説明

記録再生装置

【課題】光ピックアップが存在する空間に埃が侵入することを抑制しつつ、光ピックアップが発する熱を外部に効率的に伝達する。
【解決手段】本発明の記録再生装置は、筐体111の内部が仕切りにより第1の空間1と第2の空間2とに分割されている記録再生装置であって、記録媒体にデータを書き込むための光ピックアップ104と、光ピックアップ104に熱的に接続されて光ピックアップ104が発する熱を伝熱する放熱部材109とを備える。光ピックアップ104および放熱部材109は、それぞれ、第1の空間1と第2の空間2に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録再生装置に関し、特に光ピックアップが発生する熱を装置の外部に排出する構成を有する記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では、光ピックアップに使用しているレンズ、プリズム、半導体レーザ等は使用できる温度範囲が限られている。一方、高倍速化等により、光ピックアップの発生する熱は増加する傾向にある。
【0003】
特許文献1には、光ピックアップから伝熱部材を通じ、発生した熱を、筐体外の放熱手段に導き、放熱する構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、複数の光ピックアップを用いて光テープ(テープメディア)にデータを記録する装置が開示されている。光ピックアップの個数が増加すると、発熱量が増える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−71491号公報
【特許文献2】特開2006−286070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では筐体外の放熱板と光ピックアップの距離が遠いため、放熱手段に効果的に熱を伝えることができないという問題点があった。また、複数の光ピックアップを用いて光テープにデータを記録するためには、複数の光ピックアップの位置決めの精度を高める必要がある。
【0007】
本発明は、放熱手段に効果的に熱を伝えることができる記録再生装置を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、複数の光ピックアップの位置決め精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の記録再生装置は、筐体と、前記筐体の内部を第1の空間と第2の空間とに分割する板状部材と、前記第1の空間内に配置され、前記第1の空間内で記録媒体にデータを書き込むことができるように構成された少なくとも1個の光ピックアップと、前記光ピックアップが発する熱を前記第2の空間に伝達する放熱部材とを備える。
【0009】
ある実施形態において、前記筐体は、前記第2の空間を装置外部と連通する複数の開口部を有している。
【0010】
ある実施形態において、前記少なくとも1個の光ピックアップは、所定間隔で配列された複数の光ピックアップである。
【0011】
ある実施形態において、前記記録媒体はテープメディアであり、前記第1の空間内において前記テープメディアを案内するガイドポストと、前記第1の空間内で前記テープメディアを巻き取るリールと、前記リールを回転させるモータとを備え、前記複数の光ピックアップは、前記テープメディアの走行方向に配列されている。
【0012】
ある実施形態において、前記複数の光ピックアップは、前記テープメディアの幅方向においてそれぞれ異なる位置に配置されている。
【0013】
ある実施形態において、前記複数の光ピックアップは、前記テープメディアの幅方向に傾斜した平板または直線状の棒部材に固定されている。
【0014】
ある実施形態において、前記放熱部材の少なくとも一部は前記第2の空間内に露出している。
【0015】
ある実施形態において、前記放熱部材と前記複数の光ピックアップの各々との間には隙間があり、前記隙間は流動性を有する伝熱材料で充填されている。
【0016】
ある実施形態において、前記板状部材は、前記光ピックアップおよび前記放熱部材を支持するように構成されている。
【0017】
ある実施形態において、前記板状部材は、前記放熱部材の少なくも一部として機能する。
【0018】
ある実施形態において、前記複数の光ピックアップの着脱が自在である。
【0019】
ある実施形態において、前記板状部材には穴が存在し、前記放熱部材は前記穴を貫通して前記光ピックアップと熱的に結合されている。
【0020】
ある実施形態において、前記第2の空間内に設けられた送風ファンを備え、前記送風ファンが発生する風により前記光ピックアップの発生する熱を前記記録再生装置の外部に排出する。
【0021】
本発明の光ピックアップアセンブリは、複数のピックアップ部品と、記録媒体の走行方向に対して傾斜した方向に沿って前記複数のピックアップ部品が配列された状態で前記複数のピックアップ部品の位置を決める位置決め機構とを備え、前記位置決め機構は、前記複数のピックアップ部品の各々が前記傾斜した方向に沿って移動することができるように取り付けられた第1の規制部材と、前記記録媒体の走行方向における各ピックアップ部品の位置を規定する第2の規制部材とを有する。
【0022】
ある実施形態において、前記第1の規制部材は直線状に延びる平板または棒である。
【0023】
ある実施形態において、前記第1の規制部材を前記傾斜した方向に固定する固定具を備える。
【0024】
ある実施形態において、前記固定具は、前記第1の規制部材の傾斜角度を変化させるように構成されている。
【0025】
ある実施形態において、前記第2の規制部材は、各々が前記複数のピックアップ部品の対応する1つに当接する複数の面を有しており、前記複数の面が前記記録媒体の走行方向における前記複数のピックアップ部品の位置を決める。
【0026】
ある実施形態において、前記第2の規制部材は、前記複数のピックアップ部品の1つに当接する面を有している。
【0027】
ある実施形態において、前記第2の規制部材は、各々が前記複数のピックアップ部品の間に挿入され、前記記録媒体の走行方向における前記複数のピックアップ部品の位置を決める複数のスペーサを含んでいる。
【0028】
ある実施形態において、前記第2の規制部材は、各々が前記複数のピックアップ部品の対応する1つに対向する複数の対向面を有しており、前記複数の対向面は、前記記録媒体の走行方向に沿って階段状に配列されており、前記複数のピックアップ部品と前記複数の対向面との間には隙間が設けられている。
【0029】
ある実施形態において、前記複数のピックアップ部品と前記複数の対向面との間の前記隙間には、流動性を有する伝熱材料が充填されている。
【0030】
本発明の他の記録再生装置は、上記の光ピックアップアセンブリと、光テープを走行させるモータと、前記光テープにデータを記録し、前記光テープからデータを再生するための記録再生回路とを備える。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、放熱手段に効果的に熱を伝えることができる記録再生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】光テープ105の一部を模式的に拡大して示す斜視図
【図1B】光テープ105の一部を模式的に示す平面図
【図2A】本発明の実施形態による光データストリーマ装置の構成例を示す図
【図2B】図2AのB−B線断面図
【図3】本実施形態における光データストリーマ装置の回路構成例を示す図
