説明

触媒及びその製造方法、並びに電極

【課題】高い触媒活性を有し、燃料電池用として好適な触媒及び該触媒の製造方法、並びに該触媒を用いた燃料電池用電極、ボタン電池用電極、及びガス拡散用電極のいずれかに好適に用いられる長寿命な電極の提供。
【解決手段】 樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有する触媒である。金属粒子前駆体が、金属イオンである態様、金属イオンが、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素、及び、アクチノイド系列の元素の少なくともいずれかの金属と白金との合金、並びに、白金の少なくともいずれかである態様、燃料電池の電極用として用いられる態様が好ましい。また、本発明の前記触媒、カーボン、及びバインダー樹脂を含有する触媒層と、基板とを有する電極である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い触媒活性を有し、燃料電池用として好適な触媒及び該触媒の製造方法、並びに該触媒を用いた燃料電池用電極、ボタン電池用電極、及びガス拡散用電極のいずれかに好適に用いられる長寿命な電極に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素、炭化水素等の燃料と、酸素等の酸化剤とを供給し、その酸化還元反応によって得られる化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電装置である。この燃料電池は、一般に、燃料極(以下、「アノード」と称することがある)と酸化剤極(以下、「カソード」と称することがある)からなる一対の多孔質電極の間に、電解質を含浸したマトリックス層を挟持させてなる単電池を複数個積層して構成され、前記アノード及びカソードに各々燃料ガス及び酸化剤ガスが供給される構成となっている。また、前記アノード及びカソードは、通常は炭素材によって構成されており、その一方の面には触媒層が形成され、この触媒層が前記電解質を含浸したマトリックス層と接触するように配置されている。
【0003】
前記燃料電池において、作動時にアノードに供給された燃料は、電解質の存在下、電極触媒上で酸化されて電子を放出し、この電子が外部回路を通じてカソードに供給される。一方、カソードに供給された酸化剤は、電解質の存在下、電極触媒上でアノードから供給される電子を消費しながら還元される。この時、外部回路を流れる電流が一定負荷の下で電力として利用される。
【0004】
前記燃料電池は、高エネルギー密度のクリーンなエネルギー源として注目を集めている。該燃料電池においては、燃料電池のコスト及び寿命は電極触媒に大きく依存しているため、民生用電池分野において現在幅広く使用されているマンガン電池、アルカリマンガン電池、リチウム電池等の一次電池;鉛蓄電池、ニッケルカドミニウム二次電池、ニッケル二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池に代わって、燃料電池が主役の地位を獲得していく上で、電極触媒がその鍵を握っていると言っても過言でない。
【0005】
前記電極触媒としては、初期には貴金属と称される白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、銀(Ag)、及び金(Au)から選ばれる少なくとも1種を組み合わせたものが、金属ブラックの形で使用されていた。しかし、これらの成分からなる触媒は金属表面積が小さいため、多量の貴金属を使用する必要がある。また、電解質中で著しくシンタリングし易いため、触媒寿命が短く経済的ではないという問題がある。その後、貴金属成分をカーボンブラック等の導電性の粉末担体に分散担持させたものが用いられるようになり、貴金属の使用量の低減が進められているが、更なる向上が望まれている。
【0006】
また、燃料電池の民生用電池分野への展開には、インフラ整備や安全性確保等の観点より、水素ガスと共に使用可能な多様な燃料ガスの可能性検討が必要であるものの、例えば、燃料として炭化水素系ガスを用いた場合、その燃料改質時に発生する一酸化炭素(CO)は、アノードでの電極反応を被毒し、アノード特性の低下、ひいては電池特性の低下をもたらす等の問題があった。
【0007】
これまで優れた燃料電池用の電極触媒開発の取り組みとしては、先ず、白金とパラジウムとの担持二元系合金触媒が提案されている(特許文献1参照)。その後、更に高耐CO被毒性化をめざして改良がなされ、特許文献2に示されているような、白金にニッケルとコバルトを加えた担持白金三元系合金触媒、或いは、特許文献3に示されているような、白金−パラジウム−ルテニウムからなる担持白金三元系合金触媒が提案されている。更に、特許文献4に示されているような、白金−ニッケル−コバルト−マンガンからなる四元系合金触媒も提案されている。
【0008】
しかしながら、以上のような従来の各種のカーボン担持合金触媒の形成法としては、例えば、特許文献5及び特許文献6に記載されている形成法(以下に概略的に記載した形成法)により形成していた。
即ち、前記カーボン担持合金触媒の形成法は、まず、Pt又はPt合金を構成する各金属成分(例えば、Pt化合物としては2価或いは4価の塩化白金酸、塩化白金酸塩等、Pt合金とする場合は合金成分としたい各金属の塩化物、硝酸化合物等)、及び、水中で担体材料として使用する導電性カーボンブラック等の粉末を、共に混合し吸着又は含浸処理を行なう。次いで、この水性スラリーを、高速で攪拌しながら適当な還元剤、例えば、アンモニア、ヒドラジン、ギ酸、ホルマリン等の希釈溶液をゆっくり滴下し、各金属成分を不溶性化合物として、又は一部還元された金属微粒子として担体上に分散担持させる形成法である。
