説明

記録再生装置

【課題】 ユーザが誤った記録モードで音楽データを記録してしまうことを防止できるMDディスクのフォーマット方法を提供すること。
【解決手段】 記録再生装置は、Hi−MDモードで記録されるデータを管理する第1の管理情報、または、通常MDモードで記録されるデータを管理する第2の管理情報をディスクに書き込む書込手段と、Hi−MDモードまたは通常MDモードを選択する選択手段と、第1の管理情報または第2の管理情報を記憶するためのメモリと、選択手段がHi−MDモードを選択した場合、第1の管理情報をメモリに保存し、選択手段が通常MDモードを選択した場合、第2の管理情報をメモリに保存する保存手段とを備える。書込手段は、音楽データが未記録の状態で、選択手段によって選択されメモリに記憶されている第1の管理情報または第2の管理情報をディスクに書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクに第1の記録モード、または第2の記録モードの管理情報を書き込み、ディスクをフォーマット処理する記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽データの記録再生装置としてミニディスク(MD)装置が使用されている。MDの規格には、音楽データのみを記録する通常MD規格と、音楽データの他にパーソナルコンピュータ(以下、PCとする)で扱われるPCデータも記録できるHi−MD(登録商標、以下同様)規格とが存在する。Hi−MD規格で記録再生できるディスクとして、現在2種類のディスクが市販されている。1つは、通常のMD規格に対応した機器でも記録再生可能な通常MDディスクである。もう1つはHi−MD規格に対応した機器のみで記録再生できるHi−MDディスクである。Hi−MDディスクはHi−MDモードでしか記録できないが、通常MDはHi−MDモードでも通常MDモードでも記録できる。通常MDディスクをどちらの記録モードで記録するかは、フォーマット処理を実行する際に決定される。フォーマット処理とは、ディスクに記録されたデータを全て消去し、かつ、ディスクに通常MDまたはHi−MDの管理情報を書き込むことである。通常MDの管理情報がディスクに書き込まれると、通常MDモードで音楽データを記録することができ、Hi−MDの管理情報がディスクに書き込まれると、Hi−MDモードで音楽データを記録することができる。
【0003】
以下、従来のHi−MD装置における通常MDディスクをフォーマットするフォーマット処理の手順を説明する。まず、ユーザは通常MDモードまたはHi−MDモードのどちらでフォーマット処理を実行するかを選択する。次に、ユーザがフォーマット実行指示を入力すると、ディスクに記録されたデータが全て消去されるが、この時点ではディスクは、通常MDまたはHi−MDの管理情報がディスクに書き込まれておらず、フォーマット処理は完了していない。この時点ではHi−MD装置のマイコンに、通常MDまたはHi−MDのどちらの管理情報を書き込むかを記憶し、作成した管理情報をメモリに保存するだけである。その後、ディスクに音楽データを記録終了したあと、Hi−MD装置はマイコンが記憶する通常MDまたはHi−MDの管理情報をメモリから読み出してディスクに書き込む。その結果、ディスクは通常MDモードのディスクまたはHi−MDモードのディスクになる。
【0004】
上記従来のHi−MD装置のフォーマット処理には以下の問題がある。すなわち、フォーマット実行指示を入力しても、管理情報がディスクに書き込まれておらず、マイコンに記録モードが設定されている(マイコンがHi−MDモードまたは通常MDモードを記憶している)だけである。それにも関わらず、ユーザはディスクに既に管理情報が書き込まれ、フォーマット処理が完了していると誤解してしまう。その結果、音楽データを記録せずにディスクをHi−MD装置から取り出す(または電源をオフ状態にする)と、ディスクに管理情報が書き込まれることなく、メモリに記憶された管理情報が消去されてしまう。再び同じディスクをHi−MD装置に挿入して音楽データをディスクに記録する際には、ディスクに管理情報が書き込まれていないので、その時のマイコンが記憶する記録モードに基づいて、管理情報が新たに作成されて、その管理情報に基づいた記録モードで音楽データが記録される。そのため、フォーマット実行指示を入力したときにユーザが選択した記録モードと、音楽データを記録する際にマイコンが記憶する記録モードとが異なっている場合、ユーザが認識している記録モードとは異なる記録モードで音楽データがディスクに記録されてしまう。
【0005】
