説明

計量装置

【課題】秤量台に応じた最適な制御パラメータを電磁コイルの駆動制御手段に自動的に設定することができる計量装置を提供すること。
【解決手段】サーボ制御部91に対し擬似負荷変動信号としてのステップ波形を入力するステップ入力部101と、サーボ制御部91の制御パラメータを設定するフィードバックゲイン設定部103と、擬似負荷変動信号が入力されたときの各制御パラメータ毎の秤量信号に基づいて、最適な制御パラメータを判定する判定部106と、フィードバックゲイン設定部103によりサーボ制御部91の制御パラメータを順次変更しながら、ステップ入力部101によりサーボ制御部91に擬似負荷変動信号を入力し、判定部106により各制御パラメータ毎の秤量信号に基づいて最適な制御パメタータを判定し、フィードバックゲイン設定部103により最適な制御パラメータをサーボ制御部91に設定するよう制御する制御手段74と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を計量する計量装置、もしくは、計量して良否を判定する計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の生産ラインにおいては、生産ラインに組み込まれ、生産される物品が前段から順次搬入され、搬入された物品を搬送しながら計量し、後段に搬出または選別手段により生産ラインから排除する計量装置が用いられている。
【0003】
この種の計量装置としては、電磁平衡式秤の構成を有するものであって、秤量台と、荷重変化による秤量台の所定位置からの変位を検出する位置検出手段と、荷重に対抗する力を秤量台に与える電磁コイルと、位置検出手段からの検出信号を受け、秤量台の所定位置からの変位を抑制するよう電磁コイルを駆動制御する駆動制御手段(制御電圧出力手段および電流変換回路)と、を備えた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、消費者ニーズの多様化により、多品種の物品を効率よく生産できるように生産ラインが構築されており、計量装置に搬入される物品も単一品種ではなく多品種になりそれぞれのサイズが異なることが増えている。秤量台が秤量コンベアであるコンベア方式の計量装置においては、原理上、計量部に備えられた秤量コンベア上に1つの被計量物が乗っているときに計量を行う必要があるため、効率向上のために、被計量物のサイズに合わせて、異なるサイズの秤量コンベアの中から好適なサイズの秤量コンベアを計量部に装着できるよう、秤量コンベアが交換可能に構成された計量装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−77024号公報
【特許文献2】特許4008413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高速高精度計量が必要なラインで使用されることが多い電磁平衡式秤を採用した計量装置においては、通常、秤量台毎に最大秤量台寸法、質量が規定され、その最大秤量台寸法を搭載したときに最適となるように駆動制御手段の制御パラメータ(例えば、フィードバックゲイン)を決定するが、実際には大きさや形状の異なる様々な秤量台を搭載するために制御対象の伝達関数が秤量台により異なり、秤量台に対してフィードバックゲインが小さいと応答性が悪化し、一方フィードバックゲインが大きいと発振してしまい、安定した応答性能を確保できないという問題があった。
【0007】
また、充填機に組み込まれる秤は、ライン毎に秤量台が異なり、例えば偏荷重の大きい秤量台が搭載された場合、汎用的に設定された制御ゲインパラメータであっても発振したり所望の特性を得られず、現物合わせで制御ゲインを調整する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、秤量台に応じた最適な制御パラメータを電磁コイルの駆動制御手段に自動的に設定することができる計量装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る計量装置は、被計量物を載置するとともに異なる種類に交換可能な秤量台と、被計量物による荷重変化により前記秤量台の所定位置からの変位を検出する位置検出手段と、前記荷重に対向する力を前記秤量台に与える電磁コイルと、前記位置検出手段からの検出信号を受け、所定の制御パラメータを用いて前記秤量台の所定位置からの変位を抑制するよう前記電磁コイルを駆動制御する駆動制御手段と、前記電磁コイルに流れる電流値に応じて秤量信号として出力する秤量信号出力手段と、前記駆動制御手段に対し、前記電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力する擬似負荷変動信号入力手段と、前記駆動制御手段の制御パラメータを設定する制御パラメータ設定手段と、前記駆動制御手段に擬似負荷変動信号が入力されたときの前記秤量信号出力手段からの秤量信号を取得し、各制御パラメータ毎の秤量信号に基づいて最適な制御パラメータを判定する最適制御パラメータ判定手段と、前記制御パラメータ設定手段により前記駆動制御手段の制御パラメータを順次変更しながら、前記擬似負荷変動信号入力手段により前記駆動制御手段に擬似負荷変動信号を入力し、前記最適制御パラメータ判定手段により各制御パラメータ毎の秤量信号に基づいて最適な制御パラメータを判定し、前記制御パラメータ設定手段により最適な制御パラメータを前記駆動制御手段に設定するよう制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、秤量台を変更した際に、秤量台に被計量物を実際に載置しなくても、擬似負荷変動信号入力手段により駆動制御手段に擬似負荷変動信号を入力することで、変更後の秤量台に最適な制御パラメータを駆動制御手段に自動的に設定することができる。したがって、秤量台に応じた最適な制御パラメータを電磁コイルの駆動制御手段に自動的に設定することができる。