【図4】本実施形態における一対の光ピックアップ104の構成例を示す斜視図
【図5】本実施形態における一対の光ピックアップ104を1つのケース内に収容したピックアップ部品6を示す斜視図
【図6】ピックアップ部品6の配置例を示す平面図
【図7A】一対の光ピックアップ104が有する対物レンズ8a、8bを模式的に示す断面図
【図7B】対物レンズ8a、8bの光テープ105の表面に対する配置関係の例を模式的に示す平面図
【図8A】実施形態において筐体111を取り除いた状態の構成を裏面側から見た斜視図
【図8B】実施形態において筐体111を取り除いた状態の構成を表面側から見た斜視図
【図9】第2の空間2の側から見たシャーシ110の構成例を示す図
【図10】本実施形態における筐体111の裏面側を示す斜視図
【図11】ピックアップ部品6の位置を決める位置決め部材200の一例と、この位置決め部材200によって位置決めがなされた複数のピックアップ部品6との配置を示す平面図
【図12】光テープ105の走行方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に当接面200aの位置がずれた場合の位置決め部材200の一部を示す平面図
【図13】(a)から(d)は、素材ブロック200’から機械加工により位置決め部材200を作製する途中段階における、位置決め部材200の形状変化を模式的に示す工程断面図
【図14】取り付け軸201と、この取り付け軸201に取り付けられたピックアップ部品6と、ピックアップ部品6のテープ走行方向における位置を規定する位置決め部材203とを示す平面図
【図15】デルタXとデルタYとの関係を示す図
【図16】ある実施形態における光ピックアップアセンブリ60の構成例を示す平面図
【図17】光ピックアップアセンブリ60の一構成例を示す平面図
【図18】図17の光ピックアップアセンブリ60の側面図
【図19】光ピックアップアセンブリ60の他の構成例を示す平面図
【図20】図19の光ピックアップアセンブリ60の側面図
【図21】位置決め機構の変形例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明による記録再生装置の実施形態を説明する。本実施形態における記録再生装置は、記録媒体として光テープを用いる光データストリーマ装置である。光データストリーマ装置は、大量のデータのバックアップに使用され得る。光データストリーマ装置は、転送レートを上げ、短時間でバックアップを行うため、複数の光ピックアップを具備している。
【0034】
図1Aは、光テープ105の一部を模式的に拡大して示す斜視図である。光テープ105は、例えばベースフィルム4a、ベースフィルム4aの裏面に張り付けられたバックコート層4b、およびベースフィルム4aに支持されたインプリント層4cを含む。インプリント層4cの上面には、ランド4dおよびグルーブ4eが形成されている。図面には記載されていないが、インプリント層4cの上面を覆うように反射膜および記録材料膜が積層されている。光テープ105は、長尺方向Lに沿って延びており、例えば数百mの長さを有している。幅Wは、例えば数mmから数cmの範囲内に設定され得る。厚さは、数μmから数十μm程度であり得る。
【0035】
図1Aのスケールは、現実の光テープ105のサイズを忠実に反映してない。実際の光テープ105には、数百本またはそれ以上の本数のランド4dおよびグルーブ4eが形成され得る。ある実施形態では、データがランド4dおよびグルーブ4eの一方に記録される。データが記録されるランド4dまたはグルーブ4eを「トラック」と称する。トラックのピッチは、例えば0.2〜0.4μmの範囲に設定され得る。
【0036】
図1Bは、光テープ105の一部を模式的に示す平面図である。長尺方向Lに沿ってN(Nは典型的には100以上の整数)本のトラック0〜トラックNが形成されている。図1Bに示されるトラックの幾つかには矢印が記載されている。この矢印は、データの記録方向を模式的に示している。1つの光テープ105には、異なる方向にデータが記録され得る。
【0037】
光テープ105には、光ビームの照射によって光学的にマークが形成され得る。より具体的に言えば、このようなマークは記録材料膜に形成される。光ビームの照射は、光源と、この光源から出射された光ビームを光テープ105にフォーカスさせる対物レンズとを含む「光ピックアップ」によって行われる。光ピックアップが光テープ105に光ビームを照射すると、光テープ105上の照射領域と他の領域(非照射領域)との間で、屈折率などの光学特性が変化する。このようにして光学特性が変化した領域を「記録マーク」と称する。
【0038】
光テープ105に記録されているデータは、比較的弱い一定強度の光ビームを光記録媒体に照射し、光テープ105によって変調された反射光を検出することによって再生される。光テープ105にデータを記録する場合、記録すべきデータに応じて光パワーを変調したパルス状の光ビームを光テープ105に照射し、それによって記録材料膜の特性を局所的に変化させることによってデータの書き込みを行う。
【0039】
記録材料膜にデータを記録するとき、上述のように光パワーを変調した光ビームを記録材料膜に照射することより、結晶質の記録材料膜に非晶質の記録マークを形成する。この非晶質の記録マークは、記録用光ビームの照射を受けた記録材料膜の一部が融点以上の温度に上昇した後、急速に冷却されることによって形成される。光ビームを記録マークに照射するときの光パワーを低めに設定すると、光ビームが照射された記録マークの温度は融点を超えず、急冷後に結晶質に戻る(記録マークの消去)。こうして、記録マークの書き換えを何度も行うことが可能になる。データを記録するときの光ビームの光パワーの大きさが不適切であると、記録マークの形状が歪み、データを再生することが難しくなることがある。
【0040】
光テープ105に対してデータの記録または再生を行うとき、光ビームが目標トラック上で常に所定の集束状態となる必要がある。このためには、「フォーカス制御」および「トラッキング制御」が必要となる。「フォーカス制御」は、光ビームの焦点(集束点)の位置が常に目標トラック上に位置するように対物レンズの位置を光テープ105の表面(記録面)に垂直な方向に制御することである。一方、トラッキング制御とは、光ビームのスポットが所定のトラック上に位置するように対物レンズの位置を光テープ105の記録面に平行であってトラックに垂直な方向に制御することである。
【0041】
上述したフォーカス制御およびトラッキング制御を行うためには、光テープ105から反射される光に基づいて、フォーカスずれやトラックずれを検知し、そのずれを縮小するように光ビームスポットの位置を調整することが必要である。フォーカスずれおよびトラックずれの大きさは、それぞれ、光テープ105からの反射光に基づいて生成される「フォーカス誤差(FE)信号」および「トラッキング誤差(TE)信号」によって示される。
【0042】
図2Aは、本実施形態による光データストリーマ装置の構成例を示す図である。図2Bは図2AのB−B線断面図である。本実施形態では、図2Aの上側が鉛直上方であり、下側が鉛直下方に対応している。このため、図2Bは、この光データストリーマ装置を鉛直上方から見た内部構成の配置例を示している。
【0043】
図2Aおよび図2Bは、光テープ105を収容するテープカートリッジ101が装填された状態を示している。テープカートリッジ101は着脱可能であり、図示される光データストリーマ装置には、同じ形状を有する複数のテープカートリッジ101から選択された1つが装填され得る。
【0044】