例えば、通常MDのディスク1をHi−MDモードでフォーマット指示を入力後、音楽データを記録せずにHi−MD装置から取り出す。この時点では、Hi−MD装置のマイコンはHi−MDモードを記憶している。次に、ディスク2を通常MDモードでフォーマット指示を入力後、音楽データを記録せずにHi−MD装置から取り出す。この時点で、MD装置のマイコンは通常MDモードを記憶する。その後、ディスク1を再びHi−MD装置に挿入して音楽データの記録を開始すると、ユーザはディスク1がHi−MDモードで記録可能なディスクであると認識している一方で、Hi−MD装置のマイコンは通常MDモードを記憶しているので、ディスク1はHi−MDモードではなく通常MDモードで音楽データが記録されてしまう。
【0006】
以上のように、従来Hi−のMD装置のフォーマット処理はユーザにとって非常にわかりにくく、そのため誤った記録モードで音楽データを記録していまうという問題を有する。
【0007】
【特許文献1】特開2004−192685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ユーザが誤った記録モードで音楽データを記録してしまうことを防止できるディスクのフォーマット方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態による記録再生装置は、第1の記録モードで記録されるデータを管理する第1の管理情報、または、第2の記録モードで記録されるデータを管理する第2の管理情報を記録媒体に書き込む書込手段と、該第1の記録モードまたは該第2の記録モードを選択する選択手段と、該第1の管理情報または該第2の管理情報を記憶するための記憶デバイスと、該選択手段が該第1の記録モードを選択した場合、該第1の管理情報を該記憶デバイスに保存し、該選択手段が該第2の記録モードを選択した場合、該第2の管理情報を該記憶デバイスに保存する保存手段とを備える。記録媒体にデータが未記録の状態で、該書込手段は、該選択手段によって選択され該記憶デバイスに記憶されている該第1の管理情報または該第2の管理情報を記録媒体に書き込む。
【0010】
フォーマット処理を実行する指示が入力され、フォーマット処理を実行する記録モードが選択されると、保存手段は選択された記録モードの管理情報を記憶デバイス内に保存する。そして、書込手段は、ディスクにデータ(例えば、音楽データ)が未記録の状態で、記憶デバイスに記憶されている管理情報を記録媒体(例えば、ディスク)に書き込む。そのため、フォーマット処理を実行する指示が入力された後、ディスクにデータを記録しなくても、管理情報をディスクに書き込んで、選択された記録モードで記録可能なディスクにすることができる。従って、ディスクにデータを記録する前に記憶デバイスに記憶されている管理情報を消去するような処理が実行されたとしても、ディスクには既に管理情報が書き込まれている。そのため、ディスクにデータを記録する際にはディスクに書き込まれた管理情報が読み出され、その管理情報に基づいてデータが記録される。従って、誤った記録モードでディスクにデータが記録されることを防止できる。
【0011】
好ましい実施形態においては、データが未記録の状態で、上記記録再生装置の電源をオフ状態にする指示または該記録再生装置から記録媒体を取り出す指示が入力された場合に、上記書込手段は、上記記憶デバイスに記憶されている上記第1の管理情報または上記第2の管理情報を記録媒体に書き込んだ後、該記録再生装置の電源をオフ状態にする、または該記録再生装置から記録媒体が取り出される。
【0012】
好ましい実施形態においては、データが未記録の状態で、上記記憶デバイスに記憶されている上記第1の管理情報または上記第2の管理情報を消去する指示が入力された場合に、上記書込手段は該記憶デバイスに記憶されている該第1の管理情報または該第2の管理情報を記録媒体に書き込んだ後、該第1の管理情報または該第2の管理情報が該記憶手段から消去される。
【0013】
フォーマット処理を実行する指示が入力された後、ディスクにデータが未記録の状態で、記録再生装置の電源をオフ状態にする(またはディスクが記録再生装置から取り出される)等の処理により、記憶デバイスに記憶された管理情報が消去される場合、これらの処理を実行する前に、書込手段はディスクに管理情報を書き込む。そのため、フォーマット処理を実行する指示が入力された後、ディスクにデータを記録しなくても、管理情報をディスクに書き込んで、選択された記録モードで記録可能なディスクにすることができる。従って、これらの処理を実行後、ディスクにデータを記録する際には、ディスクに書き込まれた管理情報が読み出され、その管理情報に基づいてデータが記録される。従って、誤った記録モードでディスクにデータが記録されることを防止できる。