【0009】
したがってスラリー濃度、攪拌速度、還元金属化処理条件等を厳密に制御しても、粒子径や粒子径分布を制御することが困難であり、又、金属或いは合金粒子は「むき出しの状態」で存在するため、合金組成の最適化を行ったとしても、経時凝集による表面積が低下や、触媒被毒成分との遭遇による悪影響を避けられず、実用的な燃料電池において必要とされる高活性と長寿命の要求を同時に満足させることが困難であるのが現状である。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4407906号明細書
【特許文献2】特開平4−141235号公報
【特許文献3】特開平4−141233号公報
【特許文献4】特開平5−208135号公報
【特許文献5】特開平8−22827号公報
【特許文献6】特開平10−74523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高い触媒活性を有し、燃料電池用として好適な触媒及び該触媒の製造方法、並びに該触媒を用いた燃料電池用電極、ボタン電池用電極、及びガス拡散電極のいずれかに好適に用いられる長寿命な電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有することを特徴とする触媒である。
<2> 金属粒子前駆体が、金属イオンである前記<1>に記載の触媒である。
<3> 金属イオンが、周期律表の3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素、3B族元素及び6B族元素から選ばれる少なくとも1種である前記<2>に記載の触媒である。
<4> 金属イオンが、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素、及び、アクチノイド系列の元素の少なくともいずれかの金属と白金との合金、並びに、白金の少なくともいずれかである前記<3>に記載の触媒である。
<5> 金属粒子前駆体を結合乃至内包する樹状分岐分子のサイトが、金属元素捕捉サイトである前記<1>から<4>のいずれかに記載の触媒である。
<6> 樹状分岐分子が、デンドリマー、デンドロン及びハイパーブランチポリマーから選択される少なくとも1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載の触媒である。
<7> 樹状分岐分子が、他の材料の一部に含まれている前記<1>から<6>のいずれかに記載の触媒である。
<8> 樹状分岐分子が、ベンゼン環を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の触媒である。
<9> 樹状分岐分子の分子量が200以上である前記<1>から<8>のいずれかに記載の触媒である。
<10> 樹状分岐分子の世代数が、第1世代以上である前記<1>から<9>のいずれかに記載の触媒である。
<11> 複合粒子の体積平均粒径(D50)が、0.1〜500nmである前記<1>から<10>のいずれかに記載の触媒である。
<12> 燃料電池の電極用として用いられる前記<1>から<11>のいずれかに記載の触媒である。
<13> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の触媒を製造する方法であって、樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程を含むことを特徴とする触媒の製造方法である。
<14> 樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを同時に混合する前記<13>に記載の触媒の製造方法である。
<15> 樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを略等量で混合する前記<13>から<14>のいずれかに記載の触媒の製造方法である。
<16> 樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを加熱しながら混合する前記<13>から<15>のいずれかに記載の触媒の製造方法である。
<17> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の触媒、カーボン、及びバインダー樹脂を含有する触媒層と、基板とを有することを特徴とする電極である。
<18> カーボンの少なくとも一部が、黒鉛化処理されている前記<17>に記載の電極である。
<19> 電極が、燃料電池用電極、ボタン電池用電極、及びガス拡散用電極のいずれかである前記<17>から<18>のいずれかに記載の電極である。
【0013】
本発明の触媒は、樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有することを特徴とする。該触媒は、一般的な白金ナノ粒子よりも粒径及び粒度分布が小さく、分散安定性が高いので、高い触媒活性を有し、特に燃料電池用として好適である。
【0014】
本発明の触媒の製造方法は、本発明の前記触媒を製造する方法であって、樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程を含むことを特徴とする。その結果、高い触媒活性を有し、特に燃料電池用として好適な触媒を効率よく製造することができる。
