説明

触感に優れた乳酸系樹脂組成物よりなる成形体

【課題】乳酸系樹脂を含む樹脂組成物からなり、しっとりとした滑らかな触感を発現させた成形体を提供すること。
【解決手段】本発明の成形体は、乳酸系樹脂(A)30〜70重量部と、ポリプロピレン系樹脂(B)70〜30重量部と、該成分(A)および(B)の合計100重量部に対して無機フィラー(C)3〜30重量部とを含む樹脂組成物から形成され、動摩擦係数が0.20〜0.35であることを特徴とする。前記無機フィラー(C)は、マイカ、炭酸カルシウムおよびタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーが好ましく、その平均粒子径が2〜10μmであることがより好ましい。本発明の成形体は自動車部品などに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸系樹脂、ポリプロピレン系樹脂および無機フィラーを構成成分として含む熱可塑性樹脂組成物からなり、動摩擦係数が低く触感に優れた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題への意識が高まっており、化石原料、石油資源の枯渇、二酸化炭素の増大が問題視されている。そのため、従来の汎用プラスチックに代わる環境に優しい樹脂として、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂や植物を原料として合成する樹脂の研究開発が活発に行われている。脂肪族ポリエステルの中でも、優れた成形性を有するポリ乳酸は、とうもろこし等の穀物資源から発酵により得られる乳酸を原料とする植物由来の樹脂として、特に注目されている。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸は、ポリプロピレンなどの汎用樹脂と比較して耐熱性や耐衝撃性などに劣るという欠点を有している。そのため、ポリ乳酸の特性を改善するための様々な試みがなされている(たとえば、特許文献1〜3参照)。このような改良技術を基に、乳酸系樹脂が各種用途に展開されつつある。
【0004】
たとえば、自動車部品などにおいて、従来用いられてきたポリプロピレン系樹脂などの代替として乳酸系樹脂を用いることが検討されている。しかしながら、乳酸系樹脂や従来のポリプロピレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を単独で用いると、いかにもプラスチックという触感であり、偽物(イミテーション)というイメージがあり高級感に欠けるという問題がある。そのため、しっとりとした滑らかな触感を有する成形体が求められている。
【特許文献1】特開平11−116786号公報
【特許文献2】特開平10−251498号公報
【特許文献3】特開平9−169897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、乳酸系樹脂を含む樹脂組成物からなり、しっとりとした滑らかな触感を発現させた成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、乳酸系樹脂、ポリプロピレン系樹脂および無機フィラーを特定の配合割合で含む樹脂組成物を成形することにより、動摩擦係数が低く、しっとりとした滑らかな触感の成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る成形体は、乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および無機フィラー(C)を含む樹脂組成物(D)から形成され、動摩擦係数が0.20〜0.35であることを特徴とする。
【0008】
前記樹脂組成物(D)は、乳酸系樹脂(A)30〜70重量部と、ポリプロピレン系樹脂(B)70〜30重量部と、該成分(A)および(B)の合計100重量部に対して無機フィラー(C)3〜30重量部とを含むことが好ましい。
【0009】
前記無機フィラー(C)が、マイカ、炭酸カルシウムおよびタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーが好ましく、その平均粒子径が2〜10μmであることがより好ましい。
【0010】
本発明の成形体は、乳酸系樹脂(A)30〜70重量部と、ポリプロピレン系樹脂(B)70〜30重量部と、該成分(A)および(B)の合計100重量部に対して無機フィラー(C)3〜30重量部とを含む樹脂組成物(D)を射出成形することにより製造することができ、自動車用部品に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乳酸系樹脂を含む樹脂組成物を用いて、しっとりとした滑らかな触感を有する成形体を得ることができる。したがって、本発明の成形体は、高級感が求められる各種部材に適しており、しかも環境にも優しいという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る成形体について詳細に説明する。
本発明に係る成形体は、乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および無機フィラー(C)を含む樹脂組成物(D)から形成される。
【0013】
〔乳酸系樹脂(A)〕
本発明において、「乳酸系樹脂」とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする重合体および該重合体を主成分とする重合体組成物を意味する。
【0014】
本発明で用いられる乳酸系樹脂(A)は、乳酸単位を少なくとも50モル%以上、好ましくは75モル%以上含有する重合体を主成分とする重合体組成物である。このような乳酸系樹脂(A)は、乳酸の重縮合や乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合によって合成することができ、また、該重合体の性質を著しく損なわない範囲で、乳酸と共重合可能な他のモノマーを共重合させたものや、他の樹脂および添加剤などが混合された組成物でもよい。