【0011】
また、本発明に係る計量装置は、前記擬似負荷変動信号入力手段が、前記位置検出手段の目標値をステップ波形で変動することにより、前記駆動制御手段に対し、前記電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力することを特徴とする。
【0012】
この構成により、位置検出手段の目標値をステップ波形で変動することにより、位置検出手段の目標値がオフセットした状態からオフセットしていない状態に戻すことで、秤量台に被計量物を実際に載置することなく、駆動制御手段に対し電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力することができる。
【0013】
また、本発明に係る計量装置は、前記駆動制御手段が、前記電磁コイルに電圧を印加するコイル印加部と、前記秤量台の所定位置からの変位を抑制するよう前記コイル印加部の電圧を制御するサーボ制御部と、を有し、前記擬似負荷変動信号入力手段が、前記コイル印加部への入力信号をパルス波形で変動することにより、前記駆動制御手段に対し、前記電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力することを特徴とする。
【0014】
この構成により、コイル印加部への入力信号をパルス波形で変動することにより、秤量台に被計量物を実際に載置することなく、駆動制御手段に対し電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力することができる。
【0015】
また、本発明に係る計量装置は、前記最適制御パラメータ判定手段が、各制御パラメータ毎の秤量信号の収束時間に基づいて、最適な制御パラメータとしての最適なフィードバックゲインを判定することを特徴とする。
【0016】
この構成により、秤量台を変更した際に、秤量台に被計量物を実際に載置しなくても、変更後の秤量台に最適なフィードバックゲインを駆動制御手段に自動的に設定できるので、秤量台の種類によらず安定した応答性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、秤量台に応じた最適な制御パラメータを電磁コイルの駆動制御手段に自動的に設定することができる計量装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る計量装置の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る計量装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る計量装置の搬送部を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る計量装置の秤量手段を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る計量装置の動作を示すフロー図である。
【図6】(a)は、本発明の一実施の形態に係る計量装置の最適フィードバックゲイン判定のために入力されるステップ波形を示す図であり、(b)〜(d)は、ステップ波形に応じて出力される秤量信号を示す図であり、(e)は、フィードバックゲイン毎の秤量信号の収束時間を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る計量装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図4は、本発明に係る計量装置の一実施の形態を示している。図1〜図4に示すように、計量装置1は、装置本体部2と、搬送部3と、搬入センサ4とを備えて構成されている。また、計量装置1の後段には選別部5が接続されている。
【0021】
計量装置1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wの重量を測定し、得られた測定値を測定結果として出力するようになっている。さらに、予め設定された重量の上限および下限の基準値とそれぞれ比較し、得られた測定値が基準値の範囲内にあるか否かを判定して範囲内のものを良品とし、範囲外のものを不良品として良否判定したり、複数の基準値に対応して重量ランク判定をするようになっていてもよい。また、測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果は、表示手段10に表示されるとともに、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力されるようになっている。選別部5では、計量装置1が出力した測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果に応じて被計量物Wを振り分けるようになっている。