【0015】
本発明の電極は、本発明の前記触媒、カーボン、及びバインダー樹脂を含有する触媒層と、基板とを有する。該本発明の電極は、本発明の前記触媒を含有するので、高い触媒活性を有し、長寿命であるので、燃料電池用電極、ボタン電池用電極、及びガス拡散用電極のいずれかの電極として好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、高い触媒活性を有し、燃料電池用として好適な触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いた電極高い触媒活性を有し、かつ長寿命である触媒及び触媒の製造方法、並びに該触媒を用いた燃料電池用電極、ボタン電池用電極、及びガス拡散用電極のいずれかに好適に用いられる長寿命な電極を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(触媒及びその製造方法)
本発明の触媒は、樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明の触媒の製造方法は、樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程を含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の触媒は、本発明の前記触媒の製造方法により製造される。
以下、本発明の触媒の製造方法の説明を通じて、本発明の触媒の詳細についても明らかにする。
【0018】
<複合粒子形成工程>
前記複合粒子形成工程は、樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させて複合粒子を形成する工程である。
ここで、前記結合乃至内包の態様としては、化学結合、静電的相互作用による結合などが挙げられ、該化学結合としては、配位結合、イオン結合、共有結合、などが挙げられる。
【0019】
前記複合粒子形成工程としては、金属粒子前駆体が金属イオンであり、該金属イオンと、錯体形成可能なサイト及び静電引力により金属イオンが結合可能なサイトのいずれかを有する樹状分岐分子とを反応させる態様が好適である。
【0020】
−樹状分岐分子−
前記樹状分岐分子とは、金属元素捕捉サイトの数がほぼ一定な樹状分岐分子であり、好ましくは単分散の樹状分岐分子を意味する。
前記樹状分岐分子としては、分岐の中心であるコアより規則的に逐次分岐されたデンドリマーやデンドロンばかりでなく、ハイパーブランチポリマーも含まれる。また、前記樹状分岐分子が他の材料の一部に含まれているものであってもよい。即ち、樹状分岐分子の表面の官能性基を、高分子又は他の材料と結合させたものでもよく、或いは、樹状分岐分子を含む有機分子であってもよい。例えば、デンドリマーの表面が高分子主鎖に結合した分子も本発明の樹状分岐分子に含まれる。
【0021】
ここで、前記金属元素捕捉サイト(以下、「フォーカルサイト」と称することもある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記金属粒子前駆体を結合可能な官能基及び金属粒子前駆体を静電的に相互作用可能な官能基のいずれかが好ましい。
前記金属粒子前駆体を結合可能な官能基における結合の種類としては、配位結合、化学結合、イオン結合、共有結合、などが挙げられる。
前記金属粒子前駆体が金属イオンである場合において、該金属イオンを配位結合可能な官能基としては、例えば、NH、RNH、N、HO、OH、O−2、ROH、RO、RO、MeCOO、CO−2、NO、F、PhNH、CN、N、NO、SO−2、Br、H、R、C、C、CN、RNC、CO,SCN、RP、(RO)P、RAs、RS、RSH、RS、S−2、I、などが挙げられる。
前記金属粒子前駆体が金属イオンである場合において、該金属イオンを静電的に相互作用可能な官能基としては、例えば、4級アンモニウム塩、COO、PO3−、SO2−等が挙げられる。
【0022】
前記樹状分岐分子(特にデンドリマー)の分子量は200以上が好ましく、1500〜10万がより好ましい。前記分子量が200未満であると、ナノ粒子が樹状分岐分子の内部で形成されないことがある。
前記樹状分岐分子の世代数は、第1世代以上が好ましく、第2世代〜第10世代がより好ましい。前記世代数が、1世代未満であると、ナノ粒子が樹状分岐分子の内部で形成されないことがある。
【0023】
前記デンドリマーとしては、例えば、G.R.Newkome,C.N.Moorefield、F.フェグトレ著「Dendrimers and Dendrons」(2001年、WILEY‐VCH発行)、C.J.Hawker et al;J.Chem.Soc.,Commun.,第1010頁(1990年)、D.A.Tomalia et al;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,第138頁(1990年)、C.J.Hawker et al;J.Am.Chem.Soc.,112巻、第7638頁(1990年)、J.M.J.Frechet,;Science、263巻、第1710頁(1994年)などの文献に記述されているものが好適に挙げられる。
【0024】
前記デンドリマーとしては、具体的には、以下のデンドリマー(1)から(8)に示すものが好適に用いられる。
【0025】
<デンドリマー(1):アミド型デンドリマー>
【化1】