【0014】
好ましい実施形態においては、記録再生装置は、記録媒体に上記第1の管理情報または上記第2の管理情報を書き込む必要があるか否かを示す書込要求情報を設定および/または解除する情報設定手段をさらに備える。該書込要求情報が設定されているとき、上記書込手段が該第1の管理情報または該第2の管理情報を記録媒体に書き込む。
【0015】
フォーマット処理を実行する指示が入力された場合、保存手段が記憶デバイスに管理情報を保存した後、情報設定手段は書込要求フラグ(書込要求情報)を設定する。記録再生装置の電源をオフ状態にする(またはディスクが記録再生装置から取り出される)等の処理が実行される前に、書込手段は、書込要求フラグの設定状態を判断し、書込要求フラグが設定されていれば、ディスクに管理情報を書き込む。従って、書込手段は書込要求フラグの設定状態を判断することにより、ディスクに管理情報を書き込む必要があることを判断できる。
【0016】
好ましい実施形態においては、記録媒体にデータが記録される際に、上記情報設定手段は上記書込要求情報を解除する。
【0017】
フォーマット処理を実行する指示が入力された後、ディスクにデータを記録する場合には、記録再生装置の電源をオフ状態にする(またはディスクが記録再生装置から取り出される)等の処理を実行する前に、管理情報をディスクに書き込む必要がない。データの記録を終了すると必ず管理情報をディスクに書き込むからである。そのため、情報設定手段は、データの記録が開始されると書込要求フラグを解除する。その結果、記録再生装置の電源をオフ状態にする(またはディスクが記録再生装置から取り出される)前には、書込手段が書込要求フラグが解除されていると判断して、ディスクに管理情報を書き込まない。従って、管理情報の無駄な書き込みを防止でき、かつ、管理情報の二重書き込みエラーが防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、フォーマット処理を実行する指示が入力された後、ディスクにデータを記録しなくても、管理情報をディスクに書き込んで、選択された記録モードで記録可能なディスクにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0020】
[Hi−MD(登録商標、以下同様)装置の構成]
図1は、本発明の好ましい実施形態による記録再生装置をHi−MD装置(以下、単にMD装置とする場合がある)を例に挙げて示す概略ブロック図である。MD装置1は、ディスク(記録媒体)を第1または第2の記録モードでフォーマット処理を実行する。記録モードとは、同一のディスクに対して複数の記録方式を有しており、それぞれの記録方式のことをいう。具体的には、Hi−MDモード(第1の記録モード)および通常MDモード(第2の記録モード)が存在する。Hi−MDモードは、ディスクに音楽データだけでなくパーソナルコンピュータ(PC)で扱うことのできるPCデータ(例えば、テキストデータ、AVファイル等)も記録可能な記録モードである。通常MDモードは、音楽データしか記録できない従来の記録モードである。なお、フォーマット処理とは、ディスクに音楽データおよび/またはPCデータが既に記録されている場合に、これらのデータを全て消去する消去処理と、データを消去したディスクの管理情報記憶領域(例えば、U−TOC領域等)に、Hi−MDの管理情報(第1の管理情報、例えば、U−TOC)または通常MDの管理情報(第2の管理情報、例えば、U−TOC)を書き込む書込処理(物理フォーマットを変更する処理)との総称を意味する。ディスクには、Hi−MDディスクと通常MDディスクとがある。Hi−MDディスクは、Hi−MDモードでしか音楽データを記録できないHi−MD専用ディスクである。通常MDディスクは、Hi−MDモードまたは通常MDモードのどちらでも音楽データを記録できるディスクである。すなわち、通常MDディスクは、フォーマット処理を実行することによって、Hi−MDモードのディスクにすることができる。
【0021】
MD装置1は、システム制御部2、操作部3、表示部4、メカ制御部5およびメカ部6を備える。システム制御部2は、MD装置1全体の動作を制御するものであり、代表的にはマイクロコンピュータ(以下、マイコンとする)である。システム制御部2は、例えば内蔵するROM(図示しない)に格納された各プログラムを実行することにより、各処理(例えば、後述する図4および図5)を実行する。システム制御部2は、選択部2Aおよび情報設定部2Bを含む。選択部2Aは、ユーザからの入力に基づいて記録モードを選択して、選択された記録モードを設定するコマンドをメカ制御部5に送信する。情報設定部2Bは、後述する書込要求フラグ(書込要求情報)を設定または解除する。