本実施形態の光データストリーマ装置は、筐体111と、筐体111の内部を第1の空間1と第2の空間2とに分割するシャーシ110と、第1の空間1内に配置され、第1の空間1内で光テープ105にデータを書き込むことができるように配置された複数のピックアップ部品6と、ピックアップ部品6が発する熱を第2の空間2に伝達する放熱板109とを備えている。複数のピックアップ部品6は光ピックアップアセンブリ60が備える位置決め機構によって位置決めされている。筐体111は、第2の空間2を装置外部と連通する複数の開口部を有している。
【0045】
より詳細には、この光データストリーマ装置は、光テープ105を走行させるためのモータ106、107、ガイドポスト103、および巻取リール102を備えている。モータ107は、巻取リール102と機械的に結合しており、巻取リール102を回転させる。モータ106は、装填されたテープカートリッジ101の回転軸と機械的に結合し、テープカートリッジ101の外部に引き出されたテープ105をテープカートリッジ101内に巻き戻すように動作する。モータ106、107により、テープ105は、矢印で示す2つの方向のいずれにも走行することができる。
【0046】
光ピックアップアセンブリ60は、光テープ105の走行方向に沿って配列された複数のピックアップ部品6を有している。個々のピックアップ部品6の構造について、詳細は後述する。本実施形態における光ピックアップアセンブリ60は、上段および下段の各々に複数のピックアップ部品6を有している。この光ピックアップアセンブリ60は、放熱板109に熱的に接続されている。第2の空間2には、放熱板109に送風を行う送風ファン108が設けられており、送風ファン108はモータ107に機械的に結合している。モータ107の回転に応じて送風ファン108も回転する。
【0047】
各ピックアップ部品6は、1個または複数の光ピックアップを内蔵する。本実施形態では、各ピックアップ部品が、後述するように一対の光ピックアップを備えている。個々の光ピックアップは、光ビームを発する光源と、光ビームをテープ105上に収束する対物レンズと、対物レンズを駆動するレンズアクチュエータと、光テープ105からの反射光を検知して必要な信号を生成する光検出器などを備えている。ピックアップ部品6は、光ピックアップ用フレキシブル回路基板(FPC)112に接続されている。この光データストリーマ装置は、このフレキシブル回路基板112に接続された不図示の回路基板(後述)を備えており、この回路基板には、ピックアップ部品6やモータ106、107を制御するための回路要素が設けられている。なお、フレキシブル回路基板112には、通常であればピックアップ部品6および他の回路基板上に搭載されるような回路の一部が実装されていてもよい。
【0048】
図3を参照して、本実施形態における光データストリーマ装置の回路構成例を説明する。
【0049】
図示されている光データストリーマ装置は、光ピックアップアセンブリ60およびモータ106、107と電気的に接続された回路ブロックを備えている。
【0050】
図3に示す構成例では、光ピックアップアセンブリ60の出力がフロントエンド信号処理部1306を介してエンコーダ/デコーダ1308に送られる。エンコーダ/デコーダ1308は、データ読み出し時、光ピックアップアセンブリ60によって得られる信号に基づいて光テープ105に記録されているデータを復号する。データ書き込み時、エンコーダ/デコーダ1308はデータを符号化し、光テープ105に書き込むべき信号を生成し、光ピックアップアセンブリ60に送出する。
【0051】
フロントエンド信号処理部1306は、光ピックアップアセンブリ60の出力に基づいて再生信号を生成する一方、フォーカス誤差信号FEやトラッキング誤差信号TEを生成する。フォーカス誤差信号FEやトラッキング誤差信号TEは、サーボ制御部1310に送出される。サーボ制御部1310は、ドライバアンプ1304を介してモータ106、107を制御する一方、光ピックアップアセンブリ60内の各レンズアクチュエータを介して対物レンズの位置を制御する。エンコーダ/デコーダ1308およびサーボ制御部1310などの構成要素は、CPU1309によって制御される。図3に示されるブロックは、例えば集積回路素子およびメモリなどの電子部品を回路基板上に搭載して実現することができる。
【0052】
本実施形態で使用され得る光テープ105の記録面の幅は、例えば約10mmである。この場合、例えば24個の光ピックアップによって、走行中の光テープ105の記録面の全幅に渡って、データの記録および再生が行われ得る。
【0053】
テープカートリッジ101が光データストリーマ装置に装填される前、光テープ105はテープカートリッジ101に、図示しないリールに巻かれた状態で収納されている。テープカートリッジ101が光データストリーマ装置に装填されると、光テープ105は複数のテープガイドポスト103に案内されて引き出され、巻取リール102に巻き取られる。各ピックアップ部品6は光テープ105に対し所定の位置に固定され、光テープ105に対して情報の記録再生を行う。本実施形態における光ピックアップの個数は24個である。このため、最大24個の光ピックアップによって同時にデータの記録再生を行うことが可能である。なお、1つの光データストリーマ装置が備える光ピックアップの個数は、24個に限定されず、この数よりも少なくても多くてもよい。
【0054】
送りモータ107は巻取リール102を回転駆動し、光テープ105を順方向に走行させる。また同時に送風ファン108を駆動し放熱板109に風を送る。逆送りモータ106はテープカートリッジ101内の図示しないリールを回転駆動し、光テープ105を逆方向に駆動する。この際、光テープ105により巻取リール102も駆動されるため送風ファン108も駆動される。ピックアップ部品6は放熱板109と熱的に結合され、その発生する熱は放熱板109に伝達される。放熱板109の大部分は第2の空間2内(シャーシ110の下部)に配置されている。これらの部材は全て板状のシャーシ110に取り付けられている。この点については後述する。
【0055】
放熱板109とピックアップ部品6との熱的な結合のため、シャーシ110には穴があけられ、放熱板109の上部はシャーシ110の上、すなわち第1の空間1内に出ている。また、これらの部材全ては筐体111内に収納されている。
【0056】
記録時または再生時、光テープ105は順送りモータ107、または逆送りモータ106により、順方向または逆方向に走行し、この間、各光ピックアップは光テープ105に対し同時に記録または再生を行うことができる。光ピックアップの発生する熱は放熱板109に伝達される。送風ファン108はこの放熱板109に風を送り、この放熱板109の熱を筐体111外部に放出する。
【0057】
図4は、本実施形態における光ピックアップ104の構成例を示す斜視図である。この構成例では、一対の光ピックアップ104が一体化されており、1つの光学ベース20と、この光学ベース20の上面に固定された2つのレンズアクチュエータ9a、9bとを備えている。言い換えると、図示される構成では、独立して対物レンズ8a、8bを駆動することができる2つの光ピックアップ104が一体化されている。図4には、破線で光テープ105のエッジが記載されている。各々が一対の光ピックアップ104を備える複数のピックアップ部品6を図2Aおよび図2Bに矢印で示す「テープ走行方向」に沿って配列する場合、1つの光テープ105に対して、対物レンズ8a、8bがカバーするトラック範囲を光ピックアップ毎に変えることが効率的である。
【0058】
