説明

記録ヘッド用パッケージ

【課題】記録ヘッド用パッケージに、複数の記録ヘッドを一体化しているねじとナットを締め付ける工具の役目ができるようにする。
【解決手段】記録ヘッド用パッケージ101は、未使用状態にある記録ヘッドを個別に収納するようになっており、記録ヘッドの外形に沿った形状に形成されて記録ヘッドの位置を決める位置決め部105と、位置決め部によって位置決めされた記録ヘッドのねじまたはナットに対向する位置に形成され、ねじの頭部またはナットを受け入れてねじまたはナットの回転止めをする複数の凹部106と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを収納する記録ヘッド用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、液体噴射記録装置(以下、「記録装置」と称する)に対して、高画質で、高速な画像記録の要望が一段と高まっている。このため、最近の記録装置は、ノズルを記録媒体であるシートの幅方向に延在させた記録ヘッドを、搬送方向に複数並べて固定配置し、シートを移動させて印刷動作を行うものが多い。なお、シートの幅方向とは、シートの搬送方向に対して交差する方向のことである。
【0003】
従来の記録装置を図19乃至図22に示す。図19(A)は、従来の記録装置の記録ヘッドの正面図である。図19(B)は、記録ヘッドの斜視図である。
【0004】
記録ヘッド901は、不図示のノズルをシートの幅方向に複数個ライン状に配置したライン方式の記録ヘッドである。記録装置は、ノズルを配置してあるフェイス面902の各ノズルからインクを吐出することで、シートへの画像形成を行う。この記録ヘッド901へのインクの供給は、インクが供給される供給口903をユニット本体920に接続することにより行われる。ユニット本体920は、複数の記録ヘッド901をユニット化するケーシングである。
【0005】
記録ヘッド901には、供給されたインクのオーバーフロー分だけ排出する排出口904も設けられている。また、記録ヘッド901には、記録ヘッド901のユニット本体920への位置決めをするベースプレート905が設けられている。このベースプレート905は、各部品の取り付け基準となる。ベースプレート905は、ライン状に配列されたノズルと、ノズルの吐出を制御する制御基板906とを有している。ベースプレート905には、記録ヘッド901をユニット本体920に位置決めする位置決め部905a,905bも設けられている。
【0006】
次に、図20乃至図22に基づいて、ユニット本体920への記録ヘッド901の装着手順を説明する。記録ヘッド901(図22(A))は、ユーザによってユニット本体920に差し込まれると、記録ヘッドの位置決め部905a,905b(図19(A))がユニット本体の位置決め部910a,910b(図20)に係合して、ユニット本体に位置決めされる。位置決め部910a,910bは、記録ヘッド支持フレーム913に支持されている。記録ヘッド支持フレーム913に複数の位置決め部910a,910bが保持されているので、記録ヘッド901同士は、相対位置関係を保証される。
【0007】
図21は記録ヘッド901をユニット本体920に装着した平面図である。図21に示すように、記録ヘッド901はユニット本体920に並列に配置される。このとき、供給口903(図19(B))は、インク供給口911(図20)に係合し、排出口904は、インク排出口912に係合する。ユニット本体920に装着された記録ヘッド901は、加圧部907(図22(A))により、シートが通過する不図示の搬送面側に押し付けられる。この加圧部907は、ユニット本体920の上枠908に一体に設けられている。上枠908は、図22(B)に示す回動中心部909を中心に回転自在にユニット本体920に支持されている。
【0008】
記録ヘッド901を交換するには、ノズルの吐出を制御する制御基板906とユニット本体920との不図示の接続を外し、図22(A)に示すように上枠908を、回動中心部909を中心にして90度回転させてユニット本体920を開く。すると、加圧部907による記録ヘッド901への加圧が解除される。その後、図22(B)に示すように記録ヘッド901を上方に引き出すことで記録ヘッド901の交換をすることができる。
【0009】
