触媒コンバーター用保持材及びその製造方法、並びに触媒コンバーター
【課題】断面が楕円やトラック形のような扁平の触媒担体に対し、従来と変わらないシール性と保持力を発揮することができ、さらに、スタッフィング方式を採用することができる触媒コンバーター用保持材を提供する。
【解決手段】断面が楕円の触媒担体用であって、触媒担体の、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分が、他の領域と接する第2部分よりも坪量が大きい触媒コンバーター用保持材。また、断面がトラック形の触媒担体用であって、触媒担体の平坦部と接する第1部分が、湾曲部と接する第2部分よりも坪量が大きい触媒コンバーター用保持材。
【解決手段】断面が楕円の触媒担体用であって、触媒担体の、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分が、他の領域と接する第2部分よりも坪量が大きい触媒コンバーター用保持材。また、断面がトラック形の触媒担体用であって、触媒担体の平坦部と接する第1部分が、湾曲部と接する第2部分よりも坪量が大きい触媒コンバーター用保持材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートや一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等を除去する触媒コンバーターに用いられる触媒担体を金属製ケーシング内に保持するための触媒コンバーター用保持材及びその製造方法に関する。また、触媒コンバーター用保持材を装着した触媒担体をケーシングに組み込んでなる触媒コンバーターに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒コンバーター用保持材(以下、「保持材」ともいう)は、無機繊維と有機バインダーとを含有する水性スラリーを所定形状の脱水成形型を用いて湿式成形し、熱プレスして得られる。そして、触媒担体に装着した状態で金属製のケーシングに組み込まれ(以下、「キャニング」ともいう)、キャニング後に加えられた熱により、保持材に含まれる有機バインダーが焼失し、有機バインダーにより圧縮状態で拘束されていた無機繊維が厚み方向に膨張することにより、触媒担体とケーシングとの隙間をシールするとともに、触媒担体を保持する。
【0003】
一方で、自動車の低床化が進み、自動車の床下に組み込まれる触媒担体の断面形状を真円から扁平、即ち楕円やトラック形にすることにより、触媒コンバーターの設置に必要なスペースを少なくすることが検討されている。しかし、触媒担体中での熱の伝わり方が不均一になったり、ケーシングの製造工程における残存応力がケーシングの部分により違うこともあるため、キャニングした後、ケーシングに部分的な熱膨張差が生じて拡張度合が不均一になる。その結果、触媒担体とケーシングとのギャップ差が不均一になり、より大きく拡張した箇所において保持材のシール性や保持力が損なわれる。
【0004】
この扁平の触媒担体用として、触媒担体の短径方向の外周面に接する部分を、長径方向の外周に接触する部分よりも肉厚にした保持材が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】実開昭59−39719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される保持材は、厚さが不均一なため、2分割構造のケーシングを用い、保持材を装着した触媒担体を挟み込むクラムシェルと呼ばれる方式には対応できるものの、一体型のケーシングに触媒担体に保持材を装着した状態でケーシングに圧入するスタッフィングと呼ばれる方式には応用できない。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、断面形状が楕円やトラック形のような扁平の触媒担体に対し、従来と変わらないシール性と保持力を発揮することができ、さらに、スタッフィング方式を採用することができる触媒コンバーター用保持材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は下記に示す触媒コンバーター用保持材及びその製造方法を提供する。
(1)断面が楕円形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分が、他の領域と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(2)断面がトラック形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の平坦部と接する第1部分が、湾曲部と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(3)第1部分が、第2部分の一部に延出していることを特徴とする上記(2)記載の触媒コンバーター用保持材。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材において、厚さが一定であることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(5)触媒担体に上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材を装着し、金属ケーシングに組み込んでなる触媒コンバーターであって、前記触媒コンバーターの第1部分の密度が0.15〜0.7g/cm3であることを特徴とする触媒コンバーター。
(6)無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分に凹部が形成された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
(7)無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分の開口率が第2部分に相当する部分の開口率よりも大きくなるように区画された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
(8)無機繊維の含有量が多い第1の水性スラリーと、無機繊維の含有量の少ない第2の水性スラリーとを調製する工程と、第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、第1部分に相当する部分に第1の水性スラリーを流し込み、第2部分に相当する部分に第2の水性スラリーを流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
(9)第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、無機繊維を含有する水性スラリーを第1部分に相当する部分に第2部分に相当する部分よりも多量に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保持材は、断面形状が楕円形やトラック形といった扁平形状の触媒担体用であり、楕円形の触媒担体においては、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分を、他の領域と接する第2部分よりも、高い坪量としたため、また、トラック形の触媒担体においては、平坦部に接する第1部分を、他の領域と接する第2部分よりも高い坪量としたため、ケーシングに部分的な熱膨張差が生じて触媒担体とケーシングとのギャップ差が不均一になったとしても、膨張した無機繊維の量が第1部分で多くなり、ケーシングとの隙間が触媒担体全周にわたり無くなり、保持力も一様になる。また、厚さが一定であるため、一体型のケーシングへのキャニングも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る保持材は、断面形状が楕円の触媒担体用である。図1に断面図で示すように、保持材1は、触媒担体10の短径Hと楕円との交点Cを中心に、長径Lの40〜95%、好ましくは50〜90%、より好ましくは70〜90%に相当する領域(図中DD間)と接する第1部分20の坪量が、他の領域(以下「第2部分」ともいう)30の坪量よりも大きくなるように設定されている。
【0012】
ここで、坪量とは単位面積あたりの繊維質量のことをいう。本発明の保持材においては、発明の効果を発揮できれば、その範囲は特に制限はなく、900〜4500g/m2であればよい。より具体的には、その範囲は触媒担体とケーシングとの隙間(以下、単に「ギャップ」ともいう)の大きさにより異なり、例えば、キャップが2〜6mmの場合には900〜1800g/m2、6〜10mmの場合には1800〜3600g/m2、8〜12mmの場合には2250〜4500g/m2であればよい。
【0013】
第1部分20と第2部分30との坪量の比は、本発明の効果を得られるのであれば特に制限はないが、第1部分20の坪量が第2部分30の坪量に対し1.05〜2.0倍であればよく、1.1〜1.8倍であることが好ましく、1.1〜1.6倍であればより好ましい。ケーシング40は、触媒担体10と相似形であり、断面が楕円状を呈する。触媒担体10とのギャップ差のばらつきは、ケーシング40の寸法精度、残留応力、加熱温度などに左右されるが、一般的には1.5倍以下である。そのため、第1部分20の坪量を第2部分の坪量の1.05〜2.0倍にすることにより、このようなギャップ差があっても触媒担体10の全周にわたり一様にシールすることができるようになる。
【0014】
保持材1は、保持力や断熱性能、シール性能等を考慮すると、厚さが一定であることが好ましい。具体的には、厚さは5〜30mmであればよく、6〜12mmであることが好ましく、厚さの変動が±15%以下であることが好ましく、より好ましくは±10%以下、さらに好ましくは±5%以下である。
【0015】
ケーシング40は、図示の例では上下2分割されているが、一体型のケーシングを用いてスタッフィング方式で保持材1をキャニングすることもでき、保持材1の厚さを一定にすることによりキャニングの生産性を向上させることが期待できる。
【0016】
また、保持材1の第1部分20は、触媒担体10とケーシング40との間隙に介装したときに、その密度が0.15〜0.7g/cm3であることが好ましく、0.2〜0.6g/cm3であることがより好ましく、0.25〜0.5g/cm3であることが特に好ましい。このような密度にすることにより、触媒担体10を良好に保持できる。
【0017】
