説明

計測装置、計測システムおよび医療用部材

【課題】X線透視を行うことなく、生体の管状器官に形成された狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報を取得することが可能な計測装置、計測システムおよび計測に好適に用いられる医療用部材を提供することを目的とする。
【解決手段】計測装置10は、軸方向へ伸びる複数の流路21a〜21f、および流路ごとに軸方向における異なる位置に一つずつ設けられ流路の側方へ開口する観測部23a〜23fを備え、生体内へ導入される導入部20と、各流路内部を吸引することによって観測部からそれぞれの流路へ流体を引き込む吸引部50と、流路を流れる流体の物理量の変化を流路ごとに検出する検出部60と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の管状器官に形成された狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報を取得することが可能な計測装置、計測システムおよび計測に好適に用いられる医療用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内には胸腔、腹腔、鼻腔などの体腔や、消化器官、尿管などの管腔のような管状器官が数多く存在し、これらの管状器官を通じて酸素や各種栄養素などが生体の各部へ届けられる。体腔や管腔などに発生した狭窄部によって酸素や栄養素等の循環が妨げられると、生体の各機能が著しく低下され、様々な病気が引き起こされる。この種の病気として、例えば、鼻腔に通じる自然口に狭窄部が形成されて引き起こされる副鼻腔炎や、尿道内に狭窄部が形成されて引き起こされる尿道狭窄などがある。
【0003】
これらの病気の治療には、狭窄部の診断を行うための内視鏡や、狭窄部を押し広げるためのバルーンカテーテルやステントなどの治療具が用いられる。治療に際して、管状器官の内腔形状、および狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報を予め取得しておくことにより、治療方針が立て易くなり、効果的な治療を行うことが可能になる。
【0004】
例えば、X線透視像によって血管の全体像と超音波プローブの位置を把握しながら、その超音波プローブの位置における血管超音波断層像を観察することにより、血管の狭窄部位とその程度を定性的に把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−64638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、X線を利用した診断装置は、X線による患者及び医療従事者への被爆量が問題となっており、X線透視を行わずに体内の管腔に生じた狭窄部に関する情報を取得する方法が求められている。更に、超音波診断装置は、血管のような液体で満たされた部位にしか適用できず、例えば、鼻腔や消化管のような空洞を有する部位には適用することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、X線透視を行うことなく、生体の管状器官に形成された狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報を取得することが可能な計測装置、計測システムおよび計測に好適に用いられる医療用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記のいずれかの手段によって達成される。
【0009】
(1)軸方向へ伸びる複数の流路、および前記流路ごとに軸方向における異なる位置に一つずつ設けられ前記流路の側方へ開口する観測部を備え、生体内へ導入される導入部と、前記流路内部を吸引することによって前記観測部からそれぞれの前記流路へ流体を引き込む吸引部と、前記流路を流れる流体の物理量の変化を前記流路ごとに検出する検出部と、を有する計測装置。
【0010】
(2)前記検出部は、前記導入部の流路を流れる流体の流速変化を検出する流速センサおよび前記流体の圧力変化を検出する圧力センサの少なくとも一方を備える、上記(1)に記載の計測装置。
【0011】
(3)それぞれの前記流路に設けられた前記観測部は、互いに一定の間隔を空けて配置される、上記(1)または(2)に記載の計測装置。
【0012】
(4)それぞれの前記流路に設けられた前記観測部は、前記導入部の軸回りの異なる位置にそれぞれ配置される、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0013】
(5)前記導入部は、前記流路および前記観測部をそれぞれ備える複数の長尺部材を有する、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0014】
(6)前記導入部は、前記複数の長尺部材が当該導入部の軸回りに螺旋状に巻きつけられた撚り線構造を有する、上記(5)に記載の計測装置。
【0015】
(7)前記導入部は、当該導入部の軸芯に軸方向へ伸びる隙間が形成されるように、前記複数の長尺部材を組み付けて構成される、上記(5)または(6)に記載の計測装置。
【0016】
(8)前記導入部は、前記複数の流路が区画形成された内腔を備える長尺部材を有する、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0017】
(9)前記観測部は、前記流路の側面に形成され前記流路内外を貫通する貫通穴によって構成される、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0018】
(10)前記流路は、当該流路の先端から当該流路の側方に臨んで配置される先端開口を備えており、
前記観測部は、前記先端開口によって構成される、上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0019】
(11)前記導入部は、先端へ向けて外形が先細るテーパー状の先端形状を有する、上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0020】
(12)前記導入部を覆うカバー部材をさらに有し、
前記カバー部材は、前記観測部に重ねてそれぞれ配置される複数の連通穴を有する、上記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0021】