しかし、記録装置は、複数の記録ヘッド901を配置するためには、それぞれ本体と記録ヘッド901の位置決めをするための位置決め部910a,910bが必要となり、装置本体が大型になるという問題があった。また、複数の記録ヘッド同士間の位置決めは、記録ヘッド支持フレーム913に対して位置決め部910a,910bを介して行うため、部品交差の関係上、取り付け精度が低下するおそれがある。
【0010】
この取り付け精度改善のため、特許文献1には、記録ヘッド901の保持手段を一体的に形成し、部品制度の影響を受けるのを少なくした記録ヘッド保持方法が開示されている。
【0011】
しかし、特許文献1に開示された記録装置は、記録ヘッドの位置決め手段を複数設ける必要があり、装置本体が大型になるという課題があった。
【0012】
そこで、本出願人は、記録ヘッドの位置決め手段を複数設けることなく、装置本体が大型になるのを防止した記録ヘッドを発明して出願した。この発明は、複数の記録ヘッドを重ねた状態でねじとナットによって一体化してユニット化するものである。この一体化された複数の記録ヘッドは、記録ヘッド同士で位置ずれを起こすことがなく、一体化された状態で記録装置に着脱されるようになっている。このため、一体化された複数の記録ヘッドは、記録ヘッド個々に位置決め手段を設ける必要がなく、記録装置の小型化に寄与できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−090343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、一体化された複数の記録ヘッドは、いずれかの記録ヘッドを交換するとき、ねじとナットを外さなければ、未使用の記録ヘッドと交換することができない。このため、ねじとナットとを外した後、複数の記録ヘッドを一体化する際、ねじとナットとを締め付けるための工具を用意しておく必要がある。しかも、ねじとナットは、複数組ある場合には、記録ヘッドの交換時に手間を要するという課題があった。
【0015】
そこで、本発明は、複数の記録ヘッドを一体化させているねじとナットとを、締め付けるための工具の役目ができるようにした記録ヘッド用パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、記録ヘッドを個別に収納する記録ヘッド用パッケージにおいて、前記記録ヘッドは、複数重ねられてねじとナットとにより一体化されることによって記録ヘッドユニットを構成するものであって、前記記録ヘッドの外形に沿った形状に形成され、前記記録ヘッドの位置を決める位置決め部と、前記位置決め部によって位置決めされた前記記録ヘッドの前記ねじの頭部または前記ナットに対向する位置に形成され、前記ねじの前記頭部または前記ナットを受け入れて前記ねじまたは前記ナットの回転止めをする回転止め部と、を備えた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の記録ヘッド用パッケージは、記録ヘッドが位置決め部に合わせて置かれて、ねじの頭部またはナットが回り止め部に挿入されると、回り止め部がナットまたはねじを締め付ける際、ねじまたはナットの回り止めの役割を果たす。このため、ねじまたはナットの回り止め工具が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の記録ヘッド用パッケージを開いた状態の斜視図であり記録ヘッドを収納した図である。
【図2】図1のパッケージにおいて、記録ヘッドを収納していないときの斜視図である。
【図3】図1における、ねじの頭部を受け入れる凹部の拡大図である。
【図4】ねじが水平になるように、記録ヘッドユニットをパッケージに置いた図である。
【図5】ねじが縦になるように、記録ヘッドユニットをパッケージに置いた図である。
【図6】図5の状態からナットを外した図である。
【図7】図5の状態から全部の記録ヘッドを取り外した図である。
【図8】液体噴射記録装置のシート搬送方向に沿った断面図である。
【図9】図8の液体噴射記録装置において、上枠ユニットを開いたときの断面図である。
【図10】記録ヘッドのクリーニング動作説明用の図である。
【図11】図10における記録ヘッドの部分拡大図である。
【図12】記録ヘッドの図である。(A)は、記録ヘッドの斜視図である。(B)は、記録ヘッドのカバーを外した図である。
【図13】複数の記録ヘッドをねじとナットで一体化する図である。
【図14】複数の記録ヘッドがねじとナットとによって一体化された図である。
