子の拘束条件に対する誤差値である。
【0104】
磁化ベクトル(太字の)M’は、ステップS110において計算され記憶装置5に記憶されている(太字の)Hip’’を磁場演算部66が読み込み、これと初期条件に含まれる磁化曲線を表す関数とを使用することで計算される。
【0105】
法線ベクトル(太字の)n’には、既に計算され記憶装置5に記憶されているものを磁場演算部66は読み込み代入する。
【0106】
磁場演算部66は、すべての粒子に対して、誤差の値が式(23)を満たさなければステップS110に戻る。
【0107】
【数12】
【0108】
式(23)においてA1’は誤差判別値であり、あらかじめ記憶装置5に任意の値が記憶されている。
【0109】
(ステップS114)
磁場演算部66は、仮想粒子の運動方程式に基づく反復的な演算を打ち切るか否かを判定するための所定の打ち切り条件が満たされるか否かを判定する。ここでは打ち切り条件として、磁性体の磁化現象が定常状態に到達したか否かという基準が使用される。
磁性体に対応する粒子内の仮想粒子が定常状態に到達したか否かは、以下の式(24)により判定される。
【0110】
【数13】
【0111】
A2’は仮想粒子が定常状態に到達したかを判断するための誤差判定値であり、任意に設定されうる。
【0112】
磁場演算部66は、あらかじめ記憶装置5に記憶されているA2’、μ0’を読み込む。
また、磁場演算部66は、ステップS110で計算され記憶装置5に記憶されている、(太字の)Hip’’を読み込む。
【0113】
次に、磁場演算部66は式(24)を計算し、式(24)を満たしていれば次のステップに進み、満たしていなければステップS108に戻る。
【0114】
なお、式(24)が満たされ次のステップに進む、すなわち磁場演算部66における反復計算が打ち切られたときの
【数14】
は、上記打ち切り条件のもとでの打ち切り誤差であり、大抵の場合ゼロでない有限値である。
ステップS210は、ステップS102,ステップS104、ステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、ステップS114、を含む。
【0115】
(ステップS116)
機構・弾性演算部68は、SPMモータ31に対応するすべての粒子の位置での磁場ベクトル、磁化ベクトル、磁束密度ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。すなわち、機構・弾性演算部68は、磁性体に対応するすべての粒子の位置での磁場ベクトル、磁化ベクトル、磁束密度ベクトルと、コイル45に対応するすべての粒子の位置での磁場ベクトル、磁束密度ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0116】
(磁性体に対応する粒子)
磁性体に対応する粒子の位置での磁場ベクトルは、仮想粒子より以下の式(25)で表される。
【0117】
【数15】
【0118】
ここで、(太字の)ex’’=(1,0,0)、(太字の)ey’’=(0,1,0)、(太字の)ez’’=(0,0,1)である。
磁性体に対応する粒子の磁化ベクトルは、粒子の位置ベクトル上の磁場ベクトルと磁化曲線を表す関数とを使用して求めることができる。
【0119】
磁性体に対応する粒子の位置での磁束密度ベクトルは、式(26)で表される。
【0120】
【数16】
【0121】
ここで、太字のB’は磁束密度ベクトルである。
【0122】
機構・弾性演算部68は、既に計算されている、磁性体に対応する粒子内の(太字の)Hip’’を記憶装置5から読み込む。
【0123】
次に、機構・弾性演算部68は、既に計算され記憶装置5に記憶されている法線ベクトルを読み込み、式(25)に基づいて磁性体に対応する粒子の位置での磁場ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0124】
さらに、機構・弾性演算部68は、このステップで計算された磁場ベクトルと初期条件に含まれる磁化曲線を表す関数とを使用して、磁性体に対応する粒子の磁化ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
【0125】
次に機構・弾性演算部68は、このステップで計算された磁場ベクトルと磁化ベクトルを式(26)に代入し、磁性体に対応する粒子の位置での磁束密度ベクトルを計算し記憶装置5に記憶する。
なお、真空の透磁率はあらかじめ記憶装置5に記憶されているものを制御部3が読み込む。
【0126】
(コイルに対応する粒子)
コイル45に対応する粒子の位置での磁場ベクトルは式(27)、式(28)で記載される。
【0127】
【数17】
【0128】
式(27)の右辺第一項は、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子がコイル45に対応する粒子の位置に作る磁場ベクトルを記述する項であり、式(28)で表される。