【0022】
装置本体部2は、秤量手段21と、総合制御部7と、表示手段10と、設定手段11と、これらの各部を収納する収納筐体2aとにより構成されている。
【0023】
搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬入されてくる被計量物Wを所定の搬送条件により搬送するようになっている。被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、搬送されている間に重量が秤量手段21により計量されるようになっている。秤量コンベア32は、被計量物を所定の搬送条件により搬送するようになっている。また、被計量物Wは、計量の後にさらに後段の選別部5に搬送され、振り分けられるようになっている。
【0024】
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されている。助走コンベア31は、前段のベルトコンベア14から搬送されてきた被計量物Wが秤量コンベア32に移動する前に、被計量物Wの助走を行うものであり、2つのローラ31a、31cと、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。秤量コンベア32は、被計量物Wの計量を行う秤量手段21の上部に支持されており、2つのローラ32a、32cとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bとにより構成されている。また、秤量コンベア32は、運用現場のユーザ、または製造時の組み付け工程の作業者により、種類の異なるコンベアに交換可能となっている。
【0025】
搬入センサ4は、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されており、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されている。具体的には、投光部4aは、搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置され、受光部4bは、搬送ベルト32bの他の側面側で投光部4aに対向するように配置されており、被計量物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過すると被計量物Wにより受光部4bが遮光されるので被計量物Wの搬入が開始されたことが検出されるようになっている。検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の総合制御部7に出力されるようになっている。
【0026】
秤量手段21は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する荷重センサであり、電磁平衡式秤の構成を有し、被計量物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、秤量手段21に加わる荷重を測定するようになっている。
【0027】
具体的には、秤量手段21は、図4に示すように、秤量コンベア32とともに上下する吊り板85と、吊り板85を懸架する平行バネ86と、一端が吊り板85に固定されたさお82と、さお82を支持する支点81と、さお82の他端の位置を検出する位置センサ83と、さお82の他端に力を作用させる磁石88付きの電磁コイル84と、電磁コイル84を駆動するコイル印加部92と、位置センサ83からの検出信号に基づいてPID制御等のサーボ制御によりコイル印加部92を制御するサーボ制御部91と、を備えている。なお、平行バネ86は、その一端側は吊り板85に固定されているが、他端側は支点81および電磁コイル84との共通基台87に固定されており、ロバーバル機構を構成している。
【0028】
秤量手段21としての電磁平衡式秤においては、無負荷時にさお82の平衡をとっておき、被計量物Wが秤量コンベア32に載ると支点81回りのバランスが崩れて、さお82が図中右上がりに傾こうとするが、この傾きを位置センサ83により検出し、傾きをゼロとするように電磁コイル84に電流を流すことにより、この電流は被計量物Wの重量に比例するので、重量値にグラム換算することができるようになっている。すなわち、被計量物Wの質量による負荷と、磁石88と電磁コイル84に流す電流で発生する力を平衡させ、このとき電磁コイル84に流れる電流値を被検査物Wの重量として測定している。
【0029】
総合制御部7は、信号処理手段71、計量手段72、記憶手段73、制御手段74、良否判定手段76、モード切替手段77、ステップ入力部101、フィードバックゲイン設定部103、収束時間算出部104、収束時間記憶部105、判定部106、を備えている。
【0030】