(13)前記流路および前記観測部を介して生体内へ流体を供給する流体供給部、および前記観測部よりも基端側に設けられ前記流体供給部と前記流路を液密に接続する接続部をさらに有する、上記(1)〜(12)のいずれか1つに記載の計測装置。
【0022】
(14)上記(1)〜(13)のいずれか1つに記載の計測装置と、前記計測装置の動作制御を行う制御部と、を有する計測システムであって、前記制御部は、前記導入部に設けられた前記観測部が生体内に導入された状態で前記吸引部に吸引動作を行わせることによって前記流路内へ流体を引き込む、計測システム。
【0023】
(15)上記(1)〜(14)のいずれか1つに記載の導入部として用いられる医療用部材であって、
前記観測部よりも基端側において前記検出部および前記吸引部が着脱可能な医療用部材。
【発明の効果】
【0024】
本発明の計測装置によれば、複数の流路を備える導入部を生体内に導入し、それぞれの流路ごとに設けられた各観測部を介して流路内へ流体を引き込み、各流路内を流れる流体の物理量の変化を検出することにより、生体の管状器官の内腔形状を把握することができる。また、この結果より、X線透視を行うことなく、生体の管状器官に形成された狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る計測システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、導入部の説明に供する図であり、図2(A)は、導入部を拡大して示す図、図2(B)は、図2(A)の2B−2B線に沿う断面図である。
【図3】図3は、検出部の説明に供する部分断面図であり、図3(A)は、流路内を流れる流体の物理量の変化が生じる前の状態を概念的に示す図、図3(B)は、図3(A)に示す状態から流路内を流れる流体の物理量に変化が生じた後の状態を概念的に示す図である。
【図4】導入部に設けられた接続部の説明に供する部分拡大図である。
【図5】計測装置による計測方法の説明に供する図であって、生体の副鼻腔周辺を模式的に示す図である。
【図6】図6は、計測装置の作用の説明に供する図であって、図6(A)は、狭窄部が形成された生体の管状器官内へ導入部を導入する前の状態を計測結果とともに示す図、図6(B)は、図6(A)の状態から導入部を先端方向へ移動させることによって生体の管状器官内へ導入部が導入された状態を計測結果とともに示す図である。
【図7】図7は、計測装置の作用の説明に供する図であって、図7(A)は、図6(B)に示す状態から導入部を先端方向へ移動させた状態を計測結果とともに示す図、図7(B)は、図7(A)に示す状態から導入部を先端方向へさらに移動させた状態を計測結果とともに示す図である。
【図8】図8(A)、(B)はそれぞれ、実施形態に係る導入部の改変例(1)、(2)を説明するための部分拡大図である。
【図9】図9(A)〜(C)はそれぞれ、実施形態に係る導入部の改変例(3)〜(5)を説明するための部分拡大図である。
【図10】図10(A)、(B)はそれぞれ、実施形態に係る導入部の改変例(6)、(7)を説明するための部分拡大図である。
【図11】図11(A)〜(C)はそれぞれ、実施形態に係る導入部の改変例(8)〜(10)を説明するための部分拡大図である。
【図12】図12(A)、(B)はそれぞれ、実施形態に係る導入部の改変例(11)、(12)を説明するための部分拡大図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施形態に基づいて説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る計測装置10、および当該計測装置10が組み込まれた計測システム1を示す。計測装置10は、生体の管状器官の内腔形状や、管状器官に形成された狭窄部の形状、径および長さを把握するために用いられるものである。適用対象となる管状器官は特に限定されないが、例えば、胸腔、腹腔、鼻腔などの体腔や、消化器官、尿管などの管腔などである。
【0028】
図1および図2を参照して、計測装置10は、軸方向へ伸びる複数の流路21a〜21f、および流路21a〜21fごとに軸方向における異なる位置に一つずつ設けられ流路21a〜21fの側方へ開口する観測部23a〜23fを備え、生体内へ導入される導入部20と、各流路21a〜21f内部を吸引することによって観測部23a〜23fからそれぞれの流路21a〜21fへ流体を引き込む吸引部50と、流路21a〜21fを流れる流体の物理量の変化を流路21a〜21fごとに検出する検出部60(図3をも参照)と、を有している。
【0029】
まず、計測装置の各構成について説明する。
【0030】
図2を参照して、導入部20は、全体が軸方向(図2(A)中の左右方向)に延伸された外形形状を備える。導入部20において生体に導入される端部側を先端側(図中の左側)と称し、先端側の反対側に位置され使用者による手元操作が行われる側を基端側(図中の右側)と称する。図2(A)中において、結束部材70よりも先端側に位置する部位が導入部20を構成する。結束部材70およびその周辺部は、手元操作部を構成する。
【0031】
導入部20の各寸法は、特に限定されず、計測装置10が適用される生体の各器官に応じて変更され得る。例えば、副鼻腔のような体腔に使用する場合、導入部20は、外径2mm、長さ120mmで形成される。気管支のような呼吸器官に適用する場合、導入部20は、外径1〜20mm程度、長さ800〜2000mm程度、好ましくは外径1.5mm程度、長さ1000mm程度で形成される。涙管のような細管に適用する場合、導入部20は、外径0.8〜2mm程度、長さ80〜200mm程度、好ましくは外径1.0〜1.2mm程度、長さ100mm程度で形成される。尿管に適用する場合、導入部20は、外径4〜7mm程度、長さ400〜1000mm程度、好ましくは外径5mm程度、長さ500mm程度で形成される。胆管のような消化器官に適用する場合、導入部20は、外径5〜10mm程度、長さ1500〜3000mm程度、好ましくは外径6〜8mm程度、長さ2200mm程度で形成される。
【0032】
導入部20は、導入部20を構成する複数の長尺部材30a〜30fを備える(図1を参照)。また、導入部20には、導入部20全体を覆うカバー部材40が装着される。
【0033】