【0022】
操作部3は、ユーザからの各指示が入力され、ユーザの指示に基づく信号をシステム制御部2に与えるものであり、例えば、MD装置1本体に設けられたキー、ボタンおよび/またはリモコン等が採用され得る。
【0023】
表示部4は、選択(または再生)されている音楽データに関する情報を表示するものであり、例えば液晶表示部等である。また、表示部4は、フォーマット処理を実行するか否かをユーザに選択させる画面、およびフォーマット処理をHi−MDモードで実行するか、通常MDモードで実行するかをユーザに選択させる画面を表示する。
【0024】
メカ制御部5は、システム制御部2からのコマンドに基づいてメカ部6を制御し、かつ、システム制御部2にディスクに関する情報等を送信するものであり、代表的にはマイクロコンピュータ(以下、マイコンとする)である。メカ制御部5は、例えば内蔵するROM(図示しない)に格納された各プログラムを実行することにより、各処理(例えば、後述する図4および図5)を実行する。
【0025】
メカ制御部5は、例えば、ユーザによって選択された記録モード(Hi−MDモードまたは通常MDモード)でフォーマット処理を実行するようにメカ部6を制御する。メカ制御部5は、書込制御部5Aおよび保存制御部5Bを含む。書込制御部5Aは、Hi−MDの管理情報または通常MDの管理情報をディスクに書き込むよう各部を制御する。ディスクに管理情報を書き込むとは、ディスクに管理情報が記録された状態にして、管理情報の記録モードで音楽データを記録可能な状態にすることを意味する。保存制御部5Bは、Hi−MDの管理情報または通常MDの管理情報を後述するメモリ15に保存する。管理情報を保存するとは、メモリ15に管理情報を入力して、一時的にメモリ15内で記憶されている状態にする動作を意味する。また、メカ制御部5は、ユーザの操作に応じて記録モードを設定する(つまり、内蔵されたRAM(図示せず)に記録モードが記憶される)。
【0026】
メカ部6は、代表的には、サーボ回路7、ヘッド部8、RFアンプ9、アドレスデコーダ10、信号処理部11、メモリ制御回路12、DAC(Digital Analog Converter)13、ADC(Analog Digital Converter)14およびメモリ15を含む。
【0027】
サーボ回路7は、ディスクにアクセスするためのものであり、ヘッド部8およびRFアンプ9が接続されている。ヘッド部8は、ディスクを回転させるスピンドル、およびディスクに記録されているデータの読み出しおよび書き込みを実行するピックアップ等を有する(図示せず)。サーボ回路7は、メカ制御部5からの指示に基づきヘッド部8を制御する。
【0028】
RFアンプ9は、サーボ回路7を介してヘッド部8から送られる信号を増幅し、アドレスデコーダ10に供給する。アドレスデコーダ10は、ヘッド部8からの信号に基づいて、音楽データのアドレスをデコードし、信号処理部11に与える。このアドレスは各処理に用いられる。
【0029】
信号処理部11は、音楽データの変調および復調、ならびにエンコードおよびデコードを実行する。音楽データの変調および復調には、通常MDモードのデータに対してはEFMが採用され、Hi−MDモードのデータに対しては1−7RLLが採用され得る。エンコードおよびデコードには、通常MDモードのデータに対してはACIRCが採用され、Hi−MDモードのデータに対してはRS−LDCが採用され得る。なお、詳細な構成は、上記特許文献1に詳しく記載されている。信号処理部11には、DAC13およびADC14が接続されている。DAC13は、信号処理部11からのデジタルデータをアナログデータに変換し、アナログ出力端子に供給する。ADC14は、アナログ入力端子から入力されたアナログデータをデジタルデータに変換し、信号処理部11に供給する。また、信号処理部11はデジタル入力端子が接続され、デジタルデータが入力される。また、図示しないがデジタル出力端子が設けられてもよい。
【0030】
メモリ制御回路12は、メモリ15を接続し、メカ制御部5からの指示に基づいてメモリ15を制御する。メモリ(記憶デバイス)15は、例えばDRAMからなり、音楽データの記録や再生、または第1または第2の管理情報のバッファメモリとして機能する。
【0031】
[通常MDのディスク構造]