信号処理手段71は、秤量手段21からの秤量信号を受け所定の信号処理条件に基づいて信号処理して信号処理済秤量信号を出力するようになっていて、アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備えている。具体的には、信号処理手段71は、秤量手段21からの秤量信号に対して、種類や特性の異なる複数のローパスフィルタから選択したフィルタを用いて、秤量信号の低周波成分のみを信号処理済秤量信号として通過させるようになっている。なお、信号処理手段71が選択するローパスフィルタは、1つの場合、または、複数を組み合わせたものの場合がある。このローパスフィルタとしては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとがある。ここで、FIRフィルタは、インパルス応答波形が入力された場合に、ある決まった時間(有限時間)だけ出力を出す有限インパルス応答フィルタであり、IIRフィルタは、無限にインパルス応答波形の減衰波形を出力する無限インパルス応答フィルタである。
【0031】
ここで、FIRフィルタは、A/D変換器によりディジタル信号に変換された秤量信号に対して、所定の低周波成分を通過するローパスフィルタを構成し、単純平均化処理や高知の窓関数を用いた重み付け平均化処理を行うようになっている。IIRフィルタは、スイッチトキャパシタフィルタのように特性変更が可能なハードウェアを用いて秤量手段21からの秤量信号(アナログ秤量信号)を直接受けて処理済信号をA/D変換器に出力するアナログフィルタで構成してもよいし、A/D変換器からのディジタル秤量信号(図示せず)を受けるディジタルフィルタで構成してもよい。
【0032】
信号処理手段71は、具体的には、図4に示すように、秤量手段21の電磁コイル84に流れる電流を検出するために電磁コイル84に直列に接続された電流検出抵抗93と、検出された信号を増幅する増幅器94と、増幅された信号をフィルタ処理するアナログフィルタ95と、フィルタ処理された信号をデジタル変換するA/D変換器96と、デジタル変換された信号をフィルタ処理するLPF(ローパスフィルタ)等のフィルタ97と、を備えている。
【0033】
計量手段72は、信号処理手段71が出力する信号処理済秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)するようになっている。また、計量手段72においては、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから所定の基準時間Tkが経過し、秤量手段21から秤量信号が出力された被計量物Wに対して、計量値を算出するようになっている。計量手段72により算出された個々の重量は、記憶手段73に算出データとして記憶されるようになっている。
【0034】
計量手段72は、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから予め設定された基準時間Tkが経過したときに計量を行うようになっている。ここで、基準時間Tkは、搬入センサ4で被計量物Wが秤量コンベア32に搬入を開始したことを検出してから、被計量物Wが秤量コンベア32に完全に乗り移り、さらに秤量手段21から出力された秤量信号が安定するまでに必要な時間を意味する。具体的には、基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被計量物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被計量物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。また、図3に示すように、基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは、搬入開始検出位置PからLだけ移動して質量測定位置Pに到達し、計量が行われる。
【0035】
なお、計量手段72においては、被計量物Wの品種(特に、サイズ)に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件(パラメータ)が選択されるようになっており、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が6g〜600g、測定能力が最大150個/minで選択されるようになっている。この場合、被計量物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになり、基準時間Tkは400msec以上であればよいが、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産その他の条件により設定されるようになっている。基準時間Tkは、400msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まることになる。
【0036】