【図15】図8の液体噴射記録装置の斜視図である。(A)は、ヘッド交換用カバーを閉じた図である。(B)は、ヘッド交換用カバーを開いた図である。
【図16】記録ヘッドを交換する動作説明用の図である。(A)は、ヘッドロックレバーを開いて、記録ヘッドユニットを装置本体から引き出し中の図である。(B)は、引き出した記録ヘッドユニットを外したときの図である。
【図17】ヘッド保持フレームの正面図である。
【図18】記録ヘッドが着脱されるときのヘッド保持フレームの斜視図である。
【図19】従来の記録ヘッドの図である。(A)は正面図である。(B)は斜視図である。
【図20】ユニット本体の斜視図である。
【図21】記録ヘッドが装着されたユニット本体の平面図である。
【図22】上枠が取り付けてあるユニット本体の図である。(A)は、上枠を開いてユニット本体に記録ヘッドが装着されている状態を示した図である。(B)は、記録ヘッドをユニット本体から抜き取るときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態のパッケージを図に基づいて説明する。その前に、本発明のパッケージが収納する記録ヘッドが使用される液体吐出記録装置を図面に基づいて説明する。
【0020】
図8は、液体噴射記録装置11のシート搬送方向に沿った断面図である。液体噴射記録装置11の装置本体14には、記録媒体としてのシートPが積載される給紙トレイ16が設けられている。給紙トレイ16に積載されたシートは給紙ローラ17によって給紙され、分離部18に搬送される。分離部18では分離ローラ19と分離パッド20により、シートを1枚ずつ捌いて搬送する。分離部18で捌かれたシートは、画像形成部26の搬送ベルト24と搬送ローラ21,22とにより、印字部23へ搬送される。搬送ベルト24には、ベルトとベルト駆動ローラとの間での滑りによる搬送速度のズレが発生しないようにテンションローラ25によって引張力が加えられている。このため、搬送ベルト24は、所定のテンション(引張力)を受け、張った状態で駆動ローラに対して滑ることなく循環している。このとき、シートと画像との搬送方向の位置を合わせるため、画像形成部26の搬送ローラ21と搬送ローラ22との間には不図示のシート検知センサが設けられている。シート検知センサは、シートの位置を検知し、印字部23において記録ヘッドからのインクの吐出タイミングとシートの位置とを合わせられるように、不図示の搬送部に検知信号を送信する。
【0021】
次に、印字部23のインク吐出動作について説明する。装置本体14は、不図示のホストPCに接続されており、ホストPCから送信される記録情報に基づいて、4つの記録ヘッド15K,15C,15M,15Yからシートにインクを吐出して画像を形成する。4つの記録ヘッド15K,15C,15M,15Yは、シートの搬送方向(矢印A)に並んで配置されている。各ヘッドは搬送方向の上流側から黒インク用記録ヘッド15K、シアンインク用記録ヘッド15C、マジェンタインク用記録ヘッド15M、イエローインク用記録ヘッド15Yの順に互いに平行に配置されている。記録ヘッド15K,15C,15M,15Yは、いわゆるラインヘッドであり、シート搬送方向Aに対して交差する方向(シートの幅方向)に複数のノズルが並んで配置されている。ノズルの配置幅は、使用するシートの最大記録幅以上の幅になっている。記録ヘッドは、各ヘッドを移動走査させることなく、記録ヘッドに設けられた不図示のヒータを駆動してノズルからインクを吐出し、シートに画像を形成(記録)することができる。画像を記録されたシートは、排出ローラ対30により、装置本体14の外へ排出される。
【0022】
排出ローラ対30によって排出されたシートは、排紙トレイ31に積載される。この排紙トレイ31は、不図示の駆動源によって装置本体14に沿って昇降するようになっている。排紙トレイ31は、積載されたシートの積載枚数に応じて昇降して、排出ローラ対30から排出されるシートが積載されやすい高さ位置に調整されるようになっている。
【0023】
装置本体14は、図9に示すように、回転中心軸33を中心に、ユーザが上枠ユニット34を矢印F方向に回転させると、搬送ローラ21,22と搬送ベルト24とのニップ、排出ローラ対30のニップとを解除することができる。このため、装置本体14は、シートが画像形成部26に詰まっても、ユーザによって詰まったシートを取り除くことができるようになっている。
【0024】