各長尺部材30a〜30fは、流体が流通可能な流路21a〜21fと、流路21a〜21f内外をそれぞれ連通する観測部23a〜23fとを備え、各長尺部材30a〜30fの最先端はそれぞれ封止されている。実施形態にあっては、6本の長尺部材30a〜30fを組み付けている。このため、導入部20には6つの観測部23a〜23fが備えられる。各長尺部材30a〜30fの流路21a〜21fの内部は、観測部23a〜23fを介して流路外に位置される生体の管状器官や管状器官に形成された狭窄部と連通される(図6、図7を参照)。
【0034】
複数の長尺部材30a〜30fによって構成される導入部20においては、各長尺部材30a〜30f間に形成された僅かな隙間により、長尺部材30a〜30fの相対的な移動が許容される。導入部20全体の柔軟性および屈曲の自由度が高められるため、幅狭な生体器官内における操作性や、湾曲した生体器官内における操作性が向上される。
【0035】
長尺部材30a〜30fの形状や寸法は、導入部20と同様に適用される生体の各器官に応じて定められる。例えば、導入部20が外径2mm、長さ120mmで形成される場合、各長尺部材30a〜30fは外径0.6mm、長さ1000mm程度に形成される。また、長尺部材30a〜30fの内径は、流路内部に引き込まれる流体の流通が妨げられることのない寸法で形成されていればよい。例えば、長尺部材30a〜30fの内径は、0.4mm程度に形成される。
【0036】
各長尺部材30a〜30fは、生体内における操作性を考慮して、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0037】
図2(A)に示すように、導入部20は、複数の長尺部材30a〜30fが組み付けて構成されるため、導入部20の柔軟性や屈曲の自由度が高められ、導入部20の塑性変形が防止される。また、長尺部材30a〜30fが導入部20の軸回りに螺旋状に巻きつけられた撚り線構造を備えることにより、導入部20全体のトルク伝達性が向上される。さらに、各長尺部材30a〜30fが備える弾性復元力が維持されつつ導入部20全体の剛性が向上される。
【0038】
導入部20は、導入部20の軸芯に軸方向へ伸びる隙間25が形成されるように、複数の長尺部材30a〜30fを組み付けて構成される。軸芯に形成される隙間25は、導入部20を生体内の各部へ導入または案内する際に、導入部20の移動をガイドするガイドワイヤ90等の案内具を挿通させることを可能にするために設けられる(図5を参照)。また、この隙間25によって各長尺部材30a〜30fの径方向内方への移動が許容される。生体内の幅狭な部位へ導入部20が移動されるような場合には、導入部20全体が生体器官の内面形状に応じて縮径変形される。このため、生体内における導入部20の円滑な操作が確保される。
【0039】
各観測部23a〜23fは、流路21a〜21fの側面に形成された貫通穴によって構成される。貫通穴は、流路21a〜21f内外を連通するために設けられる。
【0040】
観測部23a〜23fを通してそれぞれの流路21a〜21f内へ引き込まれる流体は、生体内の管状器官内に存在する気体や液体である。対象となる流体は限定されないが、例えば、気体は、生体内を循環する酸素、窒素、二酸化炭素などである。また、例えば、液体は、唾液、尿、各種の分泌物、胆汁、罹患した部位に滞留する膿汁などである。
【0041】
貫通穴の形状や寸法は、流路21a〜21f内外を連通して流体を各流路内へ引き込む機能が発揮される限りにおいて特に限定されない。図示される形態では、貫通穴は、径0.25mm程度、正面視において円形の形状に形成される。なお穴の形状は円形のみには限定されず、楕円形や四角形等でもよい。
【0042】
貫通穴は、複数の長尺部材30a〜30fが組み付けられる前の状態で予め各長尺部材30a〜30fに設けられていてもよく、また各長尺部材30a〜30fを組み付けた後に開口されてもよい。また、開口する方法は特に限定されないが、例えば、レーザー加工などを採用できる。
【0043】
それぞれの流路21a〜21fに設けられた観測部23a〜23fは、互いに一定の間隔dを空けて配置される。後述するように、各観測部23a〜23fから流路21a〜21f内へ引き込まれる流体の物理量の変化に基づいて生体の管状器官の形状や狭窄部の形状が割り出される。このため、間隔dの寸法は、適用される生体器官に応じて定められる。例えば、副鼻腔のような体腔に用いられる場合は、d=2〜4mm程度の間隔が設けられる。
【0044】
それぞれの流路21a〜21fに設けられた各観測部23a〜23fは、導入部20の軸回りの異なる位置にそれぞれ配置される。
【0045】
図2(A)に示すように、例えば、導入部20が6つの観測部23a〜23fを備える場合、各観測部23a〜23fは導入部20の全周(360°方向)に均等な間隔を空けて配置される。観測部23a〜23fは、流路21a〜21fごとに一つずつ設けられるものであるが、軸方向に沿って直線状に観測部23a〜23fが配置されると、直線延長上において導入部20の剛性が部分的に低下してしまう。このような場合に、導入部20の先端側から過度に押圧力が付与されると、導入部20が軸方向と交差する方向にキンクしたり、導入部20に折れが生じたりする虞がある。そこで、導入部20の全周に均等な間隔を空けて観測部23a〜23fを配置することによって、観測部23a〜23fを設けることにより生じ得る導入部20の剛性の低下を抑制している。
【0046】
カバー部材40は、導入部20を構成する複数の長尺部材30a〜30fを接着や溶着などを行うことなく、各長尺部材30a〜30fが組み付けられた後にばらつくことを防止することを可能にする。長尺部材30a〜30f同士を接着や溶着により接合して導入部20を構成することを妨げるものではないが、カバー部材40で導入部20を覆わせることにより、導入部20の剛性の向上およびトルク伝達性の向上が図られる。なお、後述するカバー部材40の構成材料によってカバー部材の表面特性を適宜選択できることは言うまでもない。
【0047】
カバー部材40は、長尺部材30a〜30fの観測部23a〜23fに重ねてそれぞれ配置される複数の連通穴43を備える。この連通穴43は、長尺部材30a〜30fにカバー部材40を装着した状態においても、長尺部材30a〜30fの流路21a〜21f内外の連通を維持することを可能にするために設けられる。したがって、連通穴43は、カバー部材40を装着させた際に、少なくとも各観測部23a〜23fの一部がカバー部材40から露出して配置され得る寸法および形状に形成される。図示される形態では、連通穴43は、径0.3mm程度、正面視において円形の形状に形成される。