また、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が1g〜300g、測定能力が最大600個/minで選択されるようになっている。測定能力が最大600個/minであると、被計量物Wの1個当たりの測定時間は最小100msecに設定されていることになり、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産やその他の条件により設定されるようになっている。この基準時間Tkは、100msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まる。このように、計量手段72においては、被計量物Wの品種に応じて、その範囲、能力などの検査条件(パラメータ)が選択される。
【0037】
記憶手段73は、記憶媒体などから構成されており、秤量コンベア32による被計量物Wの所定の搬送条件、および信号処理手段71における所定の信号処理条件を含む条件パラメータを被計量物Wの品種に対応させて記憶するようになっている。記憶手段73には、被計量物Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF(Low Pass Filter)特性が記憶されている。また、記憶手段73には、被計量物Wの良否を判定するための良品範囲が記憶されている。搬送速度は、被計量物Wを搬送する搬送部3の速度であり、LPF特性は、どのような特性のローパスフィルタであるかを示すものであり、良品範囲とは、良品と判定される被計量物Wの重量の範囲である。これらの記憶情報は、設定手段11からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。記憶手段73は、計量値、良品判定結果等の種々のデータを記憶するようになっている。
【0038】
制御手段74は、被計量物Wの品種に応じて記憶手段73から所定の搬送条件および所定の信号処理条件を読み出して秤量コンベア32および信号処理手段71をそれぞれ制御するようになっている。また、記憶手段73に記憶している複数の品種に対応する条件パラメータを順次切り替えて搬送部3および信号処理手段71を制御するようになっている。また、制御手段74は、図示しないモータの回転速度(rpm)を駆動制御して、搬送部3による被計量物Wの搬送速度を制御するようになっている。更に、制御手段74は、ステップ入力部101、フィードバックゲイン設定部103、収束時間算出部104、収束時間記憶部105、判定部106の動作制御を行うようになっている。
【0039】
良否判定手段76は、被計量物Wの良否を判定するものであり、判定回路などから構成され、計量手段72が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物Wの良否を判定するようになっている。具体的には、良否判定手段76は、計量手段72から出力された被計量物Wの重量信号を受けると、記憶手段73に予め記憶されている重量の上限値Gaおよび下限値Gbを読み出し、算出した被計量物Wの重量と上限値Gaおよび下限値Gbとをそれぞれ比較し、上限値Gaおよび下限値Gbで決定される重量の許容範囲内に被計量物Wの重量が入っているか否かを判定するようになっている。
【0040】
良否判定手段76において判定された判定結果は、表示手段10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっている。また、判定結果は、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力され、被計量物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。さらに、この判定結果は、記憶手段73に出力され、各被計量物Wについての判定結果が記憶されるようになっている。
【0041】
モード切替手段77は、制御手段74に指令を出し、計量装置1の動作モードを、運転モードと設定モードとの間で切り替えるものである。ここで、運転モードとは、計量装置1が被計量物Wの計量、重量の算出および良否判定を行う通常の動作モードのことであり、設定モードとは、運転モードの動作のための各種パラメータの自動設定または手動設定をしたり、運転モードの動作を正常に行うことができるか否かの動作確認のための動作モードである。モード切替手段77は、設定手段11からの入力操作に応じて動作モードを設定モードに切り替えたり、または、装置の運転開始時に動作モードを設定モードに切り替えるようになっている。
【0042】
ステップ入力部101は、サーボ制御部91の目標値に対して図6(a)に示すような立ち上がりが急峻なステップ波形の入力を行い、目標値をオフセットした値(例えば10)からオフセットしていない値(例えば0)に変動させるようになっている。ここで、目標値とは、無負荷時にさお82が平衡となるように設定される値であり、通常は0に設定される。
【0043】
すなわち、本実施の形態では、ステップ入力部101がサーボ制御部91に対してステップ波形を入力して目標値がオフセットした状態からオフセットしていない状態に戻すことにより、擬似負荷変動信号が発生し、秤量コンベア32で実際に被計量物Wを搬送することなく、試験的な秤量信号を取得できるようになっている。なお、コイル印加部92にパルス波形(疑似インパルス波形)の電流を入力するパルス入力部102を総合制御部7が備える構成とすることにより、ステップ入力部101を備える場合と同様に、擬似的な秤量負荷の変化を発生させて試験的な秤量信号を取得してもよい。