図2は、通常MDモードで記録されたディスクの構造を示す概略図である。通常MDモードのディスクは、書き換え不可能な情報であるP−TOC201、および書き換え可能な情報であるU−TOC202および音楽データ(トラック)203が記録される。例えば、U−TOC202が通常MDモードで記録される音楽データを管理する第2の管理情報として使用される。U−TOC202は、音楽データの記録、消去などに応じて書き換えられ、各音楽データについての開始位置、終了位置およびネームなどを管理する。音楽データ203は、データエリア内にATRACデータとして記録される。
【0032】
[Hi−MDのディスク構造]
図3は、Hi−MDモードで記録されたディスク(Hi−MDディスク、または、Hi−MDモードでフォーマット処理を実行された通常MDディスク)の構造を示す概略図である。Hi−MDモードのディスクは、P−TOC301、U−TOC302およびFAT(File Allocation Table)データ303、ならびに、図示しないプレイリスト、ユニークID、ハッシュ値等が記録される。例えば、U−TOC302(但し、プレイリスト等の他の管理情報であってもよい)がHi−MDモードで記録される音楽データを管理する第1の管理情報として使用される。音楽データ304およびPCデータ305は共にFATシステム上のファイルとして記録される。プレイリストは、音楽データのアドレスを管理する情報であり、FATシステム上の1つのファイルとして記録される。ユニークIDおよびハッシュ値は、PCとの間でのデータ転送の際に認証処理または暗号化/復号化に用いられる情報である。
【0033】
[記録モード設定およびデータ消去処理]
ユーザがフォーマット指示を入力し、Hi−MDモードまたは通常MDモードを選択すると、メカ制御部5がユーザによって選択された記録モードを記憶し、かつ、ディスクに記録済のデータを全て消去する処理を、図4を参照して説明する。
【0034】
ユーザがフォーマット処理を実行する指示を入力すると、システム制御部2は操作部3からその旨を示す信号を受信する(S401)。次に、システム制御部2は、現在MD装置1に挿入されているディスクが、Hi−MDディスクであるか否かを、メカ制御部5から送信される情報に基づいて判断する(S402)。
【0035】
Hi−MDディスクでなければ(通常MDディスクであれば)(S402:NO)、S403〜S407においてフォーマット処理を実行する記録モード(Hi−MDモードまたは通常MDモード)を選択する。一方、Hi−MDディスクであれば(S402:YES)、Hi−MDディスクはHi−MDモードでしかフォーマット処理を実行できないので、S403〜S407の処理を飛ばして、S409へと進む。
【0036】
まず、通常MDディスクの場合について説明する。システム制御部2は、記録モードをHi−MDモードに設定するか否かを判断する(S403)。具体的には、ユーザにHi−MDモード、または、通常MDモードを選択させる画面が表示部4に表示され、ユーザの選択に基づいて、システム制御部2はHi−MDモードに設定するか否かを判断する。
【0037】
Hi−MDモードが選択されたことを判断すると(S403:YES)、システム制御部2はメカ制御部5に記録モードをHi−MDモードに設定するためのHi−MDモードオンコマンドを送信する(S404)。メカ制御部5はシステム制御部2からコマンドを受信して、記録モードをHi−MDモードに設定する(Hi−MDモードである旨を内蔵RAMに記憶する)(S405)。
【0038】
一方、Hi−MDモードではなく、通常MDモードが選択されると(S403:NO)、システム制御部2はメカ制御部5に記録モードを通常MDモードに設定するためのHi−MDモードオフコマンドを送信する(S406)。メカ制御部5はシステム制御部2からコマンドを受信して、記録モードを通常MDモードに設定する(通常MDモードである旨を図示しない内蔵RAMに記憶する)(S407)。
【0039】
次に、S408〜S410およびS413〜S415において、通常MDディスクがHi−MDモードでデータが記憶されていれば、Hi−MDモードで記録されている全データを消去して、通常MDモードでデータが記録されていれば、通常MDモードで記録されている全データを消去する。具体的には、システム制御部2は、通常MDディスクが、Hi−MDモードでデータが記録済であるか否かを、メカ制御部5から送信される情報に基づいて判断する(S408)。Hi−MDモードでデータが記録されていれば、S409に進み、そうでなければS413に進む。
【0040】