次に、記録ヘッドにインクを供給する動作を説明する。装置本体14には、供給用のインクタンク32K,32C,32M,32Yが設けてある。このインクタンク32K,32C,32M,32Yと記録ヘッド15K,15C,15M,15Yは不図示のチューブによって、接続されている。インクは、ノズルに発生する毛管力により、自動的にノズルに供給される。記録ヘッドとインクタンクの高低差は、毛管力>水頭差圧になるように、設定されている。また、記録ヘッド内のインク量は、不図示のセンサによって定期的に検知される。このため、記録ヘッドは、インク量が所定量以下になると、別に設けられた不図示のポンプにより、記録ヘッド内を負圧にし、インクをインクタンクから吸引して、インクが供給されるようになっている。これらの構成によって、記録ヘッド内は所定のインク量を溜めることができる。
【0025】
次に、図10、図11に基づいてヘッドの回復動作を説明する。ヘッドは、記録に伴って、ノズルの開口部である吐出口が形成された面(以下、「フェイス面」と称す)にゴミやインク滴等の異物が付着することで吐出状態が変わり、画質を低下させることがある。そのため、液体噴射記録装置11には、各記録ヘッド15K,15C,15M,15Yから安定してインクを吐出できるように、回復ユニット27が設けられている。
【0026】
回復ユニット27は、ヘッドが記録を行わないときに、吐出口面のクリーニングを定期的に行うようになっている。
【0027】
回復ユニット27は、次のようにしてクリーニング動作を行う。まず、不図示のクリーニングブレードによって、ヘッドフェイス面のゴミ等の異物を欠き落とす。そして、図10、図11に示すように、ヘッドに回復ユニット27を密着させ、ノズルを密閉する。その密閉状態で、別に設けられた不図示のポンプにより、ノズルに吸引圧を加えて、ゴミや固着したインクなどの異物をノズルから吸い取り、排出口28から回収タンク29へと排出する。また、回復ユニット27は、ヘッドからインクを吐出していないとき、ヘッドに密着して、ノズルフェイス面の保護するようにしている。このような、回復ユニット27によるクリーニング動作によって、記録ヘッド15K,15C,15M,15Yは、ノズルの状態を使用初期のような良好な状態を維持される。
【0028】
次に図12乃至図14に基づいて、記録ヘッド15と記録ヘッドユニット35と、これに関する構成を説明する。
【0029】
図12乃至図14に基づいて、記録ヘッド15と記録ヘッドユニット35とを説明する。図12(A)に示すように記録ヘッド15には、記録ヘッドを持つための取手38、供給口36、排出口37等が設けられている。また、記録ヘッド15は、ベースプレート39に不図示のノズルが複数個1列に配置されており、このノズルを配置したフェイス面40からインクが吐出されて、シートに記録を行う(画像を形成する)ようになっている。また、記録ヘッド15は板状に形状されており、図14のように、厚み方向に記録ヘッドを複数重ねた状態で並べて一体化させることができる。
【0030】
図12(B)は記録ヘッドのカバー41(図12(A))を外して、ヘッドの内部を露出させた正面図である。記録ヘッド15は、供給口36から供給されたインクをフィルタ42で不純物を除去し、記録ヘッド内の液室43に貯蔵する。記録ヘッド15には、記録ヘッド内のインク量を一定にするため、液面検知センサ44a,44b,44cが設けられている。この液面検知センサは、液室43内のインクが大量に供給され、液面検知センサ44a,44bの間をインクで満たされると、電気的導通により、液面を検知するようになっている。液面検知センサ44cまでインクが満たされると、液面検知センサ44cは、液面上限を検知し、インクの供給を停止させるようになっている。また、万が一、インクが液面検知センサ44cの上限検知位置よりもさらに多く供給された場合、インクは、排出口37から回収タンク29に排出されるようになっている。
【0031】
さらに、記録ヘッド15の両脇(記録ヘッドのノズル配列方向に関して、記録ヘッドの両端位置)には、図12(A)、(B)に示すように、記録ヘッド15の厚み方向に貫通した貫通孔65a,65bが形成された、筒状の連結部45a,45bが設けられている。図13、図14に示すように、4つの記録ヘッドは、記録ヘッド15の厚み方向に重ねられた状態で、各記録ヘッドの連結部45a,45bにねじ46を貫通させて、ねじ46にナット47をねじ込んで締め付けると、連結状態で一体化されるようになっている。この一体化された4つのヘッドを記録ヘッドユニット35という。なお、ヘッドの数は、4つに限定されるものではない、2つ以上複数であればよい。
