説明

記録システムおよびそれに用いられる記録票ならびにデータ記録方法

【課題】 情報を簡単に追記でき、且つ、記録内容を人および機械が簡単に読み取ることができる記録システム、および、その記録システムに用いられる記録票を提供する。
【解決手段】 データを書き込める記録部を備える記録票と、記録部に記録材を配置することによってデータを書き込むための書き込み手段とを含む記録システムである。記録材は、視認可能で且つ導電性であり、記録部には複数の電極10aおよび10bが形成されており、複数の電極のうち2つ以上の電極が記録材で接続されることによってデータが書き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データの書き込みが可能な記録票を用いた記録システムおよび記録方法、ならびにそれらに用いられる記録票に関する。
【背景技術】
【0002】
識別カードは、物品の識別情報などを記録するカードとして広く用いられている。この識別カードと外部機器との間の情報の授受には、電極を用いたり、近接距離での無線通信を用いたりすることが行われている。これらの方法では、カードに書き込まれた情報を人が容易に取得する事はできず、機器を介して情報を取得する必要がある。しかし、荷札や整理札などの識別カードは、人が容易に情報を読み出せる方が好ましい場合がある。また、人が情報を直接記録し、その記録内容の確認をしたい場合にも、人が容易に情報を視認できる方が好ましい場合がある。
【0003】
記録された情報を光学的および電気的に読み出せる識別カードとして、例えば、「バーコード形状の電気的接触接続手段を備えたカセットまたはディスケット」が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、記録された情報を光学的および電気的に読み出せる識別カードとして、電解質インクで情報が記録されるカードも提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、無線通信で識別コードを書き換えることによって、光学的に読み取ることができるように識別コードを表示する方法も提案されている(特許文献3)。
【0006】
また、機器で読み取れる情報を人が容易に記録でき、しかも、記録内容を人が容易に確認できる方法として、光学的マーク読み取り(OMR)の票や光学的文字読み取り(OCR)の票なども広く用いられている。
【特許文献1】特表平7−509577号公報
【特許文献2】特開平7−175877号公報
【特許文献3】特開2003−84316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の識別カードでは、情報を簡単に記録できること、および、記録内容を人および機械が簡単に読み取れること、という要望を充分に満たすことができない。
【0008】
このような状況において、本発明は、情報を簡単に記録でき、且つ、記録内容を人および機械が簡単に読み取ることができる記録システムおよび記録方法を提供することを目的の1つとする。また、本発明は、その記録システムに用いられる記録票を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の記録システムは、データを書き込める記録部を備える記録票と、前記記録部に記録材を配置してデータを書き込むための書き込み手段とを含む記録システムであって、前記記録材が、視認可能で且つ導電性であり、前記記録部には複数の電極が形成されており、複数の前記電極のうち2つ以上の前記電極が前記記録材で接続されることによって前記データが書き込まれる。
【0010】
また、本発明の記録票は、上記本発明の記録システムに用いられる記録票であって、データを書き込める記録部を備え、前記記録部には複数の電極が形成されている。
【0011】
また、本発明の記録方法は、記録票にデータを記録する方法であって、前記記録票が、前記データを書き込むための部分であって複数の電極が形成された記録部を備え、複数の前記電極のうち2つ以上の前記電極を接続するように、視認可能で且つ導電性の記録材を配置して前記データを記録する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の記録システムおよび記録方法によれば、情報を簡単に記録でき、且つ、記録内容を人および機械が簡単に読み取ることができる。この記録システムおよび記録方法では、人が容易に取り扱える小型の用具でデータを簡単に記録・追記できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では例を挙げて本発明を説明する場合があるが、本発明は以下に説明する例に限定されない。