【0015】
このような乳酸系樹脂(A)の中ではポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸として、L体もしくはD体の構成成分が高くなると耐熱性等が向上することから、L体もしくはD体の量が、90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、最も好ましくは98モル%以上であることが望ましい。
【0016】
乳酸と共重合可能なモノマーとしては、ヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、カプロン酸等)、脂肪族多価アルコール(例えば、ブタンジオール、エチレングリコール等)および脂肪族多価カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸等)が挙げられる。
【0017】
乳酸系樹脂(A)がコポリマーの場合、コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれの様式でもよい。また、前記コポリマーは、少なくとも一部が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の二官能以上の多価アルコール;キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート;セルロース、アセチルセルロース、エチルセルロース等の多糖類などが共重合されたものでもよい。さらに、少なくとも一部が、線状、環状、分岐状、星形、三次元網目構造などのいずれの構造をとってもよい。
【0018】
乳酸系樹脂(A)は、上記原料を直接脱水重縮合する方法、あるいは、上記乳酸類やヒ
ドロキシカルボン酸類の環状二量体、たとえばラクタイドやグリコライド、またはε−カプロラクトンのような環状エステル中間体を開環重合させる方法により得られる。
【0019】
上記原料を直接脱水重縮合して製造する場合、原料である乳酸類を、または、乳酸類とヒドロキシカルボン酸類とを、あるいは、脂肪族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とを有機溶媒、好ましくはフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除いて実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合する。乳酸系樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは5万〜100万、より好ましくは10万〜50万である。分子量が前記範囲であることにより、耐熱性、耐衝撃強度、強度、成形性および加工性が良好となる。
【0020】
〔ポリプロピレン系樹脂(B)〕
本発明において、「ポリプロピレン系樹脂」とは、構成単位としてプロピレン単位を少なくとも1モル%以上含有するポリオレフィンを意味する。
【0021】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)は、公知の方法、例えば高立体規則性触媒を用いてスラリー重合、気相重合または液相塊状重合により製造されたものを用いることができる。また、重合方式としてはバッチ重合および連続重合のどちらの方式も採用することができる。
【0022】
上記ポリプロピレン系樹脂(B)は、構成単位としてプロピレン単位を少なくとも1%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは75%以上含む。また、他の構成成分としては、エチレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィン、具体的には1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。このようなポリプロピレン系樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
また、上記ポリプロピレン系樹脂(B)は、分岐状オレフィン類、たとえば、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルノルボルナン、アリルノルボルナン、スチレン、ジメチルスチレン、アリルベンゼン、アリルトルエン、アリルナフタレン、ビニルナフタレンなどの単独重合体または共重合体を、予備重合体として0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下含有していてもよい。これらの中では、特に3−メチル−1−ブテンが好ましい。このような分岐状オレフィン類から導かれる予備重合体は、ポリプリピレンの核剤として作用するので、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)を高くすることができるほか、成形性を向上させることができる。
【0024】
上記予備重合体以外の核剤としては、従来知られている種々の核剤、たとえばフォスフェート系核剤、ソルビトール系核剤、芳香族カルボン酸の金属塩、脂肪族カルボン酸の金属塩、ロジン系化合物等の有機系の核剤および/または無機化合物等の無機系の核剤などを特に制限なく用いることができる。具体的には、有機リン酸金属塩である旭電化工業(株)製「NA−11UY」(商標)、ロジン系核剤である荒川化学(株)製「パインクリ
スタルKM160」(商標)などが挙げられる。核剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記核剤は、ポリプロピレン系樹脂(B)中に、通常0〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の量で配合される。
【0025】
上記ポリプロピレン系樹脂(B)は、耐熱劣化を防ぎ、加工安定性および耐久性の向上のために、酸化防止剤および/または脂肪酸の非アルカリ金属塩成分を含有させてもよい。含有方法は特に制限されないが、通常、重合パウダーに混合後、押出機にて溶融混練して含有させることができる。