【0032】
図12の左側の貫通孔65aは、4つの記録ヘッド15を一体化させるための第1位置決め孔である。貫通孔65aは、ねじ46が挿入された際、遊びがないような径に形成されている。図12の右側の貫通孔65bは、記録ヘッド15の長手方向(記録ヘッド15のノズル配列方向)にねじ46に対する遊びを有する第2の位置決め孔である長孔である。しかし、貫通孔65aは、長手方向に交差する方向(フェイス面40に交差する方向)にはねじ46に対する遊びを有していない。貫通孔65bが長孔なのは、貫通孔65aにねじ46を貫通させた後、貫通孔65bにもねじ46を貫通させるとき、各部の加工誤差によって貫通孔65b同士の相対位置に多少のずれがあってもねじ46を貫通できようにするためである。
【0033】
このように、ねじ46及びナット47によってヘッド同士が重なって連結されて形成された記録ヘッドユニット35は、記録ヘッド15同士の間隔が必要最小限になる。このため、記録ヘッドユニット35は小型になる。
【0034】
さらに、連結部45a,45bは、記録ヘッド15のベースプレート39に設けられている。このため、連結部45a,45bにねじ46を貫通させると、ヘッド同士の相対位置が決まるだけでなく、ノズルもベースプレート39に設けられているため、不要な部品公差が積み上がることなくノズルの相対位置も決まる。このため、ヘッドは、シートに高画質の画像を記録することができる。
【0035】
また、記録ヘッドユニット35は、図13に示すように取手38を有することによって、4つの記録ヘッド15を一体的に装置本体14の上枠ユニット34(図8)に着脱することができる。
【0036】
次に、図15乃至図18に基づいて、記録ヘッド15の装置本体14に対する装着状態を説明する。装置本体14(図15)には記録ヘッドユニット35を保持するヘッド保持フレーム48(図17、図18)が設けられている。記録ヘッドユニット35は、記録ヘッドロックレバー49とヘッド保持フレーム48と間に設けられた不図示の引張ばねにより、図16の矢印B方向に付勢されている。
【0037】
ナット47は、ナット47に形成されたガイド溝51(図13)がヘッド保持フレーム48のスリット状のガイドレール部50(図18)に着脱自在に係合するようになっている。また、ねじ46には、回転リング66(図13)が設けられており、回転リング66は、ヘッド保持フレーム48のガイド溝51とは反対側の内壁に設けられたガイドレール対67(図16(B))に支持されている。ガイドレール対67は、回転リング66を支持する平らな下ガイドレール67aと、回転リング66の外れ防止の役目をする断面逆L字状の上ガイドレール67bとで形成されている。したがって、記録ヘッドユニット35は、ねじ46及びナット47と、ガイドレール部50及びガイドレール対67とを介してヘッド保持フレーム48に支持されて、上下方向(図17の上下方向)の位置が規制され、記録ヘッドの配列方向への位置が規制されている。
【0038】
インクの供給と排出は、ヘッド保持フレーム48に設けられた不図示のジョイントに記録ヘッドの供給口36(図12)と排出口37が連結され、インクの供給と回収が行われる。また、ヘッド保持フレーム48には、制御基板52が設けられている。制御基板52は、インクを吐出するための、記録ヘッド15内の不図示のヒータへの電力供給と、インクの吐出とを制御するようになっている。また、制御基板52(図17)は、ラック53とピニオンギア54により上下動(昇降)するようになっている。制御基板52と記録ヘッド15との電気接続は、ヘッドロックレバー49を図17の矢印G方向に回転させて開くと、ピニオンギア54が回転し、ラック53が上昇することによって、制御基板52が上昇して、解除されるようになっている。図18に示すように、ユーザが、ヘッドロックレバー49を、回転中心部55を中心に矢印G方向に回転させる。すると、ヘッド保持フレーム48と記録ヘッドユニット35との間のロックを解除されて、ヘッド保持フレーム48から図示矢印C方向へ記録ヘッドユニット35を引き出すことができるようになる。
【0039】