【0048】
カバー部材40の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、シリコーン樹脂などが使用できる。なお、カバー部材40には、金属製のワイヤー、コイル、ブレード線等を補強部材として埋め込んでも良い。
【0049】
図2(B)に示すように、導入部20の基端には、各長尺部材30a〜30fを束ねる結束部材70が設けられる。結束部材70は、各長尺部材30a〜30fにおいてカバー部材40から露出された部位が挿通される挿通穴71、および導入部20の軸芯に形成された隙間25に連通して配置される中心穴72を備える。
【0050】
複数の長尺部材30a〜30fは、挿通穴71に挿通されることにより互いに分離され、その基端がそれぞれ吸引部50に接続される。結束部材70を用いることにより、基端部側での長尺部材30a〜30fのばらつきや位置ずれが防止されるため、手元での操作性が向上される。中心穴72は、ガイドワイヤ90などの案内具を挿通可能にするために設けられる。なお図示しないが、ガイドワイヤ90などの案内具は、中心穴72から結束部材70の側壁に通ずる穴を挿通して導入しても良いし、中心穴72の結束部材70基端側から挿通して導入しても良い。
【0051】
図1を参照して、吸引部50は、各長尺部材30a〜30fの流路21a〜21f内を吸引し、流路21a〜21f内へ流体を引き込むために使用される。吸引部50には、例えば、吸引力が調整自在な公知の流体式ポンプなどを用いることができる。なお、吸引部50の機能として、先端部に目詰まり等が生じ吸引が困難になった場合等に備え、吸引のみに限定せず、吐出等の機能を有していても良い。
【0052】
吸引部50は、各長尺部材30a〜30fの基端が接続分離可能なポート51を備える。長尺部材30a〜30fとポート51との接続には、例えば、嵌合式やねじ込み式など機械的な接続構造が採用される。
【0053】
図3を参照して、検出部60には、長尺部材30a〜30fの流路21a〜21f内を流れる流体の流速変化を検出することが可能な流速センサ61が用いられる。
【0054】
流速センサ61は、流速変化を検出する検出端62と、検出結果に応じて出力される電気信号を制御部7に送信するための信号線63とを備える。流速センサ61は、長尺部材30a〜30fの各流路21a〜21f内の流速変化を検出することを可能にするために、各流路21a〜21fに一つずつ配置される。
【0055】
流速センサが各流路21a〜21f内を流れる流体の流速を検出し、その検出結果が制御部7へ送信され、表示部8に表示される。例えば、図3(A)に示す流速V1が検出された状態から、図3(B)に示す流速V2が検出される状態を表示部8に逐次表示することができる。
【0056】
流速センサとして、例えば、差圧計測式、超音波計測式、熱計測式、非接触式レーザー計測式など公知の流速センサが使用される。なお、流速センサのみにより、流体の物理量の変化の検出を行う形態に限定されない。例えば、流体の圧力変化を物理量の変化として捉えて出力する圧力センサを流速センサとともに用いることが可能である。流速センサとともに圧力センサを使用することにより、流体の物理量のより微小な変化を検出することが可能になる。また、流速センサに代えて圧力センサを用いることも可能である。圧力センサとして、例えば、ひずみゲージ式やダイアフラム式など公知の圧力センサを使用できる。
【0057】
各長尺部材30a〜30fは、観測部23a〜23fよりも基端側において検出部60が着脱可能に取り付けられる。取り付けは、例えば、長尺部材30a〜30fの側壁に形成される穴に埋め込む形態や嵌合させる形態などを採用できる。更には、長尺部材30a〜30fに取り付けられた検出部60の出力を導入部20の回転に影響を及ぼさない公知の構成にて取り出すことにより、軸回転方向の操作性を改善することも可能である。
【0058】
図4を参照して、計測装置10は、各長尺部材30a〜30fの流路21a〜21fおよび観測部23a〜23fを介して生体内へ流体を供給する流体供給部65を備える。
【0059】
流体供給部65は、流体の保持および圧送を行う本体部66と、本体部66と各長尺部材30a〜30fとを連結する供給ライン67とを備える。本体部66には、例えば、シリンジポンプなど、流体の圧送に用いられる公知のポンプを用いることができる。
【0060】
導入部20を構成する各長尺部材30a〜30fは、観測部23a〜23fよりも基端側に設けられ供給ライン67がそれぞれ液密に接続される接続部27を備える。接続部27は、例えば、供給ライン67と各長尺部材30a〜30fとが接続可能な逆止弁などによって構成することができる。
【0061】
例えば、比較的粘性の高い体液が流路21a〜21f内に詰まったときなどには、流体供給部65から各種流体を圧送することにより、流路21a〜21f内の詰まりが解消される。また、流体供給部65から洗浄液を供給して生体各部の洗浄を行ったり、流体供給部65を利用して生体各部へ薬液の注液を行ったりすることも可能である。図示する形態においては、一つの本体部66に対して複数の供給ライン67を介して本体部66と各流路21a〜21fが接続されるため、各流路21a〜21f内への流体の供給は、本体部66による1度の圧送操作で同時に行うことができ、洗浄液や薬液を対象部位に均一に供給することが可能となる。
【0062】
導入部20を構成する長尺部材30a〜30fは、観測部23a〜23fよりも基端側において検出部60および吸引部50が着脱可能に接続される。したがって、計測後、使用された導入部20から検出部60および吸引部50を取り外して、検出部60および吸引部50を他の導入部に使用することが可能である。検出部60および吸引部50を繰り返して使用することが可能になるため、コストの削減を図ることができる。また、計測に際して、外形形状や外形寸法等の異なる複数種類の導入部20を医療用部材として準備しておくことにより、患者や各生体器官に応じて選択される最適な形態の導入部20を使用した計測を行うことが可能になる。
【0063】
計測システム1は、計測装置10の各部の動作制御を行う制御部7や、検出部60の検出結果を表示する表示部8を備える。
【0064】