更に、保持材1の第2部分30の外周面、即ちケーシング側の面の一部または全部に、摩擦係数0.1〜0.3の低摩擦シート50が積層されてもよい。低摩擦シート50を積層することにより、一体型のケーシングに圧入する際に、第2部分30での摩擦抵抗を下げることにより、保持材1をスムーズに挿入することができる。また、触媒担体10に保持材1を装着したときに、曲率半径の小さい第2部分30において、保持材1の外側(ケーシング側)が引っ張られて保持材1の外表面に割れやしわが発生する不具合を回避することができる。こうした保持材1の外表面の割れやしわは、キャニングするときの妨げになるため好ましくない。また、低摩擦シート50は、第1部分20の外周面の一部にまで延出してもよく、更には保持材1の全外面に積層されていてもよい。
【0018】
尚、触媒担体10は、図2(a)に示すように、楕円の長径側の両端を長径Lと直交するように切断した断面形状であってもよい。更には、図示は省略するが、円を、直交する2つの直径側から押しつぶしたような扁平断面形状、あるいは楕円の曲率が各部で異なる断面形状であってもよい。本発明では、これらも断面が楕円形の触媒担体に包含する。そして、これらの場合も、保持材1の第1部分20及び第2部分30は、短径Hと長径Lとの関係から同様の範囲に形成される。尚、図2(b)は図2(a)に示した触媒担体用の保持材1であるが、長径L´の長さが元の楕円の長径Lの95%以下であれば、点線で示すように触媒担体10の円弧全長(EE間)を覆うように第1部分20が形成される。
【0019】
(第2の実施形態)
本実施形態は、図3に示すように、断面形状がトラック形の触媒担体10Aに適用される。即ち、保持材1Aは、触媒担体10Aの平坦部10aと接する第1部分20Aの坪量を、触媒担体10Aの湾曲部10bと接する第2部分30Aよりも大きくなるように設定されている。また、図中矢印で示すように、第1部分20Aは第2部分30Aの一部、好ましくは湾曲部10bの5〜35%を占めるように延出していてもよい。これにより、平坦部10aと接する部分にのみ第1部分20Aを形成するよりも保持能力が向上する。
【0020】
また、保持材1Aの厚さは第1の実施形態と同様の範囲であり、一定であることが好ましく、更に第1部分20Aと第2部分30Aとの坪量の比は第1の実施形態と同様であり、第2部分30Aに低摩擦シートを積層してもよい。尚、低摩擦シートは、第1の実施形態と同様に、第1部分20Aの外周面の一部にまで延出してもよく、更には保持材1Aの全外面に積層されていてもよい。
【0021】
この断面トラック形の触媒担体10Aは、保持材1Aを巻装した状態で触媒担体10Aと相似形のケーシング40Aに装着される。尚、ケーシング40Aは一体型である。
【0022】
上記の各実施形態において、保持材1、1Aの構成材料には制限がなく、無機繊維や有機バインダーを含んでいればよい。また、必要に応じて、従来から使用されている、充填材や無機バインダー等を含んでいてもよい、これらの種類には制限はないが、以下に好ましい例を示す。
【0023】
無機繊維としては、従来から保持材に用いられている種々の無機繊維を用いることができる。例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、あるいはその他のセラミック繊維等を適宜使用できる。より具体的には、アルミナ繊維としては、例えばAl2O3が90重量%以上(残りはSiO2分)であって、かつX線結晶学に基いて低結晶化度を有することが好ましく、結晶化度は30%以下であればよく、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、その平均繊維径が3〜8μm、ウエットボリューム400cc/5g以上が好ましい。ムライト繊維としては、例えばAl2O3分/SiO2分重量比が70/30〜80/20程度のムライト組成であって、かつX線結晶学に基いて低結晶化度を有することが好ましく、結晶化度は30%以下であればよく、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、その平均繊維径が3〜8μm、ウエットボリューム400cc/5g以上が好ましい。その他のセラミック繊維としては、シリカアルミナ繊維やシリカ繊維を挙げることができるが、何れも従来から保持材に使用されているもので構わない。また、ガラス繊維やロックウール、生体溶解性繊維を配合してもよい。
【0024】
尚、上記ウエットボリュームは、次の方法で算出される。
1)乾燥した繊維材料5gを少数点2桁以上の精度を有する秤で計量する。
2)計量した繊維材料を500gのガラスビーカーに入れる。
3)2)のガラスビーカーに温度20〜25℃の蒸留水を400cc程度入れ、攪拌機を用いて繊維材料を切断しないように慎重に攪拌し、分散させる。この分散は超音波洗浄機を使用してもよい。
4)3)のガラスビーカーの中味を1000mlのメスシリンダーに移し、目盛で1000ccまで蒸留水を加える。
5)4)のメスシリンダーの口を手等で塞ぎ、水が漏れないように注意しながら上下逆さまにして攪拌する。これを計10回繰り返す。
6)攪拌停止後、室温下で静置し、30分経過後の繊維沈降体積を目視で計測する。
7)上記操作を3サンプルについて行い、その平均値を測定値とする。
【0025】
有機バインダーも公知のもので構わず、ゴム類、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を使用できる。具体的には、ゴム類の例としては、n−ブチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンゴム等がある。水溶性有機高分子化合物の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等がある。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の単独重合体及び共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等がある。熱硬化性樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等がある。なお、これらの有機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。有機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部であればよい。有機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、10質量部を越えると相対的に無機繊維の量が減ってしまい、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られなくなることが懸念される。有機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜4質量部である。
【0026】
また、有機バインダーとしてパルプ等の有機繊維を少量配合することも可能である。有機繊維は細く長いものほどバインド力が高く、高度にフィブリル化したセルロースやセルロースナノファイバー等が好ましい。具体的には、繊維径が0.01〜50μm、繊維長が1〜5000μmであることが好ましく、繊維径が0.02〜1μm、繊維長が10〜1000μmであることがより好ましい。
【0027】
こうしたフィブリル化した繊維の使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜5質量部である。フィブリル化した繊維が0.1質量部未満では結束力が不足し、5質量部を越える場合は相対的に無機繊維の量が減り、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られない。フィブリル化した繊維の好ましい量は0.1〜2.5質量部、さらに好ましい量は0.1〜1質量部である。
【0028】
また、こうしたフィブリル化した繊維と無機バインダーを併用してもよい。フィブリル化した繊維と無機バインダーの併用によれば、使用時おける有機成分の揮発が起因する上述した不具合を回避するために、フィブリル化した繊維の使用量を少なくした場合であっても、無機繊維を良好に結束でき、従来と同等の厚さを維持できる触媒コンバーター用保持材を提供することができる。こういった無機バインダーは公知のもので構わず、ガラスフリット、コロイダルシリカ、アルミナゾル、珪酸ソーダ、チタニアゾル、珪酸リチウム、モンモリロナイトといった粘土鉱物、水ガラスなどが挙げられる。なお、これらの無機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。無機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部である。無機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、5質量部を越える場合は相対的に無機繊維の量が減り、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られない。無機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜4質量部である。
【0029】
尚、含有する有機分は、保持材全量に対して0.3〜4.0質量%であることが好ましく、0.5〜3.0質量%であることがより好ましく、1.0〜2.5質量%であることが特に好ましい。有機分が少なくなるほど、キャニング後に熱が加えられた際に揮発ガスが少なくなるので好ましい。ここで、有機分は700℃で30分加熱した後の強熱減量率で代用できる。
【0030】
上記の保持材1、1Aは、その形態には特に制限はなく、一枚のマット状(マット型保持材)であってもよく、断面形状が楕円状またはトラック形の筒型(筒型保持材)であってもよい。図4にマット型保持材1(1A)を示すが、両端同士を接合することにより図1及び図3における上方の第1部分20(20A)となるため、中央の第1部分20(20A)の半分の幅となる。また、マット型保持材1(1A)は、一方の端部の第1部分20(20A)に凹部が形成され、この場合、他方の端部の第1部分20(20A)に凸部が形成され、凹部と凸部とが係合するように接合される。尚、第2部分30(30A)で接合する構成にすることもでき、凹部及び凸部を第2部分30(30A)に形成する。また、図5には、図1に示す断面楕円状の筒型保持材を示す。尚、マット型保持材は、触媒担体10、10Aに巻きつける作業が必要であるため、手間やコストを考慮すると筒型保持材のほうが有利である。
【0031】
以下に、上記の保持材の製造方法について説明する。
【0032】
(第1の製造方法)