【0014】
<記録システム>
本発明の記録システムは、データ(情報)を書き込める記録部を備える記録票と、記録部に記録材を配置してデータを書き込むための書き込み手段とを含む。記録材は、視認可能で且つ導電性である。記録部には複数の電極が形成されている。複数の電極のうち2つ以上の電極が記録材で接続されることによってデータが書き込まれる。
【0015】
この記録システムでは、書き込まれたデータを電気的に読み出すことが可能である。通常、複数の電極間の抵抗として、書き込まれたデータが電気的に読みとられる。また、このデータは、視認可能な材料で記録されるため、記録されたデータを人が目視で容易に確認できる。
【0016】
(記録材)
記録材は、視認可能で導電性を有する材料で形成される。ここで、視認可能とは、目視で記録材の配置を認識できることをいう。視認を容易にするため、記録材の色は、記録材が配置される基材や電極とは、できるだけ異なる明度や異なる彩度や異なる色相であることが好ましい。たとえば、基材の色が透明や白色や薄い色である場合には、記録材は濃い色(黒色、茶色、青色、赤色など)であることが好ましい。
【0017】
また、記録材に必要な導電性は、記録材で電極が接続されたことを電気的に読み取りが可能な程度であればよく、読み取り回路の構成によって決定される。記録材の電気抵抗は、記録内容を読む回路の構成によって左右されるが、通常、電極が接続されているトランジスタの高抵抗状態での電気抵抗の1/3以下程度であれば、MOSトランジスタでもバイポーラトランジスタでも多くのトランジスタで使用できる。より好ましくは、記録材の電気抵抗を、電極が接続されているトランジスタの高抵抗状態での電気抵抗の1/10以下とすると動作速度が上がるので良い。
【0018】
記録材は、導電性粒子や導電性高分子などの導電性物質を含む。導電性粒子や導電性高分子の具体例については、後述するインクの説明において述べる。
【0019】
本発明の記録システムでは、記録材は、導電性粒子の凝集体であってもよい。導電性粒子には、後述するインクで用いる導電性粒子と同じものを適用できる。この場合の記録材は、たとえば、鉛筆の芯のように、導電性粒子である黒鉛と潤滑材や結着材などとを混合したのち焼成して得られるものであってもよい。また、導電性粒子と油脂などとを混合してパステル状としたものであってもよい。また、ほとんど導電性粒子のみからなる材料を焼結してコンテ状としたものであってもよい。記録材はスティック状にしなくてもよいが、スティック状にすることによって書き込みが容易になる。また、人が取り扱う際に手が汚れないように、記録材の周囲を記録材とは異なる材料で覆ってもよい。たとえば、鉛筆のように、細い記録材の周囲を、記録材とは別の材料で囲んでもよい。また、クレヨンのように、記録材そのものを人が取り扱えるほど太くしてもよい。書き込み時に望む個所へ記録でき、望まない個所への記録を回避できる限り、記録材の太さや形状に特に限定はない。
【0020】
また、本発明の記録システムでは、書き込み手段が、導電性物質を含有するインクを備え、インクによって記録材が形成されてもよい。この場合、導電性物質は、導電性粒子または導電性高分子であってもよい。インクの状態では、視認性や導電性の有無は問わないが、塗布されたインクによって形成される記録材は、視認性および導電性を有する。なお、インクは、様々な添加剤、たとえばインクの保存性を向上させるための添加剤などを含んでもよい。
【0021】
インクは、導電性粒子を溶媒(分散媒)に分散させることによって得られるインクであってもよい。導電性粒子としては、金属粒子や炭素粉などが好ましい。金属粒子の中でも、貴金属(たとえば銀や金)の粒子が特に好ましい。また、コロイド状の導電性高分子や、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなども導電性粒子として利用できる。これらの導電性粒子と結着材と溶媒とを混合することによってインクが得られる。また、導電性粒子と結着材とを混合することによって得られるインクを用いてもよい。具体的には、金ペースト、銀ペースト、白金ペースト、銅ペースト、コロイダルカーボンなど、一般に利用されている印刷可能な導電性インクを使用できる。特に、熱処理をせずとも導電性が高いものを用いることが好ましい。例えば、ニラコ社AG−400100やスリーボンド社3380Bなどの導電性接着剤を用いてもよい。また、トランジスタで電圧としてデータを読みとる場合には、より抵抗が大きい記録材を使用できるので、例えばニラコ社AG400109やAG400140、スリーボンド社3301の様な、150℃程度で硬化させる導電ペーストを加熱硬化させずに室温硬化させて使用してもよい。