次に、ユーザによる記録ヘッドの交換作業を説明する。まず、ユーザは、ヘッド交換用カバー56を開く(図15(B))。ヘッド交換用カバー56は、支持軸57を中心に装置本体14に開閉自在に支持されており、図15(B)に示すように約90度回転したところで、下側のカバー58に突き当たって停止する。ヘッド交換用カバー56を開けると不図示のインターロックスイッチにより、装置本体14から記録ヘッド15への電源供給が遮断される。
【0040】
この状態で、ユーザは、ヘッドロックレバー49を矢印G方向に回転させて、記録ヘッド15のヘッド保持フレーム48に対するロックと、制御基板52との電気接続を解除する。そして、ユーザは、図16(A)に示すように記録ヘッドユニット35をガイドレール部50(図18)及びガイドレール対67(図16(B))に沿って引き出す。この結果、記録ヘッドユニット35を装置本体14から電気的に遮断されてかつ簡単に取り出して、記録ヘッド15を交換することができる。
【0041】
以上の手順で記録ヘッドユニット35の交換ができるが、実際に、記録ヘッド15を4本まとめて交換することはまれであり、1本だけを交換することが大半である。
【0042】
このため、交換用の記録ヘッドは、個別に1つだけ図1に示すパッケージ101に収納されている。本発明のパッケージ101は、記録ヘッドの収納だけでなく、記録ヘッドの交換時にナットとねじを緩めたり締め付けたりするときに工具としても使用できるようになっている。
【0043】
図1は、本発明の記録ヘッド用パッケージを開いた状態の斜視図であり記録ヘッドを収納した図である。記録ヘッド用パッケージ101は、樹脂製であり、未使用状態にある記録ヘッド15を1つ収納できるようになっている。パッケージ101は、記録ヘッド15を収納する本体102と本体102に対して開閉自在に設けられた蓋103とで形成されている。本体102と蓋103との接続部104である境目は、蓋103を開閉できるように、薄肉に形成されている。
【0044】
図2は、記録ヘッドを収納していない開いた状態のパッケージの斜視図である。図3は、図1における、ねじの頭部を受け入れる凹部の拡大図である。
【0045】
本体102には、記録ヘッドをパッケージ内に位置決めをする位置決め部105が形成されている。位置決め部105は、記録ヘッドの外形に沿った形状に形成されている。位置決め部105の深さ(本体102の底部102aからの高さ)は、記録ヘッドの略厚み程度である。
【0046】
また、本体102の底部102aには、4つの記録ヘッドを一体化するねじ46(図13)の正六角形の頭部46aを受け入れる正六角形の回転止め部である凹部106が2箇所形成されている。凹部106は、記録ヘッドユニット35が位置決め部105によって位置決めされて、パッケージ101に置かれた際に、ねじの頭部46aが対向する位置に位置するように形成されている。凹部106の間隔Eは、2本のねじ46(図13、図14)が各ナット47とで4つの記録ヘッド15Y,15M,15C,15Kを一体化したときの間隔Eと同じである。凹部106の周囲には、ナット46の締め過ぎ防止用の逃げ部としてのスリット109が複数形成されている。
【0047】
蓋103には、閉じられたとき、記録ヘッド15を本体102に押し付ける押し付け部107と、記録ヘッド15の脇に位置する位置決め部108が蓋103側に突設されている。
【0048】
次に、ユーザが記録ヘッドを交換する際の手順について説明する。図16のように、ユーザがヘッド交換用カバー56とヘッドロックレバー49とを開いて、記録ヘッドユニット35を装置本体14から取り出す。図4に示すように、ユーザは、取出した記録ヘッドユニット35を、一旦、ねじ46が水平になるようにパッケージ101の本体102にセットする。なお、記録ヘッド15(図12)のフェイス面40や制御基板52などのようにパッケージ101に接触させたくない箇所は、触れないように記録ヘッドとパッケージ101との間に十分な隙間が設けられている。図4において、符号70は、記録ヘッドの間隔を保持するスペーサを示している。
【0049】
次に、ユーザは、2つのナット47をねじ46から取り外す。その後、ユーザは、図5に示すようにねじ46が縦になるように記録ヘッドユニット35の向きを変えてパッケージ101の本体102にセットする。そして、ユーザは、ねじ46の頭部46a(図13、図14)の反対側の端部を手で回転し、頭部46aの回転方向の向きを調節し、ねじ46の頭部46aの反対側端部を手で底部102a方向へ押し込んで、頭部46aを凹部106に挿入する。
【0050】