図5は、図4に示す一対の光ピックアップ104を備えるピックアップ部品6を示している。このピックアップ部品6は、2つレンズアクチュエータ9a、9bを覆うカバー7を備えている。このピックアップ部品6は、概略的に直方体の形状を有しており、テープ走行方向(X方向)における幅W0を規定する平行な2つの側面6aを有している。図5に示すピックアップ部品6には、フレキシブル回路基板112が接続されている。このような構成を有する12個の部品をテープ走行方向に対して傾斜した方向に配列すると、図6に示す配置例が実現する。図4に示すように1個の光学ベース20上に2個のレンズアクチュエータ9a、9bを固定した上で、図5に示すように1つのカバー7でレンズアクチュエータ9a、9bを覆うと、これを1個のピックアップとして扱うことも可能である。しかし、本明細書では、光ピックアップ104の個数は、独立して動作し得る対物レンズ8の個数に対応させてカウントすることにする。したがって、図5に示されるピックアップ部品6は、2個の光ピックアップ104を備えるものとする。なお、レンズアクチュエータ9a、9bを1つの光学ベース20上に固定するとき、レンズアクチュエータ9a、9bの配置関係は高い精度で調整され得る。このため、図6に示す構成を実現する場合、図5に示す構成を有する12個のピックアップ部品6を配列すれば良い。この場合の位置合わせは、24個の完全に独立した光ピックアップ104を図6に示すように配列するよりも容易になる。
【0059】
なお、1つのピックアップ部品6が備える光ピックアップ104の個数は2個に限定されず、1個でよいし、3個以上でもよい。好ましい実施形態における光ピックアップ部品6の幅W0は、図6に示されるように、Y方向に一様である。
【0060】
複数の光ピックアップ104が光テープ105の走行方向に配列されるとき、小型化の観点から、個々の光ピックアップ104のテープ走行方向(X方向)のサイズをできるたけ小さくすることが好ましい。一般に、大容量のデータストレージを実現するためには、多数の、図2Aおよび図2Bに示すような光データストリーマ装置を多段のキャビネット上に収納することが求められる。個々の光データストリーマ装置に許容される空間的な寸法には制約があるため、光ピックアップ104のサイズに起因して光データストリーマ装置が大型化するとは許されない。本実施形態の光ピックアップ104によれば、テープ走行方向に狭いピッチで配列することが可能になる。例えば、1個の光ピックアップ104のテープ走行方向におけるサイズを10mm以下に設定することが可能になる。
【0061】
図4の光ピックアップ104では、光テープ105の記録面に対向するように2個の対物レンズ8a、8bが備えられる。2個の対物レンズ8a、8bのトラッキング方向(Y方向)における中心間の距離は、例えば4〜8mmの範囲内にあり、例えば約6mmに設定され得る。この距離の選択は任意であり、テープ走行方向における位置に応じて異なっていてもよい。2個の対物レンズ8a、8bは、それぞれ、光テープ105の記録面上の別のトラック上に光ビームのスポットを形成し、各トラックを追従して記録、再生を行う。2個の対物レンズ8a、8bの位置は、それぞれ、対応する2個のレンズアクチュエータ9a、9bによって、独立してフォーカス方向およびトラッキング方向に制御される。光学ベース部20には、2つの対物レンズ8a、8bの各々によって集光される光ビームを出射するレーザが内蔵されている。以下、対物レンズ8a、8bを総称して対物レンズ8と称し、レンズアクチュエータ9a、9bを総称してレンズアクチュエータ9と称する場合がある。
【0062】
図7Aは、一対の光ピックアップ104が有する対物レンズ8a、8bを模式的に示す断面図である。図7Bは、これらの対物レンズ8a、8bの光テープ105の表面に対する配置関係の例を模式的に示す平面図である。対物レンズ8a、8bの位置は、それぞれのレンズアクチュエータによってフォーカス方向(Z方向)およびトラッキング方向(Y方向)に変化する。対物レンズ8aがトラッキング方向(Y方向)に移動する幅がW1、対物レンズ8bがトラッキング方向(Y方向)に移動する幅がW2で示されている。各光ピックアップ104において、対物レンズ8がトラッキング方向に移動し得る幅が例えば1mm程度であれば、幅Wが10mmの光テープ105に対して、10個程度またはそれ以上の光ピックアップ104がテープ走行方向に対して傾斜した方向に配列されれば、全トラックを効率的にカバーすることができる。
【0063】
光テープ105に設けられたトラックの本数は、例えば38000である。本実施形態における光ピックアップ104の個数は24個であるため、個々の光ピックアップは約1600本のトラックをカバーする。この約1600本のトラックは全体として0.48mmの幅を持つ領域に存在する。各光ピックアップ104は、光テープ105の幅方向にそれぞれ0.48mmシフトして配置されている。この0.48mmの幅の領域内に存在する1600本のトラックの任意の一本にアクセスするため、光ピックアップ104の対物レンズが光ピックアップ104の内部でテープ走行方向に対して垂直な方向に移動する。このような対物レンズの移動は、レンズアクチュエータによって実行される。その結果、対物レンズの集光によって光テープ105上に形成される光スポットを0.48mmの幅の領域内の任意のトラックに追従させることが可能になる。各ピックアップ104の光テープ105の幅方向の位置は精度よく固定する必要がある。
【0064】
本実施形態におけるレンズアクチュエータの可動範囲は0.7mmである。この場合、レンズ中心に対する光テープ105のトラック位置は±(0.7−0.48)/2mm=±0.11mmの精度で取り付けることが好ましい。このうち、光テープ105のエッジに対するトラック位置精度±0.05mm、光ピックアップ104基準位置に対するレンズ位置精度±0.03mmを除くと、ドライブ側に割り振られた許容誤差は0.11mm−0.05mm−0.03mm=±0.03mmとなる。これをテープガイドポスト103と光ピックアップ104の取り付け精度に均等に割り振ると、光ピックアップ104の取り付け精度は0.03/2=±0.015mmの精度で取り付ける必要がある。これは通常、精度のよい切削加工でしか得られない精度であり、コストアップの要因となる。
【0065】
一方、テープ走行方向における光ピックアップ104の位置は変動しても、光テープ105上の信号読み出し、または書き込みの微妙なタイミングの変化にしかならない。このため、テープ走行方向における光ピックアップ104の位置合わせずれは、問題にはならない。光ピックアップ104の位置決め機構について、その詳細は後述する。
【0066】
通常の光ディスク装置で使用される光ピックアップは1個であり、その発生する熱は光ピックアップ自体の表面から光ディスク装置内の空気に直接放熱される。しかしながら、本実施形態のように、24個もの光ピックアップ104が存在すると、このような方法では十分な放熱効果を得ることはできない。なお、本実施形態における放熱方法は、光ピックアップ104の個数が1〜2個では必ずしも必須ではないが、光ピックアップ104の個数が4個以上になると、温度上昇を抑制することに寄与し有効である。本実施形態の構成は、光ピックアップ104の個数が10個を超える場合に特に有効である。
【0067】