【0026】
<デンドリマー(2):アミド型デンドリマー>
【化2】

【0027】
<デンドリマー(3):アミド型デンドリマー>
【化3】

【0028】
<デンドリマー(4):アミド型デンドリマー>
【化4】

【0029】
<デンドリマー(5):プロピレンイミン型デンドリマー>
【化5】

【0030】
<デンドリマー(6):プロピレンイミン型デンドリマー>
【化6】

【0031】
<デンドリマー(7):プロピレンイミン型デンドリマー>
【化7】

【0032】
<デンドリマー(8):メチレンイミン型デンドリマー>
【化8】

【0033】
前記デンドリマーのうち、トリメチレンイミン骨格を含むデンドリマーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の方法などが挙げられる。
例えば、国際公開第93/14147号パンフレット、及び国際公開第95/02008号パンフレットなどに記載されているように、アンモニア及び2個以上の1級アミノ基を含有する化合物を出発物質とし、アクリロニトリルを反応させてシアノエチル化する。その後、ニトリル基を触媒の存在下で、水素又はアンモニアを用いて1級アミノ基に還元する(G1)。次に、シアノエチル化と1級アミノ基への還元を3度繰り返して(G2→G3→G4)合成する方法などが挙げられる。
前記デンドリマーの製造方法においては、出発物質として、アンモニアの他、1級アミノ基、アルコール、フェノール、チオール、チオフェノール及び2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する化合物を用いてもよい。
【0034】
前記デンドリマーのうち、アミドアミン骨格を含むデンドリマーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の方法などが挙げられる。
例えば、特公平7−2840号公報、特公平7−57735号公報、特公平7−57736号公報、特開平7−267879号公報、及び特開平11−140180号公報に記載されているように、先ず、第1級アミノ基を有する化合物を出発物質とし、そのアミノ基に2当量のメチルアクリレートを反応させ(マイケル付加反応)、窒素分枝部を有する2官能のメチルエステル化合物とする。次に、メチルエステルに対し1級アミノ基を有するジアミン化合物の一方を反応させ(エステル/アミド交換反応)、他方の1級アミノ基を残す(G1)。次いで、2当量のメチルアクリレートとの反応により、メチルエステルに対し1級アミノ基を有するジアミン化合物の一方を反応させ、他方の1級アミノ基を残す反応を3度繰り返して(G2→G3→G4)合成する方法などが挙げられる。
前記デンドリマーの製造方法においては、出発物質として、アンモニアのほか、1級アミノ基、アルコール、フェノール、チオール、チオフェノール、及び、2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する化合物を用いてもよい。
【0035】
前記デンドリマーのうち、分岐構造を有するπ共役ポリアリールアゾメチン骨格を含むデンドリマーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の方法などが挙げられる。
例えば、K.Yamamoto et al;J.Am.Chem.Soc.123巻,第4414頁(2001年)に記載されているように、先ず、4,4’−ジアミノベンゾフェノンのアミノ基と2当量のベンゾフェノンのケトンとの反応生成物(G2)を得る。次いで、4,4’‐ジアミノベンゾフェノンのアミノ基と2倍量のG2のケトンとの反応生成物(G3)を得る。更に同様に、4,4’‐ジアミノベンゾフェノンのアミノ基と2倍量のG3のケトンとの反応生成物(G4)を得た後、2個のアミノ基を含有する化合物と2倍量のG4との反応により合成する方法などが挙げられる。
前記分岐構造を有するπ共役ポリアリールアゾメチン骨格を含むデンドリマーとしては、芳香環以外で分岐した構造であるのが好ましい。
なお、前記デンドリマーは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0036】
前記デンドロンとしては、例えば、以下のデンドロン(1)から(4)に示すものが好適に用いられる。これらの中でも、粒径が均一で、かつ小さい、単分散状態の複合粒子を製造するためには、フォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロン、即ち、前記デンドロン(1)及び(3)のデンドロンが好ましい。この場合、1個の前記金属粒子前駆体を、複数のフォーカルサイトのメルカプト基が捕捉するため、得られる複合粒子は逆ミセルとなり、樹脂等に対する分散性にも優れる。更に、自己集積性により容易に配列化することができ、シャープな粒度分布となる。
【0037】
−デンドロン(1)−
【化9】

【0038】
−デンドロン(2)−
【化10】

【0039】
−デンドロン(3)−
【化11】

【0040】
−デンドロン(4)−
【化12】

【0041】
前記デンドロンを合成する方法としては、例えば、前記デンドロン(1)を合成する場合には、3,5−ビス〔3,5−ビス(ベンジロキシ)ベンジロキシ〕ベンジルブロミドと、チオウレアと、極性溶剤とを混合攪拌し、更に水酸化ナトリウム水溶液を添加し、希塩酸等でpHを2〜3に調整した後、酢酸エチルで抽出する方法などが挙げられる。
なお、前記デンドロンは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0042】
前記デンドロンにおけるフォーカルサイトの位置としては、前記デンドロンの分岐鎖中に存在していてもよい。
【0043】
前記ハイパーブランチポリマーとしては、例えば、以下のハイパーブランチポリマー(1)から(2)に示すものが好適に用いられる。
【0044】
<ハイパーブランチポリマー(1)>
【化13】