式(27)の右辺第二項は、コイル45に対応する粒子がコイル45に対応する粒子の位置に作る磁場ベクトルであり式(1)〜(12)で表される。
【0129】
機構・弾性演算部68は、繰り込まれた粒子系S’におけるコイル45に対応する粒子の位置ベクトルを記憶装置5より読み込む。
なお、ステップS120においてコイル45に対応する粒子の位置ベクトルが更新されている場合は、機構・弾性演算部68はその値を読み込む。
【0130】
機構・弾性演算部68は計算され記憶装置5に記憶されている磁性体に対応する粒子の数と仮想粒子数、および仮想粒子表面のq’点の位置ベクトルと表面積を読み込む。
また、機構・弾性演算部68はこのステップまでに計算され記憶装置5に記憶されている、磁性体に対応する粒子内の仮想粒子の磁化ベクトルを読み込む。
さらに、機構・弾性演算部68はコイル45の寸法および電流密度ベクトルを読み込む。
【0131】
その後、機構・弾性演算部68は式(27)、式(28)および式(1)〜(12)に従い、コイル45に対応する粒子の位置での磁場ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。
【0132】
機構・弾性演算部68は、コイル45に対応する粒子の位置での磁束密度ベクトル(太字の)Bi’を、すでに計算されているコイル45に対応する粒子の位置での磁場ベクトルに真空の透磁率を掛けて計算し記憶装置5に記憶する。なお、真空の透磁率は、あらかじめ記憶装置5に記憶されている。
【0133】
このように、制御部3は、仮想粒子の運動方程式を解くことにより磁性体の磁化現象を解析する。そのため、有限要素法のように空間全域をメッシュ分割する必要がなく、磁性体を有する系に対して十分な精度で効率よく磁場解析を行うことができる。
また、運動方程式を解くため、行列を扱わず、計算に必要なメモリ量は粒子数に比例する。
【0134】
(ステップS118)
機構・弾性演算部68はSPMモータ31に対応する全ての粒子に働く力ベクトルを計算し、記憶装置5に記憶する。機構・弾性演算部68は、相互作用演算部64によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギφ’から導かれる粒子に働く弾性力と、磁場演算部66によって演算された磁場から導かれる当該粒子に働く磁気力と、磁場演算部66における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく復元力と、を足し合わせて当該粒子に働く合計の力とする。
【0135】
(磁性体に対応する粒子)
正準変数を太字のri’、太字の傍点付きri’とし、式(13)のラグランジアンをラグランジュの運動方程式に代入する。すると、磁性体に対応する粒子の運動方程式は式(29)のように記載できる。
【0136】
【数18】
【0137】
式(29)の右辺第1項は、相互作用演算部64によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギφ’から導かれる粒子に働く力である。特に相互作用ポテンシャルエネルギφ’が弾性を考慮して決定されている場合、この力は弾性力に相当する。式(29)の右辺第2項は、磁場演算部66によって演算された磁場から導かれる粒子に働く磁気力である。式(29)の右辺第3項は、磁場演算部66における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく復元力である。仮に打ち切り誤差がゼロになった場合、右辺第3項において
【数19】
となるので復元力はゼロとなる。
式(29)は、磁性体に対応する粒子には弾性力と磁気力と復元力とを足し合わせた力が働くことを示す。
【0138】
(コイルに対応する粒子)
コイル45に対応する粒子のうち、i番目の粒子の位置ベクトルを太字のri’、その位置ベクトルでの電流の単位ベクトルを太字のti’、磁束密度ベクトルを太字のBi’、電流の流れる方向のコイルの長さをLi’とすると、コイル45に対応する粒子の内、i番目の粒子に働く力ベクトルは以下の式(30)で記載される。
【0139】
【数20】
【0140】
(ステップS120)
機構・弾性演算部68は、粒子の運動方程式を数値的に解くことにより、各粒子の位置ベクトル、速度ベクトルを更新する。
ステップS212は、ステップS116、ステップS118、ステップS120、を含む。
【0141】
本実施の形態に係る解析装置1によると、仮想粒子の運動方程式による磁場解析において生じた誤差を粒子の運動方程式に復元力として含ませている。これは具体的には、式(13)のラグランジアンの右辺第1項の外側[]の中の第2項に起因する。これにより、磁場解析において生じた誤差による系全体のエネルギへの影響を、復元力の形で機構・弾性解析側で補償できる。その結果、磁場・機構・弾性の連成解析において系全体のエネルギ保存をより強固なものにすることができる。