【0022】
インクの溶媒には、本発明の記録票を過度に損傷しない溶媒が用いられる。溶媒としては、例えば、水や、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール類や、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類や、エチルセルソルブやブチルセルソルブやジオキサンやテトラヒドロフランなどのエーテル類や、アセトンやイソブタノンやシクロヘキサノンなどのケトン類や、トルエンやキシレンやメシチレンやヘキサンやシクロヘキサンやヘプタンやオクタンなどの炭化水素類などが挙げられる。これらの化合物に、1種以上の置換基を導入したり、酸素や窒素やそれ以外のヘテロ元素を導入したりしてもよい。また、複数種の溶媒を混合してもよい。また、溶媒を用いないで、光や温度で硬化する結着材を用いてもよい。また、導電性粒子を分散させるために、界面活性剤を用いたり表面改質処理を行ったりしてもよい。
【0023】
また、インクは、可溶性の導電性高分子を溶媒に溶解したインクであってもよい。導電性高分子としては、たとえば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンやそれらの誘導体を用いることができる。ポリアニリンは水溶性である。ポリピロールやポリチオフェンを水溶性とするために、側鎖に陰イオンを導入してもよい。また、これら導電性高分子を油溶性とするために、側鎖や末端にアルキル基やシクロアルキル基、エーテル基などを導入してもよい。溶媒には、水性の溶媒を用いてもよいし、有機溶媒を用いてもよく、導電性物質、基材および用途を考慮して選択される。
【0024】
また、スタンプ状の書き込み手段を用いて記録材を配置してもよい。また、データの書き込みを機器で行ってもよい。例えば、ペンプロッタを用いた書き込みや、スタンプ印刷、転写印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、昇華印刷といった印刷法による書き込みを行ってもよい。
【0025】
本発明の記録システムでは、書き込み手段が、記録部に記録材を配置するためのペン状の器具を含んでもよい。この器具は、たとえば、上述した導電性粒子の凝集体や、インクを含む。ペン状の器具を用いることによって、人が容易にデータを書き込める。
【0026】
(記録票)
記録票は、データを書き込める記録部を備える。記録部には複数の電極が形成されている。複数の電極のうち2つ以上の電極が記録材で接続されることによって、データが書き込まれる。なお、この記録票は、データを書き込める記録部に加え、予めデータが書き込まれている固定記録部を備えてもよい。
【0027】
記録部の複数の電極は、1組以上の電極対を構成する。電極対を構成する電極間の抵抗値によって、その電極対に書き込みがなされたかどうかを判別できる。また、複数の電極対をマトリクス状に配置することによって、書き込まれた文字や数字を判別することも可能である。電極対の数は、目的に応じて設定される。
【0028】
電極対は、一定の間隔をおいて配置された2つの電極を含む。電極対の形状の例を図1(a)〜(f)に示す。これらの電極対10は、電極10aと電極10bとで一対となっている。図1(b)や(c)のように斜めに間隙を設けると、間隙に沿った方向でない限り、記録材が縦に配置されても横に配置されても記録状態を検知できる。また、電極10aを囲むように環状の電極10bを配置してもよい。たとえば、同心円状に2つの電極を配置してもよい。また、図1(d)のように、四角形の電極を、四角環状の電極で囲んでもよい。また、図1(e)のように、楕円の電極を用いてもよい。また、図1(f)のように、楕円の電極を、外形が四角形である電極で囲んでもよい。なお、電極対の形状に限定はなく、他の様々な形状を適用できる。
【0029】
誤記を防ぐために、区切りの線や模様を電極対や電極群の周囲にプリントしておいてもよい。この線や模様は、例えば「〔 〕」のように部分的に途切れてもよいし、環状であってもよい。また、使用者が所定の記録部を選択して記録しやすい様に、電極対や電極群の上に所定のマークを描いておいたり、電極対や電極群の電極と間隙の形状を、文字や所定のマーク形状としたりすることなども可能である。
【0030】