【0045】
<ハイパーブランチポリマー(2)>
【化14】

【0046】
前記ハイパーブランチポリマーの製造方法としては、例えば、M.Suzuki et al;Macromolecules,25巻,7071頁(1992)、同31巻,1716頁(1998)に記載されているように、一級アミンを求核成分とし、パラジウム触媒による環状化合物の開環重合による合成方法等が挙げられる。
なお、前記ハイパーブランチポリマーは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
【0047】
前記樹状分岐分子(特にデンドリマー)にはフォーカルサイト以外の、前記金属粒子前駆体と相互作用する部位を有しないことが好ましい。即ち、前デンドリマー(1)〜(8)のように内部に金属粒子前駆体のフォーカルサイトを有し、表面には前記金属粒子前駆体と相互作用する部位を有しないものについてはそのままでも支障はないが、前記フォーカルサイト以外にも多数の前記金属粒子前駆体と相互作用する部位を有するものは、前記フォーカルサイト以外の金属粒子前駆体と相互作用する部位に対して、相互作用能力(金属粒子前駆体が金属イオンの場合には、配位能力)の小さい置換基を導入して、前記フォーカルサイト以外の金属粒子前駆体と相互作用する部位を有さなくすることが好ましい。即ち、樹状分岐分子におけるフォーカルサイトと、金属粒子前駆体との相互作用力の方が、該樹状分岐分子における該フォーカルサイト以外の部位と、金属粒子前駆体との相互作用力よりも大きいことが好ましい。また、前記相互作用能力の小さい置換基は樹状分岐分子の表面領域より大きいものが好ましい。例えば、樹状分岐分子の分岐の先端を水素原子を含むアミノ基とし、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルビニルスルホン、フェニルビニルスルホン、等と反応させて、相互作用力の小さい置換基を導入する。
前記配位能力の小さい置換基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、置換又は無置換のアルキル基、などが挙げられる。
【0048】
なお、前記デンドリマーの表面にフェニル基、又はベンジル基のようなベンゼン環を有する硬い置換基を導入した場合には、前記デンドリマー及び粒子含有デンドリマーの耐熱性、剛直性、及び光捕集能が高くなり、このような性能を必要とする用途に好適に用いることができる。
【0049】
<金属粒子前駆体>
前記金属粒子前駆体としては、例えば、金属イオンが好適である。
前記金属イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、周期律表の3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素、3B族元素、6B族元素、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上併用して使用してもよい。
これらの中でも、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素、及び、アクチノイド系列の元素の少なくともいずれかの金属と白金との合金、並びに、白金の少なくともいずれかが好ましい。
【0050】
前記金属粒子前駆体の添加量としては、前記樹状分岐分子が分子鎖中にフォーカルサイトを有する場合には、添加する金属粒子前駆体の数が、前記樹状分岐分子のフォーカルサイトの数以下であることが好ましい。これにより、樹状分岐分子に捕捉されていない過剰の金属粒子前駆体を除去する操作なしに、効率よく粒子を形成することができる。
また、添加する金属粒子前駆体の数が、前記樹状分岐分子のフォーカルサイトの数を超えるときには、樹状分岐分子のフォーカルサイトに捕捉されていない過剰の金属粒子前駆体を取り除いた後、該フォーカルサイトに捕捉された前記金属粒子前駆体を粒子に変換することが好ましい。この場合には、前記フォーカルサイト分の粒子からなる種粒子を形成させることができ、粒子サイズ及び組成の実質的に均一な粒子を形成することができる点で好ましい。なお、添加する金属粒子前駆体の数が、前記樹状分岐分子のフォーカルサイトの数と等量の場合にも粒子サイズ及び組成の実質的に均一な粒子を形成することができる点で好ましい。
【0051】
前記樹状分岐分子のフォーカルサイトのすべてに金属粒子前駆体を捕捉させる手段としては、樹状分岐分子が分岐中にフォーカルサイトを有する場合には、(1)樹状分岐分子におけるフォーカルサイトと等量の金属粒子前駆体を添加する方法、(2)樹状分岐分子におけるフォーカルサイトより過剰の金属粒子前駆体を加え、過剰の金属粒子前駆体を除去(例えば、透析)する方法、などが挙げられる。
【0052】
なお、前記金属粒子前駆体1個を、前記フォーカルサイト1個が捕捉する態様だけでなく、前記金属粒子前駆体1個を、2個以上の前記フォーカルサイトが捕捉する態様であってもよい。
【0053】
前記触媒の製造方法としては、前記複合粒子形成工程において、樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを混合する場合には、両液を同時に滴下し、混合することが、粒径分布の小さい均一な複合粒子を形成する観点から好適である。この場合、前記樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを略等量で混合することが好ましい。また、前記樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液を加熱しながら混合することが好ましく、加熱温度は、通常15〜90℃である。