そして、交換する記録ヘッドとその上に重なっている記録ヘッドとをねじ46から抜き取る(図6)。仮に、一番下の記録ヘッドを交換する場合には、図7に示すように、全部の記録ヘッドをねじ46から抜き取る。ねじ46は、立設状態でパッケージ101に保持される。
【0051】
また、図7に示すように、全部の記録ヘッドをねじ46から抜き取っても、ねじ46は、パッケージ101に立設状態に保持されているので、未使用の記録ヘッドをねじ46に容易に挿入することができる。
【0052】
ユーザは、記録ヘッドの交換後、ねじ46の頭部46aが凹部106に挿入された状態で、ナットを締め付ける。このとき、ねじの頭部46aが凹部106によって回転止めされているので、ナットを緩めたときに使用した工具で締め付けることができる。このとき、2本のねじの頭部46aの回転方向の位置は、凹部106の形状に倣っている。このため、2回目以降の記録ヘッドの交換時には、一体化された4つの記録ヘッドを位置決め部105に合わせてパッケージに置くと、おのずと2本のねじの頭部が凹部106に挿入されて、直ちにナット47を緩めることができる。すなわち、1回目の記録ヘッド交換時に行った、ナットを少し緩める作業が不必要であり、ユーザは、記録ヘッドの交換を簡単にかつ速やかに行うことができる。
【0053】
また、パッケージは、位置決め部105と凹部106とが形成されているので、位置決め部と凹部とによって補強されて歪むことが少なくなり、収納している記録ヘッドに損傷を与えることを少なくすることができる。
【0054】
なお、凹部106には、ナットを緩めたり、締め付けたりするとき回転力が加わるので、凹部106が形成されている部分の底部102aは厚みを厚くして補強しておくか、或いは、パッケージ全体を硬質の樹脂で成型するのが好ましい。
【0055】
また、ナットを締め付けるとき、締め付け過ぎて、ねじ46に過回転力が加わるおそれがある。この場合、スリット109の間隔が狭まり、凹部106が径方向に弾性変形することによって、ねじ46がナットと一体に回転して、締め付け過ぎを防止できるようになっている。
【0056】
本実施形態では、パッケージ101に設けられた凹部106(回転止め部)は、ねじの頭部46aを受け入れるように構成されているが、ナット47を受け入れるようにし、ナット47の回転止めとして構成してもよい。また、本実施形態の記録ヘッドユニット35は、2箇所でねじ46及びナット47により固定されるように構成されているが、1箇所(例えば貫通孔65a)でねじ46及びナット47により固定するように構成してもよい。その際、重ねられた記録ヘッド15が貫通孔65を中心に回転しないように、記録ヘッド15同士の回転を規制する規制部を記録ヘッド15に設けるとよい。この場合、記録ヘッドユニット35がパッケージ101にセットされた際に、ねじの頭部46aまたはナット47に対向する場所に凹部106が位置するように、パッケージ101に凹部106を設ければよい。
【符号の説明】
【0057】
11:液体噴射記録装置(記録装置)、14:装置本体、15K:記録ヘッド(ブラック)、15C:記録ヘッド(シアン)、15M:記録ヘッド(マジェンタ)、15Y:記録ヘッド(イエロー)、35:記録ヘッドユニット、46:ねじ、46a:ねじの頭部、47:ナット、101:パッケージ、102:本体、103:蓋、105:位置決め部、106:凹部(回転止め部)、109:スリット(逃げ部)、E:凹部の間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを個別に収納する記録ヘッド用パッケージにおいて、
前記記録ヘッドは、複数重ねられてねじとナットとにより一体化されることによって記録ヘッドユニットを構成するものであって、
前記記録ヘッドの外形に沿った形状に形成され、前記記録ヘッドの位置を決める位置決め部と、
前記位置決め部によって位置決めされた前記記録ヘッドの前記ねじの頭部または前記ナットに対向する位置に形成され、前記ねじの前記頭部または前記ナットを受け入れて前記ねじまたは前記ナットの回転止めをする回転止め部と、を備えた、
ことを特徴とする記録ヘッド用パッケージ。
【請求項2】
前記回転止め部は、前記ナットまたは前記ねじの締め過ぎ防止用の逃げ部を周囲に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッド用パッケージ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate