説明

触媒製造装置及び触媒製造方法

【課題】触媒を含むスラリーから、迅速に触媒を得ることができる装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る触媒製造装置10は、触媒及び液体成分を含むスラリーから液体成分を気化させることによって触媒を製造する装置であって、スラリーの生成及び貯蔵のうち少なくとも一方を行なうための予備重合槽1と、乾燥器5と、予備重合槽1及び乾燥器5を接続するものであり、二重管式熱交換器7a〜7cが設けられた、複数の移送管4a〜4cと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定且つ迅速に、触媒を含むスラリーから触媒を製造する触媒製造装置及び触媒製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、オレフィンの気相重合に用いる触媒として、予備重合用固体触媒の存在下においてオレフィンを予備重合することにより得られる予備重合触媒が用いられている。予備重合触媒の製造方法としては、予備重合用固体触媒を用いてオレフィンをスラリー重合した後、得られたスラリーを乾燥させて、予備重合触媒を得る方法が知られている(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1では、スラリー移送管を介してスラリーを乾燥器に移送する際の、スラリー移送管の温度条件について検討されている。また、特許文献2では、乾燥器へのスラリーの移送を間欠的に行なうとともに、移送停止時及び移送完了後に、不活性ガスをスラリー移送管中に流通させることで予備重合触媒を得る方法が記載されている。
【特許文献1】特開2006−206797(2006年8月10日公開)
【特許文献2】特開2006−206796(2006年8月10日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の、スラリーから予備重合触媒を得る方法では、実用するに際して必ずしも十分ではない場合がある。スラリーを乾燥させる際に、移送管の温度が高すぎると触媒の活性が失活する虞がある。しかし、温度を低く設定すると、乾燥し難い温度まで下がりやすくなり、温度を上げるために移送を中断する必要が生じる場合がある。これらの理由から、従来の方法より迅速に触媒を製造できる新たな方法が要求されている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、触媒を含むスラリーから、迅速に触媒を得ることができる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る触媒製造装置は、触媒及び液体成分を含むスラリーから液体成分を気化させることによって触媒を製造する装置であって、上記スラリーの生成及び貯蔵のうち少なくとも一方を行なうための第1の容器と、上記スラリーから液体成分を気化させて得られた触媒成分を回収するための第2の容器と、上記第1の容器及び上記第2の容器を接続するものであり、加熱手段が設けられた複数の移送管と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明に係る触媒製造装置では、上記移送管が二重管式熱交換器であることがより好ましい。
【0008】
さらに、本発明に係る触媒製造装置では、上記第1の容器が撹拌機付き反応器であることがより好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る触媒製造装置では、上記第1の容器が予備重合用固体触媒の存在下にオレフィンを予備重合して得られる予備重合触媒を生成するための容器であり、上記触媒が、予備重合用固体触媒の存在下にオレフィンをスラリー重合して得られる予備重合触媒であることがより好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る触媒製造装置では、上記第2の容器がサイクロン型乾燥器であることがより好ましい。
【0011】
また、本発明に係る触媒製造方法は、上述の本発明に係る触媒製造装置を用いて、触媒及び液体成分を含むスラリーから液体成分を気化させることによって触媒を製造する方法であって、(a)複数の上記移送管のうち、一部の移送管を加熱しながら、加熱された当該一部の移送管を用いて上記スラリーを移送する工程と、(b)上記工程(a)を行なう間に、上記工程(a)にてスラリーの移送に用いていない移送管のうちの少なくとも一部の移送管を加熱する工程と、(c)上記工程(a)にてスラリーの移送に用いられ、加熱されている移送管の温度が予め設定された温度より下がった後に、スラリーを移送するための移送管を、上記工程(b)にてスラリーの移送に用いず、且つ加熱し続けていた移送管に切り替える工程と、を含み、上記工程(a)から上記工程(c)を繰り返すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る触媒製造装置及び触媒製造方法によれば、触媒を含むスラリーから、迅速に触媒を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔本発明に係る触媒製造装置〕