個々の光ピックアップ104は、レーザ及び光検出素子だけで1.6W程度の電力を消費する。このため、24個の光ピックアップ104は、合計1.6×24=38.4Wの電力を消費する。ある実施形態では、筐体111の表面積は0.128m2で、その表面の熱伝達率は5W/m2・Kと見積られている。このため、送風ファン108が無い場合の内部の温度上昇は、この発熱だけで38.4/5/0.128=60℃と見積もられ、外気温が20℃でも内部の温度は80℃に達する。実際には、この電力のほかに前述のレンズアクチュエータの消費電力や、光テープ105を駆動する送りモータ107の消費電力等が加わる。また、光データストリーマ装置が狭いラック内に設置されると、筐体111の表面の熱伝達率は5W/m2・Kよりも更に小さな値となる。そのため、実際には、これよりもはるかに高い温度となり、光ピックアップ104や光テープ105は言うに及ばず、通常の電子部品の使用可能温度をも越え、装置の動作を保証できない。
【0068】
本実施形態では、光ピックアップ104の発生する熱は光ピックアップ104に熱的に接続された放熱板109に伝達される。放熱板109には送風ファン108が発生する風が当り、光ピックアップ104の発生する熱を強制的に筐体111の外に排出する。放熱板109や送風ファン108は筐体111内に設けられるため、光ピックアップ104に対して、限られたスペースで高い放熱効果を得ることができる。
【0069】
図8Aは、筐体111を取り除いた状態の構成を裏面側から見た斜視図であり、図8Bは、その状態の構成を表面側から見た斜視図である。図9は、第2の空間2の側から見たシャーシ110の構成例を示す図である。これらの図に示されるように、本実施形態におけるシャーシ110には、光ピックアップアセンブリ60、放熱板109、光ピックアップ用のフレキシブル回路基板112を保持する部材113、送風ファン108、および回路基板114などが取り付けられている。回路基板114には、図3に示す回路要素が搭載される。フレキシブル回路基板112を保持する部材113は。コネクタ付きの中継基板である。
【0070】
図10は、筐体111の裏面側を示す斜視図である。筐体111には、空気吸込用孔111aおよび空気吐出用孔111bが設けられている。送風ファン108の回転により、空気吸込用孔111aを介して筐体111の外部から空気が筐体111の第2の空間2の内部に流れ込む。一方、筐体111の第2の空間内の空気は、送風ファン108の回転により、空気吐出用孔111bを介して筐体111の外部に出る。このような空気の流れにより、第2の空間内の熱が筐体111の外部に捨てられる。こうして、光ピックアップ104で発生した熱は、放熱板109を介して筐体111の外部に出ていくため、筐体111の内部、より具体的には光ピックアップ104の温度上昇が抑制される。
【0071】
このように、筐体111は板状のシャーシ110によって第1の空間1、第2の空間2に分けられており、第1の空間1には光ピックアップ104、光テープ105等が存在し、第2の空間には放熱板109、送風ファン108等が存在している。第2の空間1に存在する送風ファン108は埃を外部から吸い込み、その風が当る部分には埃が付着しやすい。光ピックアップ104に使用される、レンズやプリズム等の光学部品、レーザ等は、埃等の汚れが付着すると、その性能が劣化し、所定の特性を発揮できなくなる。また光テープ105は微細な領域に対し記録再生を行うため、これもまた埃の付着が好ましくない。本実施形態によれば、送風がなされる第2の空間2と、光テープ105が走行する第1の空間とが分離され、第1の空間1には埃が入りにくい。その結果、埃によって記録再生の品質が低下することが防止される。また、本実施形態では、光テープ105には空冷のための風は当たらない。光テープ105に風が当ると、これにより光テープ105は振動し、光ピックアップ104のサーボの外乱の要因となるが、本実施形態ではこのような問題を回避できる。一方、第1の空間1に位置する光ピックアップ104から第2の空間2への放熱はスムーズに行われ、しかも第2の空間2からの装置外への排熱も効率的に行われる。このため、複数の光ピックアップ104およびその周辺の温度は過剰に上昇せず、各部の温度変化を抑制することができる。その結果、温度変化により光テープの素材が伸縮し、これによっても諸特性が劣化するという問題を回避できる。
【0072】
このように本実施形態によれば、平板状のシャーシ110によって筐体111を第1の空間1と第2の空間2に分けており、第1の空間1には光ピックアップ104、光テープ105等が存在し、第2の空間2には放熱板109、送風ファン108等が存在しているため、高い放熱効果を得ながら光ピックアップ104、光テープ105を埃や熱、風から避けることができる。
【0073】
本第1の空間1と第2の空間2とを分けるのにシャーシ110ではなく特別の部材を配置してもよい。テープを記録媒体として使用する記録再生装置では、テープの走行する平面に多数のガイドポストや光ヘッドを配置するため、平面状の取り付け板を配置するのが、構造上、都合がよい。テープと直接接しないモータや駆動機構、回路はこの裏側に配置することにより、この取り付け板を有効に利用できる。このためテープ装置では、平板状のシャーシが存在るのが一般的である。本実施形態では、このようなシャーシを第1の空間1と第2の空間2を分けるのに用いる。こうすることにより、特別な部材を使用することなく筐体111内を第1の空間1と第2の空間2を分け、光ピックアップ104、光テープ105を埃や熱、風から避けることができる。
【0074】
以上説明したように本実施形態によれば、高い放熱効果を得ることが出来、また、光ピックアップ104、光テープ105を埃や熱、風から避けることができる。このため、信頼性が高い情報記録再生装置を安価に得ることができる。
【0075】
次に、本実施形態における光ピックアップ装置の位置決め機構を説明する。
【0076】
図11は、ピックアップ部品6の位置を決める位置決め部材200の一例と、この位置決め部材200によって位置決めがなされた複数のピックアップ部品6とを示している。ここでは、簡単のため、1つのピックアップ部品6が1つの光ピックアップを有していると仮定する。各ピックアップ部品6が備える光ピックアップの個数は2個またはそれ以上であってもよい。図11において、各ピックアップ部品6の中央部に記載した円は、対物レンズ8の位置を示している。対物レンズ8の中心は、いずれも、光テープ105の破線の真上に位置している。図11に示す配置例では、各ピックアップ部品6が目的とする位置に高い精度で配置されている。
【0077】
後述するように、位置決め部材200を作製する時の機械加工精度に起因して、位置決め部材200のピックアップ部品6に当接する面(当接面)200aの位置が設計目標の位置からずれる。図12は、光テープ105の走行方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に当接面200aの位置がずれた場合を示している。当接面200aの位置が、破線で示される目標位置からY方向にシフトすると、その当接面200aに接触するピックアップ部品6のY方向位置もシフトする。このため、そのピックアップ部品6の対物レンズ8の位置も、目標位置からY方向にシフトする。
【0078】
図13(a)から(d)は、金属製の素材ブロック200’から機械加工により位置決め部材200を作製する途中段階における、位置決め部材200の形状変化を模式的に示す工程図である。
【0079】
図13(a)は、素材ブロック200’を示す。図13(b)は、例えばフライス盤によって素材ブロック200’の一部を切削し、深い段差を形成している様子を示している。図13(c)は、位置決め部材200における1つの当接面200aが形成された状態を示している。この当接面200aを形成する機械加工の精度に応じて、当接面200aのY方向における位置が目標位置(破線)からデルタYだけシフトしている。このとき、当接面200aのX方向における位置も目標位置(破線)からデルタXだけシフトしている。