【0142】
図10は、復元力を導入する場合としない場合とでの系全体のエネルギの推移を示す説明図である。図10の横軸は図4のステップS208、S210、S212を合わせて1ステップと見た場合のステップ数を示し、このステップ数が増大するにつれてシミュレーションも進んでいく。図10の縦軸は解析対象の系全体のエネルギを示す。
【0143】
図10の一点鎖線90は、復元力を導入しない場合の系全体のエネルギの推移を示す。この場合、磁場解析において生じた誤差を単純に切り捨ててしまう結果、ステップ数が増大するにつれて系全体のエネルギは真の値E0から離れてゆく。
【0144】
図10の実線96は、復元力を導入する本実施の形態の場合の系全体のエネルギの推移を示す。この場合、系全体のエネルギはステップ数が増大しても真の値E0の周りに存在する。
【0145】
また、本実施の形態に係る解析装置1では、磁場演算部66は定常的な状態に達するまで仮想粒子の運動方程式に基づく演算を反復的に行い、機構・弾性演算部68は磁場演算部66における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく復元力を使用して粒子の運動を演算する。したがって、反復的に仮想粒子の運動方程式に基づく演算を行うことによって磁場解析がなされている場合に、その打ち切り誤差による系全体のエネルギのドリフトを抑止することができる。
【0146】
また、本実施の形態に係る解析装置1によると、相互作用演算部64における弾性解析、磁場演算部66における磁場解析、機構・弾性演算部68における機構解析、制御パラメータ更新部70における制御解析、が連成されている。したがって、解析対象の物体に対する高精度かつエネルギ保存が強化されたシミュレーションが可能となる。
【0147】
以上、実施の形態に係る解析装置1の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0148】
上記では、磁性体に対応する粒子のラグランジアンから導出される仮想粒子の運動方程式を解くことで磁性体の磁化現象を計算した場合について説明したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、方程式であればラグランジアンから導出されたもの以外のものであってもよい。
【0149】
また、上記では本実施の形態をSPMモータ31の解析に使用したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、磁性体が配置された空間における任意の点の磁場を解析するものであれば、例えばリニアモータ等のSPMモータ31以外のモータ、あるいは磁性体で空間を囲む磁気シールドにおいて、磁性体でシールドされた空間内の解析に用いても良い。
【0150】
以下、粒子系Sのパラメータと繰り込まれた粒子系S’のパラメータとの間の関係について、本発明者が独自に行った考察を説明する。
第1の繰り込み因子をα、第2の繰り込み因子をγ、第3の繰り込み因子をδ、空間の次元数をdとした場合、特許文献2によると、
【数21】
となる。
【0151】
(磁場の繰り込み)
N個の原子上にスピン(核磁気モーメント)μi(i=1、2、…、N)があるバルクを考える。バルク内部の核スピンμiが遠方に作る磁気誘導は、
【数22】
と表される。これを粗視化すると、
【数23】
となる。
【0152】
以下に示されるように磁気モーメントを繰り込む。
【数24】
繰り込まれた磁束密度は、
【数25】
と表される。
【0153】
磁束密度と同様に磁場を繰り込むと、
【数26】
であり、繰り込まれた磁化は、
【数27】
である。粗視化された磁気モーメントm=Σμiに働く力は、
【数28】
であり、以下に示されるようにスケールされる。
【数29】
【0154】
粗視化された電荷の流れjが作る磁束密度は、
【数30】
である。粗視化された磁気モーメントmiと電流密度jの作る磁束密度との相互作用は、
【数31】
であるから、電流密度は以下に示されるようにスケールされる。
【数32】
【0155】
以上を纏めると、
【数33】
となる。
【符号の説明】
【0156】
1 解析装置、 3 制御部、 5 記憶装置、 6 メディア入出力部、 7 入力部、 9 表示部、 11 プリンタポート、 12 プリンタ、 13 バス、 60 粒子モデル生成部、 62 繰り込み部、 64 相互作用演算部、 66 磁場演算部、 68 機構・弾性演算部、 70 制御パラメータ更新部、 72 終了判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する解析装置であって、
磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算する磁場演算部と、
前記磁場演算部において生じた数値誤差に起因する力を含んだ粒子の運動方程式を数値的に解くことにより、各粒子の位置、速度を更新する機構・弾性演算部と、を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記機構・弾性演算部は、前記磁場演算部における反復的な演算の打ち切り誤差を含めて各粒子の運動を演算することを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
粒子間の相互作用による相互作用ポテンシャルエネルギを演算する相互作用演算部をさらに備え、
前記機構・弾性演算部は、前記相互作用演算部によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギから導かれる粒子に働く第1の力と、前記磁場演算部によって演算された磁場から導かれる当該粒子に働く第2の力と、前記磁場演算部における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく第3の力と、を足し合わせて当該粒子に働く合計の力とすることを特徴とする請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する解析方法であって、
磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算するステップと、
演算された磁場と磁場の演算で生じた誤差とに基づき各粒子の運動を演算し、各粒子の位置、速度を更新するステップと、を含むことを特徴とする解析方法。
【請求項5】
解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムであって、
磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算する機能と、
演算された磁場と磁場の演算で生じた誤差とに基づき各粒子の運動を演算し、各粒子の位置、速度を更新する機能と、を前記コンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する解析装置であって、
磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算する磁場演算部と、
前記磁場演算部において生じた数値誤差に起因する力を含んだ粒子の運動方程式を数値的に解くことにより、各粒子の位置、速度を更新する機構・弾性演算部と、を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記機構・弾性演算部は、前記磁場演算部における反復的な演算の打ち切り誤差を含めて各粒子の運動を演算することを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
粒子間の相互作用による相互作用ポテンシャルエネルギを演算する相互作用演算部をさらに備え、
前記機構・弾性演算部は、前記相互作用演算部によって演算された相互作用ポテンシャルエネルギから導かれる粒子に働く第1の力と、前記磁場演算部によって演算された磁場から導かれる当該粒子に働く第2の力と、前記磁場演算部における反復的な演算の打ち切り誤差に基づく第3の力と、を足し合わせて当該粒子に働く合計の力とすることを特徴とする請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する解析方法であって、
磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算するステップと、
演算された磁場と磁場の演算で生じた誤差とに基づき各粒子の運動を演算し、各粒子の位置、速度を更新するステップと、を含むことを特徴とする解析方法。
【請求項5】
解析対象の物体を複数の粒子からなる粒子系として記述した上で当該物体の振る舞いを解析する機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムであって、
磁場が満たすべき関係を運動方程式の形式で記述した仮想粒子の運動方程式を数値的に解くことにより磁場を演算する機能と、
演算された磁場と磁場の演算で生じた誤差とに基づき各粒子の運動を演算し、各粒子の位置、速度を更新する機能と、を前記コンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【公開番号】特開2012−128492(P2012−128492A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276964(P2010−276964)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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