本発明の一実施形態について図1に基づいて説明すると以下の通りである。図1は触媒製造装置10の概略構成を模式的に示す図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る触媒製造装置10は、予備重合槽(第1の容器)1、スラリー抜き出し弁2a〜2c、窒素供給弁3a〜3c、移送管4a〜4c、乾燥器(第2の容器)5、ガス排出口6、触媒抜き出し弁9を備えている。
【0015】
予備重合槽1は、予備重合用固体触媒の存在下にオレフィンを予備重合して得られる予備重合触媒を生成するための容器である。予備重合槽1内においては、溶媒及び予備重合用固体触媒の存在下に、単量体(オレフィン)をスラリー重合(予備重合)してスラリー状の予備重合触媒(触媒)を得ることができる。
【0016】
単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のオレフィンを例示できる。
【0017】
溶媒としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルへキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等の従来公知の重合用触媒を例示できる。
【0018】
予備重合用固体触媒としては、例えばオレフィン等の単量体を予備重合するための触媒が挙げられ、より具体的には、チタン、マグネシウム及びハロゲンを含有する触媒、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物等の助触媒成分とメタロセン系化合物とを粒子状単体に担持させてなる触媒、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等の助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる触媒等を例示できる。
【0019】
なお、予備重合の条件、使用できる原料、触媒等に関しては特許文献1及び2を参照するとよい。
【0020】
予備重合槽1には撹拌機が付いている。本発明に係る触媒製造装置が備える第1の容器は、触媒を含むスラリーの生成及び貯蔵のうち少なくとも一方を行なうための容器であればよいが、第1の容器が、予備重合を行なうことにより、予備重合触媒を含むスラリーの生成を行なうための容器である場合は、本実施の形態のように、撹拌機付きの反応器であることがより好ましい。撹拌機を付けることで、好適に、予備重合用固体触媒を溶媒及び単量体に混合して予備重合を行ない、予備重合触媒が溶媒に混合されてなるスラリーを得ることができる。
【0021】
スラリー抜き出し弁2a〜2cは、予備重合槽1内において形成されたスラリーを抜き出すための弁である。スラリー抜き出し弁2a〜2cは、それぞれ移送管4a〜4cにおける予備重合槽1の近傍に設けられている。
【0022】
窒素供給弁3a〜3cは、移送管4a〜4c内に窒素を導入するための弁である。窒素供給弁3a〜3cを開くと、それぞれ矢印3a’〜3c’の方向に窒素が供給される。これにより、窒素を用いて移送管4a〜4c内をブローすることができる。
【0023】
移送管4a〜4cは、予備重合槽1から得たスラリーを乾燥器5内に移送するための管である。スラリー抜き出し弁2a〜2cが開かれると、それぞれ移送管4a〜4c内を矢印4a’〜4c’の方向にスラリーが移送される。
【0024】
移送管4a〜4cは、それぞれ、二重管式熱交換器(加熱手段)7a〜7c、温水供給口8a〜8cを備えている。また、移送管4a〜4cは、その一端が乾燥器5の側面に接続されており、他方の一端が予備重合槽1の底部に接続されている。なお、本実施の形態では移送管の本数が3本の場合について説明するが、本発明に係る触媒製造装置が備える移送管の本数は複数であればよく、乾燥の対象となるスラリーの性質等に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
二重管式熱交換器7a〜7cは、それぞれ移送管4a〜4c内を、温水を用いて加熱することで、その中を移送されているスラリーを乾燥させるためのものである。加熱する温度としては、乾燥させる対象のスラリーに含まれる予備重合触媒の種類、濃度等に応じて適宜設定すればよく、例えば、15℃以上、80℃以下がより好ましく、25℃以上、40℃以下がさらに好ましい。
【0026】
このように、本発明に係る触媒製造装置は、加熱手段が設けられた移送管を複数本備えている。これにより、スラリーの移送に用いていた移送管の温度が下がったときに、スラリーを移送するための移送管を他の移送管に切り替えることで、スラリーを所望の温度で加熱して乾燥させ続けることができる。ひいてはスラリーの液体成分を除去して、予備重合触媒を得ることができる。従来、移送管の温度調整は困難な作業であった。これはスラリーを加熱しすぎると触媒の活性が失われる虞があり、加熱が弱いと十分にスラリーを乾燥できないことがあったためである。そのため、移送を間欠的に行ない、移送を中断している間に移送管の温度を上げる等の措置を必要としていた。しかしながら本発明によれば、加熱手段が設けられた移送管を複数備えることにより、迅速に触媒を得ることができる。
【0027】
また、本発明に係る触媒製造装置が備える移送管は、容器及び乾燥器を接続するものであり、加熱手段が設けられていればよいが、当該加熱手段として二重管式熱交換器を例示できる。
【0028】
温水供給口8a〜8cはそれぞれ二重管式熱交換器7a〜7cに温水を供給するためのものである。具体的には、それぞれ矢印8a’〜8c’の方向に温水が供給され、二重管式熱交換器7a〜7c内を通った後、矢印8a’’〜8c’’の方向に温水が排出される。
【0029】
乾燥器5は、ガス排出口6、触媒抜き出し弁9を備えている。乾燥器5は、移送管4a〜4cから供給される乾燥されたスラリー(移送管4a〜4c内にて十分に乾燥が進めば、スラリーではなく、触媒及びガスの混合物となっている)を乾燥させるものである。本実施形態において乾燥器5はサイクロン型乾燥器である。本発明に係る触媒製造装置が備える第2の容器はスラリーを乾燥させたものを回収するための容器であれよいが、乾燥器であることがより好ましく、本実施の形態のようにサイクロン型乾燥器を用いることができる。また、ガス排出口6は乾燥器5内にて発生したガスを排出するためのものである。具体的には矢印6’の方向にガスが排出される。触媒抜き出し弁9はスラリーを乾燥することで得られた予備重合触媒を回収するための弁である。触媒抜き出し弁9を開くことで、矢印9’の方向に予備重合触媒を取り出すことができる。
【0030】
〔本発明に係る触媒製造方法〕
本発明に係る触媒製造方法は、本発明に係る触媒製造装置を用いて、触媒が分散媒に混合されてなるスラリーから、上記分散媒を気化させて上記触媒を製造する方法であって、(a)複数の上記移送管のうち、一部の移送管を加熱しながら、加熱された当該一部の移送管を用いて上記スラリーを移送する工程と、(b)上記工程(a)を行なう間に、上記工程(a)にてスラリーの移送に用いていない移送管のうちの少なくとも一部の移送管を加熱する工程と、(c)上記工程(a)にてスラリーの移送に用いる、加熱された移送管の温度が予め設定された温度より下がった後に、スラリーを移送するための移送管を、上記工程(b)にてスラリーの移送に用いず、且つ加熱し続けていた移送管に切り替える工程と、を含み、上記工程(a)から上記工程(c)を繰り返す方法である。
【0031】
本発明に係る触媒製造方法は、上述した本発明に係る触媒製造装置の一実施形態である触媒製造装置10を用いれば好適に実施できる。具体的には次の通りである。
【0032】
まず、移送管4a〜4cのうち、一部の移送管(例えば移送管4a)を加熱しながら、移送管4aを用いてスラリーを移送するとともに、スラリーの移送に用いていない移送管4b及び4cうちの少なくとも一部の移送管を加熱し続ける(工程(a)に相当)。このとき、移送管4b及び4cを、共に加熱し続けてもよいし、いずれか一方を加熱し続けてもよい(工程(b)に相当)。ここでは、移送管4b及び4cのいずれも加熱し続ける場合について説明する。
【0033】
なお、移送管4aを用いてスラリーを移送するためには、予備重合槽1において予備重合することによってスラリーを製造した後、スラリー抜き出し弁2aを開けばよい。
【0034】
次に、移送管4aの温度が予め設定された温度より下がった後に、スラリーの移送に用いる上記移送管を、移送管4b及び4cのうちのいずれかに切り替える(工程(c)に相当)。例えば、移送管4bに切り替える場合、抜き出し弁2aを閉じ、抜き出し弁2bを開く。また、この後、移送管4aは予め設定された温度以上になるように加熱し続けてもよい。これにより、移送管4bを用いてスラリーを移送するとともに(工程(a)に相当)、スラリーの移送に用いてない移送管4a及び4cを加熱し続けることとなる(工程(b)に相当)。
【0035】
移送管4bの温度が予め設定していた温度より下がると、スラリーの移送に用いる移送管を移送管4a及び4cのいずれかに切り替えればよい(工程(c)に相当)。
【0036】
このように工程(a)から工程(c)を繰り返すことにより、迅速に触媒を得ることができる。
【0037】
なお、移送管4a〜4cのうち、移送に用いる移送管について、対応するスラリー抜き出し弁2a〜2cを一旦開いて閉じた後、対応する窒素供給弁3a〜3cを開いて窒素によりブローすることで移送管4a〜4c内のスラリーを乾燥器5方向に送ってもよいし、乾燥器5内を減圧することで、移送管4a〜4c内のスラリーを乾燥器5方向に送ってもよい。
【0038】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0039】
〔実施例1〕
本実施例では、上述した触媒製造装置10を用いて触媒を製造した。
【0040】
(A−1)スラリー状の予備重合触媒の準備
予め窒素置換した予備重合槽1にて、特開2006−206797[実施例1]の(1)に記載された予備重合方法と同じ方法によって予備重合を実施した。
【0041】
次に、予備重合槽1内の圧力を0.44MPaGへ降圧して、さらに予備重合槽1内の溶媒の温度を43℃へ降温した。これにより、ブタン溶媒中の固体成分(予備重合触媒)が123g/リットルであるスラリーを得た。
【0042】
(A−2)スラリーの移送及び乾燥
二重管式熱交換器7a〜7cの伝熱面積は、それぞれ、4.02m、4.20m及び4.30mであった。これらに通す温水は80℃とした。
【0043】
予備重合槽1内の圧力を0.44MPaGとし、乾燥器5内の圧力を3.5kPaGとして、移送管4a〜4cを通じて、予備重合槽1の底部から乾燥器5内へスラリーを移送した。この際、(A−I)〜(A−IV)の操作を繰り返し実施した。
(A−I)スラリー抜き出し弁2aを2秒間開けた後これを閉める。
(A−II)20秒間の間隔を開け、2つ目の移送管4bのスラリー抜き出し弁2bを2秒間開けた後、これを閉める。
(A−III)さらに20秒間の間隔を開け、3つ目の移送管4cのスラリー抜き出し弁2cを2秒間開けた後、これを閉める。
(A−IV)さらに20秒間の間隔を開ける。
【0044】
その結果、抜き出し中における乾燥器5の供給部(乾燥器5における移送管4a〜4cとの接続部付近)の温度は22〜32℃に保たれ、スラリーの移送の途中において、移送管4a〜4cが閉塞するなどの異常は発生しなかった。また、6.5時間で、スラリー全量の抜き出しが完了した。この時間は、後述する比較例に比べ5.0時間短縮されたものである。
【0045】
抜き出し完了後、移送管4a〜4c内をブローするため、予備重合槽1内へブタンを投入して、乾燥器5の供給部の温度を16〜50℃として、4.7時間、予備重合槽1から乾燥器5へ当該ブタンを移送し、ブローを実施した。その後、窒素供給弁3a〜3cの各々を開け、圧力3.7MPaGの窒素にて移送管4a〜4cを数回ブローした。
【0046】
(A−3)移送管及び乾燥器内の確認
上記(A−2)の作業完了後、乾燥器5の中の予備重合触媒を排出したところ、後述の比較例1のように排出部から凝集物を除去する必要無く、排出が完了した。さらに排出が完了した後、乾燥器5及び移送管4a〜4cを点検したところ、乾燥器5の内壁面及び移送管4a〜4cともに、ほとんど予備重合触媒の付着は確認されなかった。
【0047】
〔比較例1〕
本比較例1では、図2に示す触媒製造装置20を用いた。図2は触媒製造装置20の概略構成を模式的に示す図である。
【0048】
図2に示すように、触媒製造装置20は、予備重合槽21、スラリー抜き出し弁22、窒素供給弁23、移送管24、乾燥器25、ガス排出口26、触媒抜き出し弁29により構成した。なお、予備重合槽21には撹拌機を備え付けた。窒素供給弁23については、開くと矢印23’の方向に窒素が供給されるように設けた。乾燥器25としてはサイクロン型乾燥器を用いた。ガス排出口26については、矢印26’の方向に乾燥器25内のガスを排出するように設けた。触媒抜き出し弁29については、開くと矢印29’の方向に触媒が抜き出されるように設けた。
【0049】
また、移送管24には二重管式熱交換器27を備え付けた。二重管式熱交換器27の伝熱面積は4.02mであった。二重管式熱交換器27は、温水供給口28を介して、矢印28’から28’’の方向に温水を供給されるように設けられた。
【0050】
次に、比較例1にて行なった操作を具体的に説明する。
【0051】
(B−1)スラリー状の予備重合触媒の準備
予め窒素置換した予備重合槽21にて、上記実施例1と同様の方法で予備重合を実施した。予備重合終了後、予備重合槽1内の圧力を1.80MPaGから0.45MPaGへ降圧して、さらに予備重合槽1内の溶媒温度を50℃から43℃へ降温した。これにより、ブタン溶媒中の固体成分(予備重合触媒)が128g/リットルであるスラリーを得た。スラリーの量は実施例1とほぼ同量であった。
【0052】
(B−2)スラリーの移送および乾燥
二重管式熱交換器27に80℃に温度調整された温水を供給した。次に予備重合槽21内の圧力を0.45MPaGとし、乾燥器25内の圧力を3.0kPaGとして、移送管24を介して、予備重合槽21の底部から乾燥器25へスラリー状予備重合触媒成分を移送した。この際、下記(B−I)〜(B−II)の操作を繰り返し行なった。
(B−I)スラリー抜き出し弁22を2秒間開けた後これを閉める。
(B−II)28秒間の間隔を開け、再度スラリー抜き出し弁22を2秒間開ける。
【0053】