前記両液を入れ、滴下する容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリンジ、シリンジとチューブとの組み合わせ、Y字状のマイクロチューブ、マイクロリアクター、などが挙げられる。
前記両液の送液は、手動、シリンジポンプ、その他の手段、などが挙げられ、前記両液を連続及び間欠の少なくともいずれかの方法で送液することが好ましく、間欠で送液する場合には、混合効率が向上するので特に好ましい。
【0054】
ここで、樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液との混合方法の一例について具体的に説明する。例えば、図1に示すように、デンドリマーを含む液をシリンジAに入れ、金属粒子前駆体を含む液をシリンジBに入れ、両シリンジを同時に押し出し、ビーカー中に同時に一定のスピードで滴下し、撹拌する。前記送液は、手動、シリンジポンプ、などで行うことができ、滴下速度は、通常0.05〜10ml/minである。なお、図1において、シリンジの先端にチューブを取り付け、該チューブを加熱するようにしても構わない。
【0055】
また、図2に示すように、Y字状の流路に組み立てたチューブを用い、デンドリマーを含む液をA方向から、金属粒子前駆体を含む液をB方向から、送液し、ビーカー中に同時に一定のスピードで滴下し、撹拌する。前記送液は、手動、シリンジポンプ、などで行うことができる。A、B方向からの送液は連続及び間欠のいずれであってもよく、A方向と、B方向とを間欠で送液することで、デンドリマーを含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを効率よく均一に混合することができる。
なお、図2のY字状の流路は、チューブ以外にも、金属、ガラス、シリコン等の基板上に流路を形成したものであってもよい。Y字状の流路におけるA、Bの混合部〜Cまでを加熱しても構わない。加熱温度は、通常15〜90℃が好ましい。滴下速度は、通常0.05〜10ml/minが好ましい。
【0056】
本発明の触媒の製造方法により製造される複合粒子は、粒子サイズが一定であり、かつ粒子間の組成が実質的に均一である単分散粒子であり、粒子の粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1nm〜500nmが好ましく、0.3nm〜100nmがより好ましく、0.3nm〜10nmが更に好ましい。なお、粒子の大きさは、粒子の形状が球状である場合には直径を意味し、棒状の場合には長辺を意味する。また、粒子の粒度分布が0〜200nmまで狭くすることができる。
【0057】
本発明の触媒は、前記複合粒子を含有してなり、粒径及び粒度分布が小さく、分散安定性が高いので、有機合成用触媒、燃料電池、ボタン電池、ガス拡散電極、等に用いられ、これらの中でも、燃料電池の電極用触媒として特に好適に用いられる。
【0058】
(電極)
本発明の電極は、触媒層と、基板とを有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0059】
前記触媒層は、本発明の前記触媒、カーボン、及びバインダー樹脂を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0060】
前記カーボンとしては、具体的には、Cabot社の商品名Vulcan XC−72R、XC−72、或いはGulf−oil社の商品名Shawinigan Blackとして市販されているアセチレンブラック、面間隔、密度及び結晶子サイズの規定された炭素材料(特開昭62−122066号公報、特開平2−66856号公報、特開平3−245473号公報等参照)、天然黒鉛と人造黒鉛の混合物(特開平5−290844号公報参照)、気相成長炭素材料(特開昭63−24555号公報、特開昭63−13282号公報、特開昭63−58763号公報、特開平6−212617号公報等参照)、ピッチ焼成により合成されたメゾフェース炭素材料(特開平5−307957号公報、特開平5−307958号公報、特開平7−85862号公報、特開平8−315820号公報等参照)、被覆層を有する黒鉛(特開平6−84516号公報等参照)、更には、フェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂の焼成体、水素原子残存のポリアセン材料等の炭素材料が挙げられる。
【0061】
ここで、Vulcan XC−72R等の導電性カーボン粉末担体は、不活性ガス雰囲気下又は真空中で高温加熱処理することにより、全体的又は部分的にグラファイト化処理(黒鉛化処理)するのが好ましい。これにより、高温の酸性電解質と酸素等の酸化剤が共存する腐食性の高い条件下での電極触媒担体としての耐蝕性を向上させることができる。また、前記高温加熱処理した担体材料は、一般に60〜250m/gのBET表面積を有する。
【0062】
前記バインダー樹脂としては、撥水性のものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロチレン、ポリフルオロエチレンプロピレン、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、ポリビニルピロリドン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン等のポリマーが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記バインダー樹脂の前記触媒層における含有量としては、1〜60質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0063】