制御部7は、計測装置10全体の動作を統括的に制御する。制御部7は、電気的に接続された信号線9、63などを介して動作信号を発信し、例えば、検出部60による流速変化の検出の実行、吸引部50による吸引動作の実行および吸引力の調整、表示部8による検出結果の表示など、計測に関する各動作の制御を行う。
【0065】
計測システム1の構成形態は特に限定されないが、実施形態にあっては、制御部7としてのCPUおよび表示部8としてのディスプレイを備えるPC(パーソナルコンピュータ)が計測システム1に用いられる。例えば、PCのROM内に計測処理プログラムを予め格納させておき、このプログラムを実行させることによって吸引、検出、表示部への表示などの一連の作業を実施させることが可能である。また、例えば、検出結果の送受信、各動作信号の送受信等を、信号線9、63を介さずに無線通信方式にて行う計測システムを採用することも可能である。
【0066】
次に、図5〜図7を参照して、計測装置10による計測方法を説明する。以下の説明では、副鼻腔炎の原因となる狭窄部Sの形状、長さおよび径に関する情報の取得に計測装置10を適用した使用例を示す。なお、図6、図7の各図は、導入部20の副鼻腔A内への導入過程を模式的に示す図、および各観測部23a〜23fから流路21a〜21f内へ引き込まれた流体の流速Vの変化を示す図である。P1〜P6が示す流速Vはそれぞれ、観測部23a〜23fから引き込まれた流体の流速である。
【0067】
図5を参照して、副鼻腔Aとは鼻腔Nに隣接した骨内空洞であり、自然口Eと呼ばれる小孔を介して鼻腔Nと連通している。副鼻腔A内の分泌物や細菌等は自然口Eを介して鼻腔Nに排泄されるが、風邪による鼻炎やアレルギー性鼻炎等により鼻腔N内の粘膜が腫れたり、鼻中隔湾曲症や肥厚性鼻炎等により鼻腔N内が狭くなったりすると、自然口Eが狭窄し、副鼻腔A内に慢性的な炎症が発生することになる。これが副鼻腔炎である。
【0068】
副鼻口炎の治療には、自然口Eに形成された狭窄部Sを押し広げる手技や、狭窄部Sを除去したりする手技が行われる。例えば、狭窄部Sを押し広げるためには、バルーンカテーテルを利用したバルーンによる拡張方法や、ステントなどを用いた拡張方法が採用される。これらの医療器具は、有効拡張径、有効拡張長さ(拡張時に狭窄部Sに対して押圧される部位の長さ)等の製品仕様が予め定められたものである。有効な治療を行うためには、自然口Eに形成された狭窄部Sの形状、長さおよび径に対応する適切な有効拡張径および有効拡張長さを備える医療器具が選択されることが望ましい。施術者は、医療器具の選択に先立って、選択の目安となる狭窄部Sの形状、長さおよび径に関する情報が必要になる。計測装置10は、例えば、医療器具の選択や治療方針の決定を行うための目安になる狭窄部の形状等に関する情報の取得に使用される。
【0069】
図5を参照して、計測に先立ち、外鼻から自然口Eの手前に位置する鼻腔N内へガイドワイヤ90を導入する。次に、ガイドワイヤ90上を這わせて導入部20を生体内へ導入する。この際、ガイドワイヤ90は、導入部20の軸芯に形成されたワーキングルーメンとして機能する隙間25に挿入される。
【0070】
図6(A)に示すように、制御部7は、吸引部50を動作させてそれぞれの流路21a〜21f内へ流体を引き込む。各観測部23a〜23fが鼻腔N内に位置するため、それぞれの流路21a〜21fを流れる流体の流速はほぼ一定である。なお、吸引部50による吸引動作は、生体内へ導入部20を導入させる前から実施することも可能であるし、生体内へ導入部20を導入させた後から実施することも可能である。
【0071】
図6(B)に示すように、吸引部50による吸引動作を行いつつ、導入部20を自然口E内へ向けて前進させる。最も先端に位置する観測部23aが自然口E内に導入されると、観測部23aに通じる流路21a内の流体の流速が減少する。流速の減少が検出されることにより、導入部20の先端側が鼻腔Nから狭窄部Sが形成された自然口E内へ移動したことを確認できる。導入部20に設けられた観測部23a〜23fの少なくとも一つが生体の管状器官内に導入された状態で吸引部50による吸引動作を実施することにより、生体内を循環する各種流体の物理量の変化を検出および観測することが可能である。
【0072】
図7(A)に示すように、導入部20をさらに前進させる。先端側から3つ目に位置する観測部23cに通じる流路21cを流れる流体の流速の減少が検出されると、先端側から3つ目に位置する観測部23cまでが少なくとも自然口E内に到達したことを確認できる。また、狭窄部Sは、観測部23a〜23cまでの距離以上の長さで少なくとも延在することが確認できる。さらに、導入部20の軸回りの異なる位置にそれぞれ配置された観測部23a〜23cに通じる流路21a〜21cを流れる流体の流速の減少が検出されるため、それぞれの観測部23a〜23cが臨む位置には狭窄部Sが存在することが確認できる。そして、各観測部23a〜23cに通じる流路21a〜21cを流れる流体の流速の減少が検出されたことより、狭窄部Sが形成された部位における自然口Eの径が導入部20の外径と同程度であることも確認できる。
【0073】
図7(B)に示すように、最も先端に位置する観測部23aが副鼻腔A内に導入されると、観測部23aに通じる流路21a内の流体の流速が増加する。流速の増加が検出されることにより、導入部20の先端側が自然口Eから副鼻腔A内へ移動したことが確認できる。また、生体内における導入部20の移動量や導入部20の移動速度などから、自然口Eの入口、出口のおおよその位置および自然口Eの長さなどを割り出すことができる。
【0074】
導入部20をさらに前進させ、観測部23b、23cにそれぞれ通じる流路21b、21c内を流れる流体の流速の増加が検出されると、導入部20の先端側の所定の部位までが副鼻腔A内へ到達したことが確認できる。一方、導入部20の基端側に位置する観測部23d〜23fに通じる流路21d〜21f内を流れる流体の流速は、観測部23aに通じる流路21aを流れる流体の流速よりも遅い。したがって、導入部20において観測部23d〜23fが設けられた部位は、自然口E内に位置する状態であることが確認できる。この際、観測部23d〜23fがそれぞれ臨む位置には、狭窄部Sが存在することが確認できる。
【0075】
自然口Eの入口、出口の確認をした後、導入部20を生体外へ導出させる。なお、計測時に、狭窄部Sの形状、長さおよび径に関するより詳細な情報を得るために、導入部20を回転させながら移動させたり、前進・後進を繰り返す操作を行ったりしてもよい。更に、狭窄部Sの径が小さく導入部20を狭窄部内に挿入できない場合には、一旦抜去を行い、より導入部20の外径の小さいものを選択すると良い。このように徐々に導入部の外径を小さいものにしていくことにより、狭窄部Sの径に関する精度の高い情報を得ることが可能となる。