【0080】
図13(d)は、同様の機械加工により、もう1つの段差を形成し、他の当接面200aを作製した状態を示している。このような機械加工を繰り返すことにより、階段状に並んだ複数の当接面200aを有する位置決め部材200が完成する。位置決めの精度を高めるためには、このように高い精度での加工を繰り返す必要がある。
【0081】
このような位置決め部材200を用いたのでは、多数のピックアップ部品6を高い精度で配列することは、かなりのコストアップになるとともに、累積誤差により精度が得られない場合もある。このような問題を解決するため、本実施形態では、以下に説明する位置決め機構を採用する。
【0082】
図14は、テープ走行方向(X方向)から傾斜した方向に延びる取り付け軸(第1の規制部材)201と、この取り付け軸201に取り付けられたピックアップ部品6と、ピックアップ部品6のテープ走行方向における位置を規定する位置決め部材(第2の規制部材)203とを示している。
【0083】
各ピックアップ部品6には、取り付け軸201が貫通する穴、または取り付け軸201を案内するガイドが設けられている。各ピックアップ部品6は、取り付け軸201が延びる方向に沿ってスライド可能である。言い換えると、各ピックアップ部品6は、取り付け軸201が延びる方向に一次元の自由度で移動可能に規制されている。取り付け軸201の形状は、ピックアップ部品6を直線上にスライドさせることができればよく、棒状または平板状であり得る。取り付け軸201の断面は、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形を含む)であってもよい。
【0084】
位置決め部材203は、各ピックアップ部品6のテープ走行方向(X方向)における移動を規制するように各ピックアップ部品6に当接する面(当接面203a)を有している。この当接面203aは、各ピックアップ部品6の1つの側面6aに当接し、テープ走行方向における各ピックアップ部品6の位置を規定する。図14に示される位置決め部材203は、各ピックアップ部品6と対向するように階段状の面(対向面203b)を有しているが、この対向面203bは、ピックアップ部品6に接触しておらず、対向面203bとピックアップ部品6との間には隙間が存在している。言い換えると、位置決め部材203は、それ自体では、各ピックアップ部品6のテープ走行方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)における位置を規制しない。各ピックアップ部品6のY方向における位置の規制には、取り付け軸201が必要である。
【0085】
図14は、位置決め部材203の当接面203aがテープ走行方向(X方向)における目標位置(点線)2030から矢印の方向にシフトしている場合を示している。このシフトは、位置決め部材203を機械加工によって作製するときの寸法誤差に起因している。このシフトの大きさは、図13におけるデルタXに相当するが、誇張して大きく記載されている。
【0086】
取り付け軸201および位置決め部材203の働きにより、各ピックアップ部品6の位置を決めることができる。各ピックアップ部品6が位置決め部材203の当接面203aに接触した状態で、取り付け軸201の傾斜角度を変化させると、各ピックアップ部品6のテープ走行方向(X方向)における位置を固定したまま、そのテープ走行方向に垂直な方向(Y方向)における位置を高い精度で調整することができる。こうして、ピックアップ部品6の位置決めがなされた後、各ピックアップ部品6は、位置決め部材203の当接面203aに接触した状態で固定される。記録再生装置の動作時において、各ピックアップ部品6の位置は変化しない。ただし、ある実施形態では、光ピックアップアセンブリ60を例えばシャーシ110に取り付けた後も、取り付け軸201の傾斜角度を調整することは可能である。ピックアップアセンブリ60は着脱が自在であってもよい。また、光ピックアップアセンブリ60から個々のピックアップ部品6を着脱することが自在にできるように構成されていてもよい。光ピックアップの個数が増加すると、そのうちの1つが故障した場合に、その故障した光ピッアップを含むピックアップ部品を新しい部品に交換できれば、光ピックアップアセンブリ60の全体を新しい光ピックアップアセンブリ60と交換する必要がなくなる。
【0087】
位置決め時におけるピックアップ部品6の移動は、取り付け軸201に平行な方向に制限されているため、図15に示すように、ピックアップ部品6の位置がテープ走行方向(X方向)に加工精度の範囲内でデルタXだけシフトすると、そのピックアップ部品6の位置は、テープ走行方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、tanθ・デルタXだけシフトする。ここで、θは、取り付け軸201が延びる方向とテープ走行方向(X方向)との間の角度(取り付け軸201の傾斜角)であり、その単位はラジアンである。幅10mmの光テープ105に対し、100mmの長さの範囲内にピックアップ部品6を配列する場合、取り付け軸201の傾斜角度θは、高さ10mm、底辺長さ100mmの直角三角形の頂角に等しく設定され得る。その場合、tanθは0.1に等しくなるため、Y方向の位置ずれをデルタXの10分の1に縮小することができる。tanθは、典型的には、0.48/12=0.04程度である。このため、本実施形態によれば、Y方向の位置ずれを加工精度(デルタX)の0.04=1/25以下に抑制することができる。したがって、上記の構成によれば、テープ走行方向に対して垂直な方向(Y方向)におけるピックアップ部品6の位置決め制度を高めることができる。
【0088】
図14に示す例では、位置決め部材203と各ピックアップ部品6との間に隙間が存在するため、各ピックアップ部品6から放熱板109への熱伝達をスムーズに行うためには、この隙間を熱伝導率の高い材料(伝熱材料)で埋めることが好ましい。また、位置決め部材203を、放熱板204の一部または全体として用いてもよい。その場合、位置決め部材203を熱伝導率の高い金属材料から形成することが好ましい。なお、位置決め部材203とは別の部材を用いて、ピックアップ部品6と放熱板109とを熱的に接続してもよい。この場合、位置決め部材203は、熱伝導を行う部材として機能する必要はないので、熱伝導性の低い材料から位置決め部材203を形成してもよい。
【0089】
図16は、ある実施形態における光ピックアップアセンブリ60の構成例を示している。この例では、取り付け軸201が6個のピックアップ部品6を貫通している。この例では、階段状の対向面を有する熱伝達部材205を介して、ピックアップ部品6と放熱板204とが熱的に接続されている。また、ピックアップ部品6の位置決めのため、熱伝達部材205とは別に、位置決め部材203が使用されている。位置決め部材203は、XY面に平行な面に沿って広がる薄い(厚さ:例えば1〜2mm)板から形成され、Z方向に熱伝導部材205に積層されている。この例でも、ピックアップ部品6の位置は、取り付け軸201および位置決め部材203によって規定されている。
【0090】
図16の位置決め部材203および熱伝達部材205は、いずれも、ピックアップ部品6と対向する面を有している。これらの対向面はピックアップ部品6に接触しておらず、対向面とピックアップ部品6との間には隙間が存在している。ピックアップ部品6と熱伝達部材205との間にある隙間には、好ましくは、流動性および熱伝導性を有する伝熱材料206が充填される。この伝熱材料206を介して熱はピックアップ部品6から熱伝達部材205および放熱板204に流れる。放熱板204は、空冷の効率を高めるため、多数のフィンまたはロッドを有していてもよい。
【0091】
以下、図17および図18を参照して、位置決め機構の他の構成例を説明する。図17は、光ピックアップアセンブリ60の一構成例を示す平面図であり、図18は、その側面図である。図示されている光ピックアップアセンブリ60は、シャーシ110に搭載されている。
【0092】
この光ピッアップアセンブリ60は、複数のピックアップ部品6と、各ピックアップ部品6の位置を決める位置決め機構220とを備えている。この位置決め機構220は、各ピックアップ部品6が取り付けられた取り付け軸(第1の規制部材)201と、ピックアップ部品6の各々をテープ走行方向に平行な方向において位置決めする位置決め部材210と、取り付け軸201をテープ走行方向から傾斜した方向に固定する固定具202とを備える。取り付け軸201は、みがき棒材等、安価で真直度のよい棒材で作られている。ピックアップ部品6には、嵌め合いよく取り付け軸201に嵌合する穴が設けられ、この穴を取り付け軸201が貫通している。固定具202は、取り付け軸201の両端またはその付近の位置を調整し、取り付け軸201の傾斜角度を変化させるように構成されている。
【0093】
傾き規制部材114はシャーシ110と一体に形成され、複数のピックアップ部品6の背面に接し、ピックアップ部品6の取り付け軸201回りの回転を規制している。複数のピックアップ部品6の背面に接している各面は、同時にプレス加工されて形成されるので、これらの面を含む面の平面度は、良好で、ピックアップ部品6の取り付け軸201回りの回転によるピックアップ部品6の対物レンズの高さずれは無視し得る。
【0094】
位置決め部材210は、一方の端に位置するピックアップ部品6のテープ走行方向における位置を決定するエッジ位置決め部材207と、各々が複数のピックアップ部品6の間に挿入され、テープ走行方向における各ピックアップ部品6の位置を決める複数のスペーサ208を有している。複数のピックアップ部品6は、スペーサ208を間に挟んで隙間無く密着して配置されている。スペーサ208は、均一な厚さの板金をプレスすることにより安価に製作される。各ピックアップ部品6の幅およびスペーサ208の幅は、取り付け軸201の傾斜角度を適切な値に調整したとき、各ピックアップ部品6の対物レンズ8が光テープ105の幅方向において適切な位置に配置されるように設計されている。各ピックアップ部品6およびスペーサ208の幅は、いずれも、高い精度で一定の幅を有しているため、エッジ位置決め部材207とスペーサ208とを組み合わせて用いることにより、各ピックアップ部品6のテープ走行方向における位置を高い精度で規制することができる。すなわち、取り付け軸201の傾斜角度を固定具202で細かく調整すれば、各ピックアップ部品6のテープ走行方向に垂直な方向における位置を高い精度で調整することができる。
【0095】
本実施形態では、取り付け軸201の傾き角は、テープ走行方向におけるピックアップ部品6の取り付けピッチ(例えば12mm)および光テープ105の幅方向寸法差(例えば0.48mm)によって決まる。光テープ105の幅方向の必要取り付け精度は±0.015mmと、高い精度が必要であるが、この小さな傾きのため、光テープ105走行方向における取り付け精度は、0.015×12/0.48mm=0.375mmの計算結果から、±0.375mmでよい。これは通常の安価な樹脂成型や板金プレスで十分実現できる精度である。
【0096】
固定具202により、取り付け軸201の位置、傾斜角度を調整することができるので、必要に応じて更に高い精度を得ることができる。固定具202は取り付け軸201の両端の高さを調整するため、例えば、調整ねじ、押圧ばね、およびガイドから構成され得る。その結果、安価な位置決め部材を使用して、複数の光ピックアップ104を精度よく取り付けることができる。なお、本実施形態では、固定具202によって取り付け軸201の高さや傾きを調整するようにしたが、このような調整をせずに精度のよい部材で取り付け軸201を固定してもい。
【0097】
次に、図19および図20を参照する。これらの図に示された光ピックアップアセンブリ60は、基本的には、図17および図18に示す光ピックアップアセンブリ60と同様の構成を備えている。両者において異なる点は、図19および図20に示される光ピックアップアセンブリ60が放熱板109と熱的に接触している点にある。
【0098】
放熱板1094の上部は、固定具201などによって位置決めされた各ピックアップ部品6との間に隙間を形成するように、階段状の対向面を有している。この隙間は、放熱板109における階段状の対向面が各ピックアップ部品6の位置決めに影響を与えないように機能する。つまり、放熱板109は、ピックアップ部品6と機械的には接触しないため、ピックアップ部品6の位置を規制しない。このため、放熱板109の加工精度は、ピックアップ部品6の位置決め精度に影響しない。このように、放熱板109における階段状の対向面は、高い寸法精度が要求されないため、放熱板109は安価に作製され得る。
【0099】
放熱板109とピックアップ部品6との間にある隙間は、伝熱部材206によって充填され、熱的な接触が実現している。伝熱部材206は、例えば放熱グリスから好適に形成され得る。放熱グリスは、粘度の高い液状であり、かつ熱伝導率も高い。伝熱部材206は、ピックアップ部品6と放熱板109とを熱的に結合するため、光ピックアップ104で発生した熱を放熱板204に伝導する。
【0100】
図21は、位置決め機構の他の構成例の概略を示す図である。1つの光ピックアップアセンブリが複数の取り付け軸201を備えていてもよい。図21に示す例では、2本の取り付け軸201が異なる傾斜角度でピックアップ部品6の位置を決めている。また、この例では、中央部に位置する2個のピックアップ部品6の間に1つスペーサ207が挿入されているが、他の複数のピックアップユニット6は直接に接触するようにして隣接している。
【0101】
以上説明してきた実施形態では、筐体111の第1の空間1と第2の空間2とをシャーシ110により分けたが、他の部材、たとえば筐体の一部を使用しても分けてもよい。あるいは、筐体111の内部を複数の空間に分離する特別な部材を配置するようにしてもよい。第1の空間1と第2の空間2との間の分離は、2つの空間1、2の間で気体の流れが全く生じないように気密に行われる必要はない。第2の空間2から第1の空間1への埃の侵入が充分に抑制される程度に分離されていればよい。埃を通過させないフィルタがシャーシ110の一部、またはシャーシ110と筐体111との隙間に設けられていてもよい。
【0102】
シャーシ110には穴をあけて放熱板109の上部をピックアップ部品6に接触させるようにしたが、穴を設けず、シャーシ110の厚みを通じて伝熱するようにしてもよい。この場合、シャーシ110をアルミニウム等の、熱伝導率の良好な材料から形成し、シャーシ110に放熱板の機能の一部または全部を持たせるようにしてもよい。この場合、シャーシ110の面内方向への伝熱を防ぐため、シャーシ110において光ピックアップアセンブリ60が取り付けられる領域の周囲に穴を設けてもよい。この際、埃対策を行うことが望ましい。
【0103】
送風ファン108は、巻き取りリール102の駆動用のモータ107で駆動するようにしたが、送風ファン108の専用のモータを設けてもよい。光ピックアップ104の発生する熱の量によっては、送風ファン108を設けなくてもよい。 上記の実施形態では、記録媒体として光テープを使用しているが、記録媒体は光テープに限定されず、例えば光ディスクであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、光データストリーマ装置のような記録再生装置に適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 第1の空間
2 第2の空間
4a ベースフィルム
4b バックコート層
4c インプリント層
4d ランド
4e グルーブ
6 ピックアップ部品
8、8a、8b 対物レンズ
9、9a、9b レンズアクチュエータ
20 光学ベース
60 光ピックアップアセンブリ
101 テープカートリッジ
102 巻取リール
103 テープガイドポスト
104 光ピックアップ
105 光テープ
106 逆送りモータ
107 順送りモータ
108 送風ファン
109 放熱板
110 シャーシ
111 筐体
112 ピックアップ用FPC
113 ピックアップ用FPC保持部
200 位置決め部材
201 取り付け軸
202 固定具
203 位置決め部材
203a 当接面
203b 対向面
207 エッジ位置決め部材
208 スペーサ
210 位置決め部材
220 位置決め機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部を第1の空間と第2の空間とに分割する板状部材と、
前記第1の空間内に配置され、前記第1の空間内で記録媒体にデータを書き込むことができるように構成された少なくとも1個の光ピックアップと、
前記光ピックアップが発する熱を前記第2の空間に伝達する放熱部材と、
を備える記録再生装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記第2の空間を装置外部と連通する複数の開口部を有している、請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
前記少なくとも1個の光ピックアップは、所定間隔で配列された複数の光ピックアップである、請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項4】
前記記録媒体はテープメディアであり、
前記第1の空間内において前記テープメディアを案内するガイドポストと、
前記第1の空間内で前記テープメディアを巻き取るリールと、
前記リールを回転させるモータと、
を備え、
前記複数の光ピックアップは、前記テープメディアの走行方向に配列されている、請求項3に記載の記録再生装置。
【請求項5】
前記複数の光ピックアップは、前記テープメディアの幅方向においてそれぞれ異なる位置に配置されている、請求項3に記載の記録再生装置。
【請求項6】
前記複数の光ピックアップは、前記テープメディアの幅方向に傾斜した平板または直線状の棒部材に固定されている、請求項5に記載の記録再生装置。
【請求項7】
前記放熱部材の少なくとも一部は前記第2の空間内に露出している、請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項8】
前記放熱部材と前記複数の光ピックアップの各々との間には隙間があり、前記隙間は流動性を有する伝熱材料で充填されている、請求項3に記載の記録再生装置。
【請求項9】
前記板状部材は、前記光ピックアップおよび前記放熱部材を支持するように構成されている、請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項10】
前記板状部材は、前記放熱部材の少なくも一部として機能する、請求項9に記載の記録再生装置。
【請求項11】
前記複数の光ピックアップの着脱が自在である、請求項3に記載の記録再生装置。
【請求項12】
前記板状部材には穴が存在し、前記放熱部材は前記穴を貫通して前記光ピックアップと熱的に結合されている、請求項7に記載の記録再生装置。
【請求項13】
前記第2の空間内に設けられた送風ファンを備え、
前記送風ファンが発生する風により前記光ピックアップの発生する熱を前記記録再生装置の外部に排出する、請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項14】
複数のピックアップ部品と、
記録媒体の走行方向に対して傾斜した方向に沿って前記複数のピックアップ部品が配列された状態で前記複数のピックアップ部品の位置を決める位置決め機構と、
を備え、
前記位置決め機構は、
前記複数のピックアップ部品の各々が前記傾斜した方向に沿って移動することができるように取り付けられた第1の規制部材と、
前記記録媒体の走行方向における各ピックアップ部品の位置を規定する第2の規制部材と、
を有する、光ピックアップアセンブリ。
【請求項15】
前記第1の規制部材は直線状に延びる平板または棒である、請求項14に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項16】
前記第1の規制部材を前記傾斜した方向に固定する固定具を備える、請求項15に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項17】
前記固定具は、前記第1の規制部材の傾斜角度を変化させるように構成されている、請求項16に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項18】
前記第2の規制部材は、各々が前記複数のピックアップ部品の対応する1つに当接する複数の面を有しており、前記複数の面が前記記録媒体の走行方向における前記複数のピックアップ部品の位置を決める、請求項14に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項19】
前記第2の規制部材は、前記複数のピックアップ部品の1つに当接する面を有している、請求項14に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項20】
前記第2の規制部材は、各々が前記複数のピックアップ部品の間に挿入され、前記記録媒体の走行方向における前記複数のピックアップ部品の位置を決める複数のスペーサを含んでいる、請求項19に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項21】
前記第2の規制部材は、各々が前記複数のピックアップ部品の対応する1つに対向する複数の対向面を有しており、
前記複数の対向面は、前記記録媒体の走行方向に沿って階段状に配列されており、
前記複数のピックアップ部品と前記複数の対向面との間には隙間が設けられている、請求項19または20に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項22】
前記複数のピックアップ部品と前記複数の対向面との間の前記隙間には、流動性を有する伝熱材料が充填されている、請求項14に記載の光ピックアップアセンブリ。
【請求項23】
請求項14に記載の光ピックアップアセンブリと、
光テープを走行させるモータと、
前記光テープにデータを記録し、前記光テープからデータを再生するための記録再生回路と、
を備える記録再生装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−65387(P2013−65387A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32295(P2012−32295)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】