Hi−MDモードでデータが記録済である場合、システム制御部2はメカ制御部5にフォーマットコマンドを送信する(S409)。フォーマットコマンドは、Hi−MDモードで記録されている全データ(音楽データおよびPCデータ)を消去するコマンドである。フォーマットコマンドは、後述の通常MDの全消去コマンドと区別して使用される。
【0041】
メカ制御部5はフォーマットコマンドを受信して、ディスクに記録されている全データ(音楽データおよびPCデータ)を消去し(S410)、S411へと進む。
【0042】
一方、Hi−MDモードでデータが記録されていない場合に(S408:NO)、システム制御部2はディスクに音楽データが記録されていないブランク状態であるか否かを判断する(S413)。ディスクがブランク状態でなければ(S413:NO)、システム制御部2はメカ制御部5に全消去コマンドを送信する(S414)。全消去コマンドは、音楽データを全て消去するためのコマンドである。メカ制御部5は、全消去コマンドを受信して、ディスクに記録されている音楽データを全て消去する(S415)。S413に戻って、ディスクはブランク状態であると判断されると(S413:YES)、S411に進む。
【0043】
ここで、S403およびS408での判断内容について以下にまとめる。S403でYES、S408でNOと判断されるのは、ディスクの記録モードを通常MDモードからHi−MDモードに変更する場合である。S403でNO、S408でYESと判断されるのは、ディスクの記録モードをHi−MDモードから通常MDモードで変更する場合である。S403でNO、S408でNOと判断されるのは、通常MDモードで記録されたディスクの記録モードを変更せずにデータを全て消去する場合である。S403でYES、S408でYESと判断されるのは、Hi−MDモードで記録されたディスクの記録モードを変更せずにデータを全て消去する場合である。
【0044】
次に、S411において、メカ制御部5は、S403で選択された記録モードの管理情報を作成して、メモリ15に保存する(S411)。すなわち、メカ制御部5は、管理情報をメモリ15に入力してメモリ15が一時的に記憶するように制御する。S403でHi−MDモードが選択された場合、メカ制御部5はHi−MDの管理情報をメモリ15に保存する。Hi−MDの管理情報は、ディスクにデータを記録する際にFAT上のファイルとして記録するために使用される。一方、S403で通常MDモードが選択された場合、メカ制御部5は通常MDの管理情報をメモリ15に保存する。
【0045】
次に、システム制御部2は、書込要求フラグを設定する(S412)。書込要求フラグは、メモリ15に記憶された管理情報をディスクに記録する必要があるか否かを判断するために使用される。書込要求フラグは、内蔵RAMに記憶され、1にすることによって設定され、0にすることによって解除される。システム制御部2は、書込要求フラグが設定されていれば管理情報をディスクに書き込む必要があり、フラグが解除されていれば管理情報をディスクに書き込む必要がないと判断する。
【0046】
一方、S402において、Hi−MDディスクであると判断された場合(S402:YES)、システム制御部2はメカ制御部5にフォーマットコマンドを送信し(S409)、メカ制御部5は記録されているデータを全て消去する(S410)。S411において、Hi−MDディスクはHi−MDモードでしかフォーマット処理を実行できないので、メカ制御部5はHi−MDの管理情報を作成し、メモリ15に保存する(S411)。その後、システム制御部2は、書込要求フラグを設定する(S412)。
【0047】
[管理情報のディスクへの書込処理(1)]
ここでは、上述の図4の処理を実行後、音楽データを1度も記録せずに(未記録状態で)、MD装置1の電源をオフ状態にする指示またはディスクを取り出す指示が入力された(すなわち、メモリ15に記憶された管理情報を消去する)場合、それらの処理を実行する前に、管理情報をディスクに書き込む。詳細を、図5を参照して説明する。
【0048】
システム制御部2は、S501およびS502において、図4の処理後、音楽データを記録することなく、メモリ15に記憶された管理情報を消去するような指示がユーザによって入力されたか否かを判断する。ここで、メモリ15に記憶された管理情報を消去するような指示とは、特に限定されないが、代表的には、MD装置1の電源をオフ状態(システム制御部2のみに電源を供給するスタンバイ状態を含む)にする指示、または、ディスクをMD装置1から取り出す指示である。
【0049】
具体的には、システム制御部2は、電源をオフ状態にする指示が入力された(S501:YES)、または、ディスクを取り出す指示が入力された(S502:YES)と判断すると、S412で書込要求フラグが設定されているか否かを判断する(S503)。すなわち、システム制御部2は、ディスクに管理情報を書き込む必要があるか否かを判断する。