【0076】
以上により計測が終了する。計測結果より、狭窄部Sが自然口E内の長さ方向に沿って連続的に形成されていることが確認できる。また、狭窄部Sのおおよその長さや内径を把握することができる。
【0077】
その後、この計測結果に基づいて、狭窄部Sの拡張に適した有効拡張径および有効拡張長さの拡張用バルーンを備えるバルーンカテーテルが選択され、バルーンにより狭窄部Sを拡張させる手技が行われる。
【0078】
以上のように、本実施形態によれば、複数の流路21a〜21fを備える導入部20を生体内に導入し、それぞれの流路21a〜21fごとに設けられた各観測部23a〜23fから流路21a〜21f内へ流体を引き込み、各流路21a〜21f内を流れる流体の物理量の変化を検出することにより、生体の管状器官の内腔形状を把握することができる。また、この結果より、X線透視を行うことなく、生体の管状器官に形成された狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報を取得することができる。
【0079】
また、検出部60として、導入部20の流路21a〜21fを流れる流体の流速変化を検出する流速センサおよび流体の圧力変化を検出する圧力センサの少なくとも一方が利用されるため、流路21a〜21fを流れる流体の物理量の変化の検出を精度良く行うことができる。
【0080】
また、導入部20の各流路21a〜21fに設けられた観測部23a〜23fが、互いに一定の間隔dを空けて配置されるため、生体内における各観測部23a〜23fの相対的な位置関係から、生体の管状器官の長さや狭窄部の形状および径に関する情報を容易に取得することができる。
【0081】
また、導入部20の各流路21a〜21fに設けられた観測部23a〜23fが、導入部20の軸回りの異なる位置にそれぞれ配置されるため、導入部20が挿入された管状器官の内腔形状や狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報を好適に取得することができる。
【0082】
また、導入部20が、流路21a〜21fおよび観測部23a〜23fをそれぞれ備える複数の長尺部材30a〜30fによって構成されるため、導入部20全体の柔軟性および屈曲の自由度が高められ、塑性変形が生じることを防止することができる。
【0083】
また、導入部20が、複数の長尺部材30a〜30fが導入部20の軸回りに螺旋状に巻きつけられた撚り線構造を有するため、導入部20全体のトルク伝達性が向上される。さらに、各長尺部材30a〜30fが備える弾性復元力が維持されつつ導入部20の剛性が向上される。
【0084】
また、導入部20は、導入部20の軸芯に軸方向へ伸びる隙間25が形成されるように、複数の長尺部材30a〜30fを組み付けて構成される。隙間25をガイドワイヤ90などを挿通させるワーキングルーメンとして利用することができる。また、隙間25によって各長尺部材30a〜30fの径方向内方への移動が許容されるため、生体内における導入部20の円滑な操作を行うことが可能になる。
【0085】
また、各観測部23a〜23fは、各流路21a〜21fの側面に形成され流路21a〜21f内外を貫通する貫通穴によって構成される。各貫通穴23a〜23fから流路21a〜21f内へ流体を引き込むことにより、流体の物理量の変化の検出を行うことができる。
【0086】
また、導入部20を覆うカバー部材40を設けることにより、各長尺部材30a〜30fが組み付けられた後にばらつくことが防止される。さらに、導入部20の剛性の向上およびトルク伝達性の向上が図られる。くわえて、カバー部材40が長尺部材30a〜30fの観測部23a〜23fに重ねてそれぞれ配置される複数の連通穴43を備えるため、カバー部材40を装着させた状態においても、長尺部材30a〜30fの流路21a〜21f内外の連通を維持することができる。
【0087】
また、計測装置10は、流路21a〜21fおよび観測部23a〜23fを介して生体内へ流体を供給する流体供給部65、および流体供給部65と流路21a〜21fを液密に接続する接続部27を備えるため、流体供給部65から各種流体を圧送することにより、流路21a〜21f内の詰まりを解消させたり、生体各部へ均一に洗浄液や薬液を注液させたりすることができる。
【0088】
計測装置10および制御部7によって構成された計測システム1での計測を行うことを可能にしている。計測の自動化を通して計測を簡単に実施することが可能になる。さらに、計測結果を定量的に評価することが可能になるため、信頼性のより高い計測結果を得ることができる。
【0089】
また、導入部20を構成する長尺部材30a〜30fは、観測部23a〜23fよりも基端側において検出部60および吸引部50が着脱可能に接続されるため、導入部20のみを単独で医療用部材として取り扱うことができ、コストの削減を図ることができる。
【0090】
本実施形態は、上述した実施形態のみに限定されず、適宜変更すること可能である。
【0091】
流体の流速変化および圧力変化の少なくとも一方を検出して計測が行われる形態を説明したが、検出部60が捉える物理量の変化はこれに限定されない。例えば、流体の粘性や温度、色素などの物理量の変化を捉えることが可能な検出部を採用し、これらの物理量の変化に基づいて狭窄部Sに関する情報を取得する形態とすることが可能である。
【0092】
また、導入部20は、実施形態において説明した6つの観測部23a〜23fおよび6つの流路21a〜21fを備える形態に限定されない。計測装置10に用いるためには、導入部20は、軸方向の異なる位置に設けられた2つの観測部および各観測部にそれぞれ連なる2つの流路を少なくとも備えればよい。同様に、軸回りにおける観測部の配置位置や導入部を構成する長尺部材の個数およびその接続形態なども、実施形態において説明したものに限定されない。
【0093】
また、実施形態の説明では、計測装置10が組み込まれた計測システム1を通じて本発明を説明したが、本発明の目的は計測装置10のみにより達成することが可能である。
【0094】
<導入部の改変例>
次に、図8〜図12を参照して、導入部の改変例(1)〜(12)を説明する。
【0095】