その結果、抜き出し開始当初の乾燥器25における供給部(乾燥器25における移送管24との接続部付近)の温度は25℃であったが、抜き出しを繰り返す度に徐々に温度が低下し、抜き出し開始から1.5時間後に乾燥器供給部温度が10℃まで低下した。そのため、一旦上記(B−I)及び(B−II)の操作を停止して、当該操作の停止から1.6時間後、乾燥器25の供給部の温度が37℃まで上昇したことを確認した上で、予備重合槽21から乾燥器25へのスラリーの移送を再開した。スラリーの抜き出し再開から20分後に乾燥器25の上記供給部の温度が27℃まで低下したため、スラリー抜き出し弁22の開時間の間隔を28秒から40秒へ伸ばした。その結果、乾燥器25の上記供給部の温度は23℃まで徐々に低下したものの、最初の抜き出し開始から11.5時間で全量抜き出しが完了した。
【0054】
スラリーの抜き出しが完了した後、移送管24内をブローするため、予備重合槽21へブタンを投入し、乾燥器25の上記供給部の温度を27〜37℃として、4.3時間掛けて予備重合槽21から乾燥器25へ当該ブタンを移送して、ブローした。その後、窒素供給弁3を開け、圧力3.7MPaGの窒素にて移送管24を数回ブローした。
【0055】
(B−3)移送管及び乾燥器内の確認
上記(B−2)の作業が完了した後、乾燥器25の中の予備重合触媒成分を排出しようとしたが、予備重合触媒成分が凝集した状態となっており、一旦触媒抜き出し弁29から凝集物を取り除く必要が生じた。更に排出が完了した後、乾燥器25の中及び移送管24を点検したところ、乾燥器25内には壁面に予備重合触媒成分が多量に付着し、移送管24内にも予備重合触媒成分が多く付着していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る触媒製造装置及び触媒製造方法によれば、迅速に予備重合触媒を製造できるので、オレフィン等の重合に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態である触媒製造装置10の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】比較例1にて用いた触媒製造装置20の概略構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 予備重合槽(第1の容器)
4a、4b、4c 移送管
5 乾燥器(第2の容器)
7a、7b、7c 二重管式熱交換器(加熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒及び液体成分を含むスラリーから液体成分を気化させることによって触媒を製造する装置であって、
上記スラリーの生成及び貯蔵のうち少なくとも一方を行なうための第1の容器と、
上記スラリーから液体成分を気化させて得られた触媒成分を回収するための第2の容器と、
上記第1の容器及び上記第2の容器を接続するものであり、加熱手段が設けられた複数の移送管と、を備えていることを特徴とする触媒製造装置。
【請求項2】
上記移送管が二重管式熱交換器であることを特徴とする請求項1に記載の触媒製造装置。
【請求項3】
上記第1の容器が撹拌機付き反応器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒製造装置。
【請求項4】
上記第1の容器が予備重合用固体触媒の存在下にオレフィンを予備重合して得られる予備重合触媒を生成するための容器であり、上記触媒が、予備重合用固体触媒の存在下にオレフィンをスラリー重合して得られる予備重合触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒製造装置。
【請求項5】
上記第2の容器がサイクロン型乾燥器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の触媒製造装置を用いて、触媒及び液体成分を含むスラリーから液体成分を気化させることによって触媒を製造する方法であって、
(a)複数の上記移送管のうち、一部の移送管を加熱しながら、加熱された当該一部の移送管を用いて上記スラリーを移送する工程と、
(b)上記工程(a)を行なう間に、上記工程(a)にてスラリーの移送に用いていない移送管のうちの少なくとも一部の移送管を加熱する工程と、
(c)上記工程(a)にてスラリーの移送に用いられ、加熱されている移送管の温度が予め設定された温度より下がった後に、スラリーを移送するための移送管を、上記工程(b)にてスラリーの移送に用いず、且つ加熱し続けていた移送管に切り替える工程と、
を含み、上記工程(a)から上記工程(c)を繰り返すことを特徴とする触媒製造方法。

【図1】
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【図2】
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