また、3個以上の電極を1組の電極群としてもよい。この場合、記録部の複数の電極は、1組以上の電極群と必要なら1組以上の電極対とによって構成される。このときの電極群の一例を図2に示す。図2の電極群20は、互いに一定の間隔をおいて配置された電極20a〜20eを含む。このような電極群を用いることによって、2つの対向する電極対を複数配置した記録部よりも小さな面積で情報を記録することが可能となる。
【0031】
電極の大きさおよび間隔は、記録材で記録された内容を視認することを考慮して決定すればよい。電極の大きさおよび間隔は、汚れによる誤作動や誤記を防止することを考慮して決定することが好ましい。
【0032】
誤記を防止するには、電極対同士の間隔は、好ましくは、1つの電極対の幅と同程度以上とすることが好ましい。
【0033】
記録票は、記録されているデータを外部に出力するための出力手段を備える。たとえば、電気的な接触によってデータを出力する場合、記録票は、出力端子と、出力端子と記録部の電極とを結ぶ配線と、必要に応じて信号処理回路とを備える。
【0034】
無線によってデータを出力する場合、記録票は、記録されているデータを無線で送信するための無線通信手段を備えてもよい。無線通信手段を備える記録票、すなわち無線通信票によれば、票が裏返されたり物陰になったりという状態でも、データを無線通信で読み出すことができる。この構成では、単純な構造の読み取り機で、複数枚の記録票を読みとることが可能である。また、この構成では、多数の記録票のデータを短時間に読み取ることが可能である。
【0035】
無線通信手段は、通常、記録部の電極に接続された信号処理回路と、信号処理回路に接続されたアンテナと、電源回路とを備える。信号処理回路は、記録部に記録されたデータを読み出し、その内容を出力する。電源回路は、信号処理回路に電力を供給する。信号処理回路、電源回路、アンテナには、公知のものを適用できる。記録票の構成の一例を図3に示す。
【0036】
図3の記録票は、アンテナ回路101と、共振回路102と、整流回路103と、電源回路104と、信号処理回路105と、記録回路106とを含む。信号処理回路104は、リセット回路、クロック抽出回路、カウンタ、デジタル制御回路および変調回路を含む。記録回路106は、アドレスデコーダと、記録部と固定記録部とを含む。アンテナ回路101は、共振回路102と別にあってもよいし、共振回路102の一部であってもよい。なお、図3には記載していないが、既存の無線通信識別票で使われているような、輻輳制御や書き込みの機能などを加えてもよい。
【0037】
記録部に書き込まれたデータは、電極間の電気抵抗値をそのまま測定することによって読み出してもよい。また、記録部の電極対を、トランジスタの出力や出力バイアス抵抗に接続し、記録材で電極対が接続されるとトランジスタの出力や出力バイアス抵抗が短絡されるようにしてもよい。この場合、書き込まれたデータはトランジスタの電圧値として読み出すことができる。なお、読み出しを明確にするために、例えば論理否定回路のような電圧2値化バッファ回路を用いてデータを読み出してもよい。
【0038】
記録票の基材には、樹脂板やセラミック板などの剛性の高い基材を用いてもよい。また、樹脂フィルムや合成紙などの柔軟な基材を用いてもよい。柔軟な材料としては、たとえば、ポリイミドやポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどの材料が挙げられるが、特に、可撓性を向上させたものが好ましい。人が取り扱う場合や外力が加わった場合に復元力のある可撓性シートの方が、記録票の耐久性が向上する。特に、2軸延伸多孔性ポリプロピレンは、記録材による書き込みが容易で可撓性もあり好ましい。
【0039】
多孔性樹脂シートを基材とする場合には、記録部以外の部分に、表面を平滑にするためのコーティングを行い、電気回路などを作製しやすくしてもよい。記録材で記録を行うことを考慮して、通常、記録部には平滑コーティングを行わない。
【0040】
また、記録票は、短期的な使用サイクルで廃棄される用途では特に、焼却処分できる材料で全体を構成してもよい。記録票は、電気系保護などのために防水防湿処理をしたり、耐光処理をしたりしてもよい。好ましくは、記録部のみを表面に配置し、その他の部分は記録票の内部に配置されるのがよい。また、記録票は、取りつけや固定のための部材、たとえば、帯や紐、両面粘着テープ、面ファスナーなどを備えてもよい。
【0041】
本発明の記録システムで用いられる記録票は、本発明の記録票である。すなわち、本発明の記録票は、上記本発明の記録システムに用いられる記録票であって、データを書き込める記録部を備え、記録部には複数の電極が形成されている。
【0042】