先ず、図6に示すように、中央に保持材1,1Aの第1部分20、20Aに相当する幅で窪んで(段差G)第1の凹部200Aが形成され、その両側に第2部分に相当する幅で凸部300,300が形成され、更に両端に第1の凹部200Aと同じ深さの第2の凹部200Bが形成された脱水成形型100を用い、図面上方から保持材構成材料を含有する水性スラリーを流し込み、脱水成形により脱水成形型100の全面に保持材構成材料を所定厚さで付着させる。尚、第2の凹部200B、200Bの幅は、第1の凹部200Aの幅の半分である。尚、脱水成形型100は凸部300及び凹部200A、200Bを取り囲む枠体を備えるが、ここでは枠体を省略して示す。以降の製造方法も同様である。
【0033】
脱水成形型100は、水性スラリー中の水分を透過し、無機繊維等の保持材の構成材料を型面上に残すことができればよく、例えば金網や、微細な穴を多数形成した平板等を使用することができる。ここでは、金網を例示して説明する。
【0034】
次いで、脱水成形型100を取り除くと、図7(A)に示すように、脱水成形型100の凹部200A,200B、即ち保持材1,1Aの第1部分に相当する部分が段差G分だけ厚い湿潤成形体400が得られる。
【0035】
そして、この湿潤成形体400を図中の上方から押圧して同一厚さとし、例えば100〜180℃で乾燥することにより、図7(B)に示すように、第1部分20(20A)の坪量が第2部分30(30A)の坪量よりも大きい保持材1(1A)が得られる。この保持材1(1A)は、平坦なマット状であり、両端の第1部分20(20A)の端面同士を当接させるように触媒担体に巻き付ければよい。
【0036】
上記の第1の製造方法では、段差Gの大きさを適宜変更することにより、第1部分と第2部分との坪量の差を制御することができる。すなわち、段差Gの大きさを小さくすることだけで、例えば、坪量の差が1.1倍といった微妙な制御を確実に行うことができる。できる。
【0037】
また、図示される脱水成形金型100は一枚のマット型保持材に対応したものであるが、凹部200Aと凸部300とが交互に連続して形成された長尺の脱水成形型を用い、同様にして水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行って長尺のマット状保持材を作製した後、第2の凹部200Bの端部に相当する部分で切断することにより、一度に多数枚のマット型保持材を製造することができる。
【0038】
更には、図6に示す脱水成形金型100の第2の凹部200Bの端部同士を連結して楕円状もしくはトラック状にすることにより、円筒型保持材を製造することもできる。即ち、図8に示すように、脱水成形金型100の第2の凹部200Bの端部同士を連結してなる筒型脱水成形型100Aを、スラリー溜め101に貯留された水性スラリー105に浸漬し、筒型脱水成形型100Aの内側から吸引ポンプ106で吸引する。これにより、図9に示すように、筒型脱水成形型100Aの表面に無機繊維102が付着して筒型湿潤成形体401が得られる。この筒型湿潤成形体401は、図7(A)に示す湿潤成形体400の両端を連結したものとなる。そして、この筒型湿潤成形体401を筒型の押圧部材で押圧し、乾燥することにより図5に示したような筒型保持材が得られる。
【0039】
(第2の製造方法)
図10に示すように、中央に保持材1,1Aの第1部分20、20Aに相当する幅で所定の開口率(目開き)の第1の領域210Aが形成され、その両側に第2部分に相当する幅で第1の領域210Aよりも開口率の小さい第2の領域310,310が形成され、更に両端に第1の領域210Aと同じ開口率の第3の領域210Bが形成された脱水成形型110を用い、図面上方から保持材構成材料を含有する水性スラリーを流し込み、脱水成形により脱水成形型110の全面に保持材構成材料を所定厚さで付着させる。尚、第3の領域210B、210Bの幅は、第1の領域210Aの幅の半分である。また、第1の領域210A及び第2の領域210Bの各開口率は、保持材1,1Aの第1部分20,20A及び第2部分30、30Aの坪量の比に応じて設定される。
【0040】
ここで、開口率が大きい第1の領域210A及び第3の領域210Bでは水が多く吸引され、それに伴って無機繊維が吸い寄せられるため、第1の領域210A及び第3の領域210Bでは繊維付着量が多くなり、図11(A)に示すように、得られる湿潤成形体410においてもこの部分が厚くなる。この厚い部分が、保持材1,1Aの第1部分に相当する。
【0041】
そして、この湿潤成形体410を押圧して同一厚さとし、乾燥することにより、図11(B)に示すように、第1部分20(20A)の坪量が第2部分30(30A)の坪量よりも大きい保持材1(1A)が得られる。この保持材1(1A)は、平坦なマット状であり、両端の第1部分20(20A)の端面同士を当接させるように触媒担体に巻き付ければよい。
【0042】
上記の第2の製造方法では、開口率を適宜変更することにより、第1部分と第2部分との坪量の差を制御することができる。すなわち、第2の領域の開口率を第1の領域及び第3の領域の開口率をわずかに小さくすることだけで、例えば、坪量の差が1.1倍といった微妙な制御を確実に行うことができる。
【0043】
また、図示される脱水成形金型110は一枚のマット型保持材に対応したものであるが、第1の領域210Aと第2の領域210Bとが交互に連続して形成された長尺の脱水成形型を用い、同様にして水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行って長尺のマット状保持材を作製した後、第2の領域210Bの端部に相当する部分で切断することにより、一度に多数枚のマット型保持材を製造することができる。
【0044】
更に、断面形状が楕円状またはトラック状の筒型の保持材とするには、図10に示した平坦な脱水成形型110の第3の領域210B、210B同士を連結し、楕円状またはトラック状に成形した筒状の脱水成形型を用いて水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行えばよい。
【0045】
(第3の製造方法)
図12に示すように、仕切板150により、中央に保持材1,1Aの第1部分20、20Aに相当する幅で第1の領域220A、その両側に第2部分に相当する幅で第2の領域320,320、両端に第3の領域220Bに区画した脱水成形型120を用い、第1の領域220A及び第3の領域220Bには、保持材構成材料を高濃度で含有する第1の水性スラリーAを流し込み、第2の領域320には第1の水性スラリーAよりも低濃度の水性スラリーBを流し込み、脱水成形により脱水成形型120の全面に保持材構成材料を所定厚さで付着させる。尚、第3の領域220B、220Bの幅は、第1の領域220Aの幅の半分である。また、水性スラリーA及び水性スラリーBの各濃度は、保持材1,1Aの第1部分20,20A及び第2部分30、30Aの坪量の比に応じて設定される。
【0046】
次いで、脱水成形型120を取り除くと、図13(A)に示すように、脱水成形型120の第1の領域220A及び第3の領域220B、即ち保持材1,1Aの第1部分に相当する部分が高濃度の湿潤成形体420が得られる。
【0047】
そして、この湿潤成形体420を押圧して同一厚さとし、乾燥することにより、図13(B)に示すように、第1部分20(20A)の坪量が第2部分30(30A)の坪量よりも大きい保持材1(1A)が得られる。この保持材1(1A)は、平坦なマット状であり、両端の第1部分20(20A)の端面同士を当接させるように触媒担体に巻き付ければよい。
【0048】
また、図示される脱水成形金型120は一枚のマット型保持材に対応したものであるが、第1の領域220Aと第2の領域320とが交互に連続して形成された長尺の脱水成形型を用い、同様にして水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行って長尺のマット状保持材を作製した後、第3の領域220Bの端部に相当する部分で切断することにより、一度に多数枚のマット型保持材を製造することができる。
【0049】
更に、断面形状が楕円またはトラック状の筒型の保持材とするには、図12に示した平坦な脱水成形型120の第3の領域220B,220B同士を連結し、楕円状に形成した筒状の脱水成形型を用いて水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行えばよい。
【0050】
(第4の製造方法)
第3の製造方法と同様の仕切板150で区画された脱水成形型120を用い、保持材材料含有量が同じ水性スラリーを、第1の領域220A及び第3の領域220Bに、第2の領域320,320よりも多量に流し込む。尚、第1の領域220A及び第3の領域220Bに流し込む水性スラリー量と、第2の領域320,320に流し込む水性スラリー量は、保持材1,1Aの第1部分20,20A及び第2部分30、30Aの坪量比に応じて設定される。以降は、第3の製造方法と同様の操作を行うことで図13(B)に示したようなマット状の保持材が得られる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。尚、何れも、短径50mm、長径100mmの楕円型触媒担体用の保持材を作製した。
【0052】
(実施例1)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ96質量%、シリカ4質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の水性スラリーを調製した。次いで、図6に示すように、第1の凹部200Aとして長径の70%である70mmに対応する幅1000mm、深さ(G)10mmの凹部を中央部に設け、その両端に幅67mmの凸部300を設け、更にその外側に第2の凹部200Bとして幅50mm、深さ(G)10mmの凹部を設けた金網(脱水成形型)の全面に水性スラリーを均一に流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た。そして、湿潤成形体全体を厚み方向に同一厚となるように圧縮しながら100℃で乾燥し、図7(B)に示したような幅100mmで、高坪量の第1部分が中央部と両端の2箇所に形成されたマット状の保持材を得た。得られた保持材の厚さはほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の坪量は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0053】
そして、得られた保持材を、図1に示すように、第1部分の中心部が、楕円と短径との交点と一致するように触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm、外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4.0mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバーターを作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0054】