【0026】
上記酸化防止剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができるが、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤、さらに好ましくは105℃以上の融点を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤である。105℃以上の融点を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、(2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−t−ブチルフェノール])、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。上記酸化防止剤は、ポリプロピレン系樹脂(B)100重量部に対して0.01〜0.5重量部、好ましくは0.03〜0.2重量部の範囲の量で用いることができる。
【0027】
上記脂肪酸の非アルカリ金属塩としては、110℃以上の融点を有する分子量600以上の脂肪酸の非アルカリ金属塩が好ましい。110℃以上の融点を有する脂肪酸の非アルカリ金属塩としては、たとえば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸亜鉛などが挙げられる。上記脂肪酸の非アルカリ金属塩は、ポリプロピレン系樹脂(B)100重量部に対して0.01〜3重量部、好ましくは0.04〜0.5重量部の範囲の量で用いることができる。
【0028】
上記ポリプロピレン系樹脂(B)のDSCで測定した融点(Tm)は、70〜180℃、好ましくは100〜170℃であることが望ましい。
〔無機フィラー(C)〕
本発明で用いられる無機フィラー(C)としては、一般的に公知なものを使用できる。具体的には、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、亜硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、クレー、モンモリロナイト、硫酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中では、マイカ、タルクおよび炭酸カルシウムが好ましく、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃強度が高くなることから、タルクが特に好ましく用いられる。
【0029】
上記無機フィラー(C)の平均粒子径は2〜10μm、好ましくは2.5〜8μmである。このような平均粒子径の無機フィラー、特にタルクを用いることにより、得られる成形体の動摩擦係数を低下させる効果が大きい。
【0030】
〔樹脂組成物(D)〕
本発明の成形体の製造に用いられる樹脂組成物(D)は、上記乳酸系樹脂(A)、ポリ
プロピレン系樹脂(B)および無機フィラー(C)を含有する。各成分の含有量としては、乳酸系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)の合計を100重量部とした場合、乳酸系樹脂(A)の含有量は30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部、特に好ましくは45〜55重量部であり、プロピレン系樹脂(B)の含有量は70〜30重量部、好ましくは60〜40重量部、特に好ましくは55〜45重量部である。また、無機フィラー(C)については、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて適宜添加量を決定することができるが、乳酸系樹脂(A)およびポリプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、好ましくは3〜30重量部、より好ましくは5〜30重量部、特に好ましくは8〜30重量部の範囲の量で用いることが望ましい。各成分の含有量が上記範囲内にあることにより、動摩擦係数の低い成形体、すなわち、しっとりとした滑らかな触感を有する成形体を得ることができる。
【0031】
上記樹脂組成物(D)は、本発明の目的を損なわない範囲内で、たとえば、成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、耐候性、難燃性、スリップ性、耐磨耗性、柔軟性などを向上させるために、各種添加剤を含有してもよい。このような各種添加剤としては、たとえば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、外部離型剤、無機添加剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、顔料、染料、核化剤、滑剤、天然物などが挙げられる。
【0032】
上記樹脂組成物(D)は、公知の手法、たとえばミキサーや押出機などを用いて、上記各成分を均一に混合することにより製造することができる。樹脂組成物(D)の製造は、成形体の形成前に行っても、成形と同時に行ってもよい。成形前に樹脂組成物(D)を製造する場合、樹脂組成物(D)の形状は、ペレット、棒状、粉末などが好ましく、必要に応じて除湿乾燥しておくことが望ましい。
【0033】
〔成形体〕
本発明に係る成形体は、上記樹脂組成物(D)を、公知の方法および装置を用いて成形することにより得られる。
【0034】
たとえば、一般的な射出成形機を用いた射出成形により、120mm×130mm×2mm厚の角板を製造する場合、成形条件としては、シリンダー設定温度が180〜220℃、金型温度が20〜40℃、射出および保圧の合計時間が10秒、冷却時間が10〜20秒である。
【0035】
このようにして得られる成形体は、動摩擦係数が0.20〜0.35、好ましくは0.22〜0.33、特に好ましくは0.24〜0.30であり、しっとりとした滑らかな触感が得られる。また、乳酸系樹脂を用いていることから、環境にも優しい。