【0050】
書込要求フラグが設定されていれば(S503:YES)、システム制御部2はメカ制御部5に書込コマンドを送信する(S504)。書込コマンドは、ディスクに管理情報を書き込ませるためのコマンドである。メカ制御部5は、システム制御部2から書込コマンドを受信して、メモリ15に記憶されている管理情報を読み出してディスクに書き込む(S505)。これによって、図4の処理後、音楽データを記録しなくても(未記録状態において)ディスクに管理情報を書き込むことができる。S403でHi−MDモードが選択されていればディスクをHi−MDモードで記録することができ、そうでなければディスクを通常MDモードで記録することができる。
【0051】
次に、システム制御部2はメカ制御部5に、通常MDモードに設定するためのHi−MDオフコマンドを送信する(S506)。メカ制御部5は、システム制御部2からコマンドを受信して、Hi−MDモードが設定されていれば、Hi−MDモードから通常MDモードに設定を変更する(S507)。なお、S407で通常MDモードが設定されている場合、メカ制御部5は、システム制御部2からのコマンドを受信しても設定を変更しない(通常MDモードのままである)。ディスクに管理情報を書き込んだ後、メカ制御部5の記録モードを通常MDモードに変更するのは、通常MDモードを記録モードのデフォルトとしている方が、ユーザにとってわかりやすいからである。
【0052】
なお、図示しないが、S507を実行後、MD装置1は、S501またはS502でシステム制御部2が判断した内容に基づいて、電源がオフ状態になるか、または、ディスクがMD装置から取り出され、処理を終了する。
【0053】
以上のように、ユーザが、電源をオフ状態にする指示(またはディスクを取り出す指示)を入力したときに、S411でメモリ15に保存したHi−MDまたは通常MDの管理情報をディスクに書き込んだあと、MD装置1の電源をオフ状態にする(またはMD装置からディスクが取り出される)。従って、記録モード設定およびデータ消去を実行した後、ディスクに音楽データを記録せずに、電源をオフ状態にする(またはディスクが取り出される)場合にも、ディスクは管理情報が書き込まれ、所望の(ユーザが選択した)記録モードで音楽データを記録することができる。
【0054】
その結果、例えば、フォーマット実行指示を入力して音楽データを記録せずにディスクを取り出した後、記録Hi−MDの管理情報が書き込まれたディスクをMD装置1に挿入して音楽データを記録すると、メカ制御部5が通常MDモードに設定されているとしても、ディスクから読み出したHi−MDの管理情報に基づいて、Hi−MDモードで音楽データをディスクに記録することができる。
【0055】
[管理情報のディスクへの書込処理(2)]
上述の場合と異なり、図4の処理の後、音楽データをディスクに記録して、音楽データの記録終了後、メカ制御部5がメモリ15に記憶されている管理情報をディスクに書き込む処理を、図5を参照して説明する。
【0056】
システム制御部2は、ユーザから音楽データを記録する指示が入力されたか(音楽データを記録開始するか)否かを判断する(S508)。音楽データを記録する指示が入力されると(S508:YES)、MD装置1は音楽データの記録を開始する(S509)。具体的には、メモリ15に記憶されている管理情報に基づいて、管理情報がHi−MDのものであればHi−MDモードで音楽データをディスクに記録し、管理情報が通常MDのものであれば、通常MDモードで音楽データをディスクに記録する。
【0057】
システム制御部2は、S412で設定した書込要求フラグを解除する(S510)。後述するように、ディスクに音楽データを記録した後には、メカ制御部5が管理情報をディスクに書き込むので、MD装置1の電源をオフ状態にする(またはディスク取り出す)際に、システム制御部2がメカ制御部5に、管理情報をディスクに書き込むよう指示する必要がないからである。そのため、管理情報の無駄な書き込みを防止でき、管理情報の二重書き込みによるエラーを防止できる。
【0058】
MD装置1が音楽データの記録を終了する(S511)と、メカ制御部5は、メモリ15に記憶されている管理情報を読み出してディスクに書き込む(S505)。その結果、メモリ15に記憶された管理情報がHi−MDのものであればディスクはHi−MDモードのディスクになり、管理情報が通常MDのものであれば通常MDモードのディスクになる。以下の処理は上述と同じであるので、説明を省略する。