(実施例2)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の水性スラリーを調製した。次いで、図10に示すような、第1の領域210Aに対応する開口率が75%の領域を100mmの幅で形成し、その両端に第2の領域310に対応する開口率が50%の領域を67mmの幅で形成し、更に第3の領域210Bに対応する開口率が75%の領域を幅50mmで形成した金網の全面に水性スラリーを均一に流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た。そして、湿潤成形体全体を厚み方向に圧縮しながら100℃で乾燥し、図11(B)に示したような幅100mmで、高坪量の第1部分が中央部と両端の2箇所に形成されたマット状の保持材を得た。得られた保持材は、厚さがほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の密度は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0055】
そして、得られた保持材を、実施例1と同様に触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバーターを作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0056】
(実施例3)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の第1の水性スラリーAを調整した。また、無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)91質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.45質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを2.7質量部、水10000質量部の第2の水性スラリーBを調整した。次いで、図12に示すような、仕切板により、中央部に幅100mmの領域220A、その両側に幅67mmの領域320、更に両端に幅50mmの領域220Bに区画した金網を用い、第1の水性スラリーAを領域220A及び領域220Bに、第2の水性スラリーBを領域320にそれぞれ流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た。そして、湿潤成形体全体を厚み方向に圧縮しながら100℃で乾燥し、図13(B)に示したような幅100mmで、高坪量の第1部分が中央部と両端の2箇所に形成されたマット状の保持材を得た。得られた保持材は、厚さがほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の密度は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0057】
そして、得られた保持材を、実施例1と同様に触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバータ―を作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0058】
(実施例4)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の水性スラリーを調製した。次いで、実施例3と同じ金網を用い、領域320に対して領域220A及び領域220Bよりも9%少ない量となるように水性スラリーを流し込み、以降は実施例3と同様にして保持材を得た。得られた保持材は、厚さがほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の密度は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0059】
そして、得られた保持材を、実施例1と同様に触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバータ―を作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同様の水性スラリーを平坦な脱水成形型に流し込み、脱水成形、圧縮及び乾燥して、厚さ6.7mmで、坪量が1000g/m2で一様の保持材を得た。
【0061】
また、保持材を触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。そして、外短径61mm、外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の断面楕円形の筒型のSUS製ケーシングに触媒担体ユニットを圧入して触媒コンバーターを作製した。圧入後、ケーシングの外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。この結果、保持材の短径部の密度は0.25g/cm3、長径部の密度は0.227g/cm3となった。
【0062】
(保持力評価)
実施例1〜4及び比較例1の触媒コンバーターについて、加熱加振機を用いて保持材の保持力を評価した。評価条件は以下の通りであり、結果を表1に示した。
・試験温度:900℃
・加速度:60G
【0063】
【表1】
【0064】
以上の結果から、本発明に従う実施例1〜4の保持材は、全周方向から均一な力で触媒担体を保持できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の触媒コンバーター用保持材の第1実施形態を、触媒担体の断面形状に沿って示す図である。
【図2】本発明の触媒コンバーター用保持材の第1実施形態の他の例を、触媒担体の断面形状に沿って示す図である。
【図3】本発明の触媒コンバーター用保持材の第2実施形態を、触媒担体の断面形状に沿って示す図である。
【図4】本発明の触媒コンバーター用保持材をマット状にした実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の触媒コンバーター用保持材を筒型にした実施形態(図1相当)を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の製造方法に使用される脱水成形型を示す模式図である。
【図7】(A)は第1の製造方法により得られた湿潤成形体を示す断面図であり、(B)は圧縮・乾燥後に得られるマット状保持材を示す断面図である。
【図8】筒型保持材を脱水成形法により製造する方法を示す模式図である。
【図9】図8に示す脱水成形法により得られた筒型湿潤成形体を示す模式図である。
【図10】本発明の第2の製造方法に使用される脱水成形型を示す模式図である。
【図11】(A)は第2の製造方法により得られた湿潤成形体を示す断面図であり、(B)は圧縮・乾燥後に得られるマット状保持材を示す断面図である。
【図12】本発明の第3、第4の製造方法に使用される脱水成形型を示す模式図である。
【図13】(A)は第3、第4の製造方法により得られた湿潤成形体を示す断面図であり、(B)は圧縮・乾燥後に得られるマット状保持材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1、1A 保持材
10、10A 触媒担体
20、20A 第1部分
30、30A 第2部分
100、110、120 脱水成形型
100A 筒型脱水成形型
101 スラリー溜め
105 水性スラリー
106 吸引ポンプ
150 仕切板
400、410、420 湿潤成形体
401 筒型湿潤成形体
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートや一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等を除去する触媒コンバーターに用いられる触媒担体を金属製ケーシング内に保持するための触媒コンバーター用保持材及びその製造方法に関する。また、触媒コンバーター用保持材を装着した触媒担体をケーシングに組み込んでなる触媒コンバーターに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒コンバーター用保持材(以下、「保持材」ともいう)は、無機繊維と有機バインダーとを含有する水性スラリーを所定形状の脱水成形型を用いて湿式成形し、熱プレスして得られる。そして、触媒担体に装着した状態で金属製のケーシングに組み込まれ(以下、「キャニング」ともいう)、キャニング後に加えられた熱により、保持材に含まれる有機バインダーが焼失し、有機バインダーにより圧縮状態で拘束されていた無機繊維が厚み方向に膨張することにより、触媒担体とケーシングとの隙間をシールするとともに、触媒担体を保持する。
【0003】
一方で、自動車の低床化が進み、自動車の床下に組み込まれる触媒担体の断面形状を真円から扁平、即ち楕円やトラック形にすることにより、触媒コンバーターの設置に必要なスペースを少なくすることが検討されている。しかし、触媒担体中での熱の伝わり方が不均一になったり、ケーシングの製造工程における残存応力がケーシングの部分により違うこともあるため、キャニングした後、ケーシングに部分的な熱膨張差が生じて拡張度合が不均一になる。その結果、触媒担体とケーシングとのギャップ差が不均一になり、より大きく拡張した箇所において保持材のシール性や保持力が損なわれる。
【0004】
この扁平の触媒担体用として、触媒担体の短径方向の外周面に接する部分を、長径方向の外周に接触する部分よりも肉厚にした保持材が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】実開昭59−39719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される保持材は、厚さが不均一なため、2分割構造のケーシングを用い、保持材を装着した触媒担体を挟み込むクラムシェルと呼ばれる方式には対応できるものの、一体型のケーシングに触媒担体に保持材を装着した状態でケーシングに圧入するスタッフィングと呼ばれる方式には応用できない。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、断面形状が楕円やトラック形のような扁平の触媒担体に対し、従来と変わらないシール性と保持力を発揮することができ、さらに、スタッフィング方式を採用することができる触媒コンバーター用保持材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は下記に示す触媒コンバーター用保持材及びその製造方法を提供する。