【0044】
フィードバックゲイン設定部103は、サーボ制御部91の制御パラメータの1つであるフィードバックゲインを設定するようになっている。具体的には、フィードバックゲイン設定部103は、後述する自動調整処理において、複数のフィードバックゲイン(例えば、フィードバックゲイン1、フィードバックゲイン2、フィードバックゲイン3、等)の何れかのフィードバックゲインを順次サーボ制御部91に設定するとともに、これらの複数のフィードバックゲインのうち判定部106により最適と判定されたフィードバックゲインをサーボ制御部91に設定するようになっている。
【0045】
収束時間算出部104は、ステップ波形が入力されてからの秤量信号の過渡応答を監視して、信号が収束するまでの時間を計測および算出するようになっている。具体的には、収束時間算出部104は、フィルタ97から出力された秤量信号を監視し、ステップ入力部101が図6(a)に示すようなステップ波形の入力を行ってから秤量信号が一定の振幅範囲内に収束するまでの収束時間を、図6(b)に示すようなフィードバックゲイン1のときの秤量信号の応答波形の場合は収束時間t1であると算出し、図6(c)に示すようなフィードバックゲイン2のときの秤量信号の応答波形の場合は収束時間t2であると算出し、図6(d)に示すようなフィードバックゲイン3のときの秤量信号の応答波形の場合は収束時間t3であると算出する。なお、収束時間算出部104は、A/D変換器96から出力された秤量信号を監視してもよい。
【0046】
収束時間記憶部105は、収束時間算出部104が算出した収束時間を各フィードバックゲインに対応付けて記憶するようになっている。収束時間記憶部105は、例えば、図6(e)に示すように、フィードバックゲイン1:収束時間t1、フィードバックゲイン2:収束時間t2、フィードバックゲイン3:収束時間t3、等の態様で記憶する。
【0047】
判定部106は、収束時間記憶部105に記憶された各フィードバックゲイン毎の収束時間に基づいて最適なフィードバックゲインを判定するようになっている。本実施の形態では、判定部106は、収束時間が最も短くなるフィードバックゲインを最適なフィードバックゲインであると判定している。例えば、図6(e)に示すように、収束時間t1>収束時間t2>収束時間t3である場合は、判定部106は、最も短い収束時間t3に対応するフィードバックゲイン3が最適なフィードバックゲインであると判定する。また、判定部106が判定した最適なフィードバックゲインは、制御手段74の制御により、秤量手段21のフィードバックゲイン設定部103に送信され、フィードバックゲイン設定部103はこの最適なフィードバックゲインをサーボ制御部91に設定するようになっている。なお、判定部106が最適なフィードバックゲインを判定する手法として、本明細書では収束時間の長さに基づいて決定する方法を例示しているが、この他に、例えば、オーバーシュートのレベルによる判定する方法、ナイキストの安定判定法により決定する方法、ボード線図により予め決定したゲイン余裕・位相になるように決定する方法等を含む公知の方法を採用することができる。また、実際に使用されるライン能力から必要な応答特性(制御ゲインで決まる固有振動数を決定する等)を計算し、必要な応答性を満足し、かつ振動などの外乱に対して安定した制御系となるフィードバックゲインを判定するようにしてもよい。
【0048】
表示手段10は、図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。表示手段10は、計量装置1の動作モードが運転モードのときにおいては、計量装置1の動作状態、被計量物Wの計量値、良否判定結果を表示し、計量装置1の動作モードが設定モードのときにおいては、パラメータの設定や動作確認に関する表示をするようになっている。なお、表示手段10は、表示された数字、文字などがタッチ操作により入力されるタッチパネルとして構成し、設定手段11と一体化した構成にしてもよい。
【0049】
選別部5は、計量装置1の後段に接続されており、選別機構部5aおよび搬送ベルト5bにより構成されている。選別機構部5aは、例えば、押し出し型の選別機構により構成されている。選別機構部5aは、良品と不良品とを選別できるものであればよく、フリッパ機構、ドロップアウト機構、エアジェット機構などの選別機構で構成してもよい。選別機構部5aは、上流の秤量コンベア32から搬送される被計量物Wが搬送ベルト5bで矢印B方向に搬送されている間に、不良品と判定された被計量物Wに対して搬送ベルト5bの側面方向への押し出しやジェットエアの吹き付けを行うようになっており、不良の被計量物Wを搬送ベルト5b上から排出し、良品の被計量物Wと区別することにより選別を行っている。また、搬送ベルト5bは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとして構成されており、測定を終了した被計量物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
【0050】