図8(A)に示す改変例(1)では、導入部20が複数の長尺部材30a〜30fを螺旋状に巻き付けた撚り線構造に形成されず、各長尺部材30a〜30fの軸がそれぞれ平行となるように配置されている点において、上述した実施形態と相違する。このような導入部20によれば、撚り線構造を採用したときのようなトルク伝達性の向上は図れないが、長尺部材30a〜30fを螺旋状に巻き付ける作業を省略することができるため、導入部20の製造を簡略化して行うことができる。なお、複数の長尺部材30a〜30fが組み付けて構成されるため、導入部20の柔軟性や屈曲の自由度が高められる効果や、導入部20の塑性変形が防止される効果は発揮される。
【0096】
図8(B)に示す改変例(2)では、観測部23a〜23fが導入部20の軸回りの全周に沿って配置されず、軸方向に沿う直線上に一列に配置されている点において、上述した実施形態と相違する。この場合、軸回りの全周に沿った配置と比較すると剛性の低下が懸念されるが、各観測部23a〜23fが直線上に配置されている為、狭窄部に挿入した後に導入部20を軸方向に回転させることにより、狭窄部の周方向の形状変化をより明確に計測することが出来る。なお、このような形態の導入部20であっても、導入部20の柔軟性や屈曲の自由度が高められる効果が発揮されるため、狭窄部Sへの導入などに好適に用いることができる。
【0097】
図9(A)〜(C)にそれぞれ示す改変例(3)〜(5)では、部材点数を削減するために、導入部20を覆うカバー部材40を設けていない。カバー部材40の装着を省略することにより導入部20の製造コストの削減が図られる。導入部20を構成する各長尺部材30a〜30fは、例えば、熱融着や接着剤によって接合することが可能である。なお、製造作業の簡略化の観点から、導入部20にはワーキングルーメンとして機能する隙間25を形成していない。
【0098】
詳細な説明は省略するが、図9(A)に示す改変例(3)は、複数の長尺部材30a〜30fを螺旋状に巻き付けた撚り線構造が採用されず、各長尺部材30a〜30fの軸方向が平行に配置された形態を備える。図9(B)に示す改変例(4)は、複数の長尺部材30a〜30fを螺旋状に巻き付けた撚り線構造が採用され、観測部23a〜23fが導入部20の軸回りの全周に沿って配置された形態を備える。図9(C)に示す改変例(5)は、複数の長尺部材30a〜30fを螺旋状に巻き付けた撚り線構造が採用され、観測部23a〜23fが軸方向に沿う直線上に一列に配置された形態を備える。
【0099】
図10(A)、(B)にそれぞれ示す改変例(6)、(7)では、導入部20は、先端へ向けて外形が先細るテーパー状の先端形状を備える。先端に向かって導入部20の外形が小さくなるため、狭窄部への挿入性が向上される。また、先端側の柔軟性が高まることにより、生体内の各器官における追従性が向上する、なお、図10(A)に示すように、長尺部材30a〜30fが螺旋状に巻き付けられていない形態、図10(B)に示すように、長尺部材30a〜30fが螺旋状に巻き付けられた形態のいずれの場合においても、テーパー状の先端形状を備えさせることが可能である。また、図示する形態においては、カバー部材40の装着、およびワーキングルーメンとして機能する隙間25の形成を省略しているが、これらを付加した形態とすることも可能である。
【0100】
本改変例では、導入部20の先端形状が先端に向かって先細るテーパー形状を有していることにより、狭窄部Sに導入部20を挿入、前進させ、それ以上進まなくなった際の流速が減少している流路に通じる観測部を特定すれば、その観測部が配置されている部分の外径が狭窄部Sの開口部の径であるということになり、開口部の径を計測することができる。更に、狭窄部の径よりも小さい導入部を使用する場合には、先端を傾けたり、前進・後進を繰り返す操作を行ったりすることにより、狭窄部の長さも特定することが可能となる。
【0101】
図11(A)〜(C)にそれぞれ示す改変例(8)〜(10)では、導入部120は、流路121a〜121fの先端に設けられ流路121a〜121fの側方に臨んで配置される先端開口123a〜123fを備える。流路121a〜121f内外を連通する観測部が、先端開口123a〜123fによって構成されている点において、観測部が流路に形成された貫通穴によって構成される上述の実施形態と相違する。
【0102】
導入部120を構成する各長尺部材130a〜130fの先端は、先端開口123a〜123fが流路121a〜121fの側方へ臨むように屈曲した形状付けがなされる。例えば、図11(A)に示す改変例(8)のように、各流路121a〜121fの先端開口123a〜123fがそれぞれ異なる方向に向くように配置された形態を採用することが可能である。また、図11(B)に示す改変例(9)のように、紙面と直交する方向に位置をずらした2つの軸に沿うように2列に先端開口123a〜123fが配置された形態を採用することが可能である。また、図11(C)に示す改変例(10)のように、一つの軸方向に沿うように1列に先端開口123a〜123fが配置された形態を採用することが可能である。
【0103】
導入部120を覆うカバー部材140には、図示は省略するが、先端開口123a〜123fに合わせて配置される連通穴143が設けられる。また、各長尺部材130a〜130fに用いられる材料として、上述した実施形態において説明した先端開口を備えない形態の長尺部材の材料と同様のものを用いることができる。
【0104】
改変例(8)〜(10)に示す導入部120を用いる場合においても、各先端開口123a〜123fから流路121a〜121f内へ流体を引き込むことが可能であり、貫通穴で形成される観測部を備える導入部を用いる場合と同様に、管状器官に形成された狭窄部の形状、長さおよび径に関する情報の取得を好適に行うことが可能である。
【0105】
図12(A)、(B)にそれぞれ示す改変例(11)、(12)では、導入部220は、複数の流路221a〜221fが区画形成された内腔235を備える長尺部材230によって構成される。導入部220が単一の長尺部材230によって構成されている点において、導入部が複数の長尺部材によって構成される上述の実施形態と相違する。なお、各図において導入部220の先端部の拡大図とともに、導入部220の断面図を示す。
【0106】
導入部220を構成する長尺部材230は、先端が開口されておらず、かつ側面に一つずつ観測部としての貫通穴223a〜223fが設けられた複数の流路221a〜221fを備える。このような形態の導入部220によれば、複数の長尺部材を接続する作業を行う必要がないため、製造作業の簡略化が図れる。また、カバー部材を用いる必要もないため、材料の部品点数を削減することもできる。なお、図12(A)に示すように、導入部220にガイドワイヤが挿通されるワーキングルーメンが形成されていない形態で構成することが可能であるし、図12(B)に示すように、導入部220にワーキングルーメン225が形成された形態で構成することも可能である。
【0107】
長尺部材230を構成する材料として、例えば、上述した実施形態において説明した複数の長尺部材30a〜30fを構成する材料と同様の材料を使用することができる。
【0108】
改変例(11)、(12)に示す導入部220を用いる場合においても、観測部223a〜223fから流路221a〜221f内へ流体を引き込み、この流体の物理量の変化を検出することが可能である。
【0109】
なお、改変例(1)〜(12)に係る各導入部20、120、220においても、検出部60および吸引部50が着脱可能に接続される構成を採用することができる。したがって、計測後、導入部から検出部60および吸引部50を取り外して、検出部60および吸引部50を他の導入部に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 計測システム、
10 計測装置、
20 導入部(医療用部材)、
21a〜21f 流路、
23a〜23f 観測部(貫通穴)、
25 隙間、
27 接続部、
30a〜30f 長尺部材、
40 カバー部材、
43 連通穴、
50 吸引部、
60 検出部、
65 流体供給部、
70 結束部材、
90 ガイドワイヤ、
120 導入部、
121a〜121f 流路、
123a〜123f 先端開口(観測部)、
130a〜130f 長尺部材、
220 導入部、
221a〜221f 流路、
223a〜223f 観測部、
225 ワーキングルーメン、
230 長尺部材、
235 内腔、
N 鼻腔、
E 自然口、
A 副鼻腔、
S 狭窄部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向へ伸びる複数の流路、および前記流路ごとに軸方向における異なる位置に一つずつ設けられ前記流路の側方へ開口する観測部を備え、生体内へ導入される導入部と、
前記流路内部を吸引することによって前記観測部からそれぞれの前記流路へ流体を引き込む吸引部と、
前記流路を流れる流体の物理量の変化を前記流路ごとに検出する検出部と、を有する計測装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記導入部の流路を流れる流体の流速変化を検出する流速センサおよび前記流体の圧力変化を検出する圧力センサの少なくとも一方を備える、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
それぞれの前記流路に設けられた前記観測部は、互いに一定の間隔を空けて配置される、請求項1または請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
それぞれの前記流路に設けられた前記観測部は、前記導入部の軸回りの異なる位置にそれぞれ配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記導入部は、前記流路および前記観測部をそれぞれ備える複数の長尺部材を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記導入部は、前記複数の長尺部材が当該導入部の軸回りに螺旋状に巻きつけられた撚り線構造を有する、請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記導入部は、当該導入部の軸芯に軸方向へ伸びる隙間が形成されるように、前記複数の長尺部材を組み付けて構成される、請求項5または請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記導入部は、前記複数の流路が区画形成された内腔を備える長尺部材を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記観測部は、前記流路の側面に形成され前記流路内外を貫通する貫通穴によって構成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項10】
前記流路は、当該流路の先端から当該流路の側方に臨んで配置される先端開口を備えており、
前記観測部は、前記先端開口によって構成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項11】
前記導入部は、先端へ向けて外形が先細るテーパー状の先端形状を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項12】
前記導入部を覆うカバー部材をさらに有し、
前記カバー部材は、前記観測部に重ねてそれぞれ配置される複数の連通穴を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項13】
前記流路および前記観測部を介して生体内へ流体を供給する流体供給部、および前記観測部よりも基端側に設けられ前記流体供給部と前記流路を液密に接続する接続部をさらに有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の計測装置と、
前記計測装置の動作制御を行う制御部と、を有する計測システムであって、
前記制御部は、前記導入部に設けられた前記観測部が生体内に導入された状態で前記吸引部に吸引動作を行わせることによって前記流路内へ流体を引き込む、計測システム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の導入部として用いられる医療用部材であって、
前記観測部よりも基端側において前記検出部および前記吸引部が着脱可能な医療用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−59411(P2013−59411A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198726(P2011−198726)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】