(1)断面が楕円形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分が、他の領域と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(2)断面がトラック形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の平坦部と接する第1部分が、湾曲部と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(3)第1部分が、第2部分の一部に延出していることを特徴とする上記(2)記載の触媒コンバーター用保持材。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材において、厚さが一定であることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(5)触媒担体に上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材を装着し、金属ケーシングに組み込んでなる触媒コンバーターであって、前記触媒コンバーターの第1部分の密度が0.15〜0.7g/cm3であることを特徴とする触媒コンバーター。
(6)無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分に凹部が形成された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
(7)無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分の開口率が第2部分に相当する部分の開口率よりも大きくなるように区画された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
(8)無機繊維の含有量が多い第1の水性スラリーと、無機繊維の含有量の少ない第2の水性スラリーとを調製する工程と、第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、第1部分に相当する部分に第1の水性スラリーを流し込み、第2部分に相当する部分に第2の水性スラリーを流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
(9)第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、無機繊維を含有する水性スラリーを第1部分に相当する部分に第2部分に相当する部分よりも多量に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保持材は、断面形状が楕円形やトラック形といった扁平形状の触媒担体用であり、楕円形の触媒担体においては、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分を、他の領域と接する第2部分よりも、高い坪量としたため、また、トラック形の触媒担体においては、平坦部に接する第1部分を、他の領域と接する第2部分よりも高い坪量としたため、ケーシングに部分的な熱膨張差が生じて触媒担体とケーシングとのギャップ差が不均一になったとしても、膨張した無機繊維の量が第1部分で多くなり、ケーシングとの隙間が触媒担体全周にわたり無くなり、保持力も一様になる。また、厚さが一定であるため、一体型のケーシングへのキャニングも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る保持材は、断面形状が楕円の触媒担体用である。図1に断面図で示すように、保持材1は、触媒担体10の短径Hと楕円との交点Cを中心に、長径Lの40〜95%、好ましくは50〜90%、より好ましくは70〜90%に相当する領域(図中DD間)と接する第1部分20の坪量が、他の領域(以下「第2部分」ともいう)30の坪量よりも大きくなるように設定されている。
【0012】
ここで、坪量とは単位面積あたりの繊維質量のことをいう。本発明の保持材においては、発明の効果を発揮できれば、その範囲は特に制限はなく、900〜4500g/m2であればよい。より具体的には、その範囲は触媒担体とケーシングとの隙間(以下、単に「ギャップ」ともいう)の大きさにより異なり、例えば、キャップが2〜6mmの場合には900〜1800g/m2、6〜10mmの場合には1800〜3600g/m2、8〜12mmの場合には2250〜4500g/m2であればよい。
【0013】
第1部分20と第2部分30との坪量の比は、本発明の効果を得られるのであれば特に制限はないが、第1部分20の坪量が第2部分30の坪量に対し1.05〜2.0倍であればよく、1.1〜1.8倍であることが好ましく、1.1〜1.6倍であればより好ましい。ケーシング40は、触媒担体10と相似形であり、断面が楕円状を呈する。触媒担体10とのギャップ差のばらつきは、ケーシング40の寸法精度、残留応力、加熱温度などに左右されるが、一般的には1.5倍以下である。そのため、第1部分20の坪量を第2部分の坪量の1.05〜2.0倍にすることにより、このようなギャップ差があっても触媒担体10の全周にわたり一様にシールすることができるようになる。
【0014】
保持材1は、保持力や断熱性能、シール性能等を考慮すると、厚さが一定であることが好ましい。具体的には、厚さは5〜30mmであればよく、6〜12mmであることが好ましく、厚さの変動が±15%以下であることが好ましく、より好ましくは±10%以下、さらに好ましくは±5%以下である。
【0015】
ケーシング40は、図示の例では上下2分割されているが、一体型のケーシングを用いてスタッフィング方式で保持材1をキャニングすることもでき、保持材1の厚さを一定にすることによりキャニングの生産性を向上させることが期待できる。
【0016】
また、保持材1の第1部分20は、触媒担体10とケーシング40との間隙に介装したときに、その密度が0.15〜0.7g/cm3であることが好ましく、0.2〜0.6g/cm3であることがより好ましく、0.25〜0.5g/cm3であることが特に好ましい。このような密度にすることにより、触媒担体10を良好に保持できる。
【0017】
更に、保持材1の第2部分30の外周面、即ちケーシング側の面の一部または全部に、摩擦係数0.1〜0.3の低摩擦シート50が積層されてもよい。低摩擦シート50を積層することにより、一体型のケーシングに圧入する際に、第2部分30での摩擦抵抗を下げることにより、保持材1をスムーズに挿入することができる。また、触媒担体10に保持材1を装着したときに、曲率半径の小さい第2部分30において、保持材1の外側(ケーシング側)が引っ張られて保持材1の外表面に割れやしわが発生する不具合を回避することができる。こうした保持材1の外表面の割れやしわは、キャニングするときの妨げになるため好ましくない。また、低摩擦シート50は、第1部分20の外周面の一部にまで延出してもよく、更には保持材1の全外面に積層されていてもよい。
【0018】
尚、触媒担体10は、図2(a)に示すように、楕円の長径側の両端を長径Lと直交するように切断した断面形状であってもよい。更には、図示は省略するが、円を、直交する2つの直径側から押しつぶしたような扁平断面形状、あるいは楕円の曲率が各部で異なる断面形状であってもよい。本発明では、これらも断面が楕円形の触媒担体に包含する。そして、これらの場合も、保持材1の第1部分20及び第2部分30は、短径Hと長径Lとの関係から同様の範囲に形成される。尚、図2(b)は図2(a)に示した触媒担体用の保持材1であるが、長径L´の長さが元の楕円の長径Lの95%以下であれば、点線で示すように触媒担体10の円弧全長(EE間)を覆うように第1部分20が形成される。
【0019】
(第2の実施形態)
本実施形態は、図3に示すように、断面形状がトラック形の触媒担体10Aに適用される。即ち、保持材1Aは、触媒担体10Aの平坦部10aと接する第1部分20Aの坪量を、触媒担体10Aの湾曲部10bと接する第2部分30Aよりも大きくなるように設定されている。また、図中矢印で示すように、第1部分20Aは第2部分30Aの一部、好ましくは湾曲部10bの5〜35%を占めるように延出していてもよい。これにより、平坦部10aと接する部分にのみ第1部分20Aを形成するよりも保持能力が向上する。
【0020】
また、保持材1Aの厚さは第1の実施形態と同様の範囲であり、一定であることが好ましく、更に第1部分20Aと第2部分30Aとの坪量の比は第1の実施形態と同様であり、第2部分30Aに低摩擦シートを積層してもよい。尚、低摩擦シートは、第1の実施形態と同様に、第1部分20Aの外周面の一部にまで延出してもよく、更には保持材1Aの全外面に積層されていてもよい。
【0021】
この断面トラック形の触媒担体10Aは、保持材1Aを巻装した状態で触媒担体10Aと相似形のケーシング40Aに装着される。尚、ケーシング40Aは一体型である。
【0022】
上記の各実施形態において、保持材1、1Aの構成材料には制限がなく、無機繊維や有機バインダーを含んでいればよい。また、必要に応じて、従来から使用されている、充填材や無機バインダー等を含んでいてもよい、これらの種類には制限はないが、以下に好ましい例を示す。
【0023】
無機繊維としては、従来から保持材に用いられている種々の無機繊維を用いることができる。例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、あるいはその他のセラミック繊維等を適宜使用できる。より具体的には、アルミナ繊維としては、例えばAl2O3が90重量%以上(残りはSiO2分)であって、かつX線結晶学に基いて低結晶化度を有することが好ましく、結晶化度は30%以下であればよく、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、その平均繊維径が3〜8μm、ウエットボリューム400cc/5g以上が好ましい。ムライト繊維としては、例えばAl2O3分/SiO2分重量比が70/30〜80/20程度のムライト組成であって、かつX線結晶学に基いて低結晶化度を有することが好ましく、結晶化度は30%以下であればよく、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、その平均繊維径が3〜8μm、ウエットボリューム400cc/5g以上が好ましい。その他のセラミック繊維としては、シリカアルミナ繊維やシリカ繊維を挙げることができるが、何れも従来から保持材に使用されているもので構わない。また、ガラス繊維やロックウール、生体溶解性繊維を配合してもよい。