次に、本実施の形態に係る計量装置1の動作を説明する。なお、以下に説明する自動調整処理は、被計量物Wの種類に応じて秤量コンベア32を交換したとき等に、交換後の秤量コンベア32を用いて最も良好な応答性能を得ることができる最適なフィードバックゲインをサーボ制御部91に自動的に設定するための動作であり、モード切替手段77により動作モードが設定モードに設定されているときに行われる。
【0051】
図5の自動調整処理においては、まず、制御手段74の制御により、フィードバックゲイン設定部103がサーボ制御部91に対してフィードバックゲイン1、フィードバックゲイン2、フィードバックゲイン3の何れかのフィードバックゲインを設定する(ステップS1)。
【0052】
ついで、制御手段74の制御により、ステップ入力部101がサーボ制御部91に対してステップ波形を入力し(ステップS2)、収束時間算出部104が秤量信号の過渡応答を監視して収束時間を算出し(ステップS3)、収束時間記憶部105がこの収束時間をフィードバックゲイン毎に対応付けて記憶する(ステップS4)。
【0053】
ついで、制御手段74は、全てのフィードバックゲインによる測定が終了したか否かを判別し(ステップS5)、全てのフィードバックゲインによる測定が終了していない場合は判別が"NO"となりステップS1に戻って残りのフィードバックゲインを順次設定し、全てのフィードバックゲインによる測定が終了している場合は判別が"YES"となり、ステップS6に移行する。
【0054】
ステップS6では、制御手段74の制御により、収束時間記憶部105に記憶されたフィードバックゲイン毎の収束時間に基づいて、判定部106が最適なフィードバックゲインを判定し、ステップS7では、フィードバックゲイン設定部103が最適なフィードバックゲインを秤量手段21のサーボ制御部91に設定する。
【0055】
なお、上記の実施の形態では、計量装置1は、被計量物Wを秤量コンベア32により搬送しながら計量するようになっているが、本発明は、秤量コンベア32のように搬送機能を有さない秤量台を備える構成においても適用することができる。
【0056】
また、上記の実施の形態では、フィードバックゲイン設定部103は、サーボ制御部91のフィードバックゲインを設定するようになっているが、フィードバックゲインに限らず、サーボ制御部91の制御パラメータを設定するものであればよい。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に係る計量装置1では、サーボ制御部91に対し、電磁コイル84を駆動する擬似負荷変動信号としてのステップ波形を入力するステップ入力部101と、サーボ制御部91の制御パラメータを設定するフィードバックゲイン設定部103と、サーボ制御部91にステップ波形が入力されたときの信号処理手段71からの秤量信号を取得し、各フィードバックゲイン毎の秤量信号に基づいて最適なフィードバックゲインを判定する判定部106と、を備え、制御手段74が、フィードバックゲイン設定部103によりサーボ制御部91のフィードバックゲインを順次変更しながら、ステップ入力部101によりサーボ制御部91にステップ波形を入力し、判定部106により各フィードバックゲイン毎の秤量信号に基づいて最適なフィードバックゲインを判定し、フィードバックゲイン設定部103により最適なフィードバックゲインをサーボ制御部91に設定するよう制御することを特徴とする。
【0058】
この構成により、秤量台としての秤量コンベア32を変更した際に、秤量コンベア32に被計量物Wを実際に載置しなくても、ステップ入力部101によりサーボ制御部91にステップ波形を入力することで、変更後の秤量コンベア32に最適なフィードバックゲインをサーボ制御部91に自動的に設定することができる。したがって、秤量コンベア32に応じた最適なフィードバックゲインをサーボ制御部91に自動的に設定することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る計量装置1では、ステップ入力部101が、位置センサ83の目標値をステップ波形で変動することにより、サーボ制御部91に対し、電磁コイル84を駆動する擬似負荷変動信号を入力することを特徴とする。
【0060】
この構成により、位置センサ83の目標値をステップ波形で変動することにより、位置センサ83の目標値がオフセットした状態からオフセットしていない状態に戻すことで、秤量コンベア32に被計量物Wを実際に載置することなく、サーボ制御部91に対し擬似負荷変動信号を入力することができる。
【0061】
また、本実施の形態に係る計量装置1では、電磁コイル84に電圧を印加するコイル印加部92と、秤量コンベア32の所定位置からの変位を抑制するようコイル印加部92の電圧を制御するサーボ制御部91と、を有し、パルス入力部102が、コイル印加部92への入力信号をパルス波形で変動することにより、サーボ制御部91に対し、電磁コイル84を駆動する擬似負荷変動信号を入力することを特徴とする。
【0062】
この構成により、コイル印加部92への入力信号をパルス波形で変動することにより、秤量コンベア32に被計量物Wを実際に載置することなく、サーボ制御部91に対し擬似負荷変動信号を入力することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る計量装置1では、判定部106が、各フィードバックゲイン毎の秤量信号の収束時間に基づいて、最適なフィードバックゲインを判定することを特徴とする。