記録票に記録されたデータを読みとる装置には、データの読みとりに用いられてきた公知の読みとり機を適用できる。データを電気的な接続を介して読みとる場合、読みとり機は、記録票の出力端子に接続される端子を備える。また、データを無線で読みとる場合、読みとり機は、無線通信装置などを備える。
【0043】
本発明で用いられる記録票および記録材は、公知の方法で製造できる。たとえば、記録票の回路の主要素は、シリコンなどの無機半導体で作製してもよいし、有機半導体や有機導電体で作製してもよい。無線通信アンテナや配線や記録部の電極は、印刷で容易に作製できる。例えば、金属粒子や炭素粒子を用いた導電性インクや導電性高分子インクなどを、スタンプ印刷、転写印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、昇華印刷などの方法で印刷すればよい。また、メッキやエッチングやスパッタ法や蒸着法を使用してもよい。また、これらの方法で配線や電極を形成したのち、さらにメッキを行い、導電性や耐久性の向上を図ってもよい。
【0044】
<記録方法>
本発明のデータ記録方法は、記録票にデータを記録する方法であり、上記の記録システムで説明した記録方法である。記録票は、データを書き込むための部分であって複数の電極が形成された記録部を備える。そして、複数の電極のうち2つ以上の電極を接続するように、視認可能で且つ導電性の記録材を配置してデータを記録する。記録票および記録材については、上述したため、重複する説明を省略する。
【0045】
なお、本発明の記録システムおよび記録方法では、記録票の記録部に配置された記録材を除去することによって、記録票に書き込まれたデータを消去することが可能である。データを消去することによって、記録票を繰り返し使用できる。記録材の除去の方法は、記録材の種類に応じて選択される。たとえば、インクで形成された記録材は、通常、インクの溶媒を用いて除去することが可能である。また、鉛筆などで形成された記録材は、消しゴムで除去することが可能である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、この実施例は本発明の一例であり、本発明はこの実施例に限定されない。たとえば固定記録部や追記可能な記録部の桁数は、変更してもよい。
【0047】
記録票の基材として、2軸延伸ポリプロピレンシート(厚さ210μm;ユポ社製のVNFW215)を用意した。このシートに、銀ペーストを用いて、配線パターンとアンテナパターンと追記可能な記録部の電極とをスクリーン印刷で形成した。次に、配線パターンとアンテナパターン上に、金の膜(厚さ0.05μm)を真空蒸着によって形成した。記録部30における電極対10の配置パターンを図4に示す。また、追記可能な記録部30、配線およびアンテナ40のパターンを図5に示す。
【0048】
図4の記録部30は、10列×4行の配列で配置された40個の電極対10を含む。電極対10には、図1(a)の形状の電極対を用いた。具体的には、縦1mm×横2mmの電極2つを2mmの間隔を空けて縦に配置して、電極対とした(電極対の大きさは、縦4mm×横2mmとした)。それぞれの電極対は、電極対の大きさと同じ間隔を空けて配置し、電極対全体のサイズを縦28mm×横38mmとした。
【0049】
次に、図6(a)〜(c)に示す製造工程で無線通信票を作製した。まず、絶縁性ニスで配線の端子部分以外をマスキングした。そして、固定記録部88桁を含む無線通信回路チップと電源回路チップとを含む回路チップ52を基材51上に配置し、金ワイヤボンダーで配線パターンと接続した。次に、記録部30以外の部分にアクリル系樹脂を塗布することによって保護膜を形成した。さらに、回路チップ52とアンテナ40の上に、2軸延伸ポリプロピレンの保護シート53を、ゴム系接着剤を用いて接着した。記録部上には、保護シート53を貼らなかった。このようにして無線通信票を得た。
【0050】
この実施例の記録票は、88桁の固定記録部と追記可能な40桁の記録部とによって構成される128桁の記録部を備える。
【0051】
この実施例では、電極対が記録材で接続されていない状態を「0」とし、電極対が記録材で接続された状態を「1」とする。作製した無線通信票を、データの読み取り用の通信機上に置き、データの読み取りを行ったところ、記録部40桁のデータはどれも「1」を示した。次に、記録部の1つの電極対に、直径0.5mmの鉛筆芯(三菱鉛筆社製の鉛筆芯ユニ(HB))で線を引いて電極間をつなぎ、通信機でデータの読み取りを行ったところ、線を引いた電極対のデータは「0」を示した。このとき、線を引く前に2MΩ以上であった電極間の電気抵抗は、線を引いた後には150kΩと小さくなった。さらに、すべての電極対について電極間を同様に鉛筆芯でつなぎ、通信機で読み取りを行った。その結果、記録部の40桁のデータはすべて「0」を示した。なお、線は、人が手に持ったシャープペンシルで引いた。線を引く作業および引かれた線の確認は、目視で行った。