【0024】
尚、上記ウエットボリュームは、次の方法で算出される。
1)乾燥した繊維材料5gを少数点2桁以上の精度を有する秤で計量する。
2)計量した繊維材料を500gのガラスビーカーに入れる。
3)2)のガラスビーカーに温度20〜25℃の蒸留水を400cc程度入れ、攪拌機を用いて繊維材料を切断しないように慎重に攪拌し、分散させる。この分散は超音波洗浄機を使用してもよい。
4)3)のガラスビーカーの中味を1000mlのメスシリンダーに移し、目盛で1000ccまで蒸留水を加える。
5)4)のメスシリンダーの口を手等で塞ぎ、水が漏れないように注意しながら上下逆さまにして攪拌する。これを計10回繰り返す。
6)攪拌停止後、室温下で静置し、30分経過後の繊維沈降体積を目視で計測する。
7)上記操作を3サンプルについて行い、その平均値を測定値とする。
【0025】
有機バインダーも公知のもので構わず、ゴム類、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を使用できる。具体的には、ゴム類の例としては、n−ブチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンゴム等がある。水溶性有機高分子化合物の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等がある。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の単独重合体及び共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等がある。熱硬化性樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等がある。なお、これらの有機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。有機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部であればよい。有機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、10質量部を越えると相対的に無機繊維の量が減ってしまい、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られなくなることが懸念される。有機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜4質量部である。
【0026】
また、有機バインダーとしてパルプ等の有機繊維を少量配合することも可能である。有機繊維は細く長いものほどバインド力が高く、高度にフィブリル化したセルロースやセルロースナノファイバー等が好ましい。具体的には、繊維径が0.01〜50μm、繊維長が1〜5000μmであることが好ましく、繊維径が0.02〜1μm、繊維長が10〜1000μmであることがより好ましい。
【0027】
こうしたフィブリル化した繊維の使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜5質量部である。フィブリル化した繊維が0.1質量部未満では結束力が不足し、5質量部を越える場合は相対的に無機繊維の量が減り、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られない。フィブリル化した繊維の好ましい量は0.1〜2.5質量部、さらに好ましい量は0.1〜1質量部である。
【0028】
また、こうしたフィブリル化した繊維と無機バインダーを併用してもよい。フィブリル化した繊維と無機バインダーの併用によれば、使用時おける有機成分の揮発が起因する上述した不具合を回避するために、フィブリル化した繊維の使用量を少なくした場合であっても、無機繊維を良好に結束でき、従来と同等の厚さを維持できる触媒コンバーター用保持材を提供することができる。こういった無機バインダーは公知のもので構わず、ガラスフリット、コロイダルシリカ、アルミナゾル、珪酸ソーダ、チタニアゾル、珪酸リチウム、モンモリロナイトといった粘土鉱物、水ガラスなどが挙げられる。なお、これらの無機バインダーは二種以上を組み合わせて使用することもできる。無機バインダーの使用量は、無機繊維を結束し得る量であれば制限はないが、無機繊維100質量部に対して0.1〜10質量部である。無機バインダーが0.1質量部未満では結束力が不足し、5質量部を越える場合は相対的に無機繊維の量が減り、保持材として必要な保持性能及びシール性能が得られない。無機バインダーの好ましい量は0.2〜6質量部、さらに好ましい量は0.2〜4質量部である。
【0029】
尚、含有する有機分は、保持材全量に対して0.3〜4.0質量%であることが好ましく、0.5〜3.0質量%であることがより好ましく、1.0〜2.5質量%であることが特に好ましい。有機分が少なくなるほど、キャニング後に熱が加えられた際に揮発ガスが少なくなるので好ましい。ここで、有機分は700℃で30分加熱した後の強熱減量率で代用できる。
【0030】
上記の保持材1、1Aは、その形態には特に制限はなく、一枚のマット状(マット型保持材)であってもよく、断面形状が楕円状またはトラック形の筒型(筒型保持材)であってもよい。図4にマット型保持材1(1A)を示すが、両端同士を接合することにより図1及び図3における上方の第1部分20(20A)となるため、中央の第1部分20(20A)の半分の幅となる。また、マット型保持材1(1A)は、一方の端部の第1部分20(20A)に凹部が形成され、この場合、他方の端部の第1部分20(20A)に凸部が形成され、凹部と凸部とが係合するように接合される。尚、第2部分30(30A)で接合する構成にすることもでき、凹部及び凸部を第2部分30(30A)に形成する。また、図5には、図1に示す断面楕円状の筒型保持材を示す。尚、マット型保持材は、触媒担体10、10Aに巻きつける作業が必要であるため、手間やコストを考慮すると筒型保持材のほうが有利である。
【0031】
以下に、上記の保持材の製造方法について説明する。
【0032】
(第1の製造方法)
先ず、図6に示すように、中央に保持材1,1Aの第1部分20、20Aに相当する幅で窪んで(段差G)第1の凹部200Aが形成され、その両側に第2部分に相当する幅で凸部300,300が形成され、更に両端に第1の凹部200Aと同じ深さの第2の凹部200Bが形成された脱水成形型100を用い、図面上方から保持材構成材料を含有する水性スラリーを流し込み、脱水成形により脱水成形型100の全面に保持材構成材料を所定厚さで付着させる。尚、第2の凹部200B、200Bの幅は、第1の凹部200Aの幅の半分である。尚、脱水成形型100は凸部300及び凹部200A、200Bを取り囲む枠体を備えるが、ここでは枠体を省略して示す。以降の製造方法も同様である。
【0033】
脱水成形型100は、水性スラリー中の水分を透過し、無機繊維等の保持材の構成材料を型面上に残すことができればよく、例えば金網や、微細な穴を多数形成した平板等を使用することができる。ここでは、金網を例示して説明する。
【0034】
次いで、脱水成形型100を取り除くと、図7(A)に示すように、脱水成形型100の凹部200A,200B、即ち保持材1,1Aの第1部分に相当する部分が段差G分だけ厚い湿潤成形体400が得られる。
【0035】
そして、この湿潤成形体400を図中の上方から押圧して同一厚さとし、例えば100〜180℃で乾燥することにより、図7(B)に示すように、第1部分20(20A)の坪量が第2部分30(30A)の坪量よりも大きい保持材1(1A)が得られる。この保持材1(1A)は、平坦なマット状であり、両端の第1部分20(20A)の端面同士を当接させるように触媒担体に巻き付ければよい。
【0036】
上記の第1の製造方法では、段差Gの大きさを適宜変更することにより、第1部分と第2部分との坪量の差を制御することができる。すなわち、段差Gの大きさを小さくすることだけで、例えば、坪量の差が1.1倍といった微妙な制御を確実に行うことができる。できる。
【0037】
また、図示される脱水成形金型100は一枚のマット型保持材に対応したものであるが、凹部200Aと凸部300とが交互に連続して形成された長尺の脱水成形型を用い、同様にして水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行って長尺のマット状保持材を作製した後、第2の凹部200Bの端部に相当する部分で切断することにより、一度に多数枚のマット型保持材を製造することができる。
【0038】
更には、図6に示す脱水成形金型100の第2の凹部200Bの端部同士を連結して楕円状もしくはトラック状にすることにより、円筒型保持材を製造することもできる。即ち、図8に示すように、脱水成形金型100の第2の凹部200Bの端部同士を連結してなる筒型脱水成形型100Aを、スラリー溜め101に貯留された水性スラリー105に浸漬し、筒型脱水成形型100Aの内側から吸引ポンプ106で吸引する。これにより、図9に示すように、筒型脱水成形型100Aの表面に無機繊維102が付着して筒型湿潤成形体401が得られる。この筒型湿潤成形体401は、図7(A)に示す湿潤成形体400の両端を連結したものとなる。そして、この筒型湿潤成形体401を筒型の押圧部材で押圧し、乾燥することにより図5に示したような筒型保持材が得られる。
【0039】
(第2の製造方法)
図10に示すように、中央に保持材1,1Aの第1部分20、20Aに相当する幅で所定の開口率(目開き)の第1の領域210Aが形成され、その両側に第2部分に相当する幅で第1の領域210Aよりも開口率の小さい第2の領域310,310が形成され、更に両端に第1の領域210Aと同じ開口率の第3の領域210Bが形成された脱水成形型110を用い、図面上方から保持材構成材料を含有する水性スラリーを流し込み、脱水成形により脱水成形型110の全面に保持材構成材料を所定厚さで付着させる。尚、第3の領域210B、210Bの幅は、第1の領域210Aの幅の半分である。また、第1の領域210A及び第2の領域210Bの各開口率は、保持材1,1Aの第1部分20,20A及び第2部分30、30Aの坪量の比に応じて設定される。
【0040】
ここで、開口率が大きい第1の領域210A及び第3の領域210Bでは水が多く吸引され、それに伴って無機繊維が吸い寄せられるため、第1の領域210A及び第3の領域210Bでは繊維付着量が多くなり、図11(A)に示すように、得られる湿潤成形体410においてもこの部分が厚くなる。この厚い部分が、保持材1,1Aの第1部分に相当する。