−基板−
前記基板としては、導電性であればその大きさ、形状、材料などに特に制限はないが、耐酸性を有するものが好ましく、公知の多孔質基板が総て好適に用いられる。
【0064】
前記電極の製造方法としては、特に制限はないが、以下の方法等が挙げられる。例えば、導電性カーボン粉末担体を高温加熱処理した後、該導電性カーボン粉末と、金属系粒子を包含した樹状分岐ポリマーとを混合し、これらを、撥水性の結着剤を含む水性分散液と共に混練し、多孔質基板上に塗布して形成する方法等が挙げられる。
【0065】
前記塗布の方法としては、特に制限はないが、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法、スクイーズ法等が挙げられる。これらの中でも、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法等が好ましい。該塗布の速度としては、特に制限はないが、0.1〜100m/分の速度が好ましい。この際、合剤の溶液物性、乾燥性に合わせて塗布方法を選定することにより、良好な表面状態が得られる。
【0066】
前記塗布の後、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線及び低湿風等により、乾燥・脱水することができる。これらの方法は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。該乾燥の温度としては、80〜350℃が好ましく、100〜250℃がより好ましい。前記乾燥等の後、プレスするのが好ましい。該プレスの方法としては、一般に採用されている方法を総て好適に用いることができるが、特に、カレンダープレス法等が好ましい。プレスの際のプレス圧としては、特に制限はないが、0.2〜3t/cmが好ましい。カレンダープレス法におけるプレス速度としては、0.1〜50m/分が好ましく、プレス温度としては室温〜200℃が好ましい。
【0067】
前記本発明の電極において、前記触媒層の塗布量としては、電極の高活性化及び長寿命化を図る点から、金属系粒子量で0.1〜0.5mg/cmが好ましい。
【0068】
前記電極は、高活性かつ長寿命であることから、特に、リン酸型燃料電池や固体高分子型燃料電池等における電極のほか、ボタン電池における電極、ガスセンサ用電極、電解用電極等の、一般のガス拡散電極としても有用である。該電極としては、アノード電極として用いられるのが好ましい。又、バインダー樹脂等により、触媒層を、導電性の多孔質基板に結着させると共に、触媒層において、水素及び酸素等の反応ガスや水等の生成ガスに対する充分なガス拡散性を付与することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
−触媒(複合粒子)の調製−
50ml三角フラスコを使用して、15mMのK〔PtCl〕水溶液10.0ml(15.0×10−5モル)を20ml滴下ロートに移した。0.5mMのデンドリマー〔商品名:Starburst(ポリアミドアミン型デンドリマー(PAMAM)、Aldrich社製、第4世代、表面に64個のOH基を有する)〕の水溶液5.0mlを別の50ml三角フラスコに入れた後、マグネティックスターラーで攪拌しながら、白金イオン溶液を室温で5分間かけて滴下した後、40℃にて4時間攪拌した。
白金イオン−デンドリマー錯体/水について、窒素原子量を元素分析(パーキンエルマー社製、2400)と、白金イオン量を原子吸光分析法(株式会社日立製作所製、Z5010)で測定し、白金イオン量/N原子量の比が60/62であることを確認した。
【0071】
得られた溶液のUVスペクトルを測定したところ、260nmに、前記ポリアミドアミン型デンドリマーの水溶液及びK〔PtCl〕水溶液にはない新たな吸収が観察された。
反応溶液を洗浄したPETベース上に塗布・乾燥したものを試料とし、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を測定したところ、K〔PtCl〕水溶液におけるPt−4f7/2の化学シフトの73.0eVが72.5eVに変化した。また、ポリアミドアミン型デンドリマーのN−1sの化学シフトの398.4eVが399.3eVに変化したことを確認した。
【0072】
(実施例2)
−フォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロンの調製−
3,5−Bis〔3,5−bis(benzyloxy)benzyloxy〕benzyl Bromide 1.61g(2.0mmol)、チオウレア0.18g(2.4mmol)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)10mlを混合し、室温で一晩攪拌して反応混合物を得た。得られた反応混合物に10質量%水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加し、室温で1時間攪拌を行った。次いで、該攪拌溶液を、希塩酸を用いてpHが2〜3になるように調整し、酢酸エチルにより抽出を行った。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムにより乾燥し、溶媒を留去して、下記式で示されるフォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロン1.38gを油状物として得た(収率92%)。
なお、前記フォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロンは、重クロロホルムを溶媒としてH−NMRスペクトルを測定して同定した。
【0073】
【化15】

【0074】
−触媒(複合粒子)の調製−
前記フォーカルサイトにメルカプト基を有するデンドロン2.5mg(7.4mmol)を酢酸エチル5mlに溶解させた溶液に、HPtCl 20.0mg(58.8mmol)をイオン交換水5mlに溶解させた溶液を添加し、室温で5分間攪拌した。この溶液に、NaBH 22.8mg(600mmol)をイオン交換水5mlに溶解させた溶液を均一に添加し、室温で5分間撹拌することにより、デンドロンが配位した白金複合粒子を得た。
得られた白金複合粒子を透過電子顕微鏡(TEM)観察した結果、白金ナノ粒子間にデンドロン2分子に相当するスペースが認められた。このことから、白金ナノ粒子がデンドロン分子により被覆されていることが確認できた。
【0075】
(調製例1)
−カーボン担持の電極触媒の調製−
100m/gの比表面積を有する熱処理済み導電性カーボンブラック(Cabot社製、Vulcan XC−72R)9.8gを、実施例1のPt金属含有デンドリマーの水分散物と混合した後、窒素気流中において95℃にて16時間乾燥し、カーボン担持の電極触媒を調製した。
【0076】
(調製例2)
−カーボン担持の電極触媒の調製−
100m/gの比表面積を有する熱処理済み導電性カーボンブラック(Cabot社製、Vulcan XC−72R)9.8gを、実施例2のPt金属含有デンドロンの水分散物と混合した後、窒素気流中において95℃にて16時間乾燥し、カーボン担持の電極触媒を調製した。
【0077】
(調製例3)
−カーボン担持の電極触媒の調製−
100m/gの比表面積を有する熱処理済み導電性カーボンブラック(Cabot社製、Vulcan XC−72R)8.1gを、氷酢酸0.4gを含有するイオン交換水150ml中でスラリー化した。また、Pt 0.9gをHPt(OH)として60mlの水溶液中に溶解し、攪拌しながら、前記カーボンスラリーと混合した後、5%のギ酸水溶液50gを還元剤として徐々に添加しながら、スラリー温度を約95℃まで徐々に上昇させた。次いで、95℃にて30分間保持した後、室温まで放冷し、ろ過後イオン交換水で洗浄したろ過ケーキを、窒素気流中において95℃にて16時間乾燥させた。以上により、カーボン担持の電極触媒を調製した。
【0078】
(実施例3)
−燃料電池用電極の作製−
調製例1によって得られた電極触媒をポリテトラフルオロエチレンの水性分散液(Dupont社製、TFE−30)に、乾燥質量比50:50の割合で混練した。予め撥水化処理したグラファイト紙の支持材上に、ブレードコーターを使って塗布した後、窒素気流中で室温にて一夜乾燥した。更に、窒素気流中250℃にて15分間乾燥後、ローラープレス機により圧縮成型して燃料電池用電極を作製した。
【0079】
(実施例4)
−燃料電池用電極の作製−
調製例2によって得られた電極触媒を、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液(Dupont社製、TFE−30)に、乾燥質量比50:50の割合で混練した。予め撥水化処理したグラファイト紙の支持材上に、ブレードコーターを使って塗布した後、窒素気流中で室温にて一夜乾燥した。更に、窒素気流中250℃にて15分間乾燥後、ローラープレス機により圧縮成型して電極を作製した。
【0080】
(比較例1)
−燃料電池用電極の作製−
調製例3によって得られた電極触媒をポリテトラフルオロエチレンの水性分散液(Dupont社製、TFE−30)に、乾燥重量比50:50の割合で混練した。予め撥水処理したグラファイト紙の支持材上に、ブレードコーターを使って1cm当たり0.01mgのPtを含むように調製した量を塗布した後、窒素気流中で室温にて一夜乾燥した。更に、窒素気流中250℃で15分間乾燥後、ローラープレス機により圧縮成形して電極を作製した。
【0081】
<性能評価>
得られた実施例3〜4及び比較例1の各燃料電池用電極を各々アノードとし、公知のカソードと組み合わせて小型セル(電極面積30cm)を作製した。得られたセルを用いて、温度160℃、ガス利用率Uf=80%、Ua=60%にて発電試験を行ない、定格運転時(i=200mA/cm)において、アノード側の反応ガスを、標準ガスから3%COを含むガスに切り替え、セル電圧の低下δVPOIS.(mV;CO被毒による電圧損)を測定することによりCO被毒特性を評価した。その結果、実施例3及び4の電極を用いた燃料電池は、いずれも比較例1の燃料電池に比べて、CO被毒による電圧損が小さかった。このことから、実施例3及び4の電極を用いた燃料電池は、いずれも比較例1の燃料電池に比べて高い触媒活性を有し、かつ長寿命であることが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の触媒は、高い触媒活性を有し、燃料電池用として好適に用いられる。
本発明の触媒を用いた電極は、高活性かつ長寿命であることから、例えば、リン酸型燃料電池や固体高分子型燃料電池等における電極のほか、ボタン電池における電極、ガスセンサ用電極、電解用電極等のガス拡散電極としても好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、樹状分岐分子を含む液と金属粒子前駆体を含む液を同時に添加する方法の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、樹状分岐分子を含む液と金属粒子前駆体を含む液を同時に添加する方法の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させてなる複合粒子を含有することを特徴とする触媒。
【請求項2】
金属粒子前駆体が、金属イオンである請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
金属イオンが、周期律表の3A族元素、4A族元素、5A族元素、6A族元素、7A族元素、8族元素、1B族元素、2B族元素、3B族元素及び6B族元素から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
金属イオンが、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、ランタノイド系列の元素、及び、アクチノイド系列の元素の少なくともいずれかの金属と白金との合金、並びに、白金の少なくともいずれかである請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
金属粒子前駆体を結合乃至内包する樹状分岐分子のサイトが、金属元素捕捉サイトである請求項1から4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
樹状分岐分子が、デンドリマー、デンドロン及びハイパーブランチポリマーから選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
樹状分岐分子が、他の材料の一部に含まれている請求項1から6のいずれかに記載の触媒。
【請求項8】
樹状分岐分子が、ベンゼン環を含む請求項1から7のいずれかに記載の触媒。
【請求項9】
樹状分岐分子の分子量が200以上である請求項1から8のいずれかに記載の触媒。
【請求項10】
樹状分岐分子の世代数が、第1世代以上である請求項1から9のいずれかに記載の触媒。
【請求項11】
複合粒子の体積平均粒径(D50)が、0.1〜500nmである請求項1から10のいずれかに記載の触媒。
【請求項12】
燃料電池の電極用として用いられる請求項1から11のいずれかに記載の触媒。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の触媒を製造する方法であって、樹状分岐分子に金属粒子前駆体を結合乃至内包させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程を含むことを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項14】
樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを同時に混合する請求項13に記載の触媒の製造方法。
【請求項15】
樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを略等量で混合する請求項13から14のいずれかに記載の触媒の製造方法。
【請求項16】
樹状分岐分子を含む液と、金属粒子前駆体を含む液とを加熱しながら混合する請求項13から15のいずれかに記載の触媒の製造方法。
【請求項17】
請求項1から12のいずれかに記載の触媒、カーボン、及びバインダー樹脂を含有する触媒層と、基板とを有することを特徴とする電極。
【請求項18】
カーボンの少なくとも一部が、黒鉛化処理されている請求項17に記載の電極。
【請求項19】
電極が、燃料電池用電極、ボタン電池用電極、及びガス拡散用電極のいずれかである請求項17から18のいずれかに記載の電極。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−134774(P2006−134774A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324194(P2004−324194)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】