【0064】
この構成により、秤量コンベア32を変更した際に、秤量コンベア32に被計量物Wを実際に載置しなくても、変更後の秤量コンベア32に最適なフィードバックゲインをサーボ制御部91に自動的に設定できるので、秤量コンベア32の種類によらず安定した応答性能を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係る計量装置は、秤量台に応じた最適な制御パラメータを電磁コイルの駆動制御手段に自動的に設定することができるという効果を有し、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を計量して良否を判定する計量装置として有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 計量装置
3 搬送部
5 選別部
7 総合制御部
10 表示手段
11 設定手段
14 ベルトコンベア
21 秤量手段
31 助走コンベア
32 秤量コンベア(秤量台)
71 信号処理手段(秤量信号出力手段)
72 計量手段
73 記憶手段
74 制御手段
76 良否判定手段
77 モード切替手段
81 支点
82 さお
83 位置センサ(位置検出手段)
84 電磁コイル
85 吊り板
86 平行バネ
87 共通基台
88 磁石
91 サーボ制御部(駆動制御手段)
92 コイル印加部(駆動制御手段)
93 電流検出抵抗
94、100 増幅器
95 アナログフィルタ
96 A/D変換器
97 フィルタ
101 ステップ入力部(擬似負荷変動信号入力手段)
102 パルス入力部(擬似負荷変動信号入力手段)
103 フィードバックゲイン設定部(制御パラメータ設定手段)
104 収束時間算出部
105 収束時間記憶部
106 判定部(最適制御パラメータ判定手段)
W 被計量物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物(W)を載置するとともに異なる種類に交換可能な秤量台(32)と、
被計量物による荷重変化により前記秤量台の所定位置からの変位を検出する位置検出手段(83)と、
前記荷重に対向する力を前記秤量台に与える電磁コイル(84)と、
前記位置検出手段からの検出信号を受け、所定の制御パラメータを用いて前記秤量台の所定位置からの変位を抑制するよう前記電磁コイルを駆動制御する駆動制御手段(91、92)と、
前記電磁コイルに流れる電流値に応じて秤量信号として出力する秤量信号出力手段(71)と、
前記駆動制御手段に対し、前記電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力する擬似負荷変動信号入力手段(101、102)と、
前記駆動制御手段の制御パラメータを設定する制御パラメータ設定手段(103)と、
前記駆動制御手段に擬似負荷変動信号が入力されたときの前記秤量信号出力手段からの秤量信号を取得し、各制御パラメータ毎の秤量信号に基づいて最適な制御パラメータを判定する最適制御パラメータ判定手段(106)と、
前記制御パラメータ設定手段により前記駆動制御手段の制御パラメータを順次変更しながら、前記擬似負荷変動信号入力手段により前記駆動制御手段に擬似負荷変動信号を入力し、前記最適制御パラメータ判定手段により各制御パラメータ毎の秤量信号に基づいて最適な制御パラメータを判定し、前記制御パラメータ設定手段により最適な制御パラメータを前記駆動制御手段に設定するよう制御する制御手段(74)と、を備えたことを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記擬似負荷変動信号入力手段が、前記位置検出手段の目標値をステップ波形で変動することにより、前記駆動制御手段に対し、前記電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段が、前記電磁コイルに電圧を印加するコイル印加部(92)と、前記秤量台の所定位置からの変位を抑制するよう前記コイル印加部の電圧を制御するサーボ制御部(91)と、を有し、
前記擬似負荷変動信号入力手段が、前記コイル印加部への入力信号をパルス波形で変動することにより、前記駆動制御手段に対し、前記電磁コイルを駆動する擬似負荷変動信号を入力することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
前記最適制御パラメータ判定手段が、各制御パラメータ毎の秤量信号の収束時間に基づいて、最適な制御パラメータとしての最適なフィードバックゲインを判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の計量装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−173165(P2012−173165A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36112(P2011−36112)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)