【0041】
そして、この湿潤成形体410を押圧して同一厚さとし、乾燥することにより、図11(B)に示すように、第1部分20(20A)の坪量が第2部分30(30A)の坪量よりも大きい保持材1(1A)が得られる。この保持材1(1A)は、平坦なマット状であり、両端の第1部分20(20A)の端面同士を当接させるように触媒担体に巻き付ければよい。
【0042】
上記の第2の製造方法では、開口率を適宜変更することにより、第1部分と第2部分との坪量の差を制御することができる。すなわち、第2の領域の開口率を第1の領域及び第3の領域の開口率をわずかに小さくすることだけで、例えば、坪量の差が1.1倍といった微妙な制御を確実に行うことができる。
【0043】
また、図示される脱水成形金型110は一枚のマット型保持材に対応したものであるが、第1の領域210Aと第2の領域210Bとが交互に連続して形成された長尺の脱水成形型を用い、同様にして水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行って長尺のマット状保持材を作製した後、第2の領域210Bの端部に相当する部分で切断することにより、一度に多数枚のマット型保持材を製造することができる。
【0044】
更に、断面形状が楕円状またはトラック状の筒型の保持材とするには、図10に示した平坦な脱水成形型110の第3の領域210B、210B同士を連結し、楕円状またはトラック状に成形した筒状の脱水成形型を用いて水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行えばよい。
【0045】
(第3の製造方法)
図12に示すように、仕切板150により、中央に保持材1,1Aの第1部分20、20Aに相当する幅で第1の領域220A、その両側に第2部分に相当する幅で第2の領域320,320、両端に第3の領域220Bに区画した脱水成形型120を用い、第1の領域220A及び第3の領域220Bには、保持材構成材料を高濃度で含有する第1の水性スラリーAを流し込み、第2の領域320には第1の水性スラリーAよりも低濃度の水性スラリーBを流し込み、脱水成形により脱水成形型120の全面に保持材構成材料を所定厚さで付着させる。尚、第3の領域220B、220Bの幅は、第1の領域220Aの幅の半分である。また、水性スラリーA及び水性スラリーBの各濃度は、保持材1,1Aの第1部分20,20A及び第2部分30、30Aの坪量の比に応じて設定される。
【0046】
次いで、脱水成形型120を取り除くと、図13(A)に示すように、脱水成形型120の第1の領域220A及び第3の領域220B、即ち保持材1,1Aの第1部分に相当する部分が高濃度の湿潤成形体420が得られる。
【0047】
そして、この湿潤成形体420を押圧して同一厚さとし、乾燥することにより、図13(B)に示すように、第1部分20(20A)の坪量が第2部分30(30A)の坪量よりも大きい保持材1(1A)が得られる。この保持材1(1A)は、平坦なマット状であり、両端の第1部分20(20A)の端面同士を当接させるように触媒担体に巻き付ければよい。
【0048】
また、図示される脱水成形金型120は一枚のマット型保持材に対応したものであるが、第1の領域220Aと第2の領域320とが交互に連続して形成された長尺の脱水成形型を用い、同様にして水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行って長尺のマット状保持材を作製した後、第3の領域220Bの端部に相当する部分で切断することにより、一度に多数枚のマット型保持材を製造することができる。
【0049】
更に、断面形状が楕円またはトラック状の筒型の保持材とするには、図12に示した平坦な脱水成形型120の第3の領域220B,220B同士を連結し、楕円状に形成した筒状の脱水成形型を用いて水性スラリーの流し込み、脱水成形、圧縮、乾燥を行えばよい。
【0050】
(第4の製造方法)
第3の製造方法と同様の仕切板150で区画された脱水成形型120を用い、保持材材料含有量が同じ水性スラリーを、第1の領域220A及び第3の領域220Bに、第2の領域320,320よりも多量に流し込む。尚、第1の領域220A及び第3の領域220Bに流し込む水性スラリー量と、第2の領域320,320に流し込む水性スラリー量は、保持材1,1Aの第1部分20,20A及び第2部分30、30Aの坪量比に応じて設定される。以降は、第3の製造方法と同様の操作を行うことで図13(B)に示したようなマット状の保持材が得られる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。尚、何れも、短径50mm、長径100mmの楕円型触媒担体用の保持材を作製した。
【0052】
(実施例1)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ96質量%、シリカ4質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の水性スラリーを調製した。次いで、図6に示すように、第1の凹部200Aとして長径の70%である70mmに対応する幅1000mm、深さ(G)10mmの凹部を中央部に設け、その両端に幅67mmの凸部300を設け、更にその外側に第2の凹部200Bとして幅50mm、深さ(G)10mmの凹部を設けた金網(脱水成形型)の全面に水性スラリーを均一に流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た。そして、湿潤成形体全体を厚み方向に同一厚となるように圧縮しながら100℃で乾燥し、図7(B)に示したような幅100mmで、高坪量の第1部分が中央部と両端の2箇所に形成されたマット状の保持材を得た。得られた保持材の厚さはほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の坪量は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0053】
そして、得られた保持材を、図1に示すように、第1部分の中心部が、楕円と短径との交点と一致するように触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm、外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4.0mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバーターを作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0054】
(実施例2)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の水性スラリーを調製した。次いで、図10に示すような、第1の領域210Aに対応する開口率が75%の領域を100mmの幅で形成し、その両端に第2の領域310に対応する開口率が50%の領域を67mmの幅で形成し、更に第3の領域210Bに対応する開口率が75%の領域を幅50mmで形成した金網の全面に水性スラリーを均一に流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た。そして、湿潤成形体全体を厚み方向に圧縮しながら100℃で乾燥し、図11(B)に示したような幅100mmで、高坪量の第1部分が中央部と両端の2箇所に形成されたマット状の保持材を得た。得られた保持材は、厚さがほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の密度は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0055】
そして、得られた保持材を、実施例1と同様に触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバーターを作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0056】
(実施例3)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の第1の水性スラリーAを調整した。また、無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)91質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.45質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを2.7質量部、水10000質量部の第2の水性スラリーBを調整した。次いで、図12に示すような、仕切板により、中央部に幅100mmの領域220A、その両側に幅67mmの領域320、更に両端に幅50mmの領域220Bに区画した金網を用い、第1の水性スラリーAを領域220A及び領域220Bに、第2の水性スラリーBを領域320にそれぞれ流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た。そして、湿潤成形体全体を厚み方向に圧縮しながら100℃で乾燥し、図13(B)に示したような幅100mmで、高坪量の第1部分が中央部と両端の2箇所に形成されたマット状の保持材を得た。得られた保持材は、厚さがほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の密度は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0057】
そして、得られた保持材を、実施例1と同様に触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバータ―を作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0058】
(実施例4)
無機繊維としてのアルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の水性スラリーを調製した。次いで、実施例3と同じ金網を用い、領域320に対して領域220A及び領域220Bよりも9%少ない量となるように水性スラリーを流し込み、以降は実施例3と同様にして保持材を得た。得られた保持材は、厚さがほぼ一定で平均6.7mmであり、±0.5mm以下であった。第1部分の坪量は1100g/m2、第2部分の坪量は1000g/m2であり、第1部分の密度は第2部分の坪量に対して1.1倍であった。保持材全量に対して、無機繊維96.6質量%、有機バインダー0.5質量%、無機バインダー2.9質量%含まれており、強熱減量率を測定したところ、有機分は0.5質量%であった。