【0052】
この実施例の記録システムでは、記録部に記録されたデータを電気的に読み出すことができ、人がデータを追記でき、また、人が追記内容を視認できた。
【0053】
この実施例では、基材の一方の面に、アンテナ、配線、各種回路および記録部の電極を形成したが、それらは、別の面に形成してもよい。たとえば、アンテナ、配線および回路を基材の一方の面に形成し、記録部の電極を基材の他方の面に形成し、それらを、基材を貫通する配線で接続してもよい。この構成によれば、アンテナなどが形成されている基材の一方の面に、その面と同じ面積の保護シートを貼り合わせることができるため、保護シートが剥がれることを抑制できる。なお、基材を貫通する配線は、基材に貫通孔を形成し、その内部に導電性ペーストやメッキ法で導電部材を配置することによって形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、種々の票に利用でき、例えば、容易に追記できる識別票、回答を記入するための回答票、投票券、集計票などに利用できる。また、一般に個別識別票が利用できる分野、たとえば、荷物管理や商品管理やFA管理に用いられるPOSや荷札などにも利用できる。また、書棚やファイリングシステムにおける、図書や帳票やファイルなどの個別識別票や目次票にも利用できる。また、入場票などにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の記録票の記録部の電極対の形状の例を模式的に示す平面図。
【図2】本発明の記録票の記録部の電極群の形状の例を模式的に示す平面図。
【図3】本発明の記録票の構成の一例を模式的に示す図。
【図4】本発明の記録票の記録部における電極対の配置の例を模式的に示す斜視図。
【図5】本発明の記録票の電極、配線およびアンテナの形状の一例を模式的に示す平面図。
【図6】本発明の記録票の製造方法の一工程を模式的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0056】
10 電極対
10a、10b、20a〜20e 電極
20 電極群
30 記録部
40 アンテナ
51 基材
52 回路チップ
53 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを書き込める記録部を備える記録票と、前記記録部に記録材を配置してデータを書き込むための書き込み手段とを含む記録システムであって、
前記記録材が、視認可能で且つ導電性であり、
前記記録部には複数の電極が形成されており、
複数の前記電極のうち2つ以上の前記電極が前記記録材で接続されることによって前記データが書き込まれる記録システム。
【請求項2】
前記記録材が、導電性粒子の凝集体である請求項1に記載の記録システム。
【請求項3】
前記書き込み手段が、導電性物質を含有するインクを備え、
前記インクによって前記記録材が形成される請求項1に記載の記録システム。
【請求項4】
前記導電性物質が導電性粒子または導電性高分子である請求項3に記載の記録システム。
【請求項5】
前記書き込み手段は、前記記録部に前記記録材を配置するためのペン状の器具を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録システム。
【請求項6】
複数の前記電極が、1組以上の電極対によって構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録システム。
【請求項7】
前記記録票が、記録されている前記データを無線で送信するための無線通信手段を備える請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録システムに用いられる記録票であって、
データを書き込める記録部を備え、前記記録部には複数の電極が形成されている記録票。
【請求項9】
記録票にデータを記録する方法であって、
前記記録票が、前記データを書き込むための部分であって複数の電極が形成された記録部を備え、
複数の前記電極のうち2つ以上の前記電極を接続するように、視認可能で且つ導電性の記録材を配置して前記データを記録するデータ記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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