【0059】
以上のように、記録モードの設定およびデータ消去後に、音楽データの記録の有無に関わりなく、ディスクに選択された記録モードの管理情報を書き込むことができる。従って、再び、当該ディスクをMD装置1に挿入して音楽データを記録する際に、フォーマット指示時に選択した記録モードで音楽データを記録することができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。音楽データ以外に映像データおよび/または静止画等も採用され得る。なお、S402でNO、S408でNOかつS413でYES(S414,S415を経由せずに)と判断されるのは、ブランク状態の通常MDディスクを記録モードを変更しない場合である。また、本発明は、上記の動作をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムという形態で提供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、MD装置だけでなく、複数の記録モードを有する様々ディスク記録再生装置に好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるHi−MD装置1を示すブロック図である。
【図2】通常MDモードのディスクの構造を示す図である。
【図3】Hi−MDモードのディスクの構造を示す図である。
【図4】記録モード設定/データ消去処理を示すフローチャートである。
【図5】管理情報書込処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 MD装置(記録再生装置)
2 システム制御部
2A 選択部
5 メカ制御部
5A 書込制御部
5B 保存制御手段
15 メモリ(記憶デバイス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の記録モードで記録されるデータを管理する第1の管理情報、または、第2の記録モードで記録されるデータを管理する第2の管理情報を記録媒体に書き込む書込手段と、
該第1の記録モードまたは該第2の記録モードを選択する選択手段と、
該第1の管理情報または該第2の管理情報を記憶するための記憶デバイスと、
該選択手段が該第1の記録モードを選択した場合、該第1の管理情報を該記憶デバイスに保存し、該選択手段が該第2の記録モードを選択した場合、該第2の管理情報を該記憶デバイスに保存する保存手段とを備え、
記録媒体にデータが未記録の状態で、該書込手段が、該選択手段によって選択され該記憶デバイスに記憶されている該第1の管理情報または該第2の管理情報を記録媒体に書き込む、記録再生装置。
【請求項2】
データが未記録の状態で、前記記録再生装置の電源をオフ状態にする指示または該記録再生装置から記録媒体を取り出す指示が入力された場合に、前記書込手段が前記記憶デバイスに記憶されている前記第1の管理情報または前記第2の管理情報を記録媒体に書き込んだ後、該記録再生装置の電源をオフ状態にする、または該記録再生装置から記録媒体が取り出される、請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
データが未記録の状態で、前記記憶デバイスに記憶されている前記第1の管理情報または前記第2の管理情報を消去する指示が入力された場合に、前記書込手段が該記憶デバイスに記憶されている該第1の管理情報または該第2の管理情報を記録媒体に書き込んだ後、該第1の管理情報または該第2の管理情報が該記憶手段から消去される、請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項4】
記録媒体に前記第1の管理情報または前記第2の管理情報を書き込む必要があるか否かを示す書込要求情報を設定および/または解除する情報設定手段をさらに備え、
該書込要求情報が設定されているとき、前記書込手段が該第1の管理情報または該第2の管理情報を記録媒体に書き込む、請求項1〜3のいずれかに記載の記録再生装置。
【請求項5】
記録媒体にデータが記録される際に、前記情報設定手段が前記書込要求情報を解除する、請求項4に記載の記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−228299(P2006−228299A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38793(P2005−38793)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】