【0036】
なお、上記樹脂組成物(D)の性状、成形方法、成形体の形状・大きさなどに応じて、上記成形条件を適宜調整することにより、上記動摩擦係数の成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、特に限定されることなく様々な用途に用いることができる。たとえば、自動車部品、家電材料部品、電気・電子部品、建材部材、土木部材、農業資材、日用品、一般産業用途、レクリエーション用途、医療もしくは衛生用品などが挙げられる。これらの中でも、高級感ある触感が求められている自動車部品などに好適に用いることができる。
【0037】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
なお、動摩擦係数の測定は、(株)インテスコ製「万能材料試験機2001」を用い、各実施例で作製した2mm厚の角板(120mm×130mm)の上にステンレス製の板(3cm×3cm:荷重50g)を乗せ、500mm/minの一定速度で滑らせ、動摩擦係数を測定した。
【0039】
<実施例1>
乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸(A−1)[重量平均分子量:16万、比重:1.25、L体/D体=98.7/1.3]50重量部と、ポリプロピレン系樹脂(B)としてポリプロピレン(B−1)[230℃測定MFR:25g/10分、比重:0.91、ノルマルデカンに可溶な成分量:8%]50重量部と、無機フィラー(C)としてタルク(C−1)[富士タルク工業株式会社製;平均粒子径:4.2μm、見掛け密度:0.13g/ml、白色度:98.5%]10重量部とを、ヘンシェルミキサーで均一にブレンドし、二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM35BS」)を用いて、シリンダー温度200℃で溶融混練した後、ペレット化して樹脂組成物(D)を得た。得られたペレットを除湿乾燥機を用いて80℃で8時間乾燥した。次に、得られたペレットを、射出成形機(東洋機械金属株式会社製「Ti−80G2」)を用いて、シリンダー設定温度200℃、金型温度30℃、射出および保圧の合計時間10秒、冷却時間15秒の条件にて射出成形し、2mm厚の角板(120mm×130mm)を得た。得られた角板の動摩擦係数は0.27であった。結果を表1に示す。
【0040】
<実施例2〜10>
表1に示した組成比の樹脂組成物を実施例1と同様にして製造し、角板を成形し、動摩擦係数の測定を行った。結果を表1に示す。なお、無機フィラー(C)として、実施例8ではタルク(C−2)[富士タルク工業株式会社製;平均粒子径:3.8μm、見掛け密度:0.11g/ml、白色度:98.0%]を用い、実施例9ではタルク(C−3)[林化成株式会社製;平均粒子径:2.7μm、見掛け密度:0.18g/ml、白色度:95.0%]を用い、実施例10では、タルク(C−4)[松村産業株式会社製;平均粒子径:8μm、見掛け密度:0.25g/ml、白色度:97.0%]を用いた。
【0041】
<比較例1>
乳酸系樹脂(A)としてポリ乳酸(A−1)10重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)としてポリプロピレン(B−1)90重量部、無機フィラー(C)としてタルク(C−1)10重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(D)を製造し、実施例1と同様の方法で成形し、動摩擦係数を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
<比較例2〜6>
表1に示した組成比の樹脂組成物を実施例1と同様にして製造し、角板を成形し、動摩擦係数の測定を行った。結果を表1に示す。なお、比較例4では、無機フィラー(C)として、タルク(C−5)[富士タルク工業株式会社製;平均粒子径:16μm、見掛け密度:0.30g/ml、白色度:95.0%]を用いた。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)および無機フィラー(C)を含む樹脂組成物(D)から形成され、動摩擦係数が0.20〜0.35であることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記樹脂組成物(D)が、乳酸系樹脂(A)30〜70重量部と、ポリプロピレン系樹脂(B)70〜30重量部と、該成分(A)および(B)の合計100重量部に対して無機フィラー(C)3〜30重量部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記無機フィラー(C)が、マイカ、炭酸カルシウムおよびタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであり、その平均粒子径が2〜10μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
射出成形により成形されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
自動車用部品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形体。
【請求項6】
乳酸系樹脂(A)30〜70重量部と、ポリプロピレン系樹脂(B)70〜30重量部と、該成分(A)および(B)の合計100重量部に対して無機フィラー(C)3〜30重量部とを含む樹脂組成物(D)を射出成形することを特徴とする動摩擦係数が0.20〜0.35である成形体の製造方法。

【公開番号】特開2007−106841(P2007−106841A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297906(P2005−297906)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】