【0059】
そして、得られた保持材を、実施例1と同様に触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。この触媒担体ユニットを、外短径61mm外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の楕円型筒状のSUS製ケーシングに圧入して触媒コンバータ―を作製した。圧入後、外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。その結果、保持材の全ての部位において、密度は0.25g/cm3となった。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同様の水性スラリーを平坦な脱水成形型に流し込み、脱水成形、圧縮及び乾燥して、厚さ6.7mmで、坪量が1000g/m2で一様の保持材を得た。
【0061】
また、保持材を触媒担体に巻き付けて触媒担体ユニットを得た。そして、外短径61mm、外長径111mm、肉厚1.5mm(ギャップ4mm)の断面楕円形の筒型のSUS製ケーシングに触媒担体ユニットを圧入して触媒コンバーターを作製した。圧入後、ケーシングの外長径に変化はなかったが、外短径は0.8mm拡張したことから長径部のギャップは4.4mmとなった。この結果、保持材の短径部の密度は0.25g/cm3、長径部の密度は0.227g/cm3となった。
【0062】
(保持力評価)
実施例1〜4及び比較例1の触媒コンバーターについて、加熱加振機を用いて保持材の保持力を評価した。評価条件は以下の通りであり、結果を表1に示した。
・試験温度:900℃
・加速度:60G
【0063】
【表1】
【0064】
以上の結果から、本発明に従う実施例1〜4の保持材は、全周方向から均一な力で触媒担体を保持できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の触媒コンバーター用保持材の第1実施形態を、触媒担体の断面形状に沿って示す図である。
【図2】本発明の触媒コンバーター用保持材の第1実施形態の他の例を、触媒担体の断面形状に沿って示す図である。
【図3】本発明の触媒コンバーター用保持材の第2実施形態を、触媒担体の断面形状に沿って示す図である。
【図4】本発明の触媒コンバーター用保持材をマット状にした実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の触媒コンバーター用保持材を筒型にした実施形態(図1相当)を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の製造方法に使用される脱水成形型を示す模式図である。
【図7】(A)は第1の製造方法により得られた湿潤成形体を示す断面図であり、(B)は圧縮・乾燥後に得られるマット状保持材を示す断面図である。
【図8】筒型保持材を脱水成形法により製造する方法を示す模式図である。
【図9】図8に示す脱水成形法により得られた筒型湿潤成形体を示す模式図である。
【図10】本発明の第2の製造方法に使用される脱水成形型を示す模式図である。
【図11】(A)は第2の製造方法により得られた湿潤成形体を示す断面図であり、(B)は圧縮・乾燥後に得られるマット状保持材を示す断面図である。
【図12】本発明の第3、第4の製造方法に使用される脱水成形型を示す模式図である。
【図13】(A)は第3、第4の製造方法により得られた湿潤成形体を示す断面図であり、(B)は圧縮・乾燥後に得られるマット状保持材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1、1A 保持材
10、10A 触媒担体
20、20A 第1部分
30、30A 第2部分
100、110、120 脱水成形型
100A 筒型脱水成形型
101 スラリー溜め
105 水性スラリー
106 吸引ポンプ
150 仕切板
400、410、420 湿潤成形体
401 筒型湿潤成形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が楕円形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分が、他の領域と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項2】
断面がトラック形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の平坦部と接する第1部分が、湾曲部と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項3】
第1部分が、第2部分の一部に延出していることを特徴とする請求項2記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材において、厚さが一定であることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項5】
触媒担体に請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材を装着し、金属ケーシングに組み込んでなる触媒コンバーターであって、前記触媒コンバーターの第1部分の密度が0.15〜0.7g/cm3であることを特徴とする触媒コンバーター。
【請求項6】
無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分に凹部が形成された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項7】
無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分の開口率が第2部分に相当する部分の開口率よりも大きくなるように区画された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項8】
無機繊維の含有量が多い第1の水性スラリーと、無機繊維の含有量の少ない第2の水性スラリーとを調製する工程と、第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、第1部分に相当する部分に第1の水性スラリーを流し込み、第2部分に相当する部分に第2の水性スラリーを流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項9】
第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、無機繊維を含有する水性スラリーを第1部分に相当する部分に第2部分に相当する部分よりも多量に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項1】
断面が楕円形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の、楕円と短径との交点を中心にして長径の40〜95%に相当する領域と接する第1部分が、他の領域と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項2】
断面がトラック形の触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に装着されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
触媒担体の平坦部と接する第1部分が、湾曲部と接する第2部分よりも坪量が大きいことを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項3】
第1部分が、第2部分の一部に延出していることを特徴とする請求項2記載の触媒コンバーター用保持材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材において、厚さが一定であることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項5】
触媒担体に請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒コンバーター用保持材を装着し、金属ケーシングに組み込んでなる触媒コンバーターであって、前記触媒コンバーターの第1部分の密度が0.15〜0.7g/cm3であることを特徴とする触媒コンバーター。
【請求項6】
無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分に凹部が形成された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項7】
無機繊維を含有する水性スラリーを、第1部分に相当する部分の開口率が第2部分に相当する部分の開口率よりも大きくなるように区画された脱水成形型に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項8】
無機繊維の含有量が多い第1の水性スラリーと、無機繊維の含有量の少ない第2の水性スラリーとを調製する工程と、第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、第1部分に相当する部分に第1の水性スラリーを流し込み、第2部分に相当する部分に第2の水性スラリーを流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項9】
第1部分に相当する部分と第2部分に相当する部分とを区分けする仕切材を備えた脱水成形型を用い、無機繊維を含有する水性スラリーを第1部分に相当する部分に第2部分に相当する部分よりも多量に流し込む工程と、水性スラリーを脱水成形して湿潤成形体を得る工程と、仕切板を取り外して湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥する工程とを備えることを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−138760(P2010−138760A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314579(P